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明細書 :形状記憶合金を用いた駆動機構及びこの駆動機構を備える装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4465684号 (P4465684)
登録日 平成22年3月5日(2010.3.5)
発行日 平成22年5月19日(2010.5.19)
発明の名称または考案の名称 形状記憶合金を用いた駆動機構及びこの駆動機構を備える装置
国際特許分類 G09B  21/00        (2006.01)
FI G09B 21/00 C
請求項の数または発明の数 23
全頁数 29
出願番号 特願2005-517150 (P2005-517150)
出願日 平成17年1月19日(2005.1.19)
国際出願番号 PCT/JP2005/000939
国際公開番号 WO2005/069254
国際公開日 平成17年7月28日(2005.7.28)
優先権出願番号 2004012422
優先日 平成16年1月20日(2004.1.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年7月7日(2006.7.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000167989
【氏名又は名称】江刺 正喜
【識別番号】597086128
【氏名又は名称】芳賀 洋一
発明者または考案者 【氏名】江刺 正喜
【氏名】芳賀 洋一
【氏名】水島 昌徳
【氏名】松永 忠雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査官 【審査官】植野 孝郎
参考文献・文献 実開昭60-178864(JP,U)
特開2001-265213(JP,A)
特開2002-207418(JP,A)
特表2003-524463(JP,A)
牧志渉 他3名,26.二次元触覚ディスプレイの開発,第36回日本エム・イー学会東北支部大会講演論文集,社団法人日本エム・イー学会,2002年11月30日,第33頁
調査した分野 G09B21/00-21/06
特許請求の範囲 【請求項1】
互いに軸方向に直列に接続された第1及び第2の形状記憶合金コイルと駆動部材と固定部材との複数組が共通の一つの基板に対して配置されたモジュールと、
上記駆動部材を保持するための磁気ラッチ部と、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルに電流を供給する駆動回路と、
を備え、
上記駆動部材が、第1及び第2の形状記憶合金コイルに接続されて軸方向に延び、
上記磁気ラッチ部は、上記基板に保持された磁石板と、上記駆動部材に設けられた複数の磁性体とからなっており、
上記磁石板は、上記複数の駆動部材が非接触で貫通する複数の貫通孔を備え、上記複数の磁性体が駆動部材の軸方向に互いに隔置されていて、上記磁石板が上記駆動部材の軸方向に着磁されており、
上記駆動回路により上記第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動して加熱し、
加熱された第1又は第2の形状記憶合金コイルが収縮又は伸張することにより上記駆動部材を軸方向に沿って移動させ、
上記駆動部材を上記磁気ラッチ部に磁気吸着させることにより軸方向に2段階以上の多段階で固定保持することを特徴とする、形状記憶合金を用いた駆動機構。
【請求項2】
前記モジュールを複数備えたことを特徴とする、請求項1に記載の形状記憶合金を用いた駆動機構。
【請求項3】
前記磁石板が、全てのモジュールに対して一つ、又は分割された複数個のモジュールに対して一つ備えられていることを特徴とする、請求項2に記載の形状記憶合金を用いた駆動機構。
【請求項4】
互いに軸方向に直列に接続される第1及び第2の形状記憶合金コイルと駆動部材及び固定部材との複数組が共通の一つの基板に対して配置されたモジュールと、上記駆動部材を保持するための磁気ラッチ部と、を複数組備えた形状記憶合金コイルの駆動機構であって、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルは、第1の形状記憶合金コイルの自然長部と、その伸張部又は圧縮部と、第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部と、その自然長部と、の順に直列接続されており、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルのそれぞれの、自然長部の一端と伸張部又は圧縮部の一端との直列接続部が、上記基板に設けられた開口部に配置される固定部材を介して駆動部材に接続され、上記第1及び第2の形状記憶合金コイルと上記駆動部材と上記固定部材とが上記基板と接触することなく、かつ、移動可能に上記基板にほぼ平行に保持され、
上記第1の形状記憶合金コイルの自然長部の他端と上記第2の形状記憶合金コイルの自然長部の他端とが、それぞれ上記基板に設けられたアース電極パターンに接続され、
上記第1の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の他端と上記第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の他端とが、上記基板に設けられた共通電極配線パターンに接続され、
上記磁気ラッチ部は上記基板に保持された磁石板と上記駆動部材に設けられた複数の磁性体とを含み、該磁石板は上記駆動部材が非接触で貫通する複数の貫通孔を備え、該磁性体が上記駆動部材の軸方向に互いに隔置され、
上記基板に設けられた駆動回路が、上記第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動し、上記駆動された第1又は第2の形状記憶合金コイルが加熱されて伸張又は圧縮することにより上記駆動部材が軸方向に沿って移動し、上記駆動部材が上記磁気ラッチ部に磁気吸着されて軸方向に多段階に固定保持されることを特徴とする、形状記憶合金を用いた駆動機構。
【請求項5】
前記駆動回路がシフトレジスタを有し、このシフトレジスタにより前記複数組の第1及び第2の形状記憶合金コイルが電流駆動されることを特徴とする、請求項4に記載の形状記憶合金を用いた駆動機構。
【請求項6】
互いに軸方向に直列に接続される第1及び第2の形状記憶合金コイルと駆動部材及び固定部材との複数組が共通の一つの基板に対して配置されたモジュールと、上記駆動部材を保持するための磁気ラッチ部と、を複数組備えた形状記憶合金コイルの駆動機構であって、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルは、第1の形状記憶合金コイルの自然長部と、その伸張部又は圧縮部と、第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部と、その自然長部と、の順に直列接続されており、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルのそれぞれの、自然長部の一端と伸張部又は圧縮部の一端との直列接続部が、上記基板に設けられた開口部に配置される固定部材を介して駆動部材に接続され、上記第1及び第2の形状記憶合金コイルと上記駆動部材と上記固定部材とが上記基板と接触することなく、かつ、移動可能に上記基板にほぼ平行に保持され、
上記第1の形状記憶合金コイルの自然長部の他端と上記第2の形状記憶合金コイルの自然長部の他端とが、それぞれ上記基板に設けられたアース電極パターンに接続され、
上記第1の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の他端と上記第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の他端とが、上記基板に設けられた共通電極配線パターンに接続され、
上記磁気ラッチ部が、上記駆動部材に配置された一つ又は複数個の磁性体と、該磁性体の変位領域に対向して軸方向に互いに隔置された複数個の凹陥部を備えたラッチ部材と、から構成されており、上記ラッチ部材の凹陥部の領域に磁気が付与されていることを特徴とする、形状記憶合金を用いた駆動機構。
【請求項7】
形状記憶合金を用いた少なくとも一つの駆動機構と、
該駆動機構の各駆動部材の先端の領域にて、磁石板に平行に配置され、各駆動部材が垂直に貫通する貫通孔を有する表示シートと、
さらにデータが入力される制御部と、を備えており、
上記駆動機構が、互いに軸方向に直列に接続される第1及び第2の形状記憶合金コイルと駆動部材及び固定部材との複数組を共通の一つの基板に対して配置したモジュールと、上記駆動部材を保持するための磁気ラッチ部と、を複数組で備え、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルは、第1の形状記憶合金コイルの自然長部と、その伸張部又は圧縮部と、第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部と、その自然長部と、の順に直列接続されており、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルのそれぞれの、自然長部の一端と伸張部又は圧縮部の一端との直列接続部が、上記基板に設けられた開口部に配置される固定部材を介して駆動部材に接続され、上記第1及び第2の形状記憶合金コイルと上記駆動部材と上記固定部材とが上記基板と接触することなく、かつ、移動可能に上記基板にほぼ平行に保持され、
上記第1の形状記憶合金コイルの自然長部の他端と上記第2の形状記憶合金コイルの自然長部の他端とが、それぞれ上記基板に設けられたアース電極パターンに接続され、
上記第1の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の他端と上記第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の他端とが、上記基板に設けられた共通電極配線パターンに接続され、
上記磁気ラッチ部は上記基板に保持された磁石板と上記駆動部材に設けられた複数の磁性体とを含み、該磁石板は上記駆動部材が非接触で貫通する複数の貫通孔を備え、該磁性体が軸方向に互いに隔置され、
上記基板に設けられた駆動回路が、上記第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動し、上記駆動された第1又は第2の形状記憶合金コイルが加熱されて伸張又は圧縮することにより上記駆動部材が軸方向に沿って移動し、上記駆動部材が、上記磁気ラッチ部に磁気吸着されて軸方向に多段階に固定保持されるようになっていて、
上記データに対応する各駆動部材の突出量による表示を行なうことを特徴とする、形状記憶合金を用いた駆動機構を備えるディスプレイ装置。
【請求項8】
前記各駆動部材の先端が、前記表示シート表面にて、ドットマトリックス状に配置されていることを特徴とする、請求項7に記載の形状記憶合金を用いた駆動機構を備えるディスプレイ装置。
【請求項9】
形状記憶合金を用いた少なくとも一つの駆動機構と、
これらの駆動機構の各駆動部材の先端の領域にて、上記駆動機構の上に配置され、各駆動部材が垂直に貫通する貫通孔を備えた取り外し可能な表示シートと、
各駆動部材の先端に着脱可能に挿入される表示ピンと、
さらにデータを入力して上記表示シート上に上記データに対応する各表示ピンの突出量による書き込みを行なう制御部と、を備えており、
上記駆動機構が、互いに軸方向に直列に接続される第1及び第2の形状記憶合金コイルと駆動部材及び固定部材との複数組を共通の一つの基板に対して配置したモジュールとを複数備え、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルは、第1の形状記憶合金コイルの自然長部と、その伸張部又は圧縮部と、第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部と、その自然長部と、の順に直列接続されており、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルのそれぞれの、自然長部の一端と伸張部又は圧縮部の一端との直列接続部が、上記基板に設けられた開口部に配置される固定部材を介して駆動部材に接続され、上記第1及び第2の形状記憶合金コイルと上記駆動部材と上記固定部材とが上記基板と接触することなく、かつ、移動可能に上記基板にほぼ平行に保持され、
上記第1の形状記憶合金コイルの自然長部の他端と上記第2の形状記憶合金コイルの自然長部の他端とが、それぞれ上記基板に設けられたアース電極パターンに接続され、
上記第1の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の他端と上記第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の他端とが、上記基板に設けられた共通電極配線パターンに接続され、
上記表示シートは板状の磁石から構成され、
上記表示ピンは、上端と下端が磁性体により構成され中間が非磁性体により構成されており、
上記基板に設けられた駆動回路が、上記第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動し、上記駆動された第1又は第2の形状記憶合金コイルが加熱されて伸張又は圧縮することにより上記駆動部材が軸方向に沿って移動するようになっていて、
上記表示ピンが、上記各駆動部材の軸方向移動量に応じて上記表示シートにラッチされるとともに、上記表示ピンを上記表示シートの磁力で上記駆動部材から脱離させ、表示シートに固定保持させることを特徴とする、形状記憶合金を用いた駆動機構を備える表示シート書き込み装置。
【請求項10】
形状記憶合金コイルを用いて複数の駆動部材をその軸方向にそれぞれ移動させる駆動機構に対して取り外し可能に設けられる表示シートであって、
上記表示シートは、各駆動部材が貫通する複数の貫通孔を有する板状の磁石からなり、
上記駆動部材の先端は、当該駆動部材から着脱可能な表示ピンで構成され、
上記表示ピンは、上端と下端が磁性体により構成され中間が非磁性体により構成されていて、
上記表示ピンを上記表示シートの磁力で駆動部材から脱離させ、上記表示シートに固定保持させることを特徴とする表示シート。
【請求項11】
互いに軸方向に直列に接続された第1及び第2の形状記憶合金コイルと、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルに接続される磁性体材料からなる駆動部材と、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルに電流を供給する駆動回路と、
上記駆動部材を保持すための磁気ラッチ部と、
を備えており、
上記磁気ラッチ部が、軸方向に互いに隔置された複数個の凹陥部を有し、該凹陥部の領域に磁気が付与されており、
上記駆動回路により上記第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動して加熱し、
加熱された第1又は第2の形状記憶合金コイルが収縮又は伸張することにより上記駆動部材を上記磁気ラッチ部の複数個の凹陥部に沿って移動させ、上記駆動部材を上記磁気ラッチ部に磁気吸着させることにより固定保持することを特徴とする、形状記憶合金を用いた駆動機構。
【請求項12】
前記第1及び第2の形状記憶合金コイルは伸張部又は圧縮部からなり、該第1及び第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の一端同士が直列接続されており、該第1及び第2の形状記憶合金コイルの直列接続部が前記駆動部材に接続されるとともに共通電極となり、上記第1及び第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の直列接続されていない両端が、前記磁気ラッチ部の複数個の凹陥部が配設されていない両端に接続されるとともに、アース電極となることを特徴とする、請求項11に記載の形状記憶合金を用いた駆動機構。
【請求項13】
前記磁気ラッチ部自体が着磁されていることを特徴とする、請求項11に記載の形状記憶合金を用いた駆動機構。
【請求項14】
前記磁気ラッチ部の裏側に磁石を備えていることを特徴とする、請求項11に記載の形状記憶合金を用いた駆動機構。
【請求項15】
前記磁気ラッチ部が、さらに、磁気センサを備えていることを特徴とする、請求項11~14の何れかに記載の形状記憶合金を用いた駆動機構。
【請求項16】
形状記憶合金を用いた駆動機構と、この駆動機構により駆動される駆動部と、を備えた内視鏡であって、
先端部に、光源からの光を導光する光ファイバーと、上記駆動機構により駆動されるレンズとが配設されており、
上記駆動機構は、
互いに軸方向に直列に接続された第1及び第2の形状記憶合金コイルと、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルに接続される磁性体材料からなる駆動部材と、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルに電流を供給する駆動回路と、
上記駆動部材を保持するための磁気ラッチ部と、を含み、
上記磁気ラッチ部が、軸方向に互いに隔置された複数個の凹陥部を含み、該凹陥部の領域に磁気が付与されており、
上記駆動回路により上記第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動して加熱し、
加熱された第1又は第2の形状記憶合金コイルが収縮又は伸張することにより上記駆動部材を上記磁気ラッチ部の複数個の凹陥部に沿って移動させ、上記駆動部材を上記磁気ラッチ部に磁気吸着させることにより固定保持し、
上記レンズが上記駆動機構の磁性体材料からなる駆動部材に固着され、その位置が駆動制御されることを特徴とする、内視鏡。
【請求項17】
形状記憶合金を用いた駆動機構と、この駆動機構により駆動される駆動部と、を備えた液体注入機であって、
液室と、上記駆動機構によって駆動されるシリンジと、を備え、
上記駆動機構は、
互いに軸方向に直列に接続された第1及び第2の形状記憶合金コイルと、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルに接続される磁性体材料からなる駆動部材と、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルに電流を供給する駆動回路と、
上記駆動部材を保持するための磁気ラッチ部と、を含み、
上記磁気ラッチ部が、軸方向に互いに隔置された複数個の凹陥部を含み、該凹陥部の領域に磁気が付与されており、
上記駆動回路により上記第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動して加熱し、
加熱された第1又は第2の形状記憶合金コイルが収縮又は伸張することにより上記駆動部材を上記磁気ラッチ部の複数個の凹陥部に沿って移動させ、上記駆動部材を上記磁気ラッチ部に磁気吸着させることにより固定保持し、
上記シリンジが上記駆動機構の磁性体材料からなる駆動部材に固着され、その位置が駆動制御されることを特徴とする、液体注入機。
【請求項18】
形状記憶合金を用いた駆動機構と、この駆動機構により駆動される駆動部と、を備えた光学装置であって、
上記駆動機構は、
互いに軸方向に直列に接続された第1及び第2の形状記憶合金コイルと、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルに接続される磁性体材料からなる駆動部材と、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルに電流を供給する駆動回路と、
上記駆動部材を保持するための磁気ラッチ部と、を含み、
上記磁気ラッチ部が、軸方向に互いに隔置された複数個の凹陥部を含み、該凹陥部の領域に磁気が付与されており、
上記駆動回路により上記第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動して加熱し、
加熱された第1又は第2の形状記憶合金コイルが収縮又は伸張することにより上記駆動部材を上記磁気ラッチ部の複数個の凹陥部に沿って移動させ、上記駆動部材を上記磁気ラッチ部に磁気吸着させることにより固定保持し、
上記光学装置の駆動部が上記駆動機構の磁性体材料からなる駆動部材に固着され、その位置が駆動制御されることを特徴とする、形状記憶合金を用いた駆動機構を備える光学装置。
【請求項19】
前記光学装置の駆動部は、光ファイバーの駆動部であることを特徴とする、請求項18に記載の形状記憶合金を用いた駆動機構を備える光学装置。
【請求項20】
前記光学装置の駆動部は、レンズの駆動部であることを特徴とする、請求項18に記載の形状記憶合金を用いた駆動機構を備える光学装置。
【請求項21】
形状記憶合金を用いた駆動機構を備えるカテーテルであって、
上記駆動機構は、
互いに軸方向に直列に接続された第1及び第2の形状記憶合金コイルと、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルに接続される磁性体材料でなる駆動部材と、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルに電流を供給する駆動回路と、
上記駆動部材を保持するための磁気ラッチ部と、を含み、
上記磁気ラッチ部が、軸方向に互いに隔置された複数個の凹陥部を有し、該凹陥部の領域に磁気が付与されており、
上記駆動回路により上記第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動して加熱し、
加熱された第1又は第2の形状記憶合金コイルが収縮又は伸張することにより上記駆動部材を上記磁気ラッチ部の複数個の凹陥部に沿って移動させ、上記駆動部材を上記磁気ラッチ部に磁気吸着させることにより固定保持することを特徴とする、形状記憶合金を用いた駆動機構を備えたカテーテル。
【請求項22】
形状記憶合金を用いた少なくとも一つの駆動機構と、
これらの駆動機構の各駆動部材の先端の領域にて、上記駆動機構の上に配置され、各駆動部材が垂直に貫通する貫通孔を備えた取り外し可能な表示シートと、
各駆動部材の先端に着脱可能に取り付けられた表示ピンと、を備えており、
上記駆動機構が、互いに軸方向に直列に接続される第1及び第2の形状記憶合金コイルと駆動部材及び固定部材との複数組を共通の一つの基板に対して配置したモジュールとを複数備え、
上記固定部材が上記基板に設けられた開口部に配置され、
上記第1及び第2の形状記憶合金コイルが上記固定部材を介して上記駆動部材に接続され、
上記第1の形状記憶合金コイルの一端と第2の形状記憶合金コイルの一端とは、それぞれ上記基板に設けられたアース電極パターンに接続され、
上記第1の形状記憶合金コイルの他端と第2の形状記憶合金コイルの他端とは、上記基板に設けられた共通電極配線パターンに接続され、
上記表示シートは板状の磁石から構成され、
上記表示ピンは、上端と下端が磁性体により構成され、中間が非磁性体により構成されており、
上記基板に設けられた駆動回路が、上記第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動し、上記駆動された第1又は第2の形状記憶合金コイルが加熱されて伸張又は圧縮することにより上記駆動部材が軸方向に沿って移動するようになっていて
上記表示ピンが、上記各駆動部材の軸方向移動量に応じて上記表示シートにラッチされるとともに、上記表示ピンを上記表示シートの磁力で上記駆動部材から脱離させ、表示シートに保持させることを特徴とする、形状記憶合金を用いた駆動機構を備える表示シート書き込み装置。
【請求項23】
前記モジュールの駆動回路を制御する制御部を備え、
上記制御部は、前記表示ピンの前記表示シートからの突出量を制御することを特徴とする、請求項22に記載の形状記憶合金を用いた駆動機構を備える表示シート書き込み装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
本発明は、形状記憶合金を用いた駆動機構と、この駆動機構を備える各種の装置に関するものである。
【背景技術】
コンピュータや携帯電話等の普及により、所謂パソコン通信やインターネット,電子メール等の文字や図形情報の電子化が急速に進んでいる。
このような情報社会において、視覚障害者が情報を取得するための手段としては、音声合成や電子式点字ディスプレイ等を補完的に使用することが望ましいとされている。電子式点字ディスプレイにおいては、従来利用されている所謂6点点字が採用されている。しかし、視覚障害者のうち、このような6点点字を解読できるのは、約1割程度である。これは、例えば糖尿病等を原因とする中途失明者が高齢者を中心に増加していることに起因しており、高齢者の場合、点字を習得するためには多大な努力を必要とすることから、途中で点字の習得を断念してしまうのである。
これに対して、中途視覚障害者の情報伝達手段の一つとして、能動的に移動するピンを二次元平面上に垂直に並べて、文字の形状(墨字)や図形情報を各ピンの移動、即ち凸位置及び凹位置の情報として表示できるようにした触覚ディスプレイが知られている。上述の電子式点字ディスプレイや触覚ディスプレイにおけるピンの駆動手段として、例えば電磁アクチュエータや静電引力,圧電アクチュエータ等の駆動手段が採用されており、これらの駆動手段により各ピンを凸位置又は凹位置に移動させるように構成されている。例えば駆動手段として電磁アクチュエータを使用したものは下記文献1に開示されており、また駆動手段として圧電アクチュエータを使用したものは、例えば下記文献2に開示されている。
しかしながら、下記文献1においては、コイルにより生ずる電磁力に基づいてピンを駆動させるようになっていることから、小型化するとコイルも小型になってしまうので、電磁力も弱くなってしまう。また、コイル巻線に細線を使用した場合には、コイルの電気抵抗が大きくなって、消費電力が増大してしまう。下記文献2の場合には、例えば駆動手段として板状の圧電バイモルフ素子によりピンを1mm以上変位させるためには、圧電バイモルフ素子自体が大きくなってしまい、触覚ディスプレイ自体が大型化してしまうと共に、駆動電圧が比較的高いという問題があった。
これに対して、駆動電力を低減し構造を単純化した点字ピン駆動装置が、下記文献3により開示されている。この点字ピン駆動装置は、形状記憶合金コイルを利用して、例えば通電時の伸長動作によりピンを変位させると共に、二つの変位位置、即ち凸位置及び凹位置にて、ピンに取り付けられたストッパが固定配置された磁石板に当接し磁気吸着されることにより固定保持される。
しかしながら、下記文献3による点字ピン駆動装置では、各ピンの立体的な組立構造が複雑になってしまい、組立時のピンの位置決めが困難であった。
文献1: 特開2002-207418号公報
文献2: 特開平6-301335号公報
文献3: 特開2001-265213号公報
ところで、上述した各文献1から3におけるピンの駆動方式においては、ピンは、例えば点字規格に近い2.5mmピッチ程度の間隔で配置されていると共に、凸位置と凹位置との間を駆動手段によって駆動され、凸位置又は凹位置にて固定保持されるようになっている。したがって、前述した6点点字を表わすことは可能であるが、例えばドットマトリックス状に配置された多数のピンにより図形表示を行なうような場合には、より細かい表現を行なうためにはより狭いピッチが好ましい。また各ピンがその軸方向に関して複数位置で固定保持されるようになっていると、多値表示ができ、所謂グラデーションの表現を行なうことが可能になる。
しかしながら、上述した各特許文献1から3におけるピンの駆動方式においては、何れも各ピンをより狭いピッチで配置したり、軸方向に関して複数位置で固定保持するようには構成されていない。また、多数のピンにより図形表示を行なうような場合、各ピンをそれぞれ電磁アクチュエータによる駆動装置で駆動させる場合、表示速度が遅くなってしまうと共に、動作音が比較的大きくなってしまうという課題がある。
【発明の開示】
本発明は、以上の点に鑑み、簡単な構成により、小型に構成し得ると共に、動作変位量が大きく、特に容易に集積化して高速動作が可能であり、さらに好ましくはピンを多段階で固定保持し得るようにした形状記憶合金を用いた駆動機構及びそれを備えるディスプレイ装置並びにそれを備える書き込み装置など各種の装置を提供することを目的とする。
上記目的は、本発明の第一の構成によれば、互いに軸方向に直列に接続された第1及び第2の形状記憶合金コイルと駆動部材と固定部材とが共通の一つの基板に対して配置されたモジュールと、駆動部材を保持するための磁気ラッチ部と、第1及び第2の形状記憶合金コイルに電流を供給する駆動回路と、を備え、駆動部材が、第1及び第2の形状記憶合金コイルに接続されて軸方向に延び、磁気ラッチ部は、磁石板と駆動部材に設けられた複数の磁性体とからなっており、駆動回路により第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動して加熱し、加熱された第1又は第2の形状記憶合金コイルが収縮又は伸張することにより駆動部材を軸方向に沿って移動させ、駆動部材を磁気ラッチ部に磁気吸着させることにより軸方向に固定保持することを特徴とする、形状記憶合金を用いた駆動機構により、達成される。
上記構成によれば、形状記憶合金を用いた駆動機構において、駆動部材が、第1又は第2の形状記憶合金コイルを加熱して収縮又は伸張することにより、軸方向に移動され得る。そして、駆動部材が軸方向に移動すると、磁気ラッチ部により駆動部材が軸方向のラッチ位置に固定保持される。したがって、形状記憶合金コイルと駆動部材とは、形状記憶合金コイルの各電極が駆動回路の配線パターンに接続されるだけで駆動機構が構成され、簡単な構成により容易に且つ低コストで組み立てられる。駆動部材の移動位置における固定保持は磁気ラッチ部により行なわれるので、常時形状記憶合金コイルに通電することなく各駆動部材が固定保持されるため、消費電力が低減され、ランニングコストが削減される。各駆動部材は、複数個の磁性体に対応した軸方向位置に固定保持されることから、従来の点字ディスプレイ装置のような凸位置及び凹位置の二段階ではなく、より多段階の軸方向位置に固定保持される。
磁気ラッチ部の磁石板は、好ましくは、駆動部材が非接触で貫通する貫通孔を備え、この磁性体が駆動部材の軸方向に互いに隔置されていて、磁石板が駆動部材の軸方向に着磁されている。駆動部材が軸方向の対応するラッチ位置に固定保持され、また、磁石板が駆動部材の軸方向に着磁されているので、複数個の駆動部材が一つの磁石板にそれぞれ設けられた貫通孔に挿通されても、各貫通孔にて同じ着磁状態が得られる。
したがって、複数個の駆動機構を並べて配置する場合に、各駆動部材の間に磁石を配置する必要がなく簡単な構成とすることができる。これにより、各駆動機構をより狭いピッチで配置することが可能であり、全体としてより一層小型に構成し得る。磁気ラッチ部を構成する磁石板は基板と別体であることから、複数の基板を組み合わせる場合、各基板を垂直に並べた後、その上に磁石板を載置すればよいので、組立分解が容易に行なわれ、メンテナンス性が向上する。
また、本発明の形状記憶合金を用いた駆動機構は、互いに軸方向に直列に接続される第1及び第2の形状記憶合金コイルと駆動部材及び固定部材とを共通の一つの基板に対して配置したモジュールと、駆動部材を保持するための磁気ラッチ部とを複数組で備え、第1及び第2の形状記憶合金コイルは、第1の形状記憶合金コイルの自然長部とその伸張部又は圧縮部と、第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部とその自然長部と、の順に直列接続されており、第1及び第2の形状記憶合金コイルのそれぞれの、自然長部の一端と伸張部又は圧縮部の一端との直列接続部が、基板に設けられた開口部に配置される固定部材を介して駆動部材に接続され、第1及び第2の形状記憶合金コイルと駆動部材と固定部材とが基板と接触することなく、かつ、移動可能に基板にほぼ平行に保持され、第1の形状記憶合金コイルの自然長部の他端と第2の形状記憶合金コイルの自然長部の他端とが、それぞれ基板に設けられたアース電極パターンに接続され、第1の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の他端と第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の他端とが、基板に設けられた共通電極配線パターンに接続され、磁気ラッチ部は磁石板と複数の磁性体とを含み、磁石板は駆動部材が非接触で貫通する貫通孔を備え、磁性体が軸方向に互いに隔置され、基板に設けられた駆動回路が、第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動し、駆動された第1又は第2の形状記憶合金コイルが加熱されて伸張又は圧縮することにより駆動部材が軸方向に沿って移動し、駆動部材が、磁気ラッチ部に磁気吸着されて軸方向に多段階に固定保持されることを特徴としている。
この構成によれば、共通の基板及び共通の磁石板に対して、複数組の第1及び第2の形状記憶合金コイル,駆動部材及び固定部材が配置されることから、各組間のより狭いピッチが実現可能である。
本発明による形状記憶合金を用いた駆動機構は、好ましくは、駆動回路がシフトレジスタを有し、このシフトレジスタにより複数組の第1及び第2の形状記憶合金コイルが電流駆動される。一つの駆動回路を使用してシフトレジスタによりデータを送出し、複数組の第1及び第2の形状記憶合金コイルを電流駆動することができるので、全体の構成がより簡略化されコストが低減される。また、駆動回路からシリアルデータを送出して、各組の第1及び第2の形状記憶合金コイルを電流駆動できるので、高速で各組の第1及び第2の形状記憶合金コイルを駆動することがでる。さらにデータ転送用の配線が一本でよく、複数個のシフトレジスタを接続する場合でも所謂カスケード接続することによって、データ転送用の配線を増やす必要はなく、簡単な構成で済む。
形状記憶合金を用いた駆動機構は、好ましくは、磁気ラッチ部が、駆動部材に配置された一つ又は複数個の磁性体と、この磁性体の変位領域に対向して軸方向に互いに隔置された複数個の凹陥部を備えたラッチ部材とから構成されており、ラッチ部材の凹陥部の領域に磁気が付与されている。従って、駆動部材が軸方向に移動すると、駆動部材上に配置された磁気ラッチ部の磁性体が、ラッチ部材に配置された複数の凹陥部の何れか一つの中にて磁気吸着されることにより、駆動部材が軸方向の対応するラッチ位置に固定保持される。
また、上記目的は、本発明の第二の構成によれば、形状記憶合金を用いた少なくとも一つの駆動機構と、これらの駆動機構の各駆動部材の先端の領域にて磁石板に平行に配置され各駆動部材が垂直に貫通する貫通孔を有する表示シートと、さらにデータが入力される制御部と、を備え、上記駆動機構が、互いに軸方向に直列に接続される第1及び第2の形状記憶合金コイルと駆動部材及び固定部材とを共通の一つの基板に対して配置したモジュールと、駆動部材を保持するための磁気ラッチ部と、を複数組で備え、第1及び第2の形状記憶合金コイルは、第1の形状記憶合金コイルの自然長部とその伸張部又は圧縮部と、第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部とその自然長部と、の順に直列接続されており、第1及び第2の形状記憶合金コイルのそれぞれの、自然長部の一端と伸張部又は圧縮部の一端との直列接続部が、基板に設けられた開口部に配置される固定部材を介して駆動部材に接続され、第1及び第2の形状記憶合金コイルと駆動部材と固定部材とが基板と接触することなく、かつ、移動可能に基板にほぼ平行に保持され、第1の形状記憶合金コイルの自然長部の他端と第2の形状記憶合金コイルの自然長部の他端とが、それぞれ基板に設けられたアース電極パターンに接続され、第1の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の他端と第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の他端とが、基板に設けられた共通電極配線パターンに接続され、磁気ラッチ部は磁石板と複数の磁性体とを含み、磁石板は駆動部材が非接触で貫通する貫通孔を備え、磁性体が軸方向に互いに隔置され、基板に設けられた駆動回路が、第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動し、駆動された第1又は第2の形状記憶合金コイルが加熱されて伸張又は圧縮することにより駆動部材が軸方向に沿って移動し、駆動部材が、磁気ラッチ部に磁気吸着されて、軸方向に多段階に固定保持されるようになっていて、データに対応する各駆動部材の突出量による表示を行なうことを特徴とする上記駆動機構を備えるディスプレイ装置により、達成される。
上記第二の構成によれば、形状記憶合金を用いた駆動機構を少なくとも一つ使用して、これらの駆動機構における駆動部材の先端の表示シート表面からの突出量に基づいて、各駆動部材の突出量の組合せによって、例えば点字表示等の表示を行なうことができる。この場合、各駆動部材を一旦移動させた後は、各駆動機構の第1及び第2の形状記憶合金コイルの駆動電流が不要であることから、消費電力が少なくて済む。また、各駆動部材の間の間隔をより狭くすることができるので、より小型の表示を行なうことができる。さらに、各駆動機構の駆動部材は、複数個の磁性体に対応した軸方向位置に固定保持されることから、従来の点字ディスプレイ装置における凸位置及び凹位置のような二段階の表示ではなく、より多段階の軸方向位置における表示シート上の突出量に基づいて階調表示を行なうことが可能になる。
上記駆動機構における各駆動部材の先端は、好ましくは、表示シート表面にてドットマトリックス状に配置されている。駆動部材の配置間隔とその数とを増大させることで、高解像度の図形表示を行なうことが可能である。
さらに、上記目的は本発明の第三の構成によれば、上述した第二の構成からなる少なくとも一つの駆動機構と、これらの駆動機構の各駆動部材の先端の領域にて、磁石板に平行に配置され、各駆動部材が垂直に貫通する貫通孔を備えた取り外し可能な表示シートと、各駆動部材の先端に着脱可能に挿入される表示ピンと、さらにデータを入力して表示シート上にデータに対応する各表示ピンの突出量による書き込みを行なう制御部とを備えており、表示ピンを各駆動部材の軸方向移動量に応じて表示シートにラッチさせるとともに、表示ピンをラッチ部の磁力で駆動部材から脱離させ、表示シートに固定保持させることを特徴とする上記駆動機構を備える表示シート書き込み装置により、達成される。この表示シート書き込み装置により、データが書き込まれる表示シートが得られる。
上記第三の構成によれば、各駆動部材の突出量の組合せによって、表示シートの磁石板に表示ピンをラッチさせて、点字等の表示を書き込むことができる。表示ピンは磁石板にラッチされているので不揮発であるため、いつでもデータを触って検知できる。表示シートは書き込み装置から取り外しができるので、同様の表示シートに書き込みが可能となり、表示シートを印刷紙のように扱うことができる。そして、表示シートのデータを検知した後は、表示ピンが突出していない状態に戻せば、データを消去できる。
本発明の形状記憶合金を用いた駆動機構の他の態様は、互いに軸方向に直列に接続された第1及び第2の形状記憶合金コイルと、第1及び第2の形状記憶合金コイルに接続される磁性体材料からなる駆動部材と、第1及び第2の形状記憶合金コイルに電流を供給する駆動回路と、駆動部材を保持するための磁気ラッチ部とを備えており、磁気ラッチ部が、軸方向に互いに隔置された複数個の凹陥部を有し、凹陥部の領域に磁気が付与されており、駆動回路により第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動して加熱し、加熱された第1又は第2の形状記憶合金コイルが収縮又は伸張することにより駆動部材をラッチ部材の複数個の凹陥部に沿って移動させ、駆動部材を磁気ラッチ部に磁気吸着させることにより固定保持することを特徴とする。
上記構成において、好ましくは、第1及び第2の形状記憶合金コイルは、それぞれ伸張部又は圧縮部からなり、第1及び第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の一端同士が直列接続されており、第1及び第2の形状記憶合金コイルの直列接続部が、前記駆動部材に接続されるとともに共通電極となり、第1及び第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の直列接続されていない両端が、ラッチ部材の複数個の凹陥部が配設されていない両端部に接続されるとともにアース電極となる。この構成によれば、磁性体材料からなる駆動部材が形状記憶合金コイルの伸縮により軸方向に移動すると、ラッチ部材に配置された複数の凹陥部の何れか一つの中にて磁気吸着されて駆動部材が軸方向の対応するラッチ位置に固定保持される。この形状記憶合金を用いた駆動機構を、光ファイバースイッチ、レンズの焦点調節機構、液体注入機、多数のミラーを選択的に駆動できるマトリックス型光スイッチなどの各種装置に搭載すると、極めて有利な各種の装置が実現できる。
本発明による形状記憶合金を用いた駆動機構は、好ましくは、凹陥部が湾曲して配置されている。従って、駆動部材の移動に伴ってその磁性体が湾曲した凹陥部に沿って移動し、何れかの凹陥部内に磁気吸着されて、対応するラッチ位置に固定保持されるので、駆動部材が湾曲して並んで配置されたラッチ位置の何れかに固定保持され、例えば湾曲した部材におけるラッチ機構を実現することが可能である。
前記駆動機構の凹陥部は、湾曲可能に構成されていてもよい。この場合、駆動部材の移動に伴ってその磁性体が湾曲可能に配置された凹陥部に沿って移動し、何れかの凹陥部内に磁気吸着されて、対応するラッチ位置に固定保持されるので、駆動部材が湾曲可能に配置されたラッチ位置の何れかに固定保持され、例えば湾曲可能なカテーテル等のチューブにおけるラッチ機構を実現することが可能である。
前記ラッチ部材が磁気センサを備えている場合は、駆動部材の移動や設定に伴って、その磁性体が移動した位置を磁気センサにより検知できる。また、駆動部材の位置設定により、その位置の入力装置としても使用できる。
さらに、本発明の駆動機構を備える光学装置は、形状記憶合金を用いた駆動機構と、この駆動機構により駆動される駆動部とを備え、上記駆動機構は、互いに軸方向に直列に接続された第1及び第2の形状記憶合金コイルと、第1及び第2の形状記憶合金コイルに接続される磁性体材料からなる駆動部材と、第1及び第2の形状記憶合金コイルに電流を供給する駆動回路と、駆動部材を保持するための磁気ラッチ部とを含み、磁気ラッチ部が、軸方向に互いに隔置された複数個の凹陥部を有し、凹陥部の領域に磁気が付与されており、駆動回路により第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動して加熱し、加熱された第1又は第2の形状記憶合金コイルが収縮又は伸張することにより駆動部材を上記ラッチ部材の複数個の凹陥部に沿って移動させ、駆動部材を磁気ラッチ部に磁気吸着させることにより固定保持し、光学装置の駆動部が駆動機構の磁性体材料からなる駆動部材に固着され、その位置が駆動制御されることを特徴とする。上記光学装置の駆動部は、好ましくは光ファイバーの駆動部又はレンズの駆動部である。
上記構成によれば、上記駆動機構を使用して、これらの駆動機構における駆動部材のラッチ位置に基づいて、光学装置の光ファイバーやレンズの駆動を行なうことができる。この場合、各駆動部材を一旦移動させた後は、各駆動機構の第1及び第2の形状記憶合金コイルの駆動電流が不要であることから、消費電力が少なくて済む。何れの場合も、多段階で、かつ、動作変位量が大きいので、光ファイバーによる光スイッチやレンズの焦点調整装置などに使用でき、これらの光学装置の駆動機構を小型、かつ高密度に集積化することができる。
さらに、本発明の駆動機構を備えるカテーテルは、形状記憶合金を用いた駆動機構が、互いに軸方向に直列に接続された第1及び第2の形状記憶合金コイルと、第1及び第2の形状記憶合金コイルに接続される磁性体材料からなる駆動部材と、第1及び第2の形状記憶合金コイルに電流を供給する駆動回路と、駆動部材を保持するための磁気ラッチ部とを含み、磁気ラッチ部が、軸方向に互いに隔置された複数個の凹陥部を有し、凹陥部の領域に磁気が付与されており、駆動回路により第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動して加熱し、加熱された第1又は第2の形状記憶合金コイルが収縮又は伸張することにより駆動部材をラッチ部材の複数個の凹陥部に沿って移動させ、駆動部材を磁気ラッチ部に磁気吸着させることにより固定保持されれることを特徴とする。
上記構成によれば、上記駆動機構を使用して、カテーテルの駆動を駆動部材のラッチ位置に基づいてカテーテル先端部の駆動や内視鏡の駆動を行なうことができる。この場合、各駆動部材を一旦移動させた後は、各駆動機構の第1及び第2の形状記憶合金コイルの駆動電流が不要であることから、消費電力が少なくて済む。
本発明によれば、形状記憶合金コイルを用いた駆動機構において、形状記憶合金コイルが電気的及び機械的に接続されるとともに、形状記憶合金コイルに固定し駆動される各駆動機構の駆動部材は、複数個の磁性体に対応した軸方向位置に固定保持、すなわちラッチできる。このラッチ状態が、形状記憶合金コイルに電流を流さなくとも保持されるので、低消費電力である。そして、従来の凸位置及び凹位置のような二段階の表示ではなく、軸方向位置におけるより多段階の階調表示を行なうことが可能になる。
また、駆動部材が形状記憶合金コイルの変位に平面的に構成されることで小型化されるので集積化が容易である。また、細い形状記憶合金コイルが使用できるので、低電流動作により低消費電力化でき、さらに、表面積/体積の比が小さくなり加熱、放熱の時定数が短くなり高速で動作する。
上記駆動機構を備えるディスプレイ装置は、上記形状記憶合金コイルを用いた駆動機構をモジュール化して、一次元又は二次元配置の軸方向位置におけるより多段階の階調表示ができ、低消費電力で、かつ、高速に動作する。
上記駆動機構を備える表示シート書き込み装置は、上記の形状記憶合金コイルを用いた駆動機構をモジュール化して、一次元又は二次元配置の軸方向位置における、より多段階の階調表示ができ、データを取り外し可能な表示シートに書き込むことができ、低消費電力で、かつ、高速に動作する。
上記駆動機構を備えた光学装置は、光ファイバーやレンズなどの光学内の駆動部品を駆動することができ、低消費電力で、かつ、高速に動作する。
上記駆動機構を備えたカテーテルは、カテーテルの各種駆動機構を駆動することができ、低消費電力で、かつ、高速に動作する。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明による第1の実施の形態である形状記憶合金を用いた駆動機構の構成を説明する図である。
図2は、図1の形状記憶合金を用いた駆動機構モジュールにおける磁石板の構成を示し、(A)は部分斜視図、(B)は断面図である。
図3は、形状記憶合金コイルの形状寸法を示す図である。
図4は、第1の実施形態の形状記憶合金を用いた駆動機構の動作を説明する図で、(a)は加熱しない状態、(b)は形状記憶合金コイル2に通電したとき、(c)は形状記憶合金コイル1に通電したときを示している。
図5は、本発明による形状記憶合金を用いた駆動機構の第2の実施形態の構成を示す図である。
図6は、本発明による形状記憶合金を用いた駆動機構の第3の実施形態の要部の構成を示している。
図7は、本発明による形状記憶合金を用いた駆動機構の第3の実施形態の変形例の構成を示す概略斜視図である。
図8は、図7に示した形状記憶合金を用いた駆動機構を利用した光学装置として、光ファイバースイッチの構成を示す概略斜視図である。
図9は、図8に示す光ファイバースイッチの変形例の要部断面図である。
図10は、図8に示した光ファイバースイッチの変形例の斜視図である。
図11は、図7に示した形状記憶合金を用いた駆動機構40を備える光学装置として、焦点調節機構を有する内視鏡48の構成を示す概略斜視透視図である。
図12は、図7に示した形状記憶合金を用いた駆動機構を備える液体注入機の構成を示す概略斜視透視図である。
図13は、本発明による形状記憶合金を用いた駆動機構の第4の実施形態の要部の構成を示す図である。
図14は、図13に示した形状記憶合金を用いた駆動機構を利用して作製したカテーテル屈曲機構の構成を示す概略側面図である。
図15は、本発明による第2の実施形態である形状記憶合金を用いたディスプレイ装置の構成を模式的に示す斜視図である。
図16は、図15の本発明の形状記憶合金を用いたディスプレイ装置における制御部及び各駆動機構モジュールの駆動回路の電気的構成を示すブロック図である。
図17は、本発明の第2の実施形態によるディスプレイ装置の動作時のフローチャートである。
図18は、本発明の形状記憶合金を用いたディスプレイ装置の第2の実施形態の要部を示す図である。
図19は、本発明による形状記憶合金を用いたディスプレイ装置の第3の実施形態の要部を示す図である。
図20は、本発明による形状記憶合金を用いたディスプレイ装置の第4の実施形態の要部を示す図である。
図21は、本発明による形状記憶合金を用いたディスプレイ装置の第5の実施形態の要部を示す図である。
図22は、本発明の第3の実施形態の形状記憶合金を用いた表示シート書き込み装置の(a)構成と、(b)データが書き込まれた表示シートを模式的に示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面に示した実施形態に基づいて、この発明を詳細に説明する。各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
最初に、本発明の形状記憶合金を用いた駆動機構の第1の実施の形態を説明する。
図1及び図2は本発明の形状記憶合金を用いた駆動機構の第1の実施の形態を示し、図1は当該駆動機構における駆動機構モジュールの構成を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。図1において、形状記憶合金を用いた駆動機構20は、複数個の駆動機構モジュール20aが一体に組み込まれている。各駆動機構モジュール20aは、それぞれ複数組の第1の形状記憶合金コイル1及び第2の形状記憶合金コイル2と、駆動部材3と、固定部材5と、磁気ラッチ部9と、共通の一つの駆動回路4aを備えた基板4とから構成されている。上記駆動部材3は、隣接する駆動部材3とのピッチが例えば1.27mmに選定される。上記基板4は、その下縁に駆動機構20内の接続部に接続するための端子部4bを備えている。この端子部4bを介して、基板4が後述する制御部に接続される。上記基板4は、第1の形状記憶合金コイル1,第2の形状記憶合金コイル2,駆動部材3及び固定部材4を包囲するカバー14を備えていてもよい。
上記基板4はプリント基板等であって、第1の形状記憶合金コイル1及び第2の形状記憶合金コイル2が挿入される開口部12を有していると共に、その表面には、これら第1の形状記憶合金コイル1及び第2の形状記憶合金コイル2に対して電流を供給するための配線パターン11及び駆動回路を接続するための配線パターン(図示せず)が形成されている。上記第1の形状記憶合金コイル1,第2の形状記憶合金コイル2,駆動部材3及び固定部材4は、基板4と非接触で移動可能に、基板4に対してほぼ平行に保持されている。上方の第1の形状記憶合金コイル1及び下方の第2の形状記憶合金コイル2は、互いに直列接続されている。第1の形状記憶合金コイル1と第2の形状記憶合金コイル2とのそれぞれに、駆動部材3が固定部材5を介して接続されている。
上記第1の形状記憶合金コイル1は上方の自然長部1aと下方の伸張部1bとが直列接続されていて、この直列接続部が第1の形状記憶合金コイルの直列接続部1cである。同様に、上記第2の形状記憶合金コイル2は、下方の自然長部2aと上方の伸張部2bとが直列接続されていて、この直列接続部が第2の形状記憶合金コイルの直列接続部2cである。上記第1の形状記憶合金コイル1の伸張部1bと第2の形状記憶合金コイル2の伸張部2bとは互いに接続されて共通電極15となる。この共通電極15は基板4上の共通電極配線パターン11aに接続されている。上記第1の形状記憶合金コイル1の自然長部1aの一端はアース電極配線パターン11bに接続されている。上記第2の形状記憶合金コイル2の自然長部2aの一端はアース電極配線パターン11cに接続されている。
したがって、共通電極配線パターン11aに電流源の一方の端子を接続し、アース電極配線パターン11b又は11cに上記電流源の他方の端子を接続することによって、第1の形状記憶合金コイル1又は第2の形状記憶合金コイル2のそれぞれに電流を供給して加熱することができる。上記駆動回路4aにより第1の形状記憶合金コイル1,第2の形状記憶合金コイル2への電流供給を選択的に切り替え制御することができる。
上方の第1の形状記憶合金コイル1に電流が供給されると、この第1の形状記憶合金コイル1の伸張部1bが加熱により収縮され、駆動部材3が下方に変位する。また、下方の第2の形状記憶合金コイル2に電流が供給されると、この第2の形状記憶合金コイル2の伸張部2bが加熱により収縮され、駆動部材3が上方に変位する。
上記駆動部材3は、図示の場合、軸方向(図1にて上下方向)に延びる例えば丸棒や角棒等の線状部材により形成されており、第1の形状記憶合金コイル1及び第2の形状記憶合金コイル2のそれぞれに、固定部材5を介して接続されている。各駆動部材3はその上端がより大径のピン3aとして形成されている。
次に、本発明の形状記憶合金を用いた駆動機構の磁気ラッチ部について説明する。
図2は図1の形状記憶合金を用いた駆動機構モジュールにおける磁石板の構成を示し、(a)は部分斜視図、(b)はA-A方向の断面図である。図2に示すように、磁気ラッチ部9は、基板4の上方に配置された磁石板9cと、二つの磁性体チューブ9a,9bとを含んでいる。磁石板9cは、各駆動機構20に対して共通に設けられており、すべての駆動機構に対して一つ又は適宜に分割された複数個の駆動機構に対して一つ備えられる。磁石板9cは、基板4に対してスペーサ9dにより所定間隔で保持されると共に、各駆動機構の駆動部材3が非接触で貫通するように設けられた複数個の貫通孔9eを備えており、図示の場合、上方がN極,下方がS極となるように、上下方向に着磁されている(図2(a)の上下方向の矢印参照)。上記磁石板9cは、その上側に、下方に変位した駆動部材3のピン3aを包囲する高さの外枠9fを備えている。上記磁気ラッチ部9による駆動部材3の磁気吸着による固定保持力は、第1及び第2の形状記憶合金コイル1,2の駆動力より小さく選定されている。
磁性体チューブ9a,9bは、駆動部材3の基板4の上縁から上方に延びる部分と駆動部材の先端との間の領域、すなわち、ピン3aの下方にて軸方向に隔置して駆動部材3に取り付けられている。磁性体チューブ9a,9bは、例えば鉄,ニッケル等から構成されており、駆動部材3に対して固定されている。上記磁気ラッチ部9は、基板4の上方に配置されていて、基板4とは別体に構成されている。
駆動部材3が上下方向に移動したとき、駆動部材3に取り付けられた磁性体チューブ9a又は9bが磁石板9cに設けられた対応する貫通孔9e内にて磁気吸着されることにより、ラッチ位置となる磁石板9cに固定保持される。これにより、駆動部材3は、第1の形状記憶合金コイル1又は第2の形状記憶合金コイル2への通電による下方又は上方への変位によって、磁気ラッチ部9によりラッチ位置に保持される。このため、第1の形状記憶合金コイル1又は第2の形状記憶合金コイル2には、駆動部材3の変位保持のために通電し続ける必要がない。
図1においては、左方から1番目及び3番目の駆動部材3の磁性体チューブ9bがラッチ位置に固定保持されており、左方から2番目及び4番目の駆動部材3の磁性体チューブ9aがラッチ位置に固定保持されている。上記磁気ラッチ部9の磁石板9cは、スペーサ9d及び外枠9fと共に一体に構成されており、駆動機構20のメンテナンス等の際に基板4から分離可能である。
次に、本発明に用いる形状記憶合金について説明する。形状記憶合金としては、Ti-Ni合金やCu-Zn-Al合金がよく使用される。形状記憶合金は、加熱により熱エネルギーが運動エネルギーに変換されて元の形状に伸張又は収縮する。このときの変位量を大きくするためには、線状よりもコイル状にして使用するのが効果的である。
図3は、形状記憶合金コイルの形状寸法を示す図である。コイルは、ピッチP、平均径D、素線径d、巻き数nで、自然長部分でL1、引き伸ばされた部分でL2の寸法を有している。
ここで、コイルの変位となる歪量(%)の最大値は、次の(1)式で表わされる。
γmax=dδ/nd*(P+(πD)-1/2×100(%) (1)
δは、形状記憶合金コイルの自然長からの圧縮量である。
形状記憶合金コイルの加熱による発生力Fは、次の(2)式で表わされる。
=πd*(G-G)/(8nD)*(P+(πD)-1/2*δ (2)
及びGは、それぞれ、室温と加熱(例えば140℃)したときの横弾性係数である。
形状記憶合金コイルの繰り返し寿命はコイルに生じている歪量で決定される。コイルの繰り返し寿命は、歪量が1%でおよそ10回程度、2%では10回程度となっている。したがって、形状記憶合金コイルの形状は、上記式などと、繰り返し寿命を考慮して、その歪量、即ち変位量や発生力を計算すればよい。
本発明の第1の実施形態の形状記憶合金を用いた駆動機構は、次のように動作する。
図4は本発明の第1の実施形態による形状記憶合金を用いた駆動機構の動作を説明するもので、(a)は加熱しない状態、(b)は形状記憶合金コイル2に通電したとき、(c)は形状記憶合金コイル1に通電したときを示し、ラッチ部は示していない。図4(b)に示すように、第2の形状記憶合金コイル2においては、電流源13の正端子が共通電源配線パターン11aに接続されると共に、その負端子がアース電極パターン11cに接続され、電流が印加されて第2の形状記憶合金コイル2がその抵抗と流れる電流によるジュール熱によって発熱する。この発熱により、第2の形状記憶合金コイル2の自然長よりも引き伸ばされた伸張部2bが縮み自然長部2aが引き伸ばされるので、形状記憶合金コイルを固定する固定部材5に接続された駆動部材3は収縮し紙面の上方へ移動する。電流を停止しても、駆動部材3はラッチ部9(図1)によりその位置が保持される。
次に、図4(c)において、電流源13の正端子と共通電源配線パターン11aとを接続したままで、電流源13の負端子をアース電極配線パターン11bに切り換えると、第1の形状記憶合金コイル1が加熱される。この発熱により、第1の形状記憶合金コイル1の自然長よりも引き伸ばされた伸張部1bが縮み、自然長部1aが引き伸ばされるので、形状記憶合金コイルを固定する固定部材5に接続された駆動部材3は収縮し紙面の下方へ移動する。電流を停止しても、駆動部材3はラッチ部9(図1)によりその位置が保持される。
電流源13の正端子が共通電極配線パターン11aに常時接続しているので、電流源13の負端子をアース電極配線パターン11b又は11cに切り替えることで、駆動部材3は上下に移動し、図示するようにΔYという移動即ち変位が生じる。ΔYの変位が生じる場合には、ΔYの差を0か1に対応させることで、二値のデジタル表示に使用することができる。電流を流さない状態と第1の形状記憶合金コイルに電流を流した状態とではΔY1の変位差が生じ、また、第2の形状記憶合金コイルに電流を流した状態とではΔY2の変位差が生じる。
本発明の第1の実施形態の形状記憶合金を用いた駆動機構20によれば、駆動部材3は磁性体チューブ9a,9bを備えていて、各形状記憶合金コイル1,2にパルス的に電流を流したときに生じる変位が直ちにラッチされるので、その変位を保持するための電流が不要となる。これにより、形状記憶合金を用いた駆動機構20の駆動部材3に変位を与えるための消費電力を著しく低減できる。
以上の説明においては、磁性体チューブ9a,9bが2個で変位が2値、すなわち2段の場合を説明してきた。駆動部材の変位をさらに多段階とするためには、変位段数に応じてラッチされる磁性体チューブの個数を増やせばよい。形状記憶合金コイルの多段階の変位を得るためには、それらへの通電量も変化させればよい。このように、駆動部材、形状記憶合金コイルの長さなどを調整してその変位量を調整することができ、所望の動作変位量とすることができると共に、この動作変位量を大きくすることが容易にできる。
図4に示した形状記憶合金を用いた駆動機構20を、90°回転させると、駆動部材3の変位は、紙面の左右方向の変位が得られる。この形状記憶合金を用いた駆動機構20の配置は、使用目的に応じて変更することができる。
上記では、第1又は第2の形状記憶合金コイルの伸張部1b,2bが加熱されて収縮することにより駆動部材3が変位する場合について説明したが、上記第1及び第2の形状記憶合金コイルの伸張部1b,2bを自然長よりも圧縮された圧縮部として構成してもよい。この場合には、第1又は第2の形状記憶合金コイルの圧縮部が加熱されて伸張することで駆動部材3を変位させることができる。
本発明の上記第1の実施形態による形状記憶合金を用いた駆動機構20は、第1及び第2の形状記憶合金コイル1,2と駆動部材3とを基板4上の平面に配置しているので、従来例の特許文献3の形状記憶合金コイルを用いたピンの駆動装置が三次元的な構造であるのに対して、1枚の基板で駆動機構が構成でき、部品点数が少なくなり、組み立てが容易である。
また、形状記憶合金コイルの駆動機構20の各部材を基板4上に構成できるので、形状記憶合金コイル1,2の直径をより小さくでき、形状記憶合金コイル1,2の抵抗が断面積に逆比例して大きくなるので加熱に要する電流が減少する。形状記憶合金コイル1,2の直径を従来例の特許文献3より小さくできるので、形状記憶合金コイル1,2の熱容量が減り、加熱を短時間で行うことができ、それと同時に、形状記憶合金コイル1,2の体積と表面積の比(体積/表面積)が小さくなるので、通電加熱により形状記憶合金コイル1,2内にたまった熱の外気への放熱が速やかに行われる。
よって、従来の形状記憶合金コイルを用いたピンの駆動機構に対して、本発明では装置を小型化でき、動作変位量を大きくし、より少ない電力で、かつ、高速に駆動させることできると共に、低コストで製造できる。
次に、本発明の形状記憶合金を用いた駆動機構の第2の実施形態を説明する。
図5は、本発明による形状記憶合金を用いた駆動機構の第2の実施形態の構成を示している。図5において、形状記憶合金を用いた駆動機構30は、基本的には図1に示した駆動機構モジュール20aと同じ構成であり、磁気ラッチ部9の代わりに、磁気ラッチ部31を備えている点でのみ異なる構成である。
磁気ラッチ部31は、上記駆動部材3の基板4の上縁から上方に延びる部分にて、駆動部材3に取り付けられた一つ又は複数の磁性体チューブ32と、この磁性体チューブ32の変位領域に対向して軸方向に互いに隔置された二つの凹陥部33a,33bを備えたラッチ部材33と、から構成されている。上記磁性体チューブ32は、図5にて紙面に垂直方向に延びるほぼ円筒状に形成されており、駆動部材3に対して固定されている。上記ラッチ部材33は、その凹陥部33a,33bを備えた面とは反対側の面に、磁石34を備えている。上記ラッチ部材33は、基板4がカバー36を備えている場合には、このカバー36の上端に接続され、あるいはカバー36と一体に構成されていてもよい。磁石34を備える代わりに、ラッチ部材33自体が磁石により構成されていてもよい。
上記形状記憶合金を用いた駆動機構30では、第2の形状記憶合金コイル2に電流が供給されて駆動部材3が下方に変位したとき、駆動部材3に取り付けられた磁性体チューブ32が、ラッチ部材33の第一の凹陥部33aに対向する位置まで変位する。従って、磁性体チューブ32は、その裏側の磁石34の磁力によって第一の凹陥部33a内に磁気吸着され、軸方向に関して固定保持される。これに対して、第1の形状記憶合金コイル1が電流供給されて駆動部材3が上方に変位したとき、駆動部材3に取り付けられた磁性体チューブ32が、ラッチ部材33の第二の凹陥部33bに対向する位置まで変位する。従って、磁性体チューブ32は、その裏側の磁石34の磁力によって第二の凹陥部33a内に磁気吸着され軸方向に固定保持される。
次に、本発明の形状記憶合金を用いた駆動機構の第3の実施の形態を図6を参照して説明する。
図6において、形状記憶合金を用いた駆動機構40は、図5に示した駆動機構30における駆動部材3及び磁性体チューブ32の代わりに、磁性体材料から成るロッド41が設けられており、このロッド41が、固定部材5を介さずに第1及び第2の形状記憶合金コイル1,2の接続部に対して直接にハンダ付け等の固定部5aによって取り付けられていると共に、磁気ラッチ部31のラッチ部材33が、5個の凹陥部33a,33b,33c,33d,33eを備えている点で異なる構成になっている。この場合には、ロッド41が駆動部材を構成する。ロッド41の固定部5aと、第1の形状記憶合金コイル1の固定部5aと、第2の形状記憶合金コイルの固定部5aとには、それぞれ形状記憶合金コイルに給電するためのリード線35a,35b,35cが接続されている。ここで、第1及び第2の形状記憶合金コイル1,2の長手方向を、軸方向と呼ぶことにする。
第1の形状記憶合金コイル1は伸張部又は圧縮部からなり、第2の形状記憶合金コイル2も同様に伸張部又は圧縮部からなり、この第1及び第2の形状記憶合金コイルの伸張部又は圧縮部の一端同士が直列接続されている。第1の形状記憶合金コイル1の伸張部又は圧縮部と第2の形状記憶合金コイル2の伸張部又は圧縮部とは直列接続されている。第1の形状記憶合金コイル1の伸張部又は圧縮部の一端と第2の形状記憶合金コイル2の伸張部又は圧縮部の一端との直列接続部が、固定部5aを介してロッド41に接続されて共通電極となりリード線35aが接続されている。
さらに、直列接続される第1及び第2の形状記憶合金コイル1,2の両端、すなわち、第1及び第2の形状記憶合金コイル1の伸張部又は圧縮部の各他端が、それぞれ、ラッチ部材33の凹陥部33a乃至33eが配設されていない両端部の上面に、ハンダ付け等の固定部5aにより接続されている。第1及び第2の形状記憶合金コイル1,2の各他端には、それぞれ、リード線35b,35cが接続されアース電極となっている。凹陥部の寸法の一例としては、その溝幅が2mm程度、溝深さは1mm程度である。ロッド41の直径は1mmから2mm程度とすればよい。
上記駆動機構40によれば、第1及び第2の形状記憶合金コイルを選択的に電流駆動して加熱し、加熱された第1又は第2の形状記憶合金コイルが収縮又は伸張することによりロッド41をラッチ部材33の複数個の凹陥部33a乃至33eに沿う方向、すなわち軸方向に移動させ、ロッド41を磁気ラッチ部31に磁気吸着させることにより固定保持することができる。凹陥部の寸法や数、形状記憶合金コイルの長さなどを調整して、軸方向の変位量を調整することができるので、所望の動作変位量とすることができ、この動作変位量を大きくすることが容易にできる。このため、第1及び第2の形状記憶合金コイル1,2の選択的な電流供給及びその通電量によって、ロッド41を、凹陥部33a~33e方向で多段階に変位させることができる。このロッド41が、その変位された位置に対応する凹陥部33a乃至33eの何れかの中に磁石34の磁力によって磁気吸着されて、凹陥部内に固定保持される。ロッド41は、凹陥部方向に沿って5個の凹陥部33a乃至33e内に選択的に固定保持されて多段階のアクチュエータとして作用し、かつ、動作変位量を大きくすることができる。
図7は、本発明による形状記憶合金を用いた駆動機構の第3の実施形態の変形例の構成を示す概略斜視図である。図7に示すように、ラッチ部材33はそれ自体が磁石から構成されていてもよい。
図8は、図7に示した形状記憶合金を用いた駆動機構40を利用した光学装置として、光ファイバースイッチ44の構成例を示す概略斜視図である。図8に示すように、ロッド41を中空円筒状に形成して、光ファイバー42の一端を保持すると共に、ラッチ部材33の各凹陥部33a乃至33eに対向する位置に、それぞれ他の光ファイバー43a乃至43eの一端を配置した、光ファイバースイッチ45を構成することもできる。第1及び第2の形状記憶合金コイル1,2の選択的な電流供給及びその通電量によって、ロッド41を凹陥部33a乃至33e方向で多段階に変位させて、何れかの凹陥部33a乃至33e内に固定保持すると、ロッド41に保持された光ファイバー42の一端が、他の光ファイバー43a乃至43eの何れかの端部に対向して、光学的に接続される。
図9は、図7に示した形状記憶合金を用いた駆動機構40や図8に示した光ファイバースイッチ44の変形例の要部断面図である。図9に示すように、形状記憶合金を用いた駆動機構46において、ラッチ部材33の凹陥部33a乃至33eとは反対側に磁気センサアレイ45を配置して、各磁気センサ45a乃至45eをそれぞれ上記凹陥部33a乃至43eに対応させるようにしてもよい。ロッド41が固定保持された凹陥部33a乃至33eに対応する磁気センサ45a乃至45eはこのロッド41を検知して、ロッド41がどの凹陥部33a乃至33eに切り替えられているかを検出することができる。また、この形状記憶合金を用いた駆動機構46は、ロッド41の凹陥部の位置を指で任意の位置にすれば、その凹陥部、すなわちラッチ位置を磁気センサアレイ45で検知できるので、ラッチ位置のセンサとしても使用できる。ロッド41の凹陥部の位置設定により、その位置の入力装置としても使用できる。
図10は、図8に示した光ファイバースイッチの変形例を示している。図10において、光ファイバースイッチ47は、図8に示した光ファイバースイッチ44とほぼ同じ構成であって、全体として湾曲して扇形に構成されている点でのみ異なる構成である。これに対応して、光ファイバー43a乃至43eも扇形に配置されており、凹陥部33a乃至33eに対向する端部にて、その光軸が放射状に配置される。この構成の光ファイバースイッチ47は、図8に示した光ファイバースイッチ44と同様に動作すると共に、ロッド41に保持された光ファイバー42の一端が、ロッド41の変位によって円弧状を移動する。これにより、これらの対向する光ファイバー端面間の間隔を一定に保持できるとともに、伝達される光強度をも一定とすることができる。
図11は、図7に示した駆動機構40を利用した光学装置として、焦点調節機構を有する内視鏡48を示す概略斜視透視図である。内視鏡の先端部48aに、図示しない発光ダイオード(LED)などの光源からの光を導光する光ファイバー101とレンズ102が配設されていて、このレンズ102が形状記憶合金を用いた駆動機構40により駆動される。レンズ102は、形状記憶合金を用いた駆動機構40の磁性体からなるロッド41に接着剤などにより固着されている。図示のレンズ102は両凸レンズであるが、レンズ102は、平凸形、円筒形、球形などでもよい。
第1及び第2の形状記憶合金コイル1,2の選択的な電流供給及びその通電量によって、ロッド41を凹陥部33a乃至33e方向で多段階に変位させて、何れかの凹陥部33a乃至33e内に固定保持すると、ロッド41に保持されたレンズ102の位置も変化する。このため、形状記憶合金を用いた駆動機構40に保持されたレンズ102により光ファイバーから出射した光の焦点位置103が変化し(図11の矢印A参照)、形状記憶合金を用いた駆動機構40に保持されたレンズ102が焦点調節機構として動作する。図示の場合には、凹陥部を33a乃至33eの5箇所としているが、凹陥部の数やその間隔などは所望の焦点調節が得られるように適宜に設計することができる。正確で低消費電力な焦点調節機構が、形状記憶合金を用いた駆動機構40により実現できる。
図12は、図7に示した駆動機構40を利用した液体注入機49の構成例を示す概略斜視透視図である。図12に示すように、液体注入機は液室105とシリンジ106とで構成されている。シリンジ106の軸は形状記憶合金を用いた駆動機構40により駆動される。シリンジ106の軸は、形状記憶合金を用いた駆動機構40の磁性体からなるロッド41に接着剤などにより固着されている。第1及び第2の形状記憶合金コイル1,2の選択的な電流供給及びその通電量によって、ロッド41を凹陥部33a乃至33e方向で多段階に変位させて、何れかの凹陥部33a乃至33e内に固定保持すると、ロッド41で駆動されるシリンジ106の位置も変化する(図12の矢印B参照)。
形状記憶合金を用いた駆動機構40により駆動されるシリンジ106が矢印Bの左方向に変位した場合には、液室105内の液体が開口部49aより外部へ注入される。一方、シリンジ106が矢印Bの右方向に変位した場合には、液室105外の液体を開口部49aを介して液室105の内部に吸引することができる。図示の場合には、凹陥部を33a乃至33eの5箇所としているが、凹陥部の数やその間隔などは、所望の液体注入又は吸引ができるように適宜に設計することができる。この液体注入機49は、形状記憶合金を用いた駆動機構40のラッチ機構によりシリンジ106の位置が固定されるので、液体の注入が必要なときだけ形状記憶合金を駆動すればよい。正確で低消費電力な液体注入機49が形状記憶合金を用いた駆動機構40により実現できる。この液体注入機49は、例えば液室105内の液体が薬剤の場合には薬剤注入機として使用できる。例えば、薬剤注入機を体内の病変部へ埋め込んでおき、必要に応じて形状記憶合金を用いた駆動機構40を駆動することで、所定量の薬剤を正確に病変部に注入することができる。
次に、本発明の形状記憶合金を用いた駆動機構の第4の実施形態を説明する。図13は、本発明による形状記憶合金を用いた駆動機構の第4の実施形態の要部の構成を示している。図13において、形状記憶合金を用いた駆動機構50は、基本的には図6に示した形状記憶合金を用いた駆動機構40と同じ構成であるが、ラッチ部材33の代わりにラッチ部材51を備えている点で異なる構成になっている。上記ラッチ部材51は、可撓性材料から成るフレキシブルシート52とこのフレキシブルシート52上に形成された磁性体材料又は磁石から成る磁気ラッチ部53から構成されており、各磁気ラッチ部53の間に、5個の凹陥部51a乃至51eが画成されている。これに対応して、ロッド41は磁石又は磁性体材料から構成されている。この形状記憶合金を用いた駆動機構50は、第1及び第2の形状記憶合金コイル1,2の選択的な電流供給によって、ロッド41が凹陥部51a乃至51e方向に変位されると、このロッド41が、その変位された位置に対応する凹陥部51a乃至51eの何れかの中に、磁気ラッチ部53又はロッド41の磁力によって磁気吸着され、その何れかの凹陥部内に固定保持される。ロッド41が、5個の凹陥部51a乃至51e内に選択的に固定保持されることにより、多段階のアクチュエータとして作用する。
図14は、図13に示した駆動機構を利用したカテーテル屈曲機構の構成例を示す概略側面図である。図14に示すように、この形状記憶合金を用いた駆動機構50を、カテーテル54の先端付近に沿って取り付けると共に、ロッド41をカテーテルの屈曲機構(図示せず)の可動部と連結することもできる。カテーテル54の屈曲機構を利用して、その可動部を移動させることにより、カテーテル54の先端付近を屈曲させる際に、形状記憶合金を用いた駆動機構50の作用によって、ロッド41が固定保持されている凹陥部51a乃至51eの何れの位置に基づいても、カテーテル54の屈曲状態を調整することができる。
上述した実施形態においては、本発明の駆動機構40,50を利用したアクチューエータとして、光ファイバースイッチ44,47、レンズの焦点調節機構48、液体注入機49、カテーテル54を説明してきたが、本発明の駆動機構は、上記光学装置やカテーテルなどに限らず各種装置のアクチューエータとして適用できる。何れの場合も、多段階で、かつ、動作変位量が大きいので、高密度の形状記憶合金を用いた駆動機構に用いることで、小型、かつ高密度に集積化することができる。駆動すべき対象は何でもよく、例えば高密度に配置されている多数のミラーの駆動も行うことができる。この場合には、多数のミラーを選択的に駆動できるマトリックス型光スイッチが実現できる。
上述した実施形態では、駆動部材3又はロッド41のラッチ位置は2個,3個又は5個に設定されているが、4個又は6個以上のラッチ位置を備えてもよいことは明らかである。磁気ラッチ部9,31は、磁性体チューブ9a,9b及び磁石板9cの組合せ、又は磁性体チューブ32及び凹陥部を備えたラッチ部材33の組合せから構成されているが、複数個のラッチ位置を備えていれば、他の構成の磁気ラッチ部であってもよい。
次に、本発明の第2の実施の形態による形状記憶合金を用いたディスプレイ装置を説明する。図15は、本発明による第2の実施形態である形状記憶合金を用いたディスプレイ装置の構成を模式的に示す斜視図である。このディスプレイ装置60は、形状記憶合金を用いた駆動機構20とその上に配置された表示シート61と後述する図示しない制御部62とから構成されている。上記表示シート61は、基板4の上方にて磁石板9cの上面に載置されており、磁石板9cの各貫通孔9eに対応した貫通孔61aを有している。表示シート61の表面には、各駆動機構の駆動部材3の上端のピン3aが選択的に突出する貫通孔61aが二次元平面状に、即ちドットマトリックス状に配列される。
図16は、図15の本発明の形状記憶合金を用いたディスプレイ装置における制御部及び各駆動機構モジュールの駆動回路の電気的構成を示すブロック図である。上記制御部62は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ63とこのコンピュータ63から例えばUSB等のインターフェース64を介して制御される制御用CPU65とから構成されており、各駆動回路モジュール20aの駆動回路4aを駆動制御する。コンピュータ63により表示データを作成して、インターフェース64を介して制御用CPU65に送出することにより、制御用CPU65は、上記表示データに基づいて駆動機構20の各駆動機構モジュール20aにおける第1の形状記憶合金コイル1又は第2の形状記憶合金コイル2の駆動制御のためのシリアルデータを生成すると共に、各シフトレジスタ4cのための制御信号を生成する。
制御用CPU65は、各駆動回路4aのシフトレジスタ4cに対して制御信号を送出すると共に、シリアルデータを一番目の駆動回路4aに対して送出する。各駆動回路4aのシフトレジスタ4cが互いに所謂カスケード接続されることによって、上記シリアルデータは、順次に各駆動回路4aのシフトレジスタ4cに対して送出される。したがって、制御用CPU65と駆動回路4との間の配線は、シフトレジスタ4cのための制御信号線と一つのシリアルデータ信号線でよいことから配線数が少なくて済む。各駆動部材3は、例えば1.27mmピッチで配置されているが、点字の表示を行なう場合には、一つ置きの駆動部材3を選択的に移動させることにより、2.5mmピッチの点字表示を行なうことができ、所謂触覚ディスプレイ装置とすることができる。
本発明の第2の実施形態による形状記憶合金を用いたディスプレイ装置60は以下のように動作する。
図17は、本発明の第2の実施形態による形状記憶合金を用いたディスプレイ装置60の動作時のフローチャートである。図17において、ステップST1にて、まず制御部12のコンピュータ63が、前もって作成されている出力データファイルを選択して読み込んで、インターフェース64を介して制御用CPU65に転送する。
制御用CPU65は、読み込んだ出力データファイルに基づいて、ステップST2にて、下方に変位すべき駆動部材3に対応する下方の第2の形状記憶合金コイル2の駆動用データを加工し、続いてステップST3にて、上方に変位すべき駆動部材3に対応する上方の第1の形状記憶合金コイル1を駆動するためのデータを加工する。
ステップST4にて、制御用CPU65は、ステップST2で加工した第2の形状記憶合金コイル2の駆動用データを、各駆動機構モジュール20aの駆動回路4aに転送する。各駆動回路4aは、ステップST5にて、上記駆動用データに基づいて、対応する第2の形状記憶合金コイル2をシフトレジスタ4cを介して順次に駆動すると共に、前もって決められた設定時間の間待機する。
下方に変位すべき駆動部材3は、駆動回路4aから第2の形状記憶合金コイル2に電流供給されることにより下方に変位し、上方に位置する磁性体チューブ9aが磁石板9cに磁気吸着されることにより、下方に変位したラッチ位置に固定保持される。このとき、各駆動回路4aがシフトレジスタ4cを介して第2の形状記憶合金コイル2を順次に駆動することにより、各第2の形状記憶合金コイル2が高速で駆動され、各駆動部材3が高速で下方に変位され得る。
その後ステップST6にて、対応する第2の形状記憶合金コイル2の駆動を停止する。このとき、第2の形状記憶合金コイル2の駆動が停止しても、下方に変位された駆動部材3はそれぞれ磁気ラッチ部9により固定保持される。
ステップST6にて、制御用CPU65は、ステップST3で加工した第1の形状記憶合金コイル1の駆動用データを、各形状記憶合金を用いた駆動機構モジュール20aの駆動回路4aに転送する。各駆動回路4aは、ステップST7にて、上記駆動用データに基づいて、対応する第1の形状記憶合金コイル1をシフトレジスタ4cを介して順次に駆動すると共に、前もって決められた設定時間の間待機する。
上方に変位すべき駆動部材3は、駆動回路4aから第1の形状記憶合金コイル1に電流供給されて上方に変位し、下方に位置する磁性体チューブ9bが磁石板9cに磁気吸着されて上方に変位したラッチ位置に固定保持される。このとき、各駆動回路4aがシフトレジスタ4cを介して第1の形状記憶合金コイル1を順次に駆動すると、各第1の形状記憶合金コイル1が高速で駆動され、各駆動部材3が高速で上方に変位され得る。
ステップST8にて、対応する第1の形状記憶合金コイル1の駆動を停止する。このとき、第1の形状記憶合金コイル1の駆動が停止しても、上方に変位された駆動部材3はそれぞれ磁気ラッチ部9により固定保持される。
以上で、一回の駆動機構20の駆動制御が完了し、表示シート61の表面にて、選択された駆動部材3のピン3aが所定量だけ突出し、突出したピン3aにより図形等の二次元表示が行なわれる。そして、再び前述したステップST1に戻り、上記動作が繰返し行なわれて順次に二次元表示が連続して行なわれる。なお、表示シート61は取り外し可能にしてもよい。表示シート61を取り外しても駆動部材3のピン3aは磁気ラッチ部9により保持されているので、ピン3aからなる凹凸表示は失われない。
次に、本発明の形状記憶合金を用いたディスプレイ装置の第2の実施形態を図18を参照して説明する。この形状記憶合金を用いたディスプレイ装置70は、上述した形状記憶合金を用いたディスプレイ装置60の変形例であって、表示シート61が磁気ラッチ部9の磁石板9cと兼用するように構成されている。この場合、上記表示シート61は、その表面領域が上下方向に着磁された板状の磁石から構成されていると共に、その下方には非磁性体から成る下板61bが配置されており、板状の磁石及び下板61bは、駆動部材3のピン3aを非接触で受容し得る貫通孔61aを備えている。また、駆動部材3のピン3aの上端3b及び下端3cが磁性体により構成され、中間が非磁性体3iにより構成されている。この構成によれば、図18にて左方から1番目及び3番目の駆動部材3のように、駆動部材3が下方に変位したとき、ピン3aの上端の磁性体3bが板状の磁石(磁石板9c)に磁気吸着されると共に、ピン3aの下方領域が上記下板61aの厚さの範囲内に収まる。また、図18にて左方から2番目,4番目及び5番目の駆動部材3のように、駆動部材3が上方に変位したとき、ピン3aの下端の磁性体3bが板状の磁石(磁石板9c)に磁気吸着されると共に、ピン3aの上方領域が表示シート61の表面から上方へ突出する。
本発明の形状記憶合金を用いたディスプレイ装置の第3の実施形態を図19を参照しつつ説明する。図19(a)に示すように、形状記憶合金を用いたディスプレイ装置80は、上述したディスプレイ装置70の変形例であって、さらに、表示シート61の上に非磁性の上板61cを有している。図19(b)に示すように駆動部材のピン3aが指66で押し下げられても、駆動部材のピン3aの上部位置は、上板61cの表面位置と同じであり、それ以上下方へは押し込まれない。駆動部材の非磁性体3iのB-Bで示す中心位置が磁性体である表示シート61よりも上に位置するようにした場合には(図7(c)参照)、指を離した後は磁力により再び元の位置にラッチさせることができる。
本発明による形状記憶合金を用いたディスプレイ装置の第4の実施形態について図20を参照して説明する。この形状記憶合金を用いたディスプレイ装置90は、基本的には図15に示した形状記憶合金を用いたディスプレイ装置60と同様の構成であるが、磁気ラッチ部9が、駆動部材3の基板4の上縁から上方に延びる部分にて、軸方向に隔置して駆動部材3に取り付けられた複数個、図示の場合、3個の磁性体チューブ9a,9b及び9gを備えることにより、多段階のラッチ位置を有している点で異なる。制御用CPU65は、各駆動機構モジュール20aの各駆動部材3を下方,中間及び上方に変位するように形状記憶合金コイルに印加する電流値を変化させ、第1及び第2の形状記憶合金コイル1,2の駆動制御を行なうことにより、各駆動部材3が、それぞれ磁性体チューブ9a,9b,9gの何れかが磁石板9cにより磁気吸着され、各ラッチ位置に固定保持される。こうして、形状記憶合金を用いたディスプレイ装置90は、各駆動部材3のピン3aが、表示シート61の表面にて三段階で突出することにより、三階調の表示を行なうことができる。
本発明の形状記憶合金を用いたディスプレイ装置の第5の実施形態を図21を参照して説明する。この形状記憶合金を用いたディスプレイ装置100は上述したディスプレイ装置70又は80の変形例であって、表示シート61が、磁気ラッチ部9の磁石板9cと兼用するように構成されていると共に、駆動部材3のピン3aの上端から下端3までの間の5箇所が磁性体3hにより構成され、それらの中間が非磁性体3iにより構成されている。図21に示されているように、駆動部材3は、そのピン3aの各磁性体3hがそれぞれ板状の磁石(磁石板9c)に磁気吸着されて各ラッチ位置に固定保持される。したがって、形状記憶合金を用いたディスプレイ装置90は、各駆動部材3のピン3aが表示シート11の表面にて5段階で突出することで5階調の表示を行なうことができる。
本発明の形状記憶合金を用いたディスプレイ装置によれば、駆動部材3は磁性体3b,3c,3hを備えていて、各形状記憶合金コイル1,2にパルス的に電流を流したときに生じる変位が直ちにラッチされるので、その変位を保持するための電流が不要となる。これにより、形状記憶合金を用いた駆動機構20の駆動部材に変位を与えるための消費電力を著しく低減できる。このため、2次元に配置されているピン3aの高さを多段階に駆動すれば、例えば地図における山の形などを少ない消費電力で、かつ、高精度、高速に3次元に表示できる3次元ディスプレイを実現することができる。また、複数のピン3aを一列に高密度に配置することで、例えば様々な箇所が動く遊戯具などの表示器や各種スイッチが実現できる。
本発明の形状記憶合金を用いたディスプレイ装置によれば、従来例の特許文献3の形状記憶合金コイルを用いたピンの駆動装置が三次元的な構造であるのに対して、基板1枚で駆動機構が構成できる。このため部品点数が少なくなり組み立てが容易にできる。このようにして、従来の形状記憶合金コイルを用いたディスプレイ装置に対して装置を小型化でき、より少ない電力で、かつ、高速に駆動させることできると共に、低コストで製造できる。
次に、本発明の第3の実施形態の形状記憶合金を用いた駆動機構を備えた表示シート書き込み装置について説明する。
図22は、本発明による第3の実施形態である形状記憶合金を用いた表示シート書き込み装置の(a)構成と(b)データが書き込まれた表示シートを模式的に示す図である。この形状記憶合金を用いた表示シート書き込み装置110は、形状記憶合金を用いた駆動機構モジュール20bとその上に配置された取り外し可能な表示シート111と表示ピン112と図示しない制御部62とから構成されている。形状記憶合金を用いた駆動機構モジュール20bは、取り外し可能な表示シート111を備えている以外は、形状記憶合金を用いた駆動機構20aと基本的には同じ構成である。
表示シート111は、非磁性体からなる上板113及び下板115と磁気ラッチ部となる磁石板114とが一体に構成され、駆動部材3に対応する位置には孔部113a,114a,115aが開口されている。駆動部材3のそれぞれには紙面上部方向、すなわち軸方向に表示ピン112が着脱可能に挿入されている。例えば、駆動部材3の最上部に開口部が設けられ、表示ピンの下部112cが着脱できるように嵌めこまれていればよい。表示ピン112は、磁性体チューブ112a,112bが配設されていて、他の部分を非磁性体としておけばよい。
上記表示シート書き込み装置110において、データに基づいて制御部62により駆動部材3が駆動されると、駆動部材3に接続された表示ピン112の磁性体チューブ112a,112bが、表示シート111の磁石板114にラッチされると共に、磁力により駆動部材3から脱離する。この状態で、表示シート110を形状記憶合金を用いた駆動機構モジュール20bから分離する。表示シート111には、表示ピン112がデータに応じて上下方向に配列され、データが凹凸状態で書き込まれる(図22(b)参照)。表示シート111のデータを検知した後は、表示ピン112を突出していない元の状態に戻せば、データを消去できる。
この駆動部材3や駆動機構や制御部62の構成は、上記形状記憶合金を用いたディスプレイ装置と同様である。表示ピンの構成は、磁性体チューブの数により所望の多値表示とすることができる。上記形状記憶合金を用いた表示シート書き込み装置110によれば、表示シート111に点字データや画像データを書き込むことができる。また、このようにして作製された表示シート111は、表示ピン112がラッチされているので不揮発データであり、書き込み後いつでも触ったり、保管しておくことができる。そして、表示シート111のデータ読取り後は、データの再書き込みや漏洩防止のためにデータの消去もできる。さらに、表示シートは書き込み装置から取り外しができるので、表示シートを印刷紙のように扱うことができる。
【実施例】
図1に示す構造の形状記憶合金を用いた駆動機構20を用い、図15及び図16に示した、10×10の二次元表示ができるディスプレイ装置を試作した。形状記憶合金の素材としては、線形50μmのNi-Ti線を用いた。形状記憶合金コイルの自然長部分として、外径0.2mmで密巻(ピッチなし)の形状記憶合金コイルを作製した。ピン3は、直径0.3mmのピアノ線又は黄銅線を使用した。磁気ラッチ部9の磁石板9cとしてNdFeBを使用し、ピンの磁性体3b,3cにはNiチューブを使用した。
形状記憶合金コイル1又は2への電流駆動の制御信号を120mA/0.3秒としたとき、各駆動部材3をそれぞれ0.3秒で連続的に変位させ、ラッチさせることができた。その際、磁気ラッチ部による保持力は約10gf、変位量は約2mmであった。この駆動部材3の発生力、変位量及び駆動速度は、点字ディスプレイ装置や触針式ディスプレイ装置で要求されるピンの発生力8gf及び変位量0.8mmと駆動速度を満足する値であった。
本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。形状記憶合金コイルの寸法と駆動部材、ラッチ部の構造、またピンの駆動方法などは、その目的に応じて適宜に設計し、製作すればよいことは明らかである。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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