TOP > 国内特許検索 > 気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置 > 明細書

明細書 :気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4843785号 (P4843785)
公開番号 特開2007-230799 (P2007-230799A)
登録日 平成23年10月21日(2011.10.21)
発行日 平成23年12月21日(2011.12.21)
公開日 平成19年9月13日(2007.9.13)
発明の名称または考案の名称 気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置
国際特許分類 C30B  29/04        (2006.01)
C23C  16/27        (2006.01)
FI C30B 29/04 G
C23C 16/27
請求項の数または発明の数 26
全頁数 16
出願番号 特願2006-052027 (P2006-052027)
出願日 平成18年2月28日(2006.2.28)
審査請求日 平成21年1月15日(2009.1.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】阿部 利彦
【氏名】高木 敏行
【氏名】内一 哲哉
【氏名】三木 寛之
【氏名】セルギィ・コノブリュック
個別代理人の代理人 【識別番号】100093296、【弁理士】、【氏名又は名称】小越 勇
審査官 【審査官】吉田 直裕
参考文献・文献 特開平07-309697(JP,A)
特開2000-302593(JP,A)
特表2004-529835(JP,A)
調査した分野 C30B 1/00-35/00
C23C 16/00-16/56
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
熱フィラメント法による気相ダイヤモンド膜のコーティング方法において、コーティング装置の内部に、加熱用フィラメント、該加熱用フィラメントの近傍に配置した被コーティング試料及びフィラメント加熱用の上部電極と下部電極を配置し、コーティング装置本体に上部電極を固定すると共に、該上部電極にフィラメントの上端部を固定し、フィラメントの下端部を移動自在な下部電極に固定して、下部電極がフィラメントにより吊持された状態とし、下部電極の重量及びフィラメントの自重によりフィラメントを緊張させると共に、該緊張したフィラメントを通電加熱し、かつダイヤモンド原料となるガスを供給して、ダイヤモンド膜を前記試料にコーティングする気相ダイヤモンド膜のコーティング方法。
【請求項2】
被コーティング試料を装置本体に取り付けられた試料支持台に設置すると共に、下部電極を張りのない導線によって装置本体の電極盤に結合させることを特徴とする請求項1記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法。
【請求項3】
上部電極及び下部電極に細長い縦溝を形成し、この縦溝内に加熱用フィラメントを挿入することを特徴とする請求項1又は2記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法。
【請求項4】
上部電極及び下部電極の周囲に等間隔で2本以上の細長い縦溝を形成し、この縦溝内に加熱用フィラメントを挿入することを特徴とする請求項3記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法。
【請求項5】
上部電極及び/又は下部電極の周囲に、前記縦溝と交差する細長い横溝を1又は複数本形成し、前記縦溝内にフィラメントを配置した後、その上から横溝内に耐熱性の紐を巻いて、縦溝内にフィラメントを上部電極及び/又は下部電極に押し付け、固定することを特徴とする請求項3又は4記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法。
【請求項6】
電極を構成する材料として、合金鋼若しくは銅、モリブデン、チタン、タングステン又はこれらを主成分とする合金を使用することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法。
【請求項7】
下部電極にさらに錘を取り付け、該錘により張力を調整することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法。
【請求項8】
被コーティング試料及び試料台を下部電極に取り付け、被コーティング試料及び試料台を下部電極の重量及びフィラメントの自重によりフィラメントを緊張させることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法。
【請求項9】
フィラメントにかかる張力を100gから3kg/mmに調整することを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法。
【請求項10】
平面形状が円、楕円形、三角形、正方形、矩形、多角形を呈している上部電極及び下部電極を使用することを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法。
【請求項11】
上部電極及び下部電極から突き出たフィラメントの上下余剰端部を束ねることを特徴とする請求項4~10のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法。
【請求項12】
上部電極及び下部電極を、複数に分割された等形の複数の電極部材とこれを支持する電極支持板から構成し、この電極部材の最外周にフィラメントを挿入する溝を形成し、さらに電極支持板上で前記電極部材相互が一点を中心にしてスライド可能に支持し、前記電極部材相互の拡張及び縮小によって、電極部材の周囲に配置したフィラメント相互及び被コーティング試料との距離を調節することを特徴とする請求項4~10のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法。
【請求項13】
電極支持板に電極の中心から外周方向に向かう細長いねじ孔又は貫通孔を設け、この孔に電極部材固定用ねじ又はボルト等の固定具を貫通させて、電極部材を電極支持板の任意の位置に固定することを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法。
【請求項14】
熱フィラメント法による気相ダイヤモンド膜のコーティング装置において、コーティング装置の内部に、加熱用フィラメント、該加熱用フィラメントの中央に配置した被コーティング試料及びフィラメント加熱用の上部電極と下部電極を配置し、コーティング装置本体に上部電極を固定すると共に、該上部電極にフィラメントの上端部を固定し、フィラメントの下端部を移動自在な下部電極に固定して、下部電極がフィラメントにより吊持された状態とし、下部電極の重量及びフィラメントの自重によりフィラメントを緊張させると共に、該緊張したフィラメントを通電加熱し、かつダイヤモンド原料となるガスを供給して、ダイヤモンド膜を前記試料にコーティングする気相ダイヤモンド膜のコーティング装置。
【請求項15】
被コーティング試料は装置本体に取り付けられた試料支持台に設置され、下部電極は張りのない導線によって装置本体の電極盤に結合していることを特徴とする請求項14記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング装置。
【請求項16】
上部電極及び下部電極に細長い縦溝が形成されており、その縦溝内に加熱用フィラメントが挿入されていることを特徴とする請求項14又は15記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング装置。
【請求項17】
上部電極及び下部電極の周囲に等間隔で2本以上の細長い縦溝が形成されており、その縦溝内に加熱用フィラメントが挿入されていることを特徴とする請求項16記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング装置。
【請求項18】
上部電極及び/又は下部電極の周囲に、前記縦溝と交差する細長い横溝が1又は複数本形成されており、前記縦溝内にフィラメントを配置した後、その上から横溝内に耐熱性の紐を巻いて、縦溝内にフィラメントを上部電極及び/又は下部電極に押し付け、固定することを特徴とする請求項17記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング装置。
【請求項19】
電極を構成する材料が、合金鋼若しくは銅、モリブデン、チタン、タングステン又はこれらを主成分とする合金であることを特徴とする請求項14~18のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング装置。
【請求項20】
下部電極にさらに錘を設け、該錘により張力を調整することを特徴とする請求項14~19のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング装置。
【請求項21】
被コーティング試料及び試料台を下部電極に取り付け、被コーティング試料及び試料台を下部電極の重量及びフィラメントの自重によりフィラメントを緊張させることを特徴とする請求項14~20のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング装置。
【請求項22】
フィラメントにかかる張力が100gから3kg/mmであることを特徴とする請求項14~21のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング装置。
【請求項23】
上部電極及び下部電極は、それぞれ平面形状が円、楕円形、三角形、正方形、矩形、多角形を呈していることを特徴とする請求項14~22のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング装置。
【請求項24】
上部電極及び下部電極から突き出たフィラメントの上下余剰端部は、束ねられていることを特徴とする請求項14~23のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング装置。
【請求項25】
上部電極及び下部電極が、複数に分割された等形の複数の電極部材とこれを支持する電極支持板からなり、この電極部材の最外周にフィラメントを挿入する溝が形成され、さらに電極支持板上で前記電極部材相互が一点を中心にしてスライド可能に支持されており、電極部材相互の拡張及び縮小によって、電極部材の周囲に配置したフィラメント相互及び被コーティング試料との距離を調節することを特徴とする請求項14~24のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング装置。
【請求項26】
電極支持板に電極の中心から外周方向に向かう細長いねじ孔又は貫通孔が設けられており、この孔に電極部材固定用ねじ又はボルト等の固定具を貫通させ、電極部材を電極支持板の任意の位置に固定することを特徴とする請求項14~25のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元形状試料にダイヤモンド膜をコーティングするために、熱フィラメント法による気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは硬さ、熱伝導率、ヤング率などが物質中で最高の値を示すので工業材料として広く利用されている。粒あるいは粉末の工業用ダイヤモンドは大掛かりな装置を用いる超高圧高温法で生産されている。
一方、気相成長法によれば比較的簡単な装置を用いて、水素ガスで希釈したメタンなどの炭化水素ガスからダイヤモンド膜が得られる。ダイヤモンドの気相合成で必要な条件は、
(1)減圧された原料ガスを2000°Cに加熱すること、
(2)材質によって異なるがコーティングする基板を700~1000°Cに加熱すること、である。
加熱用熱源としてマイクロ波などの電磁波を用いる場合と、タングステン線などのフィラメントを用いる方法がある。前者は消耗がないのでコーティング工程は極めて簡単であるが、試料形状が平面に限定される特徴がある。後者は真空容器と加熱用電源のみの簡単な装置によって、比較的形状が複雑な試料に気相ダイヤモンドを合成できる特徴がある。
【0003】
熱フィラメント法では、フィラメントを2000°C以上に加熱することによって、ダイヤモンド合成に必要な水素ガスと炭化水素ガスのラジカルを発生する。同時にフィラメントの発熱によって基板を必要な温度に加熱する。
この時にフィラメント周囲に発生するラジカルは、2000°C以上に加熱されたフィラメントから5mm以内の範囲で、ダイヤモンド合成に有効な作用をする。従って、コーティング対象試料はフィラメントから5mm以内に固定して、基板温度が700°C~1000°Cに保持されるようにフィラメントの発熱量を調整する。
この際、コーティング対象試料を回転させることで試料の全面に均一にダイヤモンド膜をコーティングすることが可能と考えられるが、減圧中、高温の細いフィラメント群の中で高温の試料を回転させるには真空シール、断熱、電気絶縁を施した複雑で高価な回転機構が必要である。また、剥離して飛散するダイヤモンド粉末による真空シール不良の問題もある。
【0004】
熱フィラメント法による気相ダイヤモンドコーティングに関しては次の特許文献がある。特許文献1は電磁波によって原料ガスをプラズマ化し、磁界発生コイルを用いてプラズマを細いフィラメント線の周囲に集中することにより気相合成ダイヤモンドをコーティングする方法を記載している。
また、特許文献2ではV型のくぼみを有する2枚以上の基板に気相合成ダイヤモンドをコーティングする方法を記載している。またフィラメントの材料に関して特許文献3は炭素系フィラメントを記載している。
しかしながら、フィラメントにタングステンあるいはタンタルを使用し、大きさの異なる試験片に対して気相ダイヤモンドをコーティングする方法は示されていない。

【特許文献1】特開2000-302593
【特許文献2】特開平08-104582
【特許文献3】特開2003-206196
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、試料、特に3次元形状試料に対して、均一に気相合成ダイヤモンド膜をコーティングすることができる、熱フィラメント法による気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、試料を取り囲むようにしてコーティングする際に、一定の距離にフィラメントを保持することにより、試料表面に均一なダイヤモンド膜をコーティングすることができるとの知見を得た。
本願発明はこの知見に基づき、
1.熱フィラメントによる気相ダイヤモンド膜のコーティング方法又は装置であって、コーティング装置の内部に、加熱用フィラメント、該加熱用フィラメントの近傍に配置した被コーティング試料及びフィラメント加熱用の上部電極と下部電極を配置し、コーティング装置本体に上部電極を固定すると共に、該上部電極にフィラメントの上端部を固定し、フィラメントの下端部を移動自在な下部電極に固定して、下部電極がフィラメントにより吊持された状態とし、下部電極の重量及びフィラメントの自重によりフィラメントを緊張させると共に、該緊張したフィラメントを通電加熱し、かつダイヤモンド原料となるガスを供給して、ダイヤモンド膜を前記試料にコーティングする気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置を、を提供する。
【0007】
これによって、加熱用フィラメントに膨張・収縮があっても、下部電極の重量及びフィラメントの自重による重力によってこれを吸収し、フィラメントにかかる張力が自動的に調整されるので、加熱用フィラメントの変形が防止できる。その結果、試料との間隔及び加熱用フィラメント相互の間隔を一定に保持することができるという優れた効果を有する。
そして、これにより被コーティング材料の均一加熱が容易となるので、コーティング厚さも均一性を維持できるという優れた特徴を有している。
【0008】
上記、加熱用フィラメントの数は、試料となる部品のコーティングする箇所又は被コーティング試料の形状や寸法にもよるが、1本、又は2本以上とすることができる。試料となる部品のコーティングされる箇所は、フィラメントに面する部分となるが、例えば被コーティング材料となる部品の周囲に、4本、6本、8本・・・12本・・など複数の加熱用フィラメントを対象形に配置すると、被コーティング材料となる部品のほぼ全周に、均一にコーティングすることができる。しかし、奇数本であっても、等間隔が維持できれば、特に問題はない。本願発明はこれらを全て包含する。
【0009】
本願の発明は、また
2.被コーティング試料を装置本体に取り付けられた試料支持台に設置すると共に、下部電極を張りのない導線によって装置本体の電極盤に結合させる上記1の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置、を提供する。
被コーティング試料となる部品とその支持台を装置本体に支持されるようにし、下部電極と切り離した構造とすることができる。この場合は、下部電極と切り離されているので、外部から支持台を独立に加熱する構造とすることも可能である。
また、下部電極は、加熱用フィラメントに吊持された構造とするので、下部電極を介して加熱用フィラメントを変形するような力が作用することは極力避ける必要がある。したがって、下部電極には重力だけが作用し加熱用導体の接続はこれに適合した形状、すなわち張りのない銅線とすることが望ましい。
この銅線自体にも重力がかかり、結果として加熱用フィラメントへの錘力として作用することもあるが、全体としてはその量は小さいので殆ど無視できる。
【0010】
本願の発明は、また
3.上部電極及び下部電極に細長い縦溝を形成し、この縦溝内に加熱用フィラメントを挿入する上記1又は2記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置、を提供する。
細線である加熱用フィラメントの保持は極めて重要である。この加熱用フィラメントに給電した2000°C以上に発熱させるのであるが、発熱により加熱用フィラメントが膨張及び変形し易い。これを避けるために、加熱用フィラメントに重力を発生させ、膨張及び変形を吸収させるが、複数の加熱用フィラメントを整列させること及び上部電極との接続が重要となる。
【0011】
このために、上部電極の周囲に配列する加熱用フィラメントの必要数の縦溝を等間隔に形成し、その溝に加熱用フィラメントを挿入して固定するのが好ましい。これによって、加熱用フィラメントの等間隔の整列と電気的接続が容易となる。予め立て溝を多く形成しておき、必要な本数を適宜選択できるようにしておくこともできる。立体的な形状を有する部品にコーティングする場合には、複数の加熱用フィラメントを使用するのが特に有用である。本願発明は、これらの構造を全て含む。
【0012】
本願の発明は、また
4.上部電極及び/又は下部電極の周囲に、前記縦溝と交差する細長い横溝を1又は複数本形成し、前記縦溝内にフィラメントを配置した後、その上から横溝内に耐熱性の紐を巻いて、縦溝内にフィラメントを上部電極及び/又は下部電極に押し付け、固定する上記3記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置、を提供する。
細線である加熱用フィラメントの保持は、上記の通り極めて重要である。加熱用フィラメントに錘力がかかるので、これを上部電極との接触を十分に行う必要がある。この場合横溝を設けて、それに耐熱性の紐を巻きつけて固定するのが有効である。しかし、この方法は好適な固定手段を説明するものであって、他の手段を用いることを妨げるものではない。また、試料を回転することなく装置が簡単であるという特徴もある。
【0013】
本願の発明は、また
5.電極を構成する材料として、合金鋼若しくは銅、モリブデン、チタン、タングステン又はこれらを主成分とする合金を用いるのが特に有用である。本発明は、これらの金属を用いた上記1~4のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置、を提供する。
上部電極及び下部電極は耐熱性と導電性を必要とする。上記電極材は好適な材料である。しかし、耐熱性と導電性を備えていれば、他の電極材料の使用を妨げるものではない。
【0014】
本願の発明は、また
6.下部電極にさらに錘を設け、該錘により張力を調整することを特徴とする上記1~5のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置、を提供する。上記の通り、フィラメントに張力を作用させて変形及び膨張を吸収するものであるが、重量が不足する場合には、錘をさらに付加することができる。
【0015】
本願の発明は、また
7.被コーティング試料及び試料台を下部電極に取り付け、被コーティング試料及び試料台を下部電極の重量及びフィラメントの自重によりフィラメントを緊張させることを特徴とする上記1~6のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置、を提供する。
前記2においては、被コーティング試料及び試料台を装置本体に固定したものを説明したが、この被コーティング試料及び試料台を下部電極に設置しても良い。この場合は、加熱用フィラメントにその重量が加算される。
【0016】
本願の発明は、また
8.フィラメントにかかる張力を100gから3kg/mmとする上記1~7のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置、を提供する。加熱用フィラメントにかかる張力によって、その変形及び膨張を吸収するものであるが、破断しない程度の張力をかける必要がある。経験的に上記の張力が望ましいと言える。しかし、これは加熱用フィラメントの種類と寸法(径)にもよるので、上記数値の範囲外であっても、その状況に応じて、変更できることは言うまでもない。本願発明は、これらを全て包含する。
【0017】
本願の発明は、また
9.平面形状が円、楕円形、三角形、正方形、矩形、多角形を呈している上部電極及び下部電極を用いる上記1~8のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置、を提供する。
上部電極及び下部電極の形は特に制限がないが、加熱用フィラメントを所定位置に寸法精度良く配置する役割を担うので、上記の形状とするのが特に望ましい。しかし、この形状に特に制限されるものではなく、状況に応じて、他の形状に変更できることは言うまでもない。本願発明は、これらを全て包含する。
【0018】
本願の発明は、また
10.上部電極及び下部電極から突き出たフィラメントの上下余剰端部を束ねられていることを特徴とする上記1~9のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置、を提供する。
フィラメント束ねることは、それほど重要なことではないが、フィラメントの電極への固定力をますことができるので、望ましいことである。しかし、これは任意に選択できるもので、特にこの形態に制限されるものではない。
【0019】
本発明は、また
11.上部電極及び下部電極を、複数に分割された等形の複数の電極部材とこれを支持する電極支持板から構成し、この電極部材の最外周にフィラメントを挿入する溝を形成すると共に、さらに電極支持板上で前記電極部材相互が一点を中心にしてスライド可能に支持し、前記電極部材相互の拡張及び縮小によって、電極部材の周囲に配置したフィラメント相互及び被コーティング試料との距離を調節する上記1~10のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置、を提供する。
この装置の機能は重要である。この場合、加熱用フィラメントを保持する電極板が拡張と縮小が可能であれば、試料の大きさに応じて、また加熱用フィラメントの相互間の距離及び配列した加熱用フィラメントの径を任意に変更できるという著しい効果がある。この場合、上部電極と下部電極の位置は整列させることが必要である。
【0020】
本発明は、また
12.電極支持板に電極の中心から外周方向に向かう細長いねじ孔又は貫通孔を設け、この孔に電極部材固定用ねじ又はボルト等の固定具を貫通させ、電極部材を電極支持板の任意の位置に固定する上記1~11のいずれかに記載の気相ダイヤモンド膜のコーティング方法及び装置、を提供する。
電極とは別に、電極と同形か又はそれよりも少しサイズの小さい電極支持板を設け、この上で、上下の電極板をスライドさせて上部電極又は下部電極の径を拡張又は縮小させた後、ねじ止め又はボルトナットにより固定することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の熱フィラメントによるダイヤモンド膜形成方法及び装置は次のような特性と効果を有し、現在用いられている一般の熱フィラメントによるダイヤモンド膜形成装置よりも、ダイヤモンド膜のコーティング試料の形状に対して、汎用性と柔軟性に富むという優れた効果を有する。
(1)複数の加熱用フィラメントを使用した場合、その中央に被コーティング試料を配置することで、回転機構なしに3次元形状の被コーティング試料にダイヤモンド膜をコーティングすることができ、試料のサイズに合せてフィラメントの距離、間隔、本数、太さを選ぶことによって、試料の温度を調整できる。
(2)フィラメントは加熱時に熱膨張すると共に、使用中に炭化するなどの物理的な変化がおき、このため張力を加えなければ変形によってフィラメントと試料間の距離が変化するが、本発明においては、下部電極自体の重量、電極のフィラメント、フィラメントの近傍又は中央に置かれる被コーティング試料となる部品及び試料支持台などをフィラメントに吊持する構造とする場合には、これらの重量は全て、フィラメントに張力として作用するので、コーティング中にフィラメントの変形を防止し、均一なダイヤモンド膜のコーティングが達成することができる。
【0022】
(3)上下の電極にフィラメントを配列した後に、上下電極を滑らせてわずかに引き離すと、電極が滑って各フィラメントの長さを同じに揃えることができる。
(4)フィラメントを固定するための上下電極にスライド機構をもたせることで、大きさの異なる試料に合せてフィラメントと試料との距離を調整することができる。
(5)中心から外周に向かって細長い孔を設けることで、スライドが容易に達成でき、固定具によって固定することで、電極と電極部の電気的接触を良好にする。
【0023】
(6)配列させたタングステンやタンタル細線に電流を流して高温に加熱するにはフィラメントと上部、下部電極の電気的接続を良好な状態に保つ必要があるが、電極板の長さ方向に沿って細い溝を掘り、この中にフィラメントを配列した後で、耐熱合金細線あるいは金属薄板を巻きつけてフィラメントを固定することで、電極板と良好な電気的接触が達成される。
なお、このための方法として、ドリル孔にフィラメントを通してボルトで固定することが考えられるが、2000°Cに加熱される熱フィラメント法の場合はボルトが焼け付くので使用できない。また、靴ヒモのように小孔にフィラメントを一度ずつ通す方法は接触抵抗が大きく、また、タングステン線は硬いので実施が容易ではない。さらに小孔に何度もフィラメントを巻きつけると電気的な接触は向上するが、この方法によって多数の硬いフィラメントを同じ長さで固定することは困難である。したがって、上記が優れた手法であることが容易に理解される。
【0024】
(7)フィラメントにかかる張力を、試料の重量と下部電極自体の重量以外に、おもりを取り付けることで、任意に張力を調節することができる。
(8)張力を調整することで、コーティング中のフィラメントの曲がりや断線を防ぐことができる。
(9)下部電極を装置本体の固定電極と張りのない細い導線の束等により電気的に接続することにより、フィラメントへの張力調整ができる。
(10)電極に銅、合金鋼、モリブデン、チタン、タングステン、を使用することで、その加工が容易になり溝等の形成が容易にできる。
(11)被コーティング試料となる部品とその支持台を装置本体に支持されるようにし、下部電極と切り離した構造とする場合には、下部電極と切り離されているので、外部から支持台を独立に加熱する構造とすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本願発明について、図面を用いて具体的に説明する。なお、以下の図面を用いた説明は、本願発明の理解を容易にするためのものであり、これに制限されるものではない。すなわち、本願発明の技術的思想に基づく任意の変形、装置の機素又は全体の構成の変更は可能であり、本願発明はこられを全て包含する。
【0026】
図1は、代表的なフィラメント法によるダイヤモンド膜形成に用いる装置の概要を説明する図であり、装置の側面図である。本願明細書で説明する場合には、比較的複雑な構造となる複数の加熱用フィラメントを持つ場合について説明する。加熱用フィラメントを1本とする構造は、より簡単な構造となるので、設計変更が容易であることは理解されるであろう。
図1のダイヤモンド膜形成装置は、装置内部に等間隔に6本の加熱用フィラメント1を配置し、被コーティング試料4とその試料4を保持する試料支持台5を加熱用フィラメント1の中央に配置した構造を示す。複数の加熱用フィラメント1を用いる場合には、その本数を、例えば8本、12本など任意の数にすることができる。
【0027】
上部電極2は、装置に設置した給電部材7にロッド6を介して結合している。この給電部材7は、上部電極を固定保持する役割も同時に担っており、剛性のある部材からなる。固定保持する部材と給電部材7を別に分けた構造とすることもでき、いずれを採用してもよく、任意である。
この上部電極2に給電するための装置は特別な構造とする必要はなく、周知の構造の給電装置で十分であり、特に制限はない。
【0028】
下部電極3は、図1に示すように複数本の加熱用フィラメント1により、上部電極2から吊り下がった状態に保持されている。外側から見ると、鳥かご(ケージ)のように見えるようである。下部電極3の下端にはロッド8があり、これに導体18を介して給電部材9に接続する。
符号17は導体18と下部電極12のロッド8との接続具である。下部電極3のロッド8に追加の錘を取り付けることは、図1では示していないが、構造的にそれが可能であることは容易に理解されるであろう。
【0029】
図1では、被コーティング試料4と該試料4を保持する試料支持台5は、周囲の加熱用フィラメント1(ケージ)の中央位置に設置されているが、この場合、被コーティング試料4と試料支持台5は、下部電極3上にある。したがって、この被コーティング試料4と試料支持台5は、下部電極3と同様に、加熱用フィラメント1を下方への張力を発生する錘の役目をする。
【0030】
図1には示していないが、試料支持台5に結合するロッド8を、下部電極3を貫通させて、装置本体に支持させるようにすることもできる。
この場合、被コーティング試料4と試料支持台5は、下部電極3と別体になるので、加熱用フィラメント1を下方への張力を発生する錘の役目はしない。試料支持台5については、装置本体に設置した加熱装置を用いて、補助的な加熱を行うこともできる。これは、必要に応じて設計変更可能である。
【0031】
上部電極2及び下部電極3の外周には、間隔を置いて複数本の溝が設けられている。この溝に加熱用フィラメント1が挿入される。この溝のサイズは加熱用フィラメント1が挿入できる程度の寸法を有していれば良い。この溝に挿入された加熱用フィラメント1は上部電極2及び下部電極3と導通し、給電によりフィラメント1は発熱する。
この場合、溝に加熱用フィラメント1が挿入されるだけでは、上部電極2及び下部電極3との接続が十分でない場合が多い。
【0032】
このため、上部電極2及び下部電極3の外周に横溝を形成し、前記縦溝に加熱用フィラメント1を挿入した後、この横溝に耐熱性の紐10を入れて、前記縦溝に加熱用フィラメント1を縛り付ける。これによって、加熱用フィラメント1と上部電極2及び下部電極3との接続が十分に確保できる。
前記上部電極2及び下部電極3から加熱用フィラメント1の端を延長して突き出させ、これを束ねることにより、より強固な接続を確保することができる。
しかし、これは横溝に入れた紐10で十分な接続が可能であれば、これは不要であり、必要に応じてそのようにすることができる。
上部電極2及び下部電極3の外周に横溝を形成する場合、加熱用フィラメント1の個数で良いが、その個数を増やしたり、減らしたりする場合に対応させて、上部電極2及び下部電極3の外周に、事前に多くの溝を形成しておくこともできる。
【0033】
次に、図2~図6について説明する。これらの図において、図1と同一の機能を持つ機素は、同一の符号を付してある。加熱用フィラメントに接続する電極は、複数に分割された等形(扇形)の上部電極11及び下部電極12と、これを支持する上部電極支持板13及び下部電極支持板14とからなる。
上部電極支持板2は、コーティング装置本体7にロッド6を介して固定されている。分割された等形の上部電極11にスリット16が形成されており、また上部電極支持板2にもスリット20が形成されている。このスリット16とスリット20にボルト又はねじの固定具15が挿入され、相互に固定及び開放ができるようになっている。
【0034】
図3は分割された等形(扇形)の上部電極11が最も縮小された状態で、相互に密着している。図4は相互に開放した状態で、電極11の外形は拡大した様子を示している。図では、前記ボルト又はねじ15が一つのスリットに1個しか記載されていないが、これを2本とすることにより、上部電極11が回転することがなく、位置決めが容易となる。
【0035】
図5は分割された等形(扇形)の上部電極11が8個ある場合、図6は分割された等形(扇形)の上部電極11が12個ある場合を示す。これらの等形(扇形)の上部電極11には、それぞれ加熱用フィラメント1が1個設置されるようになっている。したがって、分割された等形(扇形)の上部電極11の数だけ、加熱用フィラメント1の設置が可能である。
いずれの場合も、電極相互間及び加熱用フィラメント1との距離の調節が可能である。上部電極11と下部電極11の構造は、原則として同一形状である。
【0036】
図2の装置は、複数に分割された等形(扇形)の上部電極11及び下部電極12が移動できる構造を除き、図1に示す装置の構造と類似しており、同一の機能を有する。
すなわち、図2~4は、本発明のフィラメント法によるダイヤモンド膜形成装置の概要を説明する図であり、装置の側面図である。この場合、ダイヤモンド膜形成装置は、装置内部に等間隔に6本の加熱用フィラメント1を配置し、被コーティング試料4とその試料4を保持する試料支持台5を加熱用フィラメント1の中央に配置した構造を持つ。
【0037】
図1と同様に、上部電極11は、給電部材7にロッド6及び電極支持板13を介して結合している。この給電部材7は、上部電極を固定保持する役割も同時に担っており、剛性のある部材からなる。固定保持する部材と給電部材7を別に分けた構造とすることもでき、いずれを採用してもよく、任意である。同様に、この上部電極2に給電するための装置は特別な構造とする必要はなく、周知の構造の給電装置で十分であり、特に制限はない。
【0038】
下部電極12は、複数本の加熱用フィラメント1により、上部電極11から吊り下がった状態に保持されている。同様に、外側から見ると、鳥かご(ケージ)のように見える。下部電極12は下部電極支持板14上にあり、さらに下部電極12の下端にはロッド8が設けられている。これに導体18を介して給電部材9に接続する。符号17は導体18と下部電極12のロッド8との接続具である。このロッド8に追加の錘を取り付けることは、図2では示していないが、構造的にそれが容易であることは容易に理解されるであろう。
【0039】
図2では、被コーティング試料4と該試料4を保持する試料支持台5は、周囲の加熱用フィラメント1(ケージ)の中央位置に設置されているが、この場合、被コーティング試料4と試料支持台5は、下部電極3上にある。
したがって、この被コーティング試料4と試料支持台5は、下部電極3と同様に、加熱用フィラメント1を下方への張力を発生する錘の役目をする。また、下部電極支持板も同様に錘の役目をすることは容易に理解できるであろう。
【0040】
図2には示していないが、試料支持台5に結合するロッド8を、下部電極3を貫通させて、装置本体に支持させるようにすることもできる。
この場合、被コーティング試料4と試料支持台5は、下部電極3と別体になるので、加熱用フィラメント1を下方への張力を発生する錘の役目はしない。試料支持台5については、装置本体に設置した加熱装置を用いて、補助的な加熱を行うこともできる。これは、必要に応じて設計変更可能である。
【0041】
移動設置可能な、複数に分割された等形(扇形)の上部電極11及び下部電極12の外周には、分割された電極のそれぞれに、1個の溝が設けられている。そして、この溝に加熱用フィラメント1が挿入される。この溝のサイズは加熱用フィラメント1が挿入できる程度の寸法を有していれば良い。この溝に挿入された加熱用フィラメント1は分割された上部電極11及び下部電極12と導通し、給電によりフィラメント1は発熱する。
【0042】
この場合、溝に加熱用フィラメント1が挿入されるだけでは、上部電極11及び下部電極12との接続が十分でない場合が多いので、分割された上部電極11及び下部電極12の外周に横溝を形成し、分割された上部電極11及び下部電極12を所定の位置に固定し、さらに前記縦溝に加熱用フィラメント1を挿入した後、この横溝に耐熱性の紐10を入れて、前記縦溝に加熱用フィラメント1を縛り付ける。これによって、加熱用フィラメント1と分割された上部電極11及び下部電極12との接続が十分に確保できる。
前記上部電極11及び下部電極12から加熱用フィラメント1の端を延長して突き出させ、これを束ねることにより、より強固な接続を確保することができる。
【0043】
以上の装置において、被コーティング試料4の重量、試料支持台6、上下電極2、3、11、12の自重又はさらに電極支持板13、14、錘を付加し、これらによりフィラメント1を緊張させると共に、緊張したフィラメント1を通電加熱し、装置内部にダイヤモンド原料となるガスを供給することによって、前記試料に気相ダイヤモンド膜をコーティングすることが可能となる。
【0044】
次に、本願発明の具体例を説明する。図1に示すような、気相ダイヤモンド膜のコーティング装置を用いて、超硬合金製の丸棒4(直径10mm、長さ20mm)の周囲と一方の端面に熱フィラメント法で気相ダイヤモンドをコーティングした例を説明する。
なお、この場合、溝数と加熱用フィラメント数は、図1とは異なるが、気相ダイヤモンドをコーティング際に、実質的な差異となるものではない。
上部電極2及び下部電極3にステンレス鋼製の円盤を用い、ロッド6、8に長さが20mmのステンレス鋼丸棒を用い、さらに試料支持台5にもステンレス鋼丸棒を用いた。
【0045】
これらの上部電極及び下部電極2、3の長さ方向に16本(円周上の角度が0°、30°、45°、60°、90°、120°、135°、150°、180°、210°、225°、240°、270°、300°、315°、330°)の溝を放電加工で作成した。各々の溝の直径と深さは0.35mmとした。この溝は、実際に使用する溝数よりも多く作製したものである。
また、上部電極2はロッド6を介して装置本体の固定電極7と接続し、下部電極3はロッド8を介し、直径0.3mmの銅線18を束ねた導体をして、接続具17により、装置本体の固定電極9と接続した。
【0046】
次に、加熱用フィラメントとなる直径0.2mmのタングステン線1を、上下電極2、3の縦溝に45度間隔で8本配列して接着テープで固定した。さらに、横溝を使用して、タングステン線1の上に直径0.3mmのニクロム線を円周方向に掘った溝11に沿って巻きつけることで固定した後で、下部電極2、3を引き離して電極間の距離を60mmとした。
この操作によって、タングステン線1はまっすぐに引き伸ばされた。下部電極2、3の中央に超硬試料4を置くと、下部電極3、試料支持台5及び試料4の重さの合計は70gとなり、上部電極2を装置の電極6に固定するとフィラメント1にかかる張力は280g/mmとなって加熱時間中にフィラメント1が曲がることはなかった。
【0047】
下部電極3、試料支持台5と装置本体の固定電極9を細い銅線の束18で接続して排気した後、原料ガス(98%水素、2%メタン、流量100ml/分、80Torr)を導入、フィラメント加熱により気相ダイヤモンドをコーティングした。直径0.2mmのフィラメント1を2000°Cに加熱すると試料温度は850°Cとなり、8時間で厚さ約6μmの気相ダイヤモンド膜をほぼ均一にコーティングすることができた。
ステンレス鋼と銅の融点は1450°Cと1083°Cなので、フィラメントの温度2000°Cよりも低いが、熱伝導と熱容量の関係で局部的にも溶融することはなく、電極として利用することが十分可能であった。
この場合、分割できる上部電極又は下部電極を使用した例を示していないが、構造的には同等なので、同様の結果を得ることができる。
また、1本の加熱用フィラメントを使用して、部品の一部にダイヤモンドをコーティングする場合にも、同様に下部電極等がフィラメントにより吊持された状態とし、下部電極等の重量及びフィラメントの自重によりフィラメントを緊張させると共に、該緊張したフィラメントを通電加熱し、かつダイヤモンド原料となるガスを供給して、ダイヤモンド膜を前記部品の目的とする箇所にコーティングすることができる。本発明は、これらを全て包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の方法及び装置を用いると、加熱用フィラメントに膨張・収縮があっても、重力によってこれを吸収し、自動的に張力が調整されるので、加熱用フィラメントの変形が防止でき、その結果、試料との間隔及び加熱用フィラメント相互の間隔を一定に保持することができるという優れた効果を有する。これにより、被コーティング材料の均一加熱が容易となる優れた特徴を有している。また、試料を回転することなく装置が簡単であるという特徴もある。
以上から、本発明の方法及び装置は、特に3次元形状を持つ部品の表面気相ダイヤモンドをコーティングに有用である。また、これによって、製品の耐摩耗性、潤滑性、放熱性の向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】上部電極に加熱用フィラメントにより下部電極を吊持し、加熱用フィラメントに所定の張りを持たせ熱フィラメント法によってダイヤモンド膜を前記試料にコーティングする気相ダイヤモンド膜のコーティング装置の一例を示す図である。
【図2】6個に分割できる上部電極及び下部電極を備え、これらの電極が拡張及び縮小できる構造を備えた気相ダイヤモンド膜コーティング装置の一例を示す図である。
【図3】図2における分割できる上部電極及び下部電極を縮小した場合の電極の上面からみた説明図である。
【図4】図2における分割できる上部電極及び下部電極を拡張した場合の電極の上面からみた説明図である。
【図5】図2における分割できる上部電極及び下部電極を備え、電極の個数が8個、加熱用フィラメントが8本である場合の、電極の上面からみた説明図である。
【図6】図2における分割できる上部電極及び下部電極を備え、電極の個数が12個、加熱用フィラメントが12本である場合の、電極の上面からみた説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1:加熱用フィラメント1
2:上部電極
3:下部電極
4:被コーティングとなる試料
5:試料台
6:ロッド
7:給電部材
8:ロッド
9:給電部材
10:横溝に挿入した耐熱性の紐
11:上部電極
12:下部電極
13:上部電極支持板
14:下部電極支持板
15:ボルト又はねじの固定具
16:分割電極に形成したスリット
17:固定具
18:導体(銅線の束)
20:支持板に形成したスリット
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5