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明細書 :ヒドロキシメチル化化合物の製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4586116号 (P4586116)
公開番号 特開2007-238534 (P2007-238534A)
登録日 平成22年9月17日(2010.9.17)
発行日 平成22年11月24日(2010.11.24)
公開日 平成19年9月20日(2007.9.20)
発明の名称または考案の名称 ヒドロキシメチル化化合物の製法
国際特許分類 C07C  67/31        (2006.01)
C07C  69/757       (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 67/31
C07C 69/757 Z
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2006-065160 (P2006-065160)
出願日 平成18年3月10日(2006.3.10)
審査請求日 平成19年6月14日(2007.6.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】小川 知香子
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
審査官 【審査官】増永 淳司
参考文献・文献 Journal of the American Chemical Society,2004年,126,P12236-37
Chemistry Letters,2004年,33(3),P312-313
Angewandte Chemie. International Edition,2004年,P1983-86
Synthesis,1997年,P1281-84
Journal of Organometallic Chemistry,2000年,603,P18-29
Journal of Organic Chemistry,1985年,50,P3416-17
実験化学講座20-アルコール・アミン-,1992年,第4版,P94-95
調査した分野 C07C 67/31
C07C 69/757
C07B 61/00
CA/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
水を溶媒として、硝酸第二鉄と界面活性剤との共存下で、活性メチン化合物とホルムアルデヒドとを反応させることから成るヒドロキシメチル化化合物の製法。
【請求項2】
前記活性メチン化合物が下式(化1)
化1: CH(COR(COOR
(式中、R~Rは、それぞれ同じであっても異なってもよく、置換基を有していてもよくヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、m、n及びoは、m+n+o=3であって、m+n≧2を満たす整数を表す。)で表される請求項1に記載の製法。


【請求項3】
前記活性メチン化合物が下式(化2)
【化2】
JP0004586116B2_000007t.gif
(式中、R及びRは、同じであっても異なってもよく、置換基を有していてもよい炭化水素基又は複素環基を表し、RとRは共に環を形成していてもよく、Rは置換基を有していてもよい炭素数7以下のアルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアラルキル基を表す。)で表される請求項2に記載の製法。
【請求項4】
前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤である請求項1~3のいずれか一項に記載の製法。
【請求項5】
前記ホルムアルデヒドとしてホルマリン水溶液を用いる請求項1~4のいずれか一項に記載の製法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒドロキシメチル化化合物の製法に関し、より詳細には、硝酸第二鉄の存在下で活性メチン化合物とホルムアルデヒドを反応させることから成るヒドロキシメチル化化合物の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシメチル基が結合した4級炭素原子を有する化合物は、医薬品等の生理活性物質等にもしばしば認められる。その合成は多行程を必要とするなど比較的困難であり、このような化合物を安価且つ簡便に合成する方法の開発は、現在でも有機合成における重要課題である。
ホルムアルデヒドを用いるヒドロキシメチル化反応方法は多官能基を有する1級アルコールを提供する有用な手法であり、従来、塩基性条件で活性メチレン化合物への直接的な反応例(非特許文献1)や、ルイス酸条件下でケイ素エノラートを求核剤として用いる報告がなされている(非特許文献2、3)。また、ケイ素エノラートを経由せずにシアノエステルを求核剤とした直接的なヒドロキシメチル化も報告されている(非特許文献4)。
しかしながら、これらの方法では無水条件の有機溶媒中で外部発生したホルマリンを使用する、比較的高価なルイス酸触媒或いはケイ素エノラートを必要とする、しばしば低収率となるなど簡便性、収率及び経済性に改善の余地が残されている。
近年、本発明者らは、安価なルイス酸である塩化第二鉄と界面活性剤を用い、有機溶媒に比べて環境に優しい水を溶媒とするアルドール反応を報告したが(非特許文献5)、ここでも求核剤としてケイ素エノラートを用いる必要があった。
【0003】

【非特許文献1】Synthesis 1997, 1281-1284
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc. 126, 12236-12237 (2004)
【非特許文献3】Angew. Chem. Int. Ed. 43, 1983-1986 (2004)
【非特許文献4】J. Organometallic. Chem. 603, 18-29 (2000)
【非特許文献5】Chem. Lett. 33, 312-313 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、従来の方法の問題点を改善して、環境に優しい水を溶媒とし、界面活性剤と安価なルイス酸触媒を用いることにより、4級炭素に結合したヒドロキシメチル基を有する化合物を高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、活性メチン化合物とホルマリンのヒドロキシメチル化反応を、水中で効率的に触媒する安価なルイス酸金属塩をスクリーニングした結果、3価の鉄化合物、中でも硝酸第二鉄が上記目的に有効であることを見出し本発明を完成した。
この結果は、硝酸第二鉄の水への優れた溶解性と安定性により、水中で界面活性剤-ルイス酸一体型触媒が生成しているためと考えられる。即ち、水中で比較的安定と考えられるルイス酸を用いて、SDS存在下で上記反応を検討したところ、硝酸インジウム(III)では6%、硝酸ビスマス(II)では4%であったヒドロキシメチル化体の収率が、硝酸鉄(III)では51%と飛躍的に増加した。また、SDSを用いない硝酸鉄だけの系では収率は6%に低下した。
即ち、本発明は、水を溶媒として、硝酸第二鉄と界面活性剤との共存下で、活性メチン化合物とホルムアルデヒドとを反応させることから成るヒドロキシメチル化化合物の製法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、活性メチレン化合物のヒドロキシメチル化反応が、水-硝酸第二鉄-界面活性剤-ホルムアルデヒドという全て安価な原料を用いて実施可能となった。さらに、本発明の方法は、有機溶媒を使用しないため、環境や人体に与える影響は少なく、安全性も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のヒドロキシメチル化化合物の製法は、水を溶媒として、硝酸第二鉄と界面活性剤との共存下で、活性メチン化合物とホルムアルデヒドとを反応させることから成る。
本発明で用いる触媒は、硝酸第二鉄であり、界面活性剤を併用する。
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤が好ましく、アニオン界面活性剤としては例えば下式のような化合物を挙げることができる。
(1)高級脂肪酸アルカリ塩または高級脂肪酸スルホン酸塩
一般式RCOOMまたはRSOMで表される。Rは、高級脂肪族炭化水素基、Mはアルカリ金属を表す。
(2)高級アルコールの硫酸エステル塩または、高級脂肪酸リン酸エステル塩
一般式ROSOMまたはROPOで表される。Rは高級脂肪族炭化水素基、Mはアルカリ金属を表す。
(3)アルキルベンゼンスルホン酸塩
下記一般式で表される。
【化3】
JP0004586116B2_000002t.gif
Rは炭素数が10~16の炭化水素基、Mはアルカリ金属を表す。
これらの中で、高級脂肪族スルホン酸塩やアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく用いられる。
【0008】
反応溶媒としては、水が用いられる。
反応溶媒中の硝酸第二鉄の濃度は、0.001~0.02Mである。
反応溶媒中の界面活性剤の濃度は、0.001~0.05Mである。
【0009】
反応基質であるメチン化合物は下式(化4)で表される。
【化4】
JP0004586116B2_000003t.gif
炭素に結合するR~Rのうち少なくとも2つは、カルボアニオンの安定性を高め反応性を上げるために、電子求引基であることが好ましく、この電子吸引基としては、該炭素に直接結合するカルボニル基又はエステル基を持つことが好ましい。
【0010】
このような活性メチン化合物として下式で表される化合物が挙げられる。
化1: CH(COR(COOR
~Rは、それぞれ同じであっても異なってもよく、置換基を有していてもよくヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表す。
m、n及びoは、m+n+o=3であって、m+n≧2を満たす整数を表す。
即ち、この活性メチン化合物は、CH(COR、CH(COR(COOR、CH(COR(COOR、CH(COOR、CH(COR、CH(COR(COOR、又はCH(COORである。
【0011】
~Rのヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基には特に制限はないが、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基並びに複素環基を挙げることができる。
炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基を挙げることができる。アルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状であってもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、t-ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニルなどの基を挙げることができる。シクロアルキル基としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基等を挙げることができる。アリール基は、芳香族炭化水素基に置換基を有する或いは有しない基である。アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。複素環基としては、以下は基名ではなく化合物名です。代表的な基名をいくつか挙げるのみで良いと思います。チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、インドリル基等が挙げられる。
これらが有していてもよい置換基として、任意の位置に低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、水酸基、低級アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0012】
このようなメチン化合物は下式で表される化合物が好ましい。
【化2】
JP0004586116B2_000004t.gif
及びRは、同じであっても異なってもよく、置換基を有していてもよい炭化水素基又は複素環基を表す。これらの基は上記R~Rから適宜選択される。
【0013】
またRとRは共に環を形成していてもよい。このような環は、脂肪族環または複素環のいずれでもよく、これらはさらに芳香環や他の脂肪族環と縮環していてもよい。脂肪族環としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基等を挙げることができる。複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、インドリル基等が挙げられる。
【0014】
は置換基を有していてもよい炭素数7以下のアルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアラルキル基を表す。アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のものもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、t-ペンチル、へキシル、ヘプチル基等を挙げることができる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等をあげることができる。アリール基としてはフェニル基を挙げることができる。アラルキル基としてはベンジル基等を挙げることができる。
【0015】
もう一方の反応基質はホルムアルデヒドであり、ホルマリン水溶液を用いてもよい。
【0016】
これらを以下の条件で反応させると、下式(化5)に従って対応するヒドロキシメチル化化合物が得られる。
【化5】
JP0004586116B2_000005t.gif
(式中、R~Rは上記と同様である。)
【0017】
溶媒は水であり、反応温度は0~70℃、好ましくは10~40℃である。基質である活性メチレン化合物の濃度は0.01~0.5Mで、ホルムアルデヒドは基質に対して2~50当量、好ましくは2~10当量使用する。界面活性剤の使用量は界面活性剤の構造や濃度にもより、活性メチレン化合物を充分に分散できる量を使用することが望ましい。反応時間に特に規定はないが、通常は1時間から50時間程度で、大部分の活性メチレン化合物が消失するまで攪拌しながら行い、必要に応じてホルムアルデヒドを追加してもよい。触媒である硝酸第二鉄は活性メチレン化合物に対して0.5~20モル%、好ましくは1~10モル%使用する。
【0018】
本発明は、ヒドロキシメチル基が結合した4級炭素を有する有用な化合物、例えば、微生物アルカロイドで、抗生物質合成の中間体でもあるアルデミシジンの新規合成方法として利用できる。

以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0019】
硝酸鉄・9水和物(アルドリッチ、6.4 mg)及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成、16.5 mg)に蒸留水(3.2 mL)を室温にて滴下した。同温下にて10分撹拌後、methyl 1,2,3,4-tetrahydro-1-oxonaphthalene-2-carboxylate (Tetrahedeon, 51, 3587-3606 (1995). に従い合成した)、65.4 mg)及びホルムアルデヒド35%水溶液(国産化学、137 mg)を順次に加えた。6時間撹拌した後、水(5 mL)及び塩化メチレン(5 mL)を加えて反応系を希釈し、有機相を分離した。水相を塩化メチレンでさらに抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別した後、減圧下で溶媒を留去し、残渣を中性シリカゲルカラムクロマトグラフィー(国産化学)にて精製し、methyl 1,2,3,4-tetrahydro-2-(hydroxymethyl)-1-oxonaphthalene-2-carboxylateを得た(67.7 mg、収率 90%)。反応式を下式に示す。
【化6】
JP0004586116B2_000006t.gif
methyl 1,2,3,4-tetrahydro-2-(hydroxymethyl)-1-oxonaphthalene-2-carboxylate
1H NMR (CDCl3) δ(ppm) = 2.17-2.21 (m, 1H), 2.44 (apparent dt, 1H, J = 4.6, 13.8 Hz)2.92-3.07 (m, 3H), 3.31 (dd, 1H, J = 10.1, 4.1 Hz), 3.90 (apparent t, 1H, J = 10.1 Hz), 4.02 (dd, 1H, J = 3.6, 11.0 Hz), 7.23-7.26 (m, 1H), 7.32-7.36 (m, 1H), 7.49-7.53 (m, 1H), 8.06 (brd, 1H, J = 7.8 Hz); 13C NMR (CDCl3) δ 25.9, 29.2, 52.7, 59.2, 66.4, 127.0, 127.8, 128.8, 131.8, 134.1, 143.2, 171.1, 197.2.