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明細書 :色素増感型太陽電池及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5027432号 (P5027432)
公開番号 特開2007-265694 (P2007-265694A)
登録日 平成24年6月29日(2012.6.29)
発行日 平成24年9月19日(2012.9.19)
公開日 平成19年10月11日(2007.10.11)
発明の名称または考案の名称 色素増感型太陽電池及びその製造方法
国際特許分類 H01M  14/00        (2006.01)
H01L  31/04        (2006.01)
FI H01M 14/00 P
H01L 31/04 Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 9
出願番号 特願2006-086706 (P2006-086706)
出願日 平成18年3月27日(2006.3.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2006年2月28日 化学工学会発行の「化学工学会第71年会 研究発表講演要旨集」に発表
審査請求日 平成21年1月19日(2009.1.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】伊原 学
【氏名】菅野 真然美
【氏名】井上 志保
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124291、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 悟
【識別番号】100140578、【弁理士】、【氏名又は名称】沖田 英樹
審査官 【審査官】冨士 美香
参考文献・文献 特開2006-351651(JP,A)
調査した分野 H01M 14/00
H01L 31/04
特許請求の範囲 【請求項1】
金属酸化物を含む多孔質膜及びこれに担持された色素を有する光電極と、対極と、前記光電極及び前記対極の間に介在する電解質層と、を備える色素増感型太陽電池において、
前記光電極は、前記多孔質膜に担持された、金属粒子及び該金属粒子の表面に配され該金属粒子中の金属と化学結合を生成する官能基を有する表面修飾化合物を含む表面修飾金属粒子を更に有する、色素増感型太陽電池。
【請求項2】
前記表面修飾金属粒子のプラズモン吸収における吸収最大波長が、前記色素の電荷移動吸収帯における吸収最大波長以下である、請求項1記載の色素増感型太陽電池。
【請求項3】
前記官能基がメルカプト基又はアミノ基である、請求項1又は2記載の色素増感型太陽電池。
【請求項4】
前記表面修飾化合物がカルボキシル基又は水酸基を更に有する、請求項3記載の色素増感型太陽電池。
【請求項5】
前記表面修飾金属粒子は、水溶性アルコール中でコロイド溶液を形成可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項6】
前記金属粒子がAg粒子である、請求項1~5のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項7】
前記電解質層はヨウ素系の酸化還元対を含む、請求項6記載の色素増感型太陽電池。
【請求項8】
金属酸化物を含む多孔質膜及びこれに担持された色素を有する光電極と、対極と、前記光電極及び前記対極の間に介在する電解質層と、を備える色素増感型太陽電池の製造方法において、
光電極を形成させる工程が、
金属粒子及び該金属粒子の表面に配され該金属粒子中の金属と化学結合を生成する官能基を有する表面修飾化合物を含む表面修飾金属粒子が水溶性アルコール中に分散したコロイド溶液を前記多孔質膜に含浸し、含浸された前記コロイド溶液から前記水溶性アルコールを除去して、前記表面修飾金属粒子を前記多孔質膜に担持させる工程を含む、製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Ru色素等の色素を用いた色素増感型太陽電池は、原料コストが安価で製造が容易でありながら、比較的高い変換効率を有する。
【0003】
一方、本発明者は、Ag粒子の作用によってRu色素の吸光度が増加することを報告した(非特許文献1)。

【非特許文献1】伊原学他、ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー パートB(J. Phys. Chem. Part B)、1997年、第101巻、p.5153
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の色素増感型太陽電池は、実用化を考慮するとエネルギー効率は未だ十分ではなく、エネルギー変換効率の更なる向上が長い間強く求められている。また、上記非特許文献1にはRu色素及びAg粒子を石英基板上に真空蒸着したときにRu色素の吸光度が増加することが示されているものの、単にRu色素及びAg粒子をチタニア等の多孔質膜に担持させたとしても、それだけでは色素増感型太陽電池のエネルギー変換効率は必ずしも向上しないことが、本発明者らの検討の結果明らかとなった。
【0005】
そこで、本発明は、エネルギー変換効率が向上した色素増感型太陽電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属酸化物を含む多孔質膜及びこれに担持された色素を有する光電極と、対極と、光電極及び対極の間に介在する電解質層と、を備える色素増感型太陽電池において、光電極は、多孔質膜に担持された、金属粒子及び該金属粒子の表面に配され該金属粒子中の金属と化学結合を生成する官能基を有する表面修飾化合物を含む表面修飾金属粒子を更に有するものである。
【0007】
上記本発明に係る色素増感型太陽電池は、上記特定の化合物で修飾された表面修飾金属粒子を光電極中の多孔質膜に担持させたことにより、従来よりも高いエネルギー変換効率を発現することが可能となった。上記表面修飾化合物は、主として、金属粒子中の金属と化学結合を生成する官能基が金属粒子中の金属と化学結合を生じることによって金属粒子の表面に配されていると考えられる。
【0008】
色素増感型太陽電池は、色素の吸光によって励起された電子が金属酸化物を含む多孔質膜に流れることで電流が発生するものであるが、色素増感型太陽電池の場合、励起された電子が電解質の電荷輸送物質の方に流れてしまう、いわゆる逆電流の発生がエネルギー変換効率低下の大きな要因になっていると考えられる。上記本発明の場合、金属粒子と色素及び電解質との間に上記表面修飾化合物が介在することによりこの逆電流が抑制された結果、エネルギー変換効率向上の効果が得られたものと本発明者らは推定している。
【0009】
表面修飾金属粒子のプラズモン吸収における吸収最大波長は、色素の電荷移動吸収帯における吸収最大波長以下であることが好ましい。これにより、エネルギー変換効率向上の効果がより顕著なものとなる。
【0010】
表面修飾化合物が有する上記官能基は、アミノ基又はメルカプト基が好ましい。この場合、表面修飾化合物は、カルボキシル基又は水酸基を更に有することがより好ましい。表面修飾化合物がこれら官能基を有していることにより、酸化チタン等の金属酸化物と化学結合を生じて金属粒子が多孔質膜内部に担持されやすくなる。また同時に、表面修飾化合物がより確実に多孔質膜と金属粒子との間に介在するようになる。これにより、エネルギー変換効率向上の効果がより顕著なものとなる。
【0011】
上記表面修飾金属粒子は、水溶性アルコール中でコロイド溶液を形成可能であることが好ましい。これにより、エネルギー変換効率向上の効果がより顕著なものとなる。
【0012】
上記金属粒子は、Ag粒子であることが好ましい。この場合、電解質層は、ヨウ素系の酸化還元対を含むことがより好ましい。これにより、エネルギー変換効率向上の効果がより顕著なものとなる。Agはヨウ素系の酸化還元対(I/I)を含む電解質層に対して比較的高い溶解性を示すため、動作の安定性等を考慮すると、Ag粒子をヨウ素系の酸化還元対と組合わせて用いることは一般には困難と考えられる。しかし、本発明のように上記特定の表面修飾化合物で修飾されたAg粒子の場合には、ヨウ素系の酸化還元対を組合わせることにより特に高いエネルギー変換効率を達成可能であることが本発明者らによる検討の結果明らかとなった。
【0013】
本発明はまた、金属酸化物を含む多孔質膜及びこれに担持された色素を有する光電極と、対極と、光電極及び対極の間に介在する電解質層と、を備える色素増感型太陽電池の製造方法において、光電極を形成させる工程が、金属粒子及び該金属粒子の表面に配され該金属粒子中の金属と化学結合を生成する官能基を有する表面修飾化合物を有する表面修飾金属粒子が水溶性アルコール中に分散したコロイド溶液を多孔質膜に含浸し、含浸されたコロイド溶液から水溶性アルコールを除去して、表面修飾金属粒子を多孔質膜に担持させる工程を含むものである。
【0014】
上記本発明に係る製造方法は、上記本発明に係る色素増感型太陽電池を製造するために好適に採用することができる。この製造方法によれば、エネルギー変換効率の改善された色素増感型太陽電池を容易に製造することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エネルギー変換効率が向上した色素増感型太陽電池が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明に係る色素増感型太陽電池の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示す色素増感型太陽電池100は、透明基板11と、透明基板11上に形成された透明導電膜12と、透明導電膜12上に形成された光電極1と、透明基板15と、透明基板15上に形成された透明導電膜13と、透明導電膜13上に形成された対極3と、光電極1及び対極3の間に介在する電解質層5と、光電極1及び電解質層5の周囲に設けられたシール部20とから主として構成されている。
【0018】
光電極1は、金属酸化物の微粒子の集合体から主として構成される多孔質膜を有しており、この多孔質膜に色素及び表面修飾金属粒子が担持されている。多孔質膜を構成する金属酸化物としては、チタニア(TiO)が好ましい。色素としては金属錯体が好ましく、金属錯体のなかでもRu色素が好ましく用いられる。Ru色素は、Ru錯体からなる色素であって色素増感型太陽電池に用いたときに起電力を生じ得るものであれば、特に制限なく用いることができる。Ru色素の好適な具体例としては[Ru(dcpy)(NCS)2HO等が挙げられる。
【0019】
表面修飾金属粒子は、金属粒子と、該金属粒子の表面に配され該金属粒子中の金属と化学結合を生成する官能基を有する表面修飾化合物とを有する。金属粒子としてはAgを主成分とするAg粒子が好適に用いられる。通常、Ag粒子は少なくとも50原子%のAgを含む。金属粒子の平均粒径は、適切なプラズモン吸収を発現させて、エネルギー変換効率を確実に高めるために、0.1~500nmであることが好ましい。
【0020】
表面修飾金属粒子の空気中で測定されるプラズモン吸収における吸収最大波長をλとし、色素の電荷移動吸収帯における吸収最大波長以下をλとすると、λ≦λであることが好ましい。ここで、特に、光電極1中で多孔質膜に担持された状態での表面修飾金属粒子のλがλ以下であることが好ましい。λがλに近くなるのにともなって、光電極1中の色素の吸光度が上昇する傾向にある。λ及びλは、λ-λ≦100nmの関係を満たすことがより好ましい。λとλとの差が100nmを超えると色素の吸光度を増大させる効果が低下する傾向にある。
【0021】
金属粒子を構成する金属の種類及び粒径、表面修飾化合物の種類、表面修飾化合物を担持させた状態での加熱処理等によって、λが上記のような条件を満たすように制御することが可能である。
【0022】
表面修飾金属粒子は、水溶性アルコール(好ましくはエタノール)中でコロイド溶液を形成可能であることが好ましい。水溶性アルコール中でコロイド溶液を形成可能な表面修飾金属粒子は、多孔質膜を構成している金属酸化物との親和性が高く、多孔質膜に均一に且つ十分に担持され易い。
【0023】
表面修飾化合物は、金属粒子中の金属と化学結合を生成する官能基を1又は2以上有する化合物である。この官能基としてはメルカプト基及びアミノ基が好ましい。表面修飾化合物は、カルボキシル基又は水酸基を1又は2以上有することがより好ましい。なお、表面修飾金属粒子においては、これら官能基のうち大部分は、金属粒子中の金属や多孔質膜中の金属酸化物と反応してチオエーテル、カルボン酸エステル、エーテル等を生成していると考えられる。
【0024】
表面修飾化合物は、例えば、下記一般式(1)又は(2)で表される。
X-R-SH ・・・(1)
X-R-NH ・・・(2)
【0025】
式(1)及び(2)中、Rは直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を示し、Xはカルボキシル基又は水酸基を示す。式(1)で表される表面修飾化合物の好適な具体例としては、16-メルカプトヘキサデカン酸、3-メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。
【0026】
電解質層5は酸化還元対を所定の溶媒に溶解した電解液から構成される。酸化還元対としてはヨウ素系(I/I)やコバルト系(Co2+/Co3+)等が用いられ、ヨウ素系の酸化還元対が特に好ましい。
【0027】
透明基板11及び15は、ガラス基板が好適に用いられる。なお、対極側に位置する透明基板15を非透明の基板に置き換えることも可能である。透明導電膜12及び13は、ITO等のような透明導電体から形成されている。対極3は、Pt等の貴金属を成膜して形成された電極であることが好ましい。シール部20は電解質層5中の電解液の外部への漏出を防止することを主な目的として設けられており、ポリマーシート、ポリマー系の接着剤等を用いて形成される。
【0028】
光電極1は、例えば、金属酸化物を含む多孔質膜の膜を形成させる工程と、上述の表面修飾金属粒子が水溶性アルコール(好ましくはエタノール)中に分散したコロイド溶液を多孔質膜に含浸し、含浸されたコロイド溶液から水溶性アルコールを除去して、表面修飾金属粒子を多孔質膜に担持させる工程と、色素を多孔質膜に担持させる工程と、を含む方法により形成させることができる。表面修飾金属粒子を多孔質膜に担持させる工程と色素を多孔質膜に担持させる工程とは、どちらを先に行ってもよい。あるいは、上記コロイド溶液に色素を更に加えて、両者を同時並行的に多孔質膜に担持させてもよい。
【0029】
表面修飾金属粒子が分散したコロイド溶液は、例えば、金属イオン及び表面修飾化合物を含む反応液中で攪拌しながら金属イオンを還元することにより、調製することができる。この場合、反応液の溶媒としてクロロホルム等の水溶性アルコール以外の溶媒を用いたときは、遠心分離等によって反応溶媒を除去する工程等を経て、溶媒を水溶性アルコールに置換して、水溶性アルコールを分散媒とするコロイド溶液が調製される。
【0030】
コロイド溶液に多孔質膜を室温で浸漬する方法等により、コロイド溶液を多孔質膜に含浸させることができる。含浸した後、室温で放置するか又は必要に応じて加熱して、水溶性アルコールが除去される。これにより、表面修飾金属粒子が多孔質膜に担持される。水溶性アルコールの除去は、好ましくは、加熱することなく又は200℃以下に加熱して行う。含浸後の多孔質膜を200℃以上に加熱すると、表面修飾化合物の分解が進行して、エネルギー変換効率向上の効果が低下する傾向にある。したがって、含浸後、多孔質膜を200℃を超える温度に加熱することなく太陽電池の光電極として用いることが好ましい。
【0031】
多孔質膜の形成や色素の担持は、従来公知の方法を適宜参照して、当業者であれば容易に行うことが可能である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
1.チタニア多孔質膜に担持されたRu色素の表面修飾Ag粒子による吸光度向上
(1)表面修飾金属粒子のコロイド溶液調製
AgNO0.15gを水に溶解させた水相と、相間移動触媒である(C17NBrをクロロホルムに溶解させた有機相とを反応容器中、室温で1時間攪拌してAgイオンを有機相に移動させた後、水相を除去した。次いで、有機相に表面修飾化合物としての16-メルカプトヘキサデカン酸0.23gを加えて15分間攪拌した。その後、還元剤であるNaBHの水溶液を有機相と混合して、室温で12時間攪拌した。これにより、有機相中のAgイオンが還元されて、表面が16-メルカプトヘキサデカン酸によって被覆されたAg粒子(表面修飾Ag粒子)が分散したコロイド溶液が生成した。
【0034】
水相を除去後、遠心分離によりコロイド溶液からAg粒子を沈降させ、上澄みを除いた後にエタノールを加えて、エタノールを分散媒とするコロイド溶液を得た。
【0035】
また、アミノ基を有する表面修飾化合物によって表面が被覆されたAg粒子(日本ペイント社製「ファインスフェアSVE001」(商品名))をエタノールに分散させたコロイド溶液も2種類調製した。
【0036】
(2)チタニア多孔質膜に担持された表面修飾Ag粒子のプラズモン吸収特性及びRu色素の吸光度
スピンコート法によりチタニア粉末を含むペーストを石英基板上に塗布して薄膜を形成し、これを450℃で焼結してチタニア多孔質膜を形成させた。この多孔質膜を上記のコロイド溶液に約4日間浸漬し、取り出した多孔質膜を窒素雰囲気下、加熱処理した。加熱温度を230~580℃、加熱時間を3分~20分の範囲内で適宜調整することにより、多孔質膜に担持された表面修飾Ag粒子のプラズモン吸収における最大吸収波長を変化させた。
【0037】
加熱処理後の多孔質膜をRu色素の溶液に12時間浸漬し、取り出した多孔質膜を乾燥して、Ru色素及び表面修飾Ag粒子がチタニア多孔質膜に担持された光電極を形成させた。浸漬の際、Ru色素である小島化学薬品社製の[Ru(dcpy)(NCS)2HO(電荷移動吸収帯における吸収最大波長:540nm)を和光純薬工業社製の脱水エタノールに1×10-3Mの濃度で溶解し、これを3×10-4Mまで希釈した溶液を用いた。
【0038】
形成された光電極の光吸収スペクトルを測定し、Ru色素の520nmにおける吸光度のRu色素単独での吸光度に対する比率(増大率)を求めた。
【0039】
図2に、吸光度の増大率を表面修飾Ag粒子のプラズモン吸収の最大吸収波長に対してプロットしたグラフを示す。図中、16-メルカプトヘキサデカン酸を用いて調製した表面修飾Ag粒子の場合のプロットに「チオール」、アミノ基を有する表面修飾化合物を用いて調製した表面修飾Ag粒子の場合のプロットに「アミン1」又は「アミン2」が付されている。図2に示されるように、表面修飾Ag粒子を担持させることにより、チタニア多孔質膜に担持されたRu色素の吸光度が大きく増大することが確認された。また、表面修飾Ag粒子のプラズモン吸収の吸収極大波長がRu色素の吸収最大波長である540nmに近くなるのにともなって増大率がより向上する傾向にあることも確認された。更に、吸光度の増大率は、プラズモン吸収のピーク面積の増大に伴って増加する傾向も認められた。
【0040】
2.色素増感型太陽電池の作製及びその評価
アミノ基を有する表面修飾化合物を用いて調製した表面修飾Ag粒子のコロイド溶液を用いて、以下のようにして色素増感型太陽電池を作製した。
【0041】
まず、上記と同様にして成膜したチタニア多孔質膜を表面修飾Ag粒子のコロイド溶液に5時間浸漬し、取り出した多孔質膜を室温で乾燥した。その後、上述と同様のRu色素の溶液に多孔質膜を12時間浸漬した後、室温で乾燥して、チタニア多孔質膜にRu色素及び表面修飾Ag粒子が担持された光電極を形成させた。Ag粒子の濃度が異なる数種のコロイド溶液を用いて、同様に光電極を形成させた。また、形成された光電極の520nmにおける吸光度を測定した。
【0042】
表面に透明導電膜が形成されたガラス基板上にPtを成膜して対極を形成させ、これを、ポリマー系接着フィルムを間に挟んで透明導電膜及び光電極が形成されたガラス基板と張り合わせた。そして、対極側のガラス基板に設けられた電解液注入孔からヨウ素系の酸化還元対を含む電解液を注入て、電解質層を形成させた。電解液は、和光純薬工業社製の3-メトキシプロピオニトリルを溶媒として用い、これに0.5Mの4-tert-ブチルピリジン(アルドリッチ社製)、0.1Mのヨウ化リチウム(和光純薬工業社製)、0.1Mのヨウ素(関東化学社製)、及び0.6Mのジメチルプロピルイミダゾリウムヨージド(SOLARONIX社製)を溶解して調製したものを用いた。
【0043】
作製した色素増感型太陽電池について、量子収率(IPCE)及びエネルギー変換効率(η)を以下のようにして評価した。100mW/cmを1.0sunとして、光量を1.0sun又は0.4sunとした場合についてそれぞれ評価した。
【0044】
量子効率
単色光を入射したときの短絡電流及び入射単色光強度を測定し、これらの値から量子収率(IPCE)を算出した。単色光は光研工業社製の分光器を用いて入射させた。分光器の回析格子は600line/mm、スリット幅は2.0mm、出射光半値幅は12nmであった。
【0045】
エネルギー変換効率
5mm×5mmの開口を有するマスクを装着した色素増感型太陽電池に、基準セルを用いて100mW/cmに校正したAM1.5の擬似太陽光を照射した。このときの電流-電圧特性を測定して、短絡電流密度(Isc)、開放起電力(Voc)、フィルファクタ(ff)を求め、これらの値からエネルギー変換効率(η)を算出した。
【0046】
【表1】
JP0005027432B2_000002t.gif

【0047】
表1に示すように、表面修飾Ag粒子を用いた実施例の電池は、Ag粒子を用いなかった比較例に対して、エネルギー変換効率(η)、短絡電流密度(Isc)及び量子収率(ICPE)のピーク値が大きく向上した。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る色素増感型太陽電池の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】Ru色素の吸光度の増大率を表面修飾Ag粒子のプラズモン吸収の最大吸収波長に対してプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0049】
1…光電極、3…対極、5…電解質層、11…透明基板、12…透明導電膜、13…透明導電膜、15…透明基板、20…シール部、100…色素増感型太陽電池。
図面
【図1】
0
【図2】
1