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明細書 :キャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5105501号 (P5105501)
公開番号 特開2008-001570 (P2008-001570A)
登録日 平成24年10月12日(2012.10.12)
発行日 平成24年12月26日(2012.12.26)
公開日 平成20年1月10日(2008.1.10)
発明の名称または考案の名称 キャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体及びその製造方法
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
FI C01B 31/02 101F
請求項の数または発明の数 14
全頁数 13
出願番号 特願2006-174226 (P2006-174226)
出願日 平成18年6月23日(2006.6.23)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2006年1月7日 フラーレン・ナノチューブ学会発行の「第30回記念フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム 講演要旨集」に発表
審査請求日 平成21年6月3日(2009.6.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
発明者または考案者 【氏名】飯島 澄男
【氏名】湯田坂 雅子
【氏名】宮脇 仁
【氏名】弓削 亮太
【氏名】依光 英樹
【氏名】磯部 寛之
【氏名】中村 栄一
個別代理人の代理人 【識別番号】100077838、【弁理士】、【氏名又は名称】池田 憲保
【識別番号】100082924、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 修一
【識別番号】100129023、【弁理士】、【氏名又は名称】佐々木 敬
審査官 【審査官】小野 久子
参考文献・文献 特開2006-082993(JP,A)
特表2004-534662(JP,A)
特開2006-089346(JP,A)
HASHIMOTO,A. et al,Selective deposition of a gadolinium(III) cluster in a hole opening of single-wall carbon nanohorn ,Proc Natl Acad Sci USA,米国,2004年 6月 8日,Vol.101, No.23,p.8527-8530
調査した分野 C01B 31/00-31/36
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ナノ細孔を持つカーボンナノホーンからなる物質担体に内包された第1の機能性物質を備えた物質内包カーボン複合体に、前記ナノ細孔の開口径よりも大きな径を備えた第2の機能性物質を導入してなり、前記第1の機能性物質は、ナノ炭素材料、有機機能性分子、有機金属錯体の内の少なくとも1種から選択され、前記第2の機能性物質は、金属酢酸塩を含む物質からなるとともに、前記細孔を封じるキャップ効果の機能を有することを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体。
【請求項2】
請求項1に記載のキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体において、前記ナノ炭素材料は、フラーレン、金属内包フラーレン、ナノダイヤモンドの内の少なくとも一種であり、前記有機機能性分子は、TTF、TCNQの内の少なくとも一種であり、前記有機金属錯体は、フェロセン、フタロシアニンの内の少なくとも一種であることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体において、前記金属がGd、Fe,Pt,Au、Cuを含むことを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体。
【請求項4】
請求項1乃至3の内のいずれか一項に記載のキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体において、前記金属酢酸塩が、酢酸ガドリニウム、及び酢酸鉄の内の少なくとも一種を含むことを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体。
【請求項5】
請求項1乃至4の内のいずれか一項に記載のキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体において、前記ナノ細孔の開口径は、1~2.5nmであり、前記物質担体は、内径が2~5nmであることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体。
【請求項6】
請求項1乃至5の内のいずれか一項に記載のキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体において、前記第1の機能性物質は、外径が0.1~2.0nmであることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体。
【請求項7】
ナノ細孔を持つカーボンナノホーンからなる物質担体と、前記物質担体に内包された第1の機能性物質とを備えた物質内包カーボン複合体の前記物質担体に、更に、前記ナノ細孔の開口径よりも大きな径を備えた第2の機能性物質を、前記第1の機能物質が溶解困難である第2の溶媒に溶解して、前記物質内包カーボン複合体と液相で混合して導入することを含み、前記第1の機能性物質には、ナノ炭素材料、有機機能性分子、有機金属錯体の内の少なくとも1種を用い、前記第2の機能性物質には、前記細孔を封じるキャップ効果の機能を有するとともに金属酢酸塩を含む物質を用いることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法
【請求項8】
請求項7に記載のキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法において、前記ナノ炭素材料は、フラーレン、金属内包フラーレン、ナノダイヤモンドの内の少なくとも一種であり、前記有機機能性分子は、DEX、TTF、TCNQの内の少なくとも一種であり、前記有機金属錯体は、フェロセン、フタロシアニンの内の少なくとも一種であることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法において、前記金属がGd、Fe,Pt,Au、Cuを含むことを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法
【請求項10】
請求項7乃至9の内のいずれか一項に記載のキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法において、前記金属酢酸塩として、酢酸ガドリニウム及び酢酸鉄の少なくとも一種を含む物質を用いることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法。
【請求項11】
請求項7乃至10の内のいずれか一項に記載のキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法において、前記物質担体として、内径が2~5nmのナノ炭素の壁面を酸化によって、径1~2.5nmのナノ細孔を開口させたものを用いることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか一項に記載のキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法において、酸素ガスを含む雰囲気中で300℃以上の温度の加熱温度を調整することで、前記ナノ細孔の開口の前記開口径の大きさを制御することを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法。
【請求項13】
請求項7乃至12の内のいずれか一項に記載のキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法において、前記第1の機能物質は径が0.1~2.0nmであるものを用いることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法。
【請求項14】
請求項7乃至13の内のいずれか一項に記載のキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法において、前記物質担体への前記第1の機能性物質の内包は、前記第1の機能物質を当該第1の機能性物質が可溶な第1の溶媒に溶解して前記物質担体と液相にて混合して当該物質担体に前記第1の機能性物質を内包させることによってなされていることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ開孔を持つカーボンナノホーンにフラーレンのようなナノ物質と金属錯体など異なる物性を有する物質を複数内包させ、先に取込んだ物質を外部に放出させにくく内部で安定化させた物質内包カーボン複合体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンナノホーン等のナノサイズの大きさを有するナノ炭素材に関する特性やその用途について、多くの研究が行われている。そして、カーボンナノホーンの表面に様々な物質を吸着させたり、ナノホーンの内部に保持させたりする方法等が提案されている。
【0003】
このような状況において、カーボンナノホーンのナノサイズの大きさを有するナノ炭素材に関する関心が高まり、これらのナノ炭素材を修飾して、ナノサイズ物質として特徴的な構造に由来する性質とともに、生態適合性や薬物特性等の機能をも発現させようとする試みがなされている。
【0004】
特許文献1や特許文献2に示しているように、本出願の発明者らは、カーボンナノホーンの特異な構造と性質に着目し、その内部にフラーレンなどのナノカーボンを大量に取込ませた複合体や、金属化合物および薬理活性を有する機能性有機分子を導入担持させた複合体とその製造方法に関する技術を開示している。これらの複合体は、取り込まれたナノカーボン等(以下、内包物質という。)を溶解し得る溶液と接触させると当該内包物質を徐々に放出する(以下、徐放性という。)という特性を有する。
【0005】
一方、非特許文献1には、開孔したナノホーンを酢酸ガドリニウムのメタノール溶液で処理するとGd化合物が開孔部付近のナノホーン内部に析出し、かかるGd析出処理を行ったナノホーンにはフラーレンなどの分子が内部に取込まれなくなることが報告されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の前記複合体においては、開孔部が開いたままであるので、内包物質を溶解し得る溶液と接触させると直ちに当該内包物質のカーボンナノホーンからの放出が開始する。そのため、内包物質を溶解し得る溶液の中で内包物質をカーボンナノホーンから放出させたくない場合又は放出の開始を遅延させたい場合には、前記従来の複合体はその目的を達成することができなかった。カーボンナノホーンは、極微小な構造体であり、かつ通常は凝集した集合体として存在することを考えると、内包物質の放出制御を目的としたナノホーンのコーティング処理は容易ではない。また、内包物質が十分に充填された状態では、開孔部付近が内包物質ですでに占有されているので、さらに別の物質を開孔部付近に堆積等させて、開孔部を閉鎖することは困難であると予想された。
【0007】

【特許文献1】特開2005-41716号公報
【特許文献2】特開2005-343885号公報
【非特許文献1】Proc. Nat. Acad. Sci., 2004, 101, 8527
【非特許文献2】J.Phys.Chem.,B109,17861(2005).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、カーボンナノホーンに内包した物質の、当該内包物質を溶解し得る溶液中におけるカーボンナノホーンからの放出開始を遅延させることが可能なカーボンナノホーン複合体等のキャップ効果を持つ物質内包カーボン複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本発明者がカーボンナノホーン内包物質の放出制御を目的に鋭意努力し研究し、新たに見出した現象に基づくものであり、当該現象とは、内包物質がカーボンナノホーンに十分に充填されている場合であっても、当該内包物質が所定の範囲の粒子サイズであり、かつ所定の条件下でガドリニウムを堆積させると、ガドリニウムは、開孔付近の当該第1の内包物質と置き換わりながら堆積し、ガドリニウムが開孔を閉鎖するという現象である。かかる現象に基づく本発明をなすに至ったものである。
【0010】
即ち、本発明によれば、ナノ細孔を持つカーボンナノホーンからなる物質担体に内包された第1の機能性物質を備えた物質内包カーボン複合体に、前記ナノ細孔の開口径よりも大きな径を備えた第2の機能性物質を導入してなり、前記第1の機能性物質は、ナノ炭素材料、有機機能性分子、有機金属錯体の内の少なくとも1種から選択され、前記第2の機能性物質は、金属酢酸塩を含む物質からなるとともに、前記細孔を封じるキャップ効果の機能を有することを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体が得られる。
【0012】
また、本発明によれば、前記いずれか一つのキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体において、前記ナノ炭素材料は、フラーレン、金属内包フラーレン、ナノダイヤモンドの内の少なくとも一種であり、前記有機機能性分子は、TTF、TCNQの内の少なくとも一種であり、前記有機金属錯体は、フェロセン、フタロシアニンの内の少なくとも一種であることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体が得られる。
【0014】
また、本発明によれば、前記キャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体において、前記金属がGd、Fe,Pt,Au、Cuを含むことを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体が得られる。
【0015】
また、本発明によれば、前記いずれか一つのキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体において、前記金属酢酸塩が酢酸ガドリニウム及び酢酸鉄の内の少なくとも一種を含むことを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、前記いずれか一つのキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体において、前記ナノ細孔の開口径は、1~2.5nmであり、前記物質担体は、内径が2~5nmであることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体が得られる。
【0018】
また、本発明によれば、前記いずれか一つのキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体において、前記第1の機能性物質は、外径が0.1~2.0nmであることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、ナノ細孔を持つカーボンナノホーンからなる物質担体と、前記物質担体に内包された第1の機能性物質とを備えた物質内包カーボン複合体の前記物質担体に、更に、前記ナノ細孔の開口径よりも大きな径を備えた第2の機能性物質を、前記第1の機能物質が溶解困難である第2の溶媒に溶解して、前記物質内包カーボン複合体と液相で混合して導入することを含み、前記第1の機能性物質には、ナノ炭素材料、有機機能性分子、有機金属錯体の内の少なくとも1種を用い、前記第2の機能性物質には、前記細孔を封じるキャップ効果の機能を有するとともに金属酢酸塩を含む物質を用いることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法が得られる。
【0021】
また、本発明によれば、前記キャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法において、前記ナノ炭素材料は、フラーレン、金属内包フラーレン、ナノダイヤモンドの内の少なくとも一種であり、前記有機機能性分子は、DEX、TTF、TCNQの内の少なくとも一種であり、前記有機金属錯体は、フェロセン、フタロシアニンの内の少なくとも一種であることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法が得られる。
【0023】
また、本発明によれば、前記キャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法において、前記金属がGd、Fe,Pt,Au、Cuを含むことを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法が得られる。
【0024】
また、本発明によれば、前記いずれか一つのキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法において、前記金属酢酸塩として、酢酸ガドリニウム及び酢酸鉄の内の少なくとも一種を含む物質を用いることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法が得られる。
【0025】
また、本発明によれば、前記いずれか一つのキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法において、前記物質担体として、内径が2~5nmのナノ炭素の壁面を酸化によって、径1~2.5nmのナノ細孔を開口させたものを用いることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法が得られる。
【0027】
また、本発明によれば、前記いずれか一つのキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法において、酸素ガスを含む雰囲気中で300℃以上の温度の加熱温度を調整することで、前記ナノ細孔の開口の前記開口径の大きさを制御することを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法が得られる。
【0028】
また、本発明によれば、前記いずれか一つのキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法において、前記第1の機能物質は径が0.1~2.0nmであるものを用いることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法が得られる。
【0029】
また、本発明によれば、前記いずれか一つのキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法において、前記物質担体への前記第1の機能性物質の内包は、前記第1の機能物質を当該第1の機能性物質が可溶な第1の溶媒に溶解して前記物質担体と液相にて混合して当該物質担体に前記第1の機能性物質を内包させることによってなされていることを特徴とするキャップ効果を備えた物質内包カーボン複合体の製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ナノ細孔を有する物質内包カーボンナノホーン複合体に、取込んだ物質と親和性の低い金属錯体などで細孔の開口付近の内包物と入れ替えることで、複数の成分をナノホーン内部に析出させたカーボンナノホーン複合体を作製でき、それにより開口部に金属錯体が存在するため、先に取込んだ内包物が放出されにくく安定に存在する。
【0031】
また、細孔の開口に吸着している金属及びその化合物が溶解することで、第一に内包されている物質を徐々に放出させる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0033】
図1は本発明のプロセスの一例の概要を示す図である。
【0034】
図1を参照すると、出発物質として用いるカーボンナノホーン1は、各々は、2-5nmの直径を持つ凝集体であるが、その凝集構造の大きさは、30-150nmのものが使用可能で、様々な酸化条件により、開孔する穴2のサイズを制御でき、酸素中での酸化では、酸化処理温度を変えることにより、カーボンナノホーンの穴2のサイズが制御でき、300から420℃で直径0.3から1nmの孔を開けることができる。また、特許文献2に示されるように、酸などによる処理でも可能であることを特徴としている。
【0035】
酸化処理により開孔したカーボンナノホーンにおける物質内包の手段は、開孔されたカーボンナノホーン1と内包物質3とを液相において混合し、その溶媒を蒸発させることにより実現され、この時の雰囲気は、不活性ガス中が効果的である。
【0036】
また、この場合の液相溶媒としては、適宜選択することができ、内包物質3と溶解性のある溶媒であれば、カーボンナノホーン1の内部に取込むことができる。
【0037】
本発明においては、最初に取込む物質は、溶媒に溶解されて溶液中に存在する物質で、特に、フラーレン、金属内包フラーレン、ナノダイヤモンドを代表にするナノ炭素材料、DEX(デキソメタゾン),TTF(テトラチアフルバレン)、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)のような有機機能性分子、フェロセン、フタロシアニン、シスプラチン、などの有機金属錯体を用いることも可能である。また、第1の機能性物質を溶解する溶媒としては、フラーレンに関しては、トルエン、ベンゼン、ヘキサンなど、金属内包フラーレンに関しては、トルエン、ベンゼン、ヘキサンなど、フェロセンに関しては、エタノール、エーテルなど、シスプラチンに関しては、水、DMSO、DMFなど、DEXに関しては、水、エタノール、TTFおよびTCNQに関しては、アセトニトリルなど。
【0038】
本発明においては、開孔している物質内包カーボン複合体へ第2の溶媒に溶かして導入する第2の機能性物質は、Gd、Fe、Pt、Au、Cuなど金属、金属化合物が効果的であると思われる。特に、酢酸ガドリニウム、酢酸鉄等の金属酢酸塩、塩化テトラミン白金水和物,ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウム、硫酸銅が好ましい。

【0039】
上記に示した、開孔している物質内包カーボン複合体への第二物質の導入は、内包物質が溶出しないあるいはしづらい第2の溶媒溶液中が適しており、混合溶液中での攪拌など十分行った後、フィルターなどを使って精製する。ここで、第2の溶媒としては、酢酸ガドリニウムに関しては、水、エタノール、メタノールなどが使用可能であり、酢酸鉄に関しては、水、エタノール、メタノールなどが使用可能であり、塩化テトラミン白金水和物に関しては、メタノール、水などが好ましく、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウムに関しては、水が、硫酸銅に関しては、水、メタノールが使用可能である。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明の実施例について説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【0041】
(実施例1)
実施例1では、カーボンナノホーンの開孔処理について説明する。
【0042】
カーボンナノホーンの開孔処理は、酸素ガスを用いて、570~580℃で10分間熱処理を行った。この時の、酸素の流量は、200ml/minで行った。
【0043】
(実施例2)
実施例2では、フラーレンのカーボンナノホーンへの導入について説明する。
【0044】
開孔処理されたカーボンナノホーン(ナノホーン-ox)(30mg)は、トルエン40ml中に分散させた。一方、ナノホーン-oxに内包させる物質は、フラーレン(C60)を使用した。このC60(10mg)は、ナノホーン-ox/トルエン分散液に浸漬し、十分攪拌した後、窒素雰囲気下で徐々にトルエン溶媒を蒸発させて乾燥させ、図2に示すように、C60を内包したナノホーン-ox(C60内包ナノホーン-ox)を作製した。図3に示すように、得られたサンプルは、酸素中で室温から1000℃までの範囲で熱重量分析(TGA)を行った。
【0045】
この時、C60(330~550℃)、ナノホーン-ox(550~690℃)、グラファイト不純物(690~750℃)の燃焼温度の違いからC60の量を見積もった。
【0046】
(実施例3)
実施例3では、C60内包ナノホーン-oxへのGd acetate(酢酸ガドリニウム)の導入について説明する。
【0047】
C60内包ナノホーン-ox(20mg)とGd acetate(20mg)をC60のほとんど溶解しないメタノール(15ml)に分散させ、約24時間攪拌する。その後、フィルターを使ってろ過し、カーボンナノホーンにしっかりと吸着していないGd acetateを取り除く。図4に示すように、フィルターに残ったGd acetateを担持したC60内包ナノホーン-ox(GdC60内包ナノホーン-ox)は、不活性ガス中で十分に乾燥させる。このサンプルは、図3に示すように、酸素雰囲気下で室温から1000℃までの範囲で熱重量分析を行った。この際、この条件では、残留物として残った物質は、Gd acetateが酸化されたGdになるので、この値からGdC60内包ナノホーン-oxのGd acetateの担持率が計算できる。その結果、30%担持されていることが分かった。
【0048】
(実施例4)
実施例4では、Gd acetateの除去について説明する。
【0049】
GdC60内包ナノホーン-oxは、50ml水溶液に分散させ、30分間攪拌した。その後、ろ過してフィルターに残ったサンプルを乾燥させた。この操作を5回繰り返した。図3に示すように、このサンプルの酸素雰囲気下での熱重量分析結果から、ほぼすべてのGd acetateが除去されたことが分かった。
【0050】
(実施例5)
実施例5では、Gd acetateによるC60内包ナノホーンのキャップ効果について説明する。
【0051】
C60内包ナノホーン-oxにおけるC60の放出特性は、サンプルをトルエン溶液に浸漬させた際、溶け出したC60の可視紫外吸収スペクトルによって測定した。得られたC60の吸収強度から溶液中のC60濃度に変換した(実験方法は、非特許文献2を参照)。図5に示すように、トルエン溶液中にキャップをしていないC60内包カーボンナノホーンを浸漬させると徐々に内部から放出され、約7時間で飽和し、一定になった。その放出量は、図3に示す熱量重量分析(TGA)で求めたC60内包量のほぼ90%になった。それに対して、GdC60内包カーボンナノホーンは、C60内包量の放出量が少なく、TGAで求めた放出量の約60%で安定した。その後、このサンプルは水によるリンスでGdキャップを除去し、再びトルエン中に浸漬しそのC60の放出を測定した。その結果、再びC60は放出され、TGAで求めたC60内包量の21%で安定した。また、この時のTEM像は、図6であり可視吸収スペクトルの結果と一致する。このことから、Gd acetateをキャップとしてC60内包ナノホーン-oxに担持することにより、内部のC60の放出制御が可能であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明に係るキャップ効果を持つ物質内包カーボン複合体及びその作製方法は、化学反応の触媒や金属化合物および薬理活性を有する機能性有機分子を導入担持させた複合体に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のプロセスの一例の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施例2で作製したC60内包ナノホーン-oxを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の実施例2~5で作製したサンプルのTGAである。(ナノホーン-ox:SWNHox、C60内包ナノホーン-ox:C60@SWNHox、GdC60内包ナノホーン-ox:GdC60@SWNHox)
【図4】本発明の実施例3で作製したGdC60内包ナノホーン-oxを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明の実施例4で作製したサンプルによる可視・紫外吸収スペクトルから得られたC60放出量の時間依存性を示す図である。
【図6】本発明の実施例5で、GdC60内包ナノホーンがトルエン中でC60を放出した後、本発明の実施例4でGdキャップを取り除き、再度トルエンで中でC60を放出させたときの透過電子顕微鏡写真である。
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図5】
2
【図2】
3
【図4】
4
【図6】
5