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明細書 :ナノチューブの内外への物質搬送方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5416332号 (P5416332)
公開番号 特開2008-019117 (P2008-019117A)
登録日 平成25年11月22日(2013.11.22)
発行日 平成26年2月12日(2014.2.12)
公開日 平成20年1月31日(2008.1.31)
発明の名称または考案の名称 ナノチューブの内外への物質搬送方法
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
FI C01B 31/02 101F
請求項の数または発明の数 14
全頁数 12
出願番号 特願2006-190920 (P2006-190920)
出願日 平成18年7月11日(2006.7.11)
審査請求日 平成21年4月24日(2009.4.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
発明者または考案者 【氏名】飯島 澄男
【氏名】湯田坂 雅子
【氏名】宮脇 仁
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】浅野 裕之
参考文献・文献 特開2005-343885(JP,A)
特開2007-070155(JP,A)
YUGE,R. et al,Controlling the Incorporation and Release of C60 in Nanometer-Scale Hollow Spaces inside Single-Wall Carbon Nanohorns ,Journal of Physical Chemistry B,2005年,Vol.109,p.17861-17867
調査した分野 C01B 31/00~31/02
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ナノチューブと内包対象物質を、前記ナノチューブに前記内包対象物質が内包されていない状態で、液相を媒介することなく直接、搬入用蒸気としての、内包対象物質を溶解する物質の蒸気に曝すことで内包対象物質を気化せずにナノチューブ内に搬入して内包させることを特徴とするナノチューブ物質搬送方法。
【請求項2】
内包対象物質が内包されているナノチューブを、液相を媒介することなく直接、搬出用蒸気としての、内包対象物質が不溶な物質、内包対象物質よりもナノチューブ内で吸着しやすい物質、およびナノチューブ内で分子間力により安定に存在しやすい物質のうちの少なくともいずれかの蒸気に曝すことで内包対象物質を気化せずにナノチューブ外へ搬出することを特徴とするナノチューブ物質搬送方法。
【請求項3】
搬入用蒸気に25分以上曝すことを特徴とする請求項1に記載のナノチューブ物質搬送方法。
【請求項4】
搬入用蒸気または搬出用蒸気は、有機物または無機物のいずれかであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のナノチューブ物質搬送方法。
【請求項5】
有機物が、脂肪族化合物、アルコール類、脂環式化合物、芳香族化合物、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、または二硫化炭素のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載のナノチューブ物質搬送方法。
【請求項6】
無機物が、H2O、HCl、CO2、H2O2、またはNOXのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載のナノチューブ物質搬送方法。
【請求項7】
ナノチューブが、端部もしくは壁部に開口を有する、カーボンナノチューブまたはカーボンナノホーン、炭素と炭素以外の元素を有するヘテロナノチューブまたはヘテロナノホーン、もしくは炭素以外の元素で構成されているナノチューブまたはナノホーン、あるいはこれらのミクロ孔体のいずれかであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のナノチューブ物質搬送方法。
【請求項8】
内包対象物質が、無機物、有機物、無機・有機複合体、有機金属化合物、金属、または錯体のいずれかであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のナノチューブ物質搬送方法。
【請求項9】
内包対象物質が、フラーレン、フラーレン有機修飾体またはフラーレン有機複合体のいずれかであることを特徴とする請求項7に記載のナノチューブ物質搬送方法。
【請求項10】
ナノチューブが、端部もしくは壁部に開口を有する、カーボンナノチューブまたはカーボンナノホーン、炭素と炭素以外の元素を有するヘテロナノチューブまたはヘテロナノホーン、もしくは炭素以外の元素で構成されているナノチューブまたはナノホーン、あるいはこれらのミクロ孔体のいずれかであって、内包対象物質が、C60フラーレンであって、かつ、搬入用蒸気がトルエンであることを特徴とする請求項に記載のナノチューブ物質搬送方法。
【請求項11】
ナノチューブが、端部もしくは壁部に開口を有する、カーボンナノチューブまたはカーボンナノホーン、炭素と炭素以外の元素を有するヘテロナノチューブまたはヘテロナノホーン、もしくは炭素以外の元素で構成されているナノチューブまたはナノホーン、あるいはこれらのミクロ孔体のいずれかであって、内包対象物質が、C60フラーレンであって、かつ、搬出用蒸気がエタノールであることを特徴とする請求項に記載のナノチューブ物質搬送方法。
【請求項12】
ナノチューブが、端部もしくは壁部に開口を有する、カーボンナノチューブまたはカーボンナノホーン、炭素と炭素以外の元素を有するヘテロナノチューブまたはヘテロナノホーン、もしくは炭素以外の元素で構成されているナノチューブまたはナノホーン、あるいはこれらのミクロ孔体のいずれかであって、内包対象物質が、シスプラチンであって、かつ、搬入用蒸気が水蒸気であることを特徴とする請求項1に記載のナノチューブ物質搬送方法。
【請求項13】
ナノチューブが、端部もしくは壁部に開口を有する、カーボンナノチューブまたはカーボンナノホーン、炭素と炭素以外の元素を有するヘテロナノチューブまたはヘテロナノホーン、もしくは炭素以外の元素で構成されているナノチューブまたはナノホーン、あるいはこれらのミクロ孔体のいずれかであって、内包対象物質が、シスプラチンであって、かつ、搬出用蒸気がジメチルホルムアミドであることを特徴とする請求項2に記載のナノチューブ物質搬送方法。
【請求項14】
搬入促進剤もしくは搬出促進剤として、内包対象物質以外の物質を、蒸気暴露前にナノチューブと内包対象物質と共存させておいて、その後、搬入用蒸気もしくは搬出用蒸気を曝すことを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載のナノチューブ物質搬送方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノチューブの内外への物質搬送方法に関するものである。さらに詳しくは、ナノチューブと内包対象物質を、これらの共存状態で搬入用蒸気に曝すことで内包対象物質をナノチューブ内に搬入して内包させることを特徴とするナノチューブ物質搬送方法と、内包対象物質が内包されているナノチューブを、搬出用蒸気に曝すことで内包対象物質をナノチューブ外へ搬出することを特徴とするナノチューブ物質搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノチューブは、内部に様々な分子、粒子を内包することが可能であり、これによってこれまでにはない優れた特性を有することから、大きな注目を集めている。その中でも、ナノホーンは、大きな表面積がもたらす高い吸着性が特徴で、化学修飾等により吸着性を高め、燃料電池等への応用が期待されている。
【0003】
従来、ナノチューブ、ナノホーンの内部あるいは外部へ物質を搬送する方法としては、物質を気化する方法、溶液から搬入する方法が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、搬入物質を気化する方法は、気化せずに分解してしまう物質には適応できない問題点がある。また、溶液法は、溶媒が大量に使用されることから、コストが高くなるだけでなく、環境悪化を誘引する問題点がある。
【0005】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、気化せずに分解してしまう物質にも適応可能であり、溶媒を大量に使用しない、低コストで低環境負荷の新しいナノチューブの内外への物質搬送方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、第1には、ナノチューブと内包対象物質を、これらの共存状態で搬入用蒸気に曝すことで内包対象物質をナノチューブ内に搬入して内包させることを特徴とするナノチューブ物質搬送方法を、第2には、内包対象物質が内包されているナノチューブを、搬出用蒸気に曝すことで内包対象物質をナノチューブ外へ搬出することを特徴とするナノチューブ物質搬送方法を提供する。
【0007】
第3には、搬入用蒸気は、内包対象物質を溶解する物質の蒸気であることを特徴とする上記ナノチューブ物質搬送方法を、第4には、搬出用蒸気は、内包対象物が不溶な物質、内包対象物質よりもナノチューブ内で吸着しやすい物質、およびナノチューブ内で分子間力により安定に存在しやすい物質のうちの少なくともいずれかの蒸気であることを特徴とする上記ナノチューブ物質搬送方法を提供する。
【0008】
第5には、搬入用蒸気または搬出用蒸気は、有機物または無機物のいずれかであることを特徴とする上記ナノチューブ物質搬送方法を、第6には、有機物が、脂肪族化合物、アルコール類、脂環式化合物、芳香族化合物、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、または二硫化炭素のいずれかであることを特徴とする上記ナノチューブ物質搬送方法を、第7には、無機物が、H2O、HCl、CO2、H2O2、またはNOXのいずれかであることを特徴とする上記ナノチューブ物質搬送方法を提供する。
【0009】
第8には、ナノチューブが、端部もしくは壁部に開口を有する、カーボンナノチューブまたはカーボンナノホーン、炭素と炭素以外の元素を有するヘテロナノチューブまたはヘテロナノホーン、もしくは炭素以外の元素で構成されているナノチューブまたはナノホーン、あるいはこれらのミクロ孔体のいずれかであることを特徴とする上記ナノチューブ物質搬送方法を提供する。
【0010】
第9には、内包対象物質が、無機物、有機物、無機・有機複合体、有機金属化合物、金属、または錯体のいずれかであることを特徴とする上記ナノチューブ物質搬送方法を、第10には、内包対象物質が、フラーレン、フラーレン有機修飾体またはフラーレン有機複合体のいずれかであることを特徴とする上記ナノチューブ物質搬送方法を提供する。
【0011】
第11には、内包対象物質が、C60フラーレンであって、搬入用蒸気がトルエンであり、搬出用蒸気がエタノールであることを特徴とする上記ナノチューブ物質搬送方法を提供する。
【0012】
第12には、内包対象物質が、シスプラチンであって、搬入用蒸気が水蒸気であり、搬出用蒸気がジメチルホルムアミドであることを特徴とする上記ナノチューブ物質搬送方法を提供する。
【0013】
第13には、搬入促進剤もしくは搬出促進剤として、内包対象物質以外の物質を、蒸気暴露前にナノチューブと内包対象物質と共存させておいて、その後、搬入用蒸気もしくは搬出用蒸気を曝すことを特徴とする上記ナノチューブ物質搬送方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、気化せずに分解してしまう内包対象物質にも適応可能であり、溶媒を大量に使用しない、低コストで低環境負荷である、ナノチューブの内外への物質搬送が可能となる。これにより、ハイブリッドカーボンナノチューブ・ナノホーンの作製、ハイブリッド多孔体の作製、チューブ内およびミクロ孔の清掃等に応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
本発明においては、ナノチューブと内包対象物質の共存状態で搬入用蒸気に曝して、ナノチューブ内へ内包対象物質を搬送して内包させる。あるいは、ナノチューブ内に内包対象物質が内包されている状態で搬出用蒸気に曝して、ナノチューブ外へ内包物質を搬送する。
【0017】
このような本発明の方法においては、ナノチューブとは総称であり、端部もしくは壁部に開口を有し、この開口が内部中空部と連通している構造を有するナノ構造体であることを意味している。一般的には、チューブ軸方向に対する直交断面の径がより小さいものとして考慮される。そして、本発明においては、これらのナノ構造体は単一のものであってもよいし、集合した状態にあってもよい。
【0018】
本発明における以上のとおりのナノチューブとしては、以下のようなものが例示される。例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、または、炭素と炭素以外の元素を有するヘテロナノチューブ、ヘテロナノホーン、または、炭素以外の元素で構成されているナノチューブ、ナノホーン、または、それらの集合、あるいは凝集、もしくは変形されたミクロ孔体であればよい。また、チューブ外壁に無数の孔を開ける処理を施したナノチューブは、分子の出入りを容易にすることから、さらに好適に使用することができる。
【0019】
本発明における内包対象物質は、内包されうるものであれば特に限定されるものではない。無機物、有機物、無機・有機複合体、有機金属化合物、金属、または錯体等であってよい。また、内包対象物質は、それ自身が、あるいはナノチューブに内包されることによって、生理活性、触媒、電気・電子機能、光機能、等々の機能特性を実現するものであってよい。例えば、フラーレン類は、さらに内部に内包物質を内包でき、種々の特性を有する物質を作製できることから、好適に使用することができる。これらのフラーレン類としては、C60フラーレンやより高次のフラーレン、あるいはこれらの多量体や有機分子の結合による各種の有機修飾体、PEG(ポリエチレングリコール)、PVP(ポリビニルピロリドン)、シクロデキストリン等との有機複合体等が例示される。
【0020】
本発明における搬出用蒸気、搬入用蒸気は、有機物、無機物等、蒸気であれば特に限定されるものではないが、内包対象物質と蒸気との親和性、蒸気とナノチューブ内壁との吸着性等を考慮して用いることができる。搬入用蒸気としては、内包対象物質を溶解する物質の蒸気であることが、また、搬出用蒸気としては、内包対象物質が不溶な物質、内包対象物質よりもナノチューブ内で分子間力により安定して存在しやすい物質のうちから選択された物質の蒸気であることが一般的には好適に考慮される。
【0021】
以上のようなことから、例えば、無機物の蒸気が、安価で一般的なH2O、HCl、CO2、H2O2、NOX等が例示され、有機物では、アルコール、芳香族、脂肪族、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、二硫化炭素等が例示され、適宜選択すればよい。より具体的な選択としては、以下のように選択することが好ましい。例えば、C60はトルエンに溶解し、1:2の溶媒和物を形成することが知られている。このため、C60はトルエン蒸気に曝すことでナノチューブ内へ搬入される。また、C60が内包されているときは、内包物よりもナノチューブ内に吸着しやすい、あるいは、吸着しなくともC60が溶解しないような溶媒の蒸気で、ナノチューブ内部で蒸気分子の分子間力が強く安定に存在できるような蒸気を選択することが好ましい。この場合、搬出用蒸気としては、例えば、水素結合を有する水、エタノール等のアルコール類が好適に用いられる。
【0022】
また、本発明においては、搬入促進剤もしくは搬出促進剤として、内包対象物質以外の物質を、蒸気暴露前にナノチューブと内包対象物質と共存させておいて、その後、搬入用蒸気もしくは搬出用蒸気を曝すことが有効な手段として考慮される。
【0023】
そこで以下に実施例を説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0024】
<実施例1>エタノールによる搬出とトルエンによる搬入
(1)開孔ナノホーン(NHOX)の調製
公知の手法(Chem. Phys. Lett., 1999, 309, 165-175)により、グラファイト(99.999%)を、Ar雰囲気下(760Torr)、室温でCOレーザーアブレーション(Power:3kW、ビーム直径:3.5mm)することにより、単層ナノホーンを得た。この単層ナノホーンを、酸素流通下に、10分間、570~580℃で熱処理することで開孔ナノホーン(NHOX)を得た。
(2)C60とトルエンが内包されたNHOX(C60/tolu@NHOX、C60/tolu@NHOX(HTHV))の調製
公知の手法により、C60のトルエン溶液にNHOXを浸漬させた後、窒素フロー(760Torr)でトルエンを気化させ、黒色粉末であるC60/tolu@NHOXを得た。また、C60/tolu@NHOXを1×10-6Torrの真空中で、150℃、30分間加熱してC60/tolu@NHOXからトルエンが除去されたC60/tolu@NHOX(HTHV)も作製した。
(3)開孔ナノホーンからC60のエタノール搬出
C60とトルエンが内包されたNHOX(C60/tolu@NHOX、C60/tolu@NHOX(HTHV))を室温にて、エタノール蒸気に3~24時間曝した。
【0025】
図1は、参考としてNHOX(a)、C60/tolu@NHOX(b)およびエタノール(c)に2時間浸漬したXRD分析結果であり、図2は、エタノール蒸気にC60/tolu@NHOXを暴露した時間変化によるXRD分析結果である。
【0026】
図1より、開孔ナノホーンNHOXのXRD(a)と比較して、C60とトルエンが内包された開孔ナノホーンNHOX(C60/tolu@NHOX)のXRD(b)には、C60結晶の鋭いピークはなく、20°付近に内包されたC60のブロードなピークが観察された。また、室温にて、C60/tolu@NHOXをエタノールに2時間浸漬することでC60結晶のピーク(★)が17.5°と21°に観察された(c)。
【0027】
また、図2は、室温にて、C60/tolu@NHOXをエタノール蒸気にさまざまな時間曝したところ、エタノール2時間浸漬(図1c)と同様のC60結晶ピークが、3時間で17.5°と21°に観察された。このピークは、エタノール蒸気に曝す時間経過とともに強く、かつ、鋭くなった。
【0028】
これらより、NHOXに内包されていたC60が、エタノール蒸気によりナノホーン内より搬出され、サイズが70nmあるいはそれ以上の結晶粒子となったことを示している。
【0029】
図3は、エタノール蒸気にC60/tolu@NHOX(HTHV)を暴露した時間変化によるXRD分析結果である。
【0030】
図3より、C60が内包された開孔ナノホーン(C60/tolu@NHOX(HTHV))のXRD(a)には、C60結晶の鋭いピークはなく、20°付近に内包されたC60のブロードなピークが観察された。室温にて、C60/tolu@NHOX(HTHV)をエタノール蒸気に5時間(b)あるいは24時間(c)曝した結果、C60結晶のピークは観察されたが、図2と比較して、強度が非常に弱く、エタノールによる搬出速度が遅いことがわかる。
【0031】
これらより、C60とともに内包されているトルエンは、C60のエタノールによる搬出を加速する効果があり、トルエンは搬出促進剤として機能することがわかる。
【0032】
<実施例2>エタノールによる搬出とトルエンによる搬入の繰り返し
実施例1のC60/tolu@NHOXをエタノール蒸気に曝してC60が搬出されたナノホーンを、さらにトルエン蒸気に曝した。その後、エタノール、トルエンの蒸気に交互に繰り返し曝した。
【0033】
図4は、C60/tolu@NHOXにエタノール蒸気とトルエン蒸気を交互に曝したXRD分析結果である。
【0034】
図4より、C60/tolu@NHOX(a)からC60をエタノール蒸気で搬出した(b)後、室温でトルエン蒸気に25分以上曝す(c)ことで、観察されていたC60結晶ピークは、ブロードなピークに変化した。その後、エタノール蒸気暴露(d)とトルエン蒸気暴露(e)を繰り返すことができる。
【0035】
これらより、トルエン蒸気は、C60とナノホーンが共存しているとき、C60をナノホーン内に搬入する効果があることがわかる。また、再搬入の速度は、搬出の速度よりも速いことがわかる。
【0036】
図5には、NHOX(a)とC60/tolu@NHOX(b)のTEM像を示す。図5-bよりNHOX内部にC60の存在が確認できる。また、エタノール蒸気を曝した後は、NHOX内部には少しのC60を残し、空になっていた(c)。そして、C60結晶がNHOXの外に観察され(d)、格子面間隔が0.8nmであり、C60結晶の(111)面間隔と一致した(d-A)。さらにC60多結晶体のエッジ部にC60分子が観察され(d-B)、これらのTEM像は、XRDの結果を裏付けるものであった。
【0037】
<実施例3>シスプラチンの水による搬入とDMFによる搬出
(1)シスプラチン(CDDP)とNHOXの内包・共存物(CDDP@NHOX)の調製
CDDP-DMF(ジメチルホルムアミド)溶液に実施例1(1)と同様の手法で作製したNHOXを分散させ、DMFを窒素気流中で乾燥させてCDDP@NHOXを得た。
(2)CDDPの水による搬入とDMFによる搬出
CDDP@NHOXを水蒸気に15日間曝した。その後、DMFの蒸気に15日間曝した。
【0038】
図6には、CDDP@NHOX(a)、水蒸気に15日間曝したCDDP@NHOX(b)、DMFの蒸気に15日間曝したCDDP@NHOX(c)についてのXRD分析結果を示す。
【0039】
図6より、CDDP@NHOXでは内包されずに外部に取り残されたCDDPの結晶ピーク(※)が観察される(a)が、水蒸気に15日間曝す(b)と、CDDP由来の結晶ピークが消滅し、NHOXの外部に取り残されたCDDPがNHOX内部に搬入されたことがわかる。一方、CDDP@NHoxをDMFに15日間曝す(c)と、CDDP結晶ピークが非常に強くなり、内包されていたCDDPが外部に放出されたことがわかる。
【0040】
図7には、CDDP@NHOX(a)、CDDP@NHOXを水蒸気に15日間曝したもの(b)のTEM像を示す。
【0041】
図7より、CDDPのクラスター(黒い粒)のサイズと量が水蒸気に曝した後、増加していることがわかる。このことより、水蒸気によってCDDPがNHOX内部に搬入されたことがわかる。
【0042】
以上のように、本発明によれば、ナノチューブと内包対象物質を共存させた状態で、これらを、搬入用蒸気に曝して、ナノチューブ内へ内包対象物質を搬送させることで、また、ナノチューブ内に内包対象物質が内包されている状態で、これらを、搬出用蒸気に曝して、ナノチューブ外へ内包物質を搬送させることで、気化せずに分解してしまう内包対象物質にも適応可能であり、溶媒を大量に使用しない、低コストで低環境負荷である、ナノチューブの内外への物質搬送が可能となる。さらには、ハイブリッドカーボンナノチューブ・ナノホーンの作製、ハイブリッド多孔体の作製、チューブ内およびミクロ孔の清掃等に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】NHOX、C60/tolu@NHOXおよびエタノールに2h浸漬させてC60をNHOXに内包させたXRD分析結果である。
【図2】エタノール蒸気にC60/tolu@NHOXを暴露した時間変化によるXRD分析結果である。
【図3】エタノール蒸気にC60/tolu@NHOX(HTHV)を暴露した時間変化によるXRD分析結果である。
【図4】C60/tolu@NHOXをエタノール蒸気暴露とトルエン蒸気暴露を交互に繰り返した時のXRD分析結果である。
【図5】NHOX、C60/tolu@NHOX、C60/tolu@NHOXをエタノール蒸気に曝したもの、およびNHOX外へ搬出されたC60結晶のTEM像である。
【図6】CDDP@NHOX、水蒸気に15日間曝したCDDP@NHOX、あるいは、DMFの蒸気に15日間曝したCDDP@NHOXについてのXRD分析結果である。
【図7】CDDP@NHOXおよびCDDP@NHOXを水蒸気に15日間曝したもののTEM像である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図6】
4
【図5】
5
【図7】
6