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明細書 :メラニン生成抑制能を有する微生物とメラニン生成抑制剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4139418号 (P4139418)
公開番号 特開2006-304808 (P2006-304808A)
登録日 平成20年6月13日(2008.6.13)
発行日 平成20年8月27日(2008.8.27)
公開日 平成18年11月9日(2006.11.9)
発明の名称または考案の名称 メラニン生成抑制能を有する微生物とメラニン生成抑制剤
国際特許分類 C12N   1/20        (2006.01)
A61K   8/99        (2006.01)
A61Q  19/02        (2006.01)
A61K  35/74        (2006.01)
C12R   1/00        (2006.01)
FI C12N 1/20 ZNAA
A61K 8/99
A61Q 19/02
A61K 35/74 G
C12N 1/20 ZNAA
C12R 1:00
請求項の数または発明の数 3
微生物の受託番号 FERM P-19168
全頁数 9
出願番号 特願2006-208233 (P2006-208233)
分割の表示 特願2003-008683 (P2003-008683)の分割、【原出願日】平成15年1月16日(2003.1.16)
出願日 平成18年7月31日(2006.7.31)
審査請求日 平成18年7月31日(2006.7.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】渡邉 正己
【氏名】児玉 靖司
【氏名】鈴木 啓司
【氏名】竹下 哲史
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】水落 登希子
参考文献・文献 DDBJ/EMBL/GenBank,1999年10月 2日,Accession No.AF124521
DDBJ/EMBL/GenBank,2000年11月 9日,Accession No.AJ391197
調査した分野 C12N 1/00ー7/08
A61K 8/99
A61K 35/00ー35/84
A61Q 19/02
JSTPlus(JDreamII)
JMEDPlus(JDreamII)
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)


特許請求の範囲 【請求項1】
メラニン生成抑制能を有する微生物Ruegetria NB6450(FERM P-19168)。
【請求項2】
請求項1に記載の微生物の培養上清を有効成分として含有するメラニン生成抑制剤。
【請求項3】
請求項2に記載のメラニン生成抑制剤を含有する化粧料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、メラニン生成抑制能を有する新規の微生物と、この微生物菌体またはその菌体抽出物を有効成分とするメラニン生成抑制剤、および化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メラニン産生細胞(メラノサイト)におけるメラニン生成は、美容の観点ばかりか皮膚の老化や疾病発現と密接に関連した現象である。生体内におけるメラニン生成は、チロシンを前駆物質としてチロシナーゼによりドーパを経由してインドールキノンが合成され、さらに自動酸化によってメラニンに至る経路で行われる。
【0003】
従来、チロシナーゼ活性を阻害することによりメラニンの生成を抑制する物質としては、ビタミンC、コウジ酸、システイン、アルブミン、グルタチオン、ハイドロキノン等が知られている。また、天然物由来のメラニン生成抑制物質としては、セリ科植物抽出物、胎盤抽出物等も知られている。
【0004】
さらに、メラニン生成抑制能を有する微生物やその抽出物を利用したメラニン生成の抑制技術としては、トリコデルマ属に属する微生物の産生物(特許文献1)、ビフィドバクテリウム属微生物の菌体抽出物(特許文献2)、未同定の微生物菌株MEL-1(FERM P-12991)(特許文献3)、糸状菌HAM-1株の抽出物(特許文献4)、糸状菌の2次代謝産物AFT-606(特許文献5)等が知られている。

【特許文献1】特開平2-145189号公報
【特許文献2】特開平5-331036号公報
【特許文献3】特開平6-269278号公報
【特許文献4】特開平7-213294号公報
【特許文献5】特開平8-104695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ビタミンCやコウジ酸等の物質は、一般に安定性が低く、またその効果が十分でなかったり、安全性に問題があった。例えば、ビタミンCを高濃度で使用した場合には酸化作用を促進することが知られている。またコウジ酸はその不快臭によって化粧料等への使用が敬遠されている。また、最近、コウジ酸には癌原性が疑われている。
【0006】
一方、天然物由来や微生物または微生物由来のメラニン抑制物質は、安全性や強いメラニン生成抑制作用が主張されてはいるが、広範な用途という観点からは安定性に問題を有している。特に、従来の天然物由来物質や微生物、微生物抽出物は温度安定性が低く、例えば全身美白等に有効な温水入浴時での使用は不可能であった。
【0007】
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、温度安定性に優れ、強いメラニン生成抑制能を有する新規微生物を提供することを課題としている。
【0008】
さらにこの出願の発明は、この微生物を利用したメラニン生成抑制剤、および化粧料を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この出願は、前記の課題を解決するための発明として、Ruegetria属に属する微生物であって、配列番号2の塩基配列と90%以上相同の16S rDNA配列を有し、メラニン生成抑制能を有することを特徴とする微生物を提供する。
【0010】
またこの出願は、前記微生物として、Ruegetria NB6450(FERM P-19168)を提供する。
【0011】
さらにこの出願は、前記の微生物の培養上清を有効成分として含有するメラニン生成抑制剤を提供する。
【0012】
またさらに、この出願は、前記のメラニン生成抑制剤を含有する化粧料を提供する。
【0013】
以下、前記の各発明について、実施形態を説明する。
【発明の効果】
【0014】
この出願によって、温度安定性に優れ、強力なメラニン生成抑制能を有する新規微生物が提供される。さらにこの出願によって、高温でもメラニン生成抑制作用を発揮するメラニン生成抑制剤と、この抑制剤を含有する新しい化粧料が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明のRoseobacter属に属する微生物は、具体的には、Roseobacter denitrifican、Roseobacter gallaeciensis、Roseobacter litoralis等である。
【0016】
またRuegeria属の微生物は、具体的には、Ruegeria algicola、Ruegeria atlantica、Ruegeria gelatinovorans等である。
【0017】
またRoseobacter属微生物の近縁微生物としては、Rhodospirillum sp.、Rickettisia sp.、Rhodobacter.,Sphingomonas sp.等を挙げることができる。Ruegeria属微生物の近縁微生物としては、Agrobacterium sp.、Stappia sp.、Ahrensia sp.等を挙げることができる。
【0018】
この発明の微生物は、これらの微生物から、例えば後記実施例に示した方法によってメラニン生成抑制能を検定し、強いメラニン生成抑制を示す菌株を選択することによって得ることができる。すなわち、チロシナーゼによる基質(ドーパ)の変性を、対照比40%以上、好ましくは50%以上抑制する微生物を選択する。
【0019】
この出願の発明は、微生物の具体例として、Roseobacter NB3204株およびRuegeria NB6450株を提供する。
【0020】
Roseobacter NB3204株は、この出願の発明者らが長崎県南高来郡国見町倉地川河口で採取した泥砂サンプルから分離したRoseobacter属微生物であり、2002年12月20日付で独立行政法人産業技術研究所特許微生物寄託センターに受託番号FERM P-19167として特許寄託されている。
【0021】
このRoseobacter NB3204株(FERM P-19167)は、好気性のグラム陰性桿菌である。また、D-fructose、methyl pyruvate、mono-methyl succinate、beta-hydroxybutyric acid、D,L-lactic acid、alaninamide、D-alanine、L-glutamic acid、L-proline、inosine、uridine、thymidine、およびglycerolの資化性を有している。
【0022】
一方、Ruegeria NB6450株は、発明者らが長崎県南高来郡南有馬町有馬川河口で採取した砂と泥のサンプルから分離したRuegeria属微生物であり、同じく2002年12月20日付で特許微生物として寄託されている(受託番号FERM P-19168)。
【0023】
このRuegeria NB6450株(FERM P-19168)もまた、好気性のグラム陰性桿菌であり、beta-hydroxybutyric acid、D,L-lactic acid、alaninamide、およびglycerolの資化性を有している。
【0024】
これらの微生物Roseobacter NB3204株(FERM P-19167)およびRuegeria NB6450株(FERM P-19168)は塩類要求性を有し、海水培地で生育する。例えば、煮沸殺菌した人口海水Marine Agar 2216培地(pH7.6;Difco社)等で良好に生育させることができる。また、-80℃程度の温度で凍結保存することもできる。
【0025】
また、Roseobacter NB3204株はその16s rDNAが配列番号1の塩基配列を有すること、Ruegeria NB6450株はその16s rDNAが配列番号2の塩基配列を有することによって特徴付けることもできる。さらに、Roseobacter属微生物およびRuegeria微生物、並びにこれらの近縁微生物は、それぞれ配列番号1または配列番号2の塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上相同の16s rDNAを有する微生物と定義することもできる。
【0026】
この発明のメラニン生成抑制剤は、前記のとおりのメラニン生成抑制能を有する1以上の微生物の菌体、または1以上の菌体抽出物を有効成分とする。
【0027】
菌体としては、菌体破壊物や乾燥菌体を含む。また菌体抽出物としては、微生物の培養上清、その濃縮液、あるいは水またはアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)による公知の抽出法によって抽出された菌体成分等である。
【0028】
この発明のメラニン生成抑制剤は、前記のとおりの微生物菌体または菌体抽出物を実質的に単独で含むものであってもよく、あるいは培地や蒸留水等に懸濁したものであってもよい。
【0029】
さらにこの発明の化粧料は、前記のメラニン生成抑制剤を単独で、または2種以上を組み合わせて配合することができ、その配合量は、化粧料中のメラニン生成抑制剤を0.001~10重量%、好ましくは0.1~5重量%程度とする。
【0030】
この発明の化粧料には、前記の成分のほか、通常の化粧料に用いられる成分、例えば油剤、界面活性剤、緩衝剤、水、低級アルコール、多価アルコール、粉体、保湿剤等の美容成分、増粘剤、防腐剤、色素、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料、キレート剤等を、メラニン生成抑制剤の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0031】
この発明の化粧料は、その形態には限定されず、例えば乳液、クリーム、パック、化粧水、ファンデーション等として好適に使用することができる。また、この発明の微生物およびその菌体抽出物は温度安定性が高く、特に菌体抽出物は100℃の温度でもメラニン生成抑制作用を示すため、特に高温で使用する入浴剤、温熱パック等としての使用に適している。
【0032】
以下、この発明の微生物について行った試験結果を示す。
(1) 16s rDNA塩基配列の決定
Roseobacter NB3204株(FERM P-19167)およびRuegeria NB6450株(FERM P-19168)から公知の方法(例えば、Sambrook and Maniatis, in Molecular Cloning-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989; Ausubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995等)に基づいてDNAを抽出し、PCR法によって16s rDNAを増幅した。PCRプライマーとしては、27f(5'-agagtttgatcctggctcag-3':配列番号3)および1492r(5'-ggctaccttgttacgactt-3':配列番号4)を用いた。またPCR条件は表1のとおりとした。
【0033】
【表1】
JP0004139418B2_000002t.gif

【0034】
増幅したDNAについてABI PRISMTM 310NT Genetic Analyzer(Applied Biosystems社)を用いて塩基配列を解析し、得られた配列をGenBankに登録されている配列(GenBank/国立遺伝学研究所)およびMicroSeqTMAnalysis Software(Applied Biosystems社)のデーターベースと比較した。その結果、Roseobacter NB3204株の16s rDNAは配列番号1、Ruegetria NB6450株の16s rDNAは配列番号2の塩基配列を有していることが確認された。
【0035】
さらに、近縁種との系統樹をMicroSeqTM Analysis Softwareを用いて近隣結合法(NJ法)により作成した(図1、2)。

(2) 微生物培養上清のメラニン生成抑制能
Roseobacter NB3204株およびRuegeria NB6450株をそれぞれマリンブロース5mlに1白金耳植え付け、20oCで5日間静置培養後、培養液を3.600rpm5分間遠心し上清を分離した。その培養上清100μlを取り、1mMドーパ(基質)および10μg/mlチロシナーゼ(酵素)と37oCで10および20分間反応させた。メラニン生成量は、波長475nmの吸光度をもとに定量した。また、コントロールしてビタミンCおよびコウジ酸の効果も測定した。
【0036】
結果は、図3~5に示した通りであり、Roseobacter NB3204株およびRuegeria NB6450株の培養上清は、ビタミンCおよびコウジ酸と同等またはそれ以上の強いメラニン生成抑制作用を有することが確認された。

(3) 微生物培養上清の温度安定性
前記(2)と同様にして得たRoseobacter NB3204株およびRuegeria NB6450株の培養上清を100oCで3分間の加熱処理し、前記(2)と同様にしてメラニン生成に対する効果を測定した。
【0037】
結果は図6に示したとおりであり、100℃での加熱によっても、培養上清のメラミン生成抑制能は失活しないことが確認された。

(4) メラニン産生細胞のメラニン生成に対する効果
ヒトメラニン産生細胞を培養し、前記(2)と同様にして得たRoseobacter NB3204株およびRuegeria NB6450株の培養上清を細胞培養液中に添加した。その後、細胞をトリプシン処理によって回収、PBS-で洗浄後、再び3,000rpm×30秒間で遠沈し、上澄みを吸引した。さらにPBS-で洗浄後、再び3,000rpm×30秒間で遠心、上澄みを吸引し、超純水200μlを加え軽く攪拌した。さらにエタノール:エーテル=1:1溶液1mlを加え、軽く攪拌して15分間放置し、その後3000rpm×30秒で遠心分離し、上澄みを吸引した。さらに、10%DMSO/NaOH溶液1mlを加え攪拌し、80℃で5分間インキュベートして攪拌し、80℃で10分間インキュベートした後、吸光度(475nm)を測定した。
【0038】
その結果、Roseobacter NB3204株およびRuegeria NB6450株の培養上清はいずれも、メラニン産生細胞のメラニン生成を顕著に抑制することが確認された。

(5) 還元能力
ビタミンCのメラニン生成抑制能は、ビタミンCの還元能に依存することが知られている。そこで、Roseobacter NB3204株およびRuegeria NB6450株の培養上清について還元能を測定した。すなわち、前記(2)のメラニン生成測定系に、鉄塩化第二鉄(三価の鉄)とフェナントロリンを加え、フェナントロリンが還元された二価の鉄と特異的に結合することによる赤色反応によって還元能を測定した。コントロールとしてビタミンCおよびコウジ酸の還元能を同様にして測定した。
【0039】
その結果、ビタミンCには明らかな還元能があり、コウジ酸も僅かに還元能を有するが、Roseobacter NB3204株およびRuegeria NB6450株の培養上清には還元作用は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上詳しく説明したとおり、この出願によって、温度安定性に優れ、強力なメラニン生成抑制能を有する新規微生物が提供される。さらにこの出願によって、高温でもメラニン生成抑制作用を発揮するメラニン生成抑制剤と、この抑制剤を含有する新しい化粧料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】Roseobacter NB3204株の近縁種を示す系統樹である。
【図2】Ruegeria NB6450株の近縁種を示す系統樹である。
【図3】Roseobacter NB3204株およびRuegeria NB6450株のそれぞれの培養上清とビタミンCのメラニン生成抑制能を試験した結果を示す写真像である。
【図4】Roseobacter NB3204株およびRuegeria NB6450株のそれぞれの培養上清とコウジ酸のメラニン生成抑制能を試験した結果を示す写真像である。
【図5】Roseobacter NB3204株およびRuegeria NB6450株のそれぞれの培養上清、ビタミンCおよびコウジ酸のメラニン生成抑制能を試験した結果を示すグラフである。
【図6】Roseobacter NB3204株およびRuegeria NB6450株のそれぞれの培養上清、ビタミンCおよびコウジ酸の還元能を試験した結果である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図5】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図6】
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