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明細書 :ナノライティング装置における傾き補正装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4892672号 (P4892672)
公開番号 特開2008-070168 (P2008-070168A)
登録日 平成24年1月6日(2012.1.6)
発行日 平成24年3月7日(2012.3.7)
公開日 平成20年3月27日(2008.3.27)
発明の名称または考案の名称 ナノライティング装置における傾き補正装置
国際特許分類 G01Q  70/06        (2010.01)
G01Q  10/02        (2010.01)
FI G01Q 70/06
G01Q 10/02
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2006-247373 (P2006-247373)
出願日 平成18年9月12日(2006.9.12)
審査請求日 平成21年7月31日(2009.7.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】596066574
【氏名又は名称】株式会社ユニソク
発明者または考案者 【氏名】磯野 吉正
【氏名】佐々木 徹
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100076510、【弁理士】、【氏名又は名称】掛樋 悠路
【識別番号】100124028、【弁理士】、【氏名又は名称】松本 公雄
審査官 【審査官】樋口 宗彦
参考文献・文献 特開平07-110969(JP,A)
特開平11-073906(JP,A)
特開平04-337540(JP,A)
特開平07-098892(JP,A)
特許第3643480(JP,B2)
特開平05-028545(JP,A)
特開平06-076373(JP,A)
調査した分野 G01Q10/00-90/00
特許請求の範囲 【請求項1】
複数のカンチレバーを有するマルチプローブと所定軸方向の粗動部とを装備するナノライティング装置において前記マルチプローブの傾きを調節する傾き補正装置であって、
固定部、可動部、駆動部、前記固定部及び前記可動部を接続する複数の弾性部、並びに、前記固定部及び前記可動部を接続する支点部を有する変位生成部と、
少なくとも一対のレーザ光源、少なくとも一対のレーザ光を検出する検出部、並びに、少なくとも一対の前記レーザ光源から出力されるレーザ光の各々を、前記マルチプローブを構成する複数の前記カンチレバーのうちの、相互に所定距離以上離れて位置する少なくとも2つのカンチレバーの背面に入射させ、前記カンチレバーの背面から反射される前記レーザ光の各々を対応する前記検出部に入射させるレーザ光路変更機構を有するレーザ照射部とを備え、
前記固定部が前記粗動部に固定され、
前記レーザ照射部が前記可動部に固定され、
前記マルチプローブが前記レーザ照射部に固定され、
前記支点部の両側に前記弾性部及び前記駆動部が配置され、
前記弾性部の各々が、独立して変位量に応じた復元力を前記固定部と前記可動部とに加え、
前記駆動部が、前記可動部に力を加え、前記支点部の回りに前記可動部を所定角度回転させることによって、前記マルチプローブの傾きを変化させることを特徴とするナノライティング装置における傾き補正装置。
【請求項2】
前記支点部が、T字型の第1スリットと、前記第1スリットの縦棒部の両側に配置され、前記縦棒部に平行な垂直部及び前記垂直部に垂直な水平部を有する第2及び第3スリットとを備え、
前記第1~第3スリットが、同じ方向に延伸していることを特徴とする請求項1に記載のナノライティング装置における傾き補正装置。
【請求項3】
前記変位生成部が、1つの直方体の金属部材をワイヤーカット加工することによって一体に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノライティング装置における傾き補正装置。
【請求項4】
前記レーザ照射部が、
2つの前記レーザ光源から入射する2つのレーザ光の各々を、同じ方向に平行に出力し、相互に所定距離以上離れて位置する2つの前記カンチレバーの背面の各々に照射する第1光路変更部及び第2光路変更部と、
前記カンチレバーの背面で反射された2本のレーザ光を同じ方向に平行に出力する第3光路変更部と、
前記第3光路変更部から出力された2本のレーザ光を各々の検出部に入力する第4光路変更部及び第5光路変更部とを備えることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のナノライティング装置における傾き補正装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノライティング装置において、マルチプローブを用いて描画を行う前に、マルチプローブを描画対象物の表面に平行に配置するための傾き補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロテクノロジ、ナノテクノロジの発達により、マイクロメートル又はナノメートルオーダーの寸法の材料を利用したマイクロマシン、ナノマシンの実現が期待されている。そのための技術として、走査型プローブ顕微鏡に関する技術を適用し、カンチレバー型のプローブを用いた描画技術(表面の加工技術)が開発されている。複数のカンチレバーで構成されるマルチプローブを用いた描画技術においては、描画対象物の表面とマルチプローブの複数の先端部との距離を精度良く制御することが重要である。
【0003】
例えば、下記特許文献1には走査プローブ顕微鏡を用いた微細加工技術において用いられる描画装置が開示されている。描画対象物である基板及び探針(プローブ)間の距離を精度良く制御するために、特許文献1には、カンチレバー列の両端のカンチレバーの位置を、ピエゾ素子で調節し、カンチレバー列全体を基板から所定距離に配置する手段が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2~4には、プローブの走査面と記録媒体表面との傾きを補正する機構を有する、走査型顕微鏡を利用した情報処理装置が開示されている。例えば、特許文献2の図14~16には、平面的に配置された複数のプローブ電極を描画対象物に平行に位置調整するチルト機構が開示され、プローブ電極の取り付けには、プローブ電極アタッチメント62を固定する板ばね71、積層型圧電素子72、73、74、剛球75が利用され、3点で平面の位置を調節し、板ばね71と剛球75とでプローブ電極アタッチメント62を固定することが開示されている。また、特許文献4の図13~図16には、3箇所の電極を用いて、記録媒体基板に対するマルチプローブヘッド基板の傾きを調節する機構が開示されている。

【特許文献1】特許第3643480号明細書
【特許文献2】特開平5-28545号公報
【特許文献3】特開平6-76373号公報
【特許文献4】特開平7-110969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、マルチプローブを用いた描画、特にナノメートルオーダーの加工を行うナノライティング装置による描画においては、描画対象物とマルチプローブの複数の先端部との距離を精度良く制御することが重要であり、そのためにマルチプローブの先端部を描画対象物の表面に平行に配置することが必要である。上記特許文献1~4には、マルチプローブを描画対象物の表面に平行に配置する方法が開示されている。しかし、特許文献1~4の何れにも、そのための機構、即ちマルチプローブの傾き調節機構に関しては具体的に開示されていない。
【0006】
例えば、特許文献1(図2、7など)には、複数のカンチレバー列の両端のカンチレバーの位置をピエゾ素子を用いて調節すること、及び、カンチレバーの変位を光てこで検出することが開示されているが、マルチプローブの傾斜を精度良く、効率的に補正するための具体的な機構は開示されていない。特許文献2においては図15、16に開示されている程度であり、特許文献4においても図13に開示されている程度である。このように、特許文献1~4には、マルチプローブの傾斜を精度良く、効率的に調節するための具体的な機構が開示されていない。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を解決すべく、ナノライティング装置において、マルチプローブを用いて描画を行う前に、精度良く且つ効率的にマルチプローブを描画対象物の表面に平行に配置することができるナノライティング装置における傾き補正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、以下の手段によって達成される。
【0009】
即ち、本発明に係るナノライティング装置における傾き補正装置は、複数のカンチレバーを有するマルチプローブと所定軸方向の粗動部とを装備するナノライティング装置において前記マルチプローブの傾きを調節する傾き補正装置であって、
固定部、可動部、駆動部、前記固定部及び前記可動部を接続する複数の弾性部、並びに、前記固定部及び前記可動部を接続する支点部を有する変位生成部と、
少なくとも一対のレーザ光源、少なくとも一対のレーザ光を検出する検出部、並びに、少なくとも一対の前記レーザ光源から出力されるレーザ光を、前記マルチプローブを構成する複数の前記カンチレバーのうちの、相互に所定距離以上離れて位置する少なくとも2つのカンチレバーの背面に入射させ前記カンチレバーの背面から反射される前記レーザ光の各々を対応する前記検出部に入射させるレーザ光路変更機構を有するレーザ照射部とを備え、
前記固定部が前記粗動部に固定され、
前記レーザ照射部が前記可動部に固定され、
前記マルチプローブが前記レーザ照射部に固定され、
前記支点部の両側に前記弾性部及び前記駆動部が配置され、
前記弾性部の各々が、独立して変位量に応じた復元力を前記固定部と前記可動部とに加え、
前記駆動部が、前記可動部に力を加え、前記支点部の回りに前記可動部を所定角度回転させることによって、前記マルチプローブの傾きを変化させることを特徴としている。
【0010】
前記支点部は、T字型の第1スリットと、前記第1スリットの縦棒部の両側に配置され、前記縦棒部に平行な垂直部及び前記垂直部に垂直な水平部を有する第2及び第3スリットとを備え、前記第1~第3スリットは、同じ方向に延伸していることができる。
【0011】
前記変位生成部は、1つの直方体の金属部材をワイヤーカット加工することによって一体に形成されていることができる。
【0012】
前記レーザ照射部は、2つの前記レーザ光源から入射する2つのレーザ光の各々を、同じ方向に平行に出力し、相互に所定距離以上離れて位置する2つの前記カンチレバーの背面の各々に照射する第1光路変更部及び第2光路変更部と、前記カンチレバーの背面で反射された2本のレーザ光を同じ方向に平行に出力する第3光路変更部と、前記第3光路変更部から出力された2本のレーザ光を各々の検出部に入力する第4光路変更部及び第5光路変更部とを備えていることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のナノライティング装置における傾き補正装置によれば、一列の描画用プローブ(マルチプローブ)の両端の2つのプローブ(カンチレバー)の先端部を、描画対象の試料面からほぼ等距離に調節することができ、マルチプローブ全体を描画対象物の表面にほぼ平行に配置することができる。
【0014】
本発明の傾き補正装置は、マルチプローブとレーザ照射部とを一体として変位させることができるので、変位させた後にレーザ光の光路を再度調節する必要が無い。従って、効率的にマルチプローブの傾き補正を行うことができる。
【0015】
また、本発明の傾き補正装置の変位生成部には、所定の一方向に延伸する複数のスリットを形成して直線状の支点部としているので、支点部の回りにのみ可動部を回転させることができ、可動部が固定部に対して捻れて変位するのを抑制することができるので、精度良く可動部を変位させることができ、従ってマルチプローブを精度良く変位させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態を、添付した図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る傾き補正装置を備えたナノライティング装置全体の概略構成を示す斜視図であり、図2及び図3は、本発明の実施の形態に係る傾き補正装置の構成を示す斜視図である。各図に示されている直交軸(XYZ)は同じ直交軸を表す(図4以降についても同じ)。
【0017】
図1に示したように、ナノライティング装置は、ベース1と、ベース1に固定された支持部2と、ベース1上に設置され、搭載された物をX軸及びY軸方向に粗く変位させるXY粗動部3と、XY粗動部3の上に設置され、搭載された物をX軸、Y軸及びZ軸方向に微小変位させるXYZ微動部4と、支持部2に固定され、取り付けられた物をZ軸方向に粗く変位させるZ粗動部5と、傾き補正装置8とを備えている。本傾き補正装置8は、変位生成部6とレーザ照射部7とから構成されており、変位生成部6及びレーザ照射部7が相互に固定され、変位生成部6がZ粗動部5に固定されている。従って、傾き補正装置8は、Z粗動部5によって、Z軸方向に粗く変位される。図1では、マルチプローブを用いた表面加工(以下、描画と記す)の対象物である平板状の試料SがXYZ微動部4に搭載されている状態を示している。
【0018】
なお、XY粗動部3、XYZ微動部4及びZ粗動部5には、それぞれの変位量を制御するための制御部(図示せず)を備えており、XY粗動部3及びXYZ微動部4は、制御部による制御を受けて試料の位置を、X軸、Y軸、Z軸方向に所定量変位させ、Z粗動部5は、傾き補正装置8をZ軸方向に変位させる。ナノライティング装置を用いた描画方法、即ち、プローブの位置を制御しながら適宜プローブに電圧を印加し、試料表面を微細に加工する方法は、周知であるので説明を省略する。本発明の傾き補正装置8は、ナノライティング装置による描画の前に、マルチプローブの傾きを補正し、各プローブが均等な力で試料表面に当接されるようにする。これによって、ナノライティング装置による高精度の描画が可能となる。
【0019】
以下に、傾き補正装置8の構成及び調整方法に関して具体的に説明する。図2は変位生成部6を斜め上方から見た場合の斜視図であり、図3は変位生成部6を側面から見た場合の斜視図である。
【0020】
変位生成部6は、固定部61と、4つの弾性部62と、可動部63と、駆動部64とから構成されている。図4は、弾性部62の形状を示す図であり、左側の図は斜視図であり、右側の図はXZ面の断面図である。弾性部62は、図4に示したように平板が等間隔に折り畳まれた形状をしている。弾性部62は、対向する固定部61及び可動部63の間に配置され、弾性を有して両者を接続し、固定部61及び可動部63の間隔の変位量に応じた復元力を発生する。
【0021】
駆動部64は、固定部61に固定されており、可動部63に力を加えて固定部61と可動部63との間隔が大きくなるように変位させる。駆動部64には、例えば、ピコモータなどの公知のアクチュエータを使用することができる。図1~3では、駆動部64を制御するための手段(コントローラ、電源、電気配線など)は省略している。また、図1では、Z粗動部5の上面に貫通孔を形成し、貫通孔を介してZ粗動部5の上に駆動部64が突出している状態を示している。
【0022】
また、固定部61及び可動部63は、中央に形成された貫通孔Hを挟んだ2つの直線状の支点部65によっても接続されている。貫通孔Hは、後述するレーザ照射部7の内部に配置されたマルチプローブを観測するために利用される。
【0023】
図5は、支点部65を示す正面図である。支点部65は、その長手方向(Y軸方向)に垂直な断面形状(XZ面に平行な断面)が、全体として左右対称なパターンを形成する複数のスリットを有している。即ち、支点部65は、1つのT字型の第1スリットSL1と、第1スリットSL1の縦棒部SL1aの両側に、第2スリットSL2及び第3スリットSL3を有している。第2及び第3スリットSL2、SL3の各々は、第1スリットSL1の縦棒部SL1aに平行な部分SL2a、SL3a(以下、垂直部と記す)を有し、第1スリットSL1の縦棒部SL1aの下端近傍で、所定の角度で傾斜し(第2及び第3スリットSL2、SL3のこの部分を傾斜部SL2b、SL3bと記す)、その後、垂直部SL2a、SL3aに垂直な方向に延伸している(第2及び第3スリットSL2、SL3のこの部分を水平部SL2c、SL3cと記す)。各スリットSL1~SL3の幅は、例えば0.5mmである。また、垂直部SL2a、SL3aと傾斜部SL2b、SL3bとの成す角度αは約145度である。
【0024】
このように、固定部61及び可動部63は、4つの弾性部62及び支点部65(具体的には、第1スリットSL1の縦棒部SL1aと、第2及び第3スリットSL2、SL3の垂直部SL2a、SL3aとの間の部材)を介して接続されている。そして、変位生成部6は、支点部65の第1~第3スリットSL1~SL3によって形成される支点(実際には図5において楕円形の破線SPで示す領域)の周りに可動部63を微小角度だけ回転させることができる。このとき、支点SPは、第1~第3スリットSL1~SL3の延伸方向(Y軸方向)に沿って3次元的に形成されているので、変位は第1~第3スリットSL1~SL3の延伸方向(Y軸方向)に垂直な面内で生じ、Z軸回りの回転、即ち、固定部61と可動部63とが捻れて変位することを抑制することができる。従って、図2及び図3では、駆動部64を対称な位置に設けているが、非対称な位置に配置してもよい。
【0025】
図2~5に示した変位生成部6の製造方法の一例を示せば、先ず、直方体の一体の金属材料(例えば、Al7075/T6などのアルミ)を、四方向の側面からエンドミル加工を行い、上下面、中央部及び四隅を残すように切削し、上下面が中央部及び四隅で接続された形状にする。次に、上下面にほぼ垂直に、中央部に所定の大きさの貫通孔Hを形成する。その後、中央部の残部に対して、貫通孔Hを横断するようにワイヤーカット加工を行って第1~第3スリットSL1~SL3を形成し、四隅の残部に対してワイヤーカット加工を行って弾性部62を形成する。これによって、変位生成部6は、固定部61、弾性部62及び可動部63が一体に形成することができる。
【0026】
次に、レーザ照射部7に関して説明する。図6は、レーザ照射部7内部の概略構成の一例を示す斜視図である。図6に示したように、レーザ照射部7は、筐体(図示せず)内に、2つのレーザ光源71、71’と、第1及び第2光路変更部72、72’と、1つの第3光路変更部73と、第4及び第5光路変更部74、74’と、2つの検出部75、75’とを備えて構成されている。ここで、第3光路変更部73に鏡を用い、それ以外の光路変更部72、72’、74、74’に三角プリズムを用いている。検出部75、75’には、例えばCCDセンサーを用いる。また、一対の各構成部はほぼ面対称な位置に配置されており、図6の例では、対称面がYZ面である。図7に、レーザ照射部7内部の一対の構成要素の一方の配置を、図6のX軸方向から見た図として示している。図7には、レーザ照射部7の筐体70の断面図も示している。
【0027】
マルチプローブMは、筐体70の下部面に形成された穴からカンチレバーの一部、少なくとも先端部が突出し、筐体70の下部面に所定の角度で傾斜するように、所定の機構(図示せず)によって取り付けられている。また、マルチプローブMは、カンチレバー列の方向が、対称面(YZ面)にほぼ垂直になるように取り付けられている。レーザ照射部7内部には、第1~第5光路変更部72~74の各々を独立して保持し、レーザ照射部7の筐体70に対して位置変更可能に固定する機構(図示せず)を備えている。
【0028】
第1~第5光路変更部72~74の位置を調節することによって、図6、7に示したように、2つの光源71、71’から出力されるレーザ光Lの各々は、面対称な光路(一方のレーザ光の進行方向を矢印で示す)を通り、一列にカンチレバーが並んだマルチプローブMの両端にある2つのカンチレバー先端部の背面に照射され、カンチレバーの背面で反射され(図8参照)、面対称な光路を通り、2つの検出部75、75’に入射する。
【0029】
次に、傾き補正部8によるマルチプローブMの傾きを調節する方法について説明する。上記したように、マルチプローブMが取り付けられたレーザ照射部7が変位生成部6に取り付けられ、変位生成部6がナノライティング装置のZ粗動部5に取り付けられており、XYZ微動部4には試料Sが搭載されているとする。また、この状態では、2つの駆動部64は駆動されていない。
【0030】
まず、2つのレーザ光源71、71’からレーザ光Lを出力し、上記したように第1及び第2光路変更部72、72’を介して、レーザ光LをマルチプローブMに導く。そして、2本のレーザ光Lの各々が、両端の2つのカンチレバーの先端部に照射され、反射されたレーザ光Lが検出部75、75’に入射するように、第3~第5光路変更部73、74、74’の調節機構を調節する。
【0031】
次に、Z粗動部5によって、マルチプローブMの両端のカンチレバーの少なくとも一方の先端が試料Sの表面に当接するまで傾き補正部8を降下させる。当接したか否かは、検出部75、75’によって検知することができる。即ち、マルチプローブMの両端のカンチレバーの先端が試料Sに当接すると、カンチレバーの形状が変化するので、カンチレバーの背面で反射されるレーザ光Lの方向が変化し、この変化を検出部75、75’で検知することができる。
【0032】
検出部75、75’で何れか一方のカンチプローブが試料Sに当接したことが検知され、他方のカンチレバーが当接していない場合、マルチプローブMが試料Sの表面に対して傾斜していることになる。図9は、マルチプローブMが試料Sの表面に対して傾斜しており、右側のカンチレバーの先端のみが試料Sの表面に当接した状態を示す。図9では、傾き補正部8の一部のみ示しており、レーザ照射部7は省略している。
【0033】
この場合、Z粗動部5によって傾き補正装置8を一旦上昇させて当接を解除し、可動部63の、当接を検知しなかったカンチレバーの側(図9では左側)が下がるように、駆動部64を制御する。即ち、当接を検知しなかったカンチレバーの側(図9では左側)に配置された駆動部64によって可動部63に力を加える。これによって可動部63の下部面の傾斜が変化し、レーザ照射部7全体も変位し、マルチプローブMの傾斜が改善される。このとき、マルチプローブMとレーザ照射部7とは相対位置が変化しないので、第1~第5光路変更部72~74の調節機構を調節しなくとも、レーザ光Lが所定のカンチレバーの背面に照射された状態が維持される。
【0034】
その後、再び、Z粗動部5によって傾き補正装置8を降下させ、上記と同様にカンチレバーの先端と試料Sの表面との当接を検出し、一方の当接を検知した場合、一旦傾き補正装置8を上昇させ、マルチプローブMの傾斜が改善するように、駆動部64を制御して可動部63の下部面を傾斜させる。
【0035】
これらの処理を繰り返すことによって、マルチプローブMの両端のカンチレバーがほぼ同時に試料Sの表面に当接するように、即ち、マルチプローブMが試料Sの表面にほぼ平行になるように調節することができる。図10に、マルチプローブMが試料Sの表面に平行になるように調節された状態を示す。図10では、図9と比較すると、可動部63が支点部65の回りに矢印で示した方向に微小回転されたことが分かる。調節が終わった後、マルチプローブMを用いて、試料Sの表面を描画することができる。
【0036】
上記では、一列にカンチレバーが配列されたマルチプローブの場合を説明したが、これに限定されず、本発明は、2次元平面に複数のカンチレバーが配列されたマルチプローブに適用することもできる。その場合、3つの駆動部を変位生成部に備え、同じ直線上に位置しない少なくとも3つのカンチレバーを対象に3本のレーザ光を照射する3つのレーザ光源と、3つのカンチレバーからの反射レーザ光を検出する3つの検出部とをレーザ照射部に備えるように、傾き補正装置を構成すればよい。そして、ナノライティング装置に傾き補正装置を搭載し、上記と同様にZ粗動部の上下動及び駆動部の制御を繰り返すことによって、2次元平面にカンチレバーが配列されたマルチプローブを、試料の表面に平行に配置することができる。
【0037】
また、マルチプローブの両端のカンチレバーを検出対象とする場合を説明したが、これに限定されず、マルチプローブの傾斜を検出可能な、相互に所定距離以上離れて位置する2つのカンチレバーを検出対象にすればよい。
【0038】
また、レーザ照射部の第1~第5光路変更部に、三角プリズム及び鏡を組み合わせて使用する場合を説明したが、これに限定されず、入射するレーザ光を殆ど散乱や減衰させることなく、レーザ光の入射方向と異なる所定の方向に、レーザ光を反射することができる手段であればよい。例えば、第1~第5光路変更部の全てに鏡を用いてもよく、全てにプリズムを用いてもよい。
【0039】
また、図6、図7に示したレーザ照射部おいて、第1~第5光路変更部の配置を維持したまま、レーザ光源と検出部の配置を入れ替えてもよい。
【0040】
また、変位生成部の支点部のスリット形状は図5に示した形状に限定されず、T字型の第1スリットSL1を有さず、第2及び第3スリットSL2、SL3のみを有する形状であってもよい。また、傾斜部SL2b、SL3bが円弧形状であってもよく、さらには、傾斜部SL2b、SL3bが無く、垂直部SL2a、SL3aと水平部SL2c、SL3cとが直接接続されていてもよい。
【0041】
また、変位生成部において、支点部を2つの部分に分断する貫通孔は円筒形に限定されず、任意の断面形状の貫通孔であってもよく、支点部を3つ以上の部分に分断するように複数の貫通孔を備えていてもよく、さらには貫通孔を備えていなくてもよい。
【0042】
また、変位生成部が4つの弾性部を備える場合を説明したが、これに限定されず、支点部の両側にそれぞれ少なくとも1つの弾性部を備えていればよい。
【0043】
また、変位生成部の製造方法として一体の金属材料からワイヤーカット加工で形成する場合を説明したが、固定部、弾性部、及び可動部を個別に形成した後、それらを接続して製造してもよい。
【0044】
また、駆動部はピコモータに限定されず、変位生成部の可動部を、固定部に対して精度良く傾斜させることができる手段であればよい。
【0045】
また、駆動部が、可動部と固定部との距離を大きくするように力を加える場合を説明したが、これに限定されず、駆動部が可動部と固定部との距離を小さくするように力を加えてもよい。
【0046】
また、上記のナノライティング装置では、鉛直方向をZ軸として、Z軸粗動部に傾き補正装置を取り付ける場合を説明したが、これに限定されず、傾き補正装置が所定の1軸方向に関する粗動機構に取り付けられればよい。例えば、試料を鉛直方向に設置する場合、試料表面にほぼ垂直な方向(水平方向)に粗動させる機構に傾き補正装置を取り付ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係る傾き補正装置を備えたナノライティング装置全体の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る傾き補正装置の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る傾き補正装置の構成を示す斜視図である。
【図4】弾性部の形状を示す図であり、左側の図は斜視図であり、右側の図はXZ面の断面図である。
【図5】支点部を示す正面図である。
【図6】レーザ照射部内部の概略構成の一例を示す斜視図である。
【図7】レーザ照射部内部の一対の構成要素の一方の配置を、X軸方向から見た図である。
【図8】カンチレバー、試料、レーザ光の位置関係を示す側面図である。
【図9】マルチプローブが試料の表面に対して傾斜し、一方のカンチレバーの先端のみが試料表面に当接した状態を示す傾き補正装置の正面図である。
【図10】マルチプローブの傾き調節が完了した状態を示す傾き補正装置の正面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ベース
2 支持部
3 XY粗動部
4 XYZ微動部
5 Z粗動部
6 変位生成部
7 レーザ照射部
8 傾き補正装置
61 固定部
62 弾性部
63 可動部
64 駆動部
65 支点部
71、71’ レーザ光源
72、72’ 第1、第2光路変更部
73 第3光路変更部
74、74’ 第4、第5光路変更部
75、75’ 検出部
M マルチプローブ
S 試料
SL1~SL3 第1~第3スリット
SL1a 縦棒部
SL2a、SL3a 垂直部
SL2b、SL3b 傾斜部
SL2c、SL3c 水平部
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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