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明細書 :信号処理方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4500307号 (P4500307)
登録日 平成22年4月23日(2010.4.23)
発行日 平成22年7月14日(2010.7.14)
発明の名称または考案の名称 信号処理方法及び装置
国際特許分類 G06F  17/15        (2006.01)
FI G06F 17/15
請求項の数または発明の数 19
全頁数 39
出願番号 特願2006-510722 (P2006-510722)
出願日 平成17年3月3日(2005.3.3)
国際出願番号 PCT/JP2005/003625
国際公開番号 WO2005/086356
国際公開日 平成17年9月15日(2005.9.15)
優先権出願番号 2004058704
2004058712
2004132535
優先日 平成16年3月3日(2004.3.3)
平成16年3月3日(2004.3.3)
平成16年4月28日(2004.4.28)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成18年6月22日(2006.6.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】寅市 和男
【氏名】片岸 一起
【氏名】中村 浩二
【氏名】諸岡 泰男
個別代理人の代理人 【識別番号】110000350、【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
審査官 【審査官】北元 健太
参考文献・文献 特開2001-51979(JP,A)
特開2000-36748(JP,A)
特開2000-13226(JP,A)
国際公開第99/44290(WO,A1)
調査した分野 G06F 17/00 - 17/18
H03M 1/00 - 1/88
特許請求の範囲 【請求項1】
連続した入力信号をデジタルの離散信号に変換して出力する信号処理装置における信号処理方法であって、
上記信号処理装置は、
標本化手段と、
パラメータmで分類された複数のフルーエンシAD関数を個々に具備して出力する複数の関数発生手段と、
信号と関数との内積演算を行なう、上記複数の関数発生手段と同数の複数の内積演算手段と、
上記複数の内積演算手段と同数の複数の誤差演算手段と、
判定手段と、
出力手段と
を具備し、
上記標本化手段が、連続した入力信号を標本化して離散信号として標本値を出力し、
上記複数の内積演算手段が、上記連続した入力信号と上記複数の関数発生手段のそれぞれが出力するフルーエンシAD関数との内積演算を個々に行なって、それぞれの内積演算値を出力し、
上記複数の誤差演算手段が、上記標本値と上記内積演算値との間の誤差を個々に演算して出力し、
上記判定手段が、上記複数の誤差演算手段が出力する上記誤差を個々に判定して、上記誤差の値が最小となる内積演算値に対応するフルーエンシAD関数のパラメータmを選出し、
上記出力手段が、上記判定手段が選出したパラメータmと、上記標本値あるいは上記判定手段が選出したパラメータmの上記内積演算値とをデジタル出力信号として出力する
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記判定手段は、
上記誤差の値のいずれもがあらかじめ与えられた許容値よりも大きい場合は、標本化が行なわれる標本点の前後において、パラメータmが切り替わる切替点または上記入力信号に対する微分が不可能な特異点の少なくとも一方を含む変化点が在ると判定し、
上記変化点を表す変化点信号を出力する
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記誤差演算手段は、予め定められた区間における上記標本値と上記内積演算値との差の二乗和あるいは絶対値の和、あるいは絶対値の最大値を上記誤差として出力する
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項4】
請求項1において、
上記パラメータmは、上記フルーエンシAD関数が(m-2)回のみ連続微分可能であることを表すパラメータであり、少なくともm=2、3、∞の3種である
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項5】
請求項1において、
上記出力手段は、上記デジタル出力信号を、記憶媒体あるいは通信手段に出力する
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、
上記連続した入力信号は、上記標本値を得る標本間隔よりも短い標本間隔の離散信号である
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項7】
入力されるデジタルの離散信号を連続信号に変換して出力する信号処理装置における信号処理方法であって、
上記信号処理装置は、
入力手段と、
パラメータmで分類された複数のフルーエンシDA関数を個々に具備して出力する複数の関数発生手段と、
選択手段と、
信号と関数との畳込積分を行なう演算手段と
を具備し、
上記入力手段が、予め定められたパラメータmと標本値である離散信号値とのデジタル信号を入力し、
上記選択手段が、上記複数の関数発生手段が出力する上記複数のフルーエンシDA関数の中から、上記予め定められたパラメータmを用いて上記予め定められたパラメータmにより特定されるフルーエンシDA関数を選択し、
上記演算手段が、上記選択されたフルーエンシDA関数と上記入力された離散信号値との畳込積分を行なうことによって連続信号を生成して出力する
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項8】
請求項7において、
上記パラメータmは、上記フルーエンシDA関数が(m-2)回のみ連続微分可能であることを表すパラメータであり、少なくともm=2、3、∞の3種である
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項9】
請求項7において、
上記入力手段が入力するデジタル出力信号は、記憶媒体あるいは通信手段を経て上記入力手段に入力される
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項10】
請求項7乃至9において、
上記演算手段が、上記連続信号を上記入力手段に入力される上記離散信号値の離散間隔よりも短い間隔で補間生成されたデジタル信号として出力する
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項11】
連続した入力信号をデジタルの離散信号に変換して出力する第1の信号処理装置と、上記デジタルの離散信号を入力し、当該離散信号を連続信号に変換して出力する第2の信号処理装置とにおける信号処理方法であって、
上記第1の信号処理装置は、
標本化手段と、
パラメータmで分類された複数のフルーエンシAD関数を個々に具備して出力する複数の関数発生手段と、
信号と関数との内積演算を行なう、上記複数の関数発生手段と同数の複数の内積演算手段と、
上記複数の内積演算手段と同数の複数の誤差演算手段と、
判定手段と、
出力手段と
を具備し、
上記第2の信号処理装置は、
入力手段と、
パラメータmで分類された複数のフルーエンシDA関数を個々に具備して出力する第2の複数の関数発生手段と、
選択手段と、
信号と関数との畳込積分を行なう畳込積分演算手段と
を具備し、
上記標本化手段が、連続した入力信号を標本化して離散信号として標本値を出力し、
上記複数の内積演算手段が、上記連続した入力信号と上記複数の関数発生手段のそれぞれが出力するフルーエンシAD関数との内積演算を個々に行なって、それぞれの内積演算値を出力し、
上記複数の誤差演算手段が、上記標本値と上記内積演算値との間の誤差を個々に演算して出力し、
上記判定手段が、上記複数の誤差演算手段が出力する上記誤差を個々に判定して、上記誤差の値が最小となる内積演算値に対応するフルーエンシAD関数のパラメータmを選定し、
上記出力手段が、上記判定手段が選定したパラメータmと、上記標本値あるいは上記判定手段が選定したパラメータmの上記内積演算値とをデジタル出力信号として出力し、
上記入力手段が、上記デジタル出力信号を入力し、
上記選択手段が、上記第2の複数の関数発生手段が出力する上記複数のフルーエンシDA関数の中から、上記入力手段に入力された上記デジタル出力信号におけるパラメータmを用いて当該パラメータmにより特定されるフルーエンシDA関数を選択し、
上記畳込積分演算手段が、上記選択されたフルーエンシDA関数と入力された上記デジタル出力信号における上記標本値あるいは上記内積演算値との畳込積分によって連続信号を生成して出力する
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項12】
請求項11において、
上記パラメータmは、上記フルーエンシAD関数及びフルーエンシDA関数が(m-2)回のみ連続微分可能であることを表すパラメータであり、少なくともm=2、3、∞の3種である
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項13】
請求項11において、
上記フルーエンシAD関数と上記フルーエンシDA関数とは、パラメータm毎に直交関係にある
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項14】
請求項11において、
上記入力手段に入力される上記連続した入力信号は、上記標本値を得る標本間隔よりも短い標本間隔で標本化され、符号化された離散信号であり、
上記畳込積分演算手段から出力された上記連続信号は、上記標本値を得る標本間隔よりも短い標本間隔で補間生成されたデジタル信号である
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項15】
請求項11において、
上記出力手段が出力する上記デジタル出力信号は、記憶媒体あるいは通信手段を介して上記入力手段に入力される
ことを特徴とする信号処理方法。
【請求項16】
パラメータmで分類された複数のフルーエンシAD関数を個々に具備して出力する複数の関数発生器と、
連続した入力信号を標本化して離散信号として標本値を出力する標本化回路と、
上記連続した入力信号と上記複数の関数発生器のそれぞれが出力するフルーエンシAD関数との内積演算を個々に行なってそれぞれの内積演算値を出力する、上記複数の関数発生器と同数の複数の内積演算器と、
上記複数の内積演算器が出力する上記内積演算値と上記標本値との間の誤差を個々に演算して出力する上記複数の内積演算器と同数の複数の誤差演算器と、
上記複数の誤差演算器が出力する誤差を個々に判定し、その値が最小となる内積演算値に対応するフルーエンシAD関数のパラメータmを選出する判定器と、
上記判定器が選定したパラメータmと、上記標本値あるいは上記判定器が選定したパラメータmの上記内積演算値とをデジタル出力信号として出力する出力装置と
を備えていることを特徴とする信号処理装置。
【請求項17】
パラメータmで分類された複数のフルーエンシDA関数を個々に具備して出力する複数の関数発生器と、
予め定められたパラメータmと標本値である離散信号値とのデジタル信号を入力する入力装置と、
上記複数の関数発生器が出力する上記複数のフルーエンシDA関数の中から、上記予め定められたパラメータmを用いて上記予め定められたパラメータmにより特定されるフルーエンシDA関数を選択する関数選択器と、
上記選択されたフルーエンシDA関数と上記入力装置に入力された上記離散信号値との畳込積分を行なって連続信号を生成して出力する演算器と
を備えていることを特徴とする信号処理装置。
【請求項18】
連続した入力信号をデジタルの離散信号に変換して出力する信号処理装置の信号処理方法であって、
上記信号処理装置は、パラメータmで分類される複数のフルーエンシAD関数を発生して出力する関数発生手段を具備し、
上記信号処理装置が、
連続した入力信号を標本化して離散信号として標本値を生成するステップと
上記連続した入力信号と上記関数発生手段が出力する上記複数のフルーエンシAD関数とでそれぞれ内積演算を行なってフルーエンシAD関数毎に演算値を生成して出力するステップと
上記入力信号の標本値と上記演算値との誤差をそれぞれ演算して出力するステップと、
上記誤差をそれぞれ判定して最小誤差を与えるフルーエンシAD関数に対応したパラメータmを選定するステップと
上記標本値と上記選定されたパラメータmを示す信号とを合わせてデジタル信号として出力するステップと
を実行することを特徴とする信号処理方法。
【請求項19】
入力されるデジタルの離散信号を連続信号に変換して出力する信号処理装置の信号処理方法であって、
上記信号処理装置は、パラメータmで分類される複数のフルーエンシDA関数を発生して出力する関数発生手段を具備し、
上記信号処理装置が、
標本値である離散信号と特定のパラメータmを示す信号とを入力するステップと
上記関数発生手段が出力する上記複数のフルーエンシDA関数の中から上記特定のパラメータmにより定まるフルーエンシDA関数を選択するステップと、
上記選択されたフルーエンシDA関数と上記標本値との畳込積分により、上記離散信号を連続信号に変換して出力するステップと
を実行することを特徴とする信号処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、映像(動画像)、画像又は音声等の時間的に変化する信号、或いは計測や制御で用いられる時間的に変化する信号から標本化によって離散信号を生成する信号処理装置及び方法に関する。更に、本発明は、文字図形や写真、印刷等の画像、動画を含む映像、音声、或いは計測結果等から信号を生成して再生する技術に係り、特に信号の状態が変化する変化点を抽出する信号処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル信号技術の進展に伴い、映像(動画像)、画像又は音声を対象にした、通信、放送、記録媒体[CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)]、医用画像、印刷等の分野がマルチメディア産業或いはIT(Information Technology)として著しい発展を遂げている。映像や画像、音声に対するデジタル信号技術の一翼を担うのが情報量を低減する圧縮符号化であるが、その信号理論として、代表的にはシャノンの標本化定理があり、更に新しくはウェーブレット変換理論等がある(非特許文献1参照)。また、例えば音楽のCDでは、圧縮を伴わないリニアPCM(Pulse Code Modulation)が用いられるが、信号理論は同様にシャノンの標本化定理である。
【0003】
また、例えばA4版程度の大きさに描かれた文字図形等の原画をデータ化しておき、同原画データをプリンタやカッティングプロッタ等に出力することによって看板やポスター、垂れ幕等の大型の表示物を作成する装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
更に、微分可能回数によって分類した複数の関数に基づいて発生させた複数の離散的なデータ列を生成し、入力データに対して並行して上述した複数の離散的なデータ列との間の相関演算を行なった後に、その相関演算の結果に基づいて入力データに含まれる特異点を求めることにより、対称信号の属するクラス(m)を特定するデータ処理方法が特許文献2に開示されている。
【0005】

【非特許文献1】オーム社発行電気通信情報学会編集「電子情報通信ハンドブック」第4群、第394頁~第396頁及び第415頁
【特許文献1】特開平7-239679号公報
【特許文献2】特開平2001-51979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の圧縮符号化、或いは圧縮を伴わない符号化のように、入力信号をデジタル信号に変換してから元のアナログ信号を再生する系は、一般化するとA-D変換/D-A変換系になる。従来のシャノンの標本化定理に基づくA-D変換/D-A変換系では、ナイキスト周波数によって帯域制限された信号を扱う。このとき、D-A変換において、標本化によって離散的になった信号の連続波への再生に、制限された帯域内の信号を再現する関数(正則関数)が用いられていた。
【0007】
本願発明者の一人は、映像(動画像)、文字図形や自然画等の画像又は音声等の信号の持つ種々の性質をフルーエンシ関数を用いて分類可能であることを見出した。この理論によれば、シャノンの標本化定理に基づく上記正則関数は、フルーエンシ関数の一つであり、信号が持つ種々の性質の内の一つの性質に適合するにとどまる。従って、種々の性質をもつ信号をシャノンの標本化定理に基づく上記正則関数のみで扱うのでは、D-A変換後の再生信号の品質に限界を与える恐れがあることとなる。
【0008】
上記ウェーブレット変換理論は、対象を解像度で分解するマザーウェーブレットを用いて信号を表すものであるが、信号に最適のマザーウェーブレットが与えられるとは限らず、やはりD-A変換後の再生信号の品質に限界を与える恐れがあることとなる。
【0009】
ここで、フルーエンシ関数は、パラメータm(mは1~∞の正の整数)によって類別される関数である。mは、その関数が(m-2)回のみ連続微分可能であることを表す。因みに、上記正則関数は何回でも微分可能であるので、mが∞である。更に、フルーエンシ関数は、(m-1)次の関数で構成され、特にフルーエンシ関数の内のフルーエンシDA関数は、標本間隔をτとして、着目するk番目の標本点kτで数値が与えられるが、その他の標本点では0となる関数である。
【0010】
信号の性質は、パラメータmを持つフルーエンシ関数によって全てが分類可能となり、パラメータmによってクラス分けされる。そのため、フルーエンシ関数を用いたフルーエンシ情報理論は、従来の信号の性質の一部を表すにとどまっていたシャノンの標本化定理やウェーブレット変換理論等を包含し、信号の全体を表す理論体系であると位置付けられる。そのような関数を用いることにより、D-A変換後に、シャノンの標本化定理によって帯域制限されることのない高品質の再生信号を、信号の全体に亘って得ることが期待される。
【0011】
特許文献2のデータ処理方法では、相関演算の結果から特異点を求め、クラスmを特定しているが、相関演算には時間が掛かり、高速性に課題があった。従って、フルーエンシ情報理論に基づいて連続波形信号から離散信号を効率よく生成する信号処理装置は、従来は実現されていなかった。なお、連続波形信号がアナログ信号であり、離散信号がデジタル信号として出力される場合、信号処理装置はA-D変換装置として機能する。
【0012】
続いて、特許文献1に開示された原画をデータ化する装置は、大別すると、文字図形の輪郭線を抽出する機構と、曲率のデータから接合点とその位置を抽出する機構と、上記輪郭線を関数(直線、円弧、区分的多項式)で近似する機構と、接合点の座標のデータと近似する関数のデータとを記憶する装置と、記憶したデータから輪郭線を再生する機構とからなる。
【0013】
輪郭が変化する変化点のうち、直線や曲線の継ぎ目である接合点の近傍は、輪郭が大きく変化する部分であるので、直線や円弧では表されず自由曲線即ち区分的多項式で表され、接合点は区分的多項式が与える曲率の大きい点として求められる。接合点は微小部分で角度が大きく変化する部分即ち微係数の大きく変化する部分であり、曲率の大きい点として求める接合点の抽出は、微分処理によることとなる。
【0014】
画像の再生は、接合点を含む変化点の間を上記の近似した関数で直線又は曲線を描くことによって行なわれる。従って、変化点を正しく抽出することが精度の良い再生を行なうために重要である。
【0015】
ところで、文字図形の原図が例えばスキャナによって読み取られる場合、センサの有する雑音やスキャナの解像度等によって輪郭に、程度は様々であるが、ギザギザやざらつきが生じることが避けられない。このギザギザやざらつきは、元の原図に対して細かい、高い周波数の成分が多い雑音が重畳して生じたものである。接合点を含む変化点を微分処理によって求めると、これらのギザギザやざらつきによって変化点の抽出位置がずれたり、或いは、ギザギザやざらつきの部分を変化点と誤って抽出するなど、正確な変化点が得られない虞があることとなる。
【0016】
この問題を文字図形、画像、映像など(以下画像と総称する)に広げて以下に述べる。連続的に変化する信号が尖閣的に変化したり、ステップ的に変化することが多々ある。このような信号変化点は信号の性質や特徴が変わる情報の変化点(切替点や特異点)である。
【0017】
画像の情報の場合、一つの画面やエリアの中には多数の小さな画像が含まれる。このような画像に対する処理においては、水平方向、垂直方向に所定の間隔で区切られた微小エリアを単位とし(これを画素と称する)、この画素単位に同一情報から成るエリア(小画像域)の認識、拡大、変換、合成、などの処理が行なわれる。しかし、小画像域の認識においては、領域の端部(エッジ部)の検出が課題で、従来は色や輝度の情報が急激に変化する点(差分や微分値が大きく変化する点)を変化点として認識する方法が取られており、この変化点が後述する情報の切替点、特異点となる。しかし、この変化点の検出をデータの差分や微分値で行なうと、雑音による画像情報の変化で誤認識を行なう弱点があった。また、画像の拡大においては、画素単位に拡大するため、例えば、水平方向、垂直方向にそれぞれn倍に拡大するときは、nのエリアの画素情報が同一情報となり、小エリアの輪郭、内部の色情報共に、階段状に変化する画像となる。
【0018】
以上のような問題点を解決するために、信号列を関数近似して処理する方法が提案されているが、その場合も、同一性質の情報範囲、即ち連続信号の長さ、小エリアの領域(画像の輪郭)を正確に認識することが重要となる。この信号長の端点や領域の輪郭線の抽出方法として、記憶された情報に対しては、従来のデータ差分、微分信号、色差、輝度差を利用した方法、即ち微分処理に包含される方法が採られている。
【0019】
さて、上記のように、文字図形や自然画等の画像や動画像、或いは音声等から電気的に得られる信号の持つ種々の性質をフルーエンシ関数を用いて分類可能であることが示される。更に、上記発明者の一人は、この分類のための処理を利用することによって、変化点を微分処理によらずに求めることが可能であることを見出した。例えば、フルーエンシ情報理論に基づいて連続波形信号から離散信号を生成するとき、後で詳述するように、その過程で上記の変化点を微分を伴わずに得ることが可能になる。しかし、そのような変化点を生成可能な信号処理装置は、従来は実現されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
フルーエンシ情報理論に基づいて連続波形信号から離散信号を得るための関数は、後で詳述するように、詳しく理論展開されて本明細書においては標本化関数として定義される。標本化関数は、フルーエンシAD関数と称しても良い。また、離散信号から連続波形信号を得るための関数は本明細書においては逆標本化関数として定義される。逆標本化関数は、フルーエンシDA関数と称しても良い。そのように定義される標本化関数と逆標本化関数は互いに直交関係を成すと共に、パラメータmを用いて表現される。
【0021】
フルーエンシ情報理論に基づいて連続波形信号から離散信号を得、続いて得られた離散信号から連続波形信号を得る信号システムが機能するためには、連続波形信号を得る側においてパラメータmが認識される必要がある(例えば、フルーエンシ情報理論に基づいてアナログ信号をAD変換し、得られたデジタル信号をDA変換するA-D変換/D-A変換系が機能するためには、D-A変換側においてパラメータmが認識される必要がある)。
【0022】
このパラメータmは次のようにして求められる。離散信号を得る信号処理(例えばA-D変換)において、後で述べるように、連続波形の入力信号と標本化関数とで内積を取ることによって標本値列である離散信号が得られる。このとき、入力信号の性質を表すパラメータmをl(エル)とし、パラメータlが標本化関数のパラメータm(mする)と一致しないと、内積によって得られる内積演算値は標本点における入力信号の標本値と一致せず、両者の間に誤差が生じる。この誤差が零になる(実際上は最小になる)mを選ぶと、l=mとなり、lが未知の信号からパラメータmを決定することが可能になる。
【0023】
従って、標本値列である離散信号(又は、パラメータmが決定された内積演算値の列からなる離散信号)と共にこのmの値を、連続波形信号を得る信号処理側(例えばD-A変換側)に送れば、パラメータmの逆標本化関数を使った信号処理(例えばD-A変換)が行なわれ、入力信号とほぼ同じ、即ち高品質の連続波形信号が容易に再生されることになる。
【0024】
以上から、本願において開示される発明のうち、代表的な実施形態の概要を説明すれば、下記の通りである。
【0025】
信号処理装置は、入力信号を標本化して標本値の列からなる離散信号を出力する標本化回路と、相互に異なるパラメータmの標本化関数を発生する複数の関数発生器と、上記入力信号と上記標本化関数の各々との内積演算を行なって内積演算値を出力するパラメータm毎の複数の内積演算器と、上記標本値と上記複数の内積演算器が出力する内積演算値との差分からなる複数の誤差の内、最小の誤差を与えるパラメータmを判定し、そのパラメータm信号を出力する判定器とを具備し、上記標本値の列からなる離散信号と上記パラメータm信号とを出力することを特徴とする。
【0026】
本発明の信号処理装置によって得られた離散信号から連続波形信号を生成する信号処理において、上記パラメータm信号を用いて同パラメータmの逆標本化関数を選択すれば、上記離散信号の属するパラメータmに合致したパラメータmの逆標本化関数によって連続波形信号を生成することが可能になる。即ち、本発明により、シャノンの標本化定理によって帯域制限されることのない高品質の連続波形信号を再生するための信号を容易に得ることが可能になる。
【0027】
次に、本願において開示される発明のうち、別の代表的な実施形態の概要を説明すれば、下記の通りである。
【0028】
信号処理装置は、相互に異なるパラメータmの逆標本化関数を発生する複数の関数発生器と、上記パラメータmの内のパラメータmに属する原信号の離散信号と上記パラメータmを示すパラメータm信号とを含む入力信号の内の上記パラメータm信号を用いて、上記逆標本化関数の中から上記パラメータmの逆標本化関数を選択する関数選択器と、上記離散信号と選択した上記パラメータmの逆標本化関数との畳込積分によって連続波形信号を得る畳込積分演算器とを具備することを特徴とする。
【0029】
本発明の信号処理装置は、離散信号が属するパラメータmがパラメータm信号によって知らされるので、離散信号が属するフルーエンシ信号空間(後で詳述する)に合致した逆標本化関数によって連続波形信号を得ることが可能になる。即ち、本発明により、シャノンの標本化定理によって帯域制限されることのない高品質の連続波形信号を再生することが容易になる。
【0030】
次に、上記のパラメータmを決定する過程で、変化点は、パラメータmを特定できない点となる。パラメータmを特定できない点は、大別すると、その点で微分不可能となる点(信号が不連続になる点を含む)と、連続していてかつ微分可能であるがその点の前後でパラメータmが変化する点とがある。前者には、その点の前後でパラメータmが変化しない点も含まれ、そのような点として、例えばm=2である折れ線の継ぎ目がある。なお、その点の前後でパラメータmが変化する点を総称してクラス切替点と呼び、微分不可能となる点を総称して特異点と呼ぶこととする(クラス切替点でありかつ特異点である点は超特異点となる)。
【0031】
さて、画像が例えばXY座標上の文字図形であって輪郭線が求められている場合、輪郭線を小区間で区切った輪郭線上の各点のx座標、y座標を求めると、小区間を媒介変数として、縦軸X、横軸小区間の座標上に各点のx座標を含む輪郭線の軌跡が得られ、縦軸Y、横軸小区間の座標上に各点のy座標を含む輪郭線の軌跡が得られる。
【0032】
これら二つの軌跡も上記フルーエンシ情報理論に基づいて扱われる。即ち、軌跡を連続波形信号、複数の小区間からなる区間で区切った各点を標本点とし、各標本点のx座標及びy座標を標本値とすることにより、標本化関数を用いてパラメータmを特定できない点即ち変化点が検出される。なお、複数の小区間からなる区間は、標本間隔となる。この検出によって目的とする変化点が得られたことになり、輪郭線を表す近似関数が与えられている場合、検出された変化点の間を上記の近似関数で直線又は曲線を描くことによって高精度の画像再生が行なわれる。
【0033】
以上に基づき、本発明は、輪郭線を表す近似関数が与えられていることを前提にして、変化点を表す信号を出力する信号処理装置及び方法に適用され、更に、逆標本化関数を用いて再生することを前提にして、変化点及びパラメータmを表す信号並びに離散信号を出力する信号処理装置及び方法に適用される。
【0034】
従って、本願において開示される発明のうち、更に別の代表的な実施形態の概要を説明すれば、下記の通りである。即ち、信号処理装置は、入力信号を標本化して標本値を得る標本化回路と、相互に異なるパラメータmの標本化関数を発生する複数の関数発生器と、上記入力信号と上記標本化関数の各々との内積演算を行なって内積演算値を出力するパラメータm毎の複数の内積演算器とを具備し、上記標本値と上記複数の内積演算器が出力する内積演算値との差分がどのパラメータmに対しても所定の閾値を超える点がある場合、その点を変化点と判定し、当該変化点を示す変化点信号を出力することを特徴とする。
【0035】
更に別の信号処理装置は、入力信号を標本化して標本値の列からなる離散信号を出力する標本化回路と、相互に異なるパラメータmの標本化関数を発生する複数の関数発生器と、上記入力信号と上記標本化関数の各々との内積演算を行なって内積演算値を出力するパラメータm毎の複数の内積演算器と、上記標本値と上記複数の内積演算器が出力する内積演算値との差分からなる複数の誤差の内、最小の誤差を与えるパラメータmを判定し、そのパラメータm信号を出力するクラス判定器と、どのパラメータmに対しても上記差分が所定の閾値を超える点がある場合、その点を変化点と判定し、当該変化点を示す変化点信号を出力する変化点判定器とを具備し、上記離散信号と上記パラメータm信号と上記変化点信号とを合わせ出力することを特徴とする。
【0036】
上述のように変化点信号は、内積演算に基づいて求められる。内積演算では積分動作によって信号処理が行なわれ、従って変化点を微分を伴わずに得ることが可能になる。それにより、変化点の雑音による誤認識や動画像での対応不可の問題を解決することができる。即ち、積分動作による信号処理を行なうため、雑音信号による影響を軽減することができ、高精度に信号変化を捉えることが可能となる。従って、従来技術の課題を解決することができ、より確実な信号の変化点、情報の特徴が切り替わる点の検出を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明に係る信号処理装置及び方法並びに信号処理プログラム及び同プログラムを格納した記録媒体を図面に示した実施形態を参照して更に詳細に説明する。なお、実施形態の説明に用いる全図において、同一の符号は、同一物又は類似物を表示するものとする。
【0038】
図1に本発明の信号処理装置の第1の実施形態を示す。フルーエンシ情報理論に基づき、標本化関数を用いて連続波形信号から離散信号を得る信号処理装置である。本実施形態では、映像、画像を対象とし、パラメータmがm=2,3,∞の3種類に設定される。これは、映像及び画像によって得られる信号の性質が、m=2,3,∞の3種類のパラメータによってその殆どがカバーされることが分析結果から確認されているためである。なお、本発明は、勿論これら3種類に限定されるものではなく、例えば図形を含む場合にm=1,2,3,∞の4種類を選ぶ等、対象に応じて種類が選択されることは言うまでもない。
【0039】
本実施形態では、連続波形信号から離散信号を生成する信号処理がデジタル信号処理によって行なわれる。そのため、アナログの入力信号は、一旦、標本間隔τに比べて十分に短い間隔で標本化され、PCM符号化される。更に、m=2,3の標本化関数は、有限の区間0~(J-1)τ(標本点数がJ、長さが(J-1)τ)で確定する関数であるので、内積も標本点毎にこの範囲で行なわれる。m=2,3の標本化関数の一例をそれぞれ図2,3に示す。いずれも関数の区間はJ=13である。
【0040】
一方、m=∞の標本化関数は、無限に振動が続く関数である。そこで、本実施形態では、同関数の区間をm=2,3の場合と同じ区間で打ち切ることとし、それによって発生する若干の誤差を許容することとした。なお、m=∞の処理精度を上げるために、内積の範囲を上記よりも広げることが可能である。
【0041】
図1において、1は、アナログの入力信号を標本間隔τに比べて十分に短い間隔で標本化して符号化するPCM符号器(PCMCOD)、2は、PCM符号器1から出力される符号化された入力信号を標本間隔τで標本化して、その標本点kτ=tの標本値を出力する標本化回路、3は、上から順にm=2,3,∞の標本化関数を発生する標本化関数発生器、4は、入力信号と標本化関数との内積を区間0~(J-1)τで演算して内積演算値を出力する内積演算器、5は、標本化回路2が出力する標本値から内積演算器4が出力する内積演算値を減算してその差分を出力する減算器である。標本化関数発生器3が出力するm=2,3,∞の標本化関数はファイル装置(図示せず)に予め格納されており、内積演算の都度読み出される。
【0042】
次に、上記差分は誤差演算が行なわれてからパラメータm決定の比較が行なわれる。誤差演算は、入力信号の性質に応じて差分の絶対値の二乗和又は算術和が用いられ、和演算が区間0~(N-1)τの各標本点(t,tk+1,…,tk+(N-2))の誤差に対して行なわれる。誤差演算は、その他に、演算区間において最大の差分の絶対値を選択する演算としても良い。演算区間を表すNは、入力信号が静止画で処理がオフラインで行なわれる場合は、比較的大きい値が選ばれ、入力信号が動画でリアルタイムで処理が行なわれる場合は、早いmの決定が必要になることからN=1を含む小さい値が選ばれる。このように、Nは信号の性質に応じて任意に選ばれる。なお、N=1の場合は、和は行なわれず、標本点毎にパラメータm決定の比較が行なわれる。
【0043】
続いて、図1において、7は、区間0~(N-1)τの各標本点の差分に対して上述の誤差演算を行なう誤差演算器、8は、比較器を有し、誤差演算器7からのm=2,3,∞の誤差演算結果を比較して最小のものを検出し、そのパラメータmを示すパラメータm信号を出力するクラス判定器である。また、6は、標本化回路2が出力する標本値に対する、誤差演算器7及びクラス判定器8の処理による時間遅れを調整するためのメモリである。
【0044】
次に、標本化回路2の標本値は標本間隔τ毎に出力されて標本値の列を成し、離散信号となる。図1において、9は、上記離散信号と上記パラメータm信号とを組合せてデジタルの出力信号とし、同信号を出力する出力回路である。組合せは、例えば、離散信号をパケット化し、そのヘッダにパラメータm信号を搭載することによって行なわれる。パラメータm信号は、m=2,3,∞の三者が区別されれば良いので、例えば2ビットの符号を用いて表される。なお、離散信号と上記パラメータm信号は組合されず、それぞれが別に出力されても良い。
【0045】
図1の各接続点での信号は、下記のように表される。
内積演算器4に入力される入力信号:u(t)
入力信号の標本値:u(t)
内積演算によって得られる標本値(内積演算値):
【0046】
【数1】
JP0004500307B2_000002t.gif

【0047】
減算器5出力の誤差:ε(t)
誤差演算値:E
本実施形態の信号処理装置は、各部のそれぞれにデジタル回路やメモリを用いて、ハードウエア構成とすることが可能であるが、プログラムによってコンピュータが実行するソフトウエア構成とすることも可能である。この場合、信号処理装置は、主に中央処理装置(CPU)と、演算途中のデータ等を一時記憶するメモリと、信号処理プログラムや標本化関数等を格納するファイル装置とから構成される。信号処理プログラムには、図1に示す各処理をコンピュータが実行する手順が示される。なお、信号処理プログラムは、CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory)等の記録媒体に格納し、独立したプログラムとすることが可能である。
【0048】
次に、本実施形態の信号処理装置は、連続波形信号から離散信号を生成する信号処理をアナログ信号処理によって行なうことも可能である。そのようなアナログ信号処理による信号処理装置の第2の実施形態を図4に示す。装置の各部がアナログ回路によって構成されるが、それらの機能及び動作は、対応する図1に示した各部と同様である。但し、出力回路9からは、アナログの出力信号が出力される。この場合の信号の組合せは、例えば、映像又は画像の走査の帰線期間にパラメータm信号を挿入することによって行なっても良い。なお、出力回路9に入力される離散信号と上記パラメータm信号を予めPCM符号器を用いて符号化してデジタル化することが可能である。その場合、出力回路9に図1に示したものが用いられ、デジタルの出力信号が出力される。
【0049】
また、第1の実施形態において、クラス判定器8によって決定されたパラメータmの内積演算器4が出力する内積演算値は、そのパラメータmが入力信号のパラメータmと合致しているので、標本化回路2の標本値とほぼ一致する。従って、出力回路9に供給する標本値を上記内積演算値に代えることが可能である。その場合は、決定されたパラメータmの内積演算値をクラス判定器8が出力するパラメータm信号を使って選択し、選択した内積演算値を出力回路9に供給する選択器が設けられる。そのような選択器を設けた第3の実施形態を図5に示す。図5において、10は、上記選択器である。このように、図5に示した信号処理装置から内積演算値の列からなる離散信号が出力される。また、上述のように、図1に示した信号処理装置から標本値の列からなる離散信号が出力される。この内積演算値及び標本値は、いずれも標本間隔毎に得られる離散値であり、従って、離散信号は、離散値列と言うことができる。
【0050】
更に、第1の実施形態において、入力信号によっては、パラメータmが急変する部分を含む場合がある。そのような入力信号を処理する場合、パラメータmが急変するクラス切替点を判定する回路を信号処理装置に設けることが有効となる。パラメータmの切替点を確実に確定することによって信号処理精度を高めることができる。
【0051】
図6に、図1の装置にクラス切替点判定器を付加した信号処理装置の第4の実施形態を示す。図6において、11は、減算器5からのm=2,3,∞の誤差を予め設定した閾値と比較し、いずれの誤差も閾値を越え、かつ、その標本点の近傍でクラス判定器8からのパラメータm信号に変化がある場合にその標本点をクラス切替点と判定して切替点信号を出力するクラス切替点判定器である。出力回路9は、離散信号及びパラメータm信号に加えて切替点信号を入力し、これらを組合せてデジタルの出力信号とする。組合せは、例えば、離散信号をパケット化し、そのヘッダにパラメータm信号と切替点信号を搭載することによって行なわれる。切替点信号はその有無が示せれば良いので、例えば1ビットの符号で表される。なお、離散信号、パラメータm信号及び切替点信号は組合されず、それぞれが別に出力されても良い。クラス切替点判定器11と出力回路9以外の回路は図1に示したものと同じである。
【0052】
次に、第1~第4の実施形態の信号処理装置の動作原理及び処理の流れを以下に理論的に説明する。説明では、パラメータmはm=2,3,∞に限定せず、一般化して複数あるとする。
<I>未知信号に対してフルーエンシ信号空間における部分空間の最適なクラス決定
信号が長さと位相を持ってフルーエンシ関数によって表されることから、以下のフルーエンシ信号空間が定義され、クラス未知の信号がそのフルーエンシ信号空間におけるどのクラスの部分信号空間に属しているかということが最初に明確化される。具体的には、標本化関数系と原信号との内積演算によって得られる値と入力信号(原信号)の標本値との誤差に基づいてその信号が属するクラスが特定される。
(1)フルーエンシ信号空間の定義
ここで取り扱う信号空間は、内積が式(1)
【0053】
【数2】
JP0004500307B2_000003t.gif

【0054】
で定義された代表的なヒルベルト空間の式(2)
【0055】
【数3】
JP0004500307B2_000004t.gif

【0056】
の部分空間としてのフルーエンシ信号空間S(τ),(m=1,2,…,∞)とする。
【0057】
フルーエンシ信号空間S(τ)は式(3)
【0058】
【数4】
JP0004500307B2_000005t.gif

【0059】
で定義される(m-2)回のみ連続微分可能な(m-1)次の区分的多項式からなる関数系(関数の集合)
【0060】
【数5】
JP0004500307B2_000006t.gif

【0061】
を基底とする信号空間として式(4)
【0062】
【数6】
JP0004500307B2_000007t.gif

【0063】
のように定義される。上述のように、τは連続信号から離散信号(標本値)を得る際の標本間隔を表す。また、時間軸上における各標本点をt(=kτ)として表すこととする。
【0064】
フルーエンシ信号空間S(τ)は、特にパラメータmが1の場合はウォルシュ(Walsh)関数系からなる信号空間として、パラメータmが2の場合は折れ線関数(ポリゴン)からなる信号空間として、そしてパラメータmが無限大の極限においては無限回連続微分可能なSinc関数系(正則関数系)からなる帯域制限信号空間として類別される。このようなフルーエンシ信号空間の概念図を図7に示す。フルーエンシ信号空間S(τ)の信号が連続微分可能性によって類別される。
(2)標本化関数の意義
信号空間S(τ)において、S(τ)に属する任意の信号u(t)とS(τ)に属する標本化関数系との内積を取ると信号の標本値列
【0065】
【数7】
JP0004500307B2_000008t.gif

【0066】
が得られる機能を有する。このような機能を持つ関数を標本化関数といい、これを
【0067】
【数8】
JP0004500307B2_000009t.gif

【0068】
と表すこととする。上記のことを式で表せば、それは以下の式(5)のように表される。
【0069】
【数9】
JP0004500307B2_000010t.gif

【0070】
式(5)において、記号
【0071】
【数10】
JP0004500307B2_000011t.gif

【0072】
は唯一存在するという意味、
【0073】
【数11】
JP0004500307B2_000012t.gif

【0074】
は任意の元という意味、
【0075】
【数12】
JP0004500307B2_000013t.gif

【0076】
は整数全体の集合をそれぞれ表している。
(3)標本化関数による未知の信号の属する部分信号空間のクラスの特定
信号空間S(τ)に属する信号をu(t)と表すこととする。クラスが未知の信号u(t)がフルーエンシ信号空間S(τ)のどのクラスの信号に属するかは、以下のようにして決定される。
【0077】
複数個の信号u(t),u(t),…,u(t),…,u(t)に対して、複数個のm=1,2,…,m,…,∞の内のmのフルーエンシ信号空間
【0078】
【数13】
JP0004500307B2_000014t.gif

【0079】
に属する標本化関数系
【0080】
【数14】
JP0004500307B2_000015t.gif

【0081】
との内積を取れば、
(i)l=mの場合は、式(6)
【0082】
【数15】
JP0004500307B2_000016t.gif

【0083】
(ii)l≠mの場合は、式(7)
【0084】
【数16】
JP0004500307B2_000017t.gif

【0085】
なる関係式が成り立つmが存在する。この関係を利用することにより、あるクラス未知の信号u(t)のクラスを
【0086】
【数17】
JP0004500307B2_000018t.gif

【0087】
の元として特定することができる。
【0088】
上記の原理に基づくクラス判定の処理手順を図8を用いて以下に説明する。
【0089】
信号を入力して(ステップS1)、先ずmを1個定め(ステップS2)、区間0~(J-1)τ内のt,tk+1,…,tk+(J-2)の標本点のそれぞれにおいて標本化関数
【0090】
【数18】
JP0004500307B2_000019t.gif

【0091】
但し、k=k,k+1,…,k+(J-2)
と入力信号u(t)との内積を区間0~(J-1)τに亘って計算する(ステップS3)。この演算によって得られる値を式(8)で
【0092】
【数19】
JP0004500307B2_000020t.gif

【0093】
と表し、これを内積演算値と呼ぶことにする。
【0094】
次に、ステップS3で得られたこの内積演算値の入力信号と標本値u(t)との差分の絶対値を計算する(ステップS4)。これを式(9)のように
【0095】
【数20】
JP0004500307B2_000021t.gif

【0096】
と表すことにする。ステップS2~S4の処理をmを変えて(ステップS5)繰り返し、各mにおける差分を計算する。
【0097】
各mに対して、ステップ4で求めた差分の二乗和を計算する(ステップS6)。これを式(10)で
【0098】
【数21】
JP0004500307B2_000022t.gif

【0099】
と表すこととする。なお、この誤差演算は、信号の性質によっては差分の絶対値の算術和であっても良く、その場合には、式(11)に示す
【0100】
【数22】
JP0004500307B2_000023t.gif

【0101】
となる。或いは、誤差演算は、差分の絶対値の最大のものを選択する演算であっても良く、その場合は、式(12)に示す
【0102】
【数23】
JP0004500307B2_000024t.gif

【0103】
となる。
【0104】
式(10)で求めた二乗和の内、最も少ない場合
【0105】
【数24】
JP0004500307B2_000025t.gif

【0106】
のmを信号u(t)が属するクラスとして特定する(ステップ7)。
【0107】
ここで図1に戻り、上記の理論に基づき構成される内積演算器4の例を図9を用いて説明する。内積は、t=tの標本点においては、入力信号と標本化関数との積を区間0~(J-1)τに亘って積分することである。標本化関数の発生開始時点を原点に選ぶと、入力信号を(J-1)τ/2だけ遅延させることにより、遅延後の入力信号と標本化関数の時間を揃えることができる。続いて、標本化関数をτだけ遅延させながら遅延後の入力信号との内積を演算することにより、τ間隔でt,tk+1,…,tk+(J-2)の標本点のそれぞれの内積演算値
【0108】
【数25】
JP0004500307B2_000026t.gif

【0109】
但し、k=k,k+1,…,k+(J-2)
が得られる。次の標本点tk+(J-1)からは再び標本化関数を発生開始させて同様の演算を行なうことになる。
【0110】
従って、パラメータmの内積演算器4は、図9に示すように、入力信号u(t)を(J-1)τ/2だけ遅延させる遅延回路41と、標本化関数をτだけ遅延させる(J-2)個の遅延回路42-1~遅延回路42-(J-2)と、遅延後の入力信号と標本化関数の積を取る(J-1)個の乗算器43-0~乗算器43-(J-2)と、乗算器43の出力信号の積分演算を行なう(J-1)個の積分器44-0~積分器44-(J-2)と、積分器44の出力信号を0~(J-2)の順に切り替えて出力する切替器45とから構成される。
<II>クラス切替点の検出
ある一つの信号がクラスの異なる信号の繋がりによって表現されているとする。このような信号に対して、異なるクラスの信号の間の境界部分となる点(クラス切替点)を、標本化関数系と原信号(入力信号)との内積演算によって得られる内積演算値と入力信号の標本値との誤差に基づいて検出する。
(1)クラス切替点の定義とその分類
一つの信号上でのある点を基準に、その点の前後の領域においてクラスの異なる信号によって元々の信号が表現されている場合(Aという領域ではクラスm、即ち
【0111】
【数26】
JP0004500307B2_000027t.gif

【0112】
の信号として表現されており、またBという領域ではクラスm、即ち
【0113】
【数27】
JP0004500307B2_000028t.gif

【0114】
の信号として表現されている場合)、クラスの異なる信号によって繋がる境界部分となる点をクラス切替点と呼ぶことにし、それをP(m,m)で表すこととする。クラス切替点の内で、特異点(微分不可能な点)であるような点を超特異点と呼ぶことにする。
【0115】
クラス切替点P(m,m)は、その点における性質によって以下のように2つに分類される。
(i)点P(m,m)において連続ではあるが微分は不可能であり、かつm≠mである。図10に例示する、このようなクラス切替点が超特異点である。
(ii)点P(m,m)において連続微分可能であり、かつm≠mである。そのようなクラス切替点の例を図11に示す。
【0116】
なお、点P(m,m)においてmの変化はないが微分不可能であり、かつm=m≧3である場合が存在する。図12に例示するこのような点は、特異点と呼ばれるものであるが、クラス切替点ではない。また、未知の信号がm=1クラス(階段)又はm=2クラス(折れ線)のいずれか一方の信号として表現される場合、そこに含まれる不連続点及び、連続ではあるが微分不可能な点(折れ線のつなぎ目)は、本発明における検出の対象ではない。
(2)クラス切替点の検出
クラス切替点の検出について、図13(特に、超特異点の検出)を例にとって説明する。図13のように、信号u(t)はある区間(領域A)においてはm=2クラスの信号(ポリゴン:折れ線)として表現されているとする。一方、u(t)はまた t=tspを境としてそれ以降の区間(領域B)においてはm=∞クラスの信号として表現されているものとする。信号には、その他のクラスとしてm=3があるとする。このような場合、
(i)領域Aにおいて、あるクラスmの標本化関数
【0117】
【数28】
JP0004500307B2_000029t.gif

【0118】
と信号u(t)との内積によって得られる内積演算値と入力信号の標本値との誤差(領域Aに限定したものを
【0119】
【数29】
JP0004500307B2_000030t.gif

【0120】
と表すことにする)をm=2,3,∞について計算すれば、誤差ε(A),ε(A),ε(A)の内、ε(A)が最小となる。
(ii)領域Bにおいて、同様にε(B),ε(B),ε(B)を求めれば、この区間においてはε(B)が最小となる。
(iii)クラスが切り替わる超特異点t=tsp近傍における誤差ε(tsp),ε(tsp),ε(tsp)を求めれば、ε,ε,εのいずれも値が大きくなり、はっきりとクラスを特定することができなくなる。この情報を手がかりとしてクラス切替点の位置が特定される。
【0121】
上記の原理に基づくクラス判定の処理手順を図14を用いて以下に説明する。本説明では、上記したように、標本化関数がm=2,3,∞クラスの場合を例として採り上げている。
【0122】
標本点t,tk+1,…,tk+(J-2)の各々において、入力信号u(t)と標本化関数
【0123】
【数30】
JP0004500307B2_000031t.gif

【0124】
との内積を計算し、内積演算値
【0125】
【数31】
JP0004500307B2_000032t.gif

【0126】
但し、k=k,k+1,…,k+(J-2)
を求める。続いて、求めた内積演算値と入力信号の標本値u(t)との誤差
【0127】
【数32】
JP0004500307B2_000033t.gif

【0128】
を計算する(ステップS8)。ここまでは、図8のステップS1~ステップS5において、m=2,3,∞としたときの処理と同じである。
【0129】
次に、各mに対応する誤差ε(t),ε(t),ε(t)を予め定めた閾値εthと比較する(ステップS9)。全ての誤差が閾値εth以上の場合(ステップS10)、更にt=tの前後K点の誤差を計算する(ステップS11)。k-K≦n<kの範囲において、あるmに対応する誤差
【0130】
【数33】
JP0004500307B2_000034t.gif

【0131】
が他のクラスのものよりも小さく、従って最小で、かつ、他のk<n≦k+Kの範囲においては、あるm≠mに対応する誤差
【0132】
【数34】
JP0004500307B2_000035t.gif

【0133】
が他のクラスのものよりも小さく、従って最小になっている場合(ステップS12)、t=tの点を超特異点として判定し、クラス切替点と判定する(ステップS13)。
【0134】
また、ステップS10において、全ての誤差が閾値εth以上ではなく、少なくとも1つの誤差が閾値εth以下である場合は、ある点で最小の誤差を与えるパラメータmに変化が検出されれば(ステップS14)、その変化点をクラス切替点と判定する。パラメータmに変化が検出されなければ、クラス切替点はないと判定する(ステップS15)。更に、ステップS12において、最小の誤差を与えるパラメータmに変化がなく、m=mである場合は、クラス切替点はないと判定する(ステップS15)。
【0135】
以上、第1~第3の実施形態により、連続波形信号である入力信号から離散信号を得る信号処理において、信号処理される入力信号の属するクラスが明確化され、離散信号(離散値列)と共に、クラスを表すパラメータm信号を取得することが可能となった。また、第4の実施形態により、入力信号に応じてクラス切替点を表す切替点信号を取得することが可能となった。
【0136】
そこで、離散信号から連続波形信号を生成する信号処理において、上記パラメータm信号を用いて同パラメータmの逆標本化関数を選択すれば、上記離散信号の属するパラメータmに合致したパラメータmの逆標本化関数によって連続波形信号を生成することが可能になる。それにより、シャノンの標本化定理によって帯域制限されることのない高品質の連続波形信号を再生することが可能になる。
【0137】
上記のように、フルーエンシ情報理論に基づいて連続波形信号から得た離散信号を入力し、逆標本化関数を用いて同離散信号から連続波形信号を生成する本発明の信号処理装置について以下に説明する。
【0138】
図15に本発明の信号処理装置の第5の実施形態を示す。本実施形態の信号処理装置に入力する信号は、例えば図1に示した第1の実施形態の信号処理装置から出力されるデジタルの出力信号である。そして、離散信号から連続波形信号を得る信号処理がデジタル信号処理によって行なわれる。
【0139】
信号処理に用いる逆標本化関数は、第1の実施形態の信号処理装置で用いられた上記の標本化関数と双直交を成す関数である。その関数の例をm=2,3についてそれぞれ図17及び図18に示す。m=2,3の逆標本化関数は、有限の区間0~(P-1)τで確定する関数であるので、畳込積分が標本点毎にこの範囲で行なわれる。なお、m=3では代表的にはP=5である。一方、m=∞の逆標本化関数は、無限に振動が続く関数である。そこで、本装置では、同関数の区間をm=2,3の場合と同じ区間で打ち切ることとし、それによって発生する若干の誤差を許容することとした。なお、m=∞の処理精度を上げるために、畳込積分の範囲を上記よりも広げることが可能である。
【0140】
図15において、21は、パラメータmに属する原信号の離散信号と上記パラメータmを表すパラメータm信号が組合されたデジタル信号を入力し、それぞれを分離して出力する信号入力回路、22は、パラメータm毎の逆標本化関数を発生する逆標本化関数発生器、23は、逆標本化関数発生器22が出力するパラメータm毎の逆標本化関数の中から上記離散信号が属するパラメータmの逆標本化関数を選択する逆標本化関数選択器、24は、信号入力回路21からの離散信号と逆標本化関数選択器23が選択した逆標本化関数との畳込積分によって連続波形信号を得る畳込積分演算器、25は、畳込積分演算器24が出力する連続波形信号をアナログ信号として出力するPCM復号器(PCMDEC)である。逆標本化関数発生器22が出力するm=2,3,∞の逆標本化関数は記憶装置のデータファイル(図示せず)に予め格納されており、関数選択の都度読み出される。
【0141】
ここで、パラメータmの逆標本化関数を
【0142】
【数35】
JP0004500307B2_000036t.gif

【0143】
と表すこととする。前述のように、逆標本化関数と標本化関数は、双直交を成すように相互に関係付けられる。特に、逆標本化関数は、対象とする標本点で値を持つが、その他の標本点で0になる特性を有している。
【0144】
DA演算を行なう畳込積分は、式(13)
【0145】
【数36】
JP0004500307B2_000037t.gif

【0146】
で表される。式(13)の演算により、原信号を再生した連続波形信号u(t)が得られる。従って、標本点tの標本値をt=tから(P-1)τの間保持し、その保持信号とt=tから発生開始された逆標本化関数との積を取り、続いて標本間隔の時間τずらしながらその演算を(P-2)回行ない、得られた積を順次累積加算する。そして、次の標本点tk+(P-1)から再び同じ演算を行なってそれを繰り返すことにより、畳込積分の演算が行なわれ、連続波形信号u(t)が得られることになる。このような離散信号から連続波形信号を得る処理は、パラメータmのDA関数(逆標本化関数)を用いて各離散値の間を滑らかに結び、連続信号を得る補間、加工処理と言うことができる。
【0147】
このことから、図15の畳込積分演算器24は、例えば図16に示すように構成される。即ち、畳込積分演算器24は、逆標本化関数をτだけ遅延させる(P-2)個の遅延回路51-1~遅延回路51-(P-2)と、間隔τの標本点t,tk+1,…,tk+(P-2)の標本値をそれぞれ時間(P-1)τの間保持する(P-1)個の保持回路52-0~保持回路52-(P-2)と、保持回路52が出力する保持信号と逆標本化関数との積を取る(P-1)個の乗算器53-0~乗算器53-(P-2)と、乗算器53の出力信号を出力順に累積加算する累積加算器54とから構成される。
【0148】
本実施形態の信号処理装置は、第1の実施形態の場合と同様に、各部のそれぞれにデジタル回路やメモリを用いて、ハードウエア構成とすることが可能であるが、プログラムによってコンピュータが実行するソフトウエア構成とすることも可能である。この場合、信号処理装置は、主に中央処理装置(CPU)と、演算途中のデータ等を一時記憶するメモリと、信号処理プログラムや標本化関数等を格納するファイル装置とから構成される。信号処理プログラムには、図15に示す各処理をコンピュータが実行する手順が示される。なお、信号処理プログラムは、CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory)等の記録媒体に格納し、独立したプログラムとすることが可能である。
【0149】
以上、本実施形態により、クラスに適合する逆標本化関数を用いて信号処理を行なうことが可能となるので、高品質の再生信号を得ることが可能となった。
【0150】
なお、本実施形態の入力信号は、図5に示した第3の実施形態の信号処理装置から出力されるデジタルの出力信号であっても良い。同じ連続波形信号(再生信号)を得ることができる。
【0151】
次に、本実施形態では、PCM復号器25を出力側に配置したが、これを入力側に配置することが可能である。そのように構成した本発明の第6の実施形態を図19に示す。図19におけるPCM復号器26は、デジタルの離散信号をアナログの離散信号に変換する復号器である。また、図19における逆標本化関数22、逆標本化関数選択器23及び畳込積分演算器24は、機能は図15に示したものと同様であるが、いずれもアナログ回路によって構成される。
【0152】
続いて、アナログ信号を入力する本発明の第7の実施形態を図20に示す。入力信号は、例えば図4に示した第2の実施形態の信号処理装置から出力されるアナログの出力信号で、離散信号とパラメータm信号が組合されている。図20における信号入力回路27は、組合されている離散信号とパラメータm信号をそれぞれ分離する。逆標本化関数22、逆標本化関数選択器23及び畳込積分演算器24は、いずれも第6の実施形態の場合と同様アナログ回路によって構成される。
【0153】
また、離散信号及びパラメータm信号に切替点信号を加えた信号を入力する本発明の第8の実施形態を図21に示す。入力信号は、例えば図6に示した第4の実施形態の信号処理装置から出力されるデジタルの出力信号である。図21における信号入力回路は、組合されている離散信号、パラメータm信号及び切替点信号をそれぞれ分離する。逆標本化関数選択器23は、選択の制御信号としてパラメータm信号及び切替点信号を用い、切替点信号が到来した時点でクラスを切り替え、切り替えるクラスのパラメータmをパラメータm信号によって定める。それによって、逆標本化関数選択器23は、定めたパラメータmの逆標本化関数を選択する。逆標本化関数22、畳込積分演算器24及びPCM復号器25は、第5の実施形態の場合と同じ物が用いられる。
【0154】
なお、PCM復号器25を入力信号回路21と畳込積分演算器24の間に配置し、逆標本化関数22、逆標本化関数選択器23及び畳込積分演算器24をいずれも第6の実施形態の場合と同様のアナログ回路によって構成することが言うまでもなく可能である。
【0155】
さて、第1、第3及び第4の実施形態(図1、図5、図6)の信号処理装置、並びに第2の実施形態(図4)で出力側にPCM符号器を設けた信号処理装置は、アナログの連続波形信号を入力してデジタルの離散信号(離散値列)を出力する。このことから、第1、第3及び第4の実施形態の信号処理装置は、AD変換装置と言うことができる。同様に、第5、第6及び第8の実施形態の信号処理装置はデジタルの離散信号を入力してアナログの連続波形信号を出力するDA変換装置と言うことができる。そして、両装置によってA-D変換/D-A変換系を構成するとき、両装置は直接に接続されて良く、或いは伝送系又は記録系を経て接続されても良い。伝送系又は記録系を経るとき、データ量を低減するための情報圧縮符号化や伝送路符号化が行なわれても構わない。この場合は、伝送系又は記録系を経た後で復号が行なわれ、しかる後D-A変換が行なわれる。
【0156】
伝送系が通信システムの場合、通信システムとして、例えば、インターネットや携帯電話網、ケーブルテレビ、或いは電波を用いる地上波放送や衛星放送がある。また、記録系では、記録媒体としてCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)等がある。これらの応用では、従来よりも高精細の映像を得ることが期待される。従って、再生品質が従来と同じで良ければ、通信システムの伝送帯域を狭くすることが可能になると共に、CDやDVDでは、収録時間を長くすることができる。
【0157】
A-D変換/D-A変換系が印刷システムに応用される場合、従来よりも格段に高精細の画像を得ることが可能になることから、画像の拡大、縮小に対して高品質を保つことが期待される、即ち高いスケーラビリティを得ることが期待される。
【0158】
続いて、図22に本発明の信号処理装置の第9の実施形態を示す。本実施形態の信号処理装置は、フルーエンシ情報理論に基づき、標本化関数を用いてパラメータmの変化点を判定し、当該変化点を示す変化点信号を出力する。本実施形態では、文字図形等による画像を対象とし、パラメータmがm=2,3,∞の3種類に設定される。なお、本発明は、勿論これら3種類に限定されるものではなく、例えばm=1,2,3,∞の4種類を選ぶ、或いは例えばm=2のみとする等、対象に応じて種類が選択されることは言うまでもない。m=2のみは、図形が折れ線のみで構成される場合に相当する。
【0159】
本実施形態は、輪郭線を表す近似関数が与えられていることを前提にしており、変化点を表す信号を出力する信号処理がデジタル信号処理によって行なわれる。入力信号は、輪郭線を小区間で区切って得られるデジタル連続波形信号である。更に、m=2,3の標本化関数は、有限の区間0~(J-1)τ(標本点数がJ、長さが(J-1)τ)で確定する関数であるので、内積も標本点毎にこの範囲で行なわれる。区間の中心を原点に取ったときのm=2,3の標本化関数の一例は、先に示したそれぞれ図2,3であり、いずれも関数の区間はJ=13である。
【0160】
一方、上述のように、m=∞の標本化関数は、無限に振動が続く関数であり、同関数の区間がm=2,3の場合と同じ区間で打ち切られ、それによって発生する若干の誤差は許容される。なお、m=∞の処理精度を上げるために、内積の範囲を上記よりも広げることが可能である。
【0161】
図22において、2は、複数の小区間からなる区間毎に区切った各点を標本点とし、その標本間隔τで入力信号を標本化して、その標本点kτ=tの標本値を出力する標本化回路、3は、上から順にm=2,3,∞の標本化関数を発生する標本化関数発生器、4は、入力信号と標本化関数との内積を区間0~(J-1)τで演算して内積演算値を出力する内積演算器、5は、標本化回路2が出力する標本値から内積演算器4が出力する内積演算値を減算してその差分を出力する減算器である。なお、標本化関数発生器3が出力するm=2,3,∞の標本化関数はファイル装置(図示せず)に予め格納されており、内積演算の都度読み出される。また、1つの標本間隔を成す小区間の数は、入力信号が連続波形信号とみなされる程度の大きさの数となる。
【0162】
次に、上記差分が予め定めた閾値と比較され、どのパラメータmの差分も同閾値を越えたことが起こった場合にその点は変化点と判定される。図22において、12は、各パラメータmの差分を上記閾値と比較して変化点を判定する変化点判定器である。変化点は、画像のXY座標における座標点、又は最初の標本点から勘定した標本点の順番kで表される。
【0163】
画像の再生は、この変化点の情報を用いて行なわれる。なお、画像の性質によっては、再生の際にパラメータmの情報を併用することが効果的となる場合がある。そのような場合のために、図22においてクラス判定器8が付加される。クラス判定即ちパラメータmの決定は、上記差分に対する誤差演算後に行なわれる。誤差演算は、入力信号の性質に応じて差分の絶対値の二乗和又は算術和が用いられ、和演算が区間0~(N-1)τの各標本点(t,tk+1,…,tk+(N-2))の誤差に対して行なわれる。誤差演算は、その他に、演算区間において最大の差分の絶対値を選択する演算としても良い。演算区間を表すNは、入力信号が静止画で処理がオフラインで行なわれる場合は、比較的大きい値が選ばれる。図22において、7は、区間0~(N-1)τの各標本点の差分に対して上述の誤差演算を行なう誤差演算器である。また、同図において、13は、上記変化点を表す変化点信号とパラメータmを表すパラメータm信号をデジタルの出力信号として出力する出力回路である。パラメータm信号は、m=2,3,∞の三者が区別されれば良いので、例えば2ビットの符号を用いて表される。
【0164】
図22の各接続点での信号、即ち、内積演算器4に入力される入力信号、入力信号の標本値、内積演算によって得られる標本値、減算器5出力の誤差、及び誤差演算値は、第1の実施形態の場合と同じに表される。
【0165】
本実施形態の信号処理装置は、各部のそれぞれにデジタル回路やメモリを用いて、ハードウエア構成とすることが可能であるが、プログラムによってコンピュータが実行するソフトウエア構成とすることも可能である。この場合、信号処理装置は、主に中央処理装置(CPU)と、演算途中のデータ等を一時記憶するメモリと、信号処理プログラムや標本化関数等を格納するファイル装置とから構成される。信号処理プログラムには、図22に示す各処理をコンピュータが実行する手順が示される。なお、信号処理プログラムは、CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory)等の記録媒体に格納し、独立したプログラムとすることが可能である。
【0166】
次に、パラメータmが1種類となる場合は、図22において、内積演算器4及び標本化関数発生器3はそれぞれ1個となり、誤差演算器7及びクラス判定器8が省略される。
【0167】
なお、本実施形態の入力信号がアナログ信号である場合は、アナログ入力信号は、一旦、上記小区間の間隔で標本化され、PCM符号化される。これとは別に、入力信号がアナログ信号である場合、変化点信号を得る信号処理をアナログ信号処理によって行なうことも可能である。その場合は、図22に示した装置の各部がアナログ回路によって構成される。
【0168】
図23に本発明の信号処理装置の第10の実施形態を示す。本実施形態では、文字図形等による画像を対象とし、パラメータmがm=2,3,∞の3種類に設定される。なお、本発明は、勿論これら3種類に限定されるものではなく、例えばm=1,2,3,∞の4種類を選ぶ、或いは例えばm=2のみとする等、対象に応じて種類が選択されることは言うまでもない。
【0169】
本実施形態は、逆標本化関数を用いて画像を再生することを前提にしており、変化点を表す信号及びパラメータmを表す信号並びに離散信号を出力する信号処理がデジタル信号処理によって行なわれる。入力信号は、輪郭線を小区間で区切って得られるデジタル連続波形信号である。更に、m=2,3,∞の標本化関数は、第9の実施形態で用いたものと同じである。
【0170】
図23において、2は、複数の小区間からなる区間毎に区切った各点を標本点とし、その標本間隔τで入力信号を標本化して、その標本点kτ=tの標本値を出力する標本化回路、3は、上から順にm=2,3,∞の標本化関数を発生する標本化関数発生器、4は、入力信号と標本化関数との内積を区間0~(J-1)τで演算して内積演算値を出力する内積演算器、5は、標本化回路2が出力する標本値から内積演算器4が出力する内積演算値を減算してその差分を出力する減算器である。なお、標本化関数発生器3が出力するm=2,3,∞の標本化関数はファイル装置(図示せず)に予め格納されており、内積演算の都度読み出される。また、1つの標本間隔を成す小区間の数は、入力信号が連続波形信号とみなされる程度の大きさの数となる。
【0171】
次に、上記差分は誤差演算が行なわれてからパラメータm決定の比較が行なわれる。誤差演算は、入力信号の性質に応じて差分の絶対値の二乗和又は算術和が用いられ、和演算が区間0~(N-1)τの各標本点(t,tk+1,…,tk+(N-2))の誤差に対して行なわれる。誤差演算は、その他に、演算区間において最大の差分の絶対値を選択する演算としても良い。演算区間を表すNは、入力信号が静止画で処理がオフラインで行なわれる場合は、比較的大きい値が選ばれる。
【0172】
続いて、図23において、7は、区間0~(N-1)τの各標本点の差分に対して上述の誤差演算を行なう誤差演算器、8は、比較器を有し、誤差演算器7からのm=2,3,∞の誤差演算結果を比較して最小のものを検出し、そのパラメータmを示すパラメータm信号を出力するクラス判定器である。また、6は、標本化回路2が出力する標本値に対する、誤差演算器7及びクラス判定器8の処理による時間遅れを調整するためのメモリである。
【0173】
更に、図23において、11は、減算器5からのm=2,3,∞の誤差を予め設定した閾値と比較し、いずれの誤差も閾値を越えた場合にその標本点を変化点と判定して変化点信号を出力する変化点判定器である。
【0174】
次に、標本化回路2の標本値は標本間隔τ毎に出力されて標本値の列を成し、離散信号となる。図23において、9は、上記離散信号と上記パラメータm信号と上記変化点信号とを組合せてデジタルの出力信号とし、同信号を出力する出力回路である。組合せは、例えば、離散信号をパケット化し、そのヘッダにパラメータm信号及び切替点信号を搭載することによって行なわれる。パラメータm信号は、m=2,3,∞の三者が区別されれば良いので、例えば2ビットの符号を用いて表される。また、切替点信号はその有無が示せれば良いので、例えば1ビットの符号で表される。なお、離散信号と上記パラメータm信号と切替点信号は組合されず、それぞれが別に出力されても良い。
【0175】
本実施形態の信号処理装置は、各部のそれぞれにデジタル回路やメモリを用いて、ハードウエア構成とすることが可能であるが、プログラムによってコンピュータが実行するソフトウエア構成とすることも可能である。この場合、信号処理装置は、主に中央処理装置(CPU)と、演算途中のデータ等を一時記憶するメモリと、信号処理プログラムや標本化関数等を格納するファイル装置とから構成される。信号処理プログラムには、図23に示す各処理をコンピュータが実行する手順が示される。なお、信号処理プログラムは、CD-ROM等の記録媒体に格納し、独立したプログラムとすることが可能である。
【0176】
次に、パラメータmが1種類となる場合は、図23において、内積演算器4及び標本化関数発生器3はそれぞれ1個となり、誤差演算器7が省略され、クラス判定器8からは該当する固定のパラメータm信号が出力される。
【0177】
本実施形態の信号処理装置は、連続波形信号から離散信号を生成する信号処理をアナログ信号処理によって行なうことも可能である。そのようなアナログ信号処理による信号処理装置の構成を図24に示す。装置の各部がアナログ回路によって構成されるが、それらの機能及び動作は、対応する図23に示した各部と同様である。但し、出力回路9からは、アナログの出力信号が出力される。この場合の信号の組合せは、例えば、映像又は画像の走査の帰線期間にパラメータm信号を挿入することによって行なっても良い。なお、出力回路9に入力される離散信号と上記パラメータm信号を予めPCM符号器を用いて符号化してデジタル化することが可能である。その場合、出力回路9に図23に示したものが用いられ、デジタルの出力信号が出力される。
【0178】
また、本実施形態において、クラス判定器8によって決定されたパラメータmの内積演算器4が出力する内積演算値は、そのパラメータmが入力信号のパラメータmと合致しているので、標本化回路2の標本値とほぼ一致する。従って、出力回路9に供給する標本値を上記内積演算値に代えることが可能である。その場合は、決定されたパラメータmの内積演算値をクラス判定器8が出力するパラメータm信号を使って選択し、選択した内積演算値を出力回路9に供給する選択器が設けられる。そのような選択器を設けた信号処理装置の構成を図25に示す。図25において、10は、上記選択器である。このように、図25に示した信号処理装置から内積演算値の列からなる離散信号が出力される。また、上述のように、図23に示した信号処理装置から標本値の列からなる離散信号が出力される。この内積演算値及び標本値は、いずれも標本間隔毎に得られる離散値であり、従って、離散信号は、離散値列と言うことができる。
【0179】
次に、第9及び第10の実施形態の信号処理装置の動作原理及び処理の流れである、
<I>未知信号に対してフルーエンシ信号空間における部分空間の最適なクラス決定
(1)フルーエンシ信号空間の定義
(2)標本化関数の意義
(3)標本化関数による未知の信号の属する部分信号空間のクラスの特定
に関しては、第1~第4の実施形態の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0180】
ここで図22及び図23に戻り、上記の理論に基づき構成される内積演算器4の例が上述の図9に示されるので、説明を省略する。
<II>変化点の検出
上述したように、変化点は、クラス切替点と特異点を含んでいる。
(1)クラス切替点
ある一つの信号がクラスの異なる信号の繋がりによって表現されているとする。このような信号に対して、異なるクラスの信号の間の境界部分となる点(クラス切替点)が、標本化関数系と原信号(入力信号)との内積演算によって得られる内積演算値と入力信号の標本値との誤差に基づいて検出される。
【0181】
一つの信号上でのある点を基準に、その点の前後の領域においてクラスの異なる信号によって元々の信号が表現されている場合(Aという領域ではクラスm、即ち
【0182】
【数37】
JP0004500307B2_000038t.gif

【0183】
の信号として表現されており、またBという領域ではクラスm、即ち
【0184】
【数38】
JP0004500307B2_000039t.gif

【0185】
の信号として表現されている場合)、クラスの異なる信号によって領域が分けられる点をクラス切替点と呼ぶことにし、それをP(m,m)で表すこととする。
【0186】
クラス切替点P(m,m)は、その点における性質によって以下のように分類される。
(i)点P(m,m)において連続ではあるが微分は不可能であり、かつm≠mである。そのようなクラス切替点の例を図26に例示する。
(ii)点P(m,m)において不連続であり、従って微分は不可能であり、かつm≠mである。そのようなクラス切替点の例を図27に例示する。
(iii)点P(m,m)において連続で微分可能であり、かつm≠mである。そのようなクラス切替点の例を図28に示す。
(2)特異点
微分不可能によって領域が領域A,Bに分けられる点を特異点と呼ぶことにする。特異点は、その点における性質によって以下のように分類される。
(i)その点において連続ではあるが微分は不可能であり、かつm=mである。そのような特異点の例を図29に例示する。特に、例えばm=m=2の場合は、図30に示すように、折れ線の継ぎ目となる。
(ii)その点において不連続であり、従って微分は不可能であり、かつm=mである。そのような特異点の例を図31に例示する。
(iii)その点において連続又は不連続であって微分は不可能であり、かつm≠mである。そのような特異点は、クラス切替点の(i)及び(ii)と同じである。クラス切替点の内で、このような特異点となる点を超特異点と呼ぶことにする。
(3)変化点の検出
第9及び第10の実施形態で求まる標本値と内積演算値との差分は、上記のクラス切替点と特異点を含む変化点の手前では、パラメータmに対してはmが一致するため小さい値(ほぼ0)となり、その他のパラメータmに対してはmが一致しないため、大きい値となる。変化点においては、微分不可能であるか又はパラメータmが急変する境界になることから、差分はパラメータmに対しても大きい値となる。従って、所定の閾値εthを設けておき、全てのパラメータmの差分が閾値εthを越えた点を変化点として決定することができる。
【0187】
このような変化点の検出について、図32を例にとって説明する。図32のように、信号u(t)はある区間(領域A)においてはm=2クラスの信号(ポリゴン:折れ線)として表現されているとする。一方、u(t)はまた t=tspを境としてそれ以降の区間(領域B)においてはm=∞クラスの信号として表現されているものとする。信号には、その他のクラスとしてm=3があるとする。このような場合、
(i)領域Aにおいて、あるクラスmの標本化関数
【0188】
【数39】
JP0004500307B2_000040t.gif

【0189】
と信号u(t)との内積によって得られる内積演算値と入力信号の標本値との誤差(領域Aに限定したものを
【0190】
【数40】
JP0004500307B2_000041t.gif

【0191】
と表すことにする)をm=2,3,∞について計算すれば、誤差ε(A),ε(A),ε(A)の内、ε(A)が最小となる。
(ii)領域Bにおいて、同様にε(B),ε(B),ε(B)を求めれば、この区間においてはε(B)が最小となる。
(iii)クラスが切り替わる超特異点t=tsp近傍における誤差ε(tsp),ε(tsp),ε(tsp)を求めれば、ε,ε,εのいずれも値が大きくなり、はっきりとクラスを特定することができなくなる。この情報を手がかりとしてクラス切替点の位置が特定される。
【0192】
上記の原理に基づくクラス判定の処理手順を図33を用いて以下に説明する。本説明では、上記したように、標本化関数がm=2,3,∞クラスの場合を例として採り上げている。
【0193】
標本点t,tk+1,…,tk+(J-2)の各々において、入力信号u(t)と標本化関数
【0194】
【数41】
JP0004500307B2_000042t.gif

【0195】
との内積を計算し、内積演算値
【0196】
【数42】
JP0004500307B2_000043t.gif

【0197】
但し、k=k,k+1,…,k+(J-2)
を求める。続いて、求めた内積演算値と入力信号の標本値u(t)との誤差
【0198】
【数43】
JP0004500307B2_000044t.gif

【0199】
を計算する(ステップS8)。ここまでは、図8のステップS1~ステップS5において、m=2,3,∞としたときの処理と同じである。
【0200】
次に、各mに対応する誤差ε(t),ε(t),ε(t)を予め定めた閾値εthと比較する(ステップS9)。全ての誤差が閾値εth以上の場合(ステップS10)、t=tの点を変化点として判定する(ステップS11)。また、ステップS10において、全ての誤差が閾値εth以上ではなく、少なくとも1つの誤差が閾値εth以下である場合は、ステップS9に戻る。
【0201】
以上、第9及び第10の実施形態により、輪郭線の変化点が内積演算によって求められる。内積演算は積分動作を有しているので、従来の微分動作による変化点の検出と異なり、変化点の検出において雑音の影響が軽減され、高精度の変化点を確実に得ることが期待される。
【0202】
第10の実施形態においては、更に、連続波形信号である入力信号から離散信号を得る信号処理において、信号処理される入力信号の属するクラスが明確化され、離散信号と共に、クラスを表すパラメータm信号及び変化点を表す変化点信号を取得することが期待される。
【0203】
そこで、離散信号から連続波形信号を生成する信号処理において、上記パラメータm信号及び上記変化点信号を用いて同パラメータmの逆標本化関数を選択すれば、上記離散信号の属するパラメータmに合致したパラメータmの逆標本化関数によって連続波形信号を生成することが可能になる。それにより、シャノンの標本化定理によって帯域制限されることのない高品質の連続波形信号を再生することが可能になる。
【0204】
このことを更に詳しく述べるために、離散信号から連続波形信号を生成する信号処理の装置について説明する。図34に同装置の構成を示す。本装置に入力する信号は、第9の実施形態の信号処理装置が出力するデジタルの出力信号である。そして、離散信号から連続波形信号を得る信号処理がデジタル信号処理によって行なわれる。
【0205】
この信号処理に用いる逆標本化関数は、第9の実施形態の信号処理装置で用いられた上記の標本化関数と双直交を成す関数である。m=2,3の逆標本化関数は、有限の区間0~(P-1)τで確定する関数であるので、畳込積分が標本点毎にこの範囲で行なわれる。なお、m=3の場合は代表的にはP=5である。一方、m=∞の逆標本化関数は、無限に振動が続く関数である。そこで、本装置では、同関数の区間をm=2,3の場合と同じ区間で打ち切ることとし、それによって発生する若干の誤差を許容することとした。なお、m=∞の処理精度を上げるために、畳込積分の範囲を上記よりも広げることが可能である。
【0206】
図34において、21は、パラメータmに属する原信号の離散信号と上記パラメータmを表すパラメータm信号及び変化点信号が組合されたデジタル信号を入力し、それぞれを分離して出力する信号入力回路、22は、パラメータm毎の逆標本化関数を発生する逆標本化関数発生器、23は、逆標本化関数発生器22が出力するパラメータm毎の逆標本化関数の中から上記離散信号が属するパラメータmの逆標本化関数をパラメータm信号及び変化点信号を用いて選択する逆標本化関数選択器、24は、信号入力回路21からの離散信号と逆標本化関数選択器23が選択した逆標本化関数との畳込積分によって連続波形信号を得る畳込積分演算器、25は、畳込積分演算器24が出力する連続波形信号をアナログ信号として出力するPCM復号器(PCMDEC)である。逆標本化関数発生器22が出力するm=2,3,∞の逆標本化関数は記憶装置のデータファイル(図示せず)に予め格納されており、関数選択の都度読み出される。
【0207】
なお、図34の信号処理装置の出力信号を入力する装置(例えば、プリンタ)がデジタル入力である場合は、PCM復号器25が不要となる。そのようにPCM復号器25を省略してデジタルの連続波形信号を出力するようにした装置の構成を図35に示す。
【0208】
ここで、パラメータmの逆標本化関数は、上述のように
【0209】
【数44】
JP0004500307B2_000045t.gif

【0210】
と表される。また、上述のように、逆標本化関数と標本化関数は、双直交を成すように相互に関係付けられる。特に、逆標本化関数は、対象とする標本点で値を持つが、その他の標本点で0になる特性を有している。
【0211】
DA演算を行なう畳込積分は、上記の式(13)で表される。式(13)の演算により、原信号を再生した連続波形信号u(t)が得られる。従って、標本点tの標本値をt=tから(P-1)τの間保持し、その保持信号とt=tから発生開始された逆標本化関数との積を取り、続いて標本間隔の時間τずらしながらその演算を(P-2)回行ない、得られた積を順次累積加算する。そして、次の標本点tk+(P-1)から再び同じ演算を行なってそれを繰り返すことにより、畳込積分の演算が行なわれ、連続波形信号u(t)が得られることになる。上述のように、このような離散信号から連続波形信号を得る処理は、パラメータmのDA関数(逆標本化関数)を用いて各離散値の間を滑らかに結び、連続信号を得る補間、加工処理と言うことができる。
【0212】
このことから、図34の畳込積分演算器24は、例えば図16に示すように構成される。即ち、畳込積分演算器24は、逆標本化関数をτだけ遅延させる(P-2)個の遅延回路51-1~遅延回路51-(P-2)と、間隔τの標本点t,tk+1,…,tk+(P-2)の標本値をそれぞれ時間(P-1)τの間保持する(P-1)個の保持回路52-0~保持回路52-(P-2)と、保持回路52が出力する保持信号と逆標本化関数との積を取る(P-1)個の乗算器53-0~乗算器53-(P-2)と、乗算器53の出力信号を出力順に累積加算する累積加算器54とから構成される。
【0213】
以上により、クラスに適合する逆標本化関数を用いて信号処理を行なうことが可能となるので、高品質の再生信号を得ることが可能となる。
【0214】
さて、第10の実施形態の図23及び図25の信号処理装置、並びに図24で出力側にPCM符号器を設けた信号処理装置は、アナログの連続波形信号を入力してデジタルの離散信号(離散値列)を出力する。このことから、上記信号処理装置は、AD変換装置と言うことができる。同様のことから、図34及び図35の信号処理装置はDA変換装置と言うことができる。そして、両装置によってA-D変換/D-A変換系を構成するとき、両装置は直接に接続されて良く、或いは伝送系又は記録系を経て接続されても良い。伝送系又は記録系を経るとき、データ量を低減するための情報圧縮符号化や伝送路符号化が行なわれても構わない。この場合は、伝送系又は記録系を経た後で復号が行なわれ、しかる後D-A変換が行なわれる。
【0215】
伝送系が通信システムの場合、通信システムとして、例えば、インターネットや携帯電話網、ケーブルテレビ、或いは電波を用いる地上波放送や衛星放送がある。また、記録系では、記録媒体としてCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)等がある。これらの応用では、従来よりも高精細の画像を得ることが期待される。
【0216】
A-D変換/D-A変換系がプリンタやプロッタ、その他の装置を用いた看板製作や印刷システム等に応用される場合、従来よりも高精細の画像を得ることが可能になることから、画像の拡大、縮小に対して高品質を保つことが期待される、即ち高いスケーラビリティを得ることが期待される。
【産業上の利用可能性】
【0217】
本発明は、画像、映像、データ、音声等を扱う情報産業の全般、即ち通信、放送、記録媒体、インターネット、コンピュータ、印刷、出版、広告等に広く応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】本発明に係る信号処理装置の第1の実施形態を説明するための構成図。
【図2】m=2の標本化関数の例を説明するための曲線図。
【図3】m=3の標本化関数の例を説明するための曲線図。
【図4】本発明の第2の実施形態を説明するための構成図。
【図5】本発明の第3の実施形態を説明するための構成図。
【図6】本発明の第4の実施形態を説明するための構成図。
【図7】連続微分可能性による信号の類別を説明するための図。
【図8】信号の属するクラスを特定する処理を説明するためのフローチャート。
【図9】図1の内積演算器を説明するための構成図。
【図10】クラス切替点を説明するための第1の図。
【図11】クラス切替点を説明するための第2の図。
【図12】クラス切替点を説明するための第3の図。
【図13】クラス切替点を説明するための第4の図。
【図14】クラス切替点を検出する処理を説明するためのフローチャート。
【図15】本発明の第5の実施形態を説明するための構成図。
【図16】畳込積分演算器の例を説明するための構成図。
【図17】m=2の標本化関数の例を説明するための曲線図。
【図18】m=3の標本化関数の例を説明するための曲線図。
【図19】本発明の第6の実施形態を説明するための構成図。
【図20】本発明の第7の実施形態を説明するための構成図。
【図21】本発明の第8の実施形態を説明するための構成図。
【図22】本発明の第9の実施形態を説明するための構成図。
【図23】本発明の第10の実施形態を説明するための構成図。
【図24】本発明の第10の実施形態を説明するための別の構成図。
【図25】本発明の第10の実施形態を説明するための更に別の構成図。
【図26】クラス切替点を説明するための第1の図。
【図27】クラス切替点を説明するための第2の図。
【図28】クラス切替点を説明するための第3の図。
【図29】特異点を説明するための第1の図。
【図30】特異点を説明するための第2の図。
【図31】特異点を説明するための第3の図。
【図32】変化点の検出を説明するための図。
【図33】変化点を検出する処理を説明するためのフローチャート。
【図34】離散信号から連続波形信号を得る信号処理装置の例を説明するための構成図。
【図35】離散信号から連続波形信号を得る別の信号処理装置の例を説明するための構成図。
【符号の説明】
【0219】
1…PCM符号器、2…標本化回路、3…標本化関数発生器、4…内積演算器、5…減算器、6…メモリ、7…誤差演算器、8…クラス判定器、9…出力回路、10…選択器、11…クラス切替点判定器、21…信号入力回路、22…逆標本化関数発生器、23…逆標本化関数選択器、24…畳込積分演算器、25…PCM復号器。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29
【図31】
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【図32】
31
【図33】
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【図34】
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【図35】
34