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明細書 :高分子担持金属クラスター組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5055525号 (P5055525)
登録日 平成24年8月10日(2012.8.10)
発行日 平成24年10月24日(2012.10.24)
発明の名称または考案の名称 高分子担持金属クラスター組成物
国際特許分類 C08L 101/02        (2006.01)
C08K   3/08        (2006.01)
C08F 212/08        (2006.01)
C07C  45/68        (2006.01)
C07C  49/796       (2006.01)
C07C  67/31        (2006.01)
C07C  67/347       (2006.01)
C07C  69/618       (2006.01)
C07C  69/732       (2006.01)
B01J  31/28        (2006.01)
C07B  53/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C08L 101/02
C08K 3/08
C08F 212/08
C07C 45/68
C07C 49/796
C07C 67/31
C07C 67/347
C07C 69/618
C07C 69/732 Z
B01J 31/28 Z
C07B 53/00 B
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 11
全頁数 22
出願番号 特願2006-510759 (P2006-510759)
出願日 平成17年3月7日(2005.3.7)
国際出願番号 PCT/JP2005/003848
国際公開番号 WO2005/085307
国際公開日 平成17年9月15日(2005.9.15)
優先権出願番号 2004064520
優先日 平成16年3月8日(2004.3.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年3月6日(2008.3.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000252300
【氏名又は名称】和光純薬工業株式会社
【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士フイルムホールディングス株式会社
【識別番号】504089415
【氏名又は名称】小林 修
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】岡本 訓明
【氏名】秋山 良
【氏名】大野 桂二
【氏名】稲垣 由夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
審査官 【審査官】中島 芳人
参考文献・文献 特表2003-510167(JP,A)
特開2005-232427(JP,A)
国際公開第02/072259(WO,A1)
国際公開第02/066158(WO,A1)
国際公開第02/072644(WO,A1)
特開平06-015184(JP,A)
調査した分野 C08L 1/00~101/14
特許請求の範囲 【請求項1】
遷移金属を架橋高分子に金属クラスターとして担持させてなる高分子担持金属クラスター組成物であって、該架橋高分子が芳香族基を有する疎水性側鎖及び架橋性官能基を有する親水性側鎖を有し、金属クラスターを担持した架橋性高分子を架橋させてなり、該架橋性高分子が、架橋性官能基として、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基又はチオイソシアネート基を有することを特徴とする高分子担持金属クラスター組成物。
【請求項2】
前記架橋性高分子が、更に、水酸基、1級若しくは2級のアミノ基又はチオール基を含む親水性側鎖を少なくとも一種有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
溶液中で該架橋性高分子に該金属のクラスターを担持したミセルを形成した後、該架橋性高分子を架橋反応に付すことによって形成された請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ミセルが、前記遷移金属の錯体と、前記架橋性高分子が有する疎水性側鎖としての芳香族基との配位子交換により遷移金属が当該架橋性高分子に担持されて形成された請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記金属クラスターの径が20nm以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記遷移金属が、パラジウム、コバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、金及び白金から成る群から選択される少なくとも1種である請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
遷移金属が0価である請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
架橋性高分子が、A1)疎水性側鎖としての芳香族基、架橋性官能基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有する少なくとも1種のモノマーを重合又は共重合することにより得られるポリマー又はコポリマー、又はB1)疎水性側鎖としての芳香族基、架橋性官能基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、B2)疎水性側鎖としての芳香族基及び重合性二重結合を有するモノマー、及びB3)架橋性官能基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーから成る群から選択される少なくとも2種のモノマーを共重合することにより得られるコポリマーである請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記芳香族基、架橋性官能基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーが、下記一般式(化1)
【化1】
JP0005055525B2_000016t.gif
(式中、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、Rは炭素数6~14のアリール基を表し、Rは共有結合、炭素数1~6のアルキレン基、-R(OR10-、-R(COOR10-又は-R(COOR10(OR10-(式中、Rは共有結合又は炭素数1~6のアルキレン基を表し、R10はそれぞれ独立して炭素数2~4のアルキレン基を表し、m、n及びpは1~10の整数、oは1又は2を表す。)を表し、Rはカルボキシル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、又は下式(化2又は化3)で表される基を表す。
【化2】
JP0005055525B2_000017t.gif
【化3】
JP0005055525B2_000018t.gif
(式中、Rは炭素数1~6のアルキレン基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、RはR又はRの結合する炭素原子3~6員の環を形成していてもよい。))で表され、前記芳香族基及び重合性二重結合を有するモノマーが下式(化4)
【化4】
JP0005055525B2_000019t.gif
(式中、R及びRは独立して上記と同様に定義され、R11は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。)で表され、前記架橋性官能基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーが下式(化5)
【化5】
JP0005055525B2_000020t.gif
(式中、R、R、R及びR11は独立して上記と同様に定義される。)で表される請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記芳香族基、架橋性官能基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーが、更に、前記一般式(化1)で表されるモノマーであって、、水酸基、1級若しくは2級のアミノ基又はチオール基であるモノマーを含む請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
水素化反応、脱水素反応、酸化反応、アリル位置換反応、カップリング反応又はカルボニル化反応のための触媒としての請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、パラジウム等の遷移金属クラスターを両親媒性の高分子中に安定化させた組成物として、金属クラスターが漏れることなく回収可能な形態を有するようにし、触媒としての機能を保ったまま、これを担体に固定したり、網状に結合させたりすることを可能としたものに関する。
【背景技術】
【0002】
金属とポリマーの複合体においては様々な金属を種々の担体に固定し触媒として使用する試みが古くから行われているが、その多くは窒素やリン原子の配位結合を利用しており一般に触媒活性が十分でなく、回収再使用するうちに金属が流出し活性が徐々に低下するなどの問題を有している。
一方近年マイクロカプセル化を利用して金属触媒をポリマーに担持させた触媒組成物が開発されているが、これらの組成物においては、担持された金属が反応の種類によっては漏れてくるという問題があった(特許文献1)。
また金属クラスターとして担体表面に固定する方法も開発されているがその触媒活性はクラスターサイズに大きく依存しクラスターサイズが大きくなるほど活性が低下するなどの問題を有している。
近年微小金属クラスターをポリマーミセルに担持させて触媒として用いる報告がなされているが、このような金属-ポリマーミセル複合体はコロイド溶液として存在しているため安定性に問題があり、回収再使用が困難である(非特許文献1)。
【0003】

【特許文献1】WO2004/024323
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,1997,119,10116
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、各種反応の触媒等として有用であり、且つ使用後の回収・再使用が容易である、遷移金属を微小のクラスターとして高分子に担持させて得られる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者らは、特定の構造を有するポリマー、即ち、主鎖に疎水性側鎖(例えば芳香族基等)及び親水性でかつ架橋性の側鎖を直接結合させたポリマーを用いることにより、上記のような課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。このようなポリマー(高分子)を用いることにより、液相においてミセルを容易に形成することが可能になり、その結果金属は高分子の例えば疎水性側鎖としての芳香族基の芳香環との相互作用により高分子に微小なクラスターとして安定化されて担持されることとなり、高い触媒活性を有することができる。一方、このミセルは架橋性官能基を有するため、このミセルを樹脂、ガラス等のビーズや基板などの担体と反応させたり、又はミセル同士反応させることが可能になる。その結果、この金属クラスター組成物を担体に固定したり、ミセル状の金属クラスター組成物が多数三次元的に繋がった形態等を有するようにすることが可能になった。このような形態を有するため、反応の種類により金属クラスターが漏れるという問題を解消することが出来、再利用効率を高めることが可能となった。また膜状に成形することも可能となったので微小金属クラスターが分散された機能性膜などを製造することが可能になった。
【0006】
即ち、本発明は、遷移金属を架橋高分子に金属クラスターとして担持させてなる高分子担持金属クラスター組成物であって、該架橋高分子が芳香族基を有する疎水性側鎖及び架橋性官能基を有する親水性側鎖を有し、金属クラスターを担持した架橋性高分子を架橋させてなり、該架橋性高分子が、架橋性官能基として、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基又はチオイソシアネート基を有することを特徴とする高分子担持金属クラスター組成物である。この高分子担持金属クラスター組成物は、適当な溶液中で該架橋性高分子に該金属のクラスターを担持したミセルを形成した後、該架橋性高分子を架橋反応に付すことによって形成されることが好ましい。
更に、本発明は、この組成物の、水素化反応、酸化反応、脱水素反応、アリル位置換反応、カップリング反応(Heck, Suzuki, Stille, Hiyama, Negishi, Sonogashira反応、Buchwald-Hartwig反応及びグリニャール試薬を用いたカップリング反応など)、又はカルボニル化反応のための触媒としての使用である。

【発明の効果】
【0007】
本発明者らは金属を上記したような架橋性官能基を有するポリマーミセルに担持させたのちミセルを凝集させ、引き続き架橋させることによりあらゆる溶媒に不溶性で担持された金属クラスターの漏れがなく回収再使用が容易な高分子担持金属クラスター組成物を開発することに成功した。また調製された金属含有ポリマーミセルをガラスなどこれまで困難であった担体上へも固定することに成功した。なお担持される金属は微小クラスターとしてミセル内で安定化されているため本発明の高分子担持金属クラスター組成物は触媒として非常に高い活性を示すことも見出した。また、本発明の高分子担持金属クラスター組成物は、触媒、機能性膜以外にも、電極、選択的吸着フィルター、分子ふるいフィルター、吸着剤、水素吸蔵剤、半導体、これら製造のための材料等としての用途も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のクラスター組成物は、金属がポリマーとの相互作用によりポリマーミセルに微小クラスターとして担持された形態を有する。
この金属としては、鉄、ルテニウム、オスミウム等の第8属遷移金属、コバルト、ロジウム、イリジウム等の第9属遷移金属、ニッケル、パラジウム、白金等の第10属遷移金属、銅、銀、金等の第11属遷移金属、亜鉛、カドミウム、水銀等の第12属遷移金属などが挙げられ、このうちパラジウム、コバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、金、白金等が好ましく、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、金、白金等がより好ましく、パラジウム、白金等が特に好ましい。
尚、これら遷移金属は2種以上組み合わせて担持させてもよい。
また、この金属は0価であることが好ましい。
【0009】
この金属を高分子に担持させる方法としては、特に限定されないが、例えば上記したごとき構造を有する高分子と金属前駆体とを、a)適当な極性の良溶媒に溶解して金属担持ミセルを形成させた後適当な極性の貧溶媒で凝集させる、b)適当な非極性の良溶媒に溶解した後適当な極性溶媒を加えて金属担持ミセルを形成させ、更に極性の貧溶媒で凝集させる、c)適当な非極性の良溶媒に溶解して金属担持ミセルを形成させた後適当な非極性の貧溶媒で凝集させる、d)極性の良溶媒に溶解した後適当な非極性溶媒を加えて金属担持ミセルを形成させ、更に非極性の貧溶媒で凝集させる、ことにより行われる。この場合、a)及びb)の方法では、形成されたミセルの内方向に疎水性側鎖が、ミセルの外方向に親水性側鎖が位置することになり、c)及びd)の方法では、形成されたミセルの外方向に疎水性側鎖が、ミセルの内方向に親水性側鎖が位置することになる。
金属クラスターは夫々のミセルに於いて疎水性側鎖との相互作用により担持されている。尚、層状ミセル、複合ミセルの場合は、これらに準じて疎水性側鎖と親水性側鎖の位置が決定されることになる。このようにして調製されるミセルも本発明の高分子担持金属クラスター組成物に含まれる。
【0010】
尚、極性の良溶媒としてはテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などがあり、非極性の良溶媒としてはトルエン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが使用できる。極性の貧溶媒としてはメタノール、エタノール、ブタノール、アミルアルコールなどがあり、非極性の貧溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが使用できる。金属含有ポリマーミセルの濃度は用いる溶媒によっても異なるが、極性溶媒中で約0.1~100 mg/mL、特に約0.1~10 mg/mLの低濃度ではミセルは球状を保ったまま凝集し最終的に架橋型金属含有ポリマーミセルは球状あるいは球状が連なった形で得られる。また、極性溶媒中で約10~100 mg/mLの高濃度ではミセルは形態変化を起こしラメラミセルを経て棒状ミセルへと変化し架橋型金属含有ポリマーミセルは球状又は棒状ミセルが三次元的に繋がった網目構造を形成する。
【0011】
また、ここで、金属前駆体とは、目的の遷移金属を含む適当な化合物(例えば酸化物、ハロゲン化物、配位子との錯体等)のことであるが、金属を適当な配位子と錯体を形成させたものが好ましい。このような配位子との錯体を使用する場合、前駆体中の金属は上記したごとき構造を有する高分子が有する疎水性基(例えば芳香族基等)との配位子交換により高分子に担持される。尚、金属前駆体中の金属が0価以外のものである場合にはミセル形成時に還元処理を行うことにより担持された金属を0価とすることが出来る。
【0012】
錯体を形成させるための配位子として、例えば、ジメチルフェニルホスフィン(P(CH3)2Ph)、ジフェニルホスフィノフェロセン(dPPf)、トリメチルホスフィン(P(CH3)3)、トリエチルホスフィン(P(Et)3)、トリtert-ブチルホスフィン(P(tBu)3)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)、トリメトキシホスフィン(P(OCH3)3)、トリエトキシホスフィン(P(OEt)3)、トリtert-ブトキシホスフィン(P(OtBu)3)、トリフェニルホスフィン(PPh3)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、トリフェノキシホスフィン(P(OPh)3)、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン等の有機ホスフィン配位子、1,5-シクロオクタジエン(COD)、ジベンジリデンアセトン(DBA)、ビピリジン(BPY)、フェナントロリン(PHE)、ベンゾニトリル(PhCN)、イソシアニド(RNC)、トリエチルアルシン(As(Et)3)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、アセチルアセトナト、シクロオクタジエン、シクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、エチレン、カルボニル、アセテート、トリフルオロアセテート、ビフェニルホスフィン、エチレンジアミン、1,2-ジフェニルエチレンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、アセトニトリル、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、スルホネート、カーボネート、ハイドロオキサイド、ナイトレート、パークロレート、サルフェート等が挙げられる。これらの中でも、有機ホスフィン配位子、1,5-シクロオクタジエン(COD)、ジベンジリデンアセトン(DBA)、ビピリジン(BPY)、フェナントロリン(PHE)、ベンゾニトリル(PhCN)、イソシアニド(RNC)、及びトリエチルアルシン(As(Et)3)が好ましく、トリフェニルホスフィン、トリtert-ブチルホスフィン、及びトリ-o-トリルホスフィンがより好ましく、トリフェニルホスフィンが特に好ましい。
配位子の数は、調製の際に使用する高分子の種類、金属の種類、架橋反応等の条件にもよるが、通常1~6個である。
【0013】
本発明の高分子は疎水性側鎖(芳香族基等)及び架橋性を有する親水性側鎖を有することを要する(両親媒性高分子)。即ち、これらの側鎖は高分子の主鎖に直接結合している。これら側鎖を複数種有していてもよい。
【0014】
疎水性側鎖は、芳香族基を有する
その芳香族基として、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。
アリール基としては、通常炭素数6~10、好ましくは6のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
尚、本明細書に於いて定義されている炭素数はその基が有する置換基の炭素数を含まないものとする。
アラルキル基としては、通常炭素数7~12、好ましくは7~10のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等が挙げられる。
アリール基及びアラルキル基に於ける芳香環はアルキル基、アリール基、アラルキル基などの疎水性置換基を有していてもよい。親水性置換基や反応基を有することは好ましくない。

【0015】
芳香環が有していてもよいアルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、環状の場合には単環でも多環でもよく、通常炭素数1~20、好ましくは1~12のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロオクタデシル基、シクロイコシル基等が挙げられる。
【0016】
芳香環が有していてもよいアリール基及びアラルキル基としては、上記した如き芳香族基としてのアリール基及びアラルキル基と同様なものが挙げられる。
これら芳香環が有していてもよい置換基は、アリール基及びアラルキル基に於ける芳香環に通常1~5個、好ましくは1~2個置換していてもよい。
疎水性側鎖としてのアルキル基としては、上記した如き芳香環が有していてもよいアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0017】
架橋性官能基を有する親水性側鎖は、親水性を有する架橋性官能基のみから成るものであっても、親水性側鎖の主鎖に架橋性官能基が付いたものでもよいが、親水性側鎖の主鎖に架橋性官能基が付いたものが好ましい。
架橋性官能基として、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、水酸基、1級若しくは2級のアミノ基、及びチオール基が挙げられるが、この架橋性官能基は好ましくはエポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、より好ましくはエポキシ基、カルボキシル基、最も好ましくはエポキシ基である。これらは適当な基で保護されていてもよい。
また、架橋性官能基が、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基又はチオイソシアネート基の場合に、高分子が更に水酸基、1級若しくは2級のアミノ基、及びチオール基、好ましくは水酸基又は1級若しくは2級のアミノ基、より好ましくは水酸基を有していてもよい。
【0018】
高分子に含まれる架橋性官能基の好ましい組み合わせとしては、エポキシ基のみ、エポキシ基と水酸基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とカルボキシル基、イソシアネート基又はチオイソシアネート基のみ、イソシアネート基と水酸基、イソシアネート基とアミノ基、イソシアネート基とカルボキシル基、カルボキシル基のみ、水酸基のみ、水酸基とカルボキシル基、カルボキシル基とアミノ基等が挙げられる。このなかで、エポキシ基のみ、及びエポキシ基と水酸基の組み合わせが好ましい。
高分子が架橋性官能基を複数種有する場合、架橋性官能基が同じ親水性側鎖に含まれていても、異なる親水性側鎖に含まれていてもよいが、異なる親水性側鎖に含まれていることが好ましい。
【0019】
親水性側鎖の主鎖としては、比較的短いアルキレン基、例えば、炭素数が1~6程度のアルキレン基であってもよいが、-R(OR10-、-R(COOR10-、又は-R(COOR10(OR10-(式中、Rは共有結合又は炭素数1~6、好ましくは共有結合又は1~2のアルキレン基を表し、R10はそれぞれ独立して炭素数2~4、好ましくは2のアルキレン基を表し、m、n及びpは1~10の整数、oは1又は2を表す。)で表される主鎖をもつものが親水性であるため好ましい。このような好ましい主鎖として、-CH(OC-や-CO(OC-等が挙げられる。
【0020】
一方、高分子はこれら側鎖を有するものであればいかなるものであってもよいが、これら側鎖を有するモノマーを重合させたものが好ましい。
このようなモノマーとして、付加重合のための二重結合や三重結合,例えば、ビニル基、アセチレン基など、好ましくはビニル基を持つものが好ましい。
【0021】
即ち、好ましい架橋性高分子は、
(A)1)疎水性側鎖、架橋性官能基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有する少なくとも1種のモノマーを重合又は共重合することにより得られるポリマー又はコポリマー、又は
(B)1)疎水性側鎖、架橋性官能基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、2)疎水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、及び3)架橋性官能基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーから成る群から選択される少なくとも2種のモノマーを共重合することにより得られるコポリマーである。ここで、同種のモノマーは2以上の異なるモノマーを含むものであってもよい。
【0022】
この1)疎水性側鎖、架橋性官能基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーは、下記一般式(化1)
【化1】
JP0005055525B2_000002t.gif
で表されるものが好ましい。
は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基、好ましくは水素原子を表す。
は炭素数6~14、好ましくは6のアリール基を表し、例えば、フェニル基、ナフチル基等、好ましくはフェニル基が挙げられる。
は上記の主鎖と同じであり、共有結合、炭素数1~6のアルキレン基、-R(OR10-、-R(COOR10-又は-R(COOR10(OR10-(式中、Rは共有結合又は炭素数1~6のアルキレン基を表し、R10はそれぞれ独立して炭素数2~4のアルキレン基を表し、m、n及びpは1~10の整数、oは1又は2を表す。)を表す。
【0023】
はカルボキシル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、又は下式(化2又は化3)で表されるエポキシ基を表し、好ましくはエポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、より好ましくはエポキシ基、カルボキシル基、最も好ましくはエポキシ基である。これらは適当な基で保護されていてもよい。として、更に水酸基、1級若しくは2級のアミノ基、又はチオール基を有してもよい。

【0024】
【化2】
JP0005055525B2_000003t.gif
【化3】
JP0005055525B2_000004t.gif
式中、Rは炭素数1~6、好ましくは1~4、更に好ましくは1~2のアルキレン基を表す。このアルキレン基は、直鎖状、分枝状又は環状でもよく、例えば、メチレン基,エチレン基,トリメチレン基,プロピレン基,メチルメチレン基,メチルエチレン基,エチルメチレン基,テトラメチレン基,ペンタメチレン基,ヘキサメチレン基,シクロプロピレン基,シクロペンチレン基,シクロヘキシレン基等が挙げられる。
【0025】
及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6、好ましくは1~4、更に好ましくは1~2のアルキル基、好ましくは水素原子を表す。
はR又はRの結合する炭素原子3~6員の環を形成していてもよい。3~6員環として、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0026】
2)前記疎水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーは、下式(化4)
【化4】
JP0005055525B2_000005t.gif
で表されるものが好ましい。
及びRは独立して上記と同様に定義される。
11は水素原子又は炭素数1~6、好ましくは1~4、更に好ましくは1~2のアルキル基を表す。
このようなモノマーとしてスチレン系モノマーが好ましい。スチレン系モノマーとして、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、α-エチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン等が挙げられ、中でもスチレン及びα-メチルスチレンが好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0027】
3)前記架橋性官能基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーは下式(化5)
【化5】
JP0005055525B2_000006t.gif
で表されるものが好ましい。
式中、R、R、R及びR11は独立して上記と同様に定義される。
【0028】
このような高分子として、例えば、下記
【化6】
JP0005055525B2_000007t.gif
(式中、mは整数を表し2つのmはお互いに異なっていてもよく、X及びX’は、例えば、それぞれエポキシ基及び水素原子を表す。また、x、y及びzは0又は正の整数を表す。)で示されるユニット(単量体)1~3から選ばれる2つのユニットを有するもの、1~3のユニットをすべて有するもの等が挙げられる。このユニット1は疎水性側鎖(芳香族基)のみ、ユニット2は疎水性側鎖(芳香族基)と親水性側鎖の両方、ユニット3は親水性側鎖のみを持っている。これらユニットを組み合わせて疎水性側鎖と親水性側鎖のバランスをとるようにすることが重要である。疎水性側鎖を有するユニット(この例ではユニット1+ユニット2)を30~100モル%、親水性側鎖を有するユニット(この例ではユニット2+ユニット3)を0.5~100モル%となるように組み合わせることが好ましい。
尚、ユニット1又は/及びユニット2の芳香族基の一部がその他の疎水性側鎖(アルキル基)に入れ替わってもよい。
【0029】
ユニット2及び3に対応するビニルモノマーは下記に示すハロゲン化ビニル化合物と例えばポリエチレングリコールとのエーテル化反応に引き続き、更に例えばエピクロロヒドリンなどのハロゲン化エポキシ化合物とのエーテル化反応によって得ることができる。
【化7】
JP0005055525B2_000008t.gif
(式中、X''はハロゲン原子、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)
【0030】
このような高分子と上記の金属前駆体を、上記のような適当な溶媒に溶解し、また必要に応じて更に別の溶媒を加えることにより、ミセルを形成することができる。
この場合、金属前駆体がまずミセルの疎水性部分に取り込まれ、金属前駆体に配位していた配位子が脱離することによって若しくは還元処理によって金属クラスターが生成する。金属クラスターは高分子の芳香環から電子供与を受け微小な状態でも安定化される。
ミセルのサイズは通常5nm~3μm、好ましくは10nm~1μm、より好ましくは10nm~500nm程度である。
これに担持されている金属クラスター1個の平均径は20nm以下、好ましくは0.3~20nm、より好ましくは0.3~10nm、更に好ましくは0.3~5nm、より更に好ましくは0.3~2nm、よりより更に好ましいのは0.3~1nmであり、数多くの金属クラスターがミセルの疎水性部分に均一に分散して存在していると考えられる。このように金属が微小なクラスター(微小金属塊)となっているため、高い触媒活性を示すことができる(後述の実施例2を参照されたい。)。
【0031】
金属クラスターの径は透過型電子顕微鏡(TEM)又は拡張X線吸収微細構造(EXAFS)で測定することができる。
TEMは、染色処理をしなければ金属部分のみが観察できるものであるが、解像度の限界が1 nm程度であるため、TEM観察で判別できない場合はクラスターのサイズが1 nm以下であると示唆される。
EXAFSスペクトルは、X線照射によって放出される光電子と、その光電子が近傍原子に反射した後方散乱とが干渉することで得られるスペクトルで、X線吸収スペクトルの吸収端より高エネルギー側に現れる。このEXAFSスペクトルを解析することで近傍原子の種類、原子間距離及び数(配位数:CN)に関する情報が得られる。特に配位数からは、原子の集合数及びクラスター径を見積もることが出来る。例えば、パラジウムの場合、計算化学的に安定といわれている13原子クラスターの配位数は、5.53であり、クラスター径は0.83nmである。
【0032】
このように金属クラスターを担持したミセルは、架橋性官能基により架橋することができる。架橋することによりミセルは安定化し、担持した金属クラスターの漏れを防止することが出来る。
架橋反応により、単体ミセルを構成する高分子中の架橋性官能基同士を結合させることや、隣接するミセル同士を結合させることが出来る。更に架橋反応を利用することにより、これらミセルを適当な担体に結合させることもできる。
架橋反応は、架橋性官能基の種類により、加熱や紫外線照射により反応させることができる。架橋反応は、これらの方法以外にも、使用する直鎖型有機高分子化合物を架橋するための従来公知の方法である、例えば架橋剤を用いる方法、縮合剤を用いる方法、過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合触媒を用いる方法、酸又は塩基を添加して加熱する方法、例えばカルボジイミド類のような脱水縮合剤と適当な架橋剤を組み合わせて反応させる方法等に準じても行うことができる。
【0033】
架橋性官能基を加熱により架橋させる際の温度は、通常50~200℃、好ましくは70~180℃、より好ましくは100~160℃である。
加熱架橋反応させる際の反応時間は、通常0.1~100時間、好ましくは1~50時間、より好ましくは2~10時間である。
【0034】
架橋剤を用いて架橋させる場合の架橋剤としては、架橋性官能基としてエポキシ基を有するポリマーには、例えばヘキサメチレンジアミン,ヘキサメチレンテトラミン等のポリアミン化合物、例えばエチレングリコール,プロピレングリコール,グリセリン等のポリオール、例えばマロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,マレイン酸,フマル酸等のポリカルボン酸及びそれらの無水物等の架橋剤、架橋性官能基としてカルボキシル基を有するポリマーには、例えばエチレングリコール,グリセリン等のポリヒドロキシ化合物、例えばエチレンオキサイド,プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド化合物等の架橋剤、架橋性官能基としてヒドロキシル基を有するポリマーには、例えばマロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,マレイン酸,フマル酸等のポリカルボン酸及びそれらの無水物、例えばエチレンオキサイド,プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド化合物、例えばヘキサメチレンジアミン,ヘキサメチレンテトラミン等のポリアミン化合物等の架橋剤、架橋性官能基としてイソシアネート基を有するモノマー由来のモノマー単位を有するポリマーには、例えば水、例えばエチレングリコール,グリセリン等のポリヒドロキシ化合物、例えばマロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,マレイン酸,フマル酸等のポリカルボン酸及びそれらの無水物、例えばヘキサメチレンジアミン,ヘキサメチレンテトラミン等のポリアミン化合物等の架橋剤、架橋性官能基としてアミノ基を有するポリマーには、例えばマロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,マレイン酸,フマル酸等のポリカルボン酸及びそれらの無水物、例えばエチレンオキサイド,プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド化合物等の架橋剤が挙げられる。
縮合剤を用いて架橋させる際に使用する縮合剤としては、例えば架橋性官能基としてカルボキシル基を有するポリマーの場合には例えばジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド類等の脱水剤が挙げられる。
【0035】
架橋剤の量は、架橋反応の反応性、ポリマーの分子量、反応条件などによって影響されるが、通常架橋性官能基に対して架橋剤の反応性官能基(2官能性架橋剤の場合は2つある)が通常0.1~10等量、好ましくは0.5~2等量、より好ましくは0.8~1.2等量になるように添加する。これは目的とする架橋型高分子組成物に期待する物性(例えば柔軟性、膨潤性など)によっても適宜増減させてもよい。
縮合剤の量は架橋反応の反応性、ポリマーの分子量、反応条件などによって影響されるが、通常架橋性官能基に対して縮合剤が通常0.1~20等量、好ましくは0.5~10等量、より好ましくは1~3等量添加する。これは目的とする架橋型高分子組成物に期待する物性(例えば柔軟性、膨潤性など)によっても適宜増減させてもよい。
【0036】
好ましい形態として、ミセルを三次元網目構造(network)を有する塊や膜としたり、ミセルを担体に固定することもできる。ガラス、シリカゲル、樹脂などの担体表面の架橋性官能基(例えば、水酸基やアミノ基など)と金属含有ポリマーミセルの架橋性官能基とを架橋反応させると、本発明の高分子担持金属クラスター組成物は担体表面に強固に固定される。また、適当な樹脂やガラスで出来た反応容器の表面に、ミセルの架橋性官能基を使用して本発明の高分子担持金属クラスター組成物を固定化してやれば、より再使用が簡便な触媒担持反応容器として使用できる。
【0037】
このようにして得られた架橋型金属含有ポリマーミセルは多くの空孔を有しており、また担持された金属は数ナノメートル以下の非常に小さいクラスターを形成するため、種々の反応に対して高い活性を示す。この架橋型ポリマーミセルは水素化反応、酸化反応、脱水素反応、アリル位置換反応、カップリング反応などに用いることができ、特に金属としてパラジウムを用いる場合には非常に高い活性を示す。

以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
【0038】
製造例1
2-フェニルプロペン (22.4 g, 190 mmol)、N-ブロモスクシンイミド (23.7 g, 133 mmol)及びブロモベンゼン(76 mL)の混合物を160 oC のオイルバス上でN-ブロモスクシンイミドが溶解するまで過熱した。反応混合物を室温まで冷却した後、沈殿物をろ過で取り除きクロロホルムで洗浄した。ろ液を減圧蒸留で精製(b.p. 80-85 oC / 3 mmHg)し3-ブロモ-2-フェニルプロペン(12.1 g)を得た。1H NMR (CDCl3)δ= 4.39 (s, 2H), 5.49 (s, 1H), 5.56 (s, 1H), 7.33-7.51 (m, 5H); 13C NMR (CDCl3)δ= 34.2, 117.2, 126.1, 128.3, 128.5, 137.6, 144.2.
【0039】
60%水素化ナトリウム (1.6 g, 40 mmol) の DMF (75 mL) 懸濁液にグリシドール (7.4 g, 100 mmol)のDMF(5 mL)溶液を0℃で加えた。次に 上記で得られた3-ブロモ-2-フェニルプロペン(3.94 g, 20 mmol)のDMF(10 mL )溶液を同温度で加えた後、室温で24 h撹拌した。反応混合物を0℃に冷却しジエチルエーテルで希釈した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した。水層をジエチルエーテルで数回抽出し、有機層を合一し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒を濃縮し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane-AcOEt)で精製し2-[(2-フェニルアリルオキシ)メチル]オキシラン(2.66 g, 70 %)を得た。1H NMR (CDCl3)δ= 2.59 (dd, 1H, J = 2.7 Hz, 5.1 Hz), 2.78 (dd, 1H, J = 4.2 Hz, 5.1 Hz), 3.13-3.17 (m, 1H), 3.46 (dd, 1H, J = 5.8, 11.5 Hz), 3.77 (dd, 1H, J = 3.2, 11.5 Hz), 4.41 (ddd, 1H, J = 0.7, 1.2, 12.9 Hz), 4.48 (ddd, 1H, J = 0.5, 1.2, 12.9 Hz), 5.34-5.36 (m, 1H), 5.53-5.54 (m, 1H), 7.45-7.48 (m, 5H); 13C NMR (CDCl3)δ= 44.3, 50.8, 70.5, 73.2, 114.6, 126.0, 127.8, 128.4, 138.6, 143.9; IR (KBr) 3000, 2924, 2867, 1911, 1812, 1701, 1630, 1512, 1479, 1407, 1337, 1254, 1205, 1107, 991, 909, 839 cm-1; HRMS (EI): Calcd for C13H16O2 (M+) 190.0994, found 190.0998.
【0040】
スチレン(12.5 g, 120 mmol)、上記で得られた2-[(2-フェニルアリルオキシ)メチル]オキシラン(2.85 g, 15 mmol)、tetraethyleneglycol mono-2-phenyl-2-propenyl ether(4.66 g, 15 mmol)、AIBN(172.4 mg, 1.05 mmol)をクロロホルム(19 mL)に溶解しアルゴン雰囲気下で48時間、還流条件下で加熱攪拌した。冷却後反応混合物をメタノール(MeOH)(600 mL)中に注いでポリマーを固化させた。デカントして上澄みを取り除いた後、少量のテトラヒドロフランに溶解し再びメタノールに注いだ。沈殿したポリマーを濾過し室温減圧下で乾燥し、12.0 gのポリマーを得た(収率60 %)。
【0041】
得られた高分子は下記構造であり、各モノマー単位の組成比(x/y/z) = 91/5/4、重量平均分子量(Mw) = 31912, 数平均分子量(Mn) = 19468, 分散度(Mw/Mn) = 1.64 であった。生成したポリマーを以下ポリマー(1)という。
【化8】
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【実施例1】
【0042】
高分子担持Pdクラスター組成物の合成
ポリマー(1)(2.0 g)、Pd(PPh3)4(2.0 g)をジクロロメタン(DCM)40 mLに溶解し12時間撹拌した。これにメタノール40 mLを徐々に加えてミセルを形成させた後、更にメタノール80 mLを加えてミセルを凝集させた。上澄みをデカントして取り除きメタノールで数回洗浄した後、減圧乾燥した。引き続き120℃で2時間加熱することによってミセルを架橋させた。THFで洗浄後乾燥し高分子担持Pdクラスター組成物1.9gを得た。Pd含有量=0.40 mmol/gであった。
【0043】
ミセルを高濃度で凝集させると、ミセルの形態変化を伴い球状ミセル(図1d)からラメラミセル(図1e)を経て棒状ミセルへと変化し、架橋することにより三次元網目構造を有する架橋型金属含有ポリマーミセルが得られる(図1f,図2a)。ミセルの形状は、球ないし棒状ミセルからなる空孔を有する3次元網目構造であり(図1f、図2a)、球ないし棒状ミセルの直径はおよそ20~50 nm、比表面積(BET法)50.92 m2/gであった。
TEM測定の結果、パラジウムのクラスターが観察されなかったことから、クラスターサイズは1nm以下と示唆される(図1f)。また得られた組成物のX線吸収スペクトルを高エネルギー物理学研究所(KEK)の放射光実験施設(フォトンファクトリー, PF)のビームライン10Bを用いて測定し、EXAFS解析を行ったところPd-Pd原子間距離r = 2.76A、配位数CN = 4.4であることが分かった。この結果からPdは金属状態であることが分かり、Pd原子が平均7個程度集まったクラスターでありその径は約0.7nmと推定された。
【実施例2】
【0044】
高分子担持Pdクラスター組成物の合成
ポリマー(1)(500 mg)、Pd(PPh3)4(500 mg, 0.43 mmol)をジクロロメタン10 mLに溶解しこれにt-アミルアルコール(tAmOH)50 mLを徐々に加えてミセルを形成(図1a)させた後室温で8時間撹拌した。反応容器を封緘しオイルバスを用いて120℃で5時間加熱攪拌することによってミセルを架橋させた。これをメタノールに注いで固化させた後、沈殿物を濾過し室温減圧下で乾燥し、架橋されたPd含有ポリマーミセル534 mgを得た。Pd含有量=0.81 mmol/gであった。ミセルの形状は球状であり、その直径はおよそ200~500 nmであった(図1b)。TEM測定の結果、パラジウムのクラスターが観察されなかったことからクラスター径は1nm以下と示唆される。
ミセルを低濃度で凝集させると、ミセル溶液に分散した金属含有ポリマーミセルがその球状を保ったまま架橋させることができるが(図1b)金属含有ポリマーミセルをろ過などにより単離する場合は前述の担体上に凝集させる方が望ましい。
【実施例3】
【0045】
シリカゲル上に担持させた高分子担持Pdクラスター組成物の合成
ポリマー(1)(200 mg)、Pd(PPh3)4(200 mg, 0.17 mmol)をジクロロメタン20 mLに溶解しt-アミルアルコール100 mLを徐々に加えてミセルを形成させた。これにシリカゲル(2.0 g)加えてシリカゲル上にミセルを凝集させた。上澄みをデカントして取り除きメタノールで数回洗浄した後、減圧乾燥した。引き続き120℃で2時間加熱することによってミセルを架橋させた。THFで洗浄後乾燥しシリカゲル上に担持させた高分子担持Pdクラスター組成物2.05gを得た。Pd含有量=0.043mmol/gであった。ミセルの形状は球状であり、その直径はおよそ200~500 nmであった。
【実施例4】
【0046】
アミノプロピル化シリカゲル上に担持させた高分子担持Pdクラスター組成物の合成
ポリマー(1)(200 mg)、Pd(PPh3)4(200 mg, 0.17 mmol)をジクロロメタン20 mLに溶解しt-アミルアルコール100 mLを徐々に加えてミセルを形成させた。これにアミノプロピル化シリカゲル(富士シリシア社製:商品名FM1020)(2.0 g)加えてアミノプロピル化シリカゲル上にミセルを凝集させた。上澄みをデカントして取り除きメタノールで数回洗浄した後、減圧乾燥した。引き続き120℃で2時間加熱することによってミセルを架橋させた。THFで洗浄後乾燥しアミノプロピル化シリカゲル上に担持させた高分子担持Pdクラスター組成物1.89gを得た。Pd含有量=0.043 mmol/gであった。
ミセルの形状は球状ないし棒状であり、その直径はおよそ100~500 nmであった。
【実施例5】
【0047】
ヒドロキシメチル化樹脂上に担持させた高分子担持Pdクラスター組成物の合成
ポリマー(1)(200 mg)、Pd(PPh3)4(200 mg, 0.17 mmol)をジクロロメタン20 mLに溶解しt-アミルアルコール100 mLを徐々に加えてミセルを形成させた。これにヒドロキシメチル化樹脂(Nova biochem社製:商品名Hydroxymethylpolystyrene, 100-200mesh)(2 g)を加えてヒドロキシメチル化樹脂上にミセルを凝集させた。上澄みをデカントして取り除きメタノールで数回洗浄した後、減圧乾燥した。引き続き120℃で2時間加熱することによってミセルを架橋させた。THFで洗浄後乾燥しヒドロキシメチル化樹脂上に担持させた高分子担持Pdクラスター組成物1.73gを得た。Pd含有量=0.009 mmol/gであった。ミセルの形状は球状であり、その直径はおよそ200~500 nmであった(図2c)。
【実施例6】
【0048】
ヒドロキシメチル化樹脂上に担持させた架橋型Pdクラスター組成物の合成
ポリマー(1)(200 mg)、Pd(PPh3)4(200 mg, 0.17 mmol)をジクロロメタン20 mLに溶解しt-アミルアルコール100 mLを徐々に加えてミセルを形成させた。これに実施例5と同様のヒドロキシメチル化樹脂(10 g)加えてヒドロキシメチル化樹脂上にミセルを凝集させた。上澄みをデカントして取り除きメタノールで数回洗浄した後、減圧乾燥した。引き続き120 ℃で2時間加熱することによってミセルを架橋させた。THFで洗浄後乾燥しヒドロキシメチル化樹脂上に担持させた架橋型Pdクラスター組成物9.80gを得た。Pd含有量=0.00078 mmol/gであった。本実施例の架橋型Pdクラスター組成物は、実施例5の架橋型Pdクラスター組成物に比べてパラジウム含有量の少ないタイプである。
【実施例7】
【0049】
アミノメチル化樹脂上に担持させた高分子担持Pdクラスター組成物の合成
ポリマー(1)(200 mg)、Pd(PPh3)4(200 mg, 0.17 mmol)をジクロロメタン20 mLに溶解しt-アミルアルコール100 mLを徐々に加えてミセルを形成させた。これにアミノメチル化樹脂(Nova biochem社製:商品名Aminomethylated polystyrene HL, 100-200mesh)(2 g)加えてアミノメチル化樹脂上にミセルを凝集させた。上澄みをデカントして取り除きメタノールで数回洗浄した後、減圧乾燥した。引き続き120℃で2時間加熱することによってミセルを架橋させた。THFで洗浄後乾燥しアミノメチル化樹脂上に担持させた高分子担持Pdクラスター組成物1.52 gを得た。Pd含有量=0.037 mmol/gであった。ミセルの形状は球状ないし棒状であり、その直径はおよそ100~500 nmであった(図2d)。
【実施例8】
【0050】
ガラス上に担持させた高分子担持Pdクラスター組成物の合成
ポリマー(1)(200 mg)、Pd(PPh3)4(200 mg, 0.17 mmol)をジクロロメタン20 mLに溶解しt-アミルアルコール100 mLを徐々に加えてミセルを形成させた。これに顕微鏡用スライドグラス(1枚)を加えてガラス上にミセルを凝集させた。上澄みをデカントして取り除きメタノールで数回洗浄した後、減圧乾燥した。引き続き120℃で2時間加熱することによってミセルを架橋させた。THFで洗浄後乾燥しガラス上に担持させた高分子担持Pdクラスター組成物を得た。Pd含有量=0.002 mmol/gであった。ミセルの形状は球状であり、その直径はおよそ200~500 nmであった(図2b)。
【実施例9】
【0051】
架橋型Niクラスター組成物の合成
ポリマー(1)(500 mg)、Ni(PPh3)4(443 mg)をジクロロメタン10 mLに溶解し12時間撹拌した。これにメタノール10 mLを徐々に加えてミセルを形成させた後、さらにメタノール20 mLを加えてミセルを凝集させた。上澄みをデカントして取り除きメタノールで数回洗浄した後、減圧乾燥した。引き続き120℃で2時間加熱することによってミセルを架橋させた。THFで洗浄後乾燥し架橋型Niクラスター組成物450 mgを得た。Ni含有量=0.13 mmol/gであった。
【実施例10】
【0052】
架橋型Irクラスター組成物の合成
ポリマー(1)(500 mg)、[IrCl(COD)2]2(67.2 mg)をジクロロメタン10 mLに溶解しこれにt-アミルアルコール50 mLを徐々に加えてミセルを形成させた後、1気圧の水素雰囲気下、室温で16時間撹拌した。これにメタノール140 mLを加えてミセルを凝集させた後、上澄みをデカントして取り除きメタノールで数回洗浄し、減圧乾燥した。引き続き120℃で2時間加熱することによってミセルを架橋させた。THFで洗浄後乾燥し架橋型Irクラスター組成物288 mgを得た。Ir含有量=0.69 mmol/gであった。
【実施例11】
【0053】
架橋型Ir-Ptクラスター組成物の合成
ポリマー(1)(100 mg)、[IrCl(COD)2]2(6.7 mg, 0.01 mmol)およびPtCl2(COD)(3.71 mg, 0.01mmol)をジクロロメタン4 mLに溶解しこれにt-アミルアルコール20 mLを徐々に加えてミセルを形成させた後、1気圧の水素雰囲気下、室温で16時間撹拌した。これにメタノール130 mLを加えてミセルを凝集させた後、上澄みをデカントして取り除きメタノールで数回洗浄し、減圧乾燥した。引き続き120℃で2時間加熱することによってミセルを架橋させた。THFで洗浄後乾燥し架橋型Ir-Ptクラスター組成物23 mgを得た。Ir含有量=0.87 mmol/g 、Pt含有量=0.87 mmol/gであった。
【実施例12】
【0054】
架橋型Ir-Auクラスター組成物の合成
AuCl(11.62 mg, 0.05 mmol)および(1,5-シクロオクタジエン21.6 mg, 0.1 mmol)、ポリマー(1)(500 mg)および[IrCl(COD)2]2(67.2 mg, 0.1 mmol)をジクロロメタン10 mLに溶解しこれにt-アミルアルコール50 mLを徐々に加えてミセルを形成させた後、1気圧の水素雰囲気下、室温で16時間撹拌した。これにメタノール325 mLを加えてミセルを凝集させた後、上澄みをデカントして取り除きメタノールで数回洗浄し、減圧乾燥した。引き続き120℃で2時間加熱することによってミセルを架橋させた。THFで洗浄後乾燥し架橋型Ir-Auクラスター組成物248 mgを得た。Ir含有量=0.61 mmol/g 、Au含有量=0.20 mmol/gであった。
【実施例13】
【0055】
架橋型Ir-Ptクラスター組成物の合成
実施例10で得た架橋型Irクラスター組成物(18.5 mg, 0.01 mmol)をジクロロメタン(2 mL)と混合し、1気圧の水素雰囲気下、室温で30分間撹拌した。これにPtCl2(COD)(3.71 mg, 0.01mmol)のジクロロメタン(3 mL)溶液を水素雰囲気下にゆっくり加えた後、引き続き室温で8時間攪拌した。これを濾取し、ジクロロメタンで数回洗浄した後、減圧乾燥し架橋型Ir-Ptクラスター組成物20 mgを得た。Ir含有量=0.61 mmol/g 、Pt含有量=0.87 mmol/gであった。
【実施例14】
【0056】
架橋型Pt含有クラスター組成物の合成
ポリマー(1)(500 mg)及びPt(PPh3)4(500mg)をジクロロメタン10mLに溶解し、12時間撹拌した。これにメタノール10 mLを徐々に加えてミセルを形成させた後、更にメタノール20 mLを加えてミセルを凝集させた。上澄みをデカントして取り除き、メタノールで数回洗浄した後、減圧乾燥した。引き続き120℃で2時間加熱することによってミセルを架橋させた。THFで洗浄後、乾燥し、架橋型Pt含有クラスター組成物415 mgを得た。Pt含有量=0.69 mmol/gであった。
【実施例15】
【0057】
高分子担持Pdクラスター組成物を用いたHeck反応
JP0005055525B2_000010t.gif 実施例1で得られた高分子担持Pdクラスター組成物(上記式中PIPdで表記。)(62.6 mg, 0.025 mmol)、ヨードベンゼン(102 mg, 0.5 mmol)アクリル酸エチル(75.2 mg, 0.75 mmol)炭酸カリウム(138.2 mg, 1 mmol)N-メチル-2-ピロリジノン(上記式中NMPで表記。)(5 mL)を混合し120℃で1時間撹拌した。エタノールを加えた後濾過して高分子担持Pdクラスター組成物を除去した。濾液を濃縮し残さをジエチルエーテルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後濃縮した。残差を分取薄層クロマトグラフィー(PTLC)で精製し桂皮酸エチル(81.9 mg, 93% yield)を得た。高分子担持Pdクラスター組成物は乾燥後に再度同反応に使用した。2nd: 92%、3rd: 91%、4th: 91%、5th: 92%の収率で桂皮酸エチルを得た。
極少量の組成物量で高い収率で目的物を与え、組成物を回収再使用しても活性の低下は全く認められないことが確認された。
1H NMR (CDCl3) δ= 1.34 (t, 3H, J = 7.1 Hz), 4.27 (q, 2H, J = 7.1 Hz), 6.44 (d, 1H, J = 15.6 Hz), 7.36-7.39 (m, 3H), 7.51-7.53 (m, 2H), 7.69 (d, 1H, J = 15.6 Hz); 13C NMR (CDCl3) δ= 14.3, 60.5, 118.3, 128.0, 128.9, 130.2, 134.5, 144.6, 167.0.
【0058】
本実施例のHeck反応を下式に示す。
【化9】
JP0005055525B2_000011t.gif

【実施例16】
【0059】
高分子担持Pdクラスター組成物を用いたHeck反応
実施例1で得られた高分子担持Pdクラスター組成物(1.25 mg, 5×10-4 mmol)、ヨードベンゼン(10.2 g, 50 mmol)アクリル酸エチル(7.5 g, 75 mmol)炭酸カリウム(13.8 g, 100 mmol)N-メチル-2-ピロリジノン(50 mL)を混合し120℃で24時間撹拌した。エタノールを加えた後濾過して高分子担持Pdクラスター組成物を除去した。濾液を濃縮し残さをジエチルエーテルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後濃縮した。残差をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し桂皮酸エチル(7.3 g, 82.5% yield)を得た。TON(ターンオーバー数)=82500であった。
【実施例17】
【0060】
ヒドロキシメチル化樹脂上に担持させた高分子担持Pdクラスター組成物を用いたHeck反応
実施例5で得られたヒドロキシメチル化樹脂上に担持させた高分子担持Pdクラスター組成物(55.6 mg, 5×10-4 mmol)、ヨードベンゼン(10.2 g, 50 mmol)アクリル酸エチル(7.5 g, 75 mmol)炭酸カリウム(13.8 g, 100 mmol)N-メチル-2-ピロリジノン(50 mL)を混合し120 ℃で24時間撹拌した。エタノールを加えた後濾過して高分子担持Pdクラスター組成物を除去した。濾液を濃縮し残さをジエチルエーテルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後濃縮した。残差をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し桂皮酸エチル(6.9 g, 78.2% yield)を得た。TON=78200であった。
【実施例18】
【0061】
ヒドロキシメチル化樹脂上に担持させた架橋型Pdクラスター組成物を用いるHeck 反応
実施例6で得たヒドロキシメチル化樹脂上に担持させた架橋型Pdクラスター組成物(19.1 mg, 1.5×10-5 mmol)、ヨードベンゼン(1.02 g, 5 mmol)アクリル酸エチル(0.75 g, 7.5 mmol)炭酸カリウム(1.38 g, 10 mmol)N-メチル-2-ピロリジノン(10 mL)を混合し120℃で24時間撹拌した。エタノールを加えた後濾過して架橋型Pdクラスター組成物を除去した。濾液を濃縮し残さをジエチルエーテルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後濃縮した。残差をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し桂皮酸エチル(0.82 g, 93% yield)を得た。TON=284660であった。
【実施例19】
【0062】
架橋型Pdクラスター組成物を用いる薗頭(Sonogashira)反応
実施例2で得た架橋型Pdクラスター組成物(12.5 mg, 0.005 mmol)、4'-ヨードアセトフェノン(123.0 mg, 0.5 mmol)、フェニルアセチレン(63.8 mg, 0.625 mmol)、炭酸セシウム(325.8 mg, 1 mmol)、N-メチル-2-ピロリジノン(2 mL)、トルエン(3mL)を混合し80℃で8時間撹拌した。エタノールを加えた後濾過して架橋型Pdクラスター組成物を除去した。濾液を濃縮し残さをアセトニトリル(5 mL)に溶解した後パラジウム濃度を蛍光X線分析装置(XRF)で測定したところ、パラジウムの溶出は検出されなかった(測定限界値= 5 ppm)。XRF測定後の溶液をジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後濃縮した。残さをPTLCで精製し4-(フェニルエチニル)アセトフェノン(85.9 mg, 78.0% yield)を得た。
1H NMR (CDCl3) δ = 1H NMR (CDCl3) δ = 2.59 (s, 3H), 7.35-7.37 (m, 3H), 7.53-7.61 (m, 4H), 7.91-7.94 (m, 2H); 13C NMR (CDCl3) δ = 26.8, 88.9, 93.0, 122.9, 128.4, 128.5, 128.7, 129.1, 131.9, 132.0, 136.4, 197.5
【0063】
本実施例の薗頭(Sonogashira)反応を下式に示す。
【化10】
JP0005055525B2_000012t.gif
実施例17に比べて、Pdに対して用いる担体(樹脂)の量を増やすことにより、パラジウムの担持量を相対的に減らすことができた。本実施例のようにごく少量の触媒を用いて行う反応においては、触媒の拡散性を稼ぐことができ、反応の効率化を図ることができる。
【実施例20】
【0064】
架橋型Irクラスター組成物を用いる不斉水素化反応
実施例10で得た架橋型Irクラスター組成物(14.4 mg, 0.01 mmol)、ベンゾイル蟻酸メチル(164.2 mg, 1.0 mmol)、(-)シンコニジン(3.8 mg, 0,013 mmol)およびトルエン(5mL)をオートクレーブ中で混合し、50気圧の水素圧にて、室温で5時間攪拌した。反応後濾過により架橋型Irクラスター組成物を除去した。濾液を濃縮し残さをPTLCで精製し(R)-マンデル酸メチル(147.1 mg, 88.5% yield)を得た。不斉収率は47.1 %eeであった。1H NMR (CDCl3) δ = 1H NMR (CDCl3) δ = 3.75 (s, 3H), 7.32-7.43 (m, 5H); 13C NMR (CDCl3) δ = 53.0, 72.8, 126.6, 128.5, 128.6, 138.2, 174.1.
【0065】
本実施例の不斉水素化反応を下式に示す。
【化11】
JP0005055525B2_000013t.gif

【実施例21】
【0066】
架橋型Ir-Ptクラスター組成物を用いる不斉水素化反応
実施例11で得た架橋型Ir-Ptクラスター組成物(10.0 mg)、ベンゾイル蟻酸メチル(164.2 mg, 1.0 mmol)、(-) シンコニジン(3.8 mg, 0,013 mmol)およびトルエン(5mL)をオートクレーブ中で混合し、50気圧の水素圧にて、室温で5時間攪拌した。反応後濾過により架橋型Ir-Ptクラスター組成物を除去した。濾液を濃縮し残さをPTLCで精製し(R)-マンデル酸メチル(125 mg, 75 % yield)を得た。不斉収率は52 %eeであった。
【実施例22】
【0067】
架橋型Ir-Auクラスター組成物を用いる不斉水素化反応
実施例12で得た架橋型Ir-Auクラスター組成物(10.0 mg)、ベンゾイル蟻酸メチル(164.2 mg, 1.0 mmol)、(-) シンコニジン(3.8 mg, 0,013 mmol)およびトルエン(5mL)をオートクレーブ中で混合し、50気圧の水素圧にて、室温で5時間攪拌した。反応後濾過により架橋型Ir-Auクラスター組成物を除去した。濾液を濃縮し残さをPTLCで精製し(R)-マンデル酸メチル(160.5 mg, 96.5% yield)を得た。不斉収率は52.9 %eeであった。
【実施例23】
【0068】
架橋型Ir-Ptクラスター組成物を用いる不斉水素化反応
実施例13で得た架橋型Ir-Ptクラスター組成物(20.2 mg)、ベンゾイル蟻酸メチル(164.2 mg, 1.0 mmol)、(-) シンコニジン(3.8 mg, 0,013 mmol)およびトルエン(5mL)をオートクレーブ中で混合し、50気圧の水素圧にて、室温で5時間攪拌した。反応後濾過により架橋型Ir-Ptクラスター組成物を除去した。濾液を濃縮し残さをPTLCで精製し(R)-マンデル酸メチル(165.6 mg, 99.7% yield)を得た。不斉収率は62.6 %eeであった。
【実施例24】
【0069】
高分子担持金属クラスター組成物の膜の作成
実施例2と同様にして得られるポリマーミセル50mgを50℃の2%ゼラチン水溶液100mLに混和してポリマー分散液組成物を作成する。ゼラチン水溶液をあらかじめ表面に塗布し乾燥したセルローストリアセテートフイルム上に、この分散液組成物をワイヤーバーコーターで塗布し乾燥することにより、高分子担持金属クラスター組成物をセルローストリアセテートフイルムに担持した膜が得られる。
【0070】
比較例1
スチレン(13.42 g, 128.9 mmol)、4-vinylbenzyl glycidyl ether(3.06 g, 16.1 mmol)、tetraethyleneglycol mono-2-phenyl-2-propenyl ether(5.0 g, 16.1 mmol)、AIBN(189.6 mg, 1.15 mmol)をクロロホルム(20 mL)に溶解しアルゴン雰囲気下で48時間、還流条件下で加熱攪拌した。冷却後反応混合物をメタノール(600 mL)中に注いでポリマーを固化させた。デカントして上澄みを取り除いた後、少量のテトラヒドロフランに溶解し再びメタノールに注いだ。沈殿したポリマーを濾過し室温減圧下で乾燥した。16.2 gのポリマーを得た(収率76%)。得られたポリマーの構造は下式で表される。生成したポリマーを以下ポリマー(2)という。
【化12】
JP0005055525B2_000014t.gif

【0071】
1H-NMRの測定により、得られたポリマーの比は(スチレン/4-ビニルベンジルグルシジルエーテル/テトラエチレングリコール モノ-2-フェニル-2-プロペニルエーテル)の各モノマー単位の比(x/y/z)=86/9/5であった。また、重量平均分子量(Mw)は38000であった。
ポリマー(2)(2.0 g)、Pd(PPh3)4(2.0 g)をジクロロメタン40 mLに溶解し12時間撹拌した。これにメタノール120 mLを徐々に加えて固化させた。上澄みをデカントして取り除きメタノールで数回洗浄した後、減圧乾燥した。引き続き120 ℃で2時間加熱することによってポリマーを架橋させた。THFで洗浄後乾燥し架橋型Pd含有ポリマー(2.0g)を得た。Pd含有量=0.67 mmol/gであった。

【0072】
得られた架橋型Pd含有ポリマー(37.3 mg, 0.025 mmol)、ヨードベンゼン(102 mg, 0.5 mmol)アクリル酸エチル(75.2 mg, 0.75 mmol)炭酸カリウム(138.2 mg, 1 mmol)N-メチル-2-ピロリジノン(5 mL)を混合し120℃で1時間撹拌した。エタノールを加えた後濾過して架橋型Pd含有ポリマーを除去した。濾液を濃縮し残さをアセトニトリル(5 mL)に溶解した後、パラジウム濃度を蛍光X線分析装置(XRF)で測定したところ71.8 ppmであった。これは用いた組成物中のパラジウム量の13.5 %に相当する。XRF測定後の溶液をジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後濃縮した。残差をPTLCで精製し桂皮酸エチル(70.8 mg, 80% yield)を得た。
【0073】
実施例15と比較例1の結果及び反応液中へのPd浸出量の測定結果を表1にまとめる。
【表1】
JP0005055525B2_000015t.gif

【0074】
実施例15において、Pdの浸出が観察されなかった(nd)のに対し、比較例1ではPdの漏れが観察された。これは比較例1で使用した架橋型Pd含有ポリマーが本発明の高分子担持金属クラスター組成物のようなミセルを形成しないためと考えられる。また、実施例15においては、比較例1よりも収率が高い。これは本発明の高分子担持金属クラスター組成物に担持されているPdクラスターが微小なため、触媒活性が高いものと考えられる。
【0075】
比較例2 イリジウムカーボン(Ir/C)を用いる不斉水素化反応
5%Ir/C(38.4mg, 0.01 mmol)、ベンゾイル蟻酸メチル(164.2 mg, 1.0 mmol)、(-) シンコニジン(3.8 mg, 0,013 mmol)およびトルエン(5mL)をオートクレーブ中で混合し、50気圧の水素圧にて、室温で5時間攪拌した。反応後濾過によりIr/Cを除去した。濾液を濃縮し残さをPTLCで精製し(R)-マンデル酸メチル(145.4 mg, 87.5% yield)を得た。不斉収率は2.0 %eeであった。

【産業上の利用可能性】
【0076】
以上述べてきたように本発明は、極めて微小な金属クラスターが高分子に安定に担持された組成物、即ち高分子担持金属クラスター組成物を提供するものであり、当該組成物を用いれば多孔性、球状、棒状、層状、膜状などさまざまな形態の高分子-金属複合材料を創成し得、このような複合材料は触媒としてだけではなく、種々の機能性膜、燃料電池用材料、化学センサー、データ保存デバイス、電極、選択的吸着フィルター、分子ふるいフィルター、吸着剤、水素吸蔵剤、半導体、これら製造のための材料等など様々な分野での応用が可能であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の高分子担持金属クラスター組成物の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す図である。aはDCM-tAmOH=1/5溶液中のポリマー-Pdミセル、bは加熱による架橋後のミセル、cはマイクロウェーブを用いて架橋させたポリマー-Pdミセル、dはDCM-MeOH=1/1溶液中のポリマー-Pdミセル、eはDCM-MeOH=1/2溶液中のポリマー-Pdミセル、fはDCM-MeOH=1/3溶液中のポリマー-Pdミセルを架橋したものを示す。
【図2】本発明の高分子担持金属クラスター組成物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す図である。aはポリマー-Pdミセルの三次元ネットワーク、bはガラスに固定したミセル、cはヒドロキシメチル化樹脂に固定したミセル、dはアミノメチル化樹脂に固定したミセルを示す。
図面
【図1】
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【図2】
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