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明細書 :薄膜トランジスタ及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4620046号 (P4620046)
登録日 平成22年11月5日(2010.11.5)
発行日 平成23年1月26日(2011.1.26)
発明の名称または考案の名称 薄膜トランジスタ及びその製造方法
国際特許分類 H01L  29/786       (2006.01)
H01L  21/336       (2006.01)
C01G  15/00        (2006.01)
C01G  19/00        (2006.01)
FI H01L 29/78 618B
H01L 29/78 618A
C01G 15/00 B
C01G 15/00 D
C01G 19/00 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 21
出願番号 特願2006-510907 (P2006-510907)
出願日 平成17年2月28日(2005.2.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第65回応用物理学会(秋季)において文書をもって発表
国際出願番号 PCT/JP2005/003273
国際公開番号 WO2005/088726
国際公開日 平成17年9月22日(2005.9.22)
優先権出願番号 2004071477
2004325938
優先日 平成16年3月12日(2004.3.12)
平成16年11月10日(2004.11.10)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成18年9月28日(2006.9.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】平野 正浩
【氏名】太田 裕道
【氏名】神谷 利夫
【氏名】野村 研二
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】棚田 一也
参考文献・文献 特開2004-103957(JP,A)
特開2002-289859(JP,A)
特開2002-076356(JP,A)
特開2003-086808(JP,A)
野村研二、高木章宏、太田裕道、柳博、等,透明アモルファス酸化物半導体InGaZnO4のキャリア輸送特性,春季 第51回応用物理学関係連合講演予稿集,日本,(社)応用物理学会,2004年 3月28日,第2分冊,第669頁
調査した分野 H01L 29/786
C01G 15/00
C01G 19/00
H01L 21/336
特許請求の範囲 【請求項1】
ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、ゲート絶縁膜、及びチャネル層を有する薄膜トランジスタであって、前記チャネル層に、
InxZn1-x酸化物(0.2≦x≦1)、InxSn1-x酸化物(0.8≦x≦1)、又はInx(Zn、Sn)1-x酸化物(0.15≦x≦1)から選択される酸化物からなり、室温での電子キャリア濃度が1018/cm3未満、室温での電子移動度が、0.1cm2/(V・秒)超であるアモルファス酸化物が用いられていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記アモルファス酸化物は、電子キャリア濃度が増加すると共に、電子移動度が増加する
ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記アモルファス酸化物は、縮退伝導を示すことを特徴とする請求項1に記載薄膜トランジスタ。
【請求項4】
ガラス基板、金属基板、プラスチック基板又はプラスチックフィルム上に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載薄膜トランジスタ。
【請求項5】
Al23,Y23,又はHfO2の1種、又はそれらの化合物を少なくとも二種含む混晶化合物をゲート絶縁層とする請求項1に記載薄膜トランジスタ。
【請求項6】
請求項1記載の薄膜トランジスタを製造する方法において、
InxZn1-x酸化物(0.2≦x≦1)、InxSn1-x酸化物(0.8≦x≦1)、又はInx(Zn、Sn)1-x酸化物(0.15≦x≦1)から選択される多結晶をターゲットとして、
電気抵抗を高めるための不純物イオンを意図的に薄膜に添加せずに、酸素ガスを含む雰囲気中で、パルスレーザー堆積法又は気相スパッタ法を用いてチャネル層を成膜することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項7】
酸素ラジカル発生装置を用いて、成膜時の雰囲気に酸素ラジカルを加えることを特徴とする請求項6記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項8】
ガラス基板、金属基板、プラスチック基板又はプラスチックフィルム上にチャネル層及びゲート絶縁層を室温で成膜することを特徴とする請求項6記載の薄膜トランジスタの製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
本発明は、チャネル層にアモルファス酸化物を用いた薄膜トランジスタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(Thin FilmTransistor, TFT)は、ゲート端子、ソース端子、及び、ドレイン端子を備えた3端子素子であり、基板上に成膜した半導体薄膜を、電子又はホールが移動するチャネル層として用い、ゲート端子に電圧を印加して、チャネル層に流れる電流を制御し、ソース端子とドレイン端子間の電流をスイッチングする機能を有するアクテイブ素子である。TFTとして、現在、最も広く使われているのは多結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜をチャネル層材料としたMetal-Insulator-Semiconductor Field Effect Transistor (MIS—FET)素子である。
【0003】
また、最近では、ZnOを用いた透明伝導性酸化物多結晶薄膜をチャネル層に用いたTFTの開発が活発に行われている(特許文献1)。上記薄膜は、低温で成膜でき、かつ可視光に透明であるため、プラスチック板やフィルムなどの基板上にフレキシブルな透明TFTを形成することが可能である。
【0004】
しかし、従来のZnOは室温で安定なアモルファス相を形成することができず、殆どのZnOは多結晶相を呈するために、多結晶粒子界面の散乱により、電子移動度を大きくすることができない。さらに、ZnOは、酸素欠陥が入りやすく、キャリア電子が多数発生し、電気伝導度を小さくすることが難しい。このために、トランジスタのオン・オフ比を大きくすることも難しい。
【0005】
また、特許文献2には、アモルファス酸化物として、ZnxMyInzO(x+3y/2+3z/2)(式中、MはAl及びGaのうち少なくとも一つの元素であり、比率x/yが0.2~12の範囲であり、比率z/yが0.4~1.4の範囲にある。)で表される非晶質酸化物が記載されている。しかし、ここで得られている非晶質酸化物膜の電子キャリア濃度は、1018/cm3以上であり、単なる透明電極として用いるには充分であるもののTFTのチャネル層には適用し難いものであった。なぜなら、上記非晶質酸化物膜をチャネル層としたTFTでは、オン・オフ比が充分にとれず、ノーマリーオフ型のTFTにはふさわしくないことが判明したからである。
【0006】
【特許文献1】
特開2003-298062号公報
【特許文献2】
特開2000-044236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、電子キャリア濃度が低い、アモルファス酸化物を提供すること、更には当該アモルファス酸化物をチャネル層に用いた薄膜トランジスタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(1)ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、ゲート絶縁膜、及びチャネル層を有する薄膜トランジスタであって、前記チャネル層に、InxZn1-x酸化物(0.2≦x≦1)、InxSn1-x酸化物(0.8≦x≦1)、又はInx(Zn、Sn)1-x酸化物(0.15≦x≦1)から選択される酸化物からなり、室温での電子キャリア濃度が1018/cm3未満、室温での電子移動度が、0.1cm2/(V・秒)超であるアモルファス酸化物が用いられていることを特徴とする薄膜トランジスタである。
【0009】
また、本発明は、(2)前記アモルファス酸化物は、電子キャリア濃度が増加すると共に、電子移動度が増加することを特徴とする上記(1)の薄膜トランジスタである。なお、通常の化合物では、キャリア濃度が増加するにつれて、キャリア間の散乱などにより、電子移動度は減少する。
【0010】
前記アモルファス酸化物は、室温での電子キャリア濃度が1016/cm3以下、室温での電子移動度が、1cm2/(V・秒)以上がより好ましい。
【0011】
また、本発明は、()前記アモルファス酸化物は、縮退伝導を示すことを特徴とする上記(1)の薄膜トランジスタである。なお、ここでの縮退伝導とは、電気抵抗の温度依存性における熱活性化エネルギーが、30meV以下の状態をいう。
【0012】
また、本発明は、(4)ガラス基板、金属基板、プラスチック基板又はプラスチックフィルム上に設けられていることを特徴とする上記(1)の薄膜トランジスタである。
【0013】
また、本発明は、(5)Al23,Y23、又はHfO2の1種、又はそれらの化合物を少なくとも二種含む混晶化合物をゲート絶縁層とすることを特徴とする上記(1)の薄膜トランジスタである。
【0014】
さらに、本発明は、(6)上記(1)の薄膜トランジスタを製造する方法において、InxZn1-x酸化物(0.2≦x≦1)、InxSn1-x酸化物(0.8≦x≦1)、又はInx(Zn、Sn)1-x酸化物(0.15≦x≦1)から選択される多結晶をターゲットとして、電気抵抗を高めるための不純物イオンを意図的に薄膜に添加せずに、酸素ガスを含む雰囲気中で、パルスレーザー堆積法又は気相スパッタ法を用いてチャネル層を成膜することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法である。
【0015】
また、本発明は、(7)酸素ラジカル発生装置を用いて、成膜時の雰囲気に酸素ラジカルを加えることを特徴とする上記(6)の薄膜トランジスタの製造方法である。
【0016】
また、本発明は、(8)ガラス基板、金属基板、プラスチック基板又はプラスチックフィルム上にチャネル層及びゲート絶縁層を室温で成膜することを特徴とする上記(6)の薄膜トランジスタの製造方法である。
【0017】
なお、アモルファス酸化物が、In、Ga、Znを含む酸化物であり、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:m(m<6)である薄膜の成膜法及び該薄膜をチャネル層とした薄膜トランジスタについて参考例として以下に記載する
【0018】
また、アモルファス酸化物が、In,Ga,ZnおよびMgを含む酸化物であり、原子数比がIn:Ga:Zn1-xMgx=1:1:m(m<6)、0<x≦1である薄膜の成膜法及び該薄膜をチャネル層とした薄膜トランジスタについて参考例として以下に記載する
【0019】
また、アモルファス酸化物が、InxGa1-x酸化物(0≦x≦1)である薄膜の成膜法及び該薄膜をチャネル層とした薄膜トランジスタについて参考例として以下に記載する
【0020】
上記のアモルファス酸化物薄膜は、電気抵抗を高めるための不純物イオンを意図的に添加せず、酸素ガスを含む雰囲気中で成膜することにより得られる。
【0021】
本発明によれば、電子キャリア濃度が低い、アモルファス酸化物をチャネル層に用いた薄膜トランジスタの提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る薄膜トランジスタ(TFT)は、そのチャネル層に電子キャリア濃度が1018/cm3未満であるアモルファス酸化物を用いることを特徴とする。
【0023】
TFTは、例えば図5に示すように、基板1上にチャネル層2を設け、当該チャネル層2上にゲート絶縁膜3、ゲート電極4、ソース電極6、ドレイン電極5を設けることにより構成される。本発明においては、このチャネル層として、電子キャリア濃度が1018/cm3未満であるアモルファス酸化物を用いる。
【0024】
本発明に適用できるTFTの構成は、図5に示したように半導体チャネル層の上にゲート
絶縁膜とゲート端子(電極)とを順に形成するスタガ型(トップゲート型)構造に限らず、例えば、ゲート端子の上にゲート絶縁膜と半導体チャネル層を順に備える逆スタガ型(ボトムゲート型)構造でもよい。前述の電子キャリア濃度は、室温で測定する場合の値である。室温とは、例えば25℃であり、具体的には0℃から40℃程度の範囲から適宜選択されるある温度である。
【0025】
なお、本発明に係るアモルファス酸化物の電子キャリア濃度は、0℃から40℃の範囲全てにおいて、1018/cm3未満を充足する必要はない。例えば、25℃において、キャリア電子密度1018/cm3未満が実現されていればよい。また、電子キャリア濃度を更に下げ、1017/cm3以下、より好ましくは1016/cm3以下にするとノーマリーオフのTFTが歩留まり良く得られる。電子キャリア濃度の測定は、ホール効果測定により求めることが出来る。
【0026】
なお、本発明において、アモルファス酸化物とは、X線回折スペクトルにおいて、ハローパターンが観測され、特定の回折線を示さない酸化物をいう。本発明のアモルファス酸化物における、電子キャリア濃度の下限値は、TFTのチャネル層として適用できれば特に限定されるものではない。下限値は、例えば、1012/cm3である。
【0027】
従って、本発明においては、後述する各実施例のようにアモルファス酸化物の材料、組成比、製造条件などを制御して、例えば、電子キャリア濃度を、1012/cm3以上1018/cm3未満とする。より好ましくは1013/cm3以上1017/cm3以下、更には1015/cm3以上1016/cm3以下の範囲にすることが好ましいものである。
【0028】
なお、電子移動度としては、室温で測定する場合に、0.1cm2/(V・秒)以上、好ましくは1cm2/(V・秒)、より好適には5cm2/(V・秒)以上となるようにすることが好ましい。なお、上記アモルファス酸化物は、電子キャリア濃度が増加するとともに、電子移動度が増加する。また、その伝導性が縮退伝導を示す傾向にある。縮退伝導とは、電気抵抗の温度依存性における熱活性化エネルギーが、30meV以下の状態をいう。
【0029】
(アモルファス酸化物の材料)
本発明係るアモルファス酸化物のInの割合は、InxZn1-x(0.2≦x≦1)、InxSn1-x(0.8≦x≦1)、又はInx(Zn、Sn)1-x(0.15≦x≦1)で示される。x=1のときは、Inの一元酸化物となる。なお、Inx(Zn、Sn)1-xにおけるZnとSnの組成比は適宜選択することができる。すなわち、Inx(Zn、Sn)1-x酸化物は、Inx(ZnySn1-y1-x酸化物と記載することができ、yの範囲は1から0である。
【0030】
上記の一元、二元、三元酸化物アモルファス膜にZnより原子番号の小さい2族元素M2(M2は、Mg,Ca)、Inより原子番号の小さい3族元素M3(M3は、B,Al,Y)及びLu,Snより原子番号の小さい4族元素M4(M4は、Si,Ge,Zr)、5族元素M5(M5は、V,Nb,Ta)又はWのうち、少なくとも1種類の複合酸化物を構成する元素を添加することにより、より電子キャリア濃度を減少させることができる。
【0031】
それぞれZn,In,Snより原子番号の小さなM2,M3,M4元素は、Zn,In,Snよりイオン性が強く、そのために酸素欠陥の発生が少なく、電子キャリア濃度を低減できる。また、Luは、イオン性が強く、M3と同様の機能を果たす。M5は、プラス5価でイオン化するために、酸素との結合が強く、酸素欠陥を生じにくい。Wは、6価イオン化するために、酸素との結合が強く、酸素欠陥を生じにくい。
【0032】
発明に適用できるアモルファス酸化物の成分であるZnO及びSnO2は、従来単独でアモルファス化が困難であった。
【0033】
このように、本発明に適用できるアモルファス酸化物としては、SnO2,In23及びZnOを頂点とする3角形で示される組成の頂点、辺、及び内部に位置する一元系、二元系、又は三元系組成の化合物である。上記SnO2,In23、又はZnOの3種類の化合物のうち、In23はアモルファス形成能が大きく気相法において成膜中の雰囲気に水分を、0.1Pa程度添加するなどの手段により成膜した状態で完全非晶質相を形成できる。
【0034】
一方、ZnO及びSnO2は、単独でアモルファス相を形成しがたい場合があるが、In23をホスト酸化物とすることにより非晶質相を形成できる。具体的には、上記3種の化合物のうち二つを含む二元系組成(上記3角形の辺に位置する組成)のうち、In-Zn-O系では、Inが約20原子%以上含まれる組成、Sn-In-O系の場合には、Inが約80原子%以上含まれる組成で、アモルファス膜を作成することができる。
【0035】
In-Zn-O系アモルファス膜を気相法で得るためには、例えば、雰囲気中に水蒸気を0.1Pa程度、又、In-Sn-O系アモルファス膜を得るためには、雰囲気中に窒素ガスを0.1Pa程度導入すればよい。上記化合物のうち3つを含む三元系組成であるSn-In-Zn-O系では、Inが約15原子%を以上の組成範囲で、気相法によりアモルファス膜を得る事ができる。なお、ここでの原子%は、酸素イオンを除いた金属イオン内のみに対する原子%を示している。すなわち、例えば、「In-Zn-O系での、Inが約20原子%以上」とは、InxZn1-x(x0.2)である。
【0036】
また、上記の各アモルファス酸化物膜の組成において、下記のようにそれぞれの元素を添加することもできる。具体的には、Znより原子番号の小さい2族元素M2(M2は、Mg,Ca)、Inより原子番号の小さい3族元素M3(M3は、B,Al,Y)又はLu,及び、Snより原子番号の小さい4族元素M4(M4は、Si,Ge,Zr)のうち、少なくとも1種類のZn、In、又はSnと複合酸化物を構成する元素を添加することができる。さらに、本発明に適用されるアモルファス酸化物膜は、上記組成に、5族元素M5(M5は、V,Nb,Ta)又はWのうち、少なくとも1種類のZn、In、又はSnと複合酸化物を構成する元素を添加することができる。
【0037】
上記M2、M3、M4、又はM5の元素を添加することにより、室温での、アモルファス膜をより安定化させることができ、さらに、アモルファス膜が得られる組成範囲を広げることができる。特に、共有結合性の強い、B,Si,Geの添加は、アモルファス相安定化に有効であるし、イオン半径の差の大きいイオンから構成される複合酸化物は、アモルファス相が安定化する。例えば、In-Zn-O系では、Inが約20原子%超の組成範囲でないと、室温で安定なアモルファス膜は得にくいが、MgをInと当量添加することにより、Inが約15原子%超の組成範囲で、安定なアモルファス膜を得ることができる。
【0038】
次に、参考例に係わる薄膜トランジスタのチャネル層に適用できるアモルファス酸化物材料の例について説明する。チャネル層に用いられる参考例のアモルファス酸化物は、In,Ga,Znを含み、且つ原子数比でIn:Ga:Zn=1:1:mを満たす酸化物である。ここで、mは6未満の数である。なお、mの値は、自然数であってもよいが、必ずしも自然数である必要はない。なお、本明細書の他の箇所におけるmも同様である。なお、原子数比はモル比と考えてもよい。
【0039】
結晶状態における組成がInGaO3(ZnO)m(mは6未満の数)で表される透明アモルファス酸化物薄膜は、mの値が6未満の場合は、800℃以上の高温まで、アモルファス状態が安定に保たれるが、mの値が大きくなるにつれ、すなわち、InGaO3に対するZnOの比が増大して、ZnO組成に近づくにつれ、結晶化しやすくなる。したがって、アモルファスTFTのチャネル層としては、mの値が6未満であることが好ましい。スパッタリング法やパルスレーザー蒸着法により成膜を行う際のターゲット材料(例えば多結晶体)の組成比を、上記m<6を満たすようにすれば、所望のアモルファス酸化物が得られる。
【0040】
また、上記参考例のアモルファス酸化物としては、上記InGaZnの構成比において、ZnをZn1-xMgxに置換することもできる。Mgの置換量は、0<x≦1の範囲で可能である。なお、Mgに置換すると、酸化物膜の電子移動度は、Mg無添加膜に比べて低下するが、その程度は少なく、一方でさらに、電子キャリア濃度を置換しない場合に比べて下げることができるので、TFTのチャネル層としてはより好適である。Mgの置換量は、好ましくは、20%超、85%未満(xにして、0.2<x<0.85)、より好ましくは、0.5<x<0.85である。
【0041】
更にまた、前記参考例のアモルファス酸化物として、ZnとSnを含まないIn酸化物の場合は、Inの一部をGaに置換することもできる。即ち、InxGa1-x酸化物(0≦x≦1)の場合である。
【0042】
(アモルファス酸化物の製造方法)
本発明に用いるアモルファス酸化物は、以下の各実施例に示す条件下において気相成膜法を利用して形成することができる。例えば、In-Sn-O系アモルファス酸化物を得るには、In23-SnO2組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして、スッパタ法(SP法)、パルスレーザー蒸着法(PLD法)及び電子ビーム蒸着法などの気相法により成膜を行う。尚、量産性の観点からは、スパッタ法が最も適している。
【0043】
お、アモルファス酸化物膜の成膜時の雰囲気に酸素ラジカルを加えてもよく、この酸素ラジカルの添加は、酸素ラジカル発生装置を用いればよい。なお、成膜後に電子キャリア濃度を増加させる必要がある場合には、当該膜を還元雰囲気中で、熱処理をすることにより電子キャリア濃度を増加させることができる。こうして得られた電子キャリア濃度の異なるアモルファス酸化物膜について、電子移動度の電子キャリア濃度依存性を調べると、電子移動度は電子キャリア濃度が増加すると共に増加している。
【0044】
(基板)
本発明に係る薄膜トランジスタを形成する際の基板としては、ガラス基板、プラスチック基板、プラスチックフィルムなどを用いることができる。なお、後述の実施例で説明するように、本発明に係るアモルファス酸化物は、室温で成膜することができるので、PETフィルムをはじめとするフレキシブル素材上に薄膜トランジスタを設けることが出来る。また、上述のアモルファス酸化物を適宜選択し、波長400nm以上の可視光や赤外光に対して透明である材料を用いてTFTを作製することもできる。
【0045】
(ゲート絶縁膜)
本発明に係る薄膜トランジスタにおけるゲート絶縁膜としては、Al23,Y23,HfO2,又はそれらの化合物を少なくとも二つ以上含む混晶化合物をゲート絶縁膜とすることが好ましい。ゲート絶縁薄膜とチャネル層薄膜との界面に欠陥が存在すると、電子移動度の低下及びトランジスタ特性にヒステリシスが生じる。また、ゲート絶縁膜の種類により、リーク電流が大きく異なる。このために、チャネル層に適合したゲート絶縁膜を選定する必要がある。
【0046】
Al23膜を用いれば、リーク電流を低減できる。また、Y23膜を用いればヒステリシスを小さくできる。さらに、高誘電率のHfO2膜を用いれば、電界効果移動度を大きくすることができる。また、これらの化合物の混晶からなる膜を用いて、リーク電流、ヒステリシスが小さく、電界効果移動度の大きなTFTを形成できる。また、ゲート絶縁膜形成プロセス及びチャネル層形成プロセスは、室温で行うことができるので、TFT構造として、スタガ構造及び逆スタガ構造いずれをも形成することができる。
【0047】
(トランジスタ)
電子キャリア濃度が1018/cm3未満のアモルファス酸化物膜をチャネル層に用い、ソース端子、ドレイン端子及びゲート絶縁膜を介してゲート端子を配した電界効果型トランジスタを構成すると、ソース・ドレイン端子間に5V程度の電圧を印加したとき、ゲート電圧を印加しないときのソース・ドレイン端子間の電流を約10-7アンペヤにすることができる。電子キャリア濃度の理論的下限界は、価電子帯の電子が熱的に励起されるとすると仮定すると、105/cm3以下であるが、実際的な可能性としては、1012/cm3程度である。
【0048】
また、Al23,Y23,又はHfO2の1種、又はそれらの化合物を少なくとも二種以上含む混晶化合物をゲート絶縁層として用いれば、ソース・ゲート端子間及びドレイン・ゲート端子間のリーク電流を約10-7アンペヤにすることができ、ノーマリーオフ・トランジスタを実現できる。
【0049】
金属酸化物結晶の電子移動度は、金属イオンのs軌道の重なりが大きくなるほど、大きくなり、原子番号の大きなZn,In,Snの酸化物結晶は、0.1から200cm2/(V・秒)の大きな電子移動度を持つ。さらに、金属酸化物では、酸素と金属イオンとがイオン結合しているために、化学結合の方向性がなく、構造がランダムで、結合の方向が不均一なアモルファス状態でも、電子移動度は、結晶状態の電子移動度に比較して、同程度の大きさを有することが可能となる。一方で、Zn,In,Snを原子番号の小さな元素で一部置換することにより、電子移動度は小さくなる。従って、上記したアモルファス酸化物を用いることにより、電子移動度を、約0.01cm2/(V・秒)から20cm2/(V・秒)の範囲に制御できる。
【0050】
また、通常の化合物では、キャリア濃度が増加するにつれて、キャリア間の散乱などにより、電子移動度は減少するが、それに対して、本発明に適用するアモルファス酸化物では、電子キャリア濃度の増加とともに、電子移動度が増加するが、その物理機構は明確でない。
【0051】
ゲート端子に電圧を印加すると、上記アモルファス酸化物からなるチャネル層に、電子を注入できるので、ソース・ドレイン端子間に電流が流れ、両端子間がオン状態になる。本発明に適用するアモルファス酸化膜は、オン状態で電子キャリア濃度が増加すると、電子移動度が大きくなるので、トランジスタがオン状態での電流を、より大きくすることができる。すなわち、飽和電流及びオン・オフ比をより大きくすることができる。電子移動度が大きなアモルファス酸化物膜をTFTのチャネル層として用いれば、飽和電流を大きくすることができるし、また、TFTのスウィッチング速度を大きくでき、高速動作が可能となる。
【0052】
例えば、電子移動度が、0.01cm2/(V・秒)程度であれば、液晶表示素子を駆動するTFTのチャネル層として用いることができる。また、電子移動度が、0.1cm2/(V・秒)程度であるアモルファス酸化物膜を用いれば、アモルファスシリコン膜を用いたTFTと同等以上の性能を有し、動画像用表示素子を駆動するTFTを作成することができる。
【0053】
さらに、電流で駆動する有機発光ダイオードを動作させる場合など大きな電流を必要とするTFTを実現するためには、電子移動度は、1cm2/(V・秒)超であることが望ましい。なお、本発明に適用する酸化物の特徴である縮退伝導を示すアモルファス酸化物をチャネル層に用いた場合、電子キャリア濃度が多い状態での電流、すなわちトランジスタの飽和電流の温度依存性が小さくなり、温度特性に優れたTFTを実現できる。
【0054】
以下にアモルファス酸化物の成膜方法を参考例と実施例に基づいて詳細に説明する。
参考例1:PLD法によるアモルファスIn-Ga-Zn-O薄膜の作製)
図7に示すようなPLD成膜装置を用いて、成膜を行った。同図において、701はRP(ロータリーポンプ)、702はTMP(ターボ分子ポンプ)、703は準備室、704はRHEED用電子銃、705は基板を回転、上下移動するための基板保持手段、706はレーザー入射窓、707は基板、708はターゲット、709はラジカル源、710はガス導入口、711はターゲットを回転、上下移動するためのターゲット保持手段、712はバイパスライン、713はメインライン、714はTMP(ターボ分子ポンプ)、715はRP(ロータリーポンプ)、716はチタンゲッターポンプ、717はシャッターである。また、図中718はIG(イオン真空計)、719はPG(ピラニ真空計)、720はBG(バラトロン真空計)、721は成長室(チャンバー)である。
【0055】
KrFエキシマレーザーを用いたパルスレーザー蒸着法により、SiO2ガラス基板(コーニング社製1737)上にIn-Ga-Zn-O系アモルファス酸化物半導体薄膜を堆積させた。堆積前の処理として、基板の超音波による脱脂洗浄を、アセトン,エタノール, 超純水を用いて、各5分間行った後、空気中100℃で乾燥させた。
【0056】
前記多結晶ターゲットには、InGaO3(ZnO)4焼結体ターゲット(サイズ20mmΦ5mmt)を用いた。これは、出発原料として、In2O3:Ga2O3:ZnO(各4N試薬)を湿式混合した後(溶媒:エタノール)、仮焼(1000℃: 2h)、乾式粉砕、本焼結(1550 ℃: 2h))を経て得られるものである。こうして作製したターゲットの電気伝導度は、90(S/cm)であった。
【0057】
成長室の到達真空を2×10-6(Pa)にして、成長中の酸素分圧を6.5 (Pa)に制御して成膜を行った。チャンバー721内酸素分圧は6.5Pa、基板温度は25℃である。なお、ターゲット708と被成膜基板707間の距離は、30(mm)であり、入射窓716から入射されるKrFエキシマレーザーのパワーは、1.5-3(mJ/cm2/pulse)の範囲である。また、パルス幅は、20(nsec)、繰り返し周波数は10(Hz)、そして照射スポット径は、1×1(mm角)とした。こうして、成膜レート7(nm/min)で成膜を行った。
【0058】
得られた薄膜について、薄膜のすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは認めらなかったことから、作製したIn-Ga-Zn-O系薄膜はアモルファスであるといえる。さらに、X線反射率測定を行い、パターンの解析を行った結果、薄膜の平均二乗粗さ(Rrms)は約0.5 nmであり、膜厚は約120 nmであることが分かった。蛍光X線(XRF)分析の結果、薄膜の金属組成比はIn:Ga:Zn=0.98:1.02:4であった。電気伝導度は、約10-2 S/cm未満であった。電子キャリア濃度は約1016/cm3以下、電子移動度は約5cm2/(V・秒)と推定される。
【0059】
光吸収スペクトルの解析から、作製したアモルファス薄膜の禁制帯エネルギー幅は、約3 eVと求まった。以上のことから、作製したIn-Ga-Zn-O系薄膜は、結晶のInGaO3(ZnO)4の組成に近いアモルファス相を呈しており、酸素欠損が少なく、電気伝導度が小さな透明な平坦薄膜であることが分かった。
【0060】
具体的に図1を用いて説明する。同図は、In-Ga-Zn-Oから構成され、結晶状態を仮定した時の組成がInGaO3(ZnO)m(mは6未満の数)で表される透明アモルファス酸化物薄膜を本参考例と同じ条件下で作成する場合に、酸素分圧を変化させた場合に、成膜された酸化物の電子キャリア濃度の変化を示したものである。
【0061】
参考例と同じ条件下で酸素分圧を4.5Pa超の高い雰囲気中で、成膜することにより、図1に示すように、電子キャリア濃度を1018/cm3未満に低下させることができた。この場合、基板の温度は意図的に加温しない状態で、ほぼ室温に維持されている。フレキシブルなプラスチックフィルムを基板として使用するには、基板温度は100℃未満に保つことが好ましい。
【0062】
酸素分圧をさらに大きくすると、電子キャリア濃度をさらに低下させることができる。例えば、図1に示す様に、基板温度25℃、酸素分圧5Paで成膜したInGaO3(ZnO)4薄膜では、さらに、電子キャリア数を1016/cm3に低下させることができた。
【0063】
得られた薄膜は、図2に示す様に、電子移動度が1cm2/(V・秒)超であった。しかし、本参考例のパルスレーザー蒸着法では、酸素分圧を6.5Pa以上にすると、堆積した膜の表面が凸凹となり、TFTのチャネル層として用いることが困難となる。従って、酸素分圧4.5Pa超、望ましくは5Pa超、6.5Pa未満の雰囲気で、パルスレーザー蒸着法で作製したIn-Ga-Zn-Oから構成され、結晶状態における組成InGaO3(ZnO)m(mは6未満の数)で表される透明アモルファス酸化物薄膜を用いれば、ノーマリーオフのトランジスタを構成することができる。
【0064】
また、該薄膜の電子移動度は、1cm2/V・秒超が得られ、オン・オフ比を103超に大きくすることができた。以上、説明したように、本参考例に示した条件下でPLD法によりInGaZn酸化物の成膜を行う場合は、酸素分圧を4.5Pa以上6.5Pa未満になるように制御することが望ましい。なお、電子キャリア濃度を1018/cm3未満を実現するためには、酸素分圧の条件、成膜装置の構成や、成膜する材料や組成などに依存する。
【0065】
参考例2:PLD法によるアモルファスInGaO3(ZnO)及びInGaO3(ZnO)4酸化物膜の成膜)
KrFエキシマレーザーを用いたPLD法により、InGaO3(ZnO)及びInGaO3(ZnO)4組成を有する多結晶焼結体をそれぞれターゲットとして、ガラス基板(コーニング社製1737)上にIn-Zn-Ga-O系アモルファス酸化物膜を堆積させた。PLD成膜装置は、参考例1で示したものを用い、成膜条件は上記と同様とした。基板温度は25℃で成膜を行った。
【0066】
得られた膜に関し、膜面にすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは検出されず、2種類のターゲットから作製したIn-Zn-Ga-O系膜は、いずれもアモルファス膜であることが示された。
【0067】
さらに、ガラス基板上のIn-Zn-Ga-O系アモルファス酸化物膜のX線反射率測定を行い、パターンの解析を行った結果、薄膜の平均二乗粗さ(Rrms)は約0.5nmであり、膜厚は約120nmであることが分かった。蛍光X線(XRF)分析の結果、InGaO3(ZnO)組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして得られた膜の金属原子組成比はIn:Ga:Zn=1.1:1.1:0.9であった。また、InGaO3(ZnO)4組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして得られた膜の金属原子組成比は、In:Ga:Zn=0.98:1.02:4であった。
【0068】
成膜時の雰囲気の酸素分圧を変化させ、InGaO3(ZnO)4組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして得られたアモルファス酸化物膜の電子キャリア濃度を測定した。その結果を図1に示す。酸素分圧が4.5Pa超の雰囲気中で成膜することにより、電子キャリア濃度を1018/cm3未満に低下させることができた。この場合、基板の温度は意図的に加温しない状態でほぼ室温に維持されている。また、酸素分圧が6.5Pa未満の時は、得られたアモルファス酸化物膜の表面は平坦であった。
【0069】
酸素分圧が5Paの時、InGaO3(ZnO)4組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして得られたアモルファス酸化膜の電子キャリア濃度は1016/cm3、電気伝導度は、10-2S/cmであった。また、電子移動度は、約5cm2/V・秒と推測された。光吸収スペクトルの解析から、作製したアモルファス酸化物膜の禁制帯エネルギー幅は、約3eVと求まった。酸素分圧を5Paからさらに大きくすると、電子キャリア濃度をさらに低下させることができた。
【0070】
図1に示す様に、基板温度25℃、酸素分圧6Paで成膜したIn-Zn-Ga-O系アモルファス酸化物膜では、電子キャリア濃度を8×1015/cm3(電気伝導度:約8×10-3S/cm)に低下させることができた。得られた膜は、電子移動度が1cm2/(V・秒)超と推測された。しかし、PLD法では、酸素分圧を6.5Pa以上にすると、堆積した膜の表面が凸凹となり、TFTのチャネル層として用いることが困難となった。
【0071】
InGaO3(ZnO)4組成を有する多結晶焼結体をターゲットとし、異なる酸素分圧で成膜したIn-Zn-Ga-O系アモルファス酸化物膜に関して、電子キャリア濃度と電子移動度の関係を調べた。その結果を図2に示す。電子キャリア濃度が、1016/cm3から1020/cm3に増加すると、電子移動度は、約3cm2/(V・秒)から約11cm2/(V・秒)に増加ことが示された。また、InGaO3(ZnO)組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして得られたアモルファス酸化膜に関しても、同様の傾向が見られた。
【0072】
ガラス基板の代わりに厚さ200μmのポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルムを用いた場合にも、得られたIn-Zn-Ga-O系アモルファス酸化物膜は、同様の特性を示した。
【0073】
参考例3:SP法によるIn-Zn-Ga-O系アモルファス酸化物膜の成膜)
雰囲気ガスとしてアルゴンガスを用いた高周波SP法により、成膜する場合について説明する。SP法は、図8に示す装置を用いて行った。同図において、807は被成膜基板、808はターゲット、805は冷却機構付き基板保持手段、814は、ターボ分子ポンプ、815はロータリーポンプ、817はシャッター、818はイオン真空計、819はピラニ真空計、821は成長室(チャンバー)、830はゲートバルブである。被成膜基板807としては、SiOガラス基板(コーニング社製1737)を用意した。成膜前処理として、この基板の超音波脱脂洗浄を、アセトン、エタノール、超純水により各5分ずつ行った後、空気中100℃で乾燥させた。
【0074】
ターゲット材料としては、InGaO3(ZnO)4組成を有する多結晶焼結体(サイズ20mmΦ5mmt)を用いた。この焼結体は、出発原料として、In23:Ga23:ZnO(各4N試薬)を湿式混合(溶媒:エタノール)し、仮焼(1000℃:2h)、乾式粉砕、本焼結(1550℃:2h)を経て作製した。このターゲット808の電気伝導度は90(S/cm)であり、半絶縁体状態であった。
【0075】
成長室821内の到達真空は、1×10-4(Pa)であり、成長中の酸素ガスとアルゴンガスの全圧は、4~0.1x10-1(Pa)の範囲での一定の値とし、アルゴンガスと酸素との分圧比を変えて、酸素分圧を、10-3~2x10-1(Pa)の範囲で変化させた。また、基板温度は、室温とし、ターゲット808と被成膜基板807間の距離は、30(mm)であった。投入電力は、RF180Wであり、成膜レートは、10(nm/min)で行った。
【0076】
得られた膜に関し、膜面にすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角=0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは検出されず、作製したIn-Zn-Ga-O系膜はアモルファス膜であることが示された。さらに、X線反射率測定を行い、パターンの解析を行った結果、薄膜の平均二乗粗さ(Rrms)は約0.5nmであり、膜厚は約120nmであることが分かった。蛍光X線(XRF)分析の結果、薄膜の金属組成比はIn: Ga : Zn = 0.98 :1.02 : 4であった。
【0077】
成膜時の雰囲気の酸素分圧を変化させて得られたアモルファス酸化物膜の電気伝導度を測定した。その結果を図3に示す。図3に示すように、酸素分圧を3×10-2Pa超の高い雰囲気中で、成膜することにより、電気伝導度を10-2S/cm未満に低下させることができた。
【0078】
酸素分圧をさらに大きくすることにより、電子キャリア数を低下させることができた。
例えば、図3に示す様に、基板温度25℃、酸素分圧10-1Paで成膜したInGaO3(ZnO)4薄膜では、さらに、電気伝導度を約10-10S/cmに低下させることができた。また、酸素分圧10-1Pa超で成膜したInGaO3(ZnO)4薄膜は、電気抵抗が高すぎて電気伝導度は測定できなかった。この場合、電子移動度は測定できなかったが、電子キャリア濃度が大きな膜での値から外挿して、電子移動度は、約1cm2/V・秒と推定された。
【0079】
すなわち、酸素分圧3×10-2Pa超、望ましくは5×10-1Pa超のアルゴンガス雰囲気で、スパッタ蒸着法で作製したIn-Ga-Zn-Oから構成され、結晶状態における組成InGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される透明アモルファス酸化物薄膜を用い、ノーマリーオフで、かつオン・オフ比を103超のトランジスタを構成することができた。
【0080】
参考例で示した装置、材料を用いる場合は、スパッタによる成膜の際の酸素分圧としては、例えば、3×10-2Pa以上、5×10-1Pa以下の範囲である。なお、パルスレーザー蒸着法およびスパッタ法で作成された薄膜では、図2に示す様に、伝導電子数の増加と共に、電子移動度が増加する。
【0081】
上記のとおり、酸素分圧を制御することにより、酸素欠陥を低減でき、その結果、電子キャリア濃度を減少できる。また、アモルファス状態では、多結晶状態とは異なり、本質的に粒子界面が存在しないために、高電子移動度のアモルファス薄膜を得ることができる。なお、ガラス基板の代わりに厚さ200μmのポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルムを用いた場合にも、得られたInGaO3(ZnO)4アモルファス酸化物膜は、同様の特性を示した。
【0082】
参考例4:PLD法によるIn-Zn-Ga-Mg-O系アモルファス酸化物膜の成膜)
次に、PLD法により、ガラス基板上にInGaO3 (Zn1-xMgxO)4(0<x<1)膜を成膜する場合について説明する。成膜装置としては、図7に記載の成膜装置を用いて行った。被成膜基板としては、SiO2ガラス基板(コーニング社製1737)を用意した。その基板に前処理として、超音波脱脂洗浄を、アセトン、エタノール、超純水により各5分間ずつ行った後、空気中100℃で.乾燥させた。
【0083】
ターゲットとしては、InGa(Zn1-xMgxO)4(x=1-0)焼結体(サイズ20mmΦ5mmt)を用いた。
ターゲットは、出発原料In2O3:Ga2O3:ZnO:MgO(各4N試薬)を、湿式混合(溶媒:エタノール)、仮焼(1000℃:2h)、乾式粉砕、本焼結(1550℃:2h)を経て作製した。
【0084】
成長室到達真空は、2×10-6(Pa)であり、成長中の酸素分圧は、0.8(Pa)とした。基板温度は、室温(25℃)で行い、ターゲットと被成膜基板間の距離は、30(mm)であった。なお、KrFエキシマレーザーのパワーは、1.5(mJ/cm2/pulse)、パルス幅は、20(nsec)、繰り返し周波数は、10(Hz)、照射スポット径は、1×1(mm角)とした。成膜レートは、7(nm/min)であった。
【0085】
このようにして得られた膜に関し、膜面にすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角 0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは検出されず、作製したIn-Zn-Ga-Mg-O系膜はアモルファス膜であることが示された。得られた膜の表面は平坦であった。
【0086】
異なるx値のターゲットを用いて、酸素分圧0.8Paの雰囲気中で成膜したIn-Zn-Ga-Mg-O系アモルファス酸化物膜の電気伝導度、電子キャリア濃度及び電子移動度のx値依存性を調べた。尚、ターゲットとして、多結晶InGaO3(Zn1-xMgxO)m(mは6未満の自然数、0<x≦1を用いれば、1Pa未満の酸素分圧下でも、高抵抗アモルファスInGaO(Zn1-xMgxO)m膜を得ることができた。
【0087】
その結果を、図4に示す。x値が0.4超のとき、酸素分圧0.8Paの雰囲気中で、PLD法により成膜したアモルファス酸化物膜では、電子キャリア濃度を1018/cm3未満にできることが示された。また、x値が0.4超のアモルファス酸化物膜では、電子移動度は、1cm2/V・秒超であった。図4に示すように、Znを80原子%のMgで置換したターゲットを使用した場合、酸素分圧0.8Paの雰囲気で、パルスレーザー堆積法で得られた膜の電子キャリア濃度を1016/cm3未満とすることができる。
【0088】
こうした膜の電子移動度は、Mg無添加膜に比べて低下するが、その程度は少なく、室温での電子移動度は約5cm2/(V・秒)で、アモルファスシリコンに比べて、1桁程度大きな値を示す。同じ条件で成膜した場合、Mg含有量の増加に対して、電気伝導度と電子移動度は、共に低下するので、Mgの含有量は、好ましくは、20原子%超、85原子%未満(xにして、0.2<x<0.85)、より好適には0.5<x<0.85である。
【0089】
なお、ガラス基板の代わりに厚さ200μmのポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルムを用いた場合にも、得られたInGaO3 (Zn1-xMgxO)4(0<x≦1)アモルファス酸化物膜は、同様の特性を示した。実施例1
(PLD法によるIn23アモルファス酸化物膜の成膜)
次に、In酸化物膜を成膜する場合について説明する。成膜装置は図7に記載の装置を用いた。被成膜基板として、SiO2ガラス基板(コーニング社製1737)を用意した。この基板の前処理として、超音波脱脂洗浄を、アセトン、エタノール、超純水で各5分間ずつ行った後、空気中100℃で乾燥させた。
【0091】
ターゲットとしては、In2O3焼結体(サイズ20mmΦ5mmt)を用いた。これは、出発原料In2O3(4N試薬)を仮焼(1000℃:2h)、乾式粉砕、本焼結(1550℃:2h)を経て準備した。
【0092】
成長室到達真空は、2×10-6(Pa)、成長中の酸素分圧は、5(Pa)とし、水蒸気分圧0.1(Pa)とし、さらに酸素ラジカル発生装置に200Wを印加して、酸素ラジカルを発生させた。基板温度は室温とした。ターゲットと被成膜基板間の距離は、40(mm)、KrFエキシマレーザーのパワーは0.5(mJ/cm2/pulse)、パルス幅は、20(nsec)、繰り返し周波数は、10(Hz)、照射スポット径は1×1(mm角)であった。成膜レートは、3(nm/min)であった。
【0093】
得られた膜に関し、膜面にすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは検出されず、作製したIn-O系膜はアモルファス膜であることが示された。膜厚は、80nmであった。得られたIn-O系アモルファス酸化物膜の電子キャリア濃度は5×1017/cm3で、電子移動度は、約7cm2/V・秒であった。
【0094】
実施例2
(PLD法によるIn-Sn-O系アモルファス酸化物膜の成膜)
PLD法により、厚さ200μmのIn-Sn-O系酸化物膜を成膜する場合について説明する。被成膜基板として、SiO2ガラス基板(コーニング社製1737)を用意した。基板前処理として、超音波脱脂洗浄をアセトン、エタノール、超純水を用いて各5分間ずつ行った。その後、空気中100℃で乾燥させた。
【0095】
ターゲットは、In23-SnO2焼結体(サイズ20mmΦ5mmt)を準備した。これは、出発原料として、In23-SnO2(4N試薬)を湿式混合(溶媒:エタノール)、仮焼(1000℃:2h)、乾式粉砕、本焼結(1550℃:2h)を経て得られる。ターゲットの組成は、(In0.9Sn0.123.1多結晶体であった。
【0096】
成長室到達真空は、2×10-6(Pa)、成長中の酸素分圧は、5(Pa)、窒素分圧は、0.1(Pa)とし、さらに、酸素ラジカル発生装置に200Wを印加して、酸素ラジカルを発生させた。基板温度は室温で成膜した。ターゲットと被成膜基板間の距離は、30(mm)とし、KrFエキシマレーザーのパワーは、1.5(mJ/cm2/pulse)、パルス幅は、20(nsec)、繰り返し周波数は、10(Hz)、照射スポット径は、1×1(mm角)であった。
【0097】
成膜レートは、6(nm/min)であった。得られた膜に関し、膜面にすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは検出されず、作製したIn-Sn-O系膜はアモルファス膜であることが示された。得られたIn-Sn-Oアモルファス酸化物膜の電子キャリア濃度は、8×1017/cm3で、電子移動度は、約5cm2/(V・秒)であった。膜厚は、100nmであった。
【0098】
参考例5:PLD法によるIn-Ga-O系アモルファス酸化物膜の成膜)
次に、InGa酸化物を成膜する場合について説明する。被成膜基板として、SiO2ガラス基板(コーニング社製1737)を用意した。基板の前処理として、超音波脱脂洗浄をアセトン、エタノール、超純水を用いて、各5分間行った後、空気中100℃で乾燥させた。
【0099】
ターゲットとして、(In231-x-(Ga23x(X=0-1)焼結体(サイズ20mmΦ5mmt)を用意した。なお、例えばx=0.1の場合は、ターゲットは、(In0.9Ga0.123多結晶焼結体ということになる。これは、出発原料:In23-Ga23(4N試薬)を、湿式混合(溶媒:エタノール)、仮焼(1000℃:2h)、乾式粉砕、本焼結(1550℃:2h)を経て得られる。
【0100】
成長室到達真空は、2×10-6(Pa)であり、成長中の酸素分圧は、1(Pa)とした。基板温度は、室温で行い、ターゲットと被成膜基板間の距離は、30(mm)、KrFエキシマレーザーのパワーは、1.5(mJ/cm2/pulse)、パルス幅は、20(nsec)、繰り返し周波数は、10(Hz)、照射スポット径は、1×1(mm角)であった。成膜レートは、6(nm/min)であった。
【0101】
得られた膜に関し、膜面にすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは検出されず、作製したIn-Ga-O系膜はアモルファス膜であることが示された。膜厚は、120nmであった。得られたIn-Ga-Oアモルファス酸化物膜の電子キャリア濃度は、8×1016/cm3で、電子移動度は、約1cm2/V・秒であった。
【0102】
以下にアモルファス酸化物膜を用いたTFT素子の作製方法を参考例と実施例に基づいて詳細に説明する。
参考例6:In-Zn-Ga-O系アモルファス酸化物膜を用いたTFT素子の作製(ガラス基板))
図5に示すトップゲート型TFT素子を作製した。まず、ガラス基板(1)上に、InGaO3(ZnO)4組成を有する多結晶焼結体をターゲットとし、酸素分圧5Paの条件で、参考例1のIn-Ga-Zn-O系アモルファス酸化物膜の作製法により、チャンネル層(2)として用いる厚さ120nmのIn-Ga-Zn-O系アモルファス膜を形成した。
【0103】
さらにその上に、チャンバー内の酸素分圧を1Pa未満にして、PLD法により電気伝導度の大きなIn-Ga-Zn-O系アモルファス膜及び金膜をそれぞれ30nm積層し、フォトリゾグラフィー法とリフトオフ法により、ドレイン端子(5)及びソース端子(6)を形成した。
【0104】
最後にゲート絶縁膜(3)として用いるY23膜を電子ビーム蒸着法により成膜し(厚み:90nm、比誘電率:約15、リーク電流密度:0.5MV/cm印加時に10-3A/cm2)、その上に金を成膜し、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ゲート端子(4)を形成した。チャネル長は、50μmで、チャネル幅は、200μmであった。
【0105】
(TFT素子の特性評価)
図6に、室温下で測定したTFT素子の電流-電圧特性を示す。ドレイン電圧VDSの増加に伴い、ドレイン電流IDSが増加したことからチャネルがn型伝導であることが分かる。これは、アモルファスIn-Ga-Zn-O系アモルファス酸化物膜がn型伝導体であるという事実と矛盾しない。IDSはVDS=6V程度で飽和(ピンチオフ)する典型的な半導体トランジスタの挙動を示した。利得特性を調べたところ、VDS=4V印加時におけるゲート電圧VGSの閾値は約-0.5Vであった。また、VGS=6V印加時には、VDS=10V時には、IDS=1.0×10-5Aの電流が流れた。これはゲートバイアスにより絶縁体のIn-Ga-Zn-O系アモルファス酸化物膜内にキャリアを誘起できたことに対応する。トランジスタのオン・オフ比は、103超であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約7cm2(Vs)-1の電界効果移動度が得られた。
【0106】
作製した素子に可視光を照射して同様の測定を行なったが、トランジスタ特性の変化は認められなかった。なお、アモルファス酸化物の電子キャリア濃度を1018/cm3未満にすることでTFTのチャネル層として適用できるが、この電子キャリア濃度としては、1017/cm3以下がより好ましく、1016/cm3以下にすると更に好ましかった。本実施例によれば、電子キャリア濃度が小さく、したがって、電気抵抗が高く、かつ電子移動度が大きいチャネル層を有する薄膜トランジスタを実現できる。なお、上記したアモルファス酸化物は、電子キャリア濃度の増加と共に、電子移動度が増加し、さらに縮退伝導を示すという優れた特性を備えていた。本実施例では、ガラス基板上に薄膜トランジスタを作製したが、成膜自体が室温で行えるので、プラスチック板やフィルムなどの基板が使用可能である。また、本実施例で用いたアモルファス酸化物は、可視光の光吸収が殆どなく、透明なフレキシブルTFTを実現できる。
【0107】
参考例7:In-Zn-Ga-O系アモルファス酸化物膜を用いたTFT素子の作製)図5に示すトップゲート型TFT素子を作製した。具体的には、ポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルム(1)上に、参考例2に示した成膜法により、InGaO3(ZnO)組成を有する多結晶焼結体をターゲットとし、酸素分圧5Paの雰囲気で、チャンネル層(2)として用いる厚さ120nmのIn-Zn-Ga-O系アモルファス酸化物膜を形成した。
【0108】
さらにその上に、チャンバー内酸素分圧を1Pa未満にして、PLD法により電気伝導度の大きなIn-Zr-Ga-O糸アモルファス酸化物膜及び金膜をそれぞれ30nm積層し、フォトリゾグラフィー法とリフトオフ法により、ドレイン端子(5)及びソース端子(6)を形成した。
【0109】
最後にゲート絶縁膜(3)を電子ビーム蒸着法により成膜して、その上に金を成膜し、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ゲート端子(4)を形成した。チャネル長は、50μmで、チャネル幅は、200μmであった。ゲート絶縁膜として、Y23(厚さ:140nm),Al23(厚さ:130nm)及びHfO2(厚さ:140nm)を用いた3種類の上記の構造を有するTFTを作成した。
【0110】
(TFT素子の特性評価)
PETフィルム上に形成したTFTの室温下で測定した電流-電圧特性は、図6と同様であった。すなわち、ドレイン電圧VDSの増加に伴い、ドレイン電流IDSが増加したことから、チャネルがn型伝導であることが分かる。これは、アモルファスIn-Ga-Zn-O系アモルファス酸化物膜がn型伝導体であるという事実と矛盾しない。IDSはVDS=6V程度で飽和(ピンチオフ)する典型的なトランジスタの挙動を示した。また、VGS=6V印加時には、VDS=10V時には、IDS=1.0×10-5Aの電流が流れた。これはゲートバイアスにより絶縁体のIn-Ga-Zn-O系アモルファス酸化物膜内に電子キャリアを誘起できたことに対応する。トランジスタのオン・オフ比は、103超であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約7cm2(Vs)-1の電界効果移動度が得られた。
【0111】
PETフィルム上に作成した素子を、曲率半径30mmで屈曲させ、同様のトランジスタ特性の測定を行ったが、トランジスタ特性に大幅な変化は認められなかった。また、可視光を照射して同様の測定を行なったが、トランジスタ特性の変化は認められなかった。
【0112】
ゲート絶縁膜としてAl23膜を用いたTFTでも、図6に示したものと類似のトランジスタ特性を示したが、VGS=6V印加時には、VDS=0のときには、IDS=10-8A,VDS=10V時には、IDS=5.0×10-6Aの電流が流れた。トランジスタのオン・オフ比は、102超であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約2cm2(Vs)-1の電界効果移動度が得られた。
【0113】
ゲート絶縁膜としてHfO2膜を用いたTFTでも、図6に示したものと類似のトランジスタ特性を示したが、VGS=6V印加時には、VDS=0のときには、IDS=10-8A,VDS=10V時には、IDS=1.0×10-6Aの電流が流れた。トランジスタのオン・オフ比は、102超であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約10cm2(Vs)-1の電界効果移動度が得られた。
【0114】
実施例3
(PLD法によるIn23アモルファス酸化物膜を用いたTFT素子の作成)
図5に示すトップゲート型TFT素子を作製した。まず、ポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルム(1)上に、実施例1に示した成膜法により、チャンネル層(2)として用いる厚さ80nmのIn23アモルファス酸化物膜を形成した。
【0115】
さらにその上に、チャンバー内酸素分圧を1Pa未満にして、さらに酸素ラジカル発生装置への印加電圧をゼロにして、PLD法により、電気伝導度の大きなIn23アモルファス酸化物膜及び金膜をそれぞれ30nm積層し、フォトリゾグラフィー法とリフトオフ法により、ドレイン端子(5)及びソース端子(6)を形成した。
【0116】
最後にゲート絶縁膜(3)として用いるY23膜を電子ビーム蒸着法により成膜して、その上に金を成膜して、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ゲート端子(4)を形成した。
【0117】
(TFT素子の特性評価)
PETフィルム上に形成したTFTの室温下で測定した電流-電圧特性を測定した。ドレイン電圧VDSの増加に伴い、ドレイン電流IDSが増加したことからチャネルがn型半導体であることが分かる。これは、In-O系アモルファス酸化物膜がn型伝導体であるという事実と矛盾しない。IDSはVDS=5V程度で飽和(ピンチオフ)する典型的なトランジスタの挙動を示した。また、VGS=6V印加時には、VDS=0V時には、IDS=2×10-8A、VDS=10V時には、IDS=2.0×10-6Aの電流が流れた。これはゲートバイアスにより絶縁体のIn-O系アモルファス酸化物膜内に電子キャリアを誘起できたことに対応する。トランジスタのオン・オフ比は、約102であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約10cm2(Vs)-1の電界効果移動度が得られた。
【0118】
ガラス基板上に作成したTFT素子も同様の特性を示した。PETフィルム上に作成した素子を、曲率半径30mmで曲げ、同様のトランジスタ特性の測定を行ったが、トランジスタ特性に変化は認められなかった。
【0119】
実施例4
(PLD法によるIn-Sn-O系アモルファス酸化物膜を用いたTFT素子の作成)
図5に示すトップゲート型TFT素子を作製した。まず、ポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルム(1)上に、実施例2に示した成膜法により、チャンネル層(2)として用いる厚さ100nmのIn-Sn-O系アモルファス酸化物膜を形成した。
【0120】
さらにその上に、チャンバー内酸素分圧を1Pa未満にして、さらに酸素ラジカル発生装置への印加電圧をゼロにして、PLD法により、電気伝導度の大きなIn-Sn-O系アモルファス酸化物膜及び金膜をそれぞれ30nm積層し、フォトリゾグラフィー法とリフトオフ法により、ドレイン端子(5)及びソース端子(6)を形成した。
【0121】
最後にゲート絶縁膜(3)として用いるY23膜を電子ビーム蒸着法により成膜し、その上に金を成膜して、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ゲート端子(4)を形成した。
【0122】
(TFT素子の特性評価)
PETフィルム上に形成したTFTの室温下で測定した電流-電圧特性を測定した。ドレイン電圧VDSの増加に伴い、ドレイン電流IDSが増加したことからチャネルがn型半導体であることが分かる。これは、In-Sn-O系アモルファス酸化物膜がn型伝導体であるという事実と矛盾しない。IDSはVDS=6V程度で飽和(ピンチオフ)する典型的なトランジスタの挙動を示した。また、VGS=6V印加時には、VDS=0V時には、IDS=5×10-8A、VDS=10V時には、IDS=5.0×10-5Aの電流が流れた。これはゲートバイアスにより絶縁体のIn-Sn-O系アモルファス酸化物膜内に電子キャリアを誘起できたことに対応する。トランジスタのオン・オフ比は、約103であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約5cm2(Vs)-1の電界効果移動度が得られた。
【0123】
ガラス基板上に作成したTFT素子も同様の特性を示した。PETフィルム上に作成した素子を、曲率半径30mmで曲げ、同様のトランジスタ特性の測定を行ったが、トランジスタ特性に変化は認められなかった。
【0124】
参考例8:PLD法によるIn-Ga-O系アモルファス酸化物膜を用いたTFT素子の作成)
図5に示すトップゲート型TFT素子を作製した。まず、ポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルム(1)上に、参考例5に示した成膜法により、チャンネル層(2)として用いる厚さ120nmのIn-Ga-O系アモルファス酸化物膜を形成した。
【0125】
さらにその上に、チャンバー内の酸素分圧を1Pa未満にして、さらに酸素ラジカル発生装置への印加電圧をゼロにして、PLD法により、電気伝導度の大きなIn-Ga-O系アモルファス酸化物膜及び金膜をそれぞれ30nm積層し、フォトリゾグラフィー法とリフトオフ法により、ドレイン端子(5)及びソース端子(6)を形成した。
【0126】
最後にゲート絶縁膜(3)として用いるY23膜を電子ビーム蒸着法により成膜し、その上に金を成膜して、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ゲート端子(4)を形成した。
【0127】
(TFT素子の特性評価)
PETフィルム上に形成したTFTの室温下で測定した電流-電圧特性を測定した。
ドレイン電圧VDSの増加に伴い、ドレイン電流IDSが増加したことからチャネルがn型半導体であることが分かる。これは、In-Ga-O系アモルファス酸化物膜がn型伝導体であるという事実と矛盾しない。IDSはVDS=6V程度で飽和(ピンチオフ)する典型的なトランジスタの挙動を示した。また、VGS=6V印加時には、VDS=0V時には、IDS=1×10-8A、VDS=10V時には、IDS=1.0×10-6Aの電流が流れた。これはゲートバイアスにより絶縁体のIn-Ga-O系アモルファス酸化物膜内に電子キャリアを誘起できたことに対応する。トランジスタのオン・オフ比は、約102であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約0.8cm2(Vs)-1の電界効果移動度が得られた。
【0128】
ガラス基板上に作成したTFT素子も同様の特性を示した。PETフィルム上に作成した素子を、曲率半径30mmで曲げ、同様のトランジスタ特性の測定を行ったが、トランジスタ特性に大幅な変化は認められなかった。
【0129】
なお、上述の実施例で示したように、アモルファス酸化物の電子キャリア濃度を1018/cm3未満にすることでTFTのチャネル層として適用できる。この電子キャリア濃度としては、1017/cm3以下がより好ましく、1016/cm3以下にするとオン・オフ比を103超に大きくすることができるので更に好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明に係るアモルファス酸化物をチャネル層に用いた薄膜トランジスタは、例えば、LCDや有機ELディスプレイのスイッチング素子として応用することができ、フレキシブル・ディスプレイをはじめ、シースルー型のディスプレイ、ICカードやIDタグなどに幅広く応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】第1図は、パルスレーザー蒸着法で成膜したIn-Ga-Zn-O系アモルファス酸化物の電子キャリア濃度と成膜中の酸素分圧の関係を示すグラフである。
【図2】第2図は、パルスレーザー蒸着法で成膜したIn-Ga-Zn-O系アモルファス酸化物膜の電子キャリアの濃度と電子移動度の関係を示すグラフである。
【図3】第3図は、高周波スパッタ法で成膜したIn-Ga-Zn-O系アモルファス酸化物膜の電気伝導度と成膜中の酸素分圧の関係を示すグラフである。
【図4】第4図は、パルスレーザー蒸着法により成膜したInGaO3(Zn1-xMgxO)4のxの値に対する電気伝導度、電子キャリア濃度、電子移動度の変化を示すグラフである。
【図5】第5図は、トップゲート型TFT素子構造を示す模式図である。
【図6】第6図は、参考例6のトップゲート型TFT素子の電流-電圧特性を示すグラフである。
【図7】第7図は、パルスレーザー蒸着装置を示す模式図である。
【図8】第8図は、スパッタ製膜装置を示す模式図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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