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明細書 :液晶表示素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4766694号 (P4766694)
登録日 平成23年6月24日(2011.6.24)
発行日 平成23年9月7日(2011.9.7)
発明の名称または考案の名称 液晶表示素子
国際特許分類 G02F   1/137       (2006.01)
C09K  19/54        (2006.01)
G02F   1/1334      (2006.01)
FI G02F 1/137
C09K 19/54 Z
C09K 19/54 B
G02F 1/1334
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2006-511183 (P2006-511183)
出願日 平成17年3月15日(2005.3.15)
国際出願番号 PCT/JP2005/004481
国際公開番号 WO2005/090520
国際公開日 平成17年9月29日(2005.9.29)
優先権出願番号 2004079563
2004192448
優先日 平成16年3月19日(2004.3.19)
平成16年6月30日(2004.6.30)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成20年2月20日(2008.2.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】菊池 裕嗣
【氏名】梶山 千里
【氏名】長村 利彦
【氏名】久門 義明
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
審査官 【審査官】前川 慎喜
参考文献・文献 特開2003-327966(JP,A)
特開2003-167239(JP,A)
特開2002-372605(JP,A)
調査した分野 C09K 19/00 - 19/60
G02F 1/13 - 1/141
特許請求の範囲 【請求項1】
コレステリック相と等方相の間で青色相を発現し得る低分子液晶と、該低分子液晶中に形成された高分子ネットワークであって非液晶性のモノマーが架橋剤とともに重合することにより形成された高分子ネットワークとから成る複合系液晶組成物の青色相から構成された高分子安定化ブルー相液晶であって、該高分子安定化ブルー相液晶がカライルドーパントを含み、該高分子安定化ブルー相液晶に対するカライルドーパントの量が、該高分子安定化ブルー相液晶の回折波長が可視領域(380~750nm)外であるように調整されたことを特徴とする高分子安定化ブルー相液晶。
【請求項2】
請求項1に記載の高分子安定化ブルー相液晶を、一対の透明基板に挟持して成る液晶表示素子であって、電界を該基板に平行に印加することを特徴とする液晶表示素子。
【請求項3】
前記電界が、一方の透明基板面に相互に組み込まれた櫛歯型の2つの電極により印加される請求項2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記電界を、一方の基板面内にTFTと共通電極を組み込み、前記TFTのオン-オフによって、入力信号に応じた電界としてTFT電極と共通電極の間に印加することを特徴とする請求項2又は3に記載の液晶表示素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、高分子安定化ブルー相液晶を同一面スイッチング(IPS)方式に用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は光情報処理分野で広く用いられている。従来の液晶表示方式には、TN、STN、IPS、VA(MVA)、OCBなどがあるが、いずれも予め制御された液晶分子の配向を電界を印加させることにより異なる配向状態に変化させ、透過する光の偏光方向や偏光状態を変化させ、この変化を偏光板などで明暗のコントラストに変換させて表示を行うのが一般である。
これら従来の液晶表示方式は、いずれも液晶分子の配向を制御するための表面配向処理を必要とする。特にVA(MVA)を除く方式はラビング処理を必要とする。ラビングは、液晶と接する基板表面に塗布された配向膜表面を布等でこする操作であり、歩留まりの低下に伴うコスト高や表示品質の低下の原因となっている。また、上記いずれの方式もネマチック液晶を用いるため応答時間が短くて10ミリ秒程度であり、テレビでの動画表示に限界があった。
【0003】
近年、液晶表示素子用の液晶としてカイラルネマチック液晶が開発されているが(特許文献1、2等)、本発明者らは、上記の課題を解決するために、従来のネマチック液晶に代えて、高分子安定化ブルー相液晶を開発した(特許文献3)。この高分子安定化ブルー相液晶は、ブルー相のもつ高速応答性を失うことなくその発現温度範囲を高分子によって著しく高めた新規材料である。高分子安定化ブルー相は、電界無印加状態で光学的に等方性であるため、配向を制御する必要がない。電界ゼロで複屈折ゼロ、電界印加で複屈折が誘起される現象を利用する新規な方式で表示を行う。その応答時間は100μ秒程度であるため従来の液晶表示素子よりも格段に応答が速い。
一方、液晶画面の大型化や高品質化に対応するために、同一面スイッチング(IPS)が開発されている(非特許文献1、特許文献4等)。この方式は、基板に平衡面に電界をかける方式であるが、この方式に適用する液晶材料が求められていた。
【0004】

【特許文献1】特開2003-295225
【特許文献2】特開2001-316346
【特許文献3】特開2003-327966
【特許文献4】特開平9-269497
【非特許文献1】Appl. Phys. Lett. 67(26), 395-3897 (1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、同一面スイッチング(IPS)方式に対応した液晶表示素子であって、表面配向処理を不要とし、従来の液晶表示素子において動画表示で不十分だった応答速度を著しく向上させることが可能な液晶表示素子を提供する。また、高分子安定化ブルー相液晶(BP)をLCD素子として応用する際、BPの構造に起因した可視光波長領域での選択反射は、黒表示時の光漏れの原因となる。本発明は、黒表示時に光漏れのない(暗視野を与える)液晶表示素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、高分子安定化ブルー相液晶(特許文献2)を用いた液晶表示素子が、セル基板に対して面内方向に電界を印加することによって大きな複屈折変化を示し、表示素子として大きな可能性があることを見出し、更に、液晶に添加するカライルドーパントの種類と量を最適化することにより黒表示時に光漏れのない(暗視野を与える)液晶表示素子とすることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明の液晶表示素子は、同一面スイッチング(IPS)方式に対応液晶画面の大型化や高品質化に適する。また、高分子安定化ブルー相液晶を用いるため、配向制御のための表面配向処理が不要であり、従来の表示素子で不可欠だった基板表面への配向膜の塗布-乾燥-熱キュア-ラビングなどの配向処理-洗浄-乾燥といったプロセスを全て省略でき、このプロセスが原因となっていた、ほこりや微粒子などの異物の混入、静電気の発生、傷の発生などによる歩留まりの低下や表示機能の低下が回避できる。また、従来の液晶表示素子ではネマチック液晶の配向状態の変化を基本原理とするため本質的に応答時間に限界があり、競合技術であるプラズマパネルやELなどに比べ動画表示機能に劣っていたが、高分子安定化ブルー相では100μ秒程度の応答が可能であるためこの問題も解決できる。
また、液晶に添加するカライルドーパントの種類と量を最適化することにより、液晶の回折波長を可視光領域(380~750 nm)外に制御することが可能になり、その結果、このような高分子安定化ブルー相液晶を用いた液晶表示素子は、黒表示時に光漏れのない(暗視野を与える)ことが可能になった。
【0008】
即ち、本発明は、一対の透明基板に挟持された高分子安定化ブルー相液晶から成る液晶表示素子であって、該高分子安定化ブルー相液晶がコレステリック相と等方相の間で青色相を発現し得る低分子液晶と該低分子液晶中に形成された高分子ネットワークとから成り、電界を該基板に平行に印加することを特徴とする液晶表示素子である。この電界は一方の基板面に相互に組み込まれた櫛歯型の2つの電極により印加されることが好ましい。実際には、前記2つの電極の一方を薄膜トランジスタ(TFT)のソース電極とし、他方を共通電極として、TFT動作によって前記電界をON-OFFすることが実用的な方法となる。即ち、この電界を、一方の基板面内にTFTと共通電極を組み込み、前記TFTのオン-オフによって、入力信号に応じた電界としてTFT電極と共通電極の間に印加することが好ましい。
更に、この液晶表示素子において、前記高分子安定化ブルー相液晶がカライルドーパントを含み、該高分子安定化ブルー相液晶に対するカライルドーパントの量が、該高分子安定化ブルー相液晶の回折波長が可視領域(380~750nm)外であるように調整されることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、コレステリック相と等方相の間で青色相を発現し得る低分子液晶と、該低分子液晶中に形成された高分子ネットワークであって非液晶性のモノマーが架橋剤とともに重合することにより形成された高分子ネットワークとから成る複合系液晶組成物の青色相から構成された高分子安定化ブルー相液晶であって、該高分子安定化ブルー相液晶がカライルドーパントを含み、該高分子安定化ブルー相液晶に対するカライルドーパントの量が、該高分子安定化ブルー相液晶の回折波長が可視領域(380~750nm)外であるように調整されたことを特徴とする高分子安定化ブルー相液晶である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の光学変調素子は一対の透明基板に挟持された高分子安定化ブルー相液晶から成る。
透明基板としてガラス、プラスチックフィルム、光学結晶等を用いることが出来る。
これら一対の基板間の距離は通常2~100μmである。
印加する電界は通常1000~100000V/cmである。電界は、実質的に基板に対し平行(又は表示方向に垂直)であればよい。
電界の印加方法に特に制限はないが、一方の基板面に櫛歯型の電極2つを相互に組み込む構造が簡便である。この櫛歯型電極当り、櫛歯の数は約2~100個、長さ約1~10000μm、幅約1~50μm、櫛歯間距離約1~100μmが好ましい。
【0011】
本発明の光学変調素子の構造の一例を図3に示す。
この構造においては、基板に櫛歯型の電極2つを同一面内にを相互に組み込むように付け、それらに電圧を印加することで櫛歯に対して垂直に、基板面に平行に電界を印加する。もう一方の基板は電極のないガラス板で薄膜などのスペーサーを介してサンドイッチする。そうするとスペーサー厚のギャップが基板間にでき、そのギャップに液晶材料を注入する。
向かい合った二つの櫛歯電極に電圧を印加すると、電界方向すなわち櫛歯線に垂直方向を光軸とする一軸の屈折率異方性が生じる。予め、二枚の偏光板の間にセルを置き、各偏光板の偏光軸を直交させ(いわゆるクロスニコル状態)、電界方向をそれぞれの偏光軸に対して45度にすれば、電界ゼロで透過率ゼロ(複屈折ゼロなので)、電界印加で光透過(複屈折が生じたセルが波長板のように作用するため)となる。したがって、電圧ON-OFFで明-暗のコントラストをつけることができる。セルのリターデーション(=複屈折×セルの厚み)が透過光の波長の半分になれば、透過率最大になる。
【0012】
本発明の高分子安定化ブルー相液晶は低分子液晶と高分子ネットワークとから成る。
高分子ネットワークを形成するのに用いられるモノマーは、非液晶性モノマー及び液晶性モノマーのいずれでもよいが、非液晶性のモノマーの方が液晶性モノマーより効果的である。
非液晶性のモノマーは、光重合又は熱重合によって重合することができるモノマーであって、棒状の分子構造(例えば、ビフェニル基又はビフェニル・シクロヘキシル基等の末端にアルキル基、シアノ基、フッ素などが付いたような分子構造)を有しないモノマーを指称し、例えば、分子構造中にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、フマレート基、シンナモイル基等の重合性基を含むモノマーが挙げられるが、これらに限られるものではない。
非液晶性のモノマー以外のモノマーとして、フェニル基やシクロヘキシル基などを含む棒状や板状の骨格を有しそれ自身で液晶性を示すか他の分子との混合により液晶相を示すような液晶性モノマーが挙げられる。
また重合基を複数有するようなモノマーを用いてもよい。
【0013】
非液晶性モノマーとして好ましい例は、分子構造中にアクリロイル基又はメタクリロイル基を含むアクリレート系モノマーであり、特に好ましいのは、側鎖としてアルキル基を有する枝分かれ構造のアクリレート系モノマーである。アルキル基は、一般に、炭素数1~4のアルキル基であり、このようなアルキル基から成る側鎖をモノマー単位当たり少なくとも1個有するモノマーを用いる。アクリレート系モノマーの好適な例としてはシクロヘキシルアクリレートなど、また、側鎖としてアルキル基を有するアクリレート系モノマーの好適な例としては、2-エチルヘキシルアクリレート、1,3,3-トリメチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
【0014】
このモノマーが、架橋剤とともに重合に供されることにより、高分子ネットワークが形成される。この架橋剤は、液晶性又は非液晶性の化合物のいずれでもよく、用いたモノマーに対応してそのモノマー分子間を結合して網状構造を形成し得るような反応性部位を有するものを使用すればよい。例えば、本発明の好ましい態様に従いモノマーとしてアクリレート系モノマーを用いる場合には、架橋剤として液晶性のジアクリレートモノマーを使用することもできる。
【0015】
一方、低分子液晶は、コレステリック相(カイラルネマチック相)と等方相の間で青色相を発現し得るものであり、好ましくは、細長く棒状の幾何学形状の分子からなるサーモトロピック液晶であり、液晶表示素子用に開発されている各種液晶材料を使用することもできる。このような低分子液晶は、ビフェニル、ターフェニル、ビフェニル・シクロヘキシル等の分子構造を含み、不斉原子の存在によりそれ自身がカイラリティー(キラリティー)を有するか、又は、カイラルな物質(カイラルドーパント)が添加されることにより、コレステリック相(カイラルネマチック相)を発現し得る物質であって、そのコレステリック相(カイラルネマチック相)におけるらせんのピッチ長が約500nm以下となるようなものから選ばれる。これらの低分子液晶は、一般に、複数の種類を混合して使用することが好ましい。
【0016】
カライルドーパントは、液晶にねじれ構造を生じさせるものであり、例えば、実施例で使用したZLI-4572やCB15(図1)、furo[3,2-b]furan構造を有する誘導体(図2(a)~(h))等が挙げられる。
通常、カイラルドーパントはTNモードのねじれ構造を安定化させたり、コレステリック相やキラルスメクチック相などのヘリカル相を誘起させるために添加剤として用いる。本発明の場合、通常のものより短いピッチ長が好ましいので、Helical Twisting Power(HTP)が大きいものを高濃度で添加することが好ましい。従って、HTPが大きく液晶に対して溶解性の高いカイラルドーパントが好ましい。
【0017】
高分子安定化ブルー相液晶の青色相は、低分子液晶中にモノマーと架橋剤を分散させ、青色相が保持されている温度で重合反応を行うことによって得られる。
重合は、熱重合及び光重合のいずれでも行うことができるが、熱重合の場合は、青色相が保持される温度と重合温度(加熱温度)とが重なる範囲に限界があり、また、高分子ネットワークの形態が加熱により変化する可能性もあるので、紫外光を用いる光重合によるのが好ましい。また、重合に際しては、重合速度を速めるために、低分子液晶中に、モノマー、カイラルドーパント、架橋剤に加えて重合開始剤も分散させておくことが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル系、チオキサントン系などの各種の開始剤が使用可能であり、具体的には、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンなどが例示できる。
【0018】
高分子安定化ブルー相液晶に対するカライルドーパントの量を、高分子安定化ブルー相液晶の回折波長が可視領域(380~750nm)外とする調整は、例えば、以下の手順で行うことができる。
(1)適当量のカライルドーパントを加えた高分子安定化ブルー相液晶を用意する。
(2)この液晶表面を回折格子分光器(例えば、日本分光社製・顕微紫外可視光度計MSV-350 )を用いて常法に従って回折波長を測定する。
(3)この回折波長が可視領域外となるカライルドーパントの量を決定する。
このようにして測定したカライルドーパントの量は、カライルドーパントのHTP(Helical Twisting Power)に依存し、カライルドーパントと液晶の種類によって異なる。例えば、液晶がJC1041-XXでありカライルドーパントがZLI-4572の場合にはZLI-4572の量は約6~10モル%、同じくカライルドーパントがCB15の場合にはCB15の量は約85~95モル%である。

以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0019】
液晶としてフッ素系混合液晶であるJC1041-XX (チッソ)、4-cyano-4'-pentylbiphenyl(5CB) (Aldrich)及びカイラル剤としてZLI-4572 (Merck)を加熱混合した。各比率は、下表にあるように47.2/47.2/5.6 (mol%)とした。その混合液中に高分子ネットワークを形成させるための光重合性モノマーとして一官能性の2-ethylhexyl acrylate (EHA) (Aldrich)及び二官能性のRM257 (Merck)を加えた。モノマーの組成比は、表1の通りEHA/RM257=70/30(mol%)とした。さらに、光重合開始剤には2,2-dimethoxyphenylacetophenone(DMPAP) (Aldrich)を加え均一な溶液とした。混合溶液中のモノマーの含有率をαとし、αは4~15mol%で種々変化させた。DMPAPは、混合モノマーに対して5 mol%となるように調製した。
【表1】
JP0004766694B2_000002t.gif

【0020】
基板表面に電極間50μmの櫛歯型ITO電極(ITO電極抵抗値:100Ω)を形成した厚み1.1 mmのガラス基板(E.H.C. Co., Ltd.)と電極を形成していない厚み1.1 mmのガラス基板を用いサンドイッチ型ガラスセルを作製した。セル厚はスペーサーを介し25μmとした。
上記混合液を等方相の状態で、このガラスセル中に毛管現象を利用して注入した。調製した混合液において発現した液晶相は、高温側からBPII、BPI及びカイラルネマチック相であった。ガラスセルの温度を複合系がBPIを発現する温度領域で一定に保持し、照射強度1.5 mW cm-2(365 nm)の紫外光を照射することで高分子安定化ブルー相を調製した。
紫外光照射の手順は、照射時間/照射回数の順に1 s/5回、2 s/2回、3s ・5s 15s・30s・30 min/1回とし、照射間隔を10sとした。液晶相の同定は偏光顕微鏡観察より行った。偏光顕微鏡はECLIPSE E600W (Nikon Co., Ltd.)を用い、直交ニコル下で観察を行った。
【0021】
図4に、高分子安定化ブルー相液晶(α=6.3 mol%)の青色相の光学リターデーション(=複屈折×セルの厚み)に対する電界の影響を示す。縦軸は、293Kにおける基板面に垂直方向の632nmの光の透過度を示す。電界により誘導される光学リターデーションの大きさは、Kerr効果のように、電界の二乗に比例して増加している。Kerr効果は電界誘起複屈折の一種を示し、複屈折Δn=(Kerr係数)×(波長)×(電界の二乗)となる。図4の傾きからKerr係数を計算すると、3.7×10-10 V-2mとなり、ニトロベンゼンのKerr係数の約180倍になる。これは、光学等方性材料としては異常に高い値である。光透過率は光学リターデーションが光の波長の半分であるときに最大となる。通常このような系で光学リターデーションを透過光の波長の半分とするには高電圧を必要とするが、本発明の液晶表示素子の高分子安定化ブルー相液晶のように屈折率が大きく誘電異方性が大きい液晶を用いるとこのような条件を容易に達成することができる。
【0022】
図5は、応答時間に対する温度の影響を示す。(a)は立上がり時間、(b)は減衰時間を示す。応答時間は、電圧を印加した瞬間と切った瞬間の透過率の変化を緩和関数にフィッティングして求めた。試料溶液中のモノマーの含有率αは6.3~15.0mol%の範囲とした。応答時間の分布因子は0.4~0.6であった。応答時間は立上がり時間及び減衰時間共にαが大きい程速く、293.5Kにおける立上がり時間は105μs、減衰時間は18μsであった。この減衰時間は325.5Kにおける低分子青色相の減衰時間と同等である。また高温域の減衰時間は10-6s程度である。このような応答時間は従来の液晶表示素子と比べると極めて速い。
【0023】
図6は、光重合性モノマーの分率(α)を6.5 mol%として調製した高分子安定化BPの電界存在下における反射スペクトルである。測定は298 Kで行った。480 nm近傍に観測されたBP格子の(110)回折ピークは電界印加後も顕著に観測された。
【実施例2】
【0024】
発現するBPの回折波長を380 nm以下に制御するため、(JC1041-XX/5CB/ZLI-4572)混合液晶にカイラル剤CB15 (Aldrich)を導入した。調製した(光重合性モノマー/液晶)複合系における各試料の組成を表2に示す。
【0025】
【表2】
JP0004766694B2_000003t.gif

【0026】
図7は、(光重合性モノマー/液晶)複合系における反射スペクトルの温度依存性を示す。観測光源(365 nm)による光重合性モノマーの重合開始を防ぐため、スキャン波長領域を700~375 nmとした。反射スペクトルより、複合系におけるBPの発現温度範囲が2.5 K程度であることが明らかとなった。
図7の挿入図は複合系が(a)ブルー相(BP)及び(b)カイラルネマチック相又はコレステリック相(N*)を発現する温度における偏光顕微鏡観察像である。発現したBPの回折波長が380 nm以下であったため、偏光顕微鏡像はBP発現領域においても(a)暗視野となった。混合液晶単独の系と同様、低温領域においてN*に起因する(b)focal-conic組織が観測された。
【0027】
得られた知見に基づき、光重合により高分子安定化BPを調製した。発現するBPの光学組織が偏光顕微鏡観察で確認できないため、観測されたBP/N*相転移温度から2 K高温側で紫外光を照射した。照射様式は実施例1と同様とした。
図8は、調製した(高分子ネットワーク/液晶)複合系における反射スペクトルの温度依存性である。BPが発現していることを示す顕著な反射ピークが幅広い温度領域で観測された。
観測された回折波長は370nm近傍であり、図6(回折波長480nm)と比較すれば、カライルドーパントを最適化することにより、回折波長を紫外域に移動させることができたことが分かる。296.5 Kにおける偏光顕微鏡像は暗視野であった。
【0028】
図9は、調製した高分子安定化BPの電界印加前後における偏光顕微鏡観察像を示す。観察は293 Kで行った。印加電界として、周波数100 kHz、4.9 V μm-1の正弦波交流電界を用いた。電界無印加時(a)、入射光の偏光状態は光学的に等方性である高分子安定化BPを通過後も変化しないため偏光顕微鏡像は暗視野となった。電界印加後(b)、電極間の高分子安定化BPに複屈折が誘起されたことを示す透過光量の著しい増大が観測された。
【0029】
図10は単色光源(530 nm)を用い測定したリタデーションを、印加電界の二乗に対してプロットしたものである。測定は293 Kで行った。図10の傾きからKerr係数を計算すると、2.05×10-10 mV-2であった。この値は、ニトロベンゼンの60倍もの大きさに相当する。
【0030】
次に、電気複屈折の応答時間を評価した。図11は、293 Kにおいて観測された高分子安定化BPの光スイッチング曲線である。得られた曲線から評価した応答時間は、立ち上がりが147μs(β=0.43)及び立ち下がりが23μs(β=0.53)であった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】カライルドーパントであるZLI-4572及びCB15の化学構造を示す図である。
【図2】カライルドーパントであるfuro[3,2-b]furan構造を有する誘導体の化学構造を示す図である。
【図3】本発明の光学変調素子の構造の一例を示す図である。
【図4】光学リターデーションに対する電界の影響を示す図である。
【図5】応答時間に対する温度の影響を示す図である。
【図6】高分子安定化BP(α=6.5 mol%)の電界存在下における反射スペクトルを示す図である(実施例1)。BP格子の(110)回折ピークは480 nm近傍に観測された。
【図7】(光重合性モノマー/液晶)複合系における反射スペクトルの温度依存性を示す図である(実施例2)。
【図8】調製した(高分子ネットワーク/液晶)複合系における反射スペクトルの温度依存性を示す図である(実施例2)。
【図9】調製した高分子安定化BPの電界印加前後における偏光顕微鏡観察像を示す図である(実施例2)。(a) 0 V μm-1, (b) 4.9 V μm-1
【図10】単色光源(530 nm)を用い測定したリタデーションを、印加電界の二乗に対してプロットした図である(実施例2)。
【図11】293 Kにおいて観測された高分子安定化BPの光スイッチング曲線を示す図である(実施例2)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図8】
6
【図10】
7
【図11】
8
【図7】
9
【図9】
10