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明細書 :固体レーザー装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4879733号 (P4879733)
登録日 平成23年12月9日(2011.12.9)
発行日 平成24年2月22日(2012.2.22)
発明の名称または考案の名称 固体レーザー装置
国際特許分類 H01S   3/042       (2006.01)
H01S   3/06        (2006.01)
H01S   3/094       (2006.01)
FI H01S 3/04 L
H01S 3/06 Z
H01S 3/094 S
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2006-511290 (P2006-511290)
出願日 平成17年3月23日(2005.3.23)
国際出願番号 PCT/JP2005/005178
国際公開番号 WO2005/091446
国際公開日 平成17年9月29日(2005.9.29)
優先権出願番号 2004087363
優先日 平成16年3月24日(2004.3.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年3月6日(2008.3.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】503098724
【氏名又は名称】株式会社オキサイド
発明者または考案者 【氏名】常包 正樹
【氏名】ダスカル トライアン
【氏名】平等 拓範
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】杉田 翠
参考文献・文献 米国特許第05553088(US,A)
国際公開第2002/060018(WO,A1)
特開平08-008477(JP,A)
特開平04-123441(JP,A)
John Vetrovec,Compact active mirror laser (CAMIL),Proc. SPIE,米国,2002年 1月22日,Vol.4630,pp.1-12
調査した分野 H01S3/00-3/02
3/04-3/06
3/07-3/094
3/0943-3/0959
3/098-3/102
3/105-3/131
3/136-3/213
3/23-4/00
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
中央にレーザー発振元素を含む固体レーザー媒質よりなるコアを有し、その周囲に一体化された励起光に対して透明な光ガイドを有し、前記コアおよび前記光ガイドの一方の面がヒートシンクに固着され、前記光ガイド外周面の励起光入射面より前記光ガイド内に励起光を導入し、前記コアまで伝搬させてレーザー発振を行わせる固体レーザー装置において、前記励起光入射面に続く前記光ガイドが、前記ヒートシンクよりも空間的に外側に飛び出してオーバーハング状に形成されており、固着のための接着層および前記ヒートシンクに接触していない固体レーザー装置であって、前記接着層を介して前記ヒートシンクに固着された前記光ガイドの前記コアまでの距離が前記コアの厚みと同じかそれよりも短くなるようにし、レーザー特性に放熱の影響がない範囲まで前記ヒートシンクと前記光ガイドの固着面積をできるだけ小さくすることにより発生する熱歪みの量を低減することを特徴とする固体レーザー装置。
【請求項2】
請求項記載の固体レーザー装置において、前記ヒートシンクの前記コアとの接着面にスリットを形成することを特徴とする固体レーザー装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、固体レーザー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の固体レーザー装置として、結晶の中央部にレーザー発振元素を含むコアを有し、このコアの周囲に励起光を導波するための透明な光ガイドを有する厚さ1mm以下の薄い結晶を配置し、この結晶のレーザー光を出射する面と反対側の面がヒートシンクに固着され、冷却される構造を有するものが示されている(下記特許文献1、非特許文献1、2)。
【0003】
図1は従来の固体レーザー装置の断面図である。
この図において、101はヒートシンク、102はそのヒートシンク101上に形成される高熱伝導性接着層、103はその高熱伝導性接着層102上に形成される全反射膜、104はその全反射膜103上に形成されるレーザー発振元素を含むコア、105はそのコア104の外周に形成される励起光に対して透明な光ガイド、105Aはその光ガイド105の外端面の励起光入射面、106,107は励起光である。
【0004】
これらの従来例では、コアは円形か四角形であり、光ガイドにもレーザー発振元素を含まない同じ母材を用いていた。

【特許文献1】米国特許第6625193号公報
【非特許文献1】オプティクス・レターズ、27巻(2002年発行)、1791頁
【非特許文献2】アプライド・フィジックス・レターズ、83巻(2003年発行)、4086頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光ガイドの励起光入射面に接してヒートシンクまたはヒートシンクとの接着層が存在する場合、励起光を入射面に導入する際に、励起光の一部がヒートシンクあるいは接着層に漏れて照射されると、その部分の温度が急激に上昇しその影響で光ガイドが割れたりする問題があった。
また、ヒートシンク(例えば銅)と、レーザー媒質(例えばYAG)では熱膨張係数が大きく異なっており、レーザー動作時にはYAG結晶が発熱し、同時にヒートシンクの温度も上昇するため、両者および両者の境界の接着層に歪みが発生する。特に、接着面積が大きくなるほど同じ温度上昇でもその歪み量は増大し、場合によってはYAG結晶が破壊されたり、接合層がはがれたり亀裂が入ることによって熱伝導が劣化し、最終的にレーザー特性が大きく劣化する可能性があった。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑み、これらの歪み量を低減し信頼性を向上することができる固体レーザー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕中央にレーザー発振元素を含む固体レーザー媒質よりなるコアを有し、その周囲に一体化された励起光に対して透明な光ガイドを有し、前記コアおよび前記光ガイドの一方の面がヒートシンクに固着され、前記光ガイド外周面の励起光入射面より前記光ガイド内に励起光を導入し、前記コアまで伝搬させてレーザー発振を行わせる固体レーザー装置において、前記励起光入射面に続く前記光ガイドが、前記ヒートシンクよりも空間的に外側に飛び出してオーバーハング状に形成されており、固着のための接着層および前記ヒートシンクに接触していない固体レーザー装置であって、前記接着層を介して前記ヒートシンクに固着された前記光ガイドの前記コアまでの距離が前記コアの厚みと同じかそれよりも短くなるようにし、レーザー特性に放熱の影響がない範囲まで前記ヒートシンクと前記光ガイドの固着面積をできるだけ小さくすることにより発生する熱歪みの量を低減することを特徴とする。
【0008】
〕上記〔〕記載の固体レーザー装置において、前記ヒートシンクの前記コアとの接着面にスリットを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固体レーザー装置において、光ガイドの励起光入射窓に高い強度の励起光を集光して入射させた場合において、入射窓の周囲で発熱や脱ガスなどにより破壊や出力の低下の問題を回避することができる。さらに接着剤等を介して熱膨張係数が異なるレーザー媒質とヒートシンクを固着した場合でも、レーザー発振に伴い前記コア内で発生する発熱に起因する熱歪みを緩和することができ、やはりレーザー媒質の劣化や接着層の剥がれなどの問題が緩和されるため、より高い出力でより高い信頼性のレーザー装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
中央にレーザー発振元素を含む固体レーザー媒質よりなるコアを有し、その周囲に一体化された励起光に対して透明な光ガイドを有し、前記コアおよび前記光ガイドの一方の面がヒートシンクに固着され、前記光ガイド外周面の励起光入射面より前記光ガイド内に励起光を導入し、前記コアまで伝搬させてレーザー発振を行わせる固体レーザー装置において、前記励起光入射面に続く前記光ガイドが、前記ヒートシンクよりも空間的に外側に飛び出してオーバーハング状に形成されており、固着のための接着層および前記ヒートシンクに接触していない固体レーザー装置であって、前記接着層を介して前記ヒートシンクに固着された前記光ガイドの前記コアまでの距離が前記コアの厚みと同じかそれよりも短くなるようにし、レーザー特性に放熱の影響がない範囲まで前記ヒートシンクと前記光ガイドの固着面積をできるだけ小さくすることにより発生する熱歪みの量を低減することによって、前記励起光入射面に強い励起光を集光して入射しても、端面から漏れた強いエネルギー密度の光が前記接着層や前記ヒートシンクに直接照射されにくく、仮に照射されても距離が入射端面より離れているために、光が広がってエネルギー密度が下がるために、そこでの発熱や脱ガスなどの問題が生じにくく、固体レーザー装置の信頼性が大幅に向上する。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図2は本発明の第1実施例を示す固体レーザー装置の要部断面図である。ここではコアが光ガイドに対して大きい場合を示している。
この図において、1はヒートシンク、2はそのヒートシンク1上に形成される高熱伝導性接着層、3はその高熱伝導性接着層2上に形成される全反射膜、4はその全反射膜3上に形成されるレーザー発振元素を含むコア、5はそのコア4の外周に形成される光に対して透明な光ガイド、5Aはその光ガイド5の外端面の励起光入射面、6,7は励起光である。ここでは、コア4が比較的大きな寸法を有している。
【0012】
このように、励起光を導入する光ガイド5が外に張り出したオーバーハング形状をなしている。
このように、励起光を導入する光ガイド5の励起光入射面5Aの周囲は完全に空間8であり、仮に励起光6,7が入射面5Aから外部に漏れて例えばヒートシンク1に照射されてもそれまでに励起光6,7は空間8によりビームが広がりエネルギー密度が低下しているために熱的な問題を生ずる心配がなく、光ガイド5の周囲も温度が上がらないため光ガイド5が割れることはない。
【0013】
また、光ガイド5は励起光6,7が伝搬するだけで発熱はないため冷却の必要はないが、コア4の周囲では光ガイド5を経由した熱の伝導冷却の効果もあるため、この周囲にコア4の厚みtと同等かそれよりも短いWの距離の光ガイド5のみヒートシンク1と固着されている。このようにレーザー特性に放熱の影響がない範囲までヒートシンク1と光ガイド5の固着面積をできるだけ小さくすることにより発生する熱歪みの量を低減することができる。
【0014】
コア4の材質としては例えばYb(イッテルビウム)をレーザー発振元素として含むYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、光ガイド5の材料としてはレーザー発振元素を含まないYAGが代表的であるが、レーザー発振元素としては他にNd(ネオジウム)でもよいし、Tm(ツリウム)、Ho(ホロミウム)などの遷移金属でもよい。またCr(クロム)やTi(チタン)でもよいし、それを複数含んでもよい。また、コア4や光ガイド5の母材としてはYAG以外にYVO4 (イットリウム・バナデート)、GdVO4 (ガドリニウム・バナデート)、YLF(イットリウム・リチウム・フロライド)、GGG(ガドリニウム・ガリウム・ガーネット)などでもよい。励起光6,7はレーザー発振元素が吸収する波長であればよく、例えばYb:YAGよりなるコア4であれば940nmまたは970nmが適している。このように使用するコア4の材質に応じて励起光の波長が選択される。
【0015】
また、コア4およびガイド5の母材は異なるものでもよいが、同じものの方が屈折率が近いために境界での光の損失を抑えることができる。またコア4とガイド5は製造の過程で一体化されている方が取り扱いが容易で、かつ境界での光の損失を抑えることができる。
光ガイド5はレーザー発振元素を含まない結晶でも良いし透光性セラミックでも良い。またコア4はレーザー発振元素を含む結晶でも構わないし同じく透光性セラミックでも良い。
【0016】
高熱伝導性接着層2は有機系、無機系の接着剤でもよいし、Au,Ag,Sn,Sb,In,Pb,Zn,Cuなどを含む金属はんだ材料でも構わない。
ヒートシンク1はCu、CuWなどの金属材料をはじめ、ダイアモンド、SiC,AlN,BeO,CBN,DLCなどの非金属、複合材料でもよい。
図3は本発明の第2実施例を示す固体レーザー装置の要部断面図である。ここではコアが光ガイドに対して小さい場合である。
【0017】
この図において、11はヒートシンク、12はそのヒートシンク11上に形成される高熱伝導性接着層、13はその高熱伝導性接着層12上に形成される全反射膜、14はその全反射膜13上に形成されるレーザー発振元素を含むコア、15はそのコア14の外周に形成される光に対して透明な光ガイド、15Aはその光ガイド15の外端面の励起光入射面、16,17は励起光である。
【0018】
このようにコア14が小さい場合、ヒートシンク11自体を細く長くしてしまうと冷却性能が低下するために、ヒートシンク11の先端を台状に加工し、その先端にコア14が固着されるようにした例である。つまり、光ガイド15はオーバーハング状に配置されている。したがって、この実施例においても励起光入射面15Aの周囲にヒートシンク11または高熱伝導性接着層12がなく、コア14の厚みtと同等かそれよりも短いWの距離の光ガイド15のみがヒートシンク11に固着されるように構成されている。
【0019】
図4は本発明の第3実施例を示す固体レーザー装置の要部断面図である。ここではコアが光ガイドに対して大きい場合である。
この図において、21はヒートシンク、22はそのヒートシンク21上に形成される高熱伝導性接着層、23はその高熱伝導性接着層22上に形成される全反射膜、24はその全反射膜23上に形成されるレーザー発振元素を含むコア、25はそのコア24の外周に形成される光に対して透明な光ガイド、25Aはその光ガイド25の外端面の励起光入射面、26,27は励起光である。
【0020】
この実施例では、ヒートシンク21の高熱伝導性接着層22の固着面上に3箇所のスリット28を形成するようにしている。スリット28の幅は0.2mm、深さは0.5mmである。
図5はそのスリットによる歪みの緩和の原理の説明図である。この図において、29はヒートシンク21の熱膨張方向、30はコア24の熱膨張方向、31は応力の集中方向を示している。
【0021】
一般にはヒートシンク21として用いる金属の方がコア24として用いられるレーザー材料よりは熱膨張係数が大きいが、形成されたスリット28によってその歪みがスリット28空間で解消され、それ以上に増大されることがない。スリットがない場合歪みは高熱伝導性接着層22の周囲に集積され、周囲より高熱伝導性接着層22のはがれなどが生じるが、この構造ではその応力がスリット28の端で終端し、固着した結晶の周囲まで歪みが増大することはないため高熱伝導性接着層22などのはがれを防止することができる。もちろんヒートシンクやレーザー材料の組み合わせによりヒートシンクの方が熱膨張係数が小さい場合でも同じくスリットによって逆方向の歪みが解消され、同じ効果が得られる。
【0022】
図6は本発明の第4実施例を示す固体レーザー装置のヒートシンクの斜視図である。この実施例では基部43上のヒートシンク41の上面に井形にスリット42を形成するようにしている。
図7は本発明の第5実施例を示す固体レーザー装置のヒートシンクの平面図である。この実施例ではヒートシンク51の上面に同心円状のスリット52を形成するようにしている。
【0023】
図8は本発明の固定レーザー装置のレーザー結晶と励起光、およびレーザー共振器を示す断面図である。
ヒートシンク61上に積層されたLDチップ62より出射した光はそれぞれマイクロレンズ63により進相軸方向がコリメートされ、集光レンズ64を透過し、集光レンズ65で光ガイド75の側面の入射窓75Aに集光される。集光レンズ64は励起光66の遅相軸方向を集光する場合に使用される。光ガイド75内に入射した励起光66は光ガイド75およびコア74の上下面に形成された、レーザー光波長に対する反射防止膜76、全反射膜73との境界で全反射を繰り返しながら光ガイド75内を伝搬し、コア74に到達する。コア74内には励起光66を吸収しレーザー光を誘導放出するレーザー発振元素が添加されており出力ミラー77と全反射膜73との間でレーザー共振器が構成されレーザー発振光78を得ることができる。コア74および光ガイド75は全反射膜73および高熱伝導性接着層72を介してヒートシンク71に固定されており、コア74内で励起光66を吸収した際に発生する熱を効果的に放熱する効果を有している。
【0024】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の固体レーザー装置は、高出力であり、信頼性の高い動作を行うことができる固体レーザー装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の固定レーザー装置の要部断面図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す固体レーザー装置の要部断面図である。
【図3】本発明の第2実施例を示す固体レーザー装置の要部断面図である。
【図4】本発明の第3実施例を示す固体レーザー装置の要部断面図である。
【図5】本発明の第3実施例を示す固体レーザー装置のヒートシンクのスリットによる歪みの緩和の原理の説明図である。
【図6】本発明の第4実施例を示す固体レーザー装置のヒートシンクの斜視図である。
【図7】本発明の第5実施例を示す固体レーザー装置のヒートシンクの斜視図である。
【図8】本発明の固定レーザー装置のレーザー結晶と励起光、およびレーザー共振器を示す断面図である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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