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明細書 :ポリピリジニウムの製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5154797号 (P5154797)
登録日 平成24年12月14日(2012.12.14)
発行日 平成25年2月27日(2013.2.27)
発明の名称または考案の名称 ポリピリジニウムの製法
国際特許分類 C08G  73/06        (2006.01)
FI C08G 73/06
請求項の数または発明の数 8
全頁数 12
出願番号 特願2006-511291 (P2006-511291)
出願日 平成17年3月23日(2005.3.23)
国際出願番号 PCT/JP2005/005180
国際公開番号 WO2005/090443
国際公開日 平成17年9月29日(2005.9.29)
優先権出願番号 2004084518
優先日 平成16年3月23日(2004.3.23)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年3月17日(2008.3.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】彌田 智一
【氏名】鎌田 香織
【氏名】鈴木 幸光
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
審査官 【審査官】内田 靖恵
参考文献・文献 特開平04-293931(JP,A)
特開昭61-272234(JP,A)
特開昭61-271324(JP,A)
特開昭59-036662(JP,A)
調査した分野 C08G 73/00-73/26
特許請求の範囲 【請求項1】
有機溶媒中で重合開始剤及び下記一般式(化1)
【化1】
JP0005154797B2_000009t.gif
(式中、R'は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはエステル基又はピリジン環と縮合環を形成する芳香環を表し、mは1~4の整数を表し、Zはハロゲン原子を表す。)で表されるモノマーを、疎水性アニオンから成る溶解促進剤の存在下で反応させることから成るポリピリジニウムの製法であって、該重合開始剤が4-ハロピリジニウム若しくはその誘導体、4-ハロキノリニウム若しくはその誘導体、9-ハロアクリジニウム若しくはその誘導体、2-又は4-ハロピリミジン若しくはその誘導体、3-又は4-ハロピリダジン若しくはその誘導体、2-ハロピラジン及びその誘導体、2-、4-又は5-ハロイミダゾール若しくはその誘導体、3-、4-又は5-ハロピラゾール若しくはその誘導体、3-、4-又は5-ハロイソチアゾール若しくはその誘導体、3-、4-又は5-ハロイソオキサゾール若しくはその誘導体、ハロトリアジン、モノニトロ又はポリニトロハロベンゼン若しくはその誘導体、又はポリシアノハロベンゼン若しくはその誘導体であるポリピリジニウムの製法。
【請求項2】
前記重合開始剤が、下記一般式(化2)
【化2】
JP0005154797B2_000010t.gif
(式中、RはR''(CH-(式中、R''は炭化水素基又は複素環基を表し、nは少なくとも1の整数を表す。)又は置換基を有していてもよいアリール基若しくは複素環基を表し(但し、該複素環基はその炭素原子がピリジン環の窒素原子と結合する。)、Xはハロゲン原子を表し、Yは前記有機溶媒に溶解するアニオンを表し、R'とmは独立して前記と同様に定義される。)で表される4-ハロピリジニウム若しくはその誘導体である請求項1に記載の製法。
【請求項3】
がハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、四フッ化ホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン又はテトラフェニルホウ酸イオンであり、Xが塩素原子又は臭素原子であり、前記疎水性アニオンが過塩素酸イオン、四フッ化ホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、酒石酸イオン、クエン酸イオン、ニコチン酸イオン又はビナフチル基をもつリン酸イオンである請求項2に記載の製法。
【請求項4】
前記溶解促進剤が、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、四フッ化ホウ酸テトラブチルアンモニウム、六フッ化リンテトラブチルアンモニウム、過塩素酸ナトリウム、四フッ化ホウ酸ナトリウム、六フッ化リンナトリウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウム、六フッ化リンテトラエチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム(炭素数6~24)、アルキルリン酸ナトリウム(炭素数6~24)又はリン脂質(炭素数6~24)である請求項1~3のいずれか一項に記載の製法。
【請求項5】
前記溶解促進剤がテトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウムである請求項4に記載の製法。
【請求項6】
前記重合開始剤がN-(4´-tert-ブチルベンジル)-4-クロロピリジニウムであり、前記モノマーが4-クロロピリジンである請求項5に記載の製法。
【請求項7】
更に反応物を重合停止剤と反応させることを含み、該重合停止剤が、アミノ基、アルコキシ基若しくはアルキル基で置換したピリジン、キノリン若しくはアクリジン又はこれらの誘導体、トリフェニルホスフィン又はその誘導体、又はアルキル基若しくはアリル基を置換したアミン誘導体である請求項1~6のいずれか一項に記載の製法。
【請求項8】
反応液に前記重合停止剤を加えることにより、反応物を重合停止剤と反応させる請求項7に記載の製法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、ポリピリジニウムを製造する方法に関し、より詳細には、分子量分布を制御可能なポリピリジニウムの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピリジニウム誘導体は光電気化学的な酸化還元能を有するイオン性分子である。この特徴を活かし、クロミック材料や殺菌力のある界面活性剤など幅広い用途で応用されている。これらの機能発現は、酸化還元過程におけるピリジニルラジカルの生成と互いの相互作用に起因している、従って、ピリジニウムが最小ユニットとして共役連結した多カチオン性ポリピリジニウムは、多段階酸化還元特性をもつ大変興味深い強相関系ポリマーといえる。これまでに、ハロピリジンの自己縮合による合成が報告されているものの(非特許文献1~3)、得られるポリマーの低い溶解性が原因となり、重合機構の解明と分子量制御に至った例はない。
また、テトラフルオロホウ酸ナトリウム等の無機化合物の存在下の有機溶媒中で1,4-ピリジニウム塩を重合させてポリ(1,4-ピリジニウム)塩を得る方法も開示されているが(特許文献1)、分子量を制御することができていない。
【0003】

【非特許文献1】Recueil vol.78, 593-603 (1959)
【非特許文献2】Journal of Polymer Science: part C, No.16, pp.369-375 (1967)
【非特許文献3】Polymer International 35 (1994) 67-74
【特許文献1】特開平4-293931
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、狭い分子量分布(例えば、重量平均分子量と数平均分子量の比が1.5以下)を維持したまま所望の分子量の重合体を得ることができる、ポリピリジニウムの製法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ピリジニウム塩を開始剤とした連鎖的逐次重合の検討を行い、モノマーである4-クロロピリジンの反応性とポリピリジニウムの合成を検討した結果、狭い分子量分布と所望の分子量を有するポリピリジニウムの製法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、有機溶媒中で重合開始剤及び下記一般式(化1)
【化1】
JP0005154797B2_000002t.gif
(式中、R’は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはエステル基又はピリジン環と縮合環を形成する芳香環を表し、mは1~4の整数を表し、Zはハロゲン原子を表す。)で表されるモノマーを、疎水性アニオンから成る溶解促進剤の存在下で反応させることから成るポリピリジニウムの製法であって、該重合開始剤が4-ハロピリジニウム若しくはその誘導体、4-ハロキノリニウム若しくはその誘導体、9-ハロアクリジニウム若しくはその誘導体、2-又は4-ハロピリミジン若しくはその誘導体、3-又は4-ハロピリダジン若しくはその誘導体、2-ハロピラジン及びその誘導体、2-、4-又は5-ハロイミダゾール若しくはその誘導体、3-、4-又は5-ハロピラゾール若しくはその誘導体、3-、4-又は5-ハロイソチアゾール若しくはその誘導体、3-、4-又は5-ハロイソオキサゾール若しくはその誘導体、ハロトリアジン、モノニトロ又はポリニトロハロベンゼン若しくはその誘導体、又はポリシアノハロベンゼン若しくはその誘導体であるポリピリジニウムの製法である。
【発明の効果】
【0007】
従来のハロピリジンの熱重合は自己触媒的に進行する。これは、生成する2量体(N-(4-ハロピリジニオ)ピリジン)あるいはオリゴマーの生長末端であるハロピリジニウム構造の4位炭素への求核反応速度が、重合初期過程であるハロピリジンモノマーの4位炭素への求核反応速度より圧倒的に速いからである。この違いは、開始剤及び生長末端に見られるハロピリジニウム構造の4位炭素の電子密度がモノマーであるハロピリジンの4位炭素の電子密度よりも十分に低いので、モノマーであるハロピリジンの窒素による求核攻撃が起こりやすいことによるものである。そこで、本発明の重合反応ではハロピリジンモノマーが優先的に求核攻撃するハロピリジニウム誘導体を別途合成し、開始剤として用いた。実施例に示したように、ハロピリジンの自己触媒的熱重合が起こらない温度範囲内において、開始剤から優先的に生長することにより、狭い分子量分布と所望の分子量を得ることができた。従って、本発明の重合反応は連鎖的重縮合反応の条件を満たすものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の反応は、重合開始剤をハロピリジン誘導体とした場合に、下式(記号は一般式(化1及び化2)での定義と同様を表す。)で表される。
【化4】
JP0005154797B2_000003t.gif
即ち、生成する重合体を溶媒に溶解させる溶解促進剤の存在下で、特別に設計された重合開始剤1にピリジン誘導体モノマー2を重合させることにより、狭い分子量分布と所望の分子量を有するポリピリジニウム3を合成することができる(式中、oは1~300程度である。他の略号については以下説明する。)。
【0009】
本発明の重合開始剤は、モノマーであるハロピリジン又はその誘導体による攻撃を受けやすくするため、攻撃部位の求電子性を増大させた含チッソ化合物である。このような重合開始剤は、4-ハロピリジニウム若しくはその誘導体(図1(1)、図中の記号は一般式(化1及び化2)における定義と同じである。以下同様。)、4-ハロキノリニウム若しくはその誘導体(図1(2))、9-ハロアクリジニウム若しくはその誘導体(図1(3))、2-又は4-ハロピリミジン若しくはその誘導体(図1(4))、3-又は4-ハロピリダジン若しくはその誘導体(図1(5))、2-ハロピラジン及びその誘導体(図1(6))、2-、4-又は5-ハロイミダゾール若しくはその誘導体(図1(7))、3-、4-又は5-ハロピラゾール若しくはその誘導体(図1(8))、3-、4-又は5-ハロイソチアゾール若しくはその誘導体(図1(9))、3-、4-又は5-ハロイソオキサゾール若しくはその誘導体(図1(10))、ハロトリアジン(図1(11))、モノニトロ又はポリニトロハロベンゼン若しくはその誘導体(図1(12))、又はポリシアノハロベンゼン若しくはその誘導体(図1(13))である。
【0010】
この中でも、特にハロピリジン誘導体の4位炭素の求電子性を増大させたハロピリジン誘導体が好ましく、下式(化2)で表される。
【化2】
JP0005154797B2_000004t.gif

【0011】
RはR’’(CH-又は置換基を有していてもよいアリール基若しくは複素環基を表す。
R’’は炭化水素基又は複素環基を表す。この炭化水素基とはアルキル基、二重結合を有する直鎖炭化水素基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基をいう。
nは少なくとも1の整数、好ましくは1~3、最も好ましくは1を表す。
R’は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはエステル基の置換基又はピリジン環と縮合環を形成する芳香環、好ましくは水素原子を表す。ピリジン環と縮合環を形成する芳香環としては、ベンゼン環又はナフタレン環、好ましくはベンゼン環が挙げられる。ピリジン環が1のベンゼン環と縮合環を形成する場合には該縮合環はキノリン環となり、ピリジン環が2のベンゼン環と縮合環を形成する場合には該縮合環はアクリジン環となる。これらの芳香環は更に1又は複数の上記置換基を有していてもよい。
mは1~4の整数を表す。但し、上記縮合環がキノリン環の場合は1、アクリジンの場合には2である。
【0012】
アリール基は好ましくはフェニル基又はナフチル基である。
複素環基は好ましくはN、O若しくはSを有するヘテロ環基であり、ヘテロ環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基等の単環へテロ環又はこれら同士若しくはこれらにベンゼン環やナフタレン環等の芳香環が縮環した多環ヘテロ環が挙げられるが、これらの中で含窒素ヘテロ環基が好ましい。重合開始剤において、この複素環基の炭素原子がピリジン環の窒素原子と結合していることを要する。
これらアリール基及及び複素環基は更に1又は複数の置換基を有していてもよい。この置換基として、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シリル基(-SR''':R'''は同一でも異なってもよく水素原子、水酸基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基等を表す。)等が挙げられる。
【0013】
このRとして例えば以下のような基が挙げられる。
【化5】
JP0005154797B2_000005t.gif
(式中、Gは置換基、pは整数を表す。)
【0014】
Xはハロゲン原子、好ましくは塩素原子又は臭素原子を表す。
Yは、この反応に用いた有機溶媒に溶解するアニオンを表す。このようなアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、四フッ化ホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン等が挙げられる。
【0015】
また、本発明で用いるモノマーは下式(化1)で表される。
【化1】
JP0005154797B2_000006t.gif
式中、Zはハロゲン原子、好ましくは塩素原子又は臭素原子を表す。R’とmは独立して上記と同様に定義される。
【0016】
本発明で用いる溶解促進剤は、重合の進行に伴って遊離するハロゲン化物イオンを疎水性アニオンに効率的にイオン交換することにより、生成する重合体を有機溶媒に可溶化し、重合反応を均一系で進行させて高分子量で分子量分布の狭いポリピリジニウムの合成を可能とする機能をもち、疎水性アニオンから成る。この疎水性アニオンは、例えば、過塩素酸イオン、四フッ化ホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、酒石酸イオン、クエン酸イオン、ニコチン酸イオン、ビナフチル基をもつリン酸イオン等である。また、この溶解促進剤は上記有機溶媒に溶解するアニオン(Y)と同一であってもよいが、より高濃度の重合物の溶解性が要求される。この溶解性は、具体的には、0.01mol/L以上であれば、溶解すればするほど良い。
【0017】
このような疎水性アニオンは、以下のような溶解促進剤を反応系に添加することにより得ることができる。このような溶解促進剤として、例えば、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、四フッ化ホウ酸テトラブチルアンモニウム、六フッ化リンテトラブチルアンモニウム、過塩素酸ナトリウム、四フッ化ホウ酸ナトリウム、六フッ化リンナトリウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウム、六フッ化リンテトラエチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム(炭素数6~24)、アルキルリン酸ナトリウム(炭素数6~24)、リン脂質(炭素数6~24)等が挙げられる。
【0018】
溶解促進剤(AB)を用いない場合は、重合の進行に伴ってモノマーより遊離するハロゲン化物イオン(Z)が重合体の対アニオンとなって、溶解性が低下するために、重合直後より反応溶液中に析出し、重合度の増加が見込まれない。しかし溶解促進剤を添加すると、下式(化6)のイオン交換反応(Z、Y → B)が重合中に起こり、重合物の溶解性を保つことができると考えられる。
【化6】
JP0005154797B2_000007t.gif
(式中、ABは溶解促進剤、Bは疎水性アニオンを表す。その他の略号は上記の定義とと同様である。)
【0019】
本発明で用いる有機溶媒として、イオン性化合物の溶解に適した極性溶媒(比誘電率の高い溶媒)が好ましく、無極性溶媒は好ましくない。水はイオン性化合物の良溶媒であるが、水溶液中のポリピリジニウムが分解反応を受けるので望ましくない。このような溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、ピリジン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、炭酸プロピレン、クロロホルム、塩化メチレン、スルホラン、酢酸、ニトロメタン、ニトロベンゼン等が挙げられる。
【0020】
反応液中の溶解促進剤の濃度は、重合溶媒への溶解度にもよるが、通常0.01mol/L~5.0mol/L程度である。有機溶媒に溶解するアニオン(Y)の濃度も溶解促進剤の濃度と同程度である。
反応液中の重合開始剤の濃度は、通常0.0001mol/L~5.0mol/Lであるが、仕込み比(開始剤に対するモノマーの存在比)に応じて濃度を設定することが好ましい。
反応液中のモノマーの濃度は、仕込み比(開始剤に対するモノマーの存在比)に応じて濃度を設定するが、例えば、0.01mol/L~5.0mol/Lである。
但し、これらの濃度の上限は用いる溶媒における溶解度により制限される。
反応温度は通常0~70℃程度、好ましくは10~70℃程度である。
また、重合速度は重合開始剤とモノマーの濃度の積に比例するため、両者の仕込み濃度に依存し、さらに、重合温度によっても大きく変化する。従って、反応時間は数分から数日かかる場合もある。
【0021】
この反応物を重合停止剤と反応させてポリピリジニウムの重合を停止させてもよい。例えば、上記反応液に重合停止剤を加えてポリピリジニウムの重合を停止させてもよい。
この重合停止剤は、重合に用いたモノマーよりも塩基性の強い求核試薬が対象となる。このような重合停止剤として、例えば、アミノ基、アルコキシ基若しくはアルキル基などの電子供与基で置換したピリジン、キノリン若しくはアクリジン又はこれらの誘導体、トリフェニルホスフィン又はその誘導体、又はアルキル基若しくはアリル基を置換したアミン誘導体などが挙げられる。また、これらの官能基が分子構造の一部に含まれていれば停止剤として機能し、固体表面に固定化した分子に含まれていても構わない。
反応液中の重合停止剤の濃度は、通常0.01mol/L~5mol/Lである。
【0022】
以上の製法により下記一般式(化3)
【化3】
JP0005154797B2_000008t.gif
(式中、R、Z、R’及びmは上記と同様に定義される。oは1~300である。)等で表されるポリピリジニウムが製造される。
【0023】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
合成例1 (モノマーの合成)
4-クロロピリジン塩酸塩(関東化学、5.0 g, 33.0 mmol)を純水 10 mLに溶かし,氷浴下、5.0 wt%炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて中和した。生成した4-クロロピリジンをエーテルで抽出(50 mL×3回)を行い、硫酸マグネシウムで乾燥した。このエーテル溶液を氷浴下で減圧蒸留を行い、無色透明の液体4-クロロピリジン(4-ClPy)を3.44 g(収率 91 %)得た。1H-NMR(DMSO-d6)とFT-IR(KBrペレット)によって同定した。1H-NMRを図2に、FT-IRを図3に示す。
【0024】
合成例2 (重合開始剤の合成)
4-tert-ブチルベンジルブロミド(和光純薬、5.20 g, 23.0 mmol)に合成例1で得た4-ClPy(0.26 g, 2.3 mmol)を徐々に滴下し、室温で5時間撹拌した。析出した黄色固体を濾別し、エーテルで洗浄したのち、エタノールから再結晶を行い、N-(4´-tert-ブチルベンジル)-4-クロロピリジニウム(t-BBPy)を得た。収量0.76 g(収率 97 %)。1H-NMR(DMSO-d6)とFT-IR(KBrペレット)によって同定した。1H-NMRを図4に、FT-IRを図5に示す。
【実施例1】
【0025】
合成例2で得たt-BBPy(3.0 mg, 0.009 mmol)とテトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム(TBABF4、東京化成製、197 mg, 0.598 mmol)を0.1 mLのアセトニトリルに溶解し、合成例1で得た4-ClPy(57 mg, 0.50 mmol)が入った試験管に注ぎ、60℃で30分加熱した。この時点で転化率は80 %に達し、重合は均一系で進行した。室温に放冷後、溶媒を留去した。得られた黄褐色固体をエーテルで洗浄し、室温で真空乾燥した。1H-NMRより、ポリピリジニウムの平均重合度は52と求められた。ポリピリジニウムの構造同定は、1H-NMR(DMSO-d6)によって行った。1H-NMRを図6に示す。
【0026】
この重合体(ポリピリジニウム)がポリカチオンであるため、現在の分析技術では信頼できる分子量を求めることは困難であるが、1H-NMRとゲルクロマトグラフィを用いて以下のような実験事実を得た。
重合体の片方の末端構造は開始剤t-BBPyに由来するので、末端定量法を用いて平均分子量を求めることができる。具体的には、1H-NMRの1.3 ppm付近に現れるt-ブチル基のプロトンと6~10 ppmに現れる重合体ポリピリジニウムのプロトン(モノマー及び重合開始剤のプロトンと区別できる)に注目して、両者の積分値の比より平均分子量を求める。その結果、図7に示すように、モノマーの転化率の増加に伴って、平均分子量の増加が見られた。
【0027】
更に、逆相カラムで保持されない親水性物質の分離分析に適した水・有機溶媒両用GPC充填カラム(昭和電工、Asahipak GF-310 HQ)を用いて重合体のゲルクロマトグラフィを行った。図8に示すように排除限界分子量(40,000)よりも高分子量側に溶出曲線を与えた。既知の分子量をもつポリカチオンの標準物質が存在しないため、正確な分子量と分子量分布を求めるには至らなかったが、分子量分布が狭いことがわかる。
【実施例2】
【0028】
合成例2で得たt-BBPy(1.0 mg, 0.0036 mmol)とTBABF4(東京化成製、79 mg, 0.24 mmol)を0.4 mLのジメチルスルホキシドに溶解し、合成例1で得た4-ClPy(11 mg, 0.10 mmol)が入ったNMR管に加え、40℃で重合し、30分毎にその場測定を行った。図9に4-ClPyの転化率とポリピリジニウムの平均分子量の経時変化を示す。図中、Aは4-ClPyの転化率の経時変化、Bはポリピリジニウムの平均分子量の経時変化を示す。
【0029】
比較例1
重合開始剤(t-BBPy)を用いずに実施例1と同様に反応を行ったところ、図7に示すように測定精度内で重合反応は進行しなかった。
【0030】
比較例2
溶解促進剤(TBABF4)を用いずに実施例1と同様に反応を行った。黄褐色固体が加熱直後より析出し、重合反応は不均一系で進行した。析出した黄褐色固体を濾別し、エーテルで洗浄して乾燥した。1H-NMRからは、ハロゲン化物イオンを対アニオンとするポリカチオンのために低い溶解性と開始剤のない熱重合による広い分子量分布をもつために、平均分子量を求めることはできなかった。
【実施例3】
【0031】
ジメチルスルホキシド中で、開始剤としてN-(4-tert-ブチルベンジル)-4-クロロピリジニウムブロミド(3 mM)、及び溶解促進剤としてテトラブチルアンモニウム テトラフルオロボレート(360 mM)を用いて、4-クロロピリジン(300 mM)を重合させた(モノマーと開始剤の比1対100)。生成物をAと呼ぶ。
比較のため、4-クロロピリジンの重合を無溶媒で重合させた。生成物をBと呼ぶ。
生成した重合物のGPC溶出曲線を測定した(使用機器:日本分光社製GPCポンプ PU-2089、昭和電工製屈折率検出器RI-101、日本分光製UV検出器MD-201、使用カラム:昭和電工製Asahipak GF-310HQx2本)。その結果を図10に示す。
生成物Aとして重合度(重合時間)の異なる2種類の生成物を得たが、それぞれ1H NMRより平均重合度を計算すると、59量体(図10実線)及び34量体(図10点線)であった。
NMRで求めた平均分子量の増加に伴って、GPC曲線の高分子量側(溶出時間の短い領域)が増えていることがわかる。
また、従来型の生成物BのGPC曲線がブロードであり分子量分布が広いのに対し、生成物Aは、GPC曲線が幅がシャープであり分子量分布が狭いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の製法により得たポリピリジニウムは、蓄電機能をもつ電極材料やアニオン伝導を利用した電解質材料、高誘電性を利用したキャパシタ材料、非線形光学材料及び強誘電性材料として主鎖方向に巨大な双極子をもつ共役高分子、表示デバイスとして多段階の酸化還元特性を利用したエレクトロクロミック材料、磁性材料として外場制御型のポリラジカル生成能をもつ共役高分子、殺菌剤等として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】重合開始剤の例を示す図である。図中の記号は一般式(化1及び化2)における定義と同じである。
【図2】実施例で用いたモノマーである4-ClPyの1H-NMRを示す図である。
【図3】実施例で用いたモノマーである4-ClPyのFT-IRを示す図である。Ar-Cl伸縮振動: 1102.1cm-1; C=C環伸縮運動: 1404.4, 1480.6, 1566.9cm-1
【図4】実施例で用いた重合開始剤であるt-BBPyの1H-NMRを示す図である。
【図5】実施例で用いた重合開始剤であるt-BBPyのFT-IRを示す図である。Ar-Cl伸縮振動: 1108.4cm-1; C=C環伸縮運動: 1452.6, 1496.0, 1567.4, 1634.9cm-1; Metyl C-H伸縮運動: 2960.2cm-1
【図6】実施例で合成したポリピリジニウムの1H-NMRを示す図である。
【図7】4-ClPyの重合反応におけるモノマーの転化率と重合体ポリピリジニウムの平均分子量の関係を示す図である。白丸(○)は実施例1(開始剤あり)、黒丸(●)は比較例1(開始剤無し)を示す。
【図8】重合体のゲルクロマトグラフィを示す図である。
【図9】4-ClPyの転化率とポリピリジニウムの平均分子量の経時変化を示す図である。
【図10】重合物のGPC溶出曲線を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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