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明細書 :有機薄膜を有する基板及びそれを用いたトランジスタ並びにそれらの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4904541号 (P4904541)
登録日 平成24年1月20日(2012.1.20)
発行日 平成24年3月28日(2012.3.28)
発明の名称または考案の名称 有機薄膜を有する基板及びそれを用いたトランジスタ並びにそれらの製造方法
国際特許分類 H01L  51/40        (2006.01)
H01L  29/786       (2006.01)
H01L  51/05        (2006.01)
H01L  51/30        (2006.01)
FI H01L 29/28 310E
H01L 29/78 618B
H01L 29/78 618E
H01L 29/28 100A
H01L 29/28 250E
請求項の数または発明の数 14
全頁数 17
出願番号 特願2006-511347 (P2006-511347)
出願日 平成17年3月24日(2005.3.24)
国際出願番号 PCT/JP2005/006199
国際公開番号 WO2005/091377
国際公開日 平成17年9月29日(2005.9.29)
優先権出願番号 2004088077
優先日 平成16年3月24日(2004.3.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年9月22日(2006.9.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】鯉沼 秀臣
【氏名】伊高 健治
【氏名】山城 貢
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査官 【審査官】吉田 安子
参考文献・文献 特開2000-307172(JP,A)
調査した分野 H01L 21/336
H01L 29/786
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 51/40
特許請求の範囲 【請求項1】
絶縁基板上に、バッファー層と有機薄膜とが順次積層され、
上記バッファー層は、上記有機薄膜の2次元成長を促進するペンタセン又はフッ素化ペンタセンからなり、
上記有機薄膜は、Cnフラーレン(ここで、nは60以上の整数)又はルブレンからなり、
上記有機薄膜が平坦に配向されている、有機薄膜を有する基板。
【請求項2】
前記絶縁基板と前記バッファー層との間に、さらにSiO2又はAl23薄膜が挿入されている、請求項1に記載の有機薄膜を有する基板。
【請求項3】
前記絶縁基板は、サファイア基板である、請求項に記載の有機薄膜を有する基板。
【請求項4】
前記サファイア基板の表面が平坦化処理されている、請求項に記載の有機薄膜を有する基板。
【請求項5】
前記バッファー層が分子層単位で積層されている、請求項1に記載の有機薄膜を有する基板。
【請求項6】
前記Cnフラーレンは、C60である、請求項1に記載の有機薄膜を有する基板。
【請求項7】
請求項1~の何れかに記載された有機薄膜を有する基板を備えたトランジスタであって、
前記有機薄膜は、電界効果トランジスタのチャネルとなる、トランジスタ。
【請求項8】
絶縁基板上に、バッファー層と有機薄膜とが順次積層される工程を含み、
上記絶縁基板上に上記有機薄膜の2次元成長を促進するバッファー層となるペンタセン又はフッ素化ペンタセンを堆積し、
上記バッファー層上に有機薄膜となるCnフラーレン(ここで、nは60以上の整数)又はルブレンを堆積し、
上記有機薄膜を平坦に配向する、有機薄膜を有する基板の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁基板と前記バッファー層との間に、さらにSiO2又はAl23薄膜を挿入する、請求項に記載の有機薄膜を有する基板の製造方法。
【請求項10】
前記絶縁基板を、サファイア基板とする、請求項8又は9に記載の有機薄膜を有する基板の製造方法。
【請求項11】
前記サファイア基板の表面を平坦化処理する、請求項10に記載の有機薄膜を有する基板の製造方法。
【請求項12】
前記バッファー層を分子層単位で積層する、請求項に記載の有機薄膜を有する基板の製造方法。
【請求項13】
前記Cnフラーレンを、C60とする、請求項に記載の有機薄膜を有する基板の製造方法。
【請求項14】
請求項13の何れかに記載された有機薄膜を有する基板の製造方法を用いたトランジスタの製造方法であって、
前記有機薄膜を、電界効果トランジスタのチャネルとする、トランジスタの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
本発明は、有機薄膜を有する基板及びそれを用いたトランジスタ並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
近年、有機半導体を用いたデバイスの進歩は目覚しいものがあり、有機半導体薄膜をチャネルとする電界効果トランジスタ(以下、単にFETと呼ぶ)の研究が鋭意進められている。これらのFETは、大部分がp型FETであり、n型FETの報告例は少ない。n型有機半導体として、フラーレン(C60)が注目されている。FETや超格子構造を有するデバイスでは、原子レベルで、組成や膜厚の異なる薄膜を順次形成するために、2次元的な薄膜を作製する必要がある。
しかしながら、従来の無機半導体であるシリコンや化合物半導体と比べると、その製造レベルは非常に低い。
これらの有機半導体薄膜の製造方法の一つとして真空蒸着法が知られており、金属上には、C60薄膜が2次元的に成膜できることが知られている。また、C60などのフラーレン系材料による電界効果トランジスタを製造するためには、金属上ではなくSiや絶縁物基板上に高品質な薄膜を堆積する必要がある。例えば、非特許文献1には、水素で終端したシリコン(Si)基板上へのC60薄膜形成が報告されている。
図16は、文献1(K.Ueno他2名,″Van der Waals Epitaxy on Hydrogen-Terminated Si(III)Surfaces and Investigation of its Growth Mechanism by Atomic Force Microscope″,1995年 Crystal Growth,Vol.150,pp.1180-1185)のSi基板上へ堆積したC60の薄膜のAFM(原子間力顕微鏡)写真であり、(A)がAFM像、(B)がC60薄膜の断面模式図である。なお、AFM像の測定領域は4μm×4μmである。図から明らかなように、2次元成長は得られなく、厚さが約10nm(100Å)で、1~2μmの大きさの柱状結晶がSi基板上に点在し、所謂3次元成長している。
ペンタセンを用いた有機FETの電界効果移動度は、1cm・V-1・s-1程度の値である(例えば、文献2:Y.-Y.Lin 他3名,Stacked Oentacene Layer Organic Thin-Film Transistors with Improved Characteristics″,1997年,IEEE Electr.Device Lett,.Vol.18,No.12,pp.606-608を参照)。この値はアモルファスSiよりも大きい値である。有機FETの場合も半導体によるFETと同様に、電流駆動力を増すために電界効果移動度が大きい材料が望まれている。
最近、下記文献3及び4において、単結晶のルブレン(5,6,11,12-テトラフェニルナフタセン)のa軸及びb軸に沿う電界効果移動度が、それぞれ、4.4cm・V-1・s-1、15.4cm・V-1・s-1という非常に大きな値を有することが報告されている。
文献3:V.C.Sundar 他7名,″Elastometric Transistor Stamps:Reversible Probing of Charge Transport in Organic Crystals″,2004年 Science,Vol.303,pp.1644-1646
文献4:R.W.I.De Boer他 3名″Organic Single-Crystal Field-Effect Transistors″2004年 Phys.Stat.Sol.A,Vol.201,No.6,pp.1302-1331
しかしながら、分子線蒸着装置により通常用いられる石英、コーニングガラスやサファイア基板上にルブレンを堆積してもアモルファス状の薄膜しか得られない。図17は、従来のサファイア基板上に堆積したルブレン薄膜の5×5μmの原子間力顕微鏡像を示す図であり、基板温度が、それぞれ(A)室温、(B)100℃の場合を示している。図から明らかなように、得られたルブレン膜はアモルファス膜であった。
60などのフラーレン系材料による電界効果トランジスタを実用化するためには、金属上ではなく、Siや絶縁物基板上に平坦な2次元成長膜を形成することが強く要求されている。しかしながら、C60薄膜を絶縁基板上に成長させる場合には、柱状成長をし易く、高品質な薄膜が得られていない。
また、従来のルブレン薄膜は、アモルファス膜しか得られず、殆どFET特性などの機能を示さない。さらに、このアモルファス薄膜は非常に酸素と反応しやすいため、真空中では橙色をしていたものが大気に取り出すと透明になる。このように薄膜化が困難であるために、単結晶で非常に大きな電界効果移動度が報告されても、FETの実用化に必要な高品質な薄膜が得られていない。
【発明の開示】
本発明者らは、種々検討の結果、C60やルブレンなどの有機材料とサファイア基板などとの間に、ペンタセンなどの材料からなるバッファー層を挿入することにより、C60やルブレンなどの有機材料を二次元成長できることを見出し、本発明に想到した。
本発明は上記課題に鑑み、C60やルブレンなどの有機薄膜を二次元成長できる、有機薄膜を有する基板を提供することを第1の目的とする。
本発明は、上記有機薄膜基板を用いたトランジスタを提供することを第2の目的とする。
さらに本発明は、上記有機薄膜基板及びこれを用いたトランジスタの製造方法を提供することを第3の目的とする。
上記の第1の目的を達成するため、本発明は、基板上に、バッファー層と有機薄膜とを順次積層した有機薄膜基板であって、バッファー層は有機薄膜の2次元成長を促進し、有機薄膜を平坦に配向させることを特徴とする。
本発明は、基板上に、バッファー層と有機薄膜とを順次積層した有機薄膜基板であって、バッファー層はアセン系芳香族またはその誘導体であり、バッファー層が有機薄膜の2次元成長を促進し、有機薄膜を平坦に配向させることを特徴とする。
本発明は、基板上に、バッファー層と有機薄膜とを順次積層した有機薄膜基板であって、バッファー層はアセン系芳香族またはその誘導体であり、有機薄膜はCフラーレン(ここで、nは60以上の整数)、Cフラーレン誘導体、ルブレンの何れかであり、バッファー層が有機薄膜の2次元成長を促進し、有機薄膜を平坦に配向させることを特徴とする。
上記構成において、好ましくは、基板とバッファー層との間にバッファー層と配向しやすい層が挿入されている。
上記基板は絶縁基板、好ましくはサファイア基板であり、バッファー層は、アセン系芳香族または誘導体、好ましくはペンタセン又はフッ素化ペンタセンであり、有機薄膜はCフラーレン(ここで、nは60以上の整数)、Cフラーレン誘導体、ルブレンの何れかである。好ましくは、サファイア基板の表面は平坦化処理され、ペンタセン又はフッ素化ペンタセンから成るバッファー層が分子層単位で積層されている。
上記構成によれば、C60やルブレンなどの有機薄膜の結晶成長が従来困難であった絶縁性の基板との間に特定の材料からなるバッファー層を挿入することにより、非常に平坦な単分子層単位の薄膜を形成できるため、これを成長させてから有機薄膜を成長させることができる。このため、基板とC60やルブレンなどの有機薄膜との間の歪を緩和させて、C60やルブレンなどの有機薄膜を二次元成長でき、しかも、その結晶粒径を拡大させることができる。これにより、結晶品質の高い有機薄膜が得られ、有機薄膜の移動度などの諸特性が向上した、有機薄膜を有する基板を提供することができる。
上記の第2の目的を達成するため、本発明のトランジスタは、基板上に形成された有機薄膜を備えたトランジスタであって、有機薄膜が、有機薄膜の2次元成長を促進し、有機薄膜を平坦に配向させるバッファー層を介して基板に積層されていることを特徴とする。
本発明のトランジスタは、基板上に形成された有機薄膜を備えたトランジスタであって、有機薄膜が、有機薄膜の2次元成長を促進し、有機薄膜を平坦に配向させるアセン系芳香族またはその誘導体からなるバッファー層を介して上記基板に積層されていることを特徴とする。
本発明のトランジスタは、基板上に形成された有機薄膜を備えたトランジスタであって、有機薄膜が、有機薄膜の2次元成長を促進し、有機薄膜を平坦に配向させるアセン系芳香族またはその誘導体からなるバッファー層を介して上記基板に積層されており、有機薄膜はCフラーレン(ここで、nは60以上の整数)、Cフラーレン誘導体、ルブレンの何れかであることを特徴とする。
上記構成において、好ましくは、基板とバッファー層との間にバッファー層と配向しやすい層が挿入されている。好ましくは、基板はサファイア基板であり、バッファー層はアセン系芳香族または誘導体であり、有機薄膜はCフラーレン(ここで、nは60以上の整数)、Cフラーレン誘導体、ルブレンの何れかである。また、好ましくは、バッファー層はペンタセン又はフッ素化ペンタセン、有機薄膜はC60又はルブレンである。
上記構成によれば、C60やルブレンなどの有機薄膜と基板との間に、特定の材料からなるバッファー層を挿入することにより基板とC60やルブレンなどの有機薄膜との間の歪を緩和して、C60などの有機薄膜を二次元成長でき、その結晶粒径を拡大させることができる。このため、結晶品質の高い有機薄膜が得られる。従って、有機薄膜の移動度が向上することにより性能の高い電界効果トランジスタなどのトランジスタを提供することができる。
さらに、上記の第3の目的を達成するため、本発明の有機薄膜基板の製造方法は、基板上に、バッファー層と有機薄膜とが順次積層される工程を含み、バッファー層が有機薄膜の2次元成長を促進し、有機薄膜を平坦に配向させることを特徴とする。
上記構成において、基板とバッファー層との間にバッファー層と配向しやすい層を挿入してもよい。
好ましくは、基板は絶縁基板、とくにサファイア基板であり、バッファー層はアセン系芳香族または誘導体、好ましくは、ペンタセン又はフッ素化ペンタセンであり、有機薄膜はCフラーレン(ここで、nは60以上の整数)、Cフラーレン誘導体、ルブレンの何れかである。また、好ましくは、サファイア基板の表面は平坦化処理され、ペンタセン又はフッ素化ペンタセンから成るバッファー層が分子層単位で積層されている。この発明によれば、基板上に結晶品質の高い有機薄膜を形成することができる。
また、本発明のトランジスタの製造方法は、基板上に有機薄膜を形成し、この有機薄膜が、有機薄膜の2次元成長を促進し、有機薄膜を平坦に配向させるバッファー層を介して基板に積層されていることを特徴とするものである。
上記構成において、基板とバッファー層との間にバッファー層と配向しやすい層を挿入してもよい。好ましくは、基板は絶縁基板、好ましくはサファイア基板であり、バッファー層はアセン系芳香族または誘導体、好ましくは、ペンタセン又はフッ素化ペンタセンであり、有機薄膜はCフラーレン(ここで、nは60以上の整数)、Cフラーレン誘導体、ルブレンの何れかである。好ましくは、サファイア基板の表面は平坦化処理され、ペンタセン又はフッ素化ペンタセンから成るバッファー層は分子層単位で積層されている。
上記構成によれば、基板上に結晶品質の高い有機薄膜を形成し、この有機薄膜を用いたトランジスタを製造することができる。
本発明によれば、絶縁基板などの表面にバッファー層を介した結晶品質の高い、有機薄膜を有する基板を得ることができる。また、この有機薄膜を用いたトランジスタ並びにそれらの製造方法が提供されることになる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係る第1の実施形態による有機薄膜を有する基板の断面図である。
図2は、本発明に係る第1の実施形態による有機薄膜を有する基板の変形例の断面図である。
図3は、本発明に係る第2の実施形態による有機薄膜を有する基板を用いたトランジスタの構造を模式的に示す断面図である。
図4は、本発明に係る第2の実施形態による有機薄膜を有する基板を用いたトランジスタの変形例の断面図である。
図5は、本発明の有機薄膜を有する基板の製造に用いる分子線蒸着装置の構成を模式的に示す図である。
図6は、実施例1の有機薄膜を有する基板のC60表面を原子間力顕微鏡で観察した写真である。
図7(A),(B)は、それぞれ、実施例2の有機薄膜を有する基板のX線回折結果及びRHEED像を示す図である。
図8は、実施例3のn型電界効果トランジスタのゲート電圧とドレイン電流(Vg-Id)特性を示す図である。
図9は、比較例の有機薄膜を有する基板のC60表面を原子間力顕微鏡で観察した写真である。
図10(A),(B)は、それぞれ、比較例の有機薄膜を有する基板のX線回折結果及びRHEED像を示す図である。
図11は、実施例2及び比較例のC60薄膜の紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
図12(A)は、実施例4の有機薄膜を有する基板の模式的な斜視図、(B)はルブレン薄膜4の原子間力顕微鏡像を示す図である。
図13は、実施例4の有機薄膜を有する基板のX線回折結果を示す図であり、(A)がバッファー層がない場合、(B)及び(C)が、1分子層のペンタセンバッファー層を挿入した場合で、基板温度が、それぞれ、室温及び100℃の場合を示している。
図14は、実施例4の1分子層のペンタセンバッファー層上のルブレン薄膜において、(A)が表面の原子間力顕微鏡像を示す写真である、(B)が表面の高さ分布を示す図である。
図15は、実施例5の電界効果トランジスタのゲート電圧とドレイン電流(Vg-Id)特性を示す図である。
図16は、Si基板上へ堆積した従来のC60薄膜のAFM(原子間力顕微鏡)写真であり、(A)がAFM像、(B)がC60薄膜の断面模式図である。
図17は、従来のサファイア基板上に堆積したルブレン薄膜の5×5μmの原子間力顕微鏡像を示す図であり、基板温度が、それぞれ(A)室温、(B)100℃の場合を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は以下の詳細な説明及び本発明の幾つかの実施の形態を示す添付図面によって、よりよく理解されるものとなろう。なお、添付図面に示す実施例は本発明を特定又は限定するものではなく、本発明の趣旨の説明及び理解を容易とするためだけのものである。
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
第1の実施の形態
初めに本発明の第1の実施の形態による有機薄膜を有する基板について説明する。
図1は、本発明に係る第1の実施形態による有機薄膜を有する基板の断面図である。図1に示すように、本発明の有機薄膜を有する基板1は、基板2上に、第1の有機材料から成るバッファー層3と、第2の有機材料としてC60などの有機薄膜4と、が順次積層されている構造を有している。
このバッファー層3は有機薄膜4を配向させる機能を有している。このため、従来、膜状ではない柱状結晶やアモルファス薄膜しか得られなかった有機材料において、結晶からなる有機薄膜4を、基板1上に成長させることができる。
ここで、基板2は、六方晶系のサファイア基板、ガラス基板、石英基板及びポリイミドのような有機材料が配向しやすい基板であれば何でもよい。そして、基板2の表面は可能な限り平坦な基板を使用することが望ましいが、基板2の表面荒さがバッファー層3となる材料の分子層程度以下とすることが好適である。例えば、上記バッファー層3が後述するペンタセン薄膜3の場合、表面粗さが約15Å程度の基板であれば、本発明の手法が適用可能である。また、基板2の上にデバイス構造を形成するのに必要な他の金属や絶縁体の薄膜を積層した基板に成膜を行う場合でも、同様の面粗さが局所的に満たされていればよい。
また、バッファー層3は、三斜晶系のペンタセン又はフッ素化ペンタセンをはじめとするアセン系有機材料とその誘導体を用いることができる。
また、有機薄膜4は、Cフラーレン(ここで、nは60以上の整数)、Cフラーレン誘導体、ルブレン(5,6,11,12-テトラフェニルナフタセン)の何れかを用いることができる。Cフラーレンとしては、六方晶系のC60のほかに、C70,C120などを用いることができる。
図2は、本発明に係る第1の実施形態による有機薄膜を有する基板の変形例の断面図である。図2に示すように、本発明の有機薄膜を有する基板10が、図1の有機薄膜を有する基板1の構造と異なるのは、基板2とバッファー層3との間に、さらに、基板2及び/又はバッファー層3と配向しやすい層5が挿入されている点である。この基板2及び/又はバッファー層3と配向しやすい層5は、絶縁層を用いることができる。ここで、絶縁層5は、基板2上に堆積したSiOやAl薄膜などでもよい。
このようにして、本発明の有機薄膜を有する基板1,10においては、バッファー層3の厚さを1分子層から10分子層程度挿入することにより、C60やルブレンなどの有機薄膜4自体の配向性をよくすることができ、また、有機薄膜4と基板2との格子歪が緩和できる。なお、本発明においては、上記の1分子層から10分子層程度のバッファー層3の膜厚を分子層単位のバッファー層3と呼ぶ。
ここで、バッファー層3の挿入により有機薄膜4の2次元成長が得られ易くなる理由について説明する。ペンタセン又はフッ素化ペンタセン薄膜から成るバッファー層3及びC60薄膜4の場合について推察する。ペンタセン自体は、π電子がベンゼン環に垂直に飛び出しており、それらの方向が重要となる。一般に有機薄膜のπ電子は、金属には配向の相性がよいが、絶縁物とは反発し易い。しかしながら、ペンタセン又はフッ素化ペンタセン薄膜3が基板2に堆積した後には、ペンタセン薄膜3のπ電子が歪んでいると推定される。このため、ペンタセン薄膜3上にC60を堆積した場合には、C60の2次元成長が得られ易くなると考えられる。これにより、バッファー層3の挿入によってC60などの有機薄膜4の2次元成長が促進され、著しく平坦性が改善された有機薄膜4を有する基板1,10が得られる。
第2の実施の形態
次に、本発明の有機薄膜を有する基板を用いたトランジスタに係る第2の実施形態を説明する。
図3は、本発明に係る第2の実施形態による有機薄膜を有する基板を用いたトランジスタの構造を模式的に示す断面図である。トランジスタとして、電界効果トランジスタの場合を示している。図に示すように、電界効果トランジスタ20は、絶縁性の基板25上に、バッファー層3と有機薄膜4とが順次積層され、有機薄膜4上にゲート絶縁膜21が堆積された構造を有している。そして、ゲート絶縁膜21上にはゲート電極22が、チャネルとなる有機薄膜4上には、ソース電極23及びドレイン電極24が配設されている。
図4は、本発明に係る第2の実施形態による有機薄膜を有する基板を用いたトランジスタの変形例の断面図である。トランジスタは電界効果トランジスタの場合を示している。図に示すように、電界効果トランジスタ30は、ゲート電極22とゲート絶縁膜21が堆積された基板25上に、バッファー層3と有機薄膜4とが順次積層された構造を有し、ゲート絶縁膜21内にゲート電極22が、チャネルとなる有機薄膜4上には、ソース電極23及びドレイン電極24が、それぞれ配設されている。最上層には、保護膜26が堆積されていてもよい。
なお、ゲート電極22、ソース電極23及びドレイン電極24は、図示しない領域で、ボンディング領域が形成されている。
ゲート絶縁膜21の材料としては、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、窒化シリコン、誘電性ポリマーなどの酸化物、硫化物、有機物などを用いることができる。これらの材料のうちで、特に、リーク電流が少なく、絶縁破壊電圧が高く、誘電率の大きい材料が、電界を印加し易いという点で好ましい。
また、ゲート電極22の材料としては、アルミニウム(Al)、金(Au)又はこれらの材料を添加したシリコン(Si)などを用いることができる。有機薄膜4の仕事関数やFETの動作方法によって、これらの材料の適切なものを用いればよい。また、ソース電極23及びドレイン電極24の材料としては、アルミニウムや金などが挙げられる。これらの材料は電気伝導度が高く、有機薄膜4との仕事関数の整合性がよいものを選択するのが好ましいが、FETの目的とする出力によって選択すればよい。さらに、保護膜26の材料としては、アルミナや窒化シリコンのような絶縁物などが挙げられる。
また、上記有機薄膜を有する基板を用いたトランジスタ20,30の各層は、蒸着法、分子線エピタキシー法、高周波スパッタ法などの各種薄膜堆積法やフォトリソグラフィー法やシャドーマスクなどを用いて製造することができる。
本発明の有機薄膜を有する基板を用いたトランジスタ20,30においては、そのチャネルとなる有機薄膜4がバッファー層3上に形成されているため、その結晶品質が高い。このため、有機薄膜4の電界移動度が向上し、非常に大きな相互コンダクタンス(g)が得られることになる。これにより、本発明のトランジスタ20,30によれば、性能の高いトランジスタが得られる。
第3の実施の形態
次に、本発明の有機薄膜を有する基板の製造方法に係る第3の実施形態を説明する。
本発明の有機薄膜を有する基板1は、基板2上に分子層単位でバッファー層3の厚みを制御できる薄膜堆積法によりバッファー層3を堆積し、次に、バッファー層3上に、六方晶系のC60薄膜4などを所望の厚さに堆積することにより製造されることができる。
また、本発明の有機薄膜を有する基板10は、基板2上にSiOなどの絶縁膜5を堆積し、次に、絶縁膜5上に分子層単位でバッファー層3の厚みを制御できる薄膜堆積法によりバッファー層3を堆積し、最後に、バッファー層3上に、C60薄膜4を所望の厚さに堆積することにより製造することができる。ここで、基板2に予めSiOなどの絶縁膜5を堆積しておいて、バッファー層3及びC60薄膜4だけを連続的に堆積してもよい。
上記の薄膜堆積方法としては、基板上に分子層単位で少なくともバッファー層3の厚みを制御できる薄膜堆積法であれば、どの方法を用いて製造してもよい。もちろん、バッファー層3と共に、C60薄膜4の厚みを分子層単位で制御してもよい。このような、薄膜堆積方法としては、各種真空蒸着法、真空蒸着法の一種である分子線蒸着法及びレーザーアプレーション法等が挙げられる。
上記堆積法に用いることができる堆積装置の一例を示す。
図5は、本発明の有機薄膜を有する基板の製造に用いる分子線蒸着装置の構成を模式的に示す図である。分子線蒸着装置40は、超高真空チャンバ41内に、基板42を保持するホルダー43と、ヒーターなどの基板加熱手段45とが設けられ、さらに、超高真空チャンバ41の下部に、バッファー層3及び有機薄膜4の蒸発源としての分子線源るつぼ44(44A,44B)及びルツボ加熱用電源44Cが配設されている。
超高真空チャンバ41は、真空排気装置46により排気される。分子線源るつぼ44は、所謂クヌーセンセルであり、るつぼ44の中に入れた個別の蒸発源を加熱して蒸発させる。出てくる蒸気を分子線の形で加熱されている基板42に当て、基板42上に、バッファー層3及び有機薄膜4を堆積させる。分子線源るつぼ44の上部には、シャッタ47が設けられ、基板42への分子線の照射の有無を制御している。
また、超高真空チャンバ41には、堆積させるバッファー層3及び有機薄膜4の膜厚を測定するための膜厚測定手段48が配設されている。この膜厚測定手段48は、堆積させる層の膜厚を分子層単位で制御するために、分解層単位の分解能を備えていればよく、水晶振動子膜厚計や光反射による膜厚計などを用いることができる。
さらに、超高真空チャンバ41には、基板への堆積膜厚など基板面内で変化さるためのマスク機構49が備えられてよい。このマスク機構49は、1回の成膜で、基板42へ堆積させる薄膜の面内厚さを連続的に変化させることができる、所謂コンビナトリアルマスクが好適である。
上述した実施形態においては、本発明による有機薄膜を有する基板、それを用いたトランジスタ、有機薄膜を有する基板の製造方法について説明した。
上記有機薄膜を有する基板に、さらに、トランジスタ構造に必要なゲート絶縁膜や電極は、ゲート絶縁膜や電極層を各種の堆積方法で行い、さらにマスク工程などを用いることによりトランジスタを製造することができる。また、同一基板上に電界効果トランジスタから成る集積回路を製造することもできる。
【実施例1】
実施例1として、表面が[1120]面のサファイア基板2上に、ペンタセン薄膜を用いたバッファー層3とC60薄膜4とを堆積した有機薄膜を有する基板1を製造した。
最初に、サファイヤ基板2を大気中において、1000℃で3時間及び750℃で3時間のアニール処理を施し、原子レベルで平坦なステップテラス構造を有する表面とした。このサファイア基板2を5×10-8Torrよりも高い真空度にした分子線蒸着装置40(図5参照)内に設置した。また、ルツボ44A及び44Bの蒸着源としては、それぞれ、ペンタセン及びC60を用いた。
次に、サファイア基板2の温度を室温とし、ルツボ44Aの温度を200℃~300℃に設定し、ルツボ44A内のペンタセンを蒸発させて、1分子層(約15Å)のペンタセンから成るバッファー層3をサファイア基板2上に堆積した。このときのペンタセン薄膜4の成膜速度は、3~4Å/分であった。次に、サファイア基板2の温度を150℃に設定した後、ルツボ44Bの温度を300℃~400℃に設定し、ルツボ44B内のC60を蒸発させて、膜厚約150Å(約20分子層)のC60薄膜4をバッファー層3上に堆積した。このときのC60薄膜4の成膜速度は5Å/分であった。
上記有機薄膜を有する基板1の表面を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。図6は、実施例1の有機薄膜を有する基板1のC60表面を原子間力顕微鏡で観察した写真である。ここで、観察範囲は1μm×1μmである。図から明らかなように、後述するバッファー層3のない比較例においては多数の結晶粒界が観察されるのに対して、実施例1のC60薄膜4においては結晶粒径が著しく増大し、さらに、ファセット面が観察され、2次元成長が得られていることが分かった。そして、実施例1の基板1は、その平坦性及び結晶性が高く、電界効果トランジスタなどのデバイス化ができた。
ここで、上記有機薄膜を有する基板1の各格子定数について説明する。
サファイア基板2は六方晶系であり、その格子定数は、a=4.765Å,c=13.001Åである(文献5:信光社カタログ、2002年、http://www.shinkosha.com/products/rutile/nm04.htmlを参照)。また、バッファー層3のペンタセンは三斜晶系であり、その薄膜の格子定数はバルクとは異なり、a=6.11Å,b=7.61Å,c=15.33Åである(文献6:J.S.Wu他1名″Electron diffraction of thin-film pentacene″2004年 J.Appl.Cryst.,Vol.37,p.78参照)。さらに、実施例1のC60薄膜4は六方晶系であり、その格子定数は実測したところ、a=10.08Å,c=16.31Åであった。また、C60薄膜の格子定数は、例えば、a=10.02Å,c=16.36Åと報告されている(文献7:「化学」化学同人社発行、1991年12月、Vol.46,p.857を参照)。
【実施例2】
60薄膜4をコンビナトリアルマスクにより、その膜厚を面内で変化させた以外は、実施例1と同様にして基板1を製造した。ペンタセン薄膜のバッファー層3の厚みは1分子層であり、C60薄膜4の膜厚は面内で、ほぼ0~500Åの厚み傾斜分布が得られた。
図7(A),(B)は、それぞれ実施例2の有機薄膜を有する基板1のX線回折結果及びRHEED像を示す図である。図7(A)の横軸は角度2θ(度)を示し、縦軸は回折X線強度(任意目盛り)を示している。ここで、C60薄膜4の膜厚は500Åである。図から明らかなように、各回折面からの強度の強い回折が得られた(図6の(002)面など参照)。同様に、図7(B)に示すRHEED像からも明瞭な電子線回折像(白い線状部分)が得られた。これによりC60薄膜4の結晶品質が優れていることが分かった。
実施例2で得られた有機薄膜4において、C60の膜厚が異なる種々の有機薄膜4の結晶粒径及び移動度を測定した。その結果、C60薄膜4の結晶粒径が大きくなるにつれて、移動度が増大することが分かった。
【実施例3】
60薄膜4をチャネルとする電界効果トランジスタ30を製造した(図4参照)。平坦化したサファイア基板2上に、真空蒸着法を用いてゲート電極22となるアルミニウムを200~400Å蒸着し、引き続き、RFマグネトロンスパッタ法によりゲート絶縁膜21となる酸化アルミニウムを約2000Å堆積した。次に、実施例1と同様の方法で、酸化アルミニウムから成るゲート絶縁膜21上に、1分子層から3分子層程度のフッ素化ペンタセンバッファー層3と約500ÅのC60薄膜4とを順次堆積した。堆積には、クヌーセンセルを有する分子線蒸着装置40を使用した。次に、ソース電極23及びドレイン電極24として、マグネシウム(Mg)を、パルスレーザー堆積法を用いて堆積した。この際、メタルシャドーマスクを用いて素子形成を行った。最後に、素子最上層に保護膜26となるアルミナ薄膜を約5000Å堆積し、実施例3のn型電界効果トランジスタ30を製造した。
この実施例3のn型電界効果トランジスタのチャネルの電界移動度は、0.01~0.1cm・V-1・s-1であった。
図8は、実施例3のn型電界効果トランジスタのゲート電圧とドレイン電流(Vg-Id)特性を示す図である。図において、横軸はゲート電圧(V)、縦軸はドレイン電流(A)を示している。ドレイン電圧は60Vである。
図から明らかなように、ゲート電極22に対して、約-20~60Vのゲート電圧Vgを印加すると、Vg>20Vでは、Vgの変化に対応して、ドレイン電流Idが変化していることが確認でき、所謂エンハンスメント型のIV特性が得られた。
比較例
比較例として、実施例1においてバッファー層3を挿入しない基板、即ちサファイア基板2上に直接C60薄膜4を設けた有機薄膜を有する基板を、実施例1と同様に製造した。C60薄膜の厚さは、約150Åであった。
図9は、比較例のC60表面を原子間力顕微鏡で観察した写真である。ここで、観察範囲は1μm×1μmである。図から明らかなように、多数の結晶粒界が観察され、2次元成長ではなく従来の3次元成長であることが分かる。この比較例は、非常に深い結晶粒界が存在し、その後で、電界効果トランジスタなどのデバイス化が困難であった。
また、図10(A),(B)は、それぞれ比較例の有機薄膜を有する基板のX線回折結果及びRHEED像を示す図である。図10(A)の横軸は角度2θ(度)を示し、縦軸は回折X線強度(任意目盛り)を示している。ここで、C60薄膜の膜厚は500Åである。図から明らかなように、殆どX線回折が得られなかった。また、図10(B)のRHEED像においても、明瞭な電子線回折像が得られなかった。これにより比較例のC60薄膜の結晶性が悪いことが分かった。
次に、実施例2及び比較例のC60薄膜の紫外可視吸収スペクトルについて対比した。
図11は、実施例2及び比較例のC60薄膜の紫外可視吸収スペクトルを示す図である。図の縦軸は吸光度(任意目盛り)を示し、横軸は波長(nm)を示している。ここで、実施例2及び比較例のC60薄膜の膜厚は何れも500Åである。図から明らかなように、比較例に対して実施例2では強度の強い明暸な吸収が生じた。特に、実施例2では220nmの吸収ピークが観測されるのに対して、比較例では観測されなかった。これにより、実施例2のC60薄膜4の結晶品質が高いことが明らかになった。
【実施例4】
実施例4として、有機薄膜をルブレンとした以外は、実施例1と同じ方法で、[1120]面のサファイア基板2上に、ペンタセン薄膜を用いたバッファー層3とルブレン薄膜4とを堆積した基板1を製造した。原子レベルで平坦なステップテラス構造を有する表面処理を施したサファイア基板2を1×10-9Torr(約1×10-7Pa)の真空度にした分子線蒸着装置4内に設置した。また、ルツボ44A及び44Bの蒸着源としては、それぞれ、ペンタセン及びルブレンを用いた。
次に、ペンタセンを蒸発させて、コンビナトリアル法によりその膜厚を0~1分子層(約15Å)の膜厚分布となるように、ペンタセンから成るバッファー層3をサファイア基板2上に堆積した。このときのペンタセン薄膜3の成膜速度は、3~4Å/分であった。次に、サファイア基板2の温度を室温又は100℃に設定した後、ルツボ44Bの温度を300℃~400℃に設定し、ルツボ44B内のルブレンを蒸発させて、平均膜厚として、約230Å(約9分子層)のルブレン薄膜4をバッファー層3上に堆積した。このときのルブレン薄膜4の成膜速度は、6~18Å(0.6~1.8nm)/分であった。
図12(A)は実施例4の有機薄膜を有する基板1の模式的な斜視図、(B)はルブレン薄膜4の原子間力顕微鏡像を示す図である。図12(A)に示すように、ペンタセンバッファー層3は、左側より右側に行くにしたがって厚さが厚くなり、右端側(d)の厚さが1分子層となっている。原子間力顕微鏡による測定は、図12(A)の(a)~(d)の領域で行い、観察範囲は5μm×5μmである。その結果を、それぞれ図12(B)の(i)~(iv)に示している。
図12(B)から明らかなように、(i)~(iv)とペンタセンバッファー層3が厚くなると共に、ルブレンの成長様式が大きく変化することが分かった。図12(B)(iv)に示すように、基板2がペンタセンのバッファー層3により、その厚さが1分子層で覆われることによって、ルブレン薄膜4の結晶粒径が著しく増大し、平坦性が著しく増大しファセット面が観察され、2次元成長が得られていることが分かった。
図13は、実施例4の有機薄膜を有する基板1のX線回折結果を示す図であり、(A)がバッファー層がない場合、(B)及び(C)が、1分子層のペンタセンバッファー層3を挿入した場合で、基板温度が、それぞれ、室温及び100℃の場合を示している。図の横軸は角度2θ(度)を示し、縦軸は回折X線強度(任意目盛り)を示している。ここで、ルブレン薄膜4の膜厚は、50nm(500Å)である。
図から明らかなように、1分子層のペンタセンバッファー層3を挿入した場合には、各回折面からの強度の強い回折が得られた(図13の黒丸(●)参照)。これに対して、バッファー層がない場合にはルブレンからの回折は観測されず、基板2からの回折しか観測されなかった。
図14は、実施例4の1分子層のペンタセンバッファー層3上のルブレン薄膜4において、(A)が表面の原子間力顕微鏡像を示す写真である、(B)が表面の高さ分布を示す図である。ここで、観察範囲は2μm×2μmである。図14(B)において、縦軸は厚さ(nm)を示し、横軸は距離(nm)を示している。
図14(A)から明らかなように、実施例4のルブレン薄膜4においては結晶粒径が0.1~0.5μmと著しく増大し、2次元成長が得られていることが分かった。そして、その断面の形状測定からは、ステップが約1.3nmであることが分かり、ルブレン薄膜4がc軸方向に配向していることが判明した。
以上のことから、サファイア基板2上に1分子層のペンタセンバッファー層3を設け、その表面に結晶性のあるルブレン薄膜4を形成することができた。さらに、このルブレン薄膜4は平坦性及び結晶性が高く、電界効果トランジスタなどのデバイス化ができた。
【実施例5】
実施例5として、p型ルブレン薄膜4をチャネルとする電界効果トランジスタ30を製造した(図4参照)。この電界効果トランジスタ30は、ゲート電極22を膜厚30nmのAlとし、ゲート絶縁膜21を300nmの酸化アルミニウムとし、さらに、ソース電極23及びドレイン電極24として、膜厚10nmのNiと30nmのAuを順に堆積した以外は、実施例3と同様にして製造した。
具体的には、実施例3と同じ表面処理を施したサファイア基板22上に、ゲート電極22及びゲート絶縁膜21を形成した後に、2nmのペンタセンバッファー層3を堆積し、チャンネルとなる膜厚50nmのルブレン薄膜4を成長した。この表面にソース電極23及びドレイン電極24を形成し、最後に、素子最上層に保護膜26となるアルミナ薄膜を堆積し、実施例5の電界効果トランジスタ30を製造した。
この実施例5の電界効果トランジスタのチャネルの電界移動度は、0.05cm・V-1・s-1であった。
図15は実施例5の電界効果トランジスタのゲート電圧とドレイン電流(Vg-Id)特性を示す図である。図において、横軸はゲート電圧(V)、縦軸はドレイン電流(A)を示している。図において、ドレイン電圧は70Vである。
図から明らかなように、ゲート電極22に対して、約-70~70Vのゲート電圧Vgを印加すると、Vg<40Vでは、Vgの低下に対応して、ドレイン電流Idが増大するIV特性が得られた。
本発明は、上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。例えば、上記実施の形態で説明したトランジスタは電界効果トランジスタに限らず、他のトランジスタにも適用し得ることは勿論である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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