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明細書 :心機能抑制性/降圧性新規内因性生理活性ペプチド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4426575号 (P4426575)
登録日 平成21年12月18日(2009.12.18)
発行日 平成22年3月3日(2010.3.3)
発明の名称または考案の名称 心機能抑制性/降圧性新規内因性生理活性ペプチド
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
C07K  16/18        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P   9/00        (2006.01)
A61P   9/12        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/00 101
C07K 14/47
C07K 16/18
C07K 19/00
A61K 37/02
A61P 9/00
A61P 9/12
G01N 33/50 Z
G01N 33/15 Z
請求項の数または発明の数 14
全頁数 14
出願番号 特願2006-511849 (P2006-511849)
出願日 平成17年4月1日(2005.4.1)
国際出願番号 PCT/JP2005/006510
国際公開番号 WO2005/095609
国際公開日 平成17年10月13日(2005.10.13)
優先権出願番号 2004110463
優先日 平成16年4月2日(2004.4.2)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年2月6日(2007.2.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】七里 眞義
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】冨士 良宏
参考文献・文献 国際公開第01/032875(WO,A1)
SHICHIRI M. ET AL.,'SAlusins: newly identified bioactie peptides with hemodynamic and mitogenic activities.',NATURE MEDICINE,2003年 9月,vol. 9, no. 9,pages 1166 - 1172
YU F. ET AL.,'Salusins promote cardiomycocyte growth bus does not affect cardiac function in rats.',REGULATORY PEPTIDES,2004年11月,vol. 122, no. 3,pages 191 - 197
IZUMIYAMA H. ET AL.,'Synthetic salusins as cardiac depressors in rat.',HYPERTENSION,2005年 3月,vol. 45, no. 3,pages 419 - 425
調査した分野 C12N 15/00-90
A61K 38/00
A61P 9/00,9/12
C07K 14/47,16/18,19/00
C12N 1/15,1/19,1/21,5/10
G01N 33/15,33/50,33/566
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/PIR/GeneSeq
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
CAplus(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(A)~(C)の何れかのアミノ酸配列からなるペプチド。
(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列;
(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1~5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ該アミノ酸配列からなるペプチドが心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列;
(C)配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列であって、かつ該アミノ酸配列からなるペプチドが心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列;
【請求項2】
以下の(A)及び(B)のアミノ酸配列からなるペプチドがプロセシング酵素による切断・修飾を受けることによって生成され、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチド。
(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列;
(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1~5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ該アミノ酸配列からなるペプチドが心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列;
【請求項3】
以下の(A)~(F)の何れかの塩基配列からなるDNA。
(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードする塩基配列;
(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1~5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドをコードする塩基配列;
(C)配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドをコードする塩基配列;
(D)配列番号1に示される塩基配列;
(E)配列番号1に示される塩基配列において、1~5個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドをコードする塩基配列;
(F)配列番号1に示される塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドをコードする塩基配列;
【請求項4】
以下の(A)及び(B)のアミノ酸配列からなるペプチドがプロセシング酵素による切断・修飾を受けることによって生成され、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドをコードする塩基配列からなるDNA。
(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列;
(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1~5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ該アミノ酸配列からなるペプチドが心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列;
【請求項5】
請求項1又は2記載のペプチドとマーカータンパク質及び/又はペプチドタグとが結合している融合ペプチド。
【請求項6】
請求項3記載のDNAを含み、かつ請求項1記載のペプチドを発現することができる組換えベクター。
【請求項7】
請求項4記載のDNAを含み、かつ請求項2記載のペプチドを発現することができる組換えベクター。
【請求項8】
請求項6記載の組換えベクターが導入され、かつ請求項1記載のペプチドを発現する形質転換体。
【請求項9】
請求項7記載の組換えベクターが導入され、かつ請求項2記載のペプチドを発現する形質転換体。
【請求項10】
請求項1又は2記載のペプチドを特異的に認識することができる抗体。
【請求項11】
モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項10記載の抗体。
【請求項12】
請求項1又は2記載のペプチドと被検物質を被験非ヒト動物に投与し、心機能抑制活性又は血圧降下活性の程度を測定・評価することを特徴とする心機能抑制因子又は降圧因子のスクリーニング方法。
【請求項13】
請求項1又は2記載のペプチドと被検物質を被験非ヒト動物に投与し、心機能抑制活性又は血圧降下活性の程度を測定・評価することを特徴とする心機能抑制活性の阻害物質又は降圧活性の阻害物質のスクリーニング方法。
【請求項14】
請求項1又は2記載のペプチドを有効成分として含有する心機能抑制/降圧剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な心機能抑制性/降圧性内因性生理活性ペプチド、該ペプチドをコードするDNA、該ペプチドに対する抗体、該ペプチドを有効成分とする心機能抑制/降圧剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、バイオインフォマティクス解析を応用する手法により、生理活性因子であるサリューシン-α(salusin-a)及びサリューシン-β(salusin-b)を見い出した。サリューシン-α、βは捻転ジストニーの原因遺伝子(Torsin family)の関連遺伝子(TOR2A遺伝子)の選択的スプライシングの結果、エクソン4が抜けることによるフレイムシフト(frame shift)によって発現するプレプロサリューシン(preprosalusin PSEC0218, HEMBA1005096, AK075520)がプロセッシングされて形成される、それぞれ配列番号3に示される28アミノ酸及び配列番号4に示される20アミノ酸の関連ペプチドである(例えば、非特許文献1参照)。そして、合成サリューシン-α,βのラットでの血行動態及び大動脈での血管作用を検討した。すなわち、SDラット(250~300g)をペントバルビタール麻酔下に大腿動静脈をカニュレーションしたのち大腿静脈より合成サリューシン-α及びβを静注した後、血圧、心拍数の経時的変化を解析した。また、ラット大動脈摘出標本を用いてフェニレフリン前処置で収縮させて、サリューシン-α,βの血管トーヌスへの作用について検討した。
【0003】
その結果、サリューシン-α,β共に静脈内投与後1分で急激な血圧低下を示し、その後10分から15分後に正常レベルまで回復するという一過性降圧作用を示し、並行して心拍数の減少を示した。サリューシン-α(1~10nmol/kg),サリューシン-β(0.1~1nmol/kg)による降圧及び心拍数低下作用は用量反応性を示し、サリューシン-βがサリューシン-αに比し約10倍強力であった。しかしラットへのNO合成阻害剤L-NAMEの前投与はサリューシンの降圧作用に影響しなかった。また摘出ラット大動脈標本を用いた検討では、インタクト及び内皮剥離した標本あるいはフェニレフリン前処置で収縮させた標本のいずれに対しても、サリューシン-α,βの血管トーヌスへの直接作用は認められなかった。このことに加えて、内因性ペプチド、サリューシン(α,β)は強力な降圧作用に並行して心拍数の減少を示すことから、新たな降圧作用をもつ生理活性ペプチドであることが示されている。
【0004】
その他、アデノシンが心拍数をゆっくりにすること(陰性変時性効果)及びAV結節を通ったインパルス伝導をゆっくりにすること(陰性変伝導効果)を有することが知られている(例えば、特許文献1、非特許文献2参照)。また、N6-置換-5’-(N-置換)カルボキサミドアデノシンのクラスに属する特定のアデノシンA1アゴニストの、哺乳動物における心臓 調律障害の処置における使用、およびこの新たな使用を実施するための新規な投薬量形態も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】

【特許文献1】米国特許第4,673,563号明細書
【特許文献2】特表2003-514863号公報
【非特許文献1】Nat Med 9:1166-72,2003
【非特許文献2】Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 271:1371,1994
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、心収縮力の抑制により強力な降圧活性を有する新規ペプチドや、該ペプチドをコードするDNA、該ペプチドに対する抗体、該ペプチドを有効成分とする心機能抑制/降圧剤等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述のように本発明者らは最近、ヒト分泌性蛋白cDNAライブラリーのバイオインフォマティクス解析を応用して、ヒト由来遺伝子産物のうちプロセシングを受けた際にフレイムシフトによってのみ生合成されると推測されるペプチドの機能を検討することにより新規多機能性生理活性因子を同定し、サリューシン-α及びサリューシン-βと命名した(非特許文献1参照)。この選択的スプライシングは多くのヒト主要臓器において認められるものの、産生されるmRNAは主たるmRNA産物の一部であり、ヒト血液中濃度はかならずしも高くはなく、どのような役割を果たしているか詳細は不明である。またプレプロサリューシン遺伝子配列の検索から、選択的スプライシングによらないTOR2A mRNAが存在することを推定した。そこで、TOR2AmRNAそのものから翻訳され、プロセッシングによって生合成されるペプチドの存在が推測されるため検討した。その結果、ヒト各種臓器に遙かに多量に発現する強力な生理活性を有するペプチドホルモンを発見した。このペプチドは24アミノ酸からなる分子量2664.02の疎水性のペプチドで、ラット心に陰性変力作用(negative inotropism)を示すと同時に、著明な血圧降下活性を示し、種々のヒト臓器、ヒト由来細胞に発現するほか、ラット及びヒトでは1アミノ酸のみ異なるホモロジーの高い同様の機能を示すペプチドも発現することを確認した。
【0008】
すなわち、上記本発明のペプチドがサリューシン-α及びサリューシン-βと同様にヒト各種の臓器において産生される内因性降圧因子でありながら、両サリューシンよりも多量に発現、産生される点で、より有用性の高い内因性因子であると考えられる。これらサリューシンとは配列が異なる本発明のペプチドを、麻酔下ラットに経静脈的に投与すると、著明な大動脈圧の低下(図1)、脈拍数の低下、大動脈血流量の低下をきたし、陰性変力作用(図2)、陰性変時作用を示す最も強力な内因性ペプチドであることが明らかになった。ラット摘出灌流心モデルにおける灌流実験では、心臓に直接作用して強力な心収縮力の低下をきたすこともわかった。本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち本発明は、(1)(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列;(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1~5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ該アミノ酸配列からなるペプチドが心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列;(C)配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列であって、かつ該アミノ酸配列からなるペプチドが心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列;の何れかのアミノ酸配列からなるペプチドや、(2)(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列;(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1~5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ該アミノ酸配列からなるペプチドが心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列;のアミノ酸配列からなるペプチドがプロセシング酵素による切断・修飾を受けることによって生成され、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドに関する。
【0010】
また本発明は、(3)(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードする塩基配列;(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1~5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドをコードする塩基配列;(C)配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドをコードする塩基配列;(D)配列番号1に示される塩基配列;(E)配列番号1に示される塩基配列において、1~5個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドをコードする塩基配列;(F)配列番号1に示される塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドをコードする塩基配列;の何れかの塩基配列からなるDNAや、(4)(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列;(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1~5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ該アミノ酸配列からなるペプチドが心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列;のアミノ酸配列からなるペプチドがプロセシング酵素による切断・修飾を受けることによって生成され、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドをコードする塩基配列からなるDNAに関する。
【0011】
さらに本発明は、(5)上記(1)又は(2)記載のペプチドとマーカータンパク質及び/又はペプチドタグとが結合している融合ペプチドや、(6)上記(3)のDNAを含み、かつ上記(1)記載のペプチドを発現することができる組換えベクターや、(7)上記(4)記載のDNAを含み、かつ上記(2)記載のペプチドを発現することができる組換えベクターや、(8)上記(6)記載の組換えベクターが導入され、かつ上記(1)記載のペプチドを発現する形質転換体や、(9)上記(7)記載の組換えベクターが導入され、かつ上記(2)記載のペプチドを発現する形質転換体や、(10)上記(1)又は(2)記載のペプチドを特異的に認識することができる抗体や、(11)モノクローナル抗体であることを特徴とする上記(10)記載の抗体や、(12)上記(1)又は(2)記載のペプチドと被検物質を被験非ヒト動物に投与し、心機能抑制活性又は血圧降下活性の程度を測定・評価することを特徴とする心機能抑制因子又は降圧因子のスクリーニング方法や、(13)上記(1)又は(2)記載のペプチドと被検物質を被験非ヒト動物に投与し、心機能抑制活性又は血圧降下活性の程度を測定・評価することを特徴とする心機能抑制活性の阻害物質又は降圧活性の阻害物質のスクリーニング方法や、(14)上記(1)又は(2)記載のペプチドを有効成分として含有する心機能抑制/降圧剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のペプチドは、ヒトにおけるはじめての内因性心収縮抑制性ペプチドであり、副作用の少ない血圧降下剤として有用である他、β遮断薬類似の治療薬、狭心症をはじめとする心血管系疾患の治療薬等の開発、心不全・狭心症のメカニズムの解明など、本ペプチドの役割を検討し、さらに新薬開発のために研究の発展が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のペプチドとしては、(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列;(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列;又は(C)配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列;の何れかのアミノ酸配列からなるペプチドや、(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列;(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列;からなるペプチドがプロセシング酵素による切断・修飾を受けることによって生成され、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドであれば特に制限されず、また、本発明のDNAとしては、(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列;(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列;(C)配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列;(D)配列番号1に示される塩基配列;(E)配列番号1に示される塩基配列において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドをコードする塩基配列;又は(F)配列番号1に示される塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドをコードする塩基配列;の何れかの塩基配列からなるDNAや、(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列;(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列;からなるペプチドがプロセシング酵素による切断・修飾を受けることによって生成され、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドをコードする塩基配列からなるDNAであれば特に制限されず、ここで「心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチド」とは、陰性変力作用・陰性変時作用を含み、心収縮力の抑制に何らかの形で関与するペプチド、あるいは血圧降下活性を有するペプチドを意味し、その具体的な作用機構は特に限定されない。本発明のペプチドの、具体的な作用機構の一例としては、大動脈圧の低下、心拍数・脈拍数の低下、大動脈血流量の低下、1回拍出量の低下、冠血流量の低下、末梢血圧の低下等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0014】
本発明において、「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」とは、例えば1~10個、好ましくは1~5個の任意の数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を意味する。また、上記「1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列」とは、例えば1~20個、好ましくは1~15個、より好ましくは1~10個、さらに好ましくは1~5個の任意の数の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を意味する。そして、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列の具体例として、C末端の4アミノ酸が欠失したアミノ酸配列:(1-20)や、N末端の4アミノ酸が欠失したアミノ酸配列:(5-24) では強力な心機能抑制活性又は血圧降下活性が維持されており、C末端の11アミノ酸、およびN末端の1アミノ酸が欠失した配列:(2-13) では活性はいくぶん低下しながらも、心機能抑制活性又は血圧降下活性が保たれていたことが確認されている。
【0015】
例えば、これら1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるDNA(変異DNA)は、化学合成、DNA工学的手法、突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法により作製することもできる。具体的には、配列番号1に示される塩基配列からなるDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、DNA工学的な手法等を用いて、これらDNAに変異を導入することにより、変異DNAを取得することができる。DNA工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は、特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989.以後 "モレキュラークローニング第2版" と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1~38,John Wiley & Sons (1987-1997)等に記載の方法に準じて行うことができる。この変異DNAを適切な発現系を用いて発現させることにより、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドを得ることができる。
【0016】
本発明において、「配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%以上の相同性を有するアミノ酸配列」とは、配列番号2に示されるアミノ酸配列との相同性が60%以上であれば特に制限されるものではなく、例えば、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上であることを意味する。
【0017】
本発明において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列」とは、DNA又はRNAなどの核酸をプローブとして使用し、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られる塩基配列を意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAまたは該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7~1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1~2倍程度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAをあげることができる。ハイブリダイゼーションは、モレキュラークローニング第2版等に記載されている方法に準じて行うことができる。例えば、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAとしては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するDNAが挙げることができ、例えば60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するDNAを好適に例示することができる。
【0018】
本発明のDNAの取得方法や調製方法は特に限定されるものでなく、本明細書中に開示した配列番号1又は配列番号2に示されるアミノ酸配列又は塩基配列情報に基づいて適当なブローブやプライマーを調製し、それらを用いて当該DNAが存在することが予測されるcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより目的のDNAを単離したり、常法に従って化学合成により調製することができる。
【0019】
具体的には、本発明のDNAが単離されたヒトより、常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、次いで、このライブラリーから、本発明のDNAに特有の適当なプローブをTOR2A遺伝子の塩基配列情報に基づいて作製し、かかるプローブを用いて所望クローンを選抜することにより、本発明のDNAを取得することができる。上記cDNAの起源としては、ヒト、ラット等の動物由来の各種の細胞または組織を例示することができ、また、これらの細胞又は組織からの全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのクローニングなどはいずれも常法に従って実施することができる。本発明のDNAをcDNAライブラリーからスクリーニングする方法は、例えば、モレキュラークローニング第2版に記載の方法等、当業者により常用される方法を挙げることができる。ヒト由来の本発明のDNAの塩基配列を配列番号1として、ラット由来の本発明のDNAの塩基配列を配列番号5として例示する。また、TOR2A遺伝子の塩基配列を配列番号7として例示する。
【0020】
また、上記(B)~(F)のいずれかに示される塩基配列を有する本発明の変異DNA又は相同DNAとしては、配列番号1に示される塩基配列又はその一部を有するDNA断片を利用し、他の生物体等より、該DNAのホモログを適当な条件下でスクリーニングすることにより単離することができる。その他、前述の変異DNAの作製方法により調製することもできる。
【0021】
本発明のペプチドの取得・調製方法は特に限定されず、天然由来のペプチドでも、化学合成したペプチドでも、DNA組換え技術により作製した組み換えペプチドの何れでもよい。天然由来のペプチドを取得する場合には、かかるペプチドを発現している細胞又は組織からペプチドの単離・精製方法を適宜組み合わせることにより、本発明のペプチドを取得することができる。化学合成によりペプチドを調製する場合には、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って本発明のペプチドを合成することができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して本発明のペプチドを合成することもできる。DNA組換え技術によりペプチドを調製する場合には、該ペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを好適な発現系に導入することにより本発明のペプチドを調製することができる。
【0022】
例えば、DNA組換え技術によって、本発明のペプチドを調製する場合、かかるペプチドを細胞培養物から回収し精製するには、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含めた公知の方法、好ましくは、高速液体クロマトグラフィーが用いられる。特に、アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えば、本発明のペプチドに対するモノクローナル抗体等の抗体を結合させたカラムや、上記本発明のペプチドに通常のペプチドタグを付加した場合は、このペプチドタグに親和性のある物質を結合したカラムを用いることにより、これらのペプチドの精製物を得ることができる。
【0023】
さらに、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するヒト由来の本発明のペプチドにおいて1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号2に示されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列の一例を示す配列番号1に示される塩基配列の情報に基づいて当業者であれば適宜調製又は取得することができる。例えば、配列番号1に示される塩基配列又はその一部を有するDNAをプローブとしてヒト以外の生物より、該DNAのホモログを適当な条件下でスクリーニングすることにより単離することができる。このホモログDNAの全長DNAをクローニング後、発現ベクターに組み込み適当な宿主で発現させることにより、該ホモログDNAによりコードされるペプチドを製造することもできる。ラット由来の本発明のペプチドのアミノ酸配列を配列番号6として例示する。また、参考までに、TOR2Aのアミノ酸配列を配列番号8として例示する。
【0024】
上記(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列;(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ該アミノ酸配列からなるペプチドが心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するアミノ酸配列;からなるペプチドがプロセシング酵素による切断・修飾を受けることによって生成され、かつ心機能抑制活性又は血圧降下活性を有するペプチドは、例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチドのN末端領域を含む種々のペプチドを合成し、それらの心機能抑制活性又は血圧降下活性に基づきスクリーニングすることにより、あるいは、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチドのN末端領域を特異的に認識する抗体を用いてヒト血清からスクリーニングすることにより、容易に得ることができる。また、このペプチドをコードする塩基配列からなるDNAは、当該ペプチドのアミノ酸配列情報により容易に調製することができる。
【0025】
本発明の融合ペプチドとしては、上記本発明のペプチドとマーカータンパク質及び/又はペプチドタグとが結合しているものであればどのようなものでもよい。マーカータンパク質としては、従来知られているマーカータンパク質であれば特に制限されるものではなく、例えば、アルカリフォスファターゼ、HRP等の酵素、抗体のFc領域、GFP等の蛍光物質などを具体的に挙げることができ、また本発明におけるペプチドタグとしては、HA、FLAG、Myc等のエピトープタグや、GST、マルトース結合タンパク質、ビオチン化ペプチド、オリゴヒスチジン等の親和性タグなどの従来知られているペプチドタグを具体的に例示することができる。かかる融合ペプチドは、常法により作製することができ、Ni-NTAとHisタグの親和性を利用した本発明のペプチドの精製や、本発明のペプチドの検出や、本発明のペプチドに対する抗体の定量や、その他当該分野の研究用試薬としても有用である。
【0026】
本発明の組換えベクターとしては、前記本発明のDNAを含み、該DNAの発現により、上記本発明のペプチドを発現することができる組換えベクターであれば特に制限されず、本発明の組換えベクターは、本発明のDNAを、例えば動物細胞発現用の発現ベクターに適切にインテグレイトすることにより構築することができる。かかる発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製可能であるものや、あるいは宿主細胞の染色体中へ組込み可能であるものが好ましく、また、本発明のDNAを発現できる位置にプロモーター、エンハンサー、ターミネーター等の制御配列を含有しているものを好適に使用することができる。また、発現系としては、上記本発明のペプチドを宿主細胞内で発現させることができる発現系であればどのようなものでもよく、染色体、エピソーム及びウイルスに由来する発現系、例えば、細菌プラスミド由来、酵母プラスミド由来、SV40のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、レトロウイルス由来のベクター、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来及びこれらの組合せに由来するベクター、例えば、コスミドやファージミドのようなプラスミドとバクテリオファージの遺伝的要素に由来するものを挙げることができる。
【0027】
本発明の形質転換体としては、上記本発明の組換えベクターが導入され、かつ上記本発明のペプチドを発現する形質転換体であれば特に制限されず、形質転換酵母、形質転換植物(細胞、組織、個体)、形質転換細菌、形質転換動物(細胞、組織、個体)を挙げることができるが、形質転換動物細胞が好ましい。動物細胞宿主としては、ナマルバ細胞、COS1細胞、COS7細胞、CHO細胞等を挙げることができる。動物細胞への組み換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポーレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を用いることができる。
【0028】
本発明のペプチドを特異的に認識することができる抗体としては、本発明のペプチドに特異的に結合する抗体が好ましく、かかる抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体等の免疫特異的な抗体を具体的に挙げることができ、これらは本発明のペプチドを抗原として用いて常法により作製することができるが、その中でもモノクローナル抗体がその特異性の点ではより好ましく、ポリクローナル抗体がその感度の点ではより好ましい。かかるモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体等の本発明のペプチドに特異的に結合する抗体は、例えば、本発明のペプチドの各種疾患における病態生理学的意義の解明、本発明のペプチドの変異又は欠失に起因する疾病の診断、本発明のペプチドの分子機構を明らかにする上で有用である。
【0029】
本発明のペプチドに対する抗体は、慣用のプロトコールを用いて、動物(好ましくはヒト以外)に該ペプチド又はエピトープを含む断片を投与することにより産生され、例えばモノクローナル抗体の調製には、連続細胞系の培養物により産生される抗体をもたらす、ハイブリドーマ法(Nature 256, 495-497, 1975)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Immunology Today 4, 72, 1983)及びEBV-ハイブリドーマ法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, pp.77-96, Alan R.Liss, Inc., 1985)など任意の方法を用いることができる。以下に本発明のペプチドとして、ヒト由来のペプチドを例に挙げてマウス由来の本発明のペプチドに対して特異的に結合するモノクローナル抗体の作製方法を説明する。
【0030】
上記本発明のモノクローナル抗体は、該モノクローナル抗体産生ハイブリドーマをインビボ又はインビトロで常法により培養することにより生産することができる。例えば、インビボ系においては、齧歯動物、好ましくはマウス又はラットの腹腔内で培養することにより、またインビトロ系においては、動物細胞培養用培地で培養することにより得ることができる。インビトロ系でハイブリドーマを培養するための培地としては、ストレプトマイシンやペニシリン等の抗生物質を含むRPMI1640又はMEM等の細胞培養培地を例示することができる。
【0031】
上記本発明のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、例えば、ヒト、ラット等から得られた本発明のペプチドを用いてBALB/cマウスを免疫し、免疫されたマウスの脾臓細胞とマウスNS-1細胞(ATCC TIB-18)とを、常法により細胞融合させ、免疫蛍光染色パターンによりスクリーニングすることにより、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作出することができる。また、かかるモノクローナル抗体の分離・精製方法としては、ペプチドやタンパク質の精製に一般的に用いられる方法であればどのような方法でもよく、アフィニティークロマトグラフィー等の液体クロマトグラフィーを具体的に例示することができる。
【0032】
また、本発明の上記本発明のペプチドに対する一本鎖抗体をつくるためには、一本鎖抗体の調製法(米国特許第4,946,778号)を適用することができる。また、ヒト化抗体を発現させるために、トランスジェニックマウス又は他の哺乳動物等を利用したり、上記抗体を用いて、本発明のペプチドを発現するクローンを単離・同定したり、アフィニティークロマトグラフィーで本発明のペプチドを精製することもできる。本発明のペプチドに対する抗体は、本発明のペプチドの分子機構を明らかにする上で有用である。
【0033】
また上記本発明のペプチドに対するモノクローナル抗体等の抗体に、例えば、FITC(フルオレセインイソシアネート)又はテトラメチルローダミンイソシアネート等の蛍光物質や、125I、32P、14C、35S又はH等のラジオアイソトープや、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ又はフィコエリトリン等の酵素で標識したものや、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光発光タンパク質などを融合させた融合タンパク質を用いることによって、本発明のペプチドの機能解析を有利に行うことができる。また、本発明の抗体を用いた免疫学的測定方法としては、RIA法、ELISA法、蛍光抗体法、プラーク法、スポット法、血球凝集反応法、オクタロニー法等の方法を挙げることができる。
【0034】
本発明のスクリーニング方法としては、例えばヒトやラット由来の本発明のペプチドを、被検物質と共にラットやマウス等の被験非ヒト動物に投与し、心機能抑制活性又は血圧降下活性の程度を測定・評価する心機能抑制因子又は降圧因子や、心機能抑制活性の阻害物質又は降圧活性の阻害物質のスクリーニング方法であれば特に制限されるものではなく、具体的には、ラットやマウス等の被験非ヒト動物に本発明のペプチドを経静脈的に投与する前後、あるいは投与と同時に被検物質を経口若しくは非経口的に投与し、血圧降下、大動脈圧の低下、脈拍数の低下、大動脈血流量の低下等の心機能抑制活性の程度を測定し、被検物質を投与しない対照の測定値と比較・評価することにより、心機能抑制因子又は降圧因子や心機能抑制活性の阻害物質又は降圧活性の阻害物質をスクリーニングすることができる。上記被検物質としては、動植物・微生物からの抽出物などの天然物、化学合成により得られる化合物、各種生理活性ペプチドやタンパク質、従来公知の各種血圧降下剤や血圧上昇剤の他、各種アジュバントを例示することができる。本発明のスクリーニング方法により得られる心機能抑制活性の促進物質は、単独若しくは本発明のペプチドと併用することにより、血圧降下剤として有用である可能性が高く、また、心機能抑制活性の阻害物質は、単独若しくは本発明のペプチドと併用することにより、強心剤、血圧上昇剤として有用である可能性が高く、さらにこれら心機能抑制活性の促進物質や阻害物質は、インビボにおける心機能抑制活性/降圧活性の作用機序を研究する上で有用である。
【0035】
本発明の心機能抑制/降圧剤としては、上述の本発明のペプチドを有効成分として含有するものであれば特に制限されず、また、本発明の心機能抑制活性/降圧活性を必要とする疾病の予防・治療方法としては、かかる本発明の心機能抑制/降圧剤を心機能抑制活性/降圧活性を必要とする患者に投与する方法であれば特に制限されず、ここで、心機能抑制活性/降圧活性とは、血圧降下、大動脈圧の低下、脈拍数の低下、大動脈血流量の低下等の心機能の抑制活性をいう。本発明の心機能抑制/降圧剤は、心機能抑制活性を有することから、高血圧症、狭心症、心不全、不整脈、肥大性心筋症等の疾病の予防や治療に有利に用いることができる。
【0036】
かかる心機能抑制/降圧剤を医薬品として用いる場合は、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができ、経口的又は非経口的に投与することができる。すなわち通常用いられる投与形態、例えば粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができ、あるいは、例えば溶液、乳剤、懸濁液等の剤型にしたものを注射の型で非経口投与することができる他、スプレー剤の型で鼻孔内投与することもできるが、非経口投与的に投与することが好ましい。非経口的に投与する製剤の場合、蒸留水、生理的食塩水等の水溶性溶剤、サリチル酸ナトリウム等の溶解補助剤、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等の等張化剤、ヒト血清アルブミン等の安定化剤、メチルパラベン等の保存剤、ベンジルアルコール等の局麻剤を配合することができる。
【0037】
また、本発明の心機能抑制/降圧剤の投与量は、疾病の種類、患者の体重や年齢、投与形態、症状等により適宜選定することができるが、例えば成人に投与する場合、有効成分である本発明のペプチド又はそれらの薬学的に許容される塩を通常1回量として約0.01~100nmol/kg、好ましくは0.05~30nmol/kg、より好ましくは0.1~10nmol/kgであり、この量を1日1回~3回投与するのが望ましい。本発明の心機能抑制/降圧剤を非経口的に投与するには、たとえば、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、骨髄腔内投与、経粘膜投与などを挙げることができるが、静脈内投与や皮下投与が好ましい。
【0038】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
[本発明のペプチドの調製]
配列番号2に示されるアミノ酸配列(AIFIFISNTGGKQINQVALEAWRS)からなる本発明のペプチドを以下の方法で発見した。すなわち、サリューシン発見の時点で、サリューシンの前駆体であるプレプロサリューシンはGenBank登録クローン(AL162426 Human DNA sequence from clone RP11-56D16 on chromosome 9, complete sequence. 4/2001;Length = 163338)に規定される5つのエクソンからなるTOR2A遺伝子が選択的スプライシングをうけてエクソン4が抜け落ちた結果できる可能性が示された。このTOR2A遺伝子はヒトの種々の臓器に広範囲に発現し、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞以外では、その一部がスプライシングを受けてプレプロサリューシンとなるが、そのほとんどはTOR2AmRNAとして発現することが明らかとなった。そこでTOR2A mRNAより翻訳されるアミノ酸配列を検討した結果、プロホルモン転換酵素やカルボキシペプチダーゼEなどの働きにより生合成されると推測される配列が存在したため、全長cDNA配列をPCRクローニングし、pTargetベクター(Promega社製)にサブクローニングして培養血管内皮細胞に導入して遺伝子発現実験を行い、培養上清中に分泌される降圧活性を、前述のラット、インビボ実験系にて確認した。ゲル濾過クロマトグラフィーによるこの降圧活性の分画は、配列番号2のペプチドの分子量分画と一致した。
【0040】
なお以下の実験には、実施例1により決定された配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる本発明のペプチドを、ペプチド合成装置(島津製作所社製「PSSM-8」)を用いて合成し、この合成ペプチドを供試した。また、供試動物として400~525gのSDラットを使用した。
【実施例2】
【0041】
[インタクト-ラットにおける本発明の合成ペプチドの効果]
SDラットの麻酔はペントバルビタールナトリウム(50mg/kg)の腹腔内投与で行い、大腿動脈にカテーテル留置を行い、合成ペプチドを静脈投与すると共に血圧と心拍数の測定を、文献(Nat Med 9:1166-72,2003)記載の方法に準じて、電磁流量計(日本光電社製「MFV-1100」)を用いて行った。また、腹部大動脈に流量計を設置し大動脈の流量の測定も、上記文献記載の方法に準じて行った。合成ペプチド(10nmol/kg)は15秒以上かけて静脈内投与して収縮期血圧(SP)、拡張期血圧(DP)、平均大動脈圧(MAP)、心拍数(HR)を測定した。血圧降下に関する結果を図1に示す。その結果、本発明の合成ペプチドの降圧効果が認められた。
【実施例3】
【0042】
[摘出心における本発明の合成ペプチドの効果]
文献(Nat Med 9:1166-72,2003)記載の方法に準じて、心筋直接作用を評価するために摘出心ワーキングモデルを使用した。37℃のKrebs Henseleit Bufferで灌流されている摘出灌流心装置(Primetech Corporation社製「IPH-W2」)にラットから摘出した心臓を装着し、安定させた後、合成ペプチドを投与(10-8mol/l)した。その後、15分間にわたりHR、SP、DP、MAP、大動脈流量(AF)を測定した。また、冠血流量(CF)は冠状静脈洞から流出したものを薬剤投与前、5分後、10分後に測定した。それらをもとに心拍出量(CO)はAFおよびCFの和より求め、一回拍出量(SV)はCO/HRとして求めたものをさらにラットの心重量で除して求め解析評価した。冠血流量の結果を図2に示す。その結果、本発明の合成ペプチドの冠血流量低下効果が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】インタクト-ラットにおける本発明の合成ペプチドの降圧効果を示す図である。
【図2】本発明の合成ペプチドによるラット摘出灌流心に対する一回拍出量の経時的変化を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
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