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明細書 :素子、これを用いた薄膜トランジスタおよびセンサ、ならびに素子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4878552号 (P4878552)
登録日 平成23年12月9日(2011.12.9)
発行日 平成24年2月15日(2012.2.15)
発明の名称または考案の名称 素子、これを用いた薄膜トランジスタおよびセンサ、ならびに素子の製造方法
国際特許分類 H01L  51/40        (2006.01)
H01L  51/05        (2006.01)
H01L  29/786       (2006.01)
H01L  51/42        (2006.01)
G01N  27/12        (2006.01)
FI H01L 29/28 310J
H01L 29/28 100A
H01L 29/78 618B
H01L 29/78 616U
H01L 31/08 T
G01N 27/12 K
請求項の数または発明の数 10
全頁数 12
出願番号 特願2006-512642 (P2006-512642)
出願日 平成17年4月20日(2005.4.20)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成16年12月16日 独立行政法人科学技術振興機構主催の「International Symposium on Construction of Nanostructured Molecular Assemblies with Novel Electronic Functions」において文書をもって発表
特許法第30条第1項適用 平成17年2月15日 独立行政法人理化学研究所主催の「Nanoscience Research Forum 2005」において文書をもって発表
特許法第30条第1項適用 平成17年3月26日 社団法人日本物理学会主催の「日本物理学会第60回(2005年)年次大会」において文書をもって発表
特許法第30条第1項適用 平成17年3月27日 社団法人日本化学会主催の「日本化学会第85春季年会(2005)」において文書をもって発表
特許法第30条第1項適用 平成17年3月30日 社団法人応用物理学会主催の「2005年(平成17年)春季 第52回応用物理学会連合講演会」において文書をもって発表
国際出願番号 PCT/JP2005/007945
国際公開番号 WO2005/104260
国際公開日 平成17年11月3日(2005.11.3)
優先権出願番号 2004123757
優先日 平成16年4月20日(2004.4.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年4月16日(2008.4.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】山本 浩史
【氏名】重藤 訓志
【氏名】塚越 一仁
【氏名】八木 巌
【氏名】加藤 礼三
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】宮澤 尚之
参考文献・文献 国際公開第03/076332(WO,A1)
特開平02-079401(JP,A)
特開平06-321686(JP,A)
特開昭63-006872(JP,A)
調査した分野 H01L 21/288
H01L 21/3205
H01L 21/336
H01L 23/522
H01L 29/786
H01L 51/05-40
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
電極間の間隔が10~900nmの一対の電極と、該電極間に設けられた単結晶の有機化合物からなる導体とを含む素子の製造方法であって、
いずれも正極または負極である一対の電極を電解溶液に浸漬し、前記一対の電極に電圧をかけて、前記電解溶液を電気分解することにより、前記一対の電極間に単結晶の有機化合物からなる導体を形成する工程を含む、素子の製造方法。
【請求項2】
前記電解溶液は、ドナー系分子、アクセプター系分子および負イオン系金属錯体からなる群から選択されるいずれか1つを含む溶液である請求項に記載の素子の製造方法。
【請求項3】
前記導体は、1つの単結晶からなる請求項1または2に記載の素子の製造方法。
【請求項4】
前記単結晶の有機化合物が、硫黄を含む化合物である請求項1~3のいずれか1項に記載の素子の製造方法。
【請求項5】
前記単結晶の有機化合物が、環状化合物である請求項1~4のいずれか1項に記載の素子の製造方法。
【請求項6】
前記単結晶の有機化合物が、共役系有機高分子化合物である請求項1~5のいずれか1項に記載の素子の製造方法。
【請求項7】
前記単結晶の有機化合物が、カチオンラジカル塩またはアニオンラジカル塩である請求項1~6のいずれか1項に記載の素子の製造方法。
【請求項8】
前記単結晶の有機化合物が、ドナー系分子を酸化して得られるカチオンラジカル塩、アクセプター系分子を還元して得られるアニオンラジカル塩、負イオン系金属錯体を部分酸化して得られるアニオンラジカル塩および負イオン系金属錯体を中性になるまで酸化して得られる単一成分分子からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項1~6のいずれか1項に記載の素子の製造方法。
【請求項9】
前記単結晶の有機化合物が、アクセプター系分子を還元して得られるアニオンラジカル塩、または、ドナー系分子を酸化して得られるカチオンラジカル塩である請求項1~6のいずれか1項に記載の素子の製造方法。
【請求項10】
前記単結晶の有機化合物が、テトラチアフルバレン骨格を有する化合物である請求項1~6のいずれか1項に記載の素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】

本発明は、薄膜トランジスタやセンサに利用可能な素子および、これを用いた薄膜トランジスタおよびセンサに関する。
【背景技術】

従来から、分子性導体の単結晶にゲート電圧をかけるためには、すでに出来ている結晶に、電極や絶縁膜を蒸着して行うという手法が採用されていた(J.S.Brooks,Advanced Materials for Optics and Electronics,Vol 8,pp.269-276(1998))。しかしながら、前記方法では、有機結晶の表面が大きなダメージを受けてしまい、分子性導体本来の特性を生かした素子が作製できないという問題があった。これは、ゲート電極を用いた素子では、結晶と電極や絶縁膜を平滑に接合することが必要であったが、これが困難であったことに基づく。
かかる状況下で、S.F.Nelson et al.,Appl.Phys.Lett,72,1854(1998)には、シリコン基板上に、ペンタセンなどの分子を蒸着したり、ポリチオフェンなどのポリマーをスピンコートして薄膜トランジスタ(FET)として動作させたりすることが検討されている。しかしながら、この場合は、素子中にドメインが出来てしまい、粒界の影響が素子特性に深刻な影響を与えていた。また、分子性導体は、該分子が一般に溶媒に不溶で、かつ展性や揮発性も無いため、そもそもこういった手法を適用することができない場合がほとんどであった。
一方、V.Rajagopalan et al.,Nano Lett,3,851-855(2003)は、電気分解で電極上に伝導性物質を析出させる方法として、金の電気分解を行ってポイントコンタクトを作る方法を開示している。しかしながら、この場合析出してくる分子は不定形の多結晶であり、単結晶の成長は知られていない。
また、H.Hasegawa et al.,Synthetic Metals,135-136,763-764(2003)は、フタロシアニンを交流によって電気分解する方法を開示している。しかしながら、この場合は電極間を橋渡しすることができていない。
すなわち、多結晶の導体を用いて素子を作製した場合、結晶と結晶の間の接合が問題となっていた。すなわち、不必要な抵抗が生じたり、コンデンサとして動作してしまう部分が出てきたり、ショットキーバリアなどの非線形応答を示す状態ができてしまったりしていた。このような粒界の電気的特性は、単結晶が本来持っているデバイス特性を鈍らせたり、全く見えなくしてしまったりする。そこで、単結晶のみで、電極間を接合できれば、その物質が本来持っている性能が十分に発揮できると考えられた。
しかしながら、上述のとおり、単結晶で電極間を橋渡しすることはできていなかった。
ここで、発明者は、単結晶で電極間を橋渡しすることができなかった理由を鋭意研究した。
まず、従来から導体として検討されている無機導体について検討したところ、電極間に単結晶を成長させるのには極端に高い温度が必要であり、実質的に極めて困難であった。
そこで、発明者は、有機物を原料として、単結晶による橋渡しを試みることにした。しかしながら、有機化合物からなる導体の単結晶については、そもそも、この種の素子として使用するという思想自体がほとんどなく、その実験方法や取り扱い方法から不明な点が多かった。当然に、単結晶素子の作製方法については予測さえつかないものであった。
【図面の簡単な説明】

図1は、実施例1における電気分解前の基板全体像を示す図である。図2は、実施例1における電気分解後の基板全体像を示す図である。図3は、図2の部分拡大図を示す図である。図4は、図2の基板において、回路をレーザーで切断した箇所を示す図である。図5は、実施例2における単結晶作製前の基板全体像を示す図である。図6は、実施例2における単結晶作製後の基板全体像を示す図である。図7は、実施例2で作製した単結晶像の部分拡大図を示す図である。図8は、実施例2で作製した回路をレーザーで切断した箇所を示す図である。
発明の詳細な説明
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
まず、本発明の単結晶の有機化合物について説明する。本発明の単結晶の有機化合物は、伝導性を有する化合物であれば、広く公知の有機化合物を採用できる。例として、以下のものを挙げることができる。
(1)硫黄を含む有機化合物
硫黄を含む有機化合物が採用でき、硫黄を含むヘテロ環骨格を有する化合物が好ましく、1以上の硫黄を含む炭素数3~10(好ましくは炭素数4~6)のヘテロ環と、該ヘテロ環および/または他の炭素数3~10(好ましくは炭素数4~6)の環とが2つ以上縮合した縮合環を有する化合物がより好ましい。縮合している環の数は、2~15が好ましく、2~10がより好ましく、2~5がより好ましく、2~4がさらに好ましい。さらに、縮合環同士が、単結合、2重結合または3重結合、あるいは連結基を介して結合した構造であってもよい。連結基としては、例えば、2価以上の金属原子、-CH-、-O-、-S-または-N-、およびこれらの2以上の組み合わせからなる基が挙げられる。縮合環を形成するヘテロ環としては、例えば、チオフェン骨格、ジチオフェン骨格、チアゾール骨格、チアン骨格および/またはジチアン骨格を有するものが挙げられる。さらに、本発明の硫黄を含む化合物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適当な置換基を有していてもよい。
本発明の硫黄を含む有機化合物の好ましい例としては、テトラチアフルバレン(TTF)骨格を有する化合物やジチオレン金属骨格を有する化合物(M(dmit))(Mは、Ni、Pd、Pt)が挙げられる。テトラチアフルバレン(TTF)骨格を有する化合物としては、テトラチアフルバレン(TTF)、エチレンヂチオテトラチアフルバレン(EDT-TTF)およびビズ(エチレンヂチオ)テトラチアフルバレン(BEDT-TTF)が好ましく、エチレンヂチオテトラチアフルバレン(EDT-TTF)がより好ましい。
(2)環状化合物
環状化合物が採用でき、好ましくはヘテロ環化合物を含むものである。環状化合物としては、炭素数3~10(好ましくは炭素数4~6)の環状化合物が、2つ以上縮合した縮合環を有する化合物が好ましい。縮合している環の数は、2~15が好ましく、2~10がより好ましく、2~5がさらに好ましく、2~4がよりさらに好ましい。加えて、縮合環同士が、単結合、2重結合若しくは3重結合、または連結基を介して結合した構造であってもよい。連結基としては、例えば、2価以上の金属原子、-CH-、-O-、-S-または-N-、およびこれらの2以上の組み合わせからなる基が挙げられる。縮合環を形成する化合物としては、環式炭化水素および/またはヘテロ環が好ましい。さらに、本発明の環状化合物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適当な置換基を有していてもよい。
本発明の環状化合物の好ましい例として、ベンゼン骨格を有する化合物、キノン骨格を有する化合物、トリフェニレン骨格を有する化合物、ペリレン骨格を有する化合物、ルビセン骨格を有する化合物、コロネン骨格を有する化合物およびオバレン骨格を有する化合物、ヘテロ環骨格を有する化合物等が挙げられ、より好ましくは、キノン骨格を有する化合物、ペリレン骨格を有する化合物およびヘテロ環骨格を有する化合物である。
キノン骨格を有する化合物としては、7,7,8,8-テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)およびジシアノキノンジイミン(DCNQI)等が挙げられる。
また、上記(1)で例示した化合物であって、環状化合物に該当するものも好ましく採用することができる。
(3)共役系有機高分子
共役系有機高分子が採用できる。例えば、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリイソチアナフテン、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリ(p-フェニレンオキシド)、ポリアニリン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリペリナフタレン、ニッケルフタロシアニン、ポリジアセチレン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンスルフィドおよびポリアクリル酸が挙げられる。
また、上記(1)または(2)で例示した化合物であって、共役系有機高分子に該当するものも好ましく採用することができる。
(4)カチオンラジカル塩
本発明のカチオンラジカル塩は、ドナー系分子を酸化して得られるものが好ましい。ドナー系分子は、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではないが、例えば、テトラチアフルバレン(TTF)骨格を有する化合物、ペリレン骨格を有する化合物およびテトラチアペンタレン(TTP)骨格を有する化合物が好ましく、テトラチアフルバレン(TTF)骨格を有する化合およびペリレン骨格を有する化合物がより好ましい。
また、上記(1)~(3)で例示した化合物であって、カチオンラジカル塩に該当するものも好ましく採用することができる。
(5)アニオンラジカル塩
アニオンラジカル塩によって単結晶の有機化合物からなる導体とすることができる。本発明のアニオンラジカル塩は、アクセプター系分子を還元して、あるいは、負イオン系金属錯体を部分酸化して得られるものが好ましい。これらの中でも、アクセプター系分子を還元して得られるものが好ましい。
本発明のアクセプター系分子は、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではないが、各種置換7,7,8,8-テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)、ジシアノキノンジイミン(DCNQI)および各種置換キノン類(クロラニル等)が好ましく、各種置換7,7,8,8-テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)および各種置換ジシアノキノンジイミン(DCNQI)がより好ましい。
一方、負イオン系金属錯体は、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではないが、ジチオレン金属骨格を有する化合物(M(dmit))(Mは、Ni、Pd、Pt)、M(mnt)(Mは、Ni、Pd、Pt)およびフタロシアニン錯体が好ましく、ジチオレン金属骨格を有する化合物(M(dmit))(Mは、Ni、Pd、Pt)がより好ましい。
また、上記(1)~(3)で例示した化合物であって、アニオンラジカル塩に該当するものも好ましく採用することができる。
(6)負イオン系金属錯体を中性になるまで酸化して得られる単一成分分子性導体
負イオン系金属錯体を中性になるまで酸化して得られる単一成分分子性導体も採用できる。ここで用いることができる負イオン系金属錯体は、該錯体を中性になるまで酸化すると単一成分からなる分子性導体となるものであれば、特に定めるものではなく、広く公知のものを採用できる。具体的には、およびNi(tmdt)が挙げられる。
また、上記(1)~(5)で例示した化合物であって、負イオン系金属錯体を中性になるまで酸化して得られる単一成分分子性導体に該当するものも好ましく採用することができる。
本発明の単結晶の有機化合物からなる導体とは、伝導性を構築する組成物が、単結晶の有機化合物からなることを意味し、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での他の成分(例えば、導体作製に用いた試料や不純物等)が含まれていることまでも排除するものではない。
上記(1)~(6)の化合物は、その用途等にあわせて、適宜、好ましいものを選択することができる。例えば、薄膜トランジスタやセンサ等に用いる場合は、比較的抵抗値の高い上記(1)、(2)等が好ましい。一方、配線材料等に用いる場合は、比較的抵抗値の低い上記(3)等が好ましい。
本発明の電極の材料は、特に定めるものではなく本願発明の精神を逸脱しない限り広く採用できる。例えば、金(Au)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タリウム(Ta)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)および錫(Sn)等の金属の他、ポリチオフェン(特に、ポリエチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホナート、ポリアニリン、ポリピリジン、ピロールおよびヨウ素をドープしたポリフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホナート共重合体等の導電性高分子を好ましく用いることができる。さらに、これらを組み合わせたものも採用することが出来る。例えば、金(Au)と他の金属(好ましくは、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等)の組み合わせ(例えば、積層したもの)を採用することができる。電極間の間隔は、10~900nmが好ましく、50~500nmがより好ましく、50~200nmがさらに好ましい。
本発明の単結晶の有機化合物からなる導体は、好ましくは、基板の上に電極層を設け、電極層に設けられた電極間に、上記導体を直接成長させるのが好ましい。ここで、直接とは、単結晶を予め形成させておき、後から電極等を接合するのではなく、電極間で単結晶を成長させることをいう。このような手段を採用することにより、電極間と結晶の接合を平滑にすることができる。単結晶の有機化合物からなる導体を成長させる方法としては、例えば、電極間に単結晶を形成可能な有機化合物を含む溶液により塩を形成させて、または、電解溶液を電気分解することにより得られる。
まず、電極間に単結晶を形成可能な有機化合物を含む溶液によって塩を形成させる方法について説明する。このような溶液としては、電極を該溶液に浸漬、また、電極間に該溶液を滴下等した後乾燥することにより、電極間に単結晶の塩を形成するものであれば、特に定めることない。具体的には、酸化還元電位がAg/AgCl/CHCN電極に対して0.8V以下の化合物が好ましく、Ag/AgCl/CHCN電極に対して0.5V以下の化合物がより好ましく、アクセプター分子がさらに好ましく、DCNQI若しくはTCNQの誘導体であるであることが最も好ましい。もちろん、上述した(1)~(6)の化合物であって、電極間に塩を形成するものも好ましく採用できる。
電極を浸漬させる有機化合物の濃度は、0.1~20mmol/Lが好ましく、0.5~5mmol/Lがより好ましい。このような濃度範囲とすることにより、単結晶を電極間により適切に成長させることができる。また、該有機化合物を溶解する溶媒としては、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではないが、例えば、アセトニトリル、アセトン、クロロホルムおよびベンゾニトリルが好ましい例として挙げられる。また、溶液に、電極(電極が基板上に設けられている該基板も)を浸漬して塩を形成させる場合、浸漬時間は、10~120秒が好ましい。このような時間とすることにより、より適切な単結晶を電極間に成長させることができる。
塩を形成させることにより単結晶を形成させる場合、電極の厚さは、好ましくは5~20nmである。このような電極の厚さとすることにより、より良好に電極間に結晶を成長させることができる。さらに、塩を形成させることにより、単結晶を形成させる場合、金の上に他の電極材料層が設けられた積層体である電極を用いることが好ましい。このような手段を採用することにより、電極が溶解して導通が取れなくなる事態をより効果的に避けることができる。この場合、金の上に積層する電極材料としては、上述した電極の材料を好ましく採用できる。
一方、電解溶液を電気分解して製造する場合、電解溶液は、好ましくは、ドナー系分子、アクセプター分子、負イオン系金属錯体等を含む溶液である。もちろん、上述した(1)~(6)の化合物であって、電気分解により単結晶を形成するものも好ましく採用できる。電解溶液に用いる溶媒は、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではないが、好ましくは、エタノール、メタノール、クロロベンゼンおよびジクロロメタンならびにこれらの混合液である。電気分解の方法としては、電極間に電圧をかけることにより電気分解することができる。電気分解のための電圧は、750~1100mVが好ましい。ここで、電極は、正極(または負極)から成長した結晶を負極(正極)に繋ぐよりも、正極と正極の間または負極と負極の間に単結晶を成長させる方がより好ましい。すなわち、例えば、シリコン基板(表面はSiO)上に電極を作り、これを正極として電解溶液中で電気分解を行うと、電極間をブリッジする形で有機化合物からなる導体の単結晶が成長する。このような手段を採用することにより、結晶が密集しすぎるのをより効果的に防ぎ、単結晶の成長がより穏やかに進行する。また、電気分解の際、ゲート電極を反対極として使用することが好ましい。ゲート電極を反対極として使用することにより、より単結晶を均一に成長させることができる。さらに、電気分解により単結晶を形成する場合、電極の厚さは、好ましくは150~250nmである。このような電極の厚さとすることにより、電極間の橋渡しがより容易となり、より単結晶の成長が容易になる。
さらに、電気分解により形成する場合、前記電極上に絶縁層を設けるとよい。このような絶縁層を設けることにより、電極の側面等に導体としての役割を果たさない結晶に流れる電流を排除することができより好ましい。絶縁層の厚さは、好ましくは15~25nmである。絶縁層は、本願発明の精神を逸脱しない限り、広く採用できる。例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、フッ化カルシウムなどの無機材料、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、テフロン(登録商標)などの高分子材料、アミノプロピルエトキシシランなどの自己組織化分子膜などを用いればよい。
本発明の素子に基板を設ける場合、該基板は、特に定めるものではなく、公知の基板を広く採用できる。例を挙げると、絶縁性基板または半導体性基板等である。
絶縁性基板としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、フッ化カルシウム、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂、ポリイミドおよびテフロン等が挙げられる。
半導体性基板としては、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、インジウム燐および炭化シリコン等が挙げられ、シリコンが好ましい。基板表面は平坦である事が望ましい。
本発明の素子は、このような半導体性基板上に作製することができるため、ゲート電圧をかけることができ、結果として薄膜トランジスタを作製することが可能である。
本発明の素子は、基板の下にゲート電極を埋め込んでおくことによって、ゲート電圧をかけることのできる素子を作製することができる。ゲート電極は、特に限定されるものではなく、従来この種のトランジスタに採用されているものを広く用いることができる。例えば、Al、Cu、Ti、ポリシリコン、シリサイド、有機導電体を採用することができる。さらに、ゲート絶縁膜としては、SiO、SiN等の無機絶縁膜、ポリイミド、ポリアクリロニトリル等の有機材料等を採用することができる。
このようにして、本発明の素子を薄膜トランジスタに用いることができる。尚、基板及び絶縁層は上述のものを好ましく採用することができる。
【発明の開示】

本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、電極間に単結晶の有機化合物からなる導体を形成することを目的とするものである。
かかる状況の下、発明者が鋭意検討を行った結果、以下の手段により上記課題を解決しうることを見出した。
(1)電極間の間隔が10~900nmの一対の電極と、該電極間に設けられた単結晶の有機化合物からなる導体とを含む素子。
(2)一対の電極と、該電極間に設けられた単結晶の有機化合物からなる導体とを含み、かつ、前記単結晶の有機化合物は、前記電極間に直接に成長させてなる素子。
(3)前記導体は、1つの単結晶からなる(1)または(2)に記載の素子。
(4)前記単結晶の有機化合物からなる導体が、前記電極上で塩を形成させてなる導体である、(1)~(3)のいずれかに記載の素子。
(5)前記単結晶の有機化合物が、酸化還元電位がAg/AgCl/CHCN電極に対して0.8V以下の化合物である(4)に記載の素子。
(5-2)前記電極の厚さが5~20nmである、(4)または(5)に記載の素子。
(6)前記単結晶の有機化合物からなる導体が、前記電極上で電気分解によって形成されてなる導体である、(1)~(3)のいずれかに記載の素子。
(6-2)前記電極の厚さが150~250nmである、(6)に記載の素子。
(7)前記単結晶の有機化合物が、硫黄を含む化合物である(6)に記載の素子。
(8)前記単結晶の有機化合物が、環状化合物である(6)に記載の素子。
(9)前記単結晶の有機化合物が、共役系有機高分子化合物である(6)に記載の素子。
(10)前記単結晶の有機化合物が、カチオンラジカル塩またはアニオンラジカル塩である(6)に記載の素子。
(11)前記単結晶の有機化合物が、ドナー系分子を酸化して得られるカチオンラジカル塩、アクセプター系分子を還元して得られるアニオンラジカル塩、負イオン系金属錯体を部分酸化して得られるアニオンラジカル塩および負イオン系金属錯体を中性になるまで酸化して得られる単一成分分子からなる群から選択されるいずれか1つである、(6)に記載の素子。
(12)前記単結晶の有機化合物が、アクセプター系分子を還元して得られるアニオンラジカル塩、または、ドナー系分子を酸化して得られるカチオンラジカル塩である(11)に記載の素子。
(13)前記単結晶の有機化合物が、テトラチアフルバレン骨格を有する化合物である(6)に記載の素子。
(14)(1)~(13)のいずれかに記載の素子を有する薄膜トランジスタ。
(15)(1)~(13)のいずれかに記載の素子を有するセンサ。
(16)一対の電極間に、塩を形成することにより、単結晶の有機化合物からなる導体を形成する工程を含む(1)~(5)のいずれかに記載の素子の製造方法。
(17)一対の電極間に、酸化還元電位がAg/AgCl/CHCN電極に対して0.8V以下の化合物を用いて塩を形成することを特徴とする、(1)~(5)のいずれかに記載の素子の製造方法。
(18)前記電極として、金の上に他の電極材料層が設けられた積層体である電極を用いることを特徴とする、(16)または(17)に記載の素子の製造方法。
(19)一対の電極に電圧をかけて、該一対の電極間に単結晶の有機化合物からなる導体を形成することを特徴とする(1)~(3)および(6)~(13)のいずれかに記載の素子の製造方法。
(20)前記一対の電極に電圧をかけて、該一対の電極間に単結晶の有機化合物からなる導体を形成する工程は、前記一対の電極を電解溶液に浸漬し、該電解溶液を電気分解することにより行う、(19)に記載の素子の製造方法。
(21)基板上に、電極層を蒸着する工程と、該電極層を蒸着した基板を電解溶液に浸漬する工程と、該電極に電圧をかけて前記電解溶液を電気分解する工程を含む(1)~(3)および(6)~(13)のいずれかに記載の素子の製造方法。
(22)前記基板が半導体性基板である(21)に記載の素子の製造方法。
(23)前記電極層の上に、絶縁層を設けることを特徴とする、(21)または(22)に記載の素子の製造方法。
(24)前記電解溶液は、ドナー系分子、アクセプター系分子および負イオン系金属錯体からなる群から選択されるいずれか1つを含む溶液である(19)~(23)のいずれかに記載の素子の製造方法。
(25)一対の電極がいずれも正極または負極である(19)~(24)のいずれかに記載の素子の製造方法。
【実施例】

以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例1
1.電極層の作製
表面を酸化膜で覆ったシリコン基板(製造元:フルウチ化学)に、ポジレジスト(ZEP)を塗布し、電子線リソグラフィー装置(エリオニクス7300)を使用し、図1に示した回路を描画した。これを酢酸ペンチルで現像した後、50Åのチタン層、1500Åの金層、20Åの二酸化珪素層を蒸着した。さらに、2-ブタノンでリフトオフを行った。このようにして、図1に示した電極層を作製した。
2.電解溶液の調整
18mlのクロロベンゼンに対し、Chem.Lett,vol.1989,p781に記載の方法で作製したEDT-TTF12mg、臭化テトラフェニルホスホニウム(東京化成、T1069)20mg、テトラヨードエチレン(TIE)(Aldrich社製、31824-8)80mg、メタノール2ml加えてよく攪拌し、一晩放置した。
3.電気分解による単結晶作製
ガラス製シャーレに上記電解溶液2ml入れ、液中に上記1で作製したシリコン基板を浸した。次に、プローバー(共和理研、K-157MP)を用い、基板上の金パッドに電源を接続した。図1に示した電極のうち、下に見える凹型電極が陰極・上に見える串状電極が正極になるように配置した。この状態で、電流をモニターしながら800mVの電圧をかけて1分間電気分解を行い、その後、速やかに基板をとりだして余計な溶液を拭き取った。基板が十分に乾いてから電子顕微鏡で観察すると、図2に示すように(EDT-TTF)Br(TIE)の小さな単結晶が多数生成した。図3は、図2の矢印部分を拡大した写真であるが、単結晶が電極間を強固に橋渡ししている状態が確認できた。
4.導通チェック
図4に矢印で示した部分をレーザーにより焼き切り、左右の電極間に1Vのバイアス電圧を印加することにより、約50nAの電流が流れることを確認した。
実施例2
1.シリコン基板の作製
表面を酸化膜で覆ったシリコン基板にレジスト(PMMA/MMA)を塗布し、電子線リソグラフィー装置(エリオニクス7300)を使用して図5に示した回路を描画した。これを現像した後、50Åのチタン層、150Åの金層、100Åの銅層を蒸着した。さらに、アセトンでリフトオフを行った。このようにして、図5に示した電極層を作製した。
2.溶液の調整
20mlのアセトニトリルに対して、ジメチル-N,N’-ジシアノキノンジイミン(DMe-DCNQI)(Aldrich社製)を15mg加えてよく攪拌した。
3.単結晶の作製
ガラス製シャーレに上記溶液を2ml入れ、液中に上記1で作製したシリコン基板を、30秒間浸した。顕微鏡観察により、基板上に微結晶が生成するのが観察できるので、適切な密度の結晶が成長したところで基板を引き上げ、乾燥させた。図6に示すように、単結晶が生成していることが確認された。図7は、図6の部分拡大写真であるが、単結晶が電極間を強固に橋渡ししている状態が確認できた。
4.導通チェック
上記で作製した回路を適宜レーザーにより焼き切って、導通チェックをしたところ、電流が流れることを確認した。例として図8に示すような4端子回路を作製し測定を行ったところ、結晶の抵抗が5kΩ、電極との接触抵抗が1kΩ程度の値を示した。
【産業上の利用可能性】

本発明では、一対の電極に、有機化合物からなる単結晶を作製することに成功し、電極間の導通を実現できた。従来、有機化合物からなる導体以外で構成された素子や多結晶の素子は知られていたものの、本発明のように単結晶の有機化合物からなる導体を含む素子については、全く得られていなかった。また、単結晶の有機化合物からなる導体の実験方法等についても、全く不明であった。
しかしながら、発明者の鋭意検討により、今回、このような素子の完成ができた。これは、きわめて偉大なものである。
加えて、後述するとおり、本発明の素子では、伝導性を、単結晶を1つについてだけ測定すること可能となったため、素子間でのばらつき等を防ぐことが可能となった。結果として、動作性能のより向上を図ることが可能となった。
さらに、本発明の方法では、ガラス基板の上ではなく、シリコン基板等の上にも作製できるので、分子性導体に対して、ゲート電極も含めた回路の作製を可能となった。
さらにまた、単結晶の有機化合物からなる導体では構成要素が「分子」であるため、様々な機能性をもった官能基を導入することが可能であり、従来の無機系デバイスとは異なる特性の発現が期待できる。特に、素子が単結晶という非常に構造的にクリーンな系であるため、高感度・高精密なデバイス特性が期待でき、広い範囲にわたって応用が期待できる。
さらに本発明の方法は、電極上に直接単結晶を生成させることができるので、従来行われていた絶縁膜をスパッタリングで接合させる手法に比べると、用いるシリコン基板の表面を平滑にしておけばその形に合わせて結晶が成長するので、非常に平面性の高い接合が形成できる。従って、有機化合物からなる導体を素子として粒界の影響なしに利用する道が開かれた。
本発明の素子は、高速応答が可能な薄膜トランジスタあるいは、光、湿度またはpH等に反応する高感度センサに利用することができる。さらに、単結晶を並列させた(好ましくは、1000個以上)素子を採用することにより、より微弱な信号の検出も可能なセンサに利用することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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