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明細書 :多数種モチーフ配列のランダム重合による人工遺伝子及び人工タンパク質集団の作製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4568723号 (P4568723)
登録日 平成22年8月13日(2010.8.13)
発行日 平成22年10月27日(2010.10.27)
発明の名称または考案の名称 多数種モチーフ配列のランダム重合による人工遺伝子及び人工タンパク質集団の作製法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
C07K   1/02        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12P 21/02 C
C07K 1/02
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 14
全頁数 36
出願番号 特願2006-527869 (P2006-527869)
出願日 平成17年7月29日(2005.7.29)
国際出願番号 PCT/JP2005/013913
国際公開番号 WO2006/011589
国際公開日 平成18年2月2日(2006.2.2)
優先権出願番号 2004224554
優先日 平成16年7月30日(2004.7.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年1月22日(2007.1.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】芝 清隆
【氏名】齊藤 博英
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】小金井 悟
参考文献・文献 特開平09-322775(JP,A)
Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic,2004年 6月 1日,Vol.28, No.4-6,pp.145-153
Chemistry & Biology,2004年 6月,Vol.11, No.6,pp.765-773
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 21/00-21/08
C12Q 1/00- 1/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
(1)任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAの少なくても3種以上のDNA配列を構築し、(2)該一本鎖DNA配列の3´末端配列の一部が互いに相補的塩基対を形成し、かつ該相補的塩基対の両端に相手の塩基と対にならない塩基が1塩基以上存在するように、相補的塩基配列を導入し、(3)該方法により構築した多種の一本鎖DNAを調節された濃度で混合した反応液にDNAポリメラーゼを作用させることにより、モチーフ配列をコードするDNA間でのランダムな重合反応をランダム重合反応で利用されるモチーフ配列の出現頻度をコントロールして進行させることを特徴とする多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。
【請求項2】
任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAの少なくても4種以上のDNA配列を構築し、該一本鎖DNAを調節された濃度で混合した反応液にDNAポリメラーゼを作用させることにより、モチーフ配列をコードするDNA間でのランダムな重合反応を進行させることを特徴とする請求項1記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。
【請求項3】
相補的塩基対の数が、6塩基以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。
【請求項4】
相補的塩基対の両端に、相手の塩基と対にならない塩基を1~3のいずれかの塩基数、存在させたことを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。
【請求項5】
多種の一本鎖DNAの相補的塩基対の組合わせを調節して、ランダム重合反応で利用されるモチーフ配列の出現頻度をコントロールすることを特徴とする請求項1~のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。
【請求項6】
ランダム重合反応系に加えられる多種の一本鎖DNAの濃度が、0.2μM~20μMの範囲で変動することを特徴とする請求項1~のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。
【請求項7】
構築した多種の一本鎖DNAを反応液に混合し、該導入した一本鎖DNAの相補的塩基配列を鋳型として、3´末端から5´末端方向に作用するエキソヌクレアーゼ活性を含む耐熱性DNAポリメラーゼを作用させることにより、モチーフ配列をコードするDNA間でのランダムな重合反応を進行させることを特徴とする請求項1~のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。
【請求項8】
任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAが、機能モチーフ配列、構造モチーフ配列、進化分子工学的に取得された人工ペプチド配列、又はタンパク質工学的な知識に基いてデザインされた配列に基いて構築されたマイクロ遺伝子であることを特徴とする請求項1~のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。
【請求項9】
マイクロ遺伝子の構築に際して、合成する一本鎖DNA配列内で、予め各翻訳読み枠で、停止コドンを排除しておくことを特徴とする請求項記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。
【請求項10】
任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAが、多数種モチーフ配列をコードする一本鎖DNAに制限酵素認識配列を付加することで、ランダム重合反応で利用されるモチーフ配列の出現頻度を制限酵素反応により直接モニターできるように構築されていることを特徴とする請求項1~のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法により作製した遺伝子を組込んだベクターを、宿主細胞に導入し、発現することを特徴とする多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団の作製方法。
【請求項12】
多数種モチーフ配列をコードする一本鎖DNAを塩基変異、欠損を挿入することなくランダムに重合して人工遺伝子集団を作製し、該人工遺伝子集団を翻訳することでフレームシフトに依存せず多様性分子集団をえることを特徴とする請求項11記載の多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団の作製方法。
【請求項13】
多数種モチーフ配列をコードする一本鎖DNAを塩基変異、欠損を挿入しつつランダムに重合して人工遺伝子集団を作製し、該人工遺伝子集団を翻訳することでフレームシフトに依存して多様性分子集団をえることを特徴とする請求項11記載の多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団の作製方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか記載の作製方法により作製された、多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団、又は請求項11~13のいずれか記載の方法により作製された、多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団について、機能性遺伝子或いは機能性タンパク質をスクリーニングすることを特徴とする機能性人工遺伝子又は機能性人工タンパク質の創出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性人工遺伝子或いは機能性人工タンパク質の創出を目的とする、多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団、該人工遺伝子集団がコードする人工タンパク質集団、及びその作製法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、創薬分野等への利用を中心に、ヒトゲノム遺伝子やタンパク質の機能解明の研究が進む中で、ポストゲノム研究として、新規遺伝子の機能の解析とタンパク質の機能解明が大規模に進行しつつあり、その成果として多くの遺伝子やタンパク質の機能が明らかにされつつある。この遺伝子やタンパク質の機能の解明により、その知識が蓄積するに伴って、合理的に新しい機能を持った人工の遺伝子及びタンパク質をデザイン・創製することへの期待と機運が高まってきた。この「合理的に新しい機能を持った人工の遺伝子及びタンパク質をデザイン・創製する」ことへの研究は、1980年代に蛋白工学(プロテイン・エンジニアリング)として誕生した(Science,219,666-671,1983)。しかし、その後、いくつかの人工タンパク質が創製されたものの、いまだに自由に新しいタンパク質をデザインできるといったレベルには達していない。
【0003】
1990年代に入り、進化分子工学(試験管内分子進化法)が、人工分子の創製分野で大きな流れとなった。この進化分子工学においては、合理的に人工分子を設計するのではなく、予め無作為に準備したランダムな配列集団の中から、「選択」により目的とする機能・活性をもつ分子を得る戦略が採用されている(科学、67,938-947,1997)。すなわち、進化分子工学とは、(1)様々な配列多様性を持つコンビナトリアルな分子集団(DNAやタンパク質)から、目的の活性を持つわずかな分子を選択し、(2)その遺伝子を遺伝子増幅反応(PCR)により増幅した後に同様の反応を繰り返し、(3)目的の反応活性を有する人工分子を進化させるという手法である。現在この手法では、リボソームディスプレイやmRNAディスプレイなどの遺伝子-タンパク質融合技術を利用して機能性人工タンパク質の創製が試みられている。しかしながら従来の技術には以下のような問題点が存在する。(i)配列多様性を持ち、かつ目的の実験に適したDNA集団の有効な構築手法が確立されていない、(ii)リボソーム(mRNA)ディスプレイで選択できる人工タンパク質は、標的分子に結合する物質に限られ酵素活性や生体内で機能する分子の選択には不適である。
【0004】
天然には存在しない非凡な機能を持った人工タンパク質を進化分子工学的に創製する場合には、スクリーニングの母集団となる人工遺伝子多様性集団(ライブラリー)を、いかに巧妙に調製するかが成功の鍵を握る。このため、機能性分子を効果的に創出することを目的とした、人工遺伝子及び人工タンパク質集団作成法の開発が不可欠となる。人工遺伝子集団の調製法としては、error prone PCR法(PCR Methods Appl, 2:28-33, 1992)、DNA シャフリング法(Nature, 370:389-391, 1994)、又は、天然の遺伝子配列の一部若しくは全てをランダマイズ化した化学合成法が現在汎用されている。
【0005】
error prone PCR法は、親遺伝子を鋳型としてマンガンイオン存在下でPCR増幅をおこなうことにより、親遺伝子にランダムに塩基置換を導入して変異体集団を調製する方法である。しかし、error prone PCR法で塩基置換変異導入効率を上げた場合に、アミノ酸置換のみならず、アミノ酸をコードするコドンがストップコドンに置換されてしまう確率も高くなってしまうといった問題が存在する。また、このerror prone PCR法では、変異の割合を上昇させるような条件では意図しない欠失変異が起こりやすく( Trends Biochem. Sci. 26:100-106, 2001)、その結果、他の読み枠にコードされているストップコドンが出現してしまう問題点を有している。そのため、error prone PCR法は、通常は低い変異導入率、すなわち、遺伝子あたり2から3塩基の置換、アミノ酸として1残基の変異率が導入されるような条件で行われる。このため、機能や基質親和性を大きく変化させる人工分子を創出することは難しいと考えられる。
【0006】
DNAシャッフリング法は、あるタンパク質をコードする遺伝子DNA及び配列相同性を持つ1つまたは複数の類似DNAを用いて、それらを試験管内で相同組み換えさせることにより、変異体集団を調製することができる。しかしながら、DNAシャッフリング法は相同組み換えを基本としているため、比較的類似した配列間での組み換えに限定される。即ち、配列類似性の低いDNA間でシャッフリングさせることは困難である。さらに、目的の変異体集団を得るためには、DNAの切断、連結といった一連の煩雑な操作が要求される。
【0007】
化学合成により天然の遺伝子配列の一部もしくは全てをランダマイズ化した遺伝子集団を用いる手法は、人工RNA酵素(リボザイム)など機能性核酸の作成において有効な効果を示しているが、機能性人工タンパク質の創製には至っていない。その理由としては、(1)ランダムに変異を導入した集団には、タンパク質翻訳を停止するストップコドンが高頻度で出現するため、長いORF(Open Reading Frame)をもつ遺伝子の作製は難しい、(2)20種類のタンパク質が構成する配列空間は、4種類の塩基から構成される核酸の配列空間と比較して広大なために、ランダムな配列集団から機能性タンパク質を選択することが極めて困難である、ことなどが挙げられる。
【0008】
近年、核酸やタンパク質の機能や構造に重要な役割を果たす短い配列(モチーフ配列)の役割に注目が集まっている。モチーフ配列を利用して人工遺伝子集団を作成する手法として、本発明者の発明した高分子マイクロ遺伝子重合体の作製手法(特許3415995号公報; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:3805-3810, 1997)が挙げられる。この手法を用いることにより、全ての翻訳読み枠のストップコドンが排除された人工遺伝子を準備することができる。この方法は、あらかじめ終止コドンが排除された短いDNA配列(マイクロ遺伝子)をタンデムに重合し大きな翻訳読み枠を調製する方法である。更に、繰り返しの単位となるマイクロ遺伝子を、本発明者の発明した多機能塩基配列設計法(特開2001-352990号公報)を用い、三つの読み枠に目的の機能や構造に対応したモチーフ配列をコードするようにデザインすることから、潜在能力の高い人工遺伝子集団を調製することができる。
【0009】
しかしながら克服すべき課題として、(1)人工遺伝子集団に導入できるモチーフの数が、読み枠の数に対応した三つに限定される、(2)配列多様性をもつ人工遺伝子集団作成のためには、マイクロ遺伝子重合反応の際に生じるランダムなフレームシフトに依存する、(3)目的の実験に応じてモチーフ配列の出現頻度を調節することが困難である、ことが挙げられる。 また、上記のマイクロ遺伝子重合体の作製手法(特許3415995号公報)は、マイクロ遺伝子の繰り返し重合体の作成を目的とするため、複数種のモチーフ配列をランダムに重合した遺伝子集団を作製するには至っていない。
【0010】
以上の背景から、天然には存在しない非凡な機能を持った人工タンパク質を進化分子工学的に創製する場合の成功の鍵となる人工遺伝子多様性集団(ライブラリー)を効果的に創出するために、複数種のモチーフ配列を少なくともその一部でコードするDNAのランダムな組み替え技術で、かつ用いるDNAの全体にわたっての配列類似性を必要としない組み替え技術及び長い翻訳読枠(Open Reading Frame;ORF)を有し、目的の実験に適応して自在にモチーフ配列の出現頻度を制御できるコンビナトリアルな人工遺伝子集団及び人工タンパク質集団作成技術の開発が求められている。
【0011】

【特許文献1】特許3415995号公報。
【特許文献2】特開2001-352990号公報。
【非特許文献1】Science,219,666-671,1983。
【非特許文献2】科学、67,938-947,1997。
【非特許文献3】PCR Methods Appl, 2:28-33, 1992。
【非特許文献4】Nature, 370:389-391, 1994。
【非特許文献5】Trends Biochem. Sci. 26:100-106, 2001。
【非特許文献6】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:3805-3810, 1997。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、機能性人工遺伝子或いは機能性人工タンパク質の効果的な創出を目的として、多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団、該人工遺伝子集団がコードする人工タンパク質集団、及びその作製法を提供すること、更には、少なくともその一部でモチーフ配列をコードし、全体にわたっての高い配列類似性を条件としないDNAをランダムに重合することができ、かつ、ストップコドンの出現を回避した一本鎖DNAをランダムに重合することで、長い翻訳読枠(ORF)を有するDNA配列のランダム重合を可能とした、コンビナトリアルな人工遺伝子及び人工タンパク質集団の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAを少なくても3種以上構築し、その一本鎖DNA配列の末端配列の一部に互いに相補的塩基対を形成できるような塩基配列を導入し、該多種の一本鎖DNAを任意の割合で混合して、DNAポリメラーゼを作用させることにより、相補的塩基対の組合わせと多種の一本鎖DNAのそれぞれの濃度等による塩基対の形成の頻度により、多数種のモチーフ配列をコードするDNA間でのランダムな重合反応を進行させることが可能であり、かつ、全体にわたっての高い配列類似性を条件としない、少なくともその一部でモチーフ配列をコードするDNA間でのランダムな組み替え、及び長い翻訳読枠(ORF)を有するDNA配列のランダム重合が可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAの少なくても3種以上のDNA配列を構築し、該一本鎖DNA配列の末端配列の一部が互いに相補的塩基対を形成できるように、相補的塩基配列を導入し、該方法により構築した多種の一本鎖DNAを任意の割合で混合した反応液にDNAポリメラーゼを作用させることにより、モチーフ配列をコードするDNA間でのランダムな重合反応を進行させ、多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団を作製することからなる。本発明におけるのモチーフ配列としては、少なくても3種以上、望ましくは4種以上のモチーフ配列をそれぞれ存在させた一本鎖DNAを構築することが望ましい。
【0015】
本発明において、一本鎖DNA配列の末端配列の一部の相補的塩基対は、通常、3´末端に導入することができ、該相補的塩基対の数は6塩基以上であることが好ましい。該相補的塩基対の両端には、相手の塩基と対にならない塩基を1塩基以上、好ましくは1~3の範囲で存在させ、DNAポリメラーゼによる重合反応の効率を上げることができる。本発明において、任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAは、機能モチーフ配列、構造モチーフ配列、進化分子工学的に取得された人工ペプチド配列、又はタンパク質工学的な知識に基いてデザインされた配列に基いて構築されたマイクロ遺伝子であることができ、該マイクロ遺伝子の構築に際しては、合成する一本鎖DNA配列内で、予め各翻訳読み枠で、停止コドンを排除しておくことができる。また、本発明においては、多数種モチーフ配列をコードする一本鎖DNAに制限酵素認識配列を付加することで、ランダム重合反応で利用されるモチーフ配列の出現頻度を制限酵素反応により直接モニターできるように人工遺伝子集団の作製を行うことができる。
【0016】
本発明の、多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法により作製された人工遺伝子集団は、更に、この人工遺伝子集団を翻訳し、人工タンパク質に変換することで、多数種モチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団を作製することができる。該人工タンパク質集団の作製に際して、本発明においては、多数種モチーフ配列をコードする一本鎖DNAを塩基変異、欠損を挿入することなくランダムに重合して人工遺伝子集団を作製し、該人工遺伝子集団を翻訳することでフレームシフトに依存せずに、多数種モチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団を作製することができる。また、本発明においては、多数種モチーフ配列をコードする一本鎖DNAを塩基変異、欠損を挿入しつつランダムに重合して人工遺伝子集団を作製し、該人工遺伝子集団を翻訳することでフレームシフトに依存して、多数種モチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団を作製することができる。このようにして、調製される本発明の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団、或いは、多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団は、それらの集団について、機能性遺伝子或いは機能性タンパク質をスクリーニングすることにより機能性人工遺伝子又は機能性人工タンパク質を創出することができる。
【0017】
すなわち具体的には本発明は、[1](1)任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAの少なくても3種以上のDNA配列を構築し、(2)該一本鎖DNA配列の3´末端配列の一部が互いに相補的塩基対を形成し、かつ該相補的塩基対の両端に相手の塩基と対にならない塩基が1塩基以上存在するように、相補的塩基配列を導入し、(3)該方法により構築した多種の一本鎖DNAを調節された濃度で混合した反応液にDNAポリメラーゼを作用させることにより、モチーフ配列をコードするDNA間でのランダムな重合反応をランダム重合反応で利用されるモチーフ配列の出現頻度をコントロールして進行させることを特徴とする多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法や、[2]任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAの少なくても4種以上のDNA配列を構築し、該一本鎖DNAを調節された濃度で混合した反応液にDNAポリメラーゼを作用させることにより、モチーフ配列をコードするDNA間でのランダムな重合反応を進行させることを特徴とする前記[1]記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法や、[]相補的塩基対の数が、6塩基以上であることを特徴とする前記[1]又は[2]記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法や、[]相補的塩基対の両端に、相手の塩基と対にならない塩基を1~3のいずれかの塩基数、存在させたことを特徴とする前記[1]~[3]のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法、[]また多種の一本鎖DNAの相補的塩基対の組合わせを調節して、ランダム重合反応で利用されるモチーフ配列の出現頻度をコントロールすることを特徴とする前記[1]~[]のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法や、[]ランダム重合反応系に加えられる多種の一本鎖DNAの濃度が、0.2μM~20μMの範囲で変動することを特徴とする前記[1]~[]のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法からなる。
【0018】
また本発明は、[]構築した多種の一本鎖DNAを反応液に混合し、該導入した一本鎖DNAの相補的塩基配列を鋳型として、3´末端から5´末端方向に作用するエキソヌクレアーゼ活性を含む耐熱性DNAポリメラーゼを作用させることにより、モチーフ配列をコードするDNA間でのランダムな重合反応を進行させることを特徴とする前記[1]~[]のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法や、[]任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAが、機能モチーフ配列、構造モチーフ配列、進化分子工学的に取得された人工ペプチド配列、又はタンパク質工学的な知識に基いてデザインされた配列に基いて構築されたマイクロ遺伝子であることを特徴とする前記[1]~[]のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法や、[]マイクロ遺伝子の構築に際して、合成する一本鎖DNA配列内で、予め各翻訳読み枠で、停止コドンを排除しておくことを特徴とする前記[]記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法および[10]任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAが、多数種モチーフ配列をコードする一本鎖DNAに制限酵素認識配列を付加することで、ランダム重合反応で利用されるモチーフ配列の出現頻度を制限酵素反応により直接モニターできるように構築されていることを特徴とする前記[1]~[]のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法からなる。
【0019】
更に本発明は、[11]前記[1]~[10]のいずれか記載の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法により作製した遺伝子を組込んだベクターを、宿主細胞に導入し、発現することを特徴とする多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団の作製方法や、[12]多数種モチーフ配列をコードする一本鎖DNAを塩基変異、欠損を挿入することなくランダムに重合して人工遺伝子集団を作製し、該人工遺伝子集団を翻訳することでフレームシフトに依存せず多様性分子集団をえることを特徴とする前記[11]記載の多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団の作製方法や、[13]多数種モチーフ配列をコードする一本鎖DNAを塩基変異、欠損を挿入しつつランダムに重合して人工遺伝子集団を作製し、該人工遺伝子集団を翻訳することでフレームシフトに依存して多様性分子集団をえることを特徴とする前記[11]記載の多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団の作製方法および[14]前記[1]~[10]のいずれか記載の作製方法により作製された、多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団、又は前記[11]~[13]のいずれか記載の多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団について、機能性遺伝子或いは機能性タンパク質をスクリーニングすることを特徴とする機能性人工遺伝子又は機能性人工タンパク質の創出方法からなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のモチーフ配列を利用した人工タンパク質集団作製の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施例における、制限酵素認識配列を含む一本鎖DNAのデザイン (上)及びランダム重合反応の電気泳動図を示す図である。KY-1354の3´端が、KY-1355-KY-1357の3´端と相補的塩基対を形成するようにデザインした。電気泳動の結果、KY-1354のみでは、重合反応は進行しないが(レーン1)、種々の組み合わせでDNAを混合することで、重合反応が進行した(レーン2-6)。Mは、マーカーDNAを表す。
【図3】本発明の実施例において、制限酵素反応による複数種DNAランダム重合の確認の結果を示す図である。
【図4】本発明の実施例における、制限酵素認識モチーフをもつDNA重合産物の配列を示す図である。
【図5】本発明の実施例における、アポトーシス制御型タンパク質に存在するBH1-BH4モチーフをもつ一本鎖DNAのデザイン(A)とデザイン(B)を示す図である。デザインAでは、KY-1372の3´端が、KY-1374、KY-1375、KY-1377の3´端と相補的塩基対を形成するようにデザインした。デザインBでは、KY-1372及びKY-1379の3´端が、KY-1374 及びKY-1375の3´端と相補的塩基対を形成するようにデザインした。
【図6】本発明の実施例における、BH1-BH4モチーフを含む一本鎖DNA重合反応の電気泳動図を示す図である。。デザインA及びデザインBで合成された4種一本鎖DNAは、ともに重合反応を進行させることを確認した。
【図7】本発明の実施例における、制限酵素反応によるBH1-BH4モチーフを含む一本鎖DNAランダム重合の確認の結果を示す図である。制限酵素反応後の電気泳動図により、それぞれのモチーフがランダムに重合することを確認した。
【図8】a,b,cは、本発明の実施例におけるデザインAにより得られた人工遺伝子集団及びその翻訳産物である人工タンパク質集団の配列を示す図である。
【図9】本発明の実施例における、人工タンパク質の哺乳類細胞での発現の確認の結果を示す図である。デザインAにより得られた人工タンパク質A6の遺伝子を乳癌細胞株MCF-7に導入し、その発現をAlexa-His抗体による免疫染色で確認した。これら人工タンパク質は、ミトコンドリアに局在して発現することがわかった。
【図10】本発明の実施例において、デザインBにより得られた人工遺伝子集団及びその翻訳産物である人工タンパク質集団の配列を示す図である。
【図11】本発明の実施例において、アポトーシス制御型タンパク質に存在するBH1-BH4モチーフをもつ一本鎖DNAのデザイン(C、D)及び一本鎖DNA重合反応の電気泳動図の結果を示す図である。デザイン(C)では、4種類一本鎖DNA(KY-1372、KY-1389、KY-1391)を等量混合し、重合させたのに対し、デザイン(D)では、KY-1372:KY-1389:KY-1390:KY-1391=2:2:0.4:0.3のように、BH4とBH3モチーフをコードするKY-1372とKY-1389の割合を多くして重合反応系に加えた。
【図12】本発明の実施例において、制限酵素反応によるBH1-BH4モチーフを含む一本鎖DNAランダム重合の確認結果を示す図である。デザインC及びDにおいて、三つの制限酵素による部分的切断が確認された。
【図13】a,bは、本発明の実施例においてデザインCにより得られた人工遺伝子集団及びその翻訳産物である人工タンパク質集団の配列を示す図である。
【図14】a,b,cは、本発明の実施例においてデザインDにより得られた人工遺伝子集団及びその翻訳産物である人工タンパク質集団の配列を示す図である。
【図15】本発明の実施例において、人工タンパク質集団(C)と人工タンパク質集団(D)におけるBH1-BH3モチーフの出現頻度を比較した結果を示す図である。BH3モチーフをコードする一本鎖DNA(KY-1389)の濃度を高くして調製したタンパク質集団(D)では、BH3モチーフの出現頻度が上昇した。
【図16】本発明の実施例における、人工タンパク質のヒト癌細胞内部での様々な局在パターンを示す図である。
【図17】本発明の実施例において、取得した人工タンパク質D29をコードする遺伝子の導入により、乳癌細胞株MCF-7に誘導されたアポトーシス細胞の数を定量した図である。その効果は天然のアポトーシス誘導型タンパク質Baxと同等であり、約30%の細胞がアポトーシス陽性細胞であった。コントロール人工タンパク質A10の遺伝子を導入した細胞では、そのようなアポトーシス陽性細胞は確認されないことがわかった。
【図18】本発明の実施例において、D29を発現する細胞でアポトーシスが効果的に誘導されていることを示す図である。共焦点顕微鏡による二重染色(緑;発現したタンパク質、赤;アポトーシス陽性細胞)により、D29を発現した細胞とアポトーシス陽性細胞の相関が確認できた。コントロール人工タンパク質A10を発現した細胞では、アポトーシスは誘導されないことがわかった。
【図19】本発明の実施例において、取得した人工タンパク質A10またはD16をコードする遺伝子の導入により、子宮頸癌細胞株HeLaに誘導された増殖阻害の抑制活性を定量した図である。天然型アポトーシス誘導タンパク質BIM、または抗癌剤エトポシド(VP-16)、スタウロスポリン(STS)によりHeLaの細胞数は減少するが(WST-1により定量、コントロールpcDNA参照)、A10またはD16遺伝子の導入により、増殖活性は部分的に回復した。この増殖阻害抑制効果は、天然のアポトーシス抑制型タンパク質であるBcl-xLの遺伝子をコードするプラスミドを導入した細胞でも同様に観察できた。
【図20】本発明の実施例において、取得した人工タンパク質A10またはD16が、STSにより誘導されたアポトーシスを抑制できることを示した図である。遺伝子導入後24時間で125nM濃度のSTSを含む培地に交換し、細胞をさらに23時間培養した。アポトーシス細胞をTUNEL法で染色した結果(赤)、コントロールのpcDNAやD29を導入した細胞では、効果的にアポトーシスが誘導されているのに対し、アポトーシス抑制型Bcl-xL遺伝子を導入した細胞ではTUNEL陽性細胞数が減少した。A10やD16の遺伝子を導入した細胞では、アポトーシスが部分的に抑制された。
【図21】本発明の実施例において、取得した人工タンパク質D16を発現した細胞が、アポトーシス陰性になることを示した図である。図20と同様にSTS投与後23時間経過した細胞を固定した後、人工タンパク質をMyc一次抗体とFITC二次抗体により緑で染色し、アポトーシス細胞をTMR-red標識(赤)で二重染色した。D16やBcl-xLを発現した細胞では、アポトーシスが抑制されることがわかった。D29を発現した細胞では、アポトーシス陽性になることが確認できた。

【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、機能性人工遺伝子或いは機能性人工タンパク質の効果的な創出を目的として、多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団、該人工遺伝子集団がコードする人工タンパク質集団、及びその作製法を提供することからなる。本発明の多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団の作製方法は、(1)任意のモチーフ配列をコードする配列を含む一本鎖DNAの少なくても3種以上のDNA配列を構築し、(2)該一本鎖DNA配列の末端配列の一部が互いに相補的塩基対を形成できるように、相補的塩基配列を導入し、(3)該方法により構築した多種の一本鎖DNAを任意の割合で混合した反応液にDNAポリメラーゼを作用させることにより、モチーフ配列をコードするDNA間でのランダムな重合反応を進行させることにより、多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団を作製することからなる。
【0022】
本発明の人工遺伝子集団の作製方法を、操作に沿って、例を挙げながら具体的に説明する。図1に示すように、まず目的のモチーフ配列を含む複数種(多数種)の一本鎖DNAを合成する。本発明では、複数種の一本鎖DNAの3´側の配列の一部が相補的塩基対を形成できるように合成する。相補的塩基対の数は、6塩基以上が望ましい。但し相補的塩基対の両端には、相手の塩基と対にならない塩基を1塩基以上(好ましくは1-3塩基)存在するように合成する。この操作により、重合反応の効率を上昇することができる。また、加える複数種の一本鎖DNAの種類、配列、長さ、組み合わせに制限はなく、任意の配列をコードする複数種の一本鎖DNAを本反応に利用することができる。更に、相補的塩基対を形成する一本鎖DNAの組み合わせにも制限はない。
【0023】
例えば、4種類の一本鎖DNAを用いて反応させる場合、一種類の一本鎖DNAの3´配列に対し、残り3種類の一本鎖DNAの3´配列が相補的配列を形成してもよいし、相同な3´末端配列をもつ二種類の一本鎖DNAに対し、残りの二種類の一本鎖DNAの3´配列が均等に相補的配列を形成できるようにデザインしてもよい。また、反応系に加える一本鎖DNAの濃度は、0.2μM~20μMで変動することが可能であり、より重合反応に利用したい一本鎖DNAの濃度を高くして、反応系に加える。即ち、相補的塩基対の組み合わせと一本鎖DNA濃度を調節することで、ランダム重合反応で利用されるモチーフ配列の出現頻度をコントロールすることができる。また、複数種の一本鎖DNAの設計の際、それぞれの配列の長さ及びTmを近い値にすることが望ましい。
【0024】
これら複数種の一本鎖DNAの相補した領域が耐熱性ポリメラーゼを利用したPCR反応の鋳型として機能する。このような複数種の一本鎖DNA存在下で3´末端から5´末端方向に作用する(3´→5´)エキソヌクレアーゼ活性を含む耐熱性DNAポリメラーゼを作用させてPCR反応を行うと、モチーフ配列を含む複数種の一本鎖DNAがランダムに伸長、連結した二本鎖DNA重合体集団が合成される。PCRの条件は、DNAポリメラーゼ(例えば、Ventポリメラーゼ)を用いて、例えば94℃で10秒、及び55-75℃で60秒を1サイクルとして、これをDNA重合が確認できるまで(30~65サイクル)、最後に69℃で7分行う。上記反応を行う前に、更に94℃で10分、及び69℃で10分の反応を行うのが好ましい。さらに、伸長反応温度は、一本鎖DNAのTm-5℃に近い値を設定することが好ましい。
【0025】
このようにして、複数種の一本鎖DNAの相補した領域がランダムな組み合わせで塩基対を形成し、伸長、重合反応を繰り返す結果、モチーフ配列をコードするDNAがランダムにシャフリングされた、二本鎖人工DNA集団が作製される。なお、本発明の方法では、本発明者の発明した高分子マイクロ遺伝子重合体の作製手法(特許3415995号公報; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:3805-3810, 1997)とは異なり、重合反応の際DNA鎖間で生じる塩基の置換、挿入、欠損に依存せずに配列多様性集団を作製することができる。
【0026】
以上に、本発明の人工遺伝子集団の作製方法について、例を挙げて具体的に説明したが、本発明の人工遺伝子集団の作製方法では、上記のように多種の一本鎖DNAの相補的塩基対の組合わせ及び/又は多種の一本鎖DNAのそれぞれの濃度を調節して、ランダム重合反応で利用されるモチーフ配列の出現頻度をコントロールすることが可能である。また、本発明の人工遺伝子集団の作製方法においては、多数種のモチーフ配列を任意に選定し、ランダムに重合して、人工遺伝子集団、及び、人工タンパク質集団を作製するに際し、任意のモチーフ配列を、機能モチーフ配列、構造モチーフ配列、進化分子工学的に取得された人工ペプチド配列、又はタンパク質工学的な知識に基いてデザインされた配列のような配列に基いて構築し、人工遺伝子集団の作製に際して、ある程度の機能を合理性をもって予測して、人工遺伝子集団の作製を行うことが可能となる。
【0027】
本発明の人工遺伝子集団の作製方法により作製した、多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団は、該遺伝子を組込んだベクターを、宿主細胞に導入し、発現することにより、多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団を作製することができる。該人工タンパク質集団の作製に用いられるベクター、宿主細胞及びその遺伝子の発現方法は、この分野で公知のベクター、宿主細胞、及び遺伝子の発現方法が用いられる。本発明の方法により作製された多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団、或いは、多種のモチーフ配列をランダムに挿入した人工タンパク質集団は、該人工遺伝子集団或いは人工タンパク質集団について、機能性遺伝子或いは機能性タンパク質をスクリーニングすることにより、機能性人工遺伝子又は機能性人工タンパク質の創出を行うことができる。
【0028】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
なお、実施例の記載に先立って、本発明のモチーフ配列を利用した人工タンパク質集団作製の戦略を図1に示す。本手法は、(1)モチーフ配列をコードする複数種1本鎖DNAのデザイン、(2)複数種1本鎖DNA間でのランダム重合反応、(3)制限酵素切断反応によるランダム重合反応効率の検討、(4)ランダム重合体の大腸菌への形質転換及び配列決定、(5)大腸菌または哺乳類細胞での人工タンパク質発現及び機能性人工タンパク質のスクリーニング、の5スキームより構成される。人工遺伝子集団を得たい時(人工タンパク質の発現を必要としない場合)は、(1)-(4)までのステップで反応は完了する。本実施例では、一般的に4種類のモチーフ配列のランダム重合による人工遺伝子及び人工タンパク質集団作製を試みているが、反応に利用できるモチーフの数は4種類に限定されない(それ以上の数も理論上可能である)。以下具体的実験例を挙げる。
【実施例1】
【0029】
[制限酵素認識モチーフを含む4種1本鎖DNAのランダム重合による人工遺伝子集団の作製]
(制限酵素認識配列を含む一本鎖DNAのデザイン)
機能性配列を含む一本鎖DNAとして、制限酵素認識配列を含む4種類の一本鎖DNAを以下のように合成した。KY-1354(配列番号1: 5’-GGGGAATTCGGC GGGA-3’)、KY-1355(配列番号2: 5’-GGGAAGCTTACCCGCCA-3’)、KY-1356(配列番号3: 5’-GGGTCTAGAACCCGCCA-3’)、KY-1357(配列番号4: 5’-GGGAGATCTACCCGCCA-3’)。ここで、KY-1354、KY-1355、KY-1356、KY-1357の第4番目~9番目の配列(下線部)は、それぞれ制限酵素認識配列GAATTC (EcoRI)、AAGCTT (HindIII)、TCTAGA (XbaI)、AGATCT (BglII)を含むように設計した。また、KY-1354の第10番目~15番目の6塩基(5’-GGCGGG-3’)が、KY-1355、KY-1356、KY-1357の第11番目~16番目の6塩基(5’-CCCGCC-3’)と相補的塩基対を形成するように設計した。また、KY-1355、KY-1356、KY-1357の3´末端及び第10番目には、KY-1354と6塩基以上の相補的塩基対を形成できないようにアデニン(A)を導入した。更に、これら4種類の一本鎖DNAの長さ(16-17塩基)、Tm(~58℃)、GC含量(65-69%)がそれぞれ近い値をとるように4種類の一本鎖DNAを設計した。
【0030】
(制限酵素認識配列を含む一本鎖DNAのランダム重合反応)
まず、上記一本鎖DNAのランダム重合反応液50μLを調整した。この反応液には、10 x ThermoPol Reaction Buffer (NEW ENGLAND BioLabs,1x ThermoPol Reaction Buffer:20mM 2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3、-プロパンジオール塩酸塩(以下トリス塩酸)pH 8.8、10mM 塩化カリウム、10mM 硫酸アンモニウム、2mM 硫酸マグネシウム、0.1% トライトンX-100)を5μL、350μMdNTP、3´→5´エクソヌクレアーゼ活性をもつVent DNA polymerases(2 units/μL、NEW ENGLAND BioLabs)を2.6μL、及び4種類の一本鎖DNA(KY-1354-KY-1357)を以下6種類の割合で混合した。(1)KY-1354:20 pmolのみ (DNA1種)、(2)KY-1354:20 pmol+KY-1355:20 pmol (DNA2種)、(3)KY-1354:20 pmol+KY-1356:20 pmol (DNA2種)、(4)KY-1354:20 pmol+KY-1357:20 pmol (DNA2種)、(5)KY-1354:20 pmol+KY-1355:10 pmol +KY-1356:10 pmol(DNA3種)、(6)KY-1354:20 pmol+KY-1355:6.7 pmol+KY-1356:6.7 pmol+KY-1357:6.7 pmol(DNA4種)。
【0031】
これら反応液を200μL thin wall PCRチューブ (東洋紡績,大阪)に入れ、サーマルサイクラーPCR-2400(パーキンエルマー, Norwalk)による温度サイクルで上記複数種一本鎖DNA間での重合反応をおこなった。重合反応の前処理として、94℃で10分、69℃で10分の反応を行った。重合反応温度は、KY-1354-1357のTm値(58℃)以下になることを考慮して、55℃に設定した。重合反応サイクルは、94℃で10秒、55℃で60秒行い、40サイクルの反応を進行させた。重合反応終了後69℃ で7minの伸長停止反応を行った。DNA重合産物を1.0% TAE アガロースゲル(アガロースME 岩井化学 東京),及びMupid 電気泳動装置 (コスモバイオ、東京)を用いて、100V、15分で泳動させ、重合反応を確認した(図2)。本反応により、数キロ塩基対以上にも及ぶDNAがこの方法により重合されたことを確認した。
【0032】
(制限酵素反応による複数種DNAランダム重合の確認)
制限酵素認識配列を含む一本鎖DNAのランダムな重合を確認するため、任意の制限酵素を用いてDNA重合体の切断反応を行った。異なる制限酵素を含む5種類の反応溶液50μLを以下のように調整した。上記DNAの重合反応液5μL、10x制限酵素buffer B (HindIII, EcoRI)、又はM(BglII)、又はH(XbaI)を5μL、(ロシュダイアグノスティック社, Basel)、制限酵素(ロシュダイアグノスティック社, Basel)は、5類の反応溶液に対しそれぞれ、(1)酵素なし、(2)HindIII(10units/μL)を2μL、(3)BglII(10units/μL)を2μL、(4)XbaI(40units/μL)を2μL、(5)EcoRI(10units/μL)を2μL、という条件で加えた。切断反応は、37℃、90分で進行させた。DNA切断反応を確認するため、50μLの反応液から5μLを抽出し、1.0%TAEアガロースゲルによる電気泳動(100V、15分)を行った。(図3)。図3により、1-2におけるDNA重合体は、重合反応に利用した任意の一本鎖DNAに含まれる制限酵素配列で切断されること、また複数種一本鎖DNAから構成されたDNA重合体は、複数種制限酵素で切断されることを確認した。このことから、制限酵素認識モチーフを含む一本鎖DNA間でのランダムな重合、伸長反応が生じることがわかった。
【0033】
(大腸菌への形質転換及びDNA重合産物の配列決定)
上記のDNA配列間でのランダムな重合反応液を市販のZero Blunt TOPO PCR Cloning Kit (Invitrogen, CA)を利用してクローニング及び配列決定を行った。ライゲーション反応は6μLの反応スケールで行い、この反応液には、DNA重合産物1μL、Salt Solution 1μL、TOPO vector 1μL、超純水3μL が含まれる。以上反応液を室温30分で反応させた後、2μL反応液をTop-10cell(Invitrogen)に混合し、形質転換した。インサートを含む18クローンを選択し、そのプラスミドをQIAGEN mini kit(キアゲン)により精製し、DTCS cycle sequence reaction kit(ベックマン)を用いたダイターミネイト法によりキャピラリーシーケンサーCEQ2000XL DNA analyzer(ベックマン)で配列を決定した。KY-1354、KY-1355、KY-1357、の3種一本鎖DNAを混合した重合体から得られたクローン一つ(EHB#7:配列番号5)と、KY-1354、KY-1355、KY-1356、KY-1357の4種一本鎖DNAを混合した重合体から得られたクローン三つ(EHBX1~EHBX3:配列番号6、7、8)を図4に示す。図4で示されるように、3又は4種類の制限酵素認識配列を含むDNAが任意の割合でランダム重合した、人工遺伝子集団を得ることができた。
【実施例2】
【0034】
[アポトーシス制御型タンパク質に存在するBH1-BH4モチーフ配列ランダム重合による人工タンパク質集団(A)の作製]
(アポトーシス制御モチーフBH1-BH4の選択)
プログラムされた自発的細胞死(アポトーシス)を制御する天然タンパク質として、Bcl-2 familyタンパク質ファミリーが知られている。そのファミリーに属するBcl-xlはアポトーシス抑制に、Noxaは、アポトーシス促進に重要であることがわかっている。ここでは、human Bcl-xlタンパク質に内在するBH1、BH2、BH4モチーフの一部配列、及びhuman Noxaタンパク質に内在するBH3モチーフの一部配列を、人工タンパク質集団作成のモチーフ配列として利用することを試みた。以下のペプチド配列をコードする部分をBH1-BH4モチーフからそれぞれ選択した。BH1:ELFRDGVN、BH2:ENGGWDTF、BH3:LRRFGDKLN、BH4:RELVVDFL。
【0035】
(BH1-BH4モチーフ配列をコードする一本鎖DNAのデザイン:A)
BH1-BH4モチーフから構成される人工タンパク質集団Aを作成するために、各翻訳読み枠の停止コドンを排除した一本鎖DNAを芝らの発明した多機能塩基配列設計法(特開2001-352990)によりデザインした。ここでは、BH1-BH4モチーフをコードする遺伝子の別の読み枠には、人工タンパク質の安定化を助けるために、α-ヘリックス性の高いペプチドがコードされるように4種類一本鎖DNAをデザインした(図5)。ここで、KY-1372(配列番号9)、KY-1377(配列番号10)、KY-1375(配列番号11)、KY-1374(配列番号12)は、それぞれ制限酵素認識配列GTCGAC (SalI)、AAGCTT(HindIII)、AGATCT (BglII)、GAATTC (EcoRI)を含むように設計した(図5、デザインA、下線)。
【0036】
また、KY-1372の3´端7塩基(5’-GGCGGGG-3’)が、KY-1377、KY-1375、KY-1374の3´端7塩基(5’-CCCCGCC-3’)と相補的塩基対を形成するように設計した。また、KY-1372の3´末端及び3´末端から9番目の塩基には、7塩基対以上の相互作用が形成されないようにアデニン(A)及びシトシン(C)をそれぞれ挿入した。さらに、これら4種類の一本鎖DNA設計の際に、その長さ(40-45)、GC塩基の含有度(55-65%)、分子内ヘアピン形成能、Tmがそれぞれ近い値をとるように設計した。
【0037】
(BH1-BH4モチーフを含む一本鎖DNAのランダム重合反応)
まず、上記一本鎖DNAのランダム重合反応液50μLを調整した。この反応液組成は、10 x ThermoPol Reaction Buffer(実施例1と同様)を5μL、350μM dNTP、Vent DNA polymerases (2 units/μL, NEW ENGLAND BioLabs)を2.6μL、及び4種類の一本鎖DNA(KY-1372、KY-1377、KY-1375、KY-1374)を種々の割合で混合し、実施例1と同様のDNAランダム重合反応を行った。重合反応の前処理として、94℃で10分、69℃で10分の反応を行った。重合反応温度は、72℃に設定した。重合反応サイクルは、94℃で10秒、55℃で60秒行い、40サイクルの反応を進行させた。
【0038】
重合反応終了後69℃で7minの伸長停止反応を行った。DNA重合産物を1.0%TAEアガロースゲル(アガロースME 岩井化学 東京)、及びMupid 電気泳動装置 (コスモバイオ、東京)を用いて、100V、15分で泳動させ、重合反応を確認した(図6)。また、BH1-BH4モチーフをコードする一本鎖DNAがそれぞれ類似の頻度でランダム重合するように、反応の最適化を行った結果、KY-1374:KY-1375:KY-1377:KY-1372=2:1:100:100のように一本鎖DNA量比を設定した。本反応により、数キロ塩基対以上にも及ぶDNAがこの方法により重合されたことを確認した。
【0039】
(制限酵素反応によるBH1-BH4モチーフを含むDNAランダム重合の確認)
BH1-BH4モチーフ配列を含む一本鎖DNAのランダムな重合を確認するため、任意の制限酵素を用いてDNA重合体の切断反応を行った。異なる制限酵素を含む5種類の反応溶液50μLを以下のように調整した。DNA重合反応液5μL、10x制限酵素buffer H(SalI, or EcoRI)、又はM(HindIII,or BglII)を5μL、(ロシュダイアグノスティック社, Basel)、制限酵素(ロシュダイアグノスティック社, Basel)は、5類の反応溶液に対しそれぞれ、(1)酵素なし、(2)SalI (40units/μL)を2μL、(3)HindIII(10units/μL)を2μL、(4)EcoRI(10units/μL)を2μL、(5)BglII(10units/μL)を2μLという条件で加えた。切断反応は、37℃、90分で進行させた。DNA切断反応を確認するため、50μLの反応液から5μLを抽出し、1.0%TAEアガロースゲルによる電気泳動(100V、15分)を行った(図7)。図7のように、BH1-BH4モチーフ配列を含む一本鎖DNAから構成されたDNA重合体が、用いた全ての制限酵素で部分的に切断されることがわかった。このことから、4種類一本鎖DNA間でのランダムな重合反応が確認できた。
【0040】
(大腸菌への形質転換、スクリーニング、及びDNA重合産物の配列決定)
上記BH1-BH4モチーフを含むDNA重合反応産物を市販のpcDNA3.1Directional TOPO Expression Kit (Invitrogen, CA)を利用してクローニング及び配列決定を行った。ここでは、哺乳類細胞系での機能性人工タンパク質スクリーニングのために、哺乳類発現ベクター(pcDNA3.1D/V5-His-TOPO, Invitrogen)に人工遺伝子をライゲーションした。ライゲーション反応は6μLのスケールで行い、この反応液には、DNA重合反応産物1μL、Salt Solution 1μL、TOPO vector 1μL、超純水3μLが含まれる。以上反応液を室温30分で反応させた後、2μLの反応液をTop-10cell(Invitrogen)に混合し、氷上に30min静地したのち形質転換した。スクリーニングPCRより、インサートを含むクローンから10種を選択し、そのプラスミドをQIAGEN mini kit(キアゲン)により精製し、DTCS cycle sequence reaction kit(ベックマン)を用いたダイターミネイト法によりキャピラリーシーケンサーCEQ2000XL DNA analyzer(ベックマン)で配列を決定した(配列番号13-42)。
【0041】
得られた人工タンパク質の遺伝子配列及びアミノ酸配列を図8(配列番号13-42)に示す。図8から、BH1-BH4モチーフをコードする人工DNAがランダムに挿入した人工タンパク質集団を作成できることがわかった。また、「BH1-BH4モチーフ配列を含む一本鎖DNAのデザインA」においては、より配列多様性の高いライブラリー作製のために、DNA重合反応の際に生じるフレームシフトに依存してモチーフが導入されるように遺伝子をデザインした (フレームシフトが起きなければ読み枠がずれる)。図8に示すように、BH1-BH4モチーフをコードする読み枠とは別の読み枠配列が多く出現した。このように本手法では、複数種モチーフ配列を利用してライブラリーを作製できるが、別の翻訳読み枠の配列を利用することで配列多様性を増加させることが可能である。
【0042】
(人工タンパク質の哺乳類細胞での発現の確認)
上記配列決定した人工タンパク質の哺乳類細胞での発現を確認するため、MxA6(図8、a,b、c参照)の遺伝子をコードするプラスミドを代表的ヒト乳癌細胞株の一つであるMCF-7に遺伝子導入した。コントロールとしては、人工タンパク質をコードしないpcDNAベクター(Invitrogen)を細胞に導入した。遺伝子導入24時間後にMCF-7をメタノール固定し、ヒスチジン-タグのついた人工タンパク質の発現をAlexa-His-抗体(キアゲン社)による免疫染色で確認した(図9)。図9のように、コントロールでは発現が認められないのに対しMxA6の遺伝子を導入した細胞では、人工タンパク質の発現が認められ、またその局在は、ミトコンドリアに一致することがわかった。このような哺乳類細胞系または大腸菌の発現系を利用して、人工タンパク質集団の発現及び機能性人工タンパク質のスクリーニングを行うことができる。
【実施例3】
【0043】
[アポトーシス制御型タンパク質に存在するBH1-BH4モチーフ配列ランダム重合による人工タンパク質集団(B)の作製]
実施例2の人工タンパク質集団(A)の作製 では、BH4モチーフをコードするKY-1372がBH3、BH2又はBH1モチーフをコードする一本鎖DNA(KY-1377、KY-1375、KY-1374)と相補的塩基対を形成するようにデザインした(1:3対応)。人工タンパク質集団(B)の作製 では、BH3又はBH4モチーフをコードする一本鎖DNAが、BH2又はBH1モチーフをコードする一本鎖DNAと相補的塩基対を形成するようにデザインする(2:2対応)(図5)。このように、相補的塩基対を形成する一本鎖DNAの比は、自在に調節することができる。他の手法は基本的に人工タンパク質集団(A)の作製と同様である。
【0044】
(BH1-BH4モチーフ配列を含む一本鎖DNAのデザイン:B)
BH1-BH4モチーフから構成される人工タンパク質集団Bを作成するために、4種類の一本鎖DNAKY-1372、KY-1379(BH3モチーフ、配列番号43)、KY-1375、KY-1374を芝らの発明した多機能塩基配列設計法(特開2001-352990)によりデザインした。ここで、KY-1372、KY-1379、KY-1375、KY-1374は、それぞれ制限酵素認識配列GTCGAC (SalI), CTCGAG(XhoI), AGATCT (BglII), GAATTC (EcoRI)を含むように設計した(図5デザインB、下線)。また、KY-1372又はKY-1379の3´端7塩基(5’-GGCGGGG-3’)が、KY-1375及びKY-1374の3´端7塩基(5’-CCCCGCC-3’)と相補的塩基対を形成するように設計した。また、KY-1372及びKY-1379の3´末端及び3´末端から9番目の塩基には、7塩基対以上の相互作用が形成されないようにアデニン(A)及びシトシン(C)をそれぞれ挿入した。
【0045】
(BH1-BH4モチーフを含む一本鎖DNAのランダム重合反応)
まず、上記一本鎖DNAのランダム重合反応液50μLを調整した。XhoIをコードするKY-1379の重合反応検討のためにXhoIを利用したことを除いて、人工タンパク質集団(A)の作製の項と同様に調整した。重合反応は、1%アガロースゲルにより確認した。
【0046】
(図6)。また、BH1-BH4モチーフがそれぞれ類似の頻度でランダム重合するように、反応の最適化を行った結果KY-1374:KY-1375:KY-1379:KY-1372=4:1:10:1のようにBH1-BH4量比を設定した。
【0047】
(制限酵素反応によるBH1-BH4モチーフを含むDNAランダム重合の確認)
BH1-BH4モチーフ配列を含む一本鎖DNAのランダムな重合を確認するため、任意の制限酵素を用いてDNA重合体の切断反応を行った。制限酵素にXhoIを加えたことを除いて、反応は人工タンパク質集団(A)の作製の項と同様である。5類の反応溶液に対しそれぞれ、(1)酵素なし、(2)SalI(40units/μL)を2μL、(3)XhoI(10units/μL)を2μL(4)EcoRI(10units/μL)を2μL、(5)BglII(10units/μL)を2μLという条件で加えた。切断反応は、37℃、90分で進行させた。DNA切断反応を確認するため、50μLの反応液から5μLを抽出し、1.0%TAEアガロースゲルによる電気泳動(100V、15分)を行った。(図7)。図7のように、BH1-BH4モチーフ配列を含む一本鎖DNAから構成されたDNA重合体が、用いた全ての制限酵素で部分的に切断されることがわかった。このことから、4種一本鎖DNAのランダムな重合反応が確認できた。
【0048】
(大腸菌への形質転換、スクリーニング、及びDNA重合産物の配列決定)
人工タンパク質集団(A)の作製の項と同様に形質転換及び配列決定を行った。人工タンパク質の遺伝子配列及びアミノ酸配列を図10(配列番号44-53)に示す。
【実施例4】
【0049】
[アポトーシス制御型タンパク質に存在するBH1-BH4モチーフ配列ランダム重合による人工タンパク質集団(C)の作製]
実施例2及び実施例3における人工タンパク質集団(A、B)の作製では、DNA重合反応の際に生じるランダムな塩基欠損もしくは挿入に起因するフレームシフトに依存して、BH1-BH4モチーフが人工タンパク質集団にランダム挿入された。このため、BH1-BH4モチーフの出現頻度が比較的少なかった(違う翻訳読み枠が多く出現する)。ここではフレームシフトに依存せずに、BH1-BH4モチーフがランダム重合するように一本鎖DNAのデザインを改変した。他の手法は基本的に人工タンパク質集団(A)の作製と同様である。フレームシフトに依存せず、より多くのBH1-BH4モチーフが人工タンパク質集団に出現することが実施例4では期待される。
【0050】
(BH1-BH4モチーフ配列を含む一本鎖DNAのデザイン:C)
BH1-BH4モチーフから構成される人工タンパク質集団Cを作成するために、4種類の一本鎖DNA KY-1372、KY-1389(配列番号54)、KY-1390(配列番号55)、KY-1391(配列番号56)をデザインした(図11、KY-1372:BH4モチーフ、KY-1389:BH3モチーフ、KY-1390:BH1モチーフ、KY-1391:BH2モチーフ)。KY-1389、KY-1390、KY-1391はそれぞれKY-1377、KY-1374、KY-1375の5´末端にCCを付加した配列である。これにより、フレームシフトに依存せずに、ランダム重合したBH1-BH4モチーフが人工タンパク質集団に出現する。KY-1372、KY-1389、KY-1390、KY-1391は、それぞれ制限酵素認識配列GTCGAC (SalI), AAGCTT (HindIII), GAATTC (EcoRI), AGATCT (BglII)を含むように設計した(図11デザインC、下線)。また、KY-1372の3´端7塩基(5’-GGCGGGG-3’)が、KY-1389-KY-1391の3´端7塩基(5’-CCCCGCC-3’)と相補的塩基対を形成するように設計した。また、KY-1372の3´末端及び3´末端から9番目の塩基には、7塩基対以上の相互作用が形成されないようにアデニン(A)及びシトシン(C)をそれぞれ挿入した。
【0051】
(BH1-BH4モチーフを含む一本鎖DNAのランダム重合反応)
上記一本鎖DNAのランダム重合反応液50μLを人工タンパク質集団(A)の作製の項と同様に調整した。加える一本鎖DNAは、KY-1372:KY-1389:KY-1390:KY-1391=1:1:1:1のようにそれぞれ等量の一本鎖DNAを重合反応系に加えた。重合反応は、72℃、45サイクルで行い、1%アガロースゲルにより重合を確認した(図11)。
【0052】
(制限酵素反応によるBH1-BH4モチーフを含むDNAランダム重合の確認)
BH1-BH4モチーフ配列を含む一本鎖DNAのランダムな重合を確認するため、任意の制限酵素を用いてDNA重合体の切断反応を行った。反応条件は人工タンパク質集団(A)の作製の項と同様である。5類の反応溶液に対しそれぞれ、(1)酵素なし、(2)HindIII(10units/μL)を2μL、(3)EcoRI(10units/μL)を2μL、(4)BglII(10units/μL)を2μL、という条件で加えた。図12のように、BH1-BH4モチーフ配列を含む一本鎖DNAから構成されたDNA重合体が、用いた全ての制限酵素で部分的に切断されることがわかった。このことから、4種一本鎖DNAのランダムな重合反応が確認できた。
【0053】
(大腸菌への形質転換、スクリーニング、及びDNA重合産物の配列決定)
人工タンパク質集団(A)の作製の項と同様に形質転換及び配列決定を行った。デザインCにより得られた人工タンパク質の遺伝子及びアミノ酸配列を図13a,bに示す(配列番号57-74)。図13のように4つのBH1-BH4モチーフ配列が高頻度で出現する人工タンパク質集団をえることに成功した。
【実施例5】
【0054】
[アポトーシス制御型タンパク質に存在するBH1-BH4モチーフ配列ランダム重合による人工タンパク質集団(D)の作製]
実施例4の人工タンパク質集団(C)の作製の結果、得られたタンパク質集団は、比較的BH3モチーフの出現頻度が低いという結果が得られた。よって実施例5では、DNA重合反応に加える一本鎖DNAの量比は、KY-1372:KY-1389:KY-1390:KY-1391=2:2:0.4:0.3のように、BH4とBH3モチーフをコードするKY-1372とKY-1389の割合を多くして重合反応系に加えた。以外全ての反応条件は、実施例4の人工タンパク質集団(C)の作製と同様の条件で行った。図11にランダム重合体の電気泳動図、図12に制限酵素による切断、図14a,b,cに得られた人工タンパク質の遺伝子及びアミノ酸配列をそれぞれ示す(配列番号75-100)。図14に示すように、4つのモチーフが高頻度で出現し、特にBH4-BH3モチーフの出現頻度が高い人工タンパク質集団の作成に成功した。このように、DNA重合反応の際に混合する一本鎖DNAの量比を変化させることで、人工タンパク質集団に含まれるモチーフの割合を制御することができる。人工タンパク質集団(C)と人工タンパク質集団(D)におけるBH1-BH3モチーフの出現頻度を比較したものを図15に示す。
【実施例6】
【0055】
[人工タンパク質のヒト癌細胞での発現及び局在多様性]
実施例2、3、4、及び5で作製した人工タンパク質集団A、B、C、及びDの中から無作為に41クローンを選択し、その遺伝子をヒト乳癌細胞株MCF-7に導入した。遺伝子導入24時間後にMCF-7をメタノール固定し、Mycエピトープタグ(EQKLISEEDL;配列番号101)のついた人工タンパク質の発現をMyc抗体による免疫染色で確認した。その結果、41クローン中28クローン(68%)で、タンパク質の効果的発現がヒト細胞内で観察できた。また、その細胞内局在を検討した結果、細胞質に存在するもの(11クローン)、核に存在するもの(5クローン)、ミトコンドリアに存在するもの(5クローン)、それ以外(7クローン)と非常に多様であることがわかった(図16)。このように、本手法により得られた人工タンパク質は、哺乳類細胞内で効果的に発現し、細胞内で様々なオルガネラに局在できる能力をもつことがわかった。
【実施例7】
【0056】
[癌細胞に細胞死を誘導する機能性人工タンパク質の創出]
実施例6において、タンパク質発現を確認した28クローンの遺伝子をヒト乳癌細胞株MCF-7に導入し、MCF-7の増殖に及ぼす効果を検討した。96ウエルの細胞培養プレートに、1ウエルあたり1x10のMCF-7を播種し、37度で24時間培養した。その後、28クローンの遺伝子をコードするプラスミド0.2μgをリポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いてMCF-7内に導入した。遺伝子導入48時間後に、増殖活性をミトコンドリアの代謝活性の指標であるテトラゾリウム塩WST-1を用いて定量した(Roche)。コントロールであるタンパク質をコードしない空ベクターを導入した場合の増殖活性と比較した結果、28種のクローン中一つのクローンD29が、有為にMCF-7の増殖を阻害することがわかった(コントロールに対し約40%の増殖阻害効果)。
【0057】
この増殖阻害活性が、プログラムされた自発的細胞死(アポトーシス)によるものかどうかを検討するため、アポトーシス細胞を検出する指標であるTUNEL染色をおこなった(Roche)。TUNEL染色では、アポトーシス初期での断片化されたDNAを蛍光標識したヌクレオチドにより検出することができる。この結果、D29は天然細胞死誘導タンパク質Baxと同等の程度MCF-7にアポトーシスを誘導できることがわかった(図17)。これに対し、WST-1により細胞増殖阻害が認められなかったクローンの一つA10は、MCF-7にアポトーシスを誘導できないことがわかった。さらに共焦点顕微鏡をもちいて人工タンパク質を発現している細胞の状態を詳しく検討した結果、D29を発現している細胞とTUNEL陽性細胞の明確な相関が認められた(図18)。このように、本手法によりアポトーシス制御型モチーフ配列のランダム重合により作製した人工タンパク質集団は、乳癌細胞にアポトーシスを誘導できる機能性人工タンパク質を含むことがわかった。
【実施例8】
【0058】
[同一タンパク質集団を利用した細胞死抑制型機能性人工タンパク質の創出]
実施例6において発現を確認したクローンは、細胞死促進型BH3モチーフと同様に細胞死抑制型BH4モチーフも含んでいる。よってこれらクローンから、実施例7の細胞死促進型人工タンパク質とは逆の機能をもつ、細胞死抑制型機能性タンパク質を取得できる可能性を検討した。タンパク質発現を確認した28クローンの遺伝子及び天然の細胞死促進型タンパク質BIMの遺伝子をヒト子宮頸癌細胞株HeLaに導入し、BIMの増殖阻害活性に及ぼすクローンの効果を検討した。96ウエルの細胞培養プレートに、1ウエルあたり0.5x10のHeLaを播種し、37度で24時間培養した。その後、28クローンの遺伝子をコードするプラスミド100ng、及びBIMをコードするプラスミド50ngをリポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いてHeLa内に導入した。遺伝子導入48時間後に、増殖活性をテトラゾリウム塩WST-1により定量した(Roche)。コントロールであるGFPをコードしたベクターを導入した場合の増殖活性と比較した結果、28種のクローン中二つのクローンA10及びD16が、有為にBIMによる増殖阻害を抑制することがわかった(図19)。このような増殖阻害抑制効果は、天然のアポトーシス抑制型タンパク質であるBcl-xLの遺伝子をコードするプラスミドを導入した細胞でも観察できた。さらに、二種類の抗癌剤、エトポサイド(VP-16)とスタウロスポリン(STS)による増殖阻害が、A10及びD16を導入したHaLa細胞で部分的に抑制されたることもわかった(図19)。
【0059】
この細胞死抑制活性が、アポトーシスの抑制によるものかどうかを検討するため、TUNEL染色をおこなった(Roche)。約1x10のHeLa細胞に人工タンパク質をコードするプラスミド0.4μgを遺伝子導入し、24時間後に125nMのSTSを含む培地に交換し、さらに23時間インキュベートした。この結果、A10またはD16を導入したHeLa細胞では、STSによるアポトーシスが有為に抑制されることがわかった(図20)。これに対し、空ベクターpcDNAやD29をコードするプラスミドを導入したほぼ全ての細胞は、TUNEL陽性であった。さらに共焦点顕微鏡をもちいて人工タンパク質を発現している細胞の状態を詳しく検討した結果、D16を発現している細胞とTUNEL陰性細胞の明確な相関が認められた(図21)。このアポトーシス抑制効果は、天然のアポトーシス抑制型タンパク質であるBcl-xLを発現する細胞でも同様に認められた。このように、本手法により作製した人工タンパク質集団は、アポトーシス誘導型だけではなく、抑制型機能性人工タンパク質も創出できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の人工遺伝子集団の作製方法により、従来の人工遺伝子集団の作製方法ではできなかった、多数種モチーフ配列がランダムに重合した人工遺伝子集団を作製することが可能となった。また、該人工遺伝子集団を用いて、該人工遺伝子集団がコードする人工タンパク質集団を作製することが可能となった。本発明の人工遺伝子集団の作製方法により、モチーフ配列を少なくともその一部でコードする全体にわたっての高い配列類似性を条件としない複数種のDNAをランダムに重合することが可能となり、かつ、ストップコドンの出現を回避した一本鎖DNAをランダムに重合することで、長い翻訳読枠(ORF)を有するDNA配列のランダム重合が可能となった。更に、任意のモチーフ配列を、機能モチーフ配列、構造モチーフ配列、進化分子工学的に取得された人工ペプチド配列、又はタンパク質工学的な知識に基いてデザインされた配列のような配列に基いて構築し、多数種のモチーフ配列を任意に選定し、ランダムに重合して、人工遺伝子集団、及び、人工タンパク質集団を作製することにより、機能性について合理的予測性を加味し、多数種モチーフ配列をランダムに重合した人工遺伝子集団、及び、人工タンパク質集団の作製が可能となった。
【0061】
このことから、天然には存在しない非凡な機能を持った人工タンパク質を進化分子工学的に創製する場合の成功の鍵となる有力な人工遺伝子多様性集団(ライブラリー)の創出の可能性を飛躍的に増大した。更に、本発明においては、多数種モチーフ配列の機能の選定と共に、多種の一本鎖DNAの相補的塩基対の組合わせ及び/又は多種の一本鎖DNAのそれぞれの濃度を調節して、ランダム重合反応で利用されるモチーフ配列の出現頻度をコントロールすることが可能となり、人工遺伝子集団の作製に際して、ある程度の機能を予測してランダム重合反応調節し、人工遺伝子集団の作製を行うことが可能となった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8a】
7
【図8b】
8
【図8c】
9
【図9】
10
【図10】
11
【図11】
12
【図12】
13
【図13a】
14
【図13b】
15
【図14a】
16
【図14b】
17
【図14c】
18
【図15】
19
【図16】
20
【図17】
21
【図18】
22
【図19】
23
【図20】
24
【図21】
25