TOP > 国内特許検索 > 核酸構造体 > 明細書

明細書 :核酸構造体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5561893号 (P5561893)
登録日 平成26年6月20日(2014.6.20)
発行日 平成26年7月30日(2014.7.30)
発明の名称または考案の名称 核酸構造体
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A61K  47/34        (2006.01)
A61K  47/42        (2006.01)
A61K  47/48        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C07K  14/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
A61K 47/34
A61K 47/42
A61K 47/48
A61K 48/00
A61P 43/00 105
A61P 43/00 111
C07K 14/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 17
出願番号 特願2006-529032 (P2006-529032)
出願日 平成17年7月11日(2005.7.11)
国際出願番号 PCT/JP2005/012762
国際公開番号 WO2006/006561
国際公開日 平成18年1月19日(2006.1.19)
優先権出願番号 2004204286
2004332892
優先日 平成16年7月12日(2004.7.12)
平成16年11月17日(2004.11.17)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審判番号 不服 2012-001702(P2012-001702/J1)
審査請求日 平成20年6月26日(2008.6.26)
審判請求日 平成24年1月30日(2012.1.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】新海 征治
【氏名】長崎 健
【氏名】川津 猛
【氏名】柿本 真司
個別代理人の代理人 【識別番号】100087675、【弁理士】、【氏名又は名称】筒井 知
参考文献・文献 特開2001-286282(JP,A)
Molecular Therapy、2001、Vol.4、No.5、pp.473-483
遺伝子・デリバリー研究会 第4回シンポジウム 要旨集、2004、5月、P-23
J.Pharm.Sci.、2000、Vol.89、No.5、pp.674-681
J.Control.Release.、2002、Vol.83、pp.109-119
第1回生体機能関連・バイオテクノロジー部会 合同シンポジウム講演要旨集、2003、pp.550-551
Jpn.J.Ophthalmol.、2002、Vol.46、pp.140-146
Gene Therapy、1999、Vol.6、pp.595-605
Gene Therapy、1998、Vol.5、pp.1425-1433
J.Control.Release.,2001、Vol.76、pp.183-192
J.Leukoc.Biol.、1999、Vol.65、pp.270-279
Gene Therapy、1998、Vol.5、pp.955-964
調査した分野 C12N 15/00-90
A61K 48/00
PubMed
WPI
BIOSIS/CA/MEDLINE(STN)
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
細胞の核内に導入されるべき遺伝子を含む核酸物質、核膜孔を通過する機能を持ち核内輸送に関わるインポーティンタンパク、ならびに、前記核酸物質およびインポーティンタンパクのそれぞれに結合している結合物質から構成される三元複合体から成り、前記核酸物質が、ポリカチオン性物質であるポリエチレンイミンから成る前記結合物質と静電的な相互作用によりインタクトのままに結合され、前記ポリエチレンイミンが、ビオチン化されておりインポーティンタンパクにビオチンアビジン相互作用を介して結合しており、前記インポーティンタンパクがインポーティンβであることを特徴とする核内移行性核酸構造体。
【請求項2】
ポリエチレンイミンが細胞膜レセプター結合因子、および、膜融合性物質と結合しており、前記細胞膜レセプター結合因子がトランスフェリンであり、前記膜融合性物質がGALAであることを特徴とする請求項1に記載の核内移行性核酸構造体。
【請求項3】
センダイウイルスエンベロープに封入されていることを特徴とする請求項1または2に記載の核内移行性核酸構造体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスフェクションに際してトランスフェクション効率が向上した非ウイルスベクターとして機能する新規な核酸構造体と、それを利用して細胞に遺伝子を導入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞に特定の外部遺伝子を導入するトランスフェクションは、その遺伝子の関与する作用機序を解析して疾病の治療や薬剤の開発などに有用な情報を得るために不可欠な手段であるが、最近は、生体への悪影響を回避するためトランスフェクションに非ウイルスベクターを使用することが試みられている。従来より非ウイルスベクターのトランスフェクション効率を向上させる際に大きな障壁として、細胞外から細胞核内にまで核酸が輸送され転写反応に導かれるまでの細胞膜透過、輸送小胞脱出、核内移行、およびDNAリリース(放出)が挙げられてきた。

【非特許文献1】MarShall, E.(1999) Science 286, 2244-2245。
【非特許文献2】Hacein-Bey-Abina,S., Von Kalle, C., Schmidt, M., McCormack, M. P., Wulffrat, N., Leboulch, P.,Lim, A., Osborne, C, S., Pawliuk, R., Morillon, E., Sorensen, R., Forster, A.,Fraser, P., Cohen, J. I., de Saint Basile, G., Alexander, I., Wintergerst, U.,Frebourg, T., Aurias, A. D., Stoppa-Lyonnet, D., Romana, S., Radford-Weiss, I.,Gross, F., Valensi,F., Delabesse, E., Macintyre, E., Sigaux, F., Soulier, J.,Leiva, L. E., Wissler, M., Prinz, C., Rabbitts, J., Le Deist, F., Fischer, A.,and Cavazzana-Calvo, M. (2003) Science 302, 415-419。
【非特許文献3】Huang, L.,Hung, M. -C., and Wagner, E. (1999) Nonviral Vectors for Gene Therapy, AcademicPress, San Diego。
【非特許文献4】Rolland, A. (1999) Advanced Gene Delivery, Harwood Academic Publishers, Amsterdam。
【非特許文献5】Wiethoff, C.M., and Middaugh, C. R. (2003) J. Pharm. Sci., 92, 203-217。
【0003】
細胞膜透過能を向上させるための手段として、これまでに細胞膜レセプター結合因子を利用し、レセプター媒介型エンドサイトーシスにより細胞膜透過能を向上させることが研究されており、効果が確認されている。

【非特許文献6】Vyas SP,Singh A, Sihorkar V. (2001) CritRev Ther Drug Carrier Syst., 18 (1), l-76。
【0004】
大部分の非ウイルスベクターはエンドサイトーシスにより細胞膜を透過するが、そのままでは分解されてしまい、発現効率が低下してしまう。そこで輸送小胞からの脱出能を向上させるための手段として、これまでにpH感受性の膜融合物質を利用し、エンドソームやリソソームからの脱出能を向上させることが研究されており、効果が確認されている。

【非特許文献7】Cho, Y. W.,Kim, J. D., and Park, K. (2003)J. Pharm Pharmacol., 55 (6), 721-34。
【0005】
従来より非ウイルスベクターのトランスフェクション効率を向上させる際に大きな障壁となっている一つに外部遺伝子の核内移行が挙げられる。この問題点を解決するためにこれまでに真核細胞内における核タンパクの核内移行システム利用が活発に取り組まれてきた。
【0006】
核タンパクは一般に核内移行シグナル(NLS)という荷札を有しており、NLSペプチドに輸送体との仲介役としてのインポーティンαが結合し、最終的に輸送担体本体のインポーティンβが結合した複合体が形成され、核膜に存在する核膜孔をエネルギー依存的かつ選択的に核酸物質が輸送される。

【非特許文献8】Goerlich, D.,Vogel, F., Mills, A. D., Hartmann, E.,およびLaskey, R. A., Nature, 377, 246-248, (1995)。
【非特許文献9】Rexach, M.,およびBlobel, G., Cel1 83, 683-692, (1995)。
【非特許文献10】Yoneda, Y.,J. Biochem, Tokyo 121, 811-817 (1996)。
【0007】
そこでこれまで、外部遺伝子とNLSペプチドを複合化することで、核内移行を促進し、ひいては発現効率をも向上させるべく多くの研究がなされてきた。しかし、NLSの効果が確認されたケースも有れば、発現効率に対する有意義な効果が否定された報告もあり、現在のところ方法論は確立していない。この原因の一つとして如上の複合体を形成させることが二段階の反応であり効率を低下させている可能性がある。

【非特許文献11】Zanta, M. A.,Belguise-Valladier, P.,およびBehr, J. P., Proc.Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96, 9l-96 (1999)。
【非特許文献12】Collas, P.,およびAlestrom, P., Biochem. Cell. Biol., 75, 633-640(1997)。
【特許文献1】特表平11-506935
【特許文献2】特表2002-514892
【特許文献3】特表2002-533088
【非特許文献13】Nagasaki, T.,Myohoji, T., Tachibana, T.,およびTamagaki, S.,Bioconjugate Chem., 14, 282-286 (2003)。
【非特許文献14】Tanimoto, M.,Kamiya, H., Minakawa, N., Matsuda, A.,およびHarashima, H., Bioconjugate Chem., 14, 1197-1202 (2003)。
【0008】
また、核内に移行した外部核酸物質は非ウイルスベクターとして機能するキャリアー化合物と結合したままでは転写反応効率が低下する。そこで、核内でのDNAリリース促進を目的として、刺激応答性を組み込む研究がなされており、光応答性やレドックス応答型キャリアーも検討されている。

【非特許文献15】Miyata, K., Kakizawa,Y., Nishiyama, N., Harada, A., Yamazaki, Y., Koyama, H., Kataoka, K (2004) J AmChem Soc., 126 (8), 2355-61。
【0009】
このように、非ウイルスベクターにとっての細胞外から細胞核内までの核酸輸送行程における障壁を克服するための手段は断片的には提案されているものの、それらが有機的に協同効果を発揮するような系は見いだされておらず、非ウイルスベクターの効率は満足する域に達していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、細胞に所望の遺伝子を導入するに際して細胞外から細胞核内までの行程における諸障壁を克服して効率的なトランスフェクションが確保できる新しい手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、核内タンパク質輸送に関わる特定の細胞内因子と、被導入遺伝子とを含む新規な構造体の調製に成功し、この構造体が優れたトランスフェクション機能を有することを見出し、本発明を導き出した。
【0012】
かくして、本発明は、細胞の核内に導入されるべき遺伝子を含む核酸物質、核膜孔を通過する機能を持ち核内輸送に関わるインポーティンタンパク、ならびに、前記核酸物質およびインポーティンタンパクのそれぞれに結合している結合物質から構成される三元複合体から成る核内移行性核酸構造体、および該構造体を細胞と接触させる工程を含む細胞に遺伝子を導入する方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の核酸構造体の調製及び細胞導入の様子を模式的に示す。
【図2】本発明で用いられる光応答性ポリエチレンイミンの合成スキームを示す。
【図3】本発明の核酸構造体を作製するのに用いられるビオチンラベル化トランスフェリンの合成スキームを示す(実施例1)。
【図4】本発明の核酸構造体を作製するのに用いられるビオチンラベル化トランスフェリンのNative-SI)S PAGEの結果を示す(実施例1)。
【図5】本発明の核酸構造体を作製するのに用いられるビオチンラベル化トランスフェリンのMALDl-TOFマススペクトルの結果を示す(実施例1)。
【図6】本発明の核酸構造体を作製するのに用いられるGST-biotin tag-importin-βのSDS PAGEの結果を示す(実施例4)。
【図7】本発明の核酸構造体を作製するのに用いられるGST-biotin tag-importin-βのbiotin化確認を示す(実施例5)。
【図8】本発明の核酸構造体を用いたinvitroトランスフェクション結果を示す(実施例7)。SS-PEI、ジスルフィド架橋型イミノチオラン化;PEI、25KDaポリエチレンイミン;Tf、ビオチン化トランスフェリン;GALA、ビオチン化GALA;Importin-β、ビオチン化インポーティンβ;negative、pGL3-Controlプラスミドのみ
【図9】ビオチン化ポリエチレンイミンの1H-NMRスペクトル(実施例8)。
【図10】本発明の核酸構造体およびそれらのHVJ-E封入体について行なったタンパク発現実験における発現効率を示す(実施例9)
【図11】本発明の核酸構造体の初代繊維芽細胞を用いて行なったタンパク発現実験における発現効率を示す(実施例10)。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の核酸構造体は、導入されるべき遺伝子を含む核酸物質と、核膜孔を通過する機能を持ち核内輸送に関わるインポーティンタンパクとを、適当な結合物質を介して組み合わせた三元複合体である。
【0015】
本発明において、用いられるインポーティンタンパクとしては、核膜孔を通過する機能を持ち且つ遺伝子の核内輸送に関わるタンパクで有ればいずれも使用することが可能である。具体的にはインポーティンβ、インポーティン7、トランスポーティン、トランスポーティンSR、CASタンパク等を挙げることができるが、なかでもインポーティンβが好ましいものとして例示される。
【0016】
これらのインポーティンタンパクのアミノ酸配列(塩基配列)やその作用などについては、例えば、下記の文献から知ることができる。
<nplcit num="16"> <text>Jakel, S.,and Gorlich, D. (1998) EMBO J., 17, 4491。</text></nplcit><nplcit num="17"> <text>Imamoto, N.,Shimamoto, T., Kose, S., Takao, T., Tachibana, T. Matsubae, M., Sekimoto, T.,Shimonishi, Y., and Yoneda, Y. (1995), FEBS Lett., 368, 415-419。</text></nplcit><nplcit num="18"> <text>Pollard, V.W., Michael, W. M., Nakielny, S., Siomi, M. C., Wang, F., and Dreyfuss, G. (1996)Cell, 86, 985-994。</text></nplcit><nplcit num="19"> <text>Nagoshi, E.,Imamoto, N., Sato, R., and Yoneda, Y., (1999) Mol. Biol. Cell, 10, 2221-2233。</text></nplcit><nplcit num="20"> <text>Kutay, U., Bischoff,F. R., Kostka, S., Kraft, R., and Gorlich, D. (1997) Cell, 90, 1061-71。</text></nplcit>
【0017】
本発明の核酸構造体を構成する結合物質としては、細胞適合性ないしは生体適合性を有し核酸物質およびインポーティンタンパクに結合し得る、または、結合できるように修飾され得る各種の物質が使用できる。そのような結合物質として好ましいのは、後述するポリエチレンイミンの他、ポリリジン、キトサンまたはそれらの誘導体に代表されるポリカチオン物質(カチオン性ポリマー)であるが、これに限定されるものではなく、糖質、タンパク質、脂質なども適用可能である。
【0018】
このような結合物質と、所望の遺伝子を含む核酸物質との間の結合は、核酸物質に影響を与えないように(インタクトのままに)する点から、非共有結合性の結合に因るようにすることが好ましい。例えば、結合物質としてポリカチオン物質(カチオン性ポリマー)を用いる場合、細胞内に導入すべき遺伝子を含む核酸物質は、アニオン性を有するので、カチオン性ポリマーと静電的な相互作用により結合する。
【0019】
結合物質(好ましくはポリカチオン物質)とインポーティンタンパクとの結合は、共有結合または非共有結合性の特異的相互作用を介して行なわれる。共有結合を用いる具体例としては、二官能性のジカルポン酸活性エステルなど汎用の二官能性反応剤を用いインポーティンタンパクのアミノ基と反応させることによりコンジュゲート体(複合体)とすることなどが挙げられる。しかし、化学量論比の制御など合成が困難な点が難点である。
【0020】
これに対して、非結合性の特異的相互作用に基づく場合は、生化学の分野で従来より多用されている反応系を利用することができるので、共有結合による場合よりも好ましい。具体的にはGST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)-グルタチオン相互作用、キチン-キチンバインディングタンパク相互作用、ヒスチジンタグ-ニッケル錯体、ビオチン-アビジン(ストレプトアビジン)相互作用等を挙げることができる。これらの反応系を利用すれば、例えば、ポリカチオン物質をグルタチオン、キチン、ニッケル錯体またはビオチンで修飾するとともに、インポーティンタンパクをGSTタンパク、キチンバインディングタンパク、ヒスチジンタグまたはアビジンと結合させることにより、それぞれの反応系の特異的相互作用を介してポリカチオン物質とインポーティンタンパクから成るコンジュゲート体が形成される。
【0021】
非共有結合性の特異的相互作用を発揮するものとして以上に例示した反応系の中でも、その結合力が大きいビオチン-アビジン系を利用するのが好ましい。特に、ストレプトアビジンはテトラマーを形成し、ビオチンと非常に安定な結合(解離定数:<1015)を形成する。
【0022】
かくして、本発明の核内移行性核酸構造体の一つの好ましい態様においては、ポリカチオン物質がビオチン化されており、インポーティンタンパクにビオチンアビジン相互作用を介して結合している。具体的には、ビオチン化されたポリカチオン物質(例えばポリエチレンイミン)を、(i)アビジン(好ましくはストレプトアビジン)の存在下に、ビオチンかされたインポーティンタンパクと反応させるか、または(ii)インポーティンタンパクとアビジン(好ましくはストレプトアビジン)との複合タンパク質に反応させればよい。
【0023】
本発明の好ましい態様においては、核酸物質およびインポーティンタンパクのそれぞれに結合する結合物質と成るポリカチオン性物質が、刺激に応答して低分子化し得るカチオン性ポリマーであり、低分子化によりDNA親和性が低下してDNAのリリースが確実に進行する。好ましいカチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリアミン類(ポリエチレンイミン、ポリリジン、キトサン、ポリアミドアミンデンドリマー等)を挙げることができる。これらのカチオン性ポリマーに、刺激応答性、具体的には細胞内在性還元物質または光に応答して低分子化し得る部位を付加する。前者の好ましい例は、ジスルフィド架橋を施すことであり、これによって当該ポリマーは細胞内に多量存在するグルタチオンによってジスルフィド結合が開裂して低分子化する。この点から、本発明において用いられるカチオン性ポリマーとして、ジスルフィド架橋を有するポリエチレンイミン(PEI)が特に好ましいものとして例示される。また、カチオン性ポリマーを光応答性にするには、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)を光開裂性リンカーを介して光開裂性残基であるo-ニトロベンジル構造で架橋することが挙げられる(図2参照)。
<nplcit num="21"> <text>Oupicky, D.,Diwadkar, V. (2003) Curr. Opin. Mol. Ther., 5(4), 345-50。</text></nplcit>
【0024】
本発明において、核酸物質とは、細胞内に導入されるべき遺伝子自体または該遺伝子を含む核酸類であり、既述のような手段によりカチオン性ポリマーに代表される結合物質と結合されるものであればどのような形態でも良く、RNA、オリゴDNA、1本鎖核酸、2本鎖核酸、プラスミドDNAなどが包含されるが、実用的見地から特に好適な核酸物質はプラスミドDNAである。ここで、プラスミドDNAとは、一般に、発現ベクター、すなわち、発現するタンパクをプロモーターの下流にコードするものという意味で用いており、その具体的な塩基配列は目的タンパクによって異なる。
【0025】
かくして、本発明に従えば、被導入遺伝子は、結合物質(好ましくはカチオン性ポリマー)を介して、核膜孔を通過する機能をもち核内輸送に関わるインポーティンタンパク(好ましくはインポーティンβ)と組み合せられた三元複合体を形成している核酸構造体として、所定の細胞に接触させられるので、細胞の核内に移行し、さらに、好ましい態様においては、カチオン性ポリマーが刺激に応答して低分子化し得るので、核内でDNAリリースも促進され、その遺伝子を効率よく細胞内に導入・発現することが可能となる。
【0026】
しかしながら、本発明の特に好ましい態様に従えば、下記の2つの手法により、如上の核酸構造体の機能を向上させ、目的の被導入遺伝子を細胞外から細胞の核内に到るまで効率よく確実に移行させ、細胞内で発現させることができる。
【0027】
すなわち、本発明の第一の特に好ましい態様に従えば、核酸構造体において、ポリカチオン物質に代表される結合物質は、インポーティンタンパク(核膜孔を通過する機能を持ち核内輸送に関わるインポーティンタンパク)に結合しているのみならず、細胞膜レセプター結合因子、および膜結合性物質の少なくとも1種類と結合している。
【0028】
ここで、本発明において用いられる細胞膜レセプター結合因子としては、細胞膜レセプターに結合しエンドサイトーシスにより細胞室内に侵入する物質であればいずれも使用することが可能である。具体的にはトランスフェリン、EGF(上皮細胞増殖因子)、FGF(繊維芽細胞増殖因子)、HGF(肝実質細胞増殖因子)、NGF(神経細胞増殖因子)、TGF(トランスフォーミング増殖因子)、LDL(低密度リポタンパク)またはインスリン、葉酸、ジフテリア毒素、インテグリン結合因子、アシアロ糖タンパクレセプター結合因子等をあげることができるが、なかでもトランスフェリンが好ましいものとして例示される。
<nplcit num="22"> <text>Qian, Z. M.,Li, H., Sun, H., and Ho, K. (2002) Pharmacol Rev., 54(4), 561-87。</text></nplcit>
【0029】
また、本発明において用いられる膜融合性物質としては、細胞の核内に導入すべき遺伝子を含む核酸物質と結合してコンジュゲート体を形成しpHの低下と共に膜融合能をもつものであればいずれも使用することが可能である。具体的にはインフルエンザウイルスへマグルチンHA-2、人免疫不全症ウイルスTat、ジフテリア毒素Tドメイン、またはGALA等をあげることができるが、なかでもGALAが好ましいものとして例示される。
<nplcit num="23"> <text>Parente, R.A., Nir, S., and Szoka, F. C. Jr. (1988) JBiol Chem., 263(10), 4724-30。</text></nplcit>
【0030】
以上のような細胞膜レセプター結合因子および/または膜融合性物質と結合物質(好ましくはポリカチオン物質)との結合は、インポーティンタンパクと結合物質との結合の場合と同様である。すなわち、例えば、ビオチン化されたポリカチオン物質を、アビジン(好ましくはストレプトアビジン)の存在下に、ビオチン化された細胞膜レセプター結合因子および/または膜融合性物質と反応させればよい。
【0031】
既述のように、ストレプトアビジンは、テトラマーを形成し、ビオチンと非常に安定な結合を形成するので、4種類の異なる物質(例えば、ポリカチオン物質、インポーティンタンパク、細胞膜レセプター結合因子、および膜融合性物質)をビオチン化しストレプトアビジンを介して複合体化することが可能である。
【0032】
核酸構造体の機能を向上させ、目的の被導入遺伝子を細胞外から細胞の核内に到るまで効率よく確実に移行させ、細胞内で発現させるための特に好ましい第二の態様は、当該核酸構造体をウイルス由来のエンベロープまたはキャプシドに封入して使用することである。
【0033】
例えば、外部遺伝子を細胞質に大量にかつ効率よく導入可能な物質として知られている、センダイウイルスエンベロープ(HVJ-E)を用いる。センダイウイルス(Hemagglutinating Virus ofJapan;HVJ)はマウスの肺炎ウイルスの一種(ヒトへの感染力はない)で1950年代に日本で発見された。ウイルス外膜(エンベロープ)に2種類の糖蛋白(Fとm)があり、この蛋白が2種類の細胞を融合させる強い作用(細胞融合)を持っている。HVJ-Eベクターは、HVJのゲノムを全て除去し、外膜のみを利用したものである。このベクターは、外膜に細胞融合作用を持つ2つの蛋白質があることから、高い効率で、しかも迅速に種々の物質を動物細胞質内へ運び込むことができる。さらに、ウイルスのゲノムは全て除去されていることから、ヒトに対する安全性も高く、また一度に大量の物質を封入することができる。このため、遺伝子機能解析、遺伝子治療及びドラッグデリバリーシステムのための有力なツールとなる。
<nplcit num="24"> <text>Okada, Y.およびMurayama, F. Exp Cell Res., 52, 34-42 (1968)。</text></nplcit><nplcit num="25"> <text>Kaneda, Y.,Nakajima, T., Nishikawa, T., Yamamoto, S., Ikegami, H., Suzuki, N., Nakamura,H., Morishita, R.およびKotani, H.Mol. Ther., 6, 219-226 (2002)。</text></nplcit><patcit num="4"> <text>特開2001-286282号公報。</text></patcit>
【0034】
本発明の核酸構造体とともに用いられるウイルス由来のエンベロープまたはキャプシドはセンダイウイルスエンベロープに限られず、細胞質に核酸物質を効率的に輸送することができヒトへの感染力の排除されたものであれば使用可能であり、例えば、B型肝炎ウイルスのキャプシドなども使用できる。
<nplcit num="26"> <text>Slattum, P.S., Loomis, A. G., Machnik, K. J., Watt, M. A., Duzeski, J. L., Budker, V. G.,Wolff, J. A.,およびGorlich, D.,Mol. Ther. 8, 255 (2003)。</text></nplcit>
【0035】
如上のウイルス由来のエンベロープまたはキャプシドを用いて本発明に従い細胞に遺伝子を導入するには、適当な緩衝液中で本発明の三元複合体から成る核酸構造体とエンベロープまたはキャプシドを撹拌・混合して当該エンベロープまたはキャプシドに核酸構造体が封入されたトランスフェクション用溶液を調製し、この溶液を細胞膜穿孔処理(例えば、センダイウイルスエンベロープを使用する場合は、界面活性剤処理、B型肝炎ウイルスキャプシドを使用する場合はエレクトロポレーション)を行った細胞と接触させればよい。
【0036】
図1は、後述する実施例に示す本発明の好ましい態様に沿って、本発明の核酸構造体が調製され細胞に導入される様子を模式的に示すものである。
図1では、核酸物質としてプラスミドDNA(pDNA)を用いる場合を例示している〔図1の(A)〕。このpDNAと、結合物質としてポリカチオン物質であるビオチン化されたジスルフィド架橋ポリエチレンイミン(b-PEI)を混合しインキュベートすると、pDNAとb-PEIとが静電的に結合された複合体(ポリイオンコンプレックス)が得られる〔図1の(B)〕。この手法は核酸物質そのものを化学修飾(ビオチン化)しないので、転写翻訳効率の低下をもたらすこともない。そして、ポリアニオンである核酸物質とポリカチオンはポリイオンコンプレックスを非常に安定に形成することが知られており、その複合体は条件によっては核酸物質をコンパクトに凝縮させる力があり、細胞内、特に核内への移行の際には有利となる。
【0037】
次に、本発明の特に好ましい態様に従い、インポーティンタンパク、さらに、細胞膜レセプター結合因子および/または膜融合性物質の複数種のタンパクも化学修飾もしくは遺伝子工学的にビオチン化(ビオチンラベル化)し、ストレプトアビジンを介して互いに結合させることにより被導入遺伝子がカチオン性ポリマーを介してインポーティンタンパク、更には細胞膜レセプター結合因子および/または膜融合性物質に結合している本発明の核酸構造体が形成されることになる。図1では、インポーティンタンパクとしてインポーティンβ、細胞膜レセプター結合因子としてトランスフェリン、膜融合性物質としてGALAを用い、それぞれをビオチン化し、ストレプトアビジンを介してp-DNA/b-PEI複合体に結合して成る核酸構造体を例示している〔図1の(C)〕。
【0038】
如上の核酸構造体は、所定の細胞と接触させられると、該細胞の細胞膜を効果的に透過し、輸送小胞から効率よく細胞質へ脱出後、核内に確実に移行し、さらに、核内で細胞内在性還元物質(特にグルタチオン)または必要に応じて外部からの光に応答してカチオン性ポリマーが低分子化することによりDNAリリースが促進されるので、きわめて効率的に目的の遺伝子を細胞内に導入、発現させることができる。図1に示す例では、ジスルジド架橋されビオチン化されたポリエチレンイミン(b-PEI)が細胞内在性還元物質により低分子化、遺伝子を含む核酸物質(pDNA)を放出する様子を模式的に示している〔図1の(D)〕(後述の実施例7参照)。
【0039】
本発明の特に好ましい別の態様に従えば、核酸構造体をウイルス由来のエンベロープまたはキャプシドに封入して細胞と接触させる。すなわち、図1では、プラスミドDNAとビオチン化PEI(この態様ではジスルフィド架橋は必ずしも必要でない)との複合体〔図1の(B)〕に、インポーティンタンパクとしてインポーティンβをインポーティンβ/ストレプトアビジン複合蛋白(βS)として結合させ〔図1の(E)〕、これをセンダイウイルスエンベロープ(HVJ-E)に封入させた状態で〔図1の(F)〕、細胞に接触させる例を示している。この場合においても、核酸構造体は細胞の核内に確実に移行して、その遺伝子を効率よく発現させることが可能となる(後述の実施例9参照)。
【0040】
本発明は、細胞に特定の遺伝子を注入したり、その遺伝子をクローニングしたり、または該遺伝子がコードするタンパク質を発現させるために用いることができるが、対象とされる細胞は限定されるものではなく、本発明の原理はあらゆる種類の真核細胞、特に動物細胞に適用することができる。ただし、使用する細胞膜レセプター結合因子およびインポーティンタンパクの由来は対象とする細胞の種と一致することが好適である。
【0041】
以下、本発明の特徴をさらに具体的に示すため、本発明に従う核酸構造体を構成するビオチン化ジスルフィド架橋ポリエチレンイミンの調製、ビオチン化トランスフェリン、ビオチン化GALA、ビオチン化インポーティンβの調製、および該核酸構造体のセンダイウイルスエンベロープへの封入の仕方、ならびにそれを用いるインビトロ試験におけるタンパク発現に関する実施例を記すが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0042】
ビオチンラベル化トランスフェリン(Tf)の調製 図3の合成スキームに従い、Biotin-P EG-NHS〔PEG(ポリエチレングリコール)スペーサーを有するω-ビオチンカルポン酸-N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル、ShearWater社製〕2.56mg(0.67μmol)をDMF50μLで溶解した溶液をApo-Transferrin
50mg(0.67μmol)を50mM PBS(pH7.0)1mLに溶解した溶液に、4℃で振とうしながら、少量ずつ加え、4℃で15時間振とうした。この溶液を分子ふるいフィルター(MW l0000)にのせて、4℃、3000×gで遠心を行い、溶液を落として不純物を除去し、900μLまで濃縮した。ビオチン化Tfの精製はSoftlinkTM
Soft Release Avidin Resin(Promega社製)を用いて行った。Softlink(TM) Soft Release Avidin
Resin 500μLを50mM PBS 5mLに懸濁した後、4℃、1000×g、5分間遠心した。
上清を除去し、50mM PBS 500mLで再懸濁し、上記の反応溶液100mLを加えて、4℃で一晩穏やかに攪拌した。その後、上清を除去し、50mM PBSで3回洗浄し、未反応Tfを除去した。ここに、5mMビオチン溶液5mL加えて、4℃で一晩穏やかに攪拌した。4℃、1000×g、5分間遠心し、その上清を分子ふるいフィルター(MW
l0000)にのせて、3000×g、4℃で遠心を行い、遊離しているビオチンを除去した。この溶液をあらかじめ50mM PBSで平衡化したPD-10カラムにのせて、ゲルろ過を行った。1mLずつフラクションをとり、UV測定によってビオチン化Tfを含んだフラクションを決定した。このフラクション溶液を分子ふるいフィルター(MW 3000)で濃縮した。ビオチン導入量の測定、成分数の確認はNative PAGE(図4)、MALDI-TOFMS(図5)で確認し、トランスフェリン1分子あたり1.5個のBiotin-PEG導入量と算出された。
【実施例2】
【0043】
Biotin-PEG化GALAの合成 pH応答ペプチドGALA(30アミノ酸残基WEAALAEALAEALAEHLAEALAEALEALAA)のN末端にBiotin-PEG化したペプチドはFmoc法を用いた固相合成により調製した。高速液体クロマトグラフィーにより単離した。
【実施例3】
【0044】
ビオチンタグ融合インポーティンβタンパク発現ベクター(pGEX-2T-biotin-importin-β)の構築 タンバク質発現ベクターPinpoint Xa-3(Promega社製)内のビオチンを付加するペプチド配列(biotin tag:ビオチンタグ)を以下のようなプライマーを用いてPCR法により増幅した。このプライマーはビオチンタグの断片が両末端にBamHIサイトを有するように設計されている。
5’-GCCCGCGGATCCATGAAACTGAAGGTAACA-3’
5’-GATATCGGTACCGGATCCCAGCTGAAGCTT-3’
増幅したビオチンタグをフェノール・クロロホルム抽出、エタノール沈澱により精製した。精製したビオチンタグ及びGST-importin(インポーティン)-βの融合タンパク質の遺伝子をコードするタンパク質発現ベクターpGEX-2T-importin-β(下記の非特許文献27に記載の方法で調製した)をそれぞれBamHIで処理した後、フェノール・クロロホルム抽出、エタノール沈澱により精製した。BamHIで処理済みのビオチンタグとpGEX-2T-importin-βをモル比で10:1となるように混合し、Ligation High(Toyobo社製)を用いてpGEX-2T-importin-βのBamHIサイトにbiotin tagを挿入した。Ligation反応した混合溶液を大腸菌JMlO9株のコンピテントセル(Nippon gene社製)にトランスフォームし、LB寒天培地(100μg/mlアンピシリンを含む)上で得られたコロニーから目的のpGEX-2T-biotin-importin-βを精製した。この発現ベクターは5’末端からGST-biotintag-importin-βの遺伝子をコードしている(配列番号1)。
<nplcit num="27"> <text>Kose, S., Imamoto,N., Tachibana, T., Shimamoto, T, Yoneda, Y. (1997) J. Cell. Biol., 139, 841-849。</text></nplcit>
【実施例4】
【0045】
GST-biotin tag-importin-β融合タンパク質の発現と精製 構築したGST-biotin
tag-importin-β融合タンパク質発現ベクターpGEX-2T-biotin
tag-importin-βをタンパク質発現用大腸菌BL21株のコンビテントセル(Novergen社製)にトランフォームし、LB寒天培地(100μg/mlアンピシリン、2μM biotinを含む)上でコロニーを得た。コロニーをLB液体培地(100μg/mlアンピシリン、2μM biotinを含む)で37℃で培養し、終濃度が0.5mMとなるようにイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を加え20℃でタンパク発現を誘導した。培養した大腸菌を遠心により回収し、0.9% NaCl溶液で洗浄した。遠心により再び大腸菌を回収し、Lysis bufferに懸濁し液体N2により凍結した。水浴で融解した後、再び液体N2により凍結した。水浴で融解し超音波処理を行った後、遠心により上清を分離した。
上清にGlutathione
Sepharose 4B(Amersham社製)を加え、目的のビオチン化タンパク質だけを吸着させた。Glutathione
Sepharose 4BをLysis Bufferにより洗浄した後、Glutathioneにより目的のタンパク質を溶出した。タンパク溶液を限外ろ過フィルタ-Centriprep(MW 3000)(Amicon社製)を用いて濃縮した後、PD-10
column(Amersham社)を用いてPBSにバッファー交換をすることで精製した。精製したタンパク質は分注して液体N2により凍結し、-80℃で保存した。また精製はSDS-PAGEにより確認した(図6)。精製したタンパク質はGST(26kDa)、biotin-tag(14kDa)、importin-β(97kDa)の融合タンパク質であり、分子量は137kDaであり、分子量に対応する位置に単一のバンドが見られ、目的物が単離精製されていることがわかる。
【実施例5】
【0046】
GST-biotin-tag-importin-β融合タンパク質のビオチン化確認 GST-biotin tag-importin-β(3μg)とAvidin Resin(3μl)(Promega社製)をPBS(15μl)中で混合し、4℃で2時間穏やかに攪拌した。軽く遠心し上清を除去した後、0.5M NaI(15μ1)を加え、4℃で15分間穏やかに攪拌することにより、非特異的にAvidin Resinに結合したGST-biotin
tag-importin-βを解離させた。軽く遠心し上清を除去した後、再び0.5M NaI(15μ1)を加え、4℃で15分間穏やかに攪拌した。軽く遠心し上清を除去し、PBSで洗浄後GST-biotin tag-importin-βが吸着したAvidin Resinを得た。SDS-PAGEにより、Avidin ResinにGST-biotin
tag-importin-βが吸着していることを確認した(図7)。
未修飾importin-βのAvidin Resinへの非特異的吸着量よりも明瞭に樹脂への吸着量が多く、インポーティンβ融合タンパクがビオチン化されていることが分かる。電気泳動のサンプルは、M:分子量マーカー、1:GST-importin-β吸着前、2:GST-importin-β上清、3:GST-importin-β吸着後、4:GST-biotin tag-importin-β吸着前、5:GST-biotin tag-importin-β上清、6:GST-biotin
tag-importin-β吸着後をそれぞれ表わす。
【実施例6】
【0047】
ビオチンラベル化ジスルフィド架橋ポリエチレンイミンの合成 低分子量ポリエチレンイミン(平均分子量1800、和光純薬工業)0.5g(0.27mol)をDMF 5mLに溶解し、さらにイミノチオラン(Aldrich)100mg(0.75mmol)を添加し、窒素気流下室温で15時間攪拌した。反応溶液を限外ろ過フィルターCentriprep(MW 3000)(Amicon社製)を用いて濃縮、超純水(15mL)で洗浄した。その後100mM DTT溶液(0.5mL)を加え、さらにBiotin-PEGTSPA(100mg)を添加し窒素気流下室温で15時間攪拌した。反応溶液を限外ろ過フィルターCentriprep(MW 3000)(Amicon社製)を用いて濃縮、5mM DTT水溶液(15mL)で洗浄し、残渣を5mM DTT(5mL)に溶解しビオチンラベル化ジスルフィド架橋ポリエチレンイミンストック溶液を得た。
その内の、0.25mLを超純水2mLに加え、空気を2時間バブリングさせたのち、SephadexG-25を用いゲル濾過を超純水で溶出し、低分子量を分離後凍結乾燥し30mgの白色結晶を得た。1H-NWRよりイミノチオランおよびBiotin-PEG導入量を算出し、低分子量ポリエチレンイミン10分子あたり20分子のイミノチオランと1分子のBiotin-PEG導入量であった。一部を元素分析しC;50.71、H;10.81、N;24.62%を得、NMRの結果を支持する値であった。また、元素分析の結果よりビオチンラベル化ジスルフィド架橋ポリエチレンイミンストック溶液のプロトン化可能窒素濃度は2mol/Lと算出した。
【実施例7】
【0048】
インビトロ(in vitro)トランスフェクション 24Wellプレートに1wellあたりA549細胞(ヒト肺胞上皮細胞)懸濁液(50000cells/mL)1mLを入れ、37℃、CO2存在下で24時間インキュベートした。その後、培地を除去し、1wellあたり1.25×無血清DMEM 200μLを穏やかに入れ、そこにトランスフェクション溶液を1wellあたり50μLずつ穏やかに入れ、37℃、CO2存在下で3時間インキュベートし、細胞と接触させた。その後、培地を除去し、新たに1wellあたりDMEM lmLを入れ、37℃、CO2存在下で24時間インキュベー卜し、ルシフェラーゼアッセイを行った。なお、トランスフェクション溶液調製にあたり、滅菌MilliQ水、1μg pGL3-Controlプラスミド(トランスフェラーゼ遺伝子をコードするプラスミドDNA:Promega社製)溶液、ビオチンラベル化ジスルフィド架橋ポリエチレンイミンストック溶液(N/P=10)の順に混ぜ、10分間インキュベートし、更にビオチン化トランスフェリン、ビオチン化GALA、ビオチン化インポーティンβを単独もしくは混合溶液として添加し、最後にストレプトアビジン溶液を加え20分間インキュベートし、人工ウイルス性核酸構造体を作成した。
トランスフェクション結果を図8に示す。25kDa
PEIと比較し、本発明に従い核酸輸送促進性タンパクを導入するとトランスフェクション効率が向上していることが理解される。特に、ビオチン化ジスルフィド架橋ポリエチレンイミンを用い、更にストレプトアビジンを介してビオチン化トランスフェリン、ビオチン化GALA、ビオチン化インポーティンβの全てとコンジュゲート化した場合、トランスフェクション効率は600倍向上しており、細胞膜の効果的な透過、輸送小胞から細胞質への効率的な脱出後、核内に確実に移行し、さらに核内でのDNAリリ-ス促進が大きく寄与していることは明らかである。
【実施例8】
【0049】
ビオチン化ポリエチレンイミンの調製 プラスミドDNAとの結合因子として非ウイルスベクターとして多用されている分岐型ポリエチレンイミン(PEI、MW. 25000、アルドリッチ社製)を、また、ポリエチレングリコール鎖(MW. 3400)の末端にビオチン基とカルポン酸N-ヒドロキシスクシイミドエステル基をもつビオチンラベル化剤(Biotin-PEG-CO2-NHS、Nektor社製)を使用した。PEI(25mg)とBiotin-PEG-CO2-NHS(5mg)をDMSO(1050μL)に溶解し、室温で24時間振とうした。Centricon(MW. 10000、Amicon社製)の分子ふるいフィルターにのせ蒸留水(5mL)を加え、4℃、5000gで遠心し、低分子量成分および溶媒であるDMSOを除去した。
その後凍結乾燥を行い白色粉末のビオチン化PEI(14.3mg)を得た。
【0050】
ビオチン導入数の決定 合成したビオチン化PEIの元素分析を行い、C,49.23%;H,11.02%;N,22.05%の結果を得た。この実測値より算出し、PEI-(PEG-Biotin)2.2・230H20の計算値C,49.20%;H,11.03%;N,22.10%と高い一致を示すことよりビオチンラベル数を2.2と決定した。また、図9に示すように1H-NMRスペクトル(D20)のポリエチレンイミン(2.3~2.7ppm)とポリエチレングリコール(3.5-3.6ppm)由来のプロトン比からもビオチンラベル数を確認した。
【実施例9】
【0051】
プラスミドDNA/ビオチン化PEI/インポーティンβ三元複合体の調製、HVJ-Eへの封入、およびトランスフェクション PBS溶液中でルシフェラーゼ遺伝子をコードする0.2μg/μL pGL3-control(pGL-3、プロメガ社製)溶液5μLに0.5μg/μL 0.77mMビオチン化PEI(biotin-PEI)水溶液(1.25μL)と7.7mM PEI水溶液(3.88μL)を加え、室温で15分間静置した。この時のカチオンポリマーの窒素原子数とDNAのリン酸残基数の比であるN/P比は10となる。ビオチン化PEIのビオチン量の1当量に相当する0.50μg/μL GFP-インポーティンβ-ストレプトアビジン融合タンパク(importin-β-S/avidin)溶液0.74μLを加えpGL-3/ biotin-PEI /
importin-β-S. avidin三元複合体の調製を行った。
一方、HVJ-Eベクターキット(石原産業社製)はキット付属のプロトコール第1法にしたがいHVJ-Eを解凍し10μLをマイクロテストチューブに採取した。試薬A(2.5μL)を添加、混合後、氷上にて5分間静置した。そして、先の三元複合体の溶液を添加混合し、試薬B(1.5μL)を添加混合し、10000g、4℃で5分間遠心し上清を除去した。次にキット緩衝液(7.5μL)にピペッティングにて懸濁させ、HVJ-EにpGL-3/biotin-PEI/importin-β-S/avidin三元複合体の封入を行った。封入後、試薬C(1.25μL)を添加混合した。
トランスフェクション実験は予め一晩前に24穴プレートに1穴あたり50000 cellを播種したNIH3T3 cell(マウス胎児繊維芽細胞)に先のpGL-3/biotin-PEI/importin-β-S. avidin三元複合体のHVJ-E封入体溶液を加え、37℃、5%CO2下で24時間培養した。比較物質として市販品遺伝子導入剤の中でも最も活性の高い部類に属するLipofectamine plus(Invitrogen社製)を用い、プロトコールに従い導入発現を行った。培養後、細胞をPBSで洗浄し、Steady-Glo Luciferase Assay System(プロメガ社製)を用い相対光強度を測定してルシフェラーゼの発現量を評価した。
その結果を図10に示す。まず、HVJ-Eに封入せずに細胞に投与した場合は、PEI/DNA複合体(図10中、c)では非常に低い発現効率しか得られないが、核内移行タンパクを加えることで(図10中、b)、約470倍発現効率が向上し、市販のLipofectamine
plus(図10中、a)と同等もしくはそれを凌ぐ結果が得られた。次に、pGL-3/biotin-PEI/importin-β-S. avidin三元複合体をHVJ-Eに封入した場合(図10中、d)、プロトコールにしたがうpGL-3のみを封入した場合(図10中、f)と比較し、約122倍の高い活性を示した。また、HVJ-Eに封入しない場合(図10中、b)と比較しても約4倍高い発現量を与え、細胞質まで効果的に核内移行性核酸を導入すると、その後核膜孔を通過する機能を持ち核内輸送に関わるインポーティンβの効果が大きいことを示している。
【実施例10】
【0052】
マウス新生児由来初代繊維芽細胞へのトランスフェクション PBS溶液中でルシフェラーゼ遺伝子をコードする0.2μg/μL pGL3-control(pGL-3、プロメガ社製)溶液5μLに0.5μg/μL 0.77mMビオチン化PEI(biotin-PEI)水溶液(1.25μL)と7.7mM PEI水溶液(3.88μL)を加え、室温で15分間静置した。この時のカチオンポリマーの窒素原子数とDNAのリン酸残基数の比であるN/P比は10となる。ビオチン化PEIのビオチン量の1等量に相当する0.50μg/μL GFP-インポーティンβ-ストレプトアビジン融合タンパク(importin-β-S/avidin)溶液0.74μLを加えpGL-3/biotin-PEI/importin-β-S/avidin三元複合体の調製を行った。
トランスフェクション実験は予め一晩前に24穴プレートに1穴あたり50000cellを播種した新生マウス上皮由来線維芽細胞に先のpGL-3/biotin-PEI/importin-β-S/avidin三元複合体を加え、37℃、5% CO2下で24時間培養した。比較物質として核内移行タンパクを加えない条件で導入発現を行った。培養後、細胞をPBSで洗浄しSteady-Glo
Luciferase Assay System(プロメガ社製)を用いてルシフェラーゼの発現量を評価した。その結果を図11に示す。PEI/DNA複合体と比較し、核内移行タンパクを加えることで、約5倍発現効率が向上し初代細胞でもインポーティンβの効果が大きいことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、遺伝子治療をはじめとして種々の分野において細胞に所望の遺伝子を高効率に導入・発現するための新しい非ウイルス性の技術として利用が期待される。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図8】
2
【図1】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10