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明細書 :セラミック粒子群およびその製造方法並びにその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5043436号 (P5043436)
登録日 平成24年7月20日(2012.7.20)
発行日 平成24年10月10日(2012.10.10)
発明の名称または考案の名称 セラミック粒子群およびその製造方法並びにその利用
国際特許分類 C01B  25/32        (2006.01)
A61K   6/033       (2006.01)
A61L  27/00        (2006.01)
A61K   8/24        (2006.01)
FI C01B 25/32 B
C01B 25/32 P
A61K 6/033
A61L 27/00 U
A61K 8/24
C01B 25/32 V
請求項の数または発明の数 24
全頁数 32
出願番号 特願2006-535147 (P2006-535147)
出願日 平成17年9月13日(2005.9.13)
国際出願番号 PCT/JP2005/016837
国際公開番号 WO2006/030782
国際公開日 平成18年3月23日(2006.3.23)
優先権出願番号 2004267404
2005041348
優先日 平成16年9月14日(2004.9.14)
平成17年2月17日(2005.2.17)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成20年5月15日(2008.5.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】803000056
【氏名又は名称】財団法人ヒューマンサイエンス振興財団
発明者または考案者 【氏名】古薗 勉
【氏名】岡田 正弘
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】大工原 大二
参考文献・文献 特開2004-224674(JP,A)
特開平02-296711(JP,A)
特開昭62-265108(JP,A)
特開2002-137910(JP,A)
特開2004-155596(JP,A)
特開平01-230413(JP,A)
調査した分野 C01B 25/00-25/46
C01B 33/00-33/193
C01B 15/00-23/00
特許請求の範囲 【請求項1】
粒子状のセラミック粒子からなるセラミック粒子群であって、
前記セラミック粒子の粒子径が10nm~700nmの範囲内で、かつ当該セラミック粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下であり、
上記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であることを特徴とするセラミック粒子群。
【請求項2】
粒子状のセラミック粒子からなるセラミック粒子群であって、
単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊を単結晶一次粒子とすると、
前記セラミック粒子群に含まれる単結晶一次粒子の割合が過半数を占め
上記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であることを特徴とするセラミック粒子群。
【請求項3】
上記セラミック粒子群に含まれる単結晶一次粒子の割合が、70%以上であることを特徴とする請求項2に記載のセラミック粒子群。
【請求項4】
上記セラミック粒子の粒子径が、10nm~700nmの範囲内であることを特徴とする請求項2または3に記載のセラミック粒子群。
【請求項5】
上記セラミック粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下である、請求項2ないし4のいずれか1項に記載のセラミック粒子群。
【請求項6】
上記セラミック粒子が、ハイドロキシアパタイト焼結体粒子であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のセラミック粒子群。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のセラミック粒子群を用いてなることを特徴とする歯科用材料
【請求項8】
セラミック粒子群の製造方法において、
焼結前のセラミック原料からなる一次粒子の粒子間に融着防止剤が介在するように混合する混合工程と、
前記混合工程によって得られる混合粒子を焼結する焼結工程を含むことを特徴とするセラミック粒子群の製造方法。
【請求項9】
上記混合工程が、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを有する高分子化合物を含む溶液と、上記一次粒子とを混合し、
金属塩をさらに添加する工程であることを特徴とする請求項8に記載のセラミック粒子群の製造方法。
【請求項10】
上記高分子化合物が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリグルタミン酸、エチレンスルホン酸、ポリメタクリル酸アルキルスルホン酸エステル、ポリアクリロイルアミノメチルホスホン酸、ポリペプチドからなる群から選択される少なくとも1つ以上の物質であることを特徴とする請求項9に記載のセラミック粒子群の製造方法。
【請求項11】
上記融着防止剤が、上記焼結工程の焼結温度において、不揮発性であることを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1項に記載のセラミック粒子群の製造方法。
【請求項12】
さらに、上記焼結工程の後に、上記融着防止剤を除去する除去工程を含むことを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1項に記載のセラミック粒子群の製造方法。
【請求項13】
上記除去工程が、上記融着防止剤を溶媒に溶解する工程を含むことを特徴とする請求項12に記載のセラミック粒子群の製造方法。
【請求項14】
上記除去工程に用いる溶媒が、上記融着防止剤溶解性で、かつセラミック粒子非溶解性の溶媒であることを特徴とする請求項13に記載のセラミック粒子群の製造方法。
【請求項15】
上記融着防止剤が、水系溶媒に溶解する物質であることを特徴とする請求項13に記載のセラミック粒子群の製造方法。
【請求項16】
上記融着防止剤が、炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項15に記載のセラミック粒子群の製造方法。
【請求項17】
上記混合工程の前に、一次粒子を生成する一次粒子生成工程を含むことを特徴とする請求項8ないし16のいずれか1項に記載のセラミック粒子群の製造方法。
【請求項18】
上記一次粒子生成工程によって生成される一次粒子の粒子径が、10nm~500nmの範囲内であることを特徴とする請求項17に記載のセラミック粒子群の製造方法。
【請求項19】
上記一次粒子生成工程によって生成される一次粒子からなる一次粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下であることを特徴とする請求項17または18に記載のセラミック粒子群の製造方法。
【請求項20】
請求項1ないしのいずれか1項に記載のセラミック粒子群を用いてなることを特徴とするクロマトグラフィー用充填剤。
【請求項21】
請求項1ないしのいずれか1項に記載のセラミック粒子群を用いてなることを特徴とする医療用材料
【請求項22】
請求項1ないしのいずれか1項に記載のセラミック粒子群を用いてなることを特徴とする化粧品添加剤。
【請求項23】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のセラミック粒子群を用いてなることを特徴とする建材
【請求項24】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のセラミック粒子群を用いてなることを特徴とする工業用材
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒中で単結晶一次粒子として存在し、分散性の高いセラミック粒子、特に生体適合性、生体組織に対する密着性あるいは接着性を有し、生体分解吸収性の低い、医療用材料に有用である単結晶ハイドロキシアパタイトを始めとするリン酸カルシウム焼結体粒子群(セラミック粒子群)、およびその製造方法、並びにその粒子群の用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイドロキシアパタイト(以下、適宜「HAp」と表記する)を代表とするリン酸カルシウム(以下、適宜「CaP」と表記する)は、その生体適合性の高さから生体材料として注目されている。例えば、リン酸カルシウム(CaP)、特にハイドロキシアパタイト(HAp)が、人工関節、骨充填剤、人工骨、人工歯根、経皮端子、歯科用充填剤セメント等に利用されている。また、シリコーンゴムやポリウレタン等の高分子医療用材料に生体活性を付与するために、ハイドロキシアパタイト(HAp)等のリン酸カルシウム(CaP)を高分子医療用材料に結合させる場合がある。またこの他、クロマトグラフィー用の充填剤としても利用されている。
【0003】
上記のごとくハイドロキシアパタイト(HAp)等のリン酸カルシウム(CaP)を医療用材料、高分子医療用材料に結合させる場合やクロマトグラフィー用の充填剤として利用する場合においては、生体内での安定性の向上や成形性を確保するため、ハイドロキシアパタイト(HAp)等のリン酸カルシウム(CaP)を焼結して得られる焼結体、すなわちセラミックであることが好ましいとされている。さらに、高分子医療用材料の均一なコーティングの実現や、クロマトグラフィーにおける分離能の向上のためには、粒子径が微細であること、および粒子径が均一である(すなわち粒度分布が狭い)ことが求められている。
【0004】
ところで、上記ハイドロキシアパタイト(HAp)を始めとするリン酸カルシウム(CaP)の粒子の一般的な製造方法としては、湿式法、熱水法および乾式法等が用いられている。このうち、工業的には、大量合成が可能である湿式法が主として採用されている。この湿式法の具体的な方法としては、例えば、非特許文献1に開示されているように、常温下にて、水酸化カルシウムのスラリーにリン酸を滴下してリン酸カルシウムを製造する沈殿法や、リン酸カルシウム二水和物と炭酸カルシウムとを反応させることによりリン酸カルシウムを製造する加水分解法等が知られている。
【0005】
また、リン酸カルシウム(Cap)粒子を乾燥して焼結体粒子(セラミック粒子)を製造する方法としては、800℃から1200℃の高温で焼結させるか、非特許文献2、3等に開示されているように、スプレードライ法を用いて製造する方法がある。上記スプレードライ法とは、有効物質を含む溶液または懸濁液(スラリー)等の分散液を微粒化して、この微粒子を高温気流との接触により瞬時に固化する手法である。つまり、リン酸カルシウム(CaP)一次粒子を含む溶液または懸濁液を、高温気流とともに噴射することで、微小なリン酸カルシウムからなる球形状の粒子を形成することができるという手法である。
【0006】
また非特許文献4には、リン酸カルシウムを含む原料液を液体窒素中に滴下してリン酸カルシウム粒子を調製し、当該リン酸カルシウム粒子を焼成してリン酸カルシウム焼結体粒子を製造する方法こと、および当該方法により得られたリン酸カルシウム焼結体粒子(粒子径450μm~3000μm)が記載されている。
【0007】
また非特許文献5には、ドリップ-キャスティングプロセスを用いてハイドロキシアパタイト粒子を調製し、当該ハイドロキシアパタイト粒子を焼成してハイドロキシアパタイト焼結体粒子を製造する方法、および当該方法により得られたハイドロキシアパタイト焼結体粒子(粒子径0.7mm~4mm)が記載されている。
【0008】
〔非特許文献1〕
Inorganic Materials,Vol2 No.258,393-400(1995),「水酸アパタイトおよび関連リン酸塩類の結晶および結晶集合体の形態制御」松田 信行、若菜 穣、鍛冶 文宏
〔非特許文献2〕
P.Luo and T.G.Nieh Biomaterials,17,1959(1996),“Preparing hydroxyapatite powders with controlled morphology”
〔非特許文献3〕
L.J.Cummings,P.Tunon,T.Ogawa,Spec.Publ.R.Soc.Chem.158,134(1994)”Macro-Prep Ceramic Hydroxyapatite-New Life for an Old Chromatographic Technique.”
〔非特許文献4〕
Biomaterials 1994,Vol.15 No.6,M.Fabbri,G.C.Celotti and A.Ravaglioli,“Granulates based on calcium phosphate with controlled morphology and porosity for medical applications:physico-chemical parameters and production technique”
〔非特許文献5〕
Biomaterials 1996,Vol.17 No.20,Dean-Mo Liu,“Fabrication and characterization of porous hydroxyapatite granules”
ところで、本発明者らは、生体組織、特に皮下細胞のような軟組織に対して生体適合性を示すデバイスの開発をめざし、化学結合を介したハイドロキシアパタイト(HAp)/高分子複合体の合成に関する研究を行なってきている。このとき、ハイドロキシアパタイト(HAp)の結晶性を高めることで生体内での溶解性、分解性を低減させることを目的とし、800℃にて焼結(仮焼)させて単結晶ハイドロキシアパタイト粒子(セラミック粒子)を作製している。高分子基材表面上にハイドロキシアパタイト(HAp)粒子が強固に化学結合を形成するためには、高分子基材への吸着時における媒体への分散性が重要となる。しかし、この焼結の際にハイドロキシアパタイト(HAp)粒子(一次粒子)間の融着により結合が生じ、一次粒子が結合した不定形な二次粒子となり、分散性および比表面積が低下してしまうという問題点があった。
【0009】
また、上記非特許文献2,3等に開示されている作製方法(スプレードライ法)であっても、同様に一次粒子が融着した不定形の二次粒子が形成され、分散性および比表面積が低下してしまう。またリン酸カルシウム(CaP)粒子の粒子径を均一に制御する(粒度分布を或る一定の範囲以下に制御する)ことができない。すなわち、上記スプレードライ法では、溶液または懸濁液を高温気流とともに噴射することにより、リン酸カルシウム(CaP)の微粒子(一次粒子)が融着し、二次粒子が形成される。この高温気流中で集合する微粒子(一次粒子)の数を制御することは不可能である。従って、上記スプレードライ法では、リン酸カルシウム(CaP)からなる粒子の粒度分布を厳密に制御することはできない。よって、上記スプレードライ法によってリン酸カルシウム(CaP)からなるセラミック粒子を製造した場合、使用する用途によっては、さらに分級する必要が生ずる。例えば、上記リン酸カルシウム(CaP)からなるセラミック粒子を、クロマトグラフィー用充填剤として使用する場合、分解能を向上させるためには、より一層粒子径が均一な(粒度分布が狭い)担体を用いる必要がある。従って、上記リン酸カルシウム(CaP)からなるセラミック粒子を、クロマトグラフィー用充填剤として使用する場合には、粒子径がより均一な(粒度分布の狭い)リン酸カルシウム(CaP)からなるセラミック粒子の粒子群を用いることが要求される。
【0010】
また上記非特許文献2,3に開示のリン酸カルシウムからなるセラミック粒子群の製造方法では、粒子径が1~8μmの範囲内の粒子径(非特許文献2)を有する粒子群しか得ることができない。さらに、例えば、上記非特許文献2に開示のリン酸カルシウムからなるセラミック粒子の粒子群を分級して、より粒度分布が狭い粒子群を得ようとした場合でも、物理的な限界により、これ以上粒度分布を狭くすることは非常に困難であるとともに、分級を行なう場合には、コストが著しく増大することとなる。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶媒中で単結晶一次粒子で分散するセラミック粒子群、特に生体適合性、生体組織に対する密着性あるいは接着性を有し、生体分解吸収性の低い、医療用材料に有用である単結晶ハイドロキシアパタイト(HAp)を始めとするリン酸カルシウム(CaP)焼結体粒子(セラミック粒子)群、およびその製造方法、並びにその粒子の用途を提供することにある。
【発明の開示】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明にかかるセラミック粒子群は、上記課題を解決するために、粒子状のセラミック粒子からなるセラミック粒子群であって、前記セラミック粒子の粒子径が10nm~700nmの範囲内で、かつ当該セラミック粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下であることを特徴としている。
【0014】
上記本発明にかかるセラミック粒子群は、微粒子かつ粒子径の均一な(粒度分布が狭い)ものである。それゆえ、特に高度な分級等の付加的な操作を行なうことなく、医療用高分子材料に対してより均一に吸着させることができるという効果を奏する。またカラムに対してより均一に充填することができ、分離能が高く、再現性の良いクロマトグラフィー用充填剤を提供することができるという効果を奏する。
【0015】
また本発明にかかるセラミック粒子群は、上記課題を解決するために、粒子状のセラミック粒子からなるセラミック粒子群であって、単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊を単結晶一次粒子とすると、前記セラミック粒子群に含まれる単結晶一次粒子の割合が過半数を占めることを特徴とするものであってもよい。
【0016】
上記本発明にかかるセラミック粒子群は、その過半数が溶媒中で分散性の優れた単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)として存在している。それゆえ、既述の医療用高分子基材への吸着がし易くなるという効果を奏する。また、一次粒子同士の結合が無いため、比表面積が高く、クロマトグラフィー用充填剤として好適に利用することができるという効果を奏する。さらには、生体内で安定性が高く、分散性に優れることから薬剤の担持および徐放が可能な医療用材料として利用できるという効果を奏する。
【0017】
また本発明にかかるセラミック粒子群は、上記セラミック粒子群に含まれる単結晶一次粒子の割合が、70%以上であってもよい。
【0018】
上記構成によれば、本発明にかかるセラミック粒子群は、単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)の存在率が70%以上と高く、さらに医療用高分子基材への吸着がし易くなるという効果を奏する。またクロマトグラフィー用充填剤、医療用材料としてもより好適に利用可能であるという効果を奏する。
【0019】
また本発明にかかるセラミック粒子群は、上記セラミック粒子の粒子径が、10nm~700nmの範囲内であってもよい。
【0020】
上記構成によれば、本発明にかかるセラミック粒子群の粒子径が、10nm~700nmと微細(いわゆるナノメートルサイズ)である。よって医療用高分子材料に対してより均一に吸着させることができるという効果を奏する。またカラムへの充填率を高めることができ、分離能が高く、再現性の良いクロマトグラフィー用充填剤を提供することができるという効果を奏する。
【0021】
また本発明にかかるセラミック粒子群は、上記セラミック粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下であってもよい。
【0022】
上記本発明にかかるセラミック粒子群は、微粒子かつ粒子径の均一な(粒度分布が狭い)ものである。それゆえ、特に高度な分級等の付加的な操作を行なうことなく、医療用高分子材料に対してより均一に吸着させることができるという効果を奏する。またカラムに対してより均一に充填することができ、分離能が高く、再現性の良いクロマトグラフィー用充填剤を提供することができるという効果を奏する。
【0023】
また本発明にかかるセラミック粒子群は、上記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であってもよい。
【0024】
上記構成によれば、本発明にかかるセラミック粒子群は生体適合性が高いリン酸カルシウム焼結体で構成されている。それゆえ、本発明にかかるセラミック粒子は、医療用材料としてより好ましいといえる。
【0025】
また本発明にかかるセラミック粒子群は、上記セラミック粒子が、ハイドロキシアパタイト焼結体粒子であってもよい。
【0026】
上記構成によれば、本発明にかかるセラミック粒子は、さらに生体適合性が高く、広範な用途に利用可能なハイドロキシアパタイト焼結体で構成されている。それゆえ、本発明は医療用材料としてさらに好ましいといえる。
【0027】
一方、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、上記課題を解決するために、セラミック粒子群の製造方法において、焼結前のセラミック原料からなる一次粒子の粒子間に融着防止剤が介在するように混合する混合工程と、前記混合工程によって得られる混合粒子を焼結する焼結工程を含むことを特徴としている。
【0028】
上記本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法によれば、非晶質(アモルファス)のリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)等からなる一次粒子の粒子間に、あらかじめ融着防止剤を介在させておくことで、その後の焼結工程における一次粒子同士の融着を防止することができる。それゆえ、溶媒中で単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)として分散するセラミック粒子を製造することができるという効果を奏する。また不定形の二次粒子を形成しにくいために、平均粒子径の増加を防止することができ、さらには当該製造方法によって得られるセラミック粒子の粒子径は均一なものとすることができるという効果を奏する。
【0029】
また本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、上記課題を解決するために、上記混合工程が、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを有する高分子化合物を含む溶液と、上記一次粒子とを混合し、金属塩をさらに添加する工程であってもよい。
【0030】
また本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、上記課題を解決するために、上記高分子化合物が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリグルタミン酸、ポリエチレンスルホン酸、ポリメタクリル酸アルキルスルホン酸エステル、ポリアクリロイルアミノメチルホスホン酸、ポリペプチドからなる群から選択される少なくとも1つ以上の物質であってもよい。
【0031】
また本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、上記課題を解決するために、上記金属塩が、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩であってもよい。
【0032】
上記本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法では、非晶質(アモルファス)のリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)等からなる一次粒子の粒子の表面に上記高分子化合物が吸着し、カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを当該一次粒子の表面に付加する。当該カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基は溶液中でイオン化しており、そこに金属塩(アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩)をさらに添加すれば、上記一次粒子の粒子の表面に金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩が生じる。当該金属塩は、上記融着防止剤として機能する。
【0033】
上記構成によれば、一次粒子の表面に高分子化合物が、一次粒子同士の接触を確実に阻止することができる。したがって、その後の焼結工程における一次粒子同士の融着を防止し、溶媒中で単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)として分散するセラミック粒子を製造することができるという効果を奏する。また不定形の二次粒子を形成しにくいために、平均粒子径の増加を防止することができ、さらには当該製造方法によって得られるセラミック粒子の粒子径は均一なものとすることができるという効果を奏する。
【0034】
また、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、上記融着防止剤が、上記焼結工程の焼結温度において、不揮発性であることを特徴とするものであってもよい。
【0035】
上記のごとく本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法に用いる融着防止剤は、焼結工程における焼結温度条件下で不揮発性であるために、焼結工程中に原料粒子間から消失することは無く、一次粒子同士の融着を確実に防止することができるという効果を奏する。
【0036】
また、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、さらに、上記焼結工程の後に、上記融着防止剤を除去する除去工程を含む構成であってもよい。
【0037】
上記構成によれば、混在している融着防止剤をセラミック粒子群から除去することができるという効果を奏する。
【0038】
また、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、上記除去工程が、上記融着防止剤を溶媒に溶解する工程を含む構成であってもよい。
【0039】
上記構成によれば、焼結後の融着防止剤を含むセラミック粒子を溶媒中で懸濁させることによって、融着防止剤を溶解することができる。上記懸濁液についてろ過等をすることによって、簡便に混在している融着防止剤をセラミック粒子群から除去することができるという効果を奏する。
【0040】
また、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、上記除去工程に用いる溶媒が、上記融着防止剤溶解性で、かつセラミック粒子非溶解性の溶媒であってもよい。
【0041】
上記構成によれば、融着防止剤の除去に用いる溶媒が、融着防止剤のみを溶解するため、セラミック粒子に損傷を与えることなく確実に融結防止剤をセラミック粒子群から除去することができるという効果を奏する。
【0042】
また、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、上記融着防止剤が、水系溶媒に溶解する物質であってもよい。
【0043】
上記のごとく融着防止剤として、水系溶媒に溶解する融着防止剤を用いることによれば、セラミック粒子を純水等の水系溶媒に懸濁するだけで融着防止剤(炭酸カルシウム)を除去することができる。除去工程に有機溶媒を用いる必要が無いため、除去工程に有機溶媒の使用に対応する設備、有機溶媒廃液処理が不要となる。それゆえ、より簡便にセラミック粒子群から融着防止剤を除去することができるという効果を奏する。
【0044】
また、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、上記融着防止剤が、炭酸カルシウムであってもよい。
【0045】
炭酸カルシウムは、水に可溶である。よって、上記と同様にセラミック粒子群を純水等の水系溶媒に懸濁するだけで融着防止剤(炭酸カルシウム)を除去することができる。除去工程に有機溶媒を用いる必要が無いため、除去工程に有機溶媒の使用に対応する設備、有機溶媒廃液処理が不要となる。それゆえ、より簡便にセラミック粒子群から融着防止剤を除去することができるという効果を奏する。
【0046】
また、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、上記混合工程の前に、一次粒子を生成する一次粒子生成工程を含む構成であってもよい。
【0047】
上記のごとく一次粒子を一次粒子生成工程において取得し、当該一次粒子を用いて、本発明の混合工程および焼結工程を経ることによって、分散性に優れたセラミック粒子を製造することができるという効果を奏する。
【0048】
また、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、上記一次粒子生成工程によって生成される一次粒子の粒子径が、10nm~500nmの範囲内であってもよい。
【0049】
上記のごとくナノメートルサイズの一次粒子を一次粒子生成工程において取得し、当該一次粒子を用いて、本発明の混合工程および焼結工程を経ることによって、溶媒中で単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)として分散し、かつナノメートルサイズのセラミック粒子を製造することができるという効果を奏する。
【0050】
また、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、上記一次粒子生成工程によって生成される一次粒子からなる一次粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下であってもよい。
【0051】
上記のごとく粒子径が均一な(粒度分布が狭い)一次粒子を一次粒子生成工程において取得し、当該一次粒子を用いて、本発明の混合工程および焼結工程を経ることによって、溶媒中で一次粒子として分散し、かつ粒子径が均一な(粒度分布が狭い)セラミック粒子を製造することができるという効果を奏する。
【0052】
一方、本発明にかかるクロマトグラフィー用充填剤は、上記課題を解決すべく、上記本発明にかかるセラミック粒子群を用いてなることを特徴としている。
【0053】
本発明にかかるクロマトグラフィー用充填剤は、本発明にかかるセラミック粒子群を用いているため、粒子径が均一な(粒度分布が狭い)クロマトグラフィー用充填剤である。それゆえ、比表面積が高く、分離能が高いクロマトグラフィー用充填剤を提供することができるという効果を奏する。また粒子径が、ナノメートルサイズであるためカラムへの充填率を高めることができ、分離能が高く、再現性の良いクロマトグラフィー用充填剤を提供することができるという効果を奏する。
【0054】
一方、本発明にかかる歯科用材料または医療用材料は、上記課題を解決すべく、上記本発明にかかるセラミック粒子群を用いてなることを特徴としている。
【0055】
上記本発明にかかる医療用材料は、本発明にかかるセラミック粒子群を用いているため、溶媒中で分散性の優れた単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)として存在している。それゆえ、既述の医療用高分子基材への吸着がし易くなるという効果を奏する。また生体適合性の高いリン酸カルシウム(HAp等)よりなるセラミック粒子を用いることによって、より生体適合性の高い歯科用材料または医療用材料を提供することができるという効果を奏する。
【0056】
上記のごとく本発明によれば、溶媒中で凝集することなく単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)で分散するセラミック粒子群、特に生体適合性、生体組織に対する密着性あるいは接着性を有し、生体分解吸収性の低い、医療用材料に有用である単結晶ハイドロキシアパタイト(HAp)を始めとするリン酸カルシウム(CaP)焼結体粒子(セラミック粒子)群を提供することができる。またナノメートルサイズのセラミック粒群子群を提供することも可能である。
【0057】
上記本発明にかかるセラミック粒子群によれば、シリコーンやポリウレタン等の医療用高分子基材への吸着がし易くなるという効果を奏する。また、一次粒子同士の結合が無いため比表面積が高く、クロマトグラフィー用充填剤として好適に利用することができるという効果を奏する。さらには、生体内で安定性が高く、分散性に優れることから薬剤の担持および徐放が可能な医療用材料として利用できるという効果を奏する。
【0058】
一方、本発明にかかる化粧品添加剤、建材、または工業用材は、上記課題を解決すべく、上記本発明にかかるセラミック粒子群を用いてなることを特徴としている。
【0059】
なお、非特許文献1には、リン酸カルシウム(CaP)の粒子の一般的な製造方法(湿式法、熱水法および乾式法等)、および一般的な製造方法(湿式法、熱水法および乾式法等)により得られたCaP粒子の形状等性質が記載されている。しかし非特許文献1には、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法のごとく着防止剤を用いることは開示されておらず、また本発明にかかるセラミック粒子群のごとく一次粒子の状態で、粒子径が10nm~700nmのものも開示されていない。
【0060】
また非特許文献2には、ハイドロキシアパタイト(HAp)粒子の形状を制御すべく、スプレードライ法を用いたハイドロキシアパタイト(HAp)粒子の製造方法が記載されているが、非特許文献2の方法では本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法とは異なり、一次粒子同士の融着を防止しておらず、一次粒子が融着した不定形の二次粒子が形成され、分散性および比表面積が低下してしまう。さらに非特許文献2の製造方法では、リン酸カルシウム(CaP)粒子の粒子径を均一に制御する(粒度分布をある一定の範囲以下に制御する)ことができない。
【0061】
また非特許文献3には、粒子径が20μm、40μmおよび80μmであるセラミック粒子(ハイドロキシアパタイト粒子)が記載されているが、本発明にかかるセラミック粒子群の粒子径は10nm~700nmであり、非特許文献3のそれとは明らかに異なっている。
【0062】
また非特許文献4には、リン酸カルシウムを含む原料液を液体窒素中に滴下してリン酸カルシウム粒子を調製し、当該リン酸カルシウム粒子を焼成してリン酸カルシウム焼結体粒子を製造する方法こと、および当該方法により得られたリン酸カルシウム焼結体粒子(粒子径450μm~3000μm)が記載されている。しかし非特許文献4の製造方法は、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法において使用する融着防止剤を使用することなく焼成しているため、一次粒子が融着した不定形の二次粒子が形成され、分散性および比表面積が低下してしまうという点において本発明とは明らかに異なる。また本発明のセラミック粒子群は一次粒子として存在し、かつその粒子径が10nm~700nmであり、非特許文献4のれとは明らかに異なる。
【0063】
また非特許文献5には、ドリップ-キャスティングプロセスを用いてハイドロキシアパタイト粒子を調製し、当該ハイドロキシアパタイト粒子を焼成してハイドロキシアパタイト焼結体粒子を製造する方法、および当該方法により得られたハイドロキシアパタイト焼結体粒子(粒子径0.7mm~4mm)が記載されている。しかし非特許文献5の製造方法では、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法において使用する融着防止剤を用いておらず、またピペットの孔や型のサイズによってハイドロキシアパタイトの粒子の粒子径を制御しており、本発明にかかるセラミック粒子群の粒子径のごとくナノメートルサイズ(10nm~700nm)のものは製造できない。したがって、非特許文献5の記載事項と本願発明とは明らかに異なる。
【0064】
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、次の説明で明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図2】比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図3(a)】実施例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群について動的光散乱法により粒度分布を調べた結果を示すグラフである。
【図3(b)】比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群について動的光散乱法により粒度分布を調べた結果を示すグラフである。
【図4】実施例1および比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子のX線回折の結果を示すチャートである。
【図5】実施例1および比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子のFT-IRの結果を示すチャートである。
【図6】実施例2の「一次粒子生成工程」で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群について動的光散乱法により粒度分布を調べた結果を示すグラフである。
【図7】実施例2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群について動的光散乱法により粒度分布を調べた結果を示すグラフである。
【図8】実施例2および比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子のX線回折の結果を示すチャートである。
【図9】実施例2および比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子のFT-IRの結果を示すチャートである。
【図10】実施例3「一次粒子生成工程」で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群について動的光散乱法により粒度分布を調べた結果を示すグラフである。
【図11】比較例2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群について動的光散乱法により粒度分布を調べた結果を示すグラフである。
【図12】実施例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群について動的光散乱法により粒度分布を調べた結果を示すグラフである。
【図13】実施例3で得られたロッド状ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図14】実施例4「一次粒子生成工程」で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群について動的光散乱法により粒度分布を調べた結果を示すグラフである。
【図15】実施例4で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群について動的光散乱法により粒度分布を調べた結果を示すグラフである。
【図16】比較例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群について動的光散乱法により粒度分布を調べた結果を示すグラフである。
【図17】実施例4で得られたロッド状(棒状)ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図18】比較例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図19】実施例4で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群、並びに焼結体粒子群および比較例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の比表面積を示す棒グラフである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
本発明の実施の形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
〔本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法〕
以下に本発明にかかるセラミック粒子群を製造する方法について説明する。
【0068】
本発明において製造するセラミックは、原料を焼結(焼成)して得られる固体材料であれば特に限定されるものではなく、狭義のセラミックのみならず、いわゆる「ニューセラミック」あるいは「ファインセラミック」を含む広義のセラミックをも意味する。セラミックの原料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化チタン、窒化チタン、シリカ、グラファイト、マグネタイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイトを含む)等が挙げられる。
【0069】
特にハイドロキシアパタイト(HAp)を始めとするリン酸カルシウム(CaP)からなるセラミックは、生体活性を有するセラミック(生体活性セラミック)として注目されており、医療用材料等に好適に利用されている。したがって、上記リン酸カルシウムは、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法におけるセラミックの原料として好適であるといえる。かかるリン酸カルシウム(CaP)として具体的には、例えば、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))、リン酸トリカルシウム(Ca(PO)、メタリン酸カルシウム(Ca(PO)、Ca10(PO、Ca10(POCl等が挙げられる。なお、上記リン酸カルシウム(CaP)は、湿式法や、乾式法、加水分解法、水熱法等の公知の製造方法によって、人工的に製造されたものであってもよく、また、骨、歯等から得られる天然由来のものであってもよい。また、上記リン酸カルシウム(CaP)には、リン酸カルシウム(CaP)の水酸イオンおよび/またはリン酸イオンの一部が炭酸イオン、塩化物イオン、フッ化物イオン等で置換された化合物等が含まれていてもよい。
【0070】
本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、少なくとも「混合工程」、「焼結工程」を含んでいればよいが、この他「除去工程」、「一次粒子生成工程」を含んでいてもよい。なお以下の説明においては、上記4工程を全て含んだ製造方法について説明する。
【0071】
本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法において上記4工程は、例えば「1.一次粒子生成工程」→「2.混合工程」→「3.焼結工程」→「4.除去工程」の順で行われる。
【0072】
(1.一次粒子生成工程)
ここで「一次粒子」とは、セラミック粒子群の製造工程の焼結前に、セラミック原料(リン酸カルシウム(CaP)、ハイドロキシアパタイト(HAp)等)によって形成された粒子のことを意味する。すなわちセラミック粒子の製造工程において、初めて形成された粒子のことを意味する。また狭義には単結晶粒子のことを意味する。なお本発明の説明において「一次粒子」とは、非晶質(アモルファス)の状態のもの、及びその後に焼結を行なった焼結体の状態のものをも含む意味である。
【0073】
これに対して「二次粒子」とは、複数の「一次粒子」同士が、融着等の物理的結合、イオン結合または共有結合等の化学的結合によって、結合して形成された状態の粒子を意味する。特に一次粒子同士の結合の個数、結合後の形状等は限定されるものではなく、2つ以上の一次粒子が結合したもの全てを意味する。
【0074】
また特に「単結晶一次粒子」とは、セラミック原料の単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊を意味する。なお前記「イオン的相互作用にて集合化した粒子塊」とは、水もしくは有機溶媒を含む媒体にて分散させた場合にイオン的相互作用で自己集合する粒子塊であって、焼結により粒子間が溶融して多結晶化した二次粒子を含まないものである。
【0075】
当該一次粒子生成工程は、上記一次粒子を生成することができる工程であれば特に限定されるものではなく、製造するセラミックの原料により適宜選択の上、採用すればよい。例えば、常温下において水酸化カルシウムスラリーにリン酸を滴下すれば、リン酸カルシウム(CaP)の粒子が沈殿する。
【0076】
本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法は、上記の一次粒子生成工程によって生成した一次粒子からなる一次粒子群を、融着等を防止しながら焼結してセラミック粒子群を製造するものである。よって、当該一次粒子生成工程によって生成された一次粒子の状態(粒子径、粒度分布)が、最終生産物であるセラミック粒子の状態(粒子径、粒度分布)にそのまま反映される。したがって、粒子径が微細(ナノメートルサイズ)でかつ粒子径が均一な(粒度分布が狭い)セラミック粒子群を製造しようとする場合においては、当該一次粒子生成工程において粒子径が微細(ナノメートルサイズ)でかつ粒子径が均一な(粒度分布が狭い)一次粒子群を生成しておく必要がある。
【0077】
かかる場合の好ましい一次粒子の粒子径としては、10nm~500nmが好ましく、20nm~450nmがさらに好ましく、25nm~400nmが最も好ましい。また一次粒子からなる一次粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下であることが好ましく、18%以下であることがさらに好ましく、15%以下であることが最も好ましい。なお一次粒子の粒子径および変動係数は、動的光散乱法または、電子顕微鏡を用い、少なくとも100個以上の一次粒子について粒子径を測定して計算すればよい。上記のような一次粒子群を生成しておくことで、例えば、医療用材料やクロマトグラフィー用の充填剤として用いる場合に好適なセラミック粒子群を最終的に製造することができる。
【0078】
なお「変動係数」は、標準偏差÷平均粒子径×100(%)で計算することができる粒子間の粒子径のバラツキを示す値である。
【0079】
上記のような微細(ナノメートルサイズ)でかつ粒子径が均一な(粒度分布が狭い)一次粒子群を生成する方法については、特に限定されるものではないが、例えば、本発明者らが開発した方法(特開2002-137910号公報参照)が利用可能である。つまり、界面活性剤/水/オイル系エマルジョン相にカルシウム溶液およびリン酸溶液を可溶化して混合させ、界面活性剤の曇点以上で反応させることでハイドロキシアパタイト微粒子(一次粒子)を合成することができるというものである。また、このとき上記界面活性剤の官能基および親水性/疎水性比の割合を変えることによりハイドロキシアパタイト微粒子の大きさを制御することができる。
【0080】
上記ハイドロキシアパタイト微粒子を製造する原理を簡単に説明すれば、以下の通りである。界面活性剤/水/オイル系エマルジョン相にカルシウム溶液およびリン酸溶液を可溶化して混合させ、反応させてハイドロキシアパタイト微粒子を合成する方法においては、界面活性剤のミセルの中でハイドロキシアパタイトの核が成長し、結晶成長する。このとき反応温度を界面活性剤の曇点以上とすることにより、ミセルの熱力学的安定性を制御することができる。すなわち界面活性剤の曇点以上に反応温度を上げるということは、界面活性剤のミセルを形成する力を下げるということである。そうすると、ミセルという枠の中で制限を受けていたハイドロキシアパタイトの結晶成長の駆動力がミセルの枠を維持しようとする駆動力より大きくなると考えられる。よって、そのメカニズムを利用して結晶の形を制御できる。
【0081】
界面活性剤のミセルを作る場合に、界面活性剤の官能基(親水性部位)および分子内の親水性/疎水性比が重要であり、この違いによってミセルの安定性、曇点も異なってくる。また界面活性剤の曇点は、種類によって異なる。したがって、界面活性剤の種類を適宜変更することにより、上記界面活性剤の官能基および親水性/疎水性比の割合を変えることができハイドロキシアパタイト微粒子の大きさを制御することができる。
【0082】
なお上記方法において用いる界面活性剤の種類は、特に限定されず、上記の特開平5-17111号公報に開示された他種類の公知の陰イオン、陽イオン、両性イオン、非イオン性界面活性剤から適宜選択して用いることができる。より具体的には、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが利用可能である。また陽イオン界面活性剤としては、ステアリルアミン塩酸塩、ラリウルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩などが利用可能であり、陰イオン界面活性剤としては、ラリウルアルコール硫酸エステルナトリウム、オレイルアルコール硫酸エステルナトリウムなどの高級アルコール硫酸エステル塩類、ラリウル硫酸ナトリウム、ラリウル硫酸アンモニウムなどのアルキル硫酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類などが利用可能であり、両性界面活性剤としては、アルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型、アミンオキサイド型等が利用可能である。上記の界面活性剤は1種類または2種類以上の組み合わせで使用する。このなかで、曇点、溶解性の点から、特にペンタエチレングリコールドデシルエーテルを使用することが望ましい。
【0083】
また上記方法において利用可能なオイル相としては、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、ドデカン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、クロロベンゼン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ブタノールなどのアルコール類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類など挙げられ、これら溶媒は、使用する界面活性剤に応じて、水の溶解度が小さく、上記界面活性剤のいずれかを溶解するように1種もしくは2種を選択する。この中で、水の溶解度、界面活性剤の溶解性の点から、特にドデカンを使用することが望ましい。この他反応温度、反応時間、原料の添加量等は、一次粒子の組成に応じて適宜最適な条件を選択の上、採用すればよい。ただし反応温度の上限は、水溶液の反応であるから溶液が沸騰しない温度であれることが好ましく、90℃以下が好ましい。
【0084】
また、本工程には生成した一次粒子を水等で洗浄する工程、遠心分離、ろ過等で一次粒子を回収する工程が含まれていてもよい。
【0085】
(2.混合工程)
当該混合工程は、一次粒子と融着防止剤とを混合する工程である。上記一次粒子生成工程によって得られた一次粒子群の粒子間に、あらかじめ融着防止剤を介在させておくことで、その後の焼結工程における一次粒子同士の融着を防止することができるというものである。なお本当該混合工程によって得られた一次粒子と融着防止剤との混合物を「混合粒子」と呼ぶ。
【0086】
ここで「融着防止剤」としては、一次粒子間の融着を防止できるものであれば特に限定されるものではないが、後の焼結工程の焼結温度において、不揮発性であることが好ましい。焼結温度条件下で不揮発性であるために、焼結工程中に一次粒子間から消失することは無く、一次粒子同士の融着を確実に防止することができるからである。ただし焼結温度において100%の不揮発性を有する必要は無く、焼結工程終了後に一次粒子間に10%以上残存する程度の不揮発性であればよい。また融着防止剤は焼結工程終了後に熱による化学的に分解するものであってもよい。すなわち焼結工程終了後に残存していれば、焼結工程の開始前後で、同一の物質(化合物)である必要は無い。
【0087】
また融着防止剤が、溶媒、特に水系溶媒に溶解する物質であることが好ましい。上記のごとく融着防止剤として、溶媒に溶解する融着防止剤を用いることによれば、融着防止剤が混在するセラミック粒子群を純水等の水系溶媒に懸濁するだけで、融着防止剤(例えば炭酸カルシウム等)を除去することができる。特に水系溶媒に溶解する融着防止剤であれば、融着防止剤を除去する際に有機溶媒を用いる必要が無いため、除去工程に有機溶媒の使用に対応する設備、有機溶媒廃液処理が不要となる。それゆえ、より簡便にセラミック粒子群から融着防止剤を除去することができるといえる。上記溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水系溶媒としては、水、エタノール、メタノール等が挙げられ、有機溶媒としては、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0088】
また上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、シュウ酸塩、エチレンジアミン、ビピリジン、エチレンジアミン四酢酸塩などのキレート化合物が含んでいても良い。さらに上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、塩化ナトリウム、硝酸アンモニウム、炭酸カリウムなどの電解質イオンを含んでいても良い。
【0089】
ここで、融着防止剤の溶媒に対する溶解度は、高ければ高いほど除去効率が高くなるために好ましいといえる。かかる好ましい溶解度は、溶媒100gに対する溶質の量(g)を溶解度とすると、0.01g以上が好ましく、1g以上がさらに好ましく、10g以上が最も好ましい。
【0090】
上記融着防止剤の具体例としては、塩化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウムなどのカルシウム塩(または錯体)、塩化カリウム、酸化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウムなどのカリウム塩、塩化ナトリウム、酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどのナトリウム塩などが挙げられる。
【0091】
なお、当該混合工程において一次粒子と融着防止剤とを混合させる方法については、特に限定されるものではなく、固体の一次粒子に固体の融着防止剤を混合後、ブレンダーを用いて混合する方法であってもよいし、融着防止剤の溶液中に一次粒子を分散させる方法を行なってもよい。ただし、固体と固体を均一に混合することは困難であるため、一次粒子間に均一かつ確実に融着防止剤を介在させるためには、後者が好ましい方法であるといえる。後者の方法を採用した場合は、一次粒子を分散させた融着防止剤溶液を乾燥させておくことが好ましい。一次粒子と融着防止剤が均一に混合された状態を長期にわたってキープすることができるからである。後述する実施例においても、炭酸カルシウム飽和水溶液にハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子0.5gを分散させ、80℃にて乾燥させて混合粒子を取得している。
【0092】
また当該混合工程は、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを有する高分子化合物を含む溶液と、上記一次粒子とを混合し、金属塩(アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩)をさらに添加する工程であってもよい。上記の工程を採用することによって、高分子化合物がヒドロキシアパタイト(HAp)表面に吸着することで融着防止剤混合過程におけるハイドロキシアパタイト(HAp)同士の接触を確実に防ぐことができ、その後にカルシウム塩を添加することでハイドロキシアパタイト(HAp)表面に確実に融着防止剤を析出させることが可能となる。なお、以下の説明において、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを有する高分子化合物のことを、単に「高分子化合物」と称する。
【0093】
上記高分子化合物は、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを有する化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、側鎖にカルボキシル基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシメチルセルロース、スチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられ、側鎖に硫酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキル硫酸エステル、ポリメタクリル酸アルキル硫酸エステル、ポリスチレン硫酸等が挙げられ、側鎖にスルホン酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキルスルホン酸エステル、ポリメタクリル酸アルキルスルホン酸エステル、ポリスチレンスルホン酸等が挙げられ、側鎖にリン酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキルリン酸エステル、ポリメタクリル酸アルキルリン酸エステル、ポリスチレンリン酸、ポリアクリロイルアミノメチルホスホン酸等が挙げられ、側鎖にホスホン酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキルホスホン酸エステル、ポリメタクリル酸アルキルホスホン酸エステル、ポリスチレンホスホン酸、ポリアクリロイルアミノメチルホスホン酸、ポリビニルアルキルホスホン酸等が挙げられ、側鎖にアミノ基を有する高分子化合物としては、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリメタクリル酸アミノアルキルエステル、ポリアミノスチレン、ポリペプチド、タンパク質等が挙げられる。なお当該混合工程においては、上記高分子化合物のいずれか1種類を用いればよいが、複数種類の高分子化合物を混合して用いてもよい。
【0094】
なお上記高分子化合物の分子量は特に限定されるものではないが、100g/mol以上1,000,000g/mol以下が好ましく、500g/mol以上500,000g/mol以下がさらに好ましく、1,000g/mol以上300,000g/mol以下が最も好ましい。上記好ましい範囲未満であると一次粒子間に入り込む割合が減少し、一次粒子同士の接触を阻止する割合が低くなる。また上記好ましい範囲を超えると、高分子化合物の溶解度が低くなること、当該高分子化合物を含む溶液の粘度が高くなること等の操作性が悪くなるために好ましくない。
【0095】
なお高分子化合物を含む溶液は、水溶液であることが好ましい。ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子は強い酸性条件下で溶解してしまうからである。なお高分子化合物が含まれる水溶液のpHは、5以上14以下でHAp粒子が不溶な条件あれば特に限定されるものではない。当該高分子化合物を含む水溶液は、高分子化合物を蒸留水、イオン交換水等に溶解し、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液でpHを調整すればよい。
【0096】
また上記水溶液に含まれる高分子化合物の濃度は、0.001%w/v以上50%w/v以下が好ましく、0.005%w/v以上30%w/v以下がさらに好ましく、0.01%w/v以上10%w/v以下が最も好ましい。上記好ましい範囲未満であると一次粒子間に入り込む量が少なく、一次粒子同士の接触を阻止する割合が低くなる。また上記好ましい範囲を超えると、高分子化合物の溶解が困難となること、当該高分子化合物を含む溶液の粘度が高くなる等の操作性が悪くなるために好ましくない。
【0097】
本発明における混合工程では、上記高分子化合物を含む溶液と、一次粒子とを混合する。かかる混合は、例えば、当該溶液中に一次粒子を投入し、撹拌操作等によって、当該一次粒子を分散させればよい。かかる操作によって、上記本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法では、一次粒子の粒子の表面に上記高分子化合物が吸着し、カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを当該一次粒子の表面に付加することができる。このとき当該カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基は、溶液中でイオンの状態で存在している。
【0098】
次に高分子化合物を含む溶液と一次粒子とを混合した溶液に、金属塩(アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩)をさらに添加すれば、上記一次粒子の粒子の表面に存在するカルボン酸イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、ホスホン酸イオン、アミノイオンと、金属イオン(アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンおよび/または遷移金属イオン)とが結合し、一次粒子の表面にカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩が生じる。かかる金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩が、上記融着防止剤として機能する。したがって、金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩がその表面に生じた一次粒子は、いわゆる「混合粒子」である。なお、かかる金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩は沈殿するため、当該沈殿物を回収後、乾燥させて後述する焼結工程に供すればよい。前記乾燥は、例えば減圧条件下(1×10Pa以上1×10-5Pa以下が好ましく、1×10Pa以上1×10-3Pa以下がさらに好ましく、1×10Pa以上1×10-2Pa以下が最も好ましい。)で、加熱(0℃以上200℃以下が好ましく、20℃以上150℃以下がさらに好ましく、40℃以上120℃以下が最も好ましい。)して行なう方法が挙げられる。なお、上記乾燥においては、乾燥温度を下げることができることから減圧条件下が好ましいが、大気圧条件下で行なってもよい。
【0099】
上記アルカリ金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば塩化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ酸ナトリウム、酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、セレン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、リン化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化カリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ酸カリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、硫酸カリウム、チオ硫酸カリウム、セレン酸カリウム、亜硝酸カリウム、硝酸カリウム、リン化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム等が利用可能である。
【0100】
また上記アルカリ土類金属塩としては、例えば塩化マグネシウム、次亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、過酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸マグネシウム、セレン酸マグネシウム、亜硝酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、リン化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ酸カルシウム、酸化カルシウム、過酸化カルシウム、硫酸カルシウム、チオ硫酸カルシウム、セレン酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が利用可能である。
【0101】
また上記遷移金属塩としては、例えば塩化亜鉛、次亜塩素酸亜鉛、亜塩素酸亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、ヨウ酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、硫酸亜鉛、チオ硫酸亜鉛、セレン酸亜鉛、亜硝酸亜鉛、硝酸亜鉛、リン化亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩化鉄、次亜塩素酸鉄、亜塩素酸鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、ヨウ酸鉄、酸化鉄、過酸化鉄、硫酸鉄、チオ硫酸鉄、セレン酸鉄、亜硝酸鉄、硝酸鉄、リン化鉄、炭酸鉄、水酸化鉄等が利用可能である。またニッケル化合物であってもよい。
【0102】
なお高分子化合物を含む溶液と一次粒子とを混合した溶液に添加する金属塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩)は、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。また金属塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属)は、固体の状態してもよいが、均一に添加することができること、および添加する濃度を制御することが可能である等の理由から水溶液として添加することが好ましい。また添加する金属塩(アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩)の量(濃度)は、一次粒子表面に存在するカルボン酸イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、ホスホン酸イオン、アミノイオンと結合して、金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩が生じる条件であれば特に限定されるものではなく、適宜検討の上、決定すればよい。
【0103】
なお上記工程によって一次粒子の表面に生じた金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩は、後述する焼結工程において熱分解を受け、金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)の酸化物になる。例えば、一次粒子の表面にポリアクリル酸カルシウムが生じている場合は、焼結工程によって酸化カルシウムとなる。なお、当該金属酸化物(アルカリ金属酸化物および/またはアルカリ土類金属酸化物(例えば酸化カルシウム)および/または遷移金属酸化物)は水溶性であるため、後述する除去工程によって簡単に除去することが可能である。
【0104】
なお、ポリアクリル酸ナトリウムは水に可溶なため、本混合工程において融着防止剤としてそのまま利用可能であるが、ポリアクリル酸カルシウムは水に不溶なため、一旦ポリアクリル酸のみを一次粒子表面に吸着させた後に、カルシウム塩等を添加することで、ポリアクリル酸カルシウムを一次粒子表面に析出させるようにすることが好ましい。また、高温(約300℃以上)で一次粒子を仮焼する際に高分子化合物は分解するため、仮焼後も融着防止剤として機能するように、高分子化合物の金属塩を一次粒子の表面に析出させておくことが好ましいといえる。ただし高分子化合物が分解しない(軟化しない)温度において一次粒子を仮焼(熱処理)する場合は、高分子化合物の金属塩を一次粒子の表面に析出させておく必要は特にない。
【0105】
(3.焼結工程)
当該焼結工程は、上記混合工程によって得られた混合粒子を焼結温度に曝して、当該混合粒子に含まれる一次粒子をセラミック粒子(焼結体粒子)にする工程である。一次粒子の粒子間に融着防止剤が介在しているために、焼結工程における高温条件に曝された場合であっても一次粒子同士の融着を防止することができるというものである。
【0106】
当該焼結工程における焼結温度は、セラミック粒子の硬度が所望の硬度となるように適宜設定すればよく、例えば、100℃~1800℃の範囲内がより好ましく、150℃~1500℃がさらに好ましく、200℃~1200℃が最も好ましい。なお焼結時間については所望するセラミック粒子の硬度等を基準に適宜設定すればよい。後述する実施例においては、800℃で1時間焼結を行なっている。
【0107】
なお、当該焼結工程に用いる装置等は特に限定されるものではなく、製造規模、製造条件等に応じて市販の焼成炉を適宜選択の上、採用すればよい。
【0108】
(除去工程)
当該除去工程は、焼結工程によって得られたセラミック粒子群の粒子間に混在する融着防止剤を取り除く工程である。
【0109】
除去の手段および手法については、上記混合工程において採用した融着防止剤に応じて適宜採用すればよい。例えば、溶媒溶解性を有する融着防止剤を用いた場合は、セラミック粒子を溶解しない溶媒(非溶解性)でかつ融着防止剤を溶解する(溶解性)溶媒を用いることによって、融着防止剤のみを溶解して除去することができる。用いる溶媒としては、上記要件を満たす溶媒であれば特に限定されるものではなく、水系溶媒であっても、有機溶媒であってもよい。例えば、水系溶媒としては、水、エタノール、メタノール等が挙げられ、有機溶媒としては、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0110】
また上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、シュウ酸塩、エチレンジアミン、ビピリジン、エチレンジアミン四酢酸塩などのキレート化合物が含んでいても良い。さらに上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、塩化ナトリウム、硝酸アンモニウム、炭酸カリウムなどの電解質イオンを含んでいても良い。
【0111】
ただし、当該除去工程において有機溶媒の使用に対応する設備が不要となること、有機溶媒廃液処理が不要となること、製造作業の安全性が高いこと、環境に対するリスクが低いこと等の理由から、使用する溶媒は水系溶媒が好ましい。
【0112】
なお、ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子の場合は、pH4.0以下の条件においてハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子が溶解するため、pH4.0~pH12.0で除去工程を行なうことが好ましい。
【0113】
ところで、溶媒を用いて融着防止剤を除去する場合は、焼結工程によって得られた融着防止剤を含むセラミック粒子群を溶媒に懸濁させた後、ろ過または遠心分離によってセラミック粒子のみを回収すればよい。本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法において上記操作は、1回に限られるものではなく2回以上行なってもよい。上記操作を複数回行なうことで、セラミック粒子間の融着防止剤の除去率がさらに向上するものといえる。ただし、製造工程が複雑になること、製造コストが高くなること、セラミック粒子の回収率が低下すること等の理由により、必要以上に上記操作を行なうことは好ましくない。よって上記操作の回数は、目標とする融着防止剤の除去率を基準に適宜決定すればよい。
【0114】
なお本工程には、さらに粒子径を均一にするために分級する工程が含まれていてもよい。
【0115】
上記溶媒を用いて融着防止剤を除去する方法の他、融着防止剤に磁性体を用いることによって、マグネットを用いて融着防止剤を除去することができる。より具体的には、焼結工程によって得られた融着防止剤を含むセラミック粒子(粗セラミック粒子)群を適当な溶媒(水等)に懸濁して分散させた後、当該懸濁液に磁力をかけ、融着防止剤のみをマグネットに吸着させ、吸着しなかったセラミック粒子のみを回収する。また特に溶媒に懸濁することなく、粗セラミック粒子をすりつぶして粉体にした後、マグネットによって融着防止剤を分離する方法を行なってもよい。ただし、懸濁液にした方がセラミック粒子と融着防止剤が剥離しやすく、融着防止剤の除去率は高いといえる。なお、この手法を適用することができるセラミック粒子は、非磁性体または、弱磁性体であることが好ましい。
【0116】
〔本発明にかかるセラミック粒子群〕
上記、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法によって製造されたセラミック粒子群(以下、本発明にかかるセラミック粒子群という。)は、融着防止剤の作用によって一次粒子同士の融着が防止されているために、その過半数が一次粒子の状態をキープしている。よって、当該セラミック粒子群を溶媒中に懸濁した際には、該セラミック粒子群の過半数が単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)で分散することができる。
【0117】
既述の通り、セラミック粒子群を医療用高分子基材に吸着させる場合は、分散性が高いことが重要である。またクロマトグラフィー用充填剤として利用する場合は、表面積が高いことが重要である。本発明にかかるセラミック粒子群は、その過半数が単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)であり、溶媒中で分散性が良く、二次粒子を形成していないためにその表面積も高い。したがって、本発明にかかるセラミック粒子群は、特に上記用途に好適に利用が可能であるといえる。
【0118】
ここでセラミック粒子が一次粒子で存在しているか否かを評価する方法としては、例えば、電子顕微鏡観察によって粒子径を測定した結果と、動的光散乱法により溶媒に懸濁した状態で粒子径を測定した場合の結果とを対比することにより、両者の結果がほぼ一致すれば、そのセラミック粒子群のほとんどが一次粒子の状態であると判断することができ、また電子顕微鏡観察による粒子径の測定結果より、動的光散乱法による粒子径測定の結果が大きくなれば、一次粒子同士の融着が起こり二次粒子を形成しているものと判断することができる。
【0119】
なおセラミック粒子群を分散させる溶媒としては、セラミック粒子を溶解しないものであれば特に限定されるものではない。例えば、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、トルエン、キシレン、ヘキサン、ドデカン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、クロロベンゼン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類など挙げられ、これら溶媒は、使用目的に応じて1種もしくは2種を選択して使用すればよい。
【0120】
動的光散乱法から求めた粒子径分布図をもとに、電子顕微鏡から求めた一次粒子の粒子径とほぼ一致する粒子径である粒子の割合を求めることで、単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)の割合が算出可能である。
【0121】
なおセラミックの原料、融着防止剤の種類、焼結の条件等によって異なる場合があるが、上記本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法によれば、少なくとも50%以上が単結晶一次粒子として存在し、より好適な場合には60%以上が単結晶一次粒子として存在し、最も好適な条件下においては70%以上が単結晶一次粒子として存在させることができる。
【0122】
またセラミック粒子を医療用高分子基材に吸着させる場合や、クロマトグラフィー用充填剤、医療用材料等に用いる場合においては、その粒子が微細(ナノメートルサイズ)であることが好ましい。かかる微細な(ナノメートルサイズの)セラミック粒子群を製造するためには、上記本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法の一次粒子生成工程において、微細(ナノメートルサイズ)の一次粒子を作製しておけばよい。既述のごとく本発明にかかる製造方法の一次粒子生成工程において、10nm~500nm、より好ましくは20nm~450nm、最も好ましくは25nm~400nmの範囲内の粒子径を有する一次粒子を作製しておくことで、10nm~700nm、より好ましくは20nm~600nm、最も好ましくは25nm~500nmの範囲内の粒子径を有するセラミック粒子群を製造することができる。後述する実施例において本発明者らは、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法を用いて、粒子径が30nm~100nmのハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を製造している。
【0123】
またセラミック粒子群は、その粒子径が均一である(粒度分布が狭い)ことが好ましい。かかる粒子径が均一な(粒度分布が狭い)セラミック粒子群を製造するためには、上記本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法の一次粒子生成工程において、粒子径が均一な(粒度分布が狭い)一次粒子群を作製しておけばよい。既述のごとく本発明にかかる製造方法の一次粒子生成工程において、一次粒子からなる一次粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下、より好ましくは18%以下、最も好ましくは15%以下の一次粒子群を作製しておくことで、粒子径の変動係数が20%以下、より好ましくは18%以下、最も好ましくは15%以下のセラミック粒子群を製造することができる。後述する実施例において本発明者らは、本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法を用いて、粒子径の変動係数が12%以下のハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を製造している。かかる粒子径が均一な(粒度分布が狭い)セラミック粒子群は、例えば医療用高分子基材に吸着させる場合や、クロマトグラフィー用充填剤、医療用材料等に好適に利用可能である。
【0124】
背景技術の項で述べたとおり、これまで微細(ナノメートルサイズ)かつ、粒子径の均一な(粒度分布が狭い)のセラミック粒子群の実現は、物理的に困難であった。本発明によれば、かかる微細(ナノメートルサイズ)かつ、粒子径の均一な(粒度分布が狭い)のセラミック粒子群を、高度な分級操作を行なうことなく実現できるものである。よって、セラミックの用途をこれまで以上に拡大することができる。
【0125】
〔本発明にかかるセラミック粒子群の利用〕
本発明にかかるセラミック粒子群、特にハイドロキシアパタイト(HAp)を始めとするリン酸カルシウム(CaP)焼結体粒子群は、生体活性が非常に高いため、医療分野において、例えば、骨充填剤、歯科用充填剤、薬物徐放剤等の歯科用材料または医療用材料として広く用いることができる。また、特にハイドロキシアパタイト(HAp)等のリン酸カルシウム(CaP)は、生体活性が高いので、医療用材料として好適に用いることができる。また、リン酸カルシウム(CaP)焼結体粒子群は、菌体、酵母等の固定化担体、カラムクロマトグラフィー用充填剤、消臭剤等の吸着剤等に好適に用いることができる。さらに、本発明にかかるリン酸カルシウム(CaP)集合体の粒子群は、ナノメートルサイズのドラッグデリバリーシステム(ナノDDS)にもその利用が期待される。
【0126】
例えば、本発明にかかるリン酸カルシウム(CaP)焼結体粒子群を、カラムクロマトグラフィー用充填剤として使用する場合には、粒子径が均一であること(粒度分布が狭いこと)により、分解能がより一層高い解析を行なうことができる。また、例えば、本発明にかかるリン酸カルシウム(CaP)焼結体粒子群を、薬物徐放剤等の医療用材料として使用する場合には、粒子群の粒度分布が狭いので、薬物の単位時間当たりの徐放量をより一層制御することができる。
さらに、本発明にかかるリン酸カルシウム(CaP)焼結体粒子群は、保湿性及び皮脂吸着性に優れるため化粧品添加剤として用いることができる。また、他の物質、資材と良好に混合でき、生体適合性および環境親和性に優れるためアスベスト(石綿)に代わる建材、例えば壁材、屋根材、外装材、内装材に利用できる。建材以外では産業用材、例えばジョイントショート、シール材、耐熱材、ブレーキ(摩耗材)、潤滑材の繊維素材、接着材、ペイントの補填材などに用いることができる。
【0127】
以下添付した図面に沿って実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0128】
本発明の実施例として、ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を製造した例について示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0129】
〔実施例1〕
(一次粒子生成工程)
連続オイル相としてドデカン〔CH(CH10CH〕、非イオン性界面活性剤として曇点31℃のペンタエチレングリコールドデシルエーテル〔CH(CH10CHO(CHCHO)CHCHOH〕を用いた。室温において、上記非イオン性界面活性剤0.5gを含有している連続オイル相40mlを調製した。次に、上記で調製した連続オイル相に2.5mol/l水酸化カルシウム〔Ca(OH)〕分散水溶液10mlを添加し、油中水滴型溶液(W/O溶液)を調製した。上記W/O溶液を撹拌しながら、そこに1.5mol/lリン酸二水素カリウム〔(KHPO)〕溶液を10ml添加した。そして、24時間、室温で撹拌しながら反応させた。
【0130】
次に、得られた反応物を遠心分離により分離洗浄することにより、ハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を取得した。当該ハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群における一次粒子の粒子径は30nm~100nmであり、当該一次粒子群の粒子径の変動係数が11%以下であった。
【0131】
(混合工程)
融着防止剤としてCaCOを用いた。CaCOを0.1g含むCaCO飽和水溶液にハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群0.5gを分散させ、80℃にて乾燥させ混合粒子を取得した。
【0132】
(焼結工程)
上記混合粒子をルツボに入れ、焼結温度800℃にて1時間焼結を行なった。
【0133】
(除去工程)
得られた焼結体を蒸留水に懸濁し、遠心分離を行なうことによって、融着防止剤を除去し、ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を回収した。得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子は、Bタイプ炭酸アパタイトであり、高い生体活性を有することが確認された。また、元素分析によりCa/P比は1.58であり、本ハイドロキシアパタイトアパタイト(HAp)焼結体粒子は、カルシウム欠損アパタイトであった。
【0134】
〔比較例1〕
実施例1の「一次粒子生成工程」によって取得したハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子0.5gをルツボに入れ、焼結温度800℃にて1時間焼結を行なってハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を取得した。すなわち、本比較例は、融着防止剤CaCOを使用せずにハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を製造した例である。
【0135】
〔実施例1と比較例1の対比〕
図1に実施例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示し、図2に比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群のSEM像を示した。SEM観察の結果から両ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の粒子径は、約30nm~約100nmであることが分かった。なお走査型電子顕微鏡は、日本電子株式会社製、モデル名:JSM-6301Fを用い、倍率9万倍で観察を行なった。
【0136】
実施例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群をエタノールに分散させた後、動的光散乱法により粒度分布(粒子径分布)を測定した結果を図3(a)に示し、比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の結果を図3(b)に示す。なお、動的光散乱の測定は、大塚電子株式会社製のダイナミック光散乱光度計DLS-6000を用い、室温、10ppmの粒子濃度、散乱角90°にて測定を行なった。
【0137】
図3(a)の結果によれば、実施例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の粒子径は約70nm~約120nmの間に分布し、SEM観察から求めた粒子径とほぼ一致した。よって、実施例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群は、単結晶一次粒子の状態でエタノールに分散にしていることが確認できた。このときの単結晶一次粒子の割合は、96%とそのほとんどが単結晶一次粒子として存在していた。さらにこのときの粒子径の変動係数は、12%と狭く、粒子径が均一な(粒度分布が狭い)ハイドロキシアパタイト(HAp)粒子群であるということが分かった。
【0138】
一方、図3(b)の結果によれば、比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の粒子径は、約600nm~約3000nmであることが分かり、SEM観察の結果と相違するものであった。またこのときの粒子径の変動係数は57%であり、実施例1のそれに比較してバラツキの大きいものであった。このことは、比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群は、一次粒子同士が不定形に融着した二次粒子を形成していることを示している。
【0139】
図4に実施例1および比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子のX線回折の結果を示した。また図5に両ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子のFT-IRの結果をした。なお図4及び図5においては、実施例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子の結果を実線で示し、比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子の結果を破線で示した。図4および5の結果から、実施例1得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子および比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子は、共にリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト(HAp))であることが確認できた。
【0140】
以上の結果より、実施例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群は、溶媒中に懸濁した際に、そのほとんど(96%)が単結晶一次粒子として分散することができるものであり、またその粒子径は約70nm~約120nmとナノメートルサイズであり、比較例1に比してその粒子径が均一な(粒度分布が狭い)ものであるということが分かった。
【0141】
〔実施例2〕
(一次粒子生成工程)
連続オイル相としてドデカン〔CH(CH10CH〕、非イオン性界面活性剤として曇点31℃のペンタエチレングリコールドデシルエーテル〔CH(CH10CHO(CHCHO)CHCHOH〕を用いた。室温において、上記非イオン性界面活性剤0.5gを含有している連続オイル相40mlを調製した。次に、上記で調製した連続オイル相に2.5mol/l水酸化カルシウム〔Ca(OH)〕分散水溶液10mlを添加し、油中水滴型溶液(W/O溶液)を調製した。上記W/O溶液を攪拌しながら、そこに1.5mol/lリン酸二水素カリウム〔(KHPO)〕溶液を10ml添加した。そして、24時間、室温で撹拌しながら反応させた。
【0142】
次に、得られた反応物を遠心分離により分離洗浄することにより、ハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を取得した。得られたハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群をエタノールに分散させた後、動的光散乱法により粒度分布(粒子径分布)を測定した結果を図6に示す。なお、動的光散乱の測定は、大塚電子株式会社製のダイナミック光散乱光度計DLS-6000を用い、室温、10ppmの粒子濃度、散乱角90°にて測定を行なった。図6の結果によれば、得られたハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群の95%が粒子径50nm~100nmの間に分布し、その変動係数は15%であった。
【0143】
(混合工程)
1.0gのポリアクリル酸(ALDRICH社製、重量平均分子量15,000g/mol)を含むpH12.0の水溶液100mlに、1.0gのハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を分散させることで、同粒子表面にポリアクリル酸を吸着させた。なお、上記1.0gのポリアクリル酸(ALDRICH社製、重量平均分子量15,000g/mol)を含むpH12.0の水溶液は、以下のようにして調製した。まず1.0gのポリアクリル酸(ALDRICH社製、重量平均分子量15,000g/mol)を純水100mlに溶解させた。次にアンモニア水溶液(25%水溶液)を室温にて撹拌しながら添加することでポリアクリル酸水溶液のpHを12.0に調整した。この水溶液のpHは株式会社 堀場製作所製pHメータD-24SEを用いて測定した。
【0144】
次に、上記で調製した分散液に、0.12mol/lの硝酸カルシウム〔Ca(NO〕水溶液100mlを添加することで、同一次粒子表面にポリアクリル酸カルシウムを析出させた。かかるポリアクリル酸カルシウムは、融着防止剤である。その結果として生じた沈殿物を回収し、減圧下(約0.1Pa)80℃にて乾燥させることで、混合粒子を取得した。
【0145】
(焼結工程)
上記混合粒子をルツボに入れ、焼結温度800℃にて1時間焼結を行なった。この際、ポリアクリル酸カルシウムは熱分解し、酸化カルシウム〔CaO〕となった。焼結工程終了後の酸化カルシウム〔CaO〕の残存率は25%以上であった。
【0146】
(除去工程)
融着防止剤の水への溶解性を上げるために、50mmol/l硝酸アンモニウム〔NHNO〕水溶液を調製した。次に、上記で調製した水溶液500mlに、上記工程にて得られた焼結体を懸濁し、遠心分離により分離洗浄し、さらに蒸留水に懸濁し、同様に遠心分離により分離洗浄を行なうことによって、融着防止剤および硝酸アンモニウムを除去し、ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を回収した。
【0147】
〔実施例2と比較例1の対比〕
実施例2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群をエタノールに分散させた後、動的光散乱法により粒度分布(粒子径分布)を測定した結果を図7に示した。
【0148】
図7の結果によれば、実施例2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群90%の粒子径は60nm~100nmの間に分布し、実施例2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群の粒子径分布と一致した。さらにこのときの粒子径の変動係数は11%と狭く、粒子径が均一な(粒子径分布が狭い)ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群であることが分かった。
【0149】
一方、図3(b)の結果によれば、比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の粒子径は約600nm~約3000nmであり、一次粒子同士が不定形に融着した二次粒子を形成したことが分かった。またこのときの粒子径の変動係数は57%であり、実施例2のそれに比較してバラツキの大きいものであった。
【0150】
図8に実施例2および比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群のX線回折の結果を示した。また、図9に両ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群のFT-IRの結果を示した。なお図8および図9においては、実施例2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子の結果を図中、上(破線)に示し、比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子の結果を図中、下(実線)に示した。図8および9の結果から、実施例2得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子および比較例1で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子は、共にリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト(HAp))であることが確認できた。
【0151】
以上の結果から、実施例2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群は溶媒中に懸濁した際に、そのほとんど(90%)が単結晶一次粒子として分散することができるものであり、またその粒子径は約60nm~100nmとナノメートルサイズであり、実施例1に比してさらにその粒子径が均一な(粒度分布が狭い)ものであることが分かった。
【0152】
〔実施例3〕
(一次粒子生成工程)
連続オイル相としてドデカン〔CH(CH10CH〕、非イオン性界面活性剤として曇点31℃のペンタエチレングリコールドデシルエーテル〔CH(CH10CHO(CHCHO)CHCHOH〕を用いた。室温において、上記非イオン性界面活性剤0.5gを含有している連続オイル相40mlを調製した。次に、95℃において上記で調製した連続オイル相に2.5mol/l水酸化カルシウム〔Ca(OH)〕分散水溶液10mlを添加し、油中水滴型溶液(W/O溶液)を調製した。上記W/O溶液を撹拌しながら、そこに1.5mol/lリン酸二水素カリウム〔KHPO〕水溶液を10ml添加した。そして、24時間、95℃で撹拌しながら反応させた。
【0153】
次に、得られた反応物を遠心分離により分離洗浄することにより、ハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を取得した。得られたハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群をエタノールに分散させた後、動的光散乱法により粒度分布(粒子径分布)を測定した結果を図10に示す。なお、動的光散乱の測定は、大塚電子株式会社製のダイナミック光散乱光度計DLS-6000を用い、室温、10ppmの粒子濃度、散乱角90°にて測定を行った。図10の結果によれば、得られたハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群の89%が粒子径150nm~230nmの間に分布し、その変動係数は14%であった。
【0154】
(混合工程)
0.5gのポリアクリル酸(ALDRICH社製、重量平均分子量15,000g/mol)を含むpH7.0の水溶液100mlに、0.5gのハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を分散させることで、同粒子表面にポリアクリル酸を吸着させた。次に、上記で調製した分散液に、水酸化カルシウム〔Ca(OH)〕飽和水溶液500mlを添加することで、同粒子表面にポリアクリル酸カルシウムを析出させた。かかるポリアクリル酸カルシウムは、融着防止剤である。結果として生じる沈殿物を回収し、減圧下80℃にて乾燥させることで、混合粒子を取得した。
【0155】
(焼結工程)
上記混合粒子をルツボに入れ、焼結温度800℃にて1時間焼結を行なった。この際、ポリアクリル酸カルシウムは熱分解し、酸化カルシウム〔CaO〕となった。焼結工程終了後の酸化カルシウム〔CaO〕の残存率は50%以上であった。
【0156】
(除去工程)
融着防止剤の水への溶解性を上げるために、50mmol/l硝酸アンモニウム〔NHNO〕水溶液を調製した。次に、上記で調製した水溶液500mlに得られた焼結体を懸濁し、遠心分離により分離洗浄し、さらに蒸留水に懸濁し、同様に遠心分離により分離洗浄を行なうことによって、融着防止剤および硝酸アンモニウムを除去し、ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を回収した。
【0157】
〔比較例2〕
実施例3の「一次粒子生成工程」によって取得したハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群0.5gをルツボに入れ、焼結温度800℃にて一時間焼結を行ってハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を取得した。すなわち、本比較例は、実施例3における製造方法において融着防止剤であるポリアクリル酸カルシウムを使用せずにハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を製造した例である。
【0158】
〔実施例3と比較例2の対比〕
実施例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群をエタノールに分散させた後、動的光散乱法により粒度分布(粒子径分布)を測定した結果を図12に示し、比較例2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の結果を図11に示す。
【0159】
図12の結果によれば、実施例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群92%の粒子径は150nm~300nmの間に分布し、実施例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群の粒子径分布とほぼ一致した。さらに、このときの粒子径の変動係数は17%と狭く、粒子径が均一な(粒子径分布が狭い)ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群であることが分かった。また、実施例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の走査型電子顕微鏡写真を図13に示す。一次粒子生成工程において95℃で反応を行なうことにより、ロッド状のハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群が作製されていた。
【0160】
一方、図11の結果によれば、比較例2で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の粒子径は約600nm~4000nmであり、一次粒子同士が不定形に融着した二次粒子を形成したことが分かった。またこのときの粒子径の変動係数は53%であり、実施例3のそれに比較してバラツキの大きいものであった。
【0161】
以上の結果から、実施例3で得られたロッド状ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群は溶媒中に懸濁した際に、そのほとんど(90%)が単結晶一次粒子として分散することができるものであり、またその粒子径は約150nm~300nmであり、さらにその粒子径が均一な(粒度分布が狭い)ものであることが分かった。
【0162】
〔実施例4〕
(一次粒子生成工程)
25%アンモニア水溶液を用いてpHを12に調整した42mmol/l硝酸カルシウム〔Ca(NO〕水溶液800mlをフラスコ中に添加し、窒素雰囲気下において80℃まで昇温した。そこに、25%v/vアンモニア水溶液を用いてpHを12に調整した100mmol/lリン酸水素ニアンモニウム〔(NH4)HPO〕水溶液200mlを20時間かけて添加した。
【0163】
次に、得られた反応物を遠心分離により分離洗浄することにより、ハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を取得した。得られたハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群をエタノールに分散させた後、動的光散乱法により粒度分布(粒子径分布)を測定した結果を図14に示す。なお、動的光散乱の測定は、大塚電子株式会社製のダイナミック光散乱光度計DLS-6000を用い、室温、10ppmの粒子濃度、散乱角90°にて測定を行なった。図14の結果によれば、得られたハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群は粒子径350nm~600nmの間に分布し、その変動係数は17%であった。
【0164】
(混合工程)
融着防止剤として、ポリアクリル酸カルシウムを用いた。まず、0.5gのポリアクリル酸(ALDRICH社製、重量平均分子量15,000g/mol)を含むpH7.0の水溶液100mlに、0.5gのハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を分散させることで、同粒子表面にポリアクリル酸を吸着させた。次に、上記で調製した分散液に、水酸化カルシウム〔Ca(OH)〕飽和水溶液500mlを添加することで、同粒子表面にポリアクリル酸カルシウムを析出させた。結果として生じる沈殿物を回収し、減圧下80℃にて乾燥させることで、混合粒子を取得した。
【0165】
(焼結工程)
上記混合粒子をルツボに入れ、焼結温度800℃にて一時間焼結を行なった。この際、ポリアクリル酸カルシウムは熱分解し、酸化カルシウム〔CaO〕となった。焼結工程終了後の酸化カルシウム〔CaO〕の残存率は25%以上であった。
【0166】
(除去工程)
融着防止剤の水への溶解性を上げるために、50mmol/l硝酸アンモニウム〔NHNO〕水溶液を調製した。次に、上記で調製した水溶液500mlに得られた焼結体を懸濁し、遠心分離により分離洗浄し、さらに蒸留水に懸濁し、同様に遠心分離により分離洗浄を行なうことによって、融着防止剤および硝酸アンモニウムを除去し、ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を回収した。また元素分析の結果、得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子のCa/Pは1.72であり、当該ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子はカルシウムリッチアパタイトであった。
【0167】
〔比較例3〕
実施例4の「一次粒子生成工程」によって取得したハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群0.5gをルツボに入れ、焼結温度800℃にて一時間焼結を行なってハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を取得した。すなわち、本比較例は、融着防止剤ポリアクリル酸カルシウムを使用せずにハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を製造した例である。なお元素分析の結果、得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子のCa/Pは1.67であり、当該ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子は化学量論組成アパタイトであった。
【0168】
〔実施例4と比較例3の対比〕
実施例4で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群をエタノールに分散させた後、動的光散乱法により粒度分布(粒子径分布)を測定した結果を図15に示し、比較例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の結果を図16に示す。
【0169】
図15の結果によれば、実施例4で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の粒子径は350nm~600nmの間に分布し、実施例4で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群の粒子径分布と一致した。さらにこのときの粒子径の変動係数は15%と狭く、粒子径が均一な(粒子径分布が狭い)ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群であることが分かった。また、実施例4で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の走査型電子顕微鏡写真を図17に示す。一次粒子生成工程において80℃で反応を行なうことにより、ロッド状(棒状)のハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群が作製されていた。
【0170】
一方、図16の結果によれば、比較例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の粒子径は約250nm~4000nmであり、一次粒子同士が不定形に融着した二次粒子を形成したことが分かった。またこのときの粒子径の変動係数は65%であり、実施例4のそれに比較してバラツキの大きいものであった。また、比較例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の走査型電子顕微鏡写真を図18に示す。同図からも、比較例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群は、一次粒子同士が不定形に融着した二次粒子を形成しているということが分かる。
【0171】
次に、実施例4および比較例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の比表面積を、高速比表面積・細孔径分布測定装置NOVA-1200(ユアサアイオニクス(株)製)を用いて窒素ガス吸着法により測定した。かかる窒素ガス吸着法とは、粒子表面に吸着占有面積の判った不活性気体を液体窒素温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法である(「Brunauer,S.,Emmett,P.H.and Teller,E.Adsorption of gases in multimolecular layers.J.Am.Chem.Soc.,60,309-319(1938)」参照)。簡単には、試料を真空下で10分間脱気後、圧力トランスデュサによってサンプルが無い状態での平衡圧力とサンプル導入後の吸着平衡圧力との比からBET多点法によって比表面積を求めた。
【0172】
実施例4で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群および焼結体粒子群、並びに比較例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の比表面積を図19に示す。なお、同図中「**」を付したデータ間には危険率1%未満において有意差が有ることを示しており、「ns」を付したデータ間には有意差が無いことを示している。
【0173】
比較例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群は融着が発生していたため、その比表面積は焼結前の一次粒子群の比表面積に比べて有意に低下していた。比較例3で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の比表面積は、約15m/gであった。一方、実施例4で得られたハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群の比表面積は、焼結前の一次粒子群の比表面積と一致しており、また約20m/gと高いものであった。
【0174】
以上の結果から、実施例4で得られたロッド状(棒状)ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群は、溶媒中に懸濁した際にそのほとんどが単結晶一次粒子として分散することができるものであること、その粒子径は約350nm~600nmであること、その粒子径が均一な(粒度分布が狭い)ものであること、および、高い比表面積を持つものであることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明にかかるセラミック粒子群は、例えば、医療用材料や、クロマトグラフィー用充填剤、酵母や菌体等の固定化担体、消臭剤等の吸着剤等に好適に使用することができる。従って本発明は、上記医療材料を取り扱う医療産業、クロマトグラフィーを行なう分析科学産業、食品産業、製薬業等の広範な分野において利用可能である。さらに、化粧品添加剤、アスベストに代わる建材、工業用材に利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3(a)】
2
【図3(b)】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図10】
10
【図11】
11
【図12】
12
【図13】
13
【図14】
14
【図15】
15
【図16】
16
【図17】
17
【図18】
18
【図19】
19