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明細書 :ナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4843505号 (P4843505)
登録日 平成23年10月14日(2011.10.14)
発行日 平成23年12月21日(2011.12.21)
発明の名称または考案の名称 ナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
B82B   1/00        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
C07K   1/113       (2006.01)
C07K  14/46        (2006.01)
C07K   7/00        (2006.01)
FI C01B 31/02 101F
B82B 1/00 ZNA
B82B 3/00
C07K 1/113
C07K 14/46
C07K 7/00
請求項の数または発明の数 21
全頁数 16
出願番号 特願2006-549069 (P2006-549069)
出願日 平成17年12月22日(2005.12.22)
国際出願番号 PCT/JP2005/023675
国際公開番号 WO2006/068250
国際公開日 平成18年6月29日(2006.6.29)
優先権出願番号 2004374093
優先日 平成16年12月24日(2004.12.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年5月23日(2007.5.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】芝 清隆
【氏名】佐野 健一
【氏名】岩堀 健治
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特開2004-121154(JP,A)
特開2001-181842(JP,A)
調査した分野 C01B 31/00-31/36
特許請求の範囲 【請求項1】
フェリチンのN末端又はループ構造部位に、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合させたフェリチンの内部空間に、無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を添加して保持させ、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドのナノ黒鉛構造体との親和性を利用して、ナノ黒鉛構造体に無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を複数担持させたナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項2】
フェリチンが、高等真核生物由来のフェリチンであることを特徴とする請求項1記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項3】
高等真核生物由来のフェリチンが、ウマ脾臓由来Lタイプのフェリチンであることを特徴とする請求項記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項4】
ナノ黒鉛構造体認識ペプチドが、配列番号1~20のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項5】
ナノ黒鉛構造体認識ペプチドが、配列番号1~20のいずれかに示されるアミノ酸配列の全部又はその一部を含むナノ黒鉛構造体に結合能を有するペプチドであることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項6】
配列番号1~20のいずれかに示されるアミノ酸配列が、DYFSSPYYEQLF(配列番号1)であることを特徴とする請求項4又は5記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項7】
配列番号1~20のいずれかに示されるアミノ酸配列が、YDPFHII(配列番号2)であることを特徴とする請求項4又は5記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項8】
無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子が、金属ナノ粒子であることを特徴とする請求項1~7のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項9】
無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子が、金属化合物ナノ粒子であることを特徴とする請求項1~7のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項10】
金属化合物ナノ粒子が、酸化金属ナノ粒子であることを特徴とする請求項記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項11】
金属化合物ナノ粒子が、磁性材料ナノ粒子であることを特徴とする請求項記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項12】
金属が、鉄、ベリリウム、ガリウム、マンガン、リン、ウラン、鉛、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム又はクロムであることを特徴とする請求項1~11のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項13】
無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子が、酸化鉄ナノ粒子、セレン化カドミウムナノ粒子、セレン化亜鉛ナノ粒子、硫化亜鉛ナノ粒子、又は硫化カドミウムナノ粒子であることを特徴とする請求項1~7のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項14】
ナノ黒鉛構造体が、カーボンナノチューブ又はカーボンナノホーンであることを特徴とする請求項1~13のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項15】
カーボンナノチューブ又はカーボンナノホーンが、構成する炭素構造に官能基が付加されていることを特徴とする請求項14記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項16】
ナノ黒鉛構造体が基板上で二次元に整列されていることを特徴とする請求項1~15のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項17】
金属ナノ粒子が基板上で二次元に整列されていることを特徴とする請求項1~15のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項18】
ケージタンパク質が除去されていることを特徴とする請求項16記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体。
【請求項19】
フェリチンのN末端又はループ構造部位に、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合させたタンパク質の内部空間に、無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を添加して保持させ、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドのナノ黒鉛構造体との親和性を利用して、ナノ黒鉛構造体に無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を複数担持させる方法。
【請求項20】
フェリチンのN末端又はループ構造部位に、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合させたタンパク質の内部空間に、無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を添加して保持させ、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドのナノ黒鉛構造体との親和性を利用して、ナノ黒鉛構造体に無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を複数担持させ、加熱処理によりタンパク質部分を取り除き、ナノ黒鉛構造体と無機金属化合物のナノ粒子との複合体を作る方法。
【請求項21】
フェリチンのN末端又はループ構造部位に、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合させたタンパク質の内部空間に、無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を添加して保持させ、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドのナノ黒鉛構造体との親和性を利用して、ナノ黒鉛構造体に無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を複数担持させ、電子線処理によりタンパク質部分を取り除き、ナノ黒鉛構造体と無機金属化合物のナノ粒子との複合体を作る方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フェリチン等のケージタンパク質の表面にナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合又は化学的に結合させたタンパク質や、該タンパク質を用いて作製した、ナノ黒鉛構造体に無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を複数担持させたナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体等に関する。例えば、ナノメートルスケールの微細構造を有する黒鉛構造化合物とこれを特異的に認識する融合フェリチン等のケージタンパク質を介して、ナノ粒子を複数担持させたナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体は、半導体・ナノバイオテクノロジーなどに有利に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
炭素の結晶構造としてはダイヤモンドとグラファイトが古くから知られているが、1985年にはスモーリー(R.E.Smalley)、カール(R.F.Curl)、クロトー(H.W.Kroto)らにより(C60)が発見された(例えば、非特許文献1)。C60は12個の5角形と20個の6角形からなるサッカーボール状の構造をしており、C60のほかにもC70、C76などの大きな籠状分子が存在し、これら一連の分子は「フラーレン」と呼ばれている。また、1991年には飯島澄男により「カーボンナノチューブ」(非特許文献2、特許文献1)、1999年には同じく飯島澄男により「カーボンナノホーン」(非特許文献3、特許文献1)といった、それまで存在が知られていなかった新しい構造を持った炭素系化合物が相次いで発見された。これら、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンはいずれも炭素原子の6員環と5員環から構成されており、ナノメートルスケールの微細構造体を形成することから、「ナノ黒鉛構造体」として近年大きな注目を集めている。
【0003】
ナノ黒鉛構造体が注目を集める理由をいくつか上げてみると、「カーボンナノチューブが、そのカイラリティーの違いにより金属と半導体の両方の性質をもつことができる」(非特許文献4)、「金属導入フラーレンが超電導を示す」(非特許文献5)、「カーボンナノホーンの示す選択的な気体貯蔵能力」(非特許文献6)、「カーボンナノホーンのもつ医薬化合物の担持、徐放能力」(特許文献2、非特許文献7)などがある。これらの特徴的な性質を利用して、新しい電子材料や触媒、光材料、その他の分野で、より具体的には、半導体配線、蛍光表示管、燃料電池、ガス貯蔵、遺伝子治療ベクター、化粧品、薬品送達システム、バイオセンサーなどへのナノ黒鉛構造体の応用利用が期待されている。
【0004】
発明者の一人、芝清隆らはナノ黒鉛構造体の一つであるカーボンナノホーンに結合するペプチドモチーフを、ファージ提示法により単離している(特許文献3、非特許文献8)。
【0005】
一方、フェリチンタンパク質は、「必須の金属であるが、毒性も同時に備えもつ『鉄』分子」を生体内で貯蔵するタンパク質として、古くから知られている。フェリチンは動・植物からバクテリアまで普遍的に存在していて、生体あるいは細胞中の鉄元素のホメオスタシスに深く関わっている。ヒトやウマなどの高等真核生物のフェリチンは、分子量約20kDaのペプチド鎖が直径約12nmの24量体からなる球核状構造を形成し、内部に7-8nmの空間を持つ。この内部空間に、ナノ粒子状の酸化鉄のかたまりとして鉄分子を貯蔵している。タンパク質球殻(ケージ)を構成する24個のサブユニットには2種類のタイプ(Hタイプ、Lタイプ)があり、その組成比は生物種、組織により異なっている。
【0006】
天然には鉄のナノ粒子を内部に貯蔵するフェリチンであるが、しかしながら人工的には、鉄以外にも、ベリリウム、ガリウム、マンガン、リン、ウラン、鉛、コバルト、ニッケル、クロムなどの酸化物、また、セレン化カドミウム、硫化亜鉛、硫化鉄、硫化カドミウムなどの半導体・磁性体などのナノ粒子を貯蔵できることが示されており、半導体材料工学分野や保険医療分野での応用研究が盛んにおこなわれている。
【0007】

【特許文献1】特開2001-64004
【特許文献2】特願2004-139247
【特許文献3】特開2004-121154
【非特許文献1】Nature, 318:162-163, 1985
【非特許文献2】Nature, 354:56-58, 1991
【非特許文献3】Chem. Phys. Lett., 309: 165-170, 1999
【非特許文献4】Nature, 391:59-62
【非特許文献5】Nature, 350:600-601
【非特許文献6】日経サイエンス、42, 8月号, 2002
【非特許文献7】Mol Pharmaceutics 1: 399
【非特許文献8】Langmuir, 20, 8939-8941, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
優れた特性をもつナノ黒鉛構造体と、金属内包フェリチン分子を組合せることができると、これまでにない新しい機能をもった複合材料の開発が期待できる。この場合、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどのナノ黒鉛構造体をフェリチン分子が効率良く認識し、結合させる技術が必要となる。本発明の課題は、無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子形成能をもつフェリチン分子の持つ能力をナノ黒鉛構造体認識ペプチドに融合することで、カーボンナノチューブ・カーボンナノホーン、あるいはその修飾体を効率良く、認識し、機能性化合物を担持させることを可能にすることにある。また、フェリチン分子は界面で二次元結晶形成能を有し、分子配列能を持つことから、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合したフェリチンの分子配列能を利用したカーボンナノチューブ・カーボンナノホーンの整列を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、ウマ脾臓由来Lタイプフェリチン分子のアミノ末端をコードするcDNAに、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードするDNAを融合させ、大腸菌を利用して、配列番号26に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を発現し、このタンパク質を精製し、得られた融合タンパク質の内部空間に、酸化金属ナノ粒子を保持させ、ナノ黒鉛構造体上にナノ粒子を複数担持させることができることを確認し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、(1)ケージタンパク質表面に、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合又は化学的に結合させたタンパク質の内部空間に、無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を保持させ、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドのナノ黒鉛構造体との親和性を利用して、ナノ黒鉛構造体に無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を複数担持させたナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、(2)フェリチンが、高等真核生物由来のフェリチンであることを特徴とする上記()記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、()高等真核生物由来のフェリチンが、ウマ脾臓由来Lタイプのフェリチンであることを特徴とする()記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、(4)ナノ黒鉛構造体認識ペプチドが、配列番号1~20のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴とする上記(1)~()のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、()ナノ黒鉛構造体認識ペプチドが、配列番号1~20のいずれかに示されるアミノ酸配列の全部又はその一部を含むナノ黒鉛構造体に結合能を有するペプチドであることを特徴とする上記(1)~()のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、()配列番号1~20のいずれかに示されるアミノ酸配列が、DYFSSPYYEQLF(配列番号1)であることを特徴とする上記()又は()記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、()配列番号1~20のいずれかに示されるアミノ酸配列が、YDPFHII(配列番号2)であることを特徴とする上記()又は()記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、()無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子が、金属ナノ粒子であることを特徴とする上記(1)~()のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、()無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子が、金属化合物ナノ粒子であることを特徴とする上記(1)~()のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、(10)金属化合物ナノ粒子が、酸化金属ナノ粒子であることを特徴とする上記()記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、(11)金属化合物ナノ粒子が、磁性材料ナノ粒子であることを特徴とする上記()記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、(12)金属が、鉄、ベリリウム、ガリウム、マンガン、リン、ウラン、鉛、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム又はクロムであることを特徴とする上記(1)~(11)のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、(13)無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子が、酸化鉄ナノ粒子、セレン化カドミウムナノ粒子、セレン化亜鉛ナノ粒子、硫化亜鉛ナノ粒子、又は硫化カドミウムナノ粒子であることを特徴とする上記(1)~()のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、(14)ナノ黒鉛構造体が、カーボンナノチューブ又はカーボンナノホーンであることを特徴とする上記(1)~(13)のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、(15)カーボンナノチューブ又はカーボンナノホーンが、構成する炭素構造に官能基が付加されていることを特徴とする上記(14)記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、(16)ナノ黒鉛構造体が基板上で二次元に整列されていることを特徴とする上記(1)~(15)のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、(17)金属ナノ粒子が基板上で二次元に整列されていることを特徴とする上記(1)~(15)のいずれか記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、(18)ケージタンパク質が除去されていることを特徴とする上記(16)記載のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体に関する。
【0011】
また本発明は、(19)フェリチンのN末端又はループ構造部位に、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合させたタンパク質の内部空間に、無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を添加して保持させ、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドのナノ黒鉛構造体との親和性を利用して、ナノ黒鉛構造体に無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を複数担持させる方法に関する。
【0012】
さらに本発明は、(20フェリチンのN末端又はループ構造部位に、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合させたタンパク質の内部空間に、無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を添加して保持させ、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドのナノ黒鉛構造体との親和性を利用して、ナノ黒鉛構造体に無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を複数担持させ、加熱処理によりタンパク質部分を取り除き、ナノ黒鉛構造体と無機金属化合物のナノ粒子との複合体を作る方法や、(21フェリチンのN末端又はループ構造部位に、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合させたタンパク質の内部空間に、無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を添加して保持させ、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドのナノ黒鉛構造体との親和性を利用して、ナノ黒鉛構造体に無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を複数担持させ、電子線処理によりタンパク質部分を取り除き、ナノ黒鉛構造体と無機金属化合物のナノ粒子との複合体を作る方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ウマ脾臓由来のLタイプのフェリチン(LF)の結晶構造とDYFSSPYYEQLF(配列番号1;N1配列)の提示部位を示す図である。ウマ脾臓由来Lフェリチン(LF0)の結晶構造のN末端部位を赤で示した。図1に示されるように、LF0のN末端は、分子の外側に位置するため、N末端にN1配列を融合することで、N1配列を多重に提示することができる。
【図2】N1-LF発現ベクター pKIS2構築の模式図である。 N1-LF組換えフェリチン発現ベクターpKIS2は、ウマ脾臓由来Lフェリチン発現ベクターであるpKITOを制限酵素BamHIとSacIで切断し、アニーリングした配列番号22及び23の合成DNAを挿入し、次にBamHIで切断する。そこに、pKITOをBamHIで切断したときに生じる短いDNA断片を挿入し作製した。
【図3】N1-LFの最終精製標品のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す図である。 N1-LF最終精製標品3μgをポリアクリルアミドゲル電気泳動により、その均一性を評価した。15~25%の濃度勾配ゲルにより分離をおこない、クマシーブリリアントブルーによる染色をおこなったところ、目的のN1-LFの分子量に相当する位置にのみタンパク質のバンドが観察されたことから、非常に純度の高い標品であることが確認できた。左のレーンは分子量マーカーで、上から97.4、66.3、42.4、30.0、20.1、14.4kDaに相当する。右のレーンはN1-LF最終精製標品。
【図4】N1-LFの内部空間における酸化鉄ナノ粒子形成を示す図である。 N1-LFの内部空間に酸化鉄ナノ粒子を形成させた時の溶液の様子。Controlは、フェリチンタンパク質溶液を含まないもの。溶液の色からフェリチンの内部空間に酸化鉄ナノ粒子が形成されたことが分かる。
【図5】N1-LF内部空間に酸化鉄ナノ粒子が形成されていることを示す透過型電子顕微鏡写真を示す図である。 1% 金グルコースにより染色したN1-LF像を日本電子JEOL1010, 100kVで観察した。
【図6】LF0内部空間に酸化鉄ナノ粒子が形成されていることを示す透過型電子顕微鏡写真を示す図である。 1% 金グルコースにより染色したN1-LF像を日本電子JEOL1010, 100kVで観察した。
【図7】カーボンナノホーン上に担持された酸化金属ナノ粒子を示す図である。 カーボンナノホーンに結合能を有するペプチドを、フェリチンタンパク質に提示することで、N1-LFはカーボンナノホーン上に金属酸化物ナノ粒子を特異的に複数担持にすることができた(左)。ウマ脾臓由来のLタイプのフェリチン(LF0)ではカーボンナノホーン上に金属酸化物ナノ粒子を担持にすることができない(右)。
【図8】単層カーボンナノチューブ上に担持された酸化金属ナノ粒子を示す図である。カーボンナノホーンに結合能を有するペプチドを、フェリチンタンパク質に提示することで、N1-LFは単層カーボンナノチューブ上に複数の金属酸化物ナノ粒子を担持することができた。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体としては、ケージタンパク質表面に、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合又は化学的に結合させたタンパク質の内部空間に、無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を保持させ、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドのナノ黒鉛構造体との親和性を利用して、ナノ黒鉛構造体に無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を複数担持させた複合体であれば特に制限されるものではなく、また、タンパク質としては、ケージタンパク質表面に、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合又は化学的に結合させたタンパク質であれば特に制限されるものではなく、ここで、本発明のケージタンパク質とは、内部に空間をもち、物質内包能力のある蛋白質をいう。
【0015】
上記ケージタンパク質としては、フェリチンタンパク質ファミリーや、細菌に由来するものや、ウイルス粒子を挙げることができる。フェリチンタンパク質ファミリーとしては、フェリチンやアポフェリチンを挙げることができ、例えば、ウマ脾臓由来Lタイプのフェリチン等の高等真核生物由来のLタイプやHタイプのフェリチンを好適に例示することができる。細菌に由来するケージタンパク質としては、DpsAタンパク質やMrgAタンパク質を挙げることができる。また、ウイルス粒子としては、例えば、レトロウイルス、アデノウィルス、ロタウィルス、ポリオウィルス、サイトメガロウイルス、カリフラワーモザイクウイルス等のウイルス粒子を挙げることができる。
【0016】
上記ナノ黒鉛構造体としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンの他、カーボンナノチューブやカーボンナノホーンが構成する炭素構造に、アミノ基、水酸基、カルボキシル基等の官能基が付加されているような修飾されたナノ黒鉛構造体も挙げることができる。
【0017】
上記ナノ黒鉛構造体認識ペプチドとしては、配列番号1~20に示されるアミノ酸配列からなるペプチド(特許文献3、非特許文献8参照)や、配列番号1~20のいずれかに示されるアミノ酸配列の全部又はその一部を含むナノ黒鉛構造体に結合能を有するペプチドを挙げることができるが、中でもDYFSSPYYEQLF(配列番号1)やYDPFHII(配列番号2)のペプチドを好適に例示することができる。
【0018】
ナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合又は化学的に結合させるケージタンパク質表面の部位としては、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドがナノ黒鉛構造体と結合しうる部位であれば特に制限されないが、例えばフェリチンの場合、アミノ末端以外にも、フェリチン表面に露出したループ構造部位などを例示することができる。
【0019】
フェリチン等のケージタンパク質表面にナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合する方法としては、実施例に記載されているように、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989.、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1~38,John Wiley & Sons (1987-1997)等に記載の方法に準じて行うことができる。また、フェリチン等のケージタンパク質表面にナノ黒鉛構造体認識ペプチドを化学的に結合させる方法としては、文献(Proteins second edition, T. E. Creighton, W. H. Freemen and Company, New York, 1993. と、G. T. Hermanson, in Bioconjugate Techniques, ed. G. T. Hermanson, Academic Press, San Diego CA, 1996, pp. 169-186.)記載の方法を挙げることができる。
【0020】
上記無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子としては、鉄、ベリリウム、ガリウム、マンガン、リン、ウラン、鉛、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、クロム等の金属のナノ粒子や、これら金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩等のナノ粒子、磁性材料ナノ粒子などの金属化合物ナノ粒子を挙げることができるが、酸化鉄ナノ粒子、セレン化カドミウムナノ粒子、セレン化亜鉛ナノ粒子、硫化亜鉛ナノ粒子、硫化カドミウムナノ粒子を好適に例示することができる。
【0021】
上記のケージタンパク質表面にナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合又は化学的に結合させたタンパク質に、さらに機能性ペプチド、例えばチタンに結合能を有するペプチドを融合又は化学的に結合させ、チタン基盤上にナノ黒鉛構造体を配列し、尚且つナノ黒鉛構造体にナノ粒子を複数担持させることもできる。
【0022】
フェリチン等の二次元結晶形成能を有するケージタンパク質の場合、かかるケージタンパク質を二次元結晶化することで、ナノメータサイズのパターン作製が可能となる。例えば、ケージタンパク質表面に、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合又は化学的に結合させたタンパク質の内部空間に、無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を保持させ、ナノ黒鉛構造体認識ペプチドのナノ黒鉛構造体との親和性を利用して、ナノ黒鉛構造体に無機金属原子又は無機金属化合物のナノ粒子を複数担持させ、加熱処理又は電子線処理によりタンパク質部分を取り除くと、ナノ黒鉛構造体が基板上で二次元に整列されているナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、金属ナノ粒子が基板上で二次元に整列されているナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体を得ることができる。得られた複合体は、デバイス・メモリーなど、半導体分野における、デバイス・メモリーなどの高集積化の基本技術となりうる。
【0023】
また、ケージタンパク質を、例えば、グルタールアルデヒドのような複数の官能基を有する化合物とタンパク質を構成するアミノ酸の側鎖との間の反応性を利用して、タンパク質同士及び基板との間に架橋結合を形成させることにより、タンパク質を基材上に固定化する方法や、官能基を持つSAM(膜自己形成能力を持つ分子)を基材上に配置し、その官能基とタンパク質を構成するアミノ酸の側鎖との間に結合を形成させてタンパク質を固定化する方法等により、二次元のアレイに構成することによっても、ナノ黒鉛構造体が基板上で二次元に整列されているナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体や、金属ナノ粒子が基板上で二次元に整列されているナノ黒鉛構造体-金属ナノ粒子複合体を得ることができる。得られた複合体は、デバイス・メモリーなど、半導体分野における、デバイス・メモリーなどの高集積化の基本技術となりうる。
【0024】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
ウマ脾臓由来のLタイプのフェリチン(LF)に配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるナノ黒鉛構造体認識ペプチド(N1)を融合した融合フェリチンタンパク質(N1-LF、図1)発現のためのDNA(pKIS2)の作製は、以下の手順でおこなった。すなわち、互いに相補的で開始コドンであるMetに続いて、配列番号21で示されるアミノ酸配列をコードし、開始コドン側に制限酵素BamHIリンカー配列を、反対側に制限酵素SalIリンカー配列を持つような配列番号22及び配列番号23の合成DNA、各100pmole/μlを50mM NaCl、10mM Tris-HCl、10mM MgCl中で混合し、70℃で10分間加温した後、ゆっくりと室温に戻すことで、アニーリング反応をおこなった。次に、ウマ脾臓由来のLタイプフェリチンcDNAが、tacプロモーター下流にクローニングされたプラスミドpKITO(Okuda et al. 2003, Biotechnology and Bioengineering, Vol 84, No. 2, p187-194)を制限酵素BamHI、SalIで消化、1%アガロースゲル電気泳動により、分離される約6kbの大きなDNAフラグメントをGene Clean II kit(BIO101社)により精製し、先述のアニールしたDNAと混合し、T4DNAリガーゼを用いて結合させた。
【0026】
次に、このDNAとpKITOを、それぞれBamHIで消化し、1%アガロースゲル電気泳動により分離されるDNAフラグメント、前者は約6kbのフラグメント、後者は約300bpのフラグメントをGene Clean II kit (BIO101社)により精製し、T4 DNA Ligaseを用いて結合させた。結合したDNAを大腸菌XLI-blue株(hsdR17、supE44、recA1、endA1、gyrA46、thi、relA1、lac/F’[proAB+、lacI△(lacZ)M15::Tn10(tetR)])に、常法(Molecular Cloning Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従いクローン化し、pKITOの約300bpのBamHIフラグメント内のプライマー(配列番号24)を用いて、DNAシークエンスにより、目的の方向に約300bpのBamHIフラグメントが挿入されているクローンをダイデオキシターミネイト法により決定した(CEQ DTCS Quick start kit、ベックマン社、カルフォルニア)。反応産物の泳動とデータ解析には、オートキャピラリーシーケンサー(CEQ2000、ベックマン)を用いた。(図2)
【0027】
ウマ脾臓由来のL型フェリチンにナノ黒鉛構造体認識ペプチドを融合した融合フェリチンタンパク質の発現・精製は以下のようにおこなった。
【0028】
大腸菌XLI-blue株に、常法に従いpKIS2を形質転換し、コロニーを滅菌した楊枝で拾いあげ、5mlのLB培地で37℃、16-18時間震盪培養した。つぎに、この培養液を、1literのLB培地に植え継ぎ37℃でさらに16-18時間震盪培養をおこなった。大腸菌を、遠心分離(Beckman J2-21M, JA-14ローター, 5000rpm,5分)により集菌した。集菌した大腸菌を、80mlの50mM Tris-HCl pH8.0で洗浄し、再び、遠心分離(クボタ社、5922, RA410M2ローター,4000rpm,10分)により集菌した。30mlの50mM Tris-HCl pH8.0に懸濁した後、超音波破砕機(BRANSON, SONIFIER 250, 微量チップ、出力最大、duty cycle 50%,2分を3~4回繰り返す)を用いて、大腸菌破砕液を得た。大腸菌破砕液を、遠心分離(クボタ社、5922, RA410M2ローター, 8000rpm,30分)により、可溶性の画分を回収し、65℃で20分間温浴することで、共雑タンパク質の変性を行った。遠心分離(クボタ社、5922, RA410M2ローター, 8000rpm,30分)により、沈澱を形成する変成した共雑タンパク質を取り除き、上清を回収した。
【0029】
回収した上清に終濃度0.5Mになるように5M NaClを添加・撹拌し、室温で5~10分静置した後、遠心分離(クボタ社、5922, RA410M2ローター, 5000rpm,10分)により沈澱を回収した。沈澱を20mlの50mM Tris-HCl(pH8.0)に溶解し、再び終濃度0.5Mになるように5M NaClを添加・撹拌し、室温で5-10分静置した後、遠心分離(クボタ社、5922, RA410M2ローター, 5000rpm,10分)により沈澱を回収した。さらに、沈澱を20mlの50mM Tris-HCl(pH8.0)に溶解し、今度は終濃度0.375Mになるように5M NaClを添加・撹拌し、室温で5-10分静置した後、遠心分離(クボタ社、5922, RA410M2ローター, 5000rpm, 10分)により沈澱を回収した。回収した沈澱を、10mlの50mM TrisHCl(pH8.0)に溶解した。
【0030】
さらに、必要に応じてゲルろ過クロマトグラフィーによる精製をおこなっている。すなわち、上述の精製標品200~500μlを50mM TrisHCl(pH7.5),150mM NaCl,1mM NaN3で平衡化したSW4000XLカラム(TOSO)に注入し、流速1ml/minでクロマトグラフィーによる分離精製をおこない、フェリチン24量体に相当するフラクションを回収した(図3)。
【実施例2】
【0031】
実施例1で得られたN1-LFがリコンビナントアポフェリチンと同様に、内部空間に酸化鉄のナノ粒子形成能を有することを、以下の手順で確認した。
50mM HEPES-NaOH(pH7.0),0.5mg/ml N1-LF溶液に、50mM 硫酸アンモニウム鉄(II)6水和物を1/10体積添加(終濃度5mM)し、室温で終夜静置した(図4)。その後、遠心分離(クボタ社、5922, RA410M2ローター, 3000rpm,10分)に余分な酸化鉄を沈澱させ取り除く操作を2回繰り返した。次に、超遠心分離器(ベックマン, TLA 100.4 ローター, 50,000rpm,1時間)による遠心操作により、N1-LFを沈澱させた。この沈澱を50mM TrisHCl(pH8.0)により溶解し、等量の15% 蔗糖溶液の上に重層して、再び超遠心分離器(ベックマン, TLA 100.4 ローター, 50,000rpm,1時間)による遠心操作により蔗糖画分にあるN1-LFを回収した。回収したN1-LFは、酸化鉄のナノ粒子が形成されていることを透過型電子顕微鏡(JEOL1010, 100kV,1% 金グルコース染色、図5)により確認し、回収したN1-LFは、50mM TrisHCl(pH8.0)に透析した後、BioRad Protein Assay(バイオラッド社、)により定量し、他の実験に用いた。
【0032】
(比較例1)
ウマ脾臓由来のLタイプのフェリチン(LF0)も実施例1と同様に、組換え体を用いた。組換え体の調製は、以下のようにおこなった。大腸菌XLI-blue株に、常法に従いpKITOを形質転換し、コロニーを滅菌した楊枝で拾いあげ、5mlのLB培地で37℃、16-18時間震盪培養した。つぎに、この培養液を、1 literのLB培地に植え継ぎ37℃でさらに16-18時間震盪培養をおこなった。大腸菌を、遠心分離(Beckman J2-21M, JA-14ローター, 5000rpm, 5分)により集菌した。集菌した大腸菌を、80mlの50mM Tris-HCl(pH8.0)で洗浄し、再び、遠心分離(クボタ社、5922, RA410M2ローター, 4000rpm, 10分)により集菌した。30mlの50mM Tris-HCl(pH8.0)に懸濁した後、超音波破砕機(BRANSON, SONIFIER 250, 微量チップ、出力最大、duty cycle 50%, 2分を3~4回繰り返す)を用いて、大腸菌破砕液を得た。大腸菌破砕液を、遠心分離(クボタ社、5922, RA410M2ローター, 8000rpm,30分)により、可溶性の画分を回収し、65℃で20分間温浴することで、共雑タンパク質の変性を行った。遠心分離(クボタ社、5922, RA410M2ローター, 8000rpm, 30分)により、沈澱を形成する変成した共雑タンパク質を取り除き、上清を回収した。
【0033】
上清を、50mM TrisHCl(pH8.0)で平衡化した陰イオン交換クロマト担体であるQ-sepharose HP (アマシャム)に注入し、100mlの100-500mM塩化ナトリウム濃度勾配(3ml/min)により溶出した。LF0を含む画分約40mlを、セントリプレップ10(アミコン)により2.5~3mlに濃縮し、50mM TrisHCl(pH8.0), 150mM NaCl(以下TBS)で平衡化した60cm長のゲルろ過クロマトグラフ・セファアクリルS-400に注入し、流速1.5ml/minでクロマトグラフィーをおこなった。LF0を含む各画分~100μlを50mMTrisHCl pH7.5, 150mM NaCl, 1mM NaN3で平衡化したSW4000XLカラム、流速1ml/minでクロマトグラフィーによる分析をおこない、フェリチン24量体に相当する画分を確認し、以下の実験に用いた。
【0034】
(比較例2)
比較例1で得られたLF0の内部空間への酸化鉄のナノ粒子形成は、実施例2と同じ手順でおこなった。ナノ粒子形成の確認も同じく、実施例2と同様におこなった(図6)。
【実施例3】
【0035】
実施例2で得られた酸化鉄のナノ粒子を内部空間に持つN1-LF(配列番号26)は特異的にナノ黒鉛構造体に結合するが、比較例2で得られた酸化鉄のナノ粒子を内部空間に持つLF0(配列番号25)はナノ黒鉛構造体に結合することができないことを示すために、以下の実験をおこなった。
【0036】
Arガスの6x10Pa雰囲気圧内の焼結丸棒状炭素表面に高出力のCOガスレーザ光(出力100W、パルス幅20ms、連続発振)を照射し、生じたすす状物質をエタノールに懸濁し、超音波撹拌(周波数40kHz、時間60分)とデカンテーションとを4回繰り返して単層カーボンナノホーンを得た。この単層カーボンナノホーン約200mgを、濃度約70%の硝酸40ml中に入れ、130℃で1時間還流をおこなった。終了後、イオン交換水でうすめて遠心分離を行い上澄みを捨てることを繰り返して中和洗浄し、官能基(カルボキシル基を含む)をもつ水溶性の単層カーボンナノホーンを調製した。
【0037】
このカーボンナノホーンを、1mg/mlになるように0.1%牛胎児血清アルブミン・0.05%Polyoxyethylenesorbitan monolaurate[以下Tween-20(シグマ社、St.Louis)]含有TBS(以下TBS-BT)に溶解した。カーボンナノホーンを、遠心操作(クボタ社、5922, AT-2018Mローター,15000rpm, 15分)により沈澱させ、1mg/mlになるようにTBS-BTで懸濁した。この操作を3回繰り返したのち、沈澱したカーボンナノホーンを、1mg/mlになるように0.1mg/mlの酸化鉄ナノ粒子をコアに持つN1-LFあるいはLF0含有TBS-BTで懸濁した。12時間、室温でタイテック社製rotator RT-50を用いて回転撹拌した。結合しなかったフェリチン分子を取り除くために、カーボンナノホーンを遠心操作(クボタ社、5922, AT-2018Mローター, 15000rpm, 15分)により沈澱させ、400μlの0.05% Tween20含有TBSで5回洗浄した後、滅菌水に置換して脱塩したものを、透過型電子顕微鏡(TOPCON EM-002B, , 加速電圧120kV)観察をおこない、N1-LFをカーボンナノホーンと混合したとき、酸化鉄ナノ粒子がカーボンナノホーンに複数担持され、一方LF0の場合、酸化鉄ナノ粒子がカーボンナノホーン上に観察されないことから、N1-LFが特異的にカーボンナノホーンに結合能を有しており、この能力を利用したナノ黒鉛構造体上へのナノ粒子担持法の有効性を確認した(図7)。
【実施例4】
【0038】
化学的気相成長法で合成された単層カーボンナノチューブであるHipco(カーボンナノテクノロジーズ社、テキサス)を1750℃、1x10-5 Torrで5時間処理したあと、濃度70%の硝酸中、約130℃で30分還流をおこなった。終了後、水酸化ナトリウムで中和し、蒸留水で洗浄し、官能基(カルボキシル基を含む)をもつ単層カーボンナノチューブを調製した。
【0039】
この単層カーボンナノチューブを、実施例3と同様に、TBS-BTに溶解した。単層カーボンナノチューブを、遠心操作(クボタ社、5922,AT-2018Mローター,15000rpm,15分)により沈澱させ、再びTBS-BTで懸濁した。この操作を3回繰り返したのち、沈澱した単層カーボンナノチューブに実施例3と同様に酸化鉄ナノ粒子をコアに持つN1-LF含有TBS-BTで懸濁した。12時間、室温でタイテック社製rotator RT-50を用いて回転撹拌した。結合しなかったフェリチン分子を取り除くために、単層カーボンナノチューブを遠心操作(クボタ社、5922,AT-2018Mローター,15000rpm,15分)により沈澱させ、0.05% Tween20含有TBSで5回洗浄した後、滅菌水に置換して脱塩したものを、透過型電子顕微鏡(TOPCON EM-002B,120kV)観察をおこない、N1-LFを単層カーボンナノチューブと混合したとき、酸化鉄ナノ粒子がカーボンナノホーンに複数担持されることを確認した(図8)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7