TOP > 国内特許検索 > ナノ粒子集積体の製造方法およびナノ粒子集積体 > 明細書

明細書 :ナノ粒子集積体の製造方法およびナノ粒子集積体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4974712号 (P4974712)
公開番号 特開2008-213096 (P2008-213096A)
登録日 平成24年4月20日(2012.4.20)
発行日 平成24年7月11日(2012.7.11)
公開日 平成20年9月18日(2008.9.18)
発明の名称または考案の名称 ナノ粒子集積体の製造方法およびナノ粒子集積体
国際特許分類 B82B   3/00        (2006.01)
B82B   1/00        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
B01J  19/00        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B22F   1/02        (2006.01)
FI B82B 3/00
B82B 1/00
B82Y 30/00
B82Y 40/00
B01J 19/00 M
B22F 1/00 A
B22F 1/02 B
請求項の数または発明の数 6
全頁数 16
出願番号 特願2007-054876 (P2007-054876)
出願日 平成19年3月5日(2007.3.5)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年9月5日 社団法人 高分子学会発行の「高分子学会予稿集 55巻2号[2006]」に発表
審査請求日 平成20年3月13日(2008.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】栗原 和枝
【氏名】遠藤 聡
【氏名】新澤 達朗
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】佐藤 久則
参考文献・文献 特開2005-191526(JP,A)
特開2006-312148(JP,A)
調査した分野 B82B 1/00-3/00
B01J10/00-12/02、14/00-19/32
特許請求の範囲 【請求項1】
非水素結合性の溶媒中において、水素結合性の分子と、水素結合性の官能基を表面に有するナノ粒子とを、水素結合性の官能基を表面に有する基材表面に存在させて、これにより、水素結合性の分子が水素結合で組織化された分子マクロクラスターを基材表面に形成させると共に、この分子マクロクラスターにナノ粒子を吸着させる工程を含むことを特徴とするナノ粒子集積体の製造方法。
【請求項2】
水素結合性の分子を分散媒としたナノ粒子分散液を基材上に付着させ、この基材を非水素結合性の溶媒中に浸漬させることで、当該溶媒中において水素結合性の分子とナノ粒子とを基材表面に存在させて、これにより、水素結合性の分子が水素結合で組織化された分子マクロクラスターを基材表面に形成させると共に、この分子マクロクラスターにナノ粒子を吸着させることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子集積体の製造方法。
【請求項3】
非水素結合性の溶媒中に基材を浸漬させ、これとは別途に、水素結合性の分子を分散媒としたナノ粒子分散液を当該溶媒中に投入することで、当該溶媒中において水素結合性の分子とナノ粒子とを基材表面に存在させて、これにより、水素結合性の分子が水素結合で組織化された分子マクロクラスターを基材表面に形成させると共に、この分子マクロクラスターにナノ粒子を吸着させることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子集積体の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの方法により製造され、水素結合性の官能基を表面に有する基材上に、水素結合性の官能基を表面に有するナノ粒子が単層ないし数層集積され、少なくとも基材上へ直接に配置された単粒子層が、規則性をもつ構造で配置されていることを特徴とするナノ粒子集積体。
【請求項5】
規則性をもつ構造が、ナノ粒子が密である領域と疎である領域とが交互に繰り返される網目構造であることを特徴とする請求項4記載のナノ粒子集積体。
【請求項6】
規則性をもつ構造が、ナノ粒子が緻密かつ一様に配置された構造であることを特徴とする請求項4記載のナノ粒子集積体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上にナノ粒子が規則的に集積化されたナノ粒子集積体の製造方法および新規なナノ粒子集積体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子等の微粒子の集積化技術は、3次元的に集積することによる光学材料(フォトニック結晶)の作製、基板上へ2次元的に集積することによる基板の屈折率や反射率の制御、表面改質などに利用されている。また、異なる粒子上へ集積することによる複合粒子の作製などにも利用されている。
【0003】
微粒子の集積は主に、1)移流集積法、2)キャスト法、3)静電吸着、4)沈降を利用する方法などにより行われている。
【0004】
移流集積法(特許文献1等)は、粒子数濃度と基板の移動速度で粒子の配列方向を制御する方法である。この方法では2次元配列を有する単粒子膜を基板上に作製でき、連続して単粒子膜を作製するため大面積の単粒子膜を作製することが可能となる。しかし、この方法で3次元的な集積を制御するのは難しく、また平滑な基板が必要となる。
【0005】
一方、キャスト法では、基板上にたらす溶液の量と粒子濃度を制御することで、3次元的に均一な微粒子の集積を行うことが可能であるが、緻密で均一な単粒子膜を作製することは難しい。
【0006】
静電吸着による集積化は、静電引力を利用して基板上に微粒子を吸着させる方法であるが、基板と粒子のそれぞれの表面に電荷が必要であるため、基板と粒子の適用範囲に制限が生じる。
【0007】
また、粒子の重力による沈降を利用する方法では、粒子が沈降する十分なサイズと質量を持っている必要がある。また、この方法は3次元の結晶作製には有効であるが、緻密な単粒子膜を作ることには不向きである。

【特許文献1】特開平8-229474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような従来における微粒子の集積化技術には、優れた利点がある一方で、電荷を有する微粒子を必要としたり、所定形状の基材を必要としたり、大面積での微粒子集積が難しいといった制限がある。そのため、多様な微粒子集積材料の設計のためには、これらの制限によらない多様な集積法が求められている。
【0009】
そこで本発明は、上記のとおりの背景から、多様なナノ粒子に適用することができ、様々な形状の基材上に大面積で簡便にナノ粒子を集積可能な方法を提供することを課題としている。
【0010】
また本発明は、基材上にナノ粒子が規則的に集積化された新規なナノ粒子集積体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
【0012】
<1>非水素結合性の溶媒中において、水素結合性の分子と、水素結合性の官能基を表面に有するナノ粒子とを、水素結合性の官能基を表面に有する基材表面に存在させて、これにより、水素結合性の分子が水素結合で組織化された分子マクロクラスターを基材表面に形成させると共に、この分子マクロクラスターにナノ粒子を吸着させる工程を含むことを特徴とするナノ粒子集積体の製造方法。
【0013】
<2>水素結合性の分子を分散媒としたナノ粒子分散液を基材上に付着させ、この基材を非水素結合性の溶媒中に浸漬させることで、当該溶媒中において水素結合性の分子とナノ粒子とを基材表面に存在させて、これにより、水素結合性の分子が水素結合で組織化された分子マクロクラスターを基材表面に形成させると共に、この分子マクロクラスターにナノ粒子を吸着させることを特徴とする<1>のナノ粒子集積体の製造方法。
【0014】
<3>非水素結合性の溶媒中に基材を浸漬させ、これとは別途に、水素結合性の分子を分散媒としたナノ粒子分散液を当該溶媒中に投入することで、当該溶媒中において水素結合性の分子とナノ粒子とを基材表面に存在させて、これにより、水素結合性の分子が水素結合で組織化された分子マクロクラスターを基材表面に形成させると共に、この分子マクロクラスターにナノ粒子を吸着させることを特徴とする<1>のナノ粒子集積体の製造方法。
【0015】
<4>水素結合性の官能基を表面に有する基材上に、水素結合性の官能基を表面に有するナノ粒子が単層ないし数層集積され、少なくとも基材上へ直接に配置された単粒子層が、規則性をもつ構造で配置されていることを特徴とするナノ粒子集積体。
【0016】
<5>規則性をもつ構造が、ナノ粒子が密である領域と疎である領域とが交互に繰り返される網目構造であることを特徴とする<4>のナノ粒子集積体。
【0017】
<6>規則性をもつ構造が、ナノ粒子が緻密かつ一様に配置された構造であることを特徴とする<4>のナノ粒子集積体。
【発明の効果】
【0018】
上記のとおりの本発明によれば、分子マクロクラスターを利用した吸着による方法であるため、多様なナノ粒子の集積が可能である。また、基材の形状に制約がなく、様々な形状の基材上に大面積でナノ粒子を集積させることができる。さらに、集積のために必要とする器具が少なく簡便な手段でナノ粒子集積体を得ることができる。
【0019】
また本発明によれば、基材上にナノ粒子が規則的に集積化された新規なナノ粒子集積体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0021】
本発明に係るナノ粒子集積体の製造方法において、非水素結合性の溶媒としては、非極性溶媒または低極性溶媒として知られているものを用いることができる。その具体例としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらよりも高い極性をもつ溶媒を単独でまたは上記の溶媒と組み合わせて用いてもよいが、本発明では非極性溶媒または低極性溶媒を用いることが好ましい。
【0022】
水素結合性の分子としては、分子マクロクラスターを基材表面に形成し、そこにナノ粒子を吸着させ得るものであれば特に制限はないが、その具体例としては、低分子のアルコール、カルボン酸、アミド、アミンなどが挙げられる。なお、分子マクロクラスターは、水素結合性の分子が水素結合で組織化された厚さ数nmないし数十nmの分子膜のことである。
【0023】
水素結合性の官能基を表面に有するナノ粒子としては、それ自体が水素結合性の官能基を有しているものであっても、表面修飾により水素結合性の官能基を付与したものであってもよい。その具体例としては、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、W、Pt、Au等の金属単体粒子またはこれらの合金粒子を水素結合性の官能基で表面修飾したものや、半導体粒子、シリカ粒子、セラミックス粒子、有機ポリマー粒子、あるいはこれらを水素結合性の官能基で表面修飾したものなどが挙げられる。
【0024】
表面修飾により水素結合性の官能基を金属ナノ粒子の表面に導入する場合、一例として、水素結合性の官能基をもつチオール化合物、たとえば次式:
HS-R-X
(式中、Rは炭化水素鎖であり、鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素鎖や、脂環式環または芳香環を含む炭化水素鎖等であってよい。たとえば-(CH-:n=5~14のもの等が挙げられる。)で示されるものを、公知の方法により粒子表面に導入することができる。水素結合性の官能基(X)としては、-OH、-COOH、-COSH、-CONH、-CONHR、-NH、-NHR(R=炭化水素基)など各種のものであってよい。
【0025】
また、水酸基をもつガラス基板等においては、シランカップリング剤を用い、たとえばカルボン酸やアミド基等を付加することも考慮される。
【0026】
なお、本発明において「ナノ粒子」には、粒径1~100nmのもの、たとえば投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で1~100nm(一次粒子でも二次粒子であってもよい)のものが含まれる。
【0027】
水素結合性の官能基を表面に有する基材としては、その形状に特に制限はないが、比較的滑らかな平面をもつ基板状のものなどが使用できる。また、それ自体が水素結合性の官能基を有しているものであっても、表面修飾により水素結合性の官能基を付与したものであってもよい。その具体例としては、シラノール基を表面にもつガラス、酸化シリコン、酸化物セラミックス、またはこれらを水素結合性の官能基で表面修飾したもの、あるいは金属材、セラミックス材、樹脂材等を水素結合性の官能基で表面修飾したものなどが挙げられる。
【0028】
なお、基材表面の水素結合性官能基とナノ粒子表面の水素結合性官能基と水素結合性分子の水素結合性官能基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0029】
非水素結合性の溶媒中における水素結合性分子の濃度は、たとえば10mol%未満、特に2mol%以下とし、室温またはその近傍の温度において基材上に分子マクロクラスターを形成する。
【0030】
本発明に係る方法を実行するために、より具体的には、水素結合性の分子を分散媒としたナノ粒子分散液を基材上に滴下等により付着させて、この基材を非水素結合性の溶媒中に浸漬させる。非水素結合性の溶媒中には、あらかじめ水素結合性の分子が含有されていてもよく、この非水素結合性の溶媒中にあらかじめ含有される水素結合性の分子と、ナノ粒子分散液の分散媒である水素結合性の分子とは、互いに同一種類であっても異なる種類であってもよい。
【0031】
すると、非水素結合性の溶媒中に低濃度の水素結合性の分子を加えた溶液中では、基材表面とナノ粒子表面に水素結合性の分子が自己組織的に集合した分子マクロクラスターの吸着層が生じる。分子マクロクラスターが形成された表面間には引力が働くことがコロイドプローブ原子間力顕微鏡の測定により分かっており、この引力を利用してナノ粒子を基材上に集積する。
【0032】
あるいは、非水素結合性の溶媒中に基材を浸漬させ、これとは別途に水素結合性の分子を分散媒としたナノ粒子分散液をこの溶媒中に投入するようにしてもよい。非水素結合性の溶媒中には、あらかじめ水素結合性の分子が含有されていてもよく、この非水素結合性の溶媒中にあらかじめ含有される水素結合性の分子と、ナノ粒子分散液の分散媒である水素結合性の分子とは、互いに同一種類であっても異なる種類であってもよい。
【0033】
この場合においても、水素結合性の分子による吸着層間の引力によりナノ粒子が基材上に吸着し、集積体を形成する。
【0034】
このようにしてナノ集積体の作製を行った後、必要に応じて、ナノ粒子が表面に集積した基材から風乾、減圧乾燥等により液分を除去する。このようにして形成されたナノ粒子集積体は、図1-A、図1-B,図3-A~図3-CのAFM画像にも示されるように、基材上に、ナノ粒子が単層ないし数層集積され、少なくとも基材上へ直接に配置された単粒子層が、規則性をもつ構造で配置されている。
【0035】
ここで、「単層ないし数層」とは、典型的には、単粒子層、あるいはその上の少なくとも一部に形成された第2層を有するものである。しかし場合によっては第3層あるいは第4層を含んだものであってもよい。
【0036】
また、「規則性をもつ構造」とは、図1のような、ナノ粒子が密である領域と疎である領域とが交互に繰り返される網目構造、図3のようなナノ粒子が緻密かつ一様に配置された膜状構造を包含するものである。
【0037】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん、以下の例示によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0038】
<実施例1>
(エタノールマクロクラスターを利用した金ナノ粒子の集積)
非水素結合性の溶媒としてシクロヘキサン、水素結合性の分子としてエタノール、ナノ粒子として水酸基で表面修飾した金ナノ粒子を使用し、ガラス基板上に金ナノ粒子集合体を作製した。
【0039】
金ナノ粒子として平均粒径7nmのものを用い、その表面をHS(CH10CHOHで修飾し、エタノール中に濃度12.5mMで分散させた。
【0040】
この金ナノ粒子/エタノール分散液をガラス基板上へ32μl滴下し、その基板を20mlのシクロヘキサン中に2時間静置することでナノ粒子集積体を作製した。
【0041】
シクロヘキサン中のエタノール濃度を変えて複数種類の集積体を作製した。エタノール濃度は、あらかじめシクロヘキサンに所定量のエタノールを混合しておくことにより変化させた。エタノール濃度0.3mol%の条件と、0.5mol%の条件で作製した集積体をAFMにより観察した画像を図1-A,図1-Bに示す。
【0042】
エタノール濃度0.3mol%の条件では、ガラス基板上にまず、非常に細かい網目構造をもつ第1層目の粒子層が形成され、その上に部分的に第2層目の粒子層が形成された(図1-A)。
【0043】
エタノール濃度0.5mol%の条件では、0.3mol%の場合よりも基板上に粗く吸着し、穴の大きい粗い単粒子層状の網目構造を形成した(図1-B)。また、この条件では第2層目の粒子層は形成されなかった。
【0044】
作製したナノ集積体の厚みはいずれも6nmから14nm程度であり、ほぼ金ナノ粒子1~2個分に相当する。なお、図示はしないが、エタノール濃度の上昇につれてマクロクラスターによる引力が減少し、1.0mol%の条件では網状のパターンが消失し、粒子が基板を一様に覆った上に第2層目の金ナノ粒子層がまばらに乗っている状態が観察された。
【0045】
また、このナノ集積体は金ナノ粒子/エタノール分散液の濃度変化にも対応して変化を示し、エタノール濃度0.3mol%の条件において分散液濃度を減少させたところ、網目状の構造は維持したまま、より粗く基板上についた状態となった。
【0046】
このように、マクロクラスター間に作用する引力や金ナノ粒子分散液の濃度を制御することで、金ナノ粒子の2次元集積体の形状や構造を変化させることができる。集積体の考えられる生成原理を図2(a)に示す。基板上に金ナノ粒子/エタノール分散液を滴下し、この基板をシクロヘキサン中に浸漬すると、基板上には金ナノ粒子を含んだエタノールによる吸着層が形成される。表面に水素結合性の官能基をもつ金ナノ粒子はエタノールに親和性を持つため、この吸着層に吸着し取り込まれ、その他の金ナノ粒子/エタノール分散液が流れ出してしまった後も基板上に残り、集積体を形成する。
<参考例1>
エタノール濃度を3.0mol%とした以外は実施例1と同様の条件にて集積体の作製を行った。作製した集積体をAFMにより観察した画像を図1-Cに示す。
【0047】
同図に示されるように、ガラス基板上にぼやっとした集積体が観察されるだけで、規則的な構造は観察されなかった。
【0048】
この条件での集積体の生成原理は図2(b)に示すように考えられる。エタノール濃度が高い条件では、吸着層中のエタノールがバルクと自由に交換するため基板上に安定な吸着層が形成されない。そのため、この条件では金ナノ粒子はファンデルワールス力またはチオールの水酸基による水素結合により基板上へ吸着していることとなり、ランダムに基板への吸着と脱離を行うことが可能となるため、規則的な構造を持った集積体は形成されず、粒子がかなり大きくランダムに集合した集積体となる。
<比較例1>
ガラス基板として表面を疎水処理したものを用いた以外は実施例1と同様の条件にて、エタノール濃度を0.3mol%として集積体の作製を行ったが、金ナノ粒子は基板上へまったく吸着しなかった。
【0049】
この場合では、疎水表面にはエタノール吸着層は形成されなかったものと考えられるが、このように、疎水処理したガラス基板上では金ナノ粒子が吸着せず、規則的な構造も形成されなかっことから、基板上に形成されるエタノール吸着層がナノ粒子集合体の形成に大きな役割を担っていることが理解される。
<実施例2>
(プロピオン酸マクロクラスターを利用した金ナノ粒子の集積)
非水素結合性の溶媒としてシクロヘキサン、水素結合性の分子としてプロピオン酸を使用し、実施例1と同様な方法により、金ナノ粒子をガラス基板上に集積した。
【0050】
表面に水酸基を修飾した金ナノ粒子はプロピオン酸に不溶であったため、基板上に金ナノ粒子/エタノール分散液を10μl滴下し、20mlのシクロヘキサン中にプロピオン酸を加えた混合溶液中にこの基板を2時間以上浸漬することで集積体を作製した。
【0051】
プロピオン酸濃度0.1~10.0mol%の濃度範囲で作製した集積体のAFM像を図3に示す。プロピオン酸濃度0.1molの場合では、一様に基板を覆った単粒子膜と、その上に形成した疎の部分(暗いところに対応)のある粒子層を観察した(図3-A)。
【0052】
プロピオン酸濃度を1.0mol%まで上げると、粒子層に疎の部分は見られず、一様に基板を被覆した粒子層が観察された(図3-B)。
【0053】
さらに、プロピオン酸濃度を10.0mol%に上げると、密についていた粒子が、粗くなり数多くの穴を観察した(図3-C)。
【0054】
このように、プロピオン酸マクロクラスターを利用することにより、より密に集積した金ナノ粒子の集積体が得られた。これは、エタノールマクロクラスター間に作用する引力に比べ、プロピオン酸マクロクラスター同士に作用する相互作用のほうが強いため、プロピオン酸濃度を変えて集積化を行った際、各プロピオン酸濃度におけるプロピオン酸マクロクラスター間に作用する引力が主に、金ナノ粒子の集積体形成に影響を及ぼしたと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1-A】実施例1において得られたナノ粒子集積体をAFMにより観察した画像である。
【図1-B】実施例1において得られたナノ粒子集積体をAFMにより観察した画像である。
【図1-C】参考例1において得られたナノ粒子集積体をAFMにより観察した画像である。
【図2】ナノ粒子集積体の生成原理を説明する図である。
【図3-A】実施例2において得られたナノ粒子集積体をAFMにより観察した画像である。
【図3-B】実施例2において得られたナノ粒子集積体をAFMにより観察した画像である。
【図3-C】実施例2において得られたナノ粒子集積体をAFMにより観察した画像である。
図面
【図1-A】
0
【図1-B】
1
【図1-C】
2
【図2】
3
【図3-A】
4
【図3-B】
5
【図3-C】
6