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明細書 :ヨウ素化剤の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4274488号 (P4274488)
公開番号 特開2008-223065 (P2008-223065A)
登録日 平成21年3月13日(2009.3.13)
発行日 平成21年6月10日(2009.6.10)
公開日 平成20年9月25日(2008.9.25)
発明の名称または考案の名称 ヨウ素化剤の製造方法
国際特許分類 C25B   1/24        (2006.01)
C07C  17/12        (2006.01)
C07C  25/00        (2006.01)
C07C  25/18        (2006.01)
C07C  25/22        (2006.01)
C07C  39/27        (2006.01)
C07C  37/62        (2006.01)
C07C  43/225       (2006.01)
C07C  41/22        (2006.01)
C07C 211/52        (2006.01)
C07C 209/74        (2006.01)
C07C 255/50        (2006.01)
C07C 253/30        (2006.01)
C07B  39/00        (2006.01)
FI C25B 1/24 C
C07C 17/12
C07C 25/00
C07C 25/18
C07C 25/22
C07C 39/27
C07C 37/62
C07C 43/225 A
C07C 41/22
C07C 211/52
C07C 209/74
C07C 255/50
C07C 253/30
C07B 39/00 E
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2007-061067 (P2007-061067)
出願日 平成19年3月9日(2007.3.9)
審査請求日 平成20年3月7日(2008.3.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000227652
【氏名又は名称】日宝化学株式会社
発明者または考案者 【氏名】吉田 潤一
【氏名】菅 誠治
【氏名】片岡 和英
【氏名】緑川 晃二
【氏名】萩原 祐二
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】馳平 憲一
参考文献・文献 国際公開第2006/073124(WO,A1)
特開平05-195272(JP,A)
調査した分野 C25B 1/00-1/46
C07C 17/12,25/02,25/18,25/22,37/62
39/27,41/22,43/225,253/30,
255/50
C07B 39/00
特許請求の範囲 【請求項1】
酸を支持電解質として、有機溶媒を含む溶液中でヨウ素分子を電気分解する工程を包含し、
前記酸は、下記一般式(1)
SOH・・・(1)
(式(1)中、Rは、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基およびナフチル基のいずれか1種であり、該アルキル基は、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよく、該フェニル基および該ナフチル基は置換基を有していてもよい。)で示されるスルホン酸類および下記一般式(2)
【化1】
JP0004274488B2_000010t.gif
(式(2)中、R、Rは、同一または異なってもよく、水素原子または炭素数1~10のアルキル基またはフェニル基であり、該フェニル基は置換基を有していてもよい。)で示されるリン酸類の少なくとも1種であることを特徴とするヨウ素化剤の製造方法。
【請求項2】
前記有機溶媒は、脂肪族ニトリル、アルコール、塩素系溶剤、脂肪族アミド、環状エーテルおよびニトロメタンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
支持電解質として使用される酸と、ヨウ素分子と、有機溶媒とを含む、ヨウ素カチオンを得るための電解液であって、
前記酸は、下記一般式(1)
SOH・・・(1)
(式(1)中、Rは、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基およびナフチル基のいずれか1種であり、該アルキル基は、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよく、該フェニル基および該ナフチル基は置換基を有していてもよい。)で示されるスルホン酸類および下記一般式(2)
【化2】
JP0004274488B2_000011t.gif
(式(2)中、R、Rは、同一または異なってもよく、水素原子または炭素数1~10のアルキル基またはフェニル基であり、該フェニル基は置換基を有していてもよい。)で示されるリン酸類の少なくとも1種であり、
前記酸の濃度は、0.01mol/L以上、19.0mol/L以下であることを特徴とするヨウ素カチオンを得るための電解液。
【請求項4】
前記ヨウ素分子の濃度は、0.1質量%以上、50質量%以下であることを特徴とする請求項に記載のヨウ素カチオンを得るための電解液。
【請求項5】
請求項またはに記載のヨウ素カチオンを得るための電解液を電気分解してヨウ素カチオンを得ることを特徴とするヨウ素化剤の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ素化剤の製造方法およびこの製造方法に用いる電解液に関し、特に、ヨウ素分子を電気分解してヨウ素カチオンを得るヨウ素化剤の製造方法およびこの製造方法に用いる電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族化合物の核にヨウ素原子が結合している芳香族ヨウ素化合物は、各種有機合成の中間体として幅広い需要がある。このような芳香族ヨウ素化合物の製造方法の一つに、電気分解により発生させたヨウ素カチオンをヨウ素化剤として用いる方法が報告されている(非特許文献1から3参照)。ヨウ素カチオンは、反応性が高く非常に有効なヨウ素化剤である。たとえば、非特許文献1、2には、有機溶媒中で、金属塩を支持電解質として用いてヨウ素分子を電気分解することにより、ヨウ素カチオンを得る方法が開示されている。また、非特許文献3には、支持電解質として、第4級アンモニウム塩を用いるヨウ素カチオンの製造方法が開示されている。

【非特許文献1】L.L.Miller,E.P.Kujawa,C.B.Cambell,「Iodation with electrolytically generated iodine(I)」J.Am.Chem.Soc.,92,2821,(1970)
【非特許文献2】L.L.Miller,B.F.Watkins,「Scope and mechanism of aromatic iodination withelectrolytically generated iodine(I)」 J.Am.Chem.Soc.,98,1515,(1976)
【非特許文献3】R.Lines,V.D.Parker,「Electrophilic aromatic substitution by positve iodine species.Iodation of deactivatied aromatic comounds」Acta Chem.Scand.,B34,p47,(1980)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
目的のヨウ素化化合物を得るためには、ヨウ素化反応終了後に支持電解質を分離しなくてはならないが、支持電解質として上記の非特許文献1から3のように塩を用いた場合には、塩の種類によっては、カラムクロマトグラフィを用いる必要がある。カラムクロマトグラフィを用いた分離操作は、工業的応用が困難であり、このことが、電気分解により生じたヨウ素カチオンを用いた芳香族化合物の製造方法の工業化を妨げる一因であった。そのため、ヨウ素化反応終了後に目的のヨウ素化化合物を単離するために、高度な分離操作を必要とすることがなく、工業的な生産を実現し得るヨウ素化剤の製造方法の開発が求められている。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気分解によりヨウ素カチオンを得る方法であって、得られたヨウ素カチオンをヨウ素化剤として用いた場合、反応終了後に高度な分離操作を必要とすることがないヨウ素化剤の製造方法および電解液を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかるヨウ素化剤の製造方法は、酸を支持電解質として、溶液中でヨウ素分子を電気分解することを特徴とする。
【0006】
本発明にかかるヨウ素化剤の製造方法では、
前記酸は、下記一般式(1)
SOH・・・(1)
(式(1)中、Rは、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基およびナフチル基のいずれか1種であり、該アルキル基は、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよく、該フェニル基および該ナフチル基は置換基を有していてもよい。)で示されるスルホン酸類および下記一般式(2)
【0007】
【化1】
JP0004274488B2_000002t.gif

【0008】
(式(2)中、R、Rは、同一または異なっていてもよく、水素または炭素数1~10のアルキル基またはフェニル基であり、該フェニル基は置換基を有していてもよい。)で示されるリン酸類の少なくとも1種であることが好ましい。なお、本発明において、リン酸類とはリン酸エステルを含む
本発明にかかるヨウ素化剤の製造方法では、前記溶液は、有機溶媒が含まれていることが好ましい。
【0009】
本発明にかかるヨウ素化剤の製造方法では、前記有機溶媒は、脂肪族ニトリル、アルコール、塩素系溶剤、脂肪族アミド、環状エーテルおよびニトロメタンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
本発明にかかるヨウ素化剤の製造方法では、酸を支持電解質として用いている。そのため、ヨウ素カチオンをヨウ素化剤としてヨウ素化化合物を合成した場合に、反応終了後に支持電解質の分離を容易に行うことができる。本発明者らは、鋭意検討の結果、ヨウ素分子を電気分解する際に、塩ではなく酸を支持電解質として利用できることを見出した。酸は、カラムクロマトグラフィによる分離を経ずとも、たとえば、中和反応により除去することができる。つまり、本発明によれば、ヨウ素化反応終了後に高度な分離操作を必要とすることがないヨウ素カチオンを得ることができる。本発明によって得られるヨウ素カチオンは、各種化合物のヨウ素化剤として好適に用いることができる。
【0011】
なお、非特許文献3には、トリフルオロ酢酸が添加された有機溶媒中で、ヨウ素分子を電気分解し、得られたヨウ素カチオンを用いて種々の芳香族化合物をヨウ素化する方法が開示されている。しかしながら、非特許文献3に記載の方法では、トリフルオロ酢酸が支持電解質として機能していなかった。
【0012】
本発明にかかる電解液は、支持電解質として機能し得る酸と、ヨウ素分子とを含む電解液であって、
前記酸の濃度は、0.01mol/L以上、19.0mol/L以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明にかかる電解液では、前記ヨウ素分子の濃度は、0.1質量%以上、50質量%以下であることが好ましい。なお、本発明において、「電解液」とは、そのまま電気分解に供される溶液のことをいう。そのため、上記範囲外の溶液を準備し、電気を流す前に希釈または濃縮など公知の濃度調製手段を行って、上記範囲内の濃度の溶液が得られた場合には、その溶液も本発明にかかる電解液に相当することとなる。
【0014】
本発明にかかる電解液は、ヨウ素分子を電気分解してヨウ素カチオンを得るための電解液として用いられることが好ましい。
【0015】
本発明にかかる電解液を用いて、電気分解を行うことで、種々の化合物のヨウ素化剤として好適に用いられるヨウ素カチオンを得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る製造方法によれば、酸を支持電解質としてヨウ素分子を電気分解することでヨウ素カチオンが製造される。このようにして得られたヨウ素カチオン溶液を用いてヨウ素化化合物を得た場合、反応終了後に、カラムクロマトグラフィを用いての高度な分離操作を行う必要がない。そのため、ヨウ素化化合物の工業的生産に適したヨウ素化剤として好適なヨウ素カチオンを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のヨウ素化剤の製造方法について詳細を説明する。本発明にかかる製造方法は、支持電解質として機能し得る酸を含む溶液中でヨウ素分子を電気分解することを含む。
【0018】
1.電解液
本発明にかかる電解液は、酸とヨウ素分子とを含む。
【0019】
(溶媒)
溶媒は、上記ヨウ素分子および酸を溶解し、ヨウ素分子を電気分解に供する役割を果たす。このような溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、脂肪族ニトリル、アルコール、塩素系溶剤、脂肪族アミド、環状エーテルおよびニトロメタンからなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。具体的には、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ピバロニトリル、ヘキサンニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert‐ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2‐ジクロロエタン、1,1,1‐トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルピロリドン、N‐メチルピペリドン、テトラヒドロフラン、1,4‐ジオキサン、テトラヒドロピラン、ニトロメタンを例示することができる。
【0020】
(酸)
本発明にかかる製造方法では、酸を支持電解質として用いる。本明細書中で使用される場合、「酸」は、溶媒中にてイオンに解離し、電気分解に必要な電気を導く役割を果たす酸をいう。
【0021】
前記酸は、下記一般式(1)
SOH・・・(1)
(式(1)中、Rは、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基およびナフチル基のいずれか1種であり、該アルキル基は、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよく、該フェニル基および該ナフチル基は置換基を有していてもよい。)で示されるスルホン酸類および下記一般式(2)
【0022】
【化2】
JP0004274488B2_000003t.gif

【0023】
(式(2)中、R、Rは、同一または異なっていてもよく、水素または炭素数1~10のアルキル基またはフェニル基であり、該フェニル基は置換基を有してもよい。)で示されるリン酸類の少なくとも1種であることが好ましい。
【0024】
スルホン酸類として、硫酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などを挙げることができる。リン酸類として、リン酸、メチルリン酸、ブチルリン酸、イソデシルリン酸、2‐エチルヘキシルリン酸、フェニルリン酸などを挙げることができる。
【0025】
電解液中の酸の濃度は、0.01mol/L以上、19.0mol/L以下であり、0.05mol/L以上、10.0mol/L以下であることが好ましく、0.1mol/L以上、5.0mol/L以下であることがより好ましい。酸の濃度が、0.01mol/Lより小さい場合には、溶液中に電気を流すことができず、支持電解質としての役割を果たせない。また、19.0mol/Lを超える場合には、酸の濃度の調製が困難になるという問題がある。
【0026】
(ヨウ素分子)
本発明の製造方法では、ヨウ素分子が電気分解される。これにより、ヨウ素化反応終了後に、ヨウ素の金属化合物に由来する金属イオンに対する分離作業を行う必要がない。また、ヨウ素の金属化合物を用いた場合には、溶媒中に1価のヨウ素アニオンが存在することとなり、ヨウ素カチオンを得るためには、2個の電子を引き抜かなくてはならない。これに対して、ヨウ素分子の場合には、1個の電子を引き抜くのみで、ヨウ素カチオンを発生させることができ、電気分解に要する電気量を少なくすることができるという利点を有する。電解液におけるヨウ素分子の含有割合は、0.1質量%以上、50質量%以下であり、0.5質量%以上、25質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上、10質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
2.ヨウ素カチオンの製造
上記の電解液を用いて電気分解を行い、下記化学式(1)に従って、ヨウ素カチオンを得る。
【0028】
【化3】
JP0004274488B2_000004t.gif

【0029】
この電気分解は、たとえば、陽極側と陰極側とで2室に分離した電気分解装置を用いて行うことができる。陽極側の室には、ヨウ素分子、支持電解質および溶媒を投入し、陰極側の室には、支持電解質と溶媒とを投入する。この反応は、攪拌しつつ行うことが好ましい。また、この反応は、-100℃以上、100℃以下に条件で行うことができ、好ましくは、-40℃以上、40℃以下であり、より好ましくは、-20℃以上、25℃以下である。上記温度範囲であれば、ヨウ素カチオンを良好に得ることができる。この電気分解に用いる電気量は、ヨウ素分子1モルに対して、0.5F以上、5.0F以下であることが好ましい。これにより、陽極側の室には、ヨウ素カチオンを含む溶液(以下、「ヨウ素カチオン溶液」ともいう。)を得ることができる。電気量が0.5Fより小さい場合には、電気分解を行うことができず、5.0Fを超える場合には、ヨウ素以外の溶媒が酸化を受けたり、ヨウ素カチオンがさらに酸化されることがある。
【0030】
電極としては、銅、銀、金、白金などの金属電極、銅、銀、金、白金などの金属でめっきされた電極、ステンレス、ハステロイなどの耐蝕性の合金製の電極、またはグラファイト、ダイヤモンドなどの炭素電極を用いることができる。特に、白金電極が好ましい。
【0031】
3.芳香族ヨウ素化合物の製造
上記反応により得られたヨウ素カチオンは、種々の化合物のヨウ素化に用いることができる。特に、芳香族化合物の核にヨウ素を結合させたい場合のヨウ素化剤として好適に用いることができる。
【0032】
以下に、ヨウ素カチオンを用いたヨウ素化の一例として、溶媒中で、ヨウ素カチオンと、芳香族化合物とを反応させて、芳香族ヨウ素化合物を製造する場合について説明する。この反応は、下記の化学式(2)で表すことができる。なお、化学式(2)は、芳香族化合物として、トルエンを用いた場合を示す。
【0033】
【化4】
JP0004274488B2_000005t.gif

【0034】
芳香族ヨウ素化合物は、芳香族化合物が溶解した溶液中に、ヨウ素カチオン溶液を添加し、反応が完了するまで攪拌することで得られる。なお、本発明において、芳香族化合物とは、芳香族性を示す化合物のことをいい、同素環又は複素環を有する化合物のいずれであってもよい。同素環を有する芳香族化合物としては、ベンゼン環、ナフタレン環などの炭素数6~12の同素環を有する化合物が挙げられる。
【0035】
複素環を有する芳香族化合物としては、酸素、窒素および硫黄原子から選択された少なくとも1つ(通常、1~3つ程度)のヘテロ原子を有する5員又は6員ヘテロ環を有する化合物が挙げられる。この場合、ヘテロ環は縮合環を構成してもよい。具体的には、ヘテロ原子として酸素原子を含むフラン類、ヘテロ原子として硫黄原子を含むチオフェン類、チアゾール類、イソチアゾール類、ヘテロ原子として窒素原子を含むピロール類、ピラゾール類、イミダゾール類、トリアゾール類、ピリジン類を例示することができる。
【0036】
具体的な芳香族化合物としては、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert‐ブチルベンゼン、o‐キシレン、m‐キシレン、p‐キシレン、ビフェニル、ナフタレン、m‐ターフェニル、p‐ターフェニル、フェノール、アニソール、チオフェン、アニリン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、p‐クロロトルエン、o‐クロロトルエン、p‐クロロフェノール、4‐メチルアニソール、2‐メチルアニソール、o‐ジメトキシベンゼン、m‐ジメトキシベンゼン、p‐ジメトキシベンゼンなどを用いることができる。
【0037】
このとき、芳香族化合物を溶解する溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ピパロニトリル、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert‐ブタノール、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2‐ジメトキシエタン、1,2‐ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、1,4‐ジオキサン、テトラヒドロピラン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2‐ジクロロエタン、1,1,1‐トリクロロエタン、1,1,2‐トリクロロエタン、ニトロメタンなどを用いることができる。
【0038】
また、この合成では、ヨウ素カチオンと、1つ以上の置換基および2つ以上の水素原子を核に有する芳香族化合物とを、特定のエーテル化合物の存在下で反応させることにより、ヨウ素の結合位置の選択性を向上できる。
【0039】
芳香族化合物が有する置換基は、電子供与基であることができる。このような芳香族化合物としては、トルエン、o‐キシレン、m‐キシレン、2‐クロロトルエン、3‐メトキシフェノール、2‐メチルアニソール、3‐メチルアニソール、エチルベンゼン、クメン、tert‐ブチルベンゼンなどを例示することができる。
【0040】
エーテル化合物およびアミド化合物は、溶媒中でヨウ素がオルト位に結合することを立体的に阻害する役割を果たすと推測される。この場合、エーテル化合物およびアミド化合物を、上記芳香族化合物が溶解された溶液に添加して用いてもよいし、芳香族化合物がエーテル化合物およびアミド化合物に可溶である場合には、それ自体を溶媒として用いてもよい。
【0041】
エーテル化合物としては、非環式エーテル化合物および環式エーテル化合物のいずれを使用することができる。本発明の製造方法で使用される非環式エーテル化合物は、2つ以上のエーテル結合を含み、一方のエーテル結合の酸素原子と他方のエーテル結合の酸素原子との間に、炭素数が2以上の炭素鎖を有する化合物である。このような非環式エーテル化合物の一例として、以下の一般式(3)に示す化合物が挙げられる。
【0042】
【化5】
JP0004274488B2_000006t.gif

【0043】
(式(3)中、mは1以上の整数であり、nは、2以上の整数であり、R、Rは、同一または異なってもよく、水素または炭素数1~3のアルキル基であり、該アルキル基は、アルコキシ基で置換されていてもよい。R、Rは、同一または異なってもよく、水素または炭素数1~3のアルキル基である。)
一般式(3)で示される化合物としては、具体的に、1,2‐ジメトキシエタン、1,2‐ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールなどを例示することができる。
【0044】
環式エーテル化合物は、1つ以上のエーテル結合を有する環式の化合物である。環式エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、クラウンエーテル、1,4‐ジオキサン、テトラヒドロピラン、1,3,5‐トリオキサンを例示することができる。
【0045】
また、エーテル化合物を添加する場合には、その添加量は、ヨウ素カチオン溶液に対して0.1倍以上、10.0倍以下の容量であることが好ましく、0.5倍以上、1.5倍以下であることがより好ましい。添加量が少ない場合には、選択率の向上が見られず、多すぎる場合には、ヨウ素化の収率が低下してしまう。
【0046】
上記の芳香族化合物を溶解した溶液に、電気分解により得られたヨウ素カチオン溶液を添加し、攪拌を継続することで反応を完結することができる。このとき、反応温度は、-40℃以上、150℃以下であることが好ましい。得られた反応液に、公知の分離操作(抽出操作、分液操作)を施すことにより、目的の反応物を単離する。
【0047】
本発明にかかるヨウ素化剤の製造方法では、酸を支持電解質として用いている。そのため、このヨウ素カチオンをヨウ素化剤としてヨウ素化化合物を合成した場合に、反応終了後に支持電解質の分離を容易に行うことができる。本発明者らは、鋭意研究の結果、ヨウ素分子を電気分解する際に、塩ではなく酸を支持電解質として利用できることを見出した。酸は、カラムクロマトグラフィによる分離を経ずとも、たとえば、中和反応により除去することができる。そのため、本発明によれば、ヨウ素化剤として用いた場合、反応終了後に高度な分離操作を必要とすることがないヨウ素カチオンを得ることができる。
【実施例】
【0048】
以下に、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるべきものではない。
【0049】
[実施例1]
(ヨウ素カチオンの生成)
ヨウ素カチオンの生成は、H型2室型電解槽を用いて無水条件で行った。この際、隔膜としては、ガラスフィルター(G4)を用いた。電極は、陽極、陰極ともに白金板(30mm×20mm)を用いた。電解槽を減圧下で乾燥後、窒素雰囲気とした後、陰極室に2.0M硫酸を含むアセトニトリル溶液13mL、陽極室に2.0M硫酸を含むアセトニトリル溶液13mLおよびヨウ素127mg(0.500mmol)を加え、0℃に冷却した。マグネチックスターラーで陽極室および陰極室を攪拌しつつ、0℃で定電流電解(20mA)を行った。2.0F/mol通電することで、陽極室にヨウ素カチオン溶液が得られた。
【0050】
(芳香族ヨウ素化合物の製造)
次に、得られたヨウ素カチオン溶液12.5mlを、トルエン92mg(1.0mmol)を含むアセトニトリル溶液2.5mlに添加した。このとき、反応液の温度は、0℃であった。0.5時間かけて攪拌した。反応終了後、0℃で4N水酸化ナトリウム水溶液13mLを加えて中和し、エーテル20mLを加えて希釈した。反応混合物を分液漏斗に移し、有機層と水層とを分離した。水層をエーテルで抽出し、有機層は飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、反応液を減圧濃縮し、4‐ヨードトルエン(表1においては、「4‐I体」と称する。)および2‐ヨードトルエン(表1においては、「2‐I体」と称する。)が混合した乾燥物を得た。実施例1による反応物の収率および4‐ヨードトルエンおよび2‐ヨードトルエンの混合割合を表1に示す。
【0051】
[実施例2]
実施例2では、支持電解質として、5.0mol/Lのメタンスルホン酸溶液を使用した以外は、実施例1と同様にしてヨウ素カチオンの生成を行い、芳香族ヨウ素化化合物を得た。収率および4‐ヨードトルエンおよび2‐ヨードトルエンの混合割合について表1に示す。
【0052】
[実施例3]
実施例3では、支持電解質として、4.0mol/Lのリン酸溶液を使用した以外は、実施例1と同様にしてヨウ素カチオンの生成を行い、芳香族ヨウ素化化合物を得た。収率および4‐ヨードトルエンおよび2‐ヨードトルエンの混合割合について表1に示す。
【0053】
[実施例4]
実施例4では、支持電解質として、2.0mol/Lのトリフルオロメタンスルホン酸を使用し、-20℃で電気分解を行った以外は、実施例1と同様にしてヨウ素カチオンの生成を行い芳香族ヨウ素化化合物を得た。収率および4‐ヨードトルエンおよび2‐ヨードトルエンの混合割合について表1に示す。
【0054】
[実施例5]
実施例5では、支持電解質として、2.0mol/Lのベンゼンスルホン酸を使用した以外は、実施例1と同様にしてヨウ素カチオンの生成を行い、芳香族ヨウ素化化合物を得た。収率および4‐ヨードトルエンおよび2‐ヨードトルエンの混合割合について表1に示す。
【0055】
[比較例]
比較例では、支持電解質として、4.59mol/Lのトリフルオロ酢酸溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。しかし、最大で110ボルトの電圧をかけても電流が流れなかった。そのため、ヨウ素分子が電気分解されず、ヨウ素カチオン溶液を得ることができなかった。
【0056】
【表1】
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【0057】
実施例1~5では、電気分解により得られた溶液と、トルエンとを反応させることで、ヨードトルエンを製造することができた。これにより、実施例1から5では、電気分解によりヨウ素カチオンが生成されていることが確認された。
【0058】
[実施例6]
実施例1と同様にして、ヨウ素カチオンを含む溶液を製造した。このヨウ素カチオン溶液12.5mlに、1,2‐ジエトキシエタン10mlを加えた。ついで、トルエン92mg(1.0mmol)および1,2‐ジメトキシエタン2.5mlを50mlのナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーにて攪拌し、氷水浴にて0℃まで冷却した。ここに、ヨウ素カチオン溶液22.5mlを添加して、0℃で1時間反応を行った。得られた反応液を減圧濃縮し、乾燥して反応物を得た。得られた反応物は、4-ヨードトルエンおよび2-ヨードトルエンであった。収率は、79.8%であり、4-ヨードトルエンと2-ヨードトルエンとの比は、73:27であった。
【0059】
実施例6により、エーテル化合物であるジメトキシエタンをヨウ素化反応の溶媒として用いたことでパラ位にヨウ素が結合した芳香族ヨウ素化合物を高い比率で製造できたことが確認された。
【0060】
[実施例7‐29]
実施例7-29は、芳香族化合物を表2に示す化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして、芳香族ヨウ素化合物を得た。
【0061】
【表2】
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【0062】
表2に示されるように、本実施例によれば、ヨウ素カチオンを用いて良好に芳香族ヨウ素化合物を得られることが確認された。
【0063】
[実施例30‐41
(ヨウ素カチオンの生成)
実施例1と同様の装置を用いて、陰極室に2.0Mの硫酸を含むアセトニトリル溶液56ml、陽極室に2.0Mの硫酸を含むアセトニトリル溶液56mlと、ヨウ素分子1.524g(6mmol)を加え、0℃に冷却した。マグネチックスターラーで陰極室および陽極室を攪拌しつつ、0℃で20mAの電流を流し電解を行った。2.0F/molの電気量を通電することで、陽極室にヨウ素カチオン溶液が得られた。得られたヨウ素カチオン溶液を梨型フラスコに移し、-20℃の恒温槽で保存した。
【0064】
(芳香族ヨウ素化合物の製造)
上記方法により得られたヨウ素カチオン溶液2ml(約0.21M、0.42mmol)をシリンジで抜き取り、表3に示す溶媒を加えた後、トルエン77.4mg(0.84mmol)を仕込んだフラスコ中にキャヌラーを通して加えた。0℃で30分間反応させた。反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、エーテルを加えて分液した後、水層を抽出した。エーテル層を過飽和食塩水で1回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し濾過した。ろ液をガスクロマトグラフ(内部標準法)にて分析した。生成物(4‐ヨードトルエンおよび2‐ヨードトルエン)の収率および4‐ヨードトルエンと2‐ヨードトルエンとの生成比率を以下の表3に示す。
【0065】
【表3】
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【0066】
実施例30-41からわかるように、種々の溶媒を用いた場合であっても、芳香族化合物をヨウ素化できることが確認された。
【0067】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
種々の化合物のヨウ素化に用いることができ、工業的生産に適したヨウ素カチオンを製造することができる。