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明細書 :多孔質シリカゲル及びシリカガラスの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4912190号 (P4912190)
公開番号 特開2008-222527 (P2008-222527A)
登録日 平成24年1月27日(2012.1.27)
発行日 平成24年4月11日(2012.4.11)
公開日 平成20年9月25日(2008.9.25)
発明の名称または考案の名称 多孔質シリカゲル及びシリカガラスの製造方法
国際特許分類 C01B  33/152       (2006.01)
C03B   8/02        (2006.01)
FI C01B 33/152 B
C03B 8/02 B
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2007-066988 (P2007-066988)
出願日 平成19年3月15日(2007.3.15)
審査請求日 平成20年8月25日(2008.8.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】平野 正浩
【氏名】梶原 浩一
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】岡田 隆介
参考文献・文献 特開昭60-027611(JP,A)
特開平10-214710(JP,A)
調査した分野 C01B 33/00-33/193
特許請求の範囲 【請求項1】
4官能ケイ素アルコキシドに水を加えて加水分解してシリカヒドロゲルを形成し、これを
乾燥して多孔質シリカゲルを製造する方法において、
4官能ケイ素アルコキシド1モル対して0.5モル以上3モル以下を添加し、かつ
を添加する(混合工程1)ことによって酸性下で4官能ケイ素アルコキシドを部分加水分
解反応させ
該部分加水分解された4官能ケイ素アルコキシドと水が互いに混和した反応溶液に、さら
に、塩基性水溶液、又は弱酸の塩を含む水溶液を添加する(混合工程2)ことによって反
応溶液を中和し、
該混合工程2によって、4官能ケイ素アルコキシドを完全加水分解せぬまま重縮合させて
表面が疎水化したシリカ高分子を形成し、該表面が疎水化したシリカ高分子水及び4
官能ケイ素アルコキシドの部分加水分解によって生じたアルコールからなる親水性の溶媒
とからなる溶媒相との相分離を起こさせることによって、
表面が疎水化したシリカ高分子の構造がヒドロゲル化によって凍結された多孔質シリカヒ
ドロゲルを形成し、
該多孔質シリカヒドロゲル熟成後、乾燥して溶媒を蒸発させ
ことを特徴とする多孔質シリカゲルの製造方法。
【請求項2】
4官能ケイ素アルコキシドはアルコールで希釈されていることを特徴とする請求項1に記
載の多孔質シリカゲルの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の混合工程1又は混合工程2で、さらに金属元素の化合物を混合して
溶解させ、シリカゲルに該金属元素を含有させることを特徴とする多孔質シリカゲルの製
造方法。
【請求項4】
請求項1、請求項2、又は請求項3記載の方法で得られる多孔質シリカゲルを焼結するこ
と特徴とするシリカガラスの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、ゾル-ゲル法による多孔質シリカゲル及び該多孔質シリカゲルを焼結するシ
リカガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカゲルは、一般に、液相反応であるゾル-ゲル法によって作製される。典型的には、
ケイ素アルコキシドを加水分解し、続いて重縮合によってヒドロゲル化させることが行わ
れる。シリカヒドロゲル(湿潤シリカゲル)の細孔構造を制御するため、酸、塩基、アル
コール、有機溶媒、水溶性高分子、界面活性剤などがケイ素アルコキシド、水、及びケイ
素アルコキシドの加水分解によって生じたアルコールからなる反応溶液中に添加される。
【0003】
得られたシリカヒドロゲルを乾燥させることで乾燥シリカゲルが得られ、該乾燥シリカゲ
ルを焼結することでシリカガラスを製造することができる。また、該反応溶液に予め金属
元素の化合物を少量溶解させておくことによって、該金属元素が均一に分散したドープシ
リカゲル(例えば、特許文献1)及びドープシリカガラスを製造することができる。
【0004】
ゾル-ゲル法によってシリカゲル及びシリカガラスを製造する各種の方法が知られている
(例えば、特許文献2~7)。ゾル-ゲル法によって作製したシリカヒドロゲルには、一
般に、直径1~5nm程度の細孔が形成されており、乾燥シリカゲルを得るためには、こ
れらの細孔から溶媒の水、アルコールを除く必要がある。しかし、細孔径が小さいと、溶
媒の蒸発の際に大きな毛管力が生じ、その結果、乾燥中にシリカゲルが収縮して割れやす
い。また、乾燥シリカゲルを焼結してシリカガラスとする過程でも、乾燥シリカゲルの細
孔径が小さいと収縮のため割れたり、焼結中に乾燥シリカゲルから発生する水蒸気のため
乾燥シリカゲルが発泡したりしやすい。
【0005】
ゲルの割れや発泡を抑制して再現性良く乾燥シリカゲル及びシリカガラスを得るためには
、ヒドロゲルの細孔径を大きくして乾燥中の収縮応力の原因である毛管力を小さくし、か
つゲル全体で均一な溶媒蒸発及び均一な収縮を起こすことが必要である。しかし、4官能
ケイ素アルコキシド(Si(OR)4、ここでRはアルキル基)、水、アルコールを主原料としてこ
れまで作製されたシリカヒドロゲルの細孔径は一般に10nm以下であり、乾燥中の収縮応力
を十分に小さくするには不十分である。そのため、亀裂のない乾燥シリカゲルを得るには
、(1)乾燥を極めてゆっくり行ってゲルを均一に収縮させる、(2)高沸点かつ表面張
力の小さい溶媒を乾燥制御材として湿潤ゲルに添加して毛管力を下げる、(3)超臨界乾
燥を行って毛管力が働かないようにする、のいずれかを行うことが必要であった。
【0006】
一方で、高濃度の強酸、水溶性高分子、又は極性溶媒であるホルムアミドなどを反応溶液
に添加すると、反応溶液がシリカヒドロゲル相と溶媒相とに相分離しながらゲル化するた
め、溶媒が占めていた空間が10nm以上の大きさの細孔としてヒドロゲル中に残ることが知
られている(例えば、非特許文献1~3)。この方法によって作製されたシリカヒドロゲル
は、細孔径が大きいため、迅速に乾燥することができ、かつ乾燥中に亀裂が入ったり焼成
中に発泡したりしにくい。
【0007】
しかし、このような添加物は、最終製品である乾燥シリカゲルやシリカガラスでは多くの
場合不必要である。さらに、添加物の廃棄が煩雑であったり、また添加物中の元素が製品
中に残留して悪影響を及ぼしたりする場合があるため、これらの添加物を使用しない手法
が望まれている。
【0008】
また、4官能ケイ素アルコキシドではなく、加水分解されにくいSi-C結合を有する3官能
ケイ素アルコキシド(R1Si(OR2)3;ここでR1、R2はアルキル基)をシリカ源として使用した
場合にも、シリカゲル相の表面がアルキル基で疎水化されるため、該シリカゲル相を溶媒
相と相分離させることができ、細孔径の大きい多孔質シリカゲルを得ることができる(例
えば、特許文献5、非特許文献4)。しかし、3官能アルコキシドは4官能アルコキシド
よりも製造法が複雑である。またシリカゲルからSi-C結合を除くためには、十分酸素を供
給して熱処理することが不可欠である。
【0009】
この他に、シリカ微粒子を反応溶液に加えたり(例えば、特許文献8)、反応中に一旦シリ
カ微粒子を生成した後ゲル化を行ったりすると(例えば、特許文献9)、亀裂のない乾燥シ
リカゲルが容易に得られ、該乾燥シリカゲルを焼結することで、数cm角のサイズのシリカ
ガラスが再現性良く製造できることが知られている。しかし、シリカ微粒子を加えるため
、該シリカ微粒子の融点近くで乾燥シリカゲルの焼結を行わないと均一性の良いシリカガ
ラスが得られない。また、金属元素の化合物を反応溶液に溶解させてドープシリカゲル及
びドープシリカガラスを作製する場合、シリカ微粒子と金属元素を均一に混合させること
が難しい。
【0010】

【特許文献1】特開2003-267720号公報
【特許文献2】特開昭64-87523号公報
【特許文献3】特開平5-116931号公報
【特許文献4】特開平5-58617号公報
【特許文献5】特開平6-219726号公報
【特許文献6】特開平7-206453号公報
【特許文献7】特開平7-242410号公報
【特許文献8】特開昭60-131834号公報
【特許文献9】特開平6-24754号公報
【非特許文献1】Kozuka et al. Formation of particulate opaque silica gels from highly acidic solutions of tetramethoxysilane, Chem. Mater. 1,398-404(1989)
【非特許文献2】F. Kirkbir, et al., Drying and Sintering of Sol-Gel Derived Large SiO2 Monoliths, J. of Sol-Gel Sci. and Tech. 6, 203-217 (1996)
【非特許文献3】K. Nakanishi, Pore Structure Control of Silica Gels Based on Phase Separation J. Porous Mater. 4, 67-112(1997)
【非特許文献4】K. Nakanishi and K. Kanamori, Organic-inorganic hybrid poly(silsesquioxane) monoliths with controlled macro- and mesopores J. Mater. Chem. 15 3776-3786(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、4官能ケイ素アルコキシドを原料とし、水及びアルコ
ールという取扱い及び廃棄が容易で環境負荷の小さい溶媒のみを使用し、亀裂のない多孔
質シリカゲル及び該多孔質シリカゲルを焼結して亀裂と泡のないシリカガラスを製造する
方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明者らが精力的に研究を進めたところ、4官能ケイ素ア
ルコキシド、水、アルコールからなる溶液を一度に混合せずに、まず酸性での混合、次に
、ほぼ中性での混合と製造過程を二段階に分けることによって、特殊な添加剤を加えるこ
となくシリカヒドロゲル相と水、アルコールからなる溶媒相との相分離を起こし、10n
m以上の細孔径をもった多孔質シリカヒドロゲルが作製できることが分かった。また、酸
性及びほぼ中性溶液にシリカガラスにドープする金属元素又はその化合物を溶解させるこ
とで、多孔質シリカヒドロゲルに該金属元素を含有させることができる。
【0013】
すなわち、本発明は、(1)4官能ケイ素アルコキシドに水を加えて加水分解してシリカ
ヒドロゲルを形成し、これを乾燥して多孔質シリカゲルを製造する方法において、4官能
ケイ素アルコキシド1モル対して0.5モル以上3モル以下を添加し、かつ酸を添加
する(混合工程1)ことによって酸性下で4官能ケイ素アルコキシドを部分加水分解反応
させ、該部分加水分解された4官能ケイ素アルコキシドと水が互いに混和した反応溶液に
、さらに、塩基性水溶液、又は弱酸の塩を含む水溶液を添加する(混合工程2)ことによ
って反応溶液を中和し、該混合工程2によって、4官能ケイ素アルコキシドを完全加水分
解せぬまま重縮合させて表面が疎水化したシリカ高分子を形成し、該表面が疎水化した
リカ高分子水及び4官能ケイ素アルコキシドの部分加水分解によって生じたアルコー
からなる親水性の溶媒とからなる溶媒相との相分離を起こさせることによって、表面が
疎水化したシリカ高分子の構造がヒドロゲル化によって凍結された多孔質シリカヒドロゲ
ルを形成し、該多孔質シリカヒドロゲル熟成後、乾燥して溶媒を蒸発させることを特徴
とする多孔質シリカゲルの製造方法、である。

【0014】
また、本発明は、(2)4官能ケイ素アルコキシドはアルコールで希釈されていることを
特徴とする上記(1)の多孔質シリカゲルの製造方法、である。
また、本発明は、(3)上記(1)又は(2)の混合工程1又は混合工程2で、さらに金
属元素の化合物を混合して溶解させ、シリカゲルに該金属元素を含有させることを特徴と
する多孔質シリカゲルの製造方法、である。
また、本発明は、(4)上記(1)、(2)、又は(3)の方法で得られる多孔質シリカ
ゲルを焼結すること特徴とするシリカガラスの製造方法、である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法は、4官能ケイ素アルコキシドを原料とし、水及びアルコールという取扱い
及び廃棄が容易で環境負荷の小さい溶媒のみを使用する方法であり、得られる多孔質シリ
カヒドロゲルは細孔のサイズが大きいため、比較的短時間で乾燥させて亀裂の無い多孔質
シリカゲルを得ることができ、さらにすみやかに亀裂と泡のないシリカガラスへ焼結する
ことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の方法においては、まず、アルコール希釈あるいは無希釈の4官能ケイ素アルコキ
シドに水及び酸を添加する(以下「混合工程1」という)ことによって酸性下で、4官能
ケイ素アルコキシドを部分加水分解する。4官能ケイ素アルコキシドとして、例えば、テ
トラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシ
シランを用いることができる。加水分解されていない4官能ケイ素アルコキシドは水と混
和しないが、部分加水分解によってSiOH基及びアルコールが生じると互いに混和するよう
になる。そこで、均一な反応溶液を得るためには、4官能ケイ素アルコキシドの部分加水
分解が完了するまで溶液を攪拌する。
【0017】
4官能ケイ素アルコキシドは添加したアルコールによって部分置換されて反応性が変化す
るので、適切な種類と量のアルコールで希釈した4官能ケイ素アルコキシドを用いると、
より容易に多孔質シリカゲルを作製することができる。また、アルコールの添加によって
4官能ケイ素アルコキシドと水とが混和しやすくなるため、混合工程1での攪拌時間を短
縮することができる。ゆえに、必要に応じて、4官能ケイ素アルコキシドをアルコールで
希釈してもよい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール
、ブタノールが使用できる。しかし、アルコールは最終的に除去される溶媒であり、また
高価であるので、希釈剤としてのアルコールは添加しないで無希釈の4官能ケイ素アルコ
キシドを用いる方がより好ましい。
【0018】
混合工程1において添加する水の量は、一部のアルコキシ基が加水分解されずに残るよう
少なめにする必要があるが、その量は4官能ケイ素アルコキシド1モルに対しておおむね
0.5モル以上3モル以下である。4官能ケイ素アルコキシドの加水分解を促進し、かつ
重縮合を抑えるため、水には予め酸を加えて酸性水溶液にしておく。酸としては、例えば
、硝酸、塩酸、硫酸、カルボン酸、又はフッ酸が使用できる。
【0019】
混合工程1による部分加水分解反応が十分終わった後、さらに塩基性水溶液、又は弱酸の
塩を含む水溶液を添加する(以下「混合工程2」という)ことによって反応溶液を中和し
、部分加水分解された4官能ケイ素アルコキシドの重縮合を促し、シリカヒドロゲルを得
る。4官能ケイ素アルコキシドを完全加水分解せぬまま重縮合させるため、このとき加え
る水には塩基又は弱酸の塩を添加して塩基性水溶液、又は弱酸の塩を含む水溶液としてお
き、反応溶液を中和することが重要である。塩基としては、例えば、アンモニア、アミン
、アルカリ水酸化物、又はアルカリ土類金属水酸化物を用いることができ、また、弱酸の
塩としては、例えば、カルボン酸、炭酸水素酸、リン酸、又はホウ酸のアンモニウム塩又
はアルカリ金属塩を用いることができるが、再現性良く中和を行うためには、弱酸の塩の
添加によってpH緩衝系を構成することが好ましい。
【0020】
4官能ケイ素アルコキシドの加水分解速度は、反応溶液の水素イオン又は水酸化物イオン
の濃度に比例する。すなわち、加水分解速度は、pHが7から1変化するごとに約10倍
ずつ増大する。したがって加水分解速度の点からは1~3程度の強酸性が好ましいが、酸
自体は製品中では不要になること、また混合工程2で中和させることを考慮すれば、3~
7程度が好ましい。
【0021】
混合工程2の後の反応溶液はpH5~9であり、中性及びその近辺であるため、混合工程
1で反応しなかったアルコキシ基の加水分解は遅い。一方で、pHがケイ酸の等電点(p
H約6)とほぼ等しくなるため、シリカ高分子間の静電反発が最小となる結果、重縮合速
度が最大となる。この結果、部分加水分解された4官能ケイ素アルコキシドは未反応のア
ルコキシ基を表面に残したまま、すなわち4官能ケイ素アルコキシドを完全加水分解せぬ
まま重縮合し、表面が疎水化したシリカ高分子となる。一方で、該シリカ高分子は水、ア
ルコール希釈の4官能ケイ素アルコキシドを用いた場合は予め添加したアルコール、及
び4官能ケイ素アルコキシドの加水分解によって生成したアルコールからなる親水性の溶
媒に溶解しているため、表面が疎水化したシリカ高分子は次第に溶媒と相分離しはじめ、
表面が疎水化したシリカ高分子の構造がヒドロゲル化によって凍結される。
【0022】
混合工程2によってゲル化したヒドロゲルは、ゲル化後も内部で加水分解及び重縮合反応
が続いているので、熟成してこれらの反応を完了させることが好ましい。一般に、熟成よ
ってヒドロゲルの機械的強度は増大し、乾燥及び焼成によって割れにくくすることができ
る。熟成温度に特に規定はないが、一般に温度が高い方が、加水分解及び重縮合反応を早
く終わらせることができるので好ましい。熟成温度の上限は、大気圧下では溶媒の沸点近
く(約60~90℃)であるが、耐圧容器を使用することで、これより高温で熟成を行う
こともできる。
【0023】
熟成を終えたシリカヒドロゲルを乾燥させると乾燥シリカゲルが得られる。シリカヒドロ
ゲルを乾燥させて乾燥シリカゲルを得ること自体は公知であり、乾燥温度及び乾燥条件に
も特に規定はないが、例えば、溶媒の蒸発速度が大きくなる温度(約60~90℃)で、
容器の開口部を小さくして徐々に乾燥させると、溶媒を比較的高速に蒸発させつつ、一方
でシリカヒドロゲルを均一に収縮させて亀裂の発生を抑えることができる。この他にも、
超臨界乾燥によって収縮を最小限に抑えて乾燥させてシリカエアロゲルを作製することも
できるが、シリカヒドロゲルの細孔径が大きいため、細孔径の小さいシリカヒドロゲルに
比べて、液化二酸化炭素などの超臨界乾燥用の溶媒を含浸させやすいという利点もある。
【0024】
加水分解されずにシリカ高分子表面に残されるアルコキシ基の数は、混合工程1で加える
水の量が少なくなるほど多くなり、また混合工程2の相分離速度は、シリカ高分子表面に
残される未反応のアルコキシ基が多いほど早くなる。また、アルコキシ基は、アルキル鎖
長が長くなるほど加水分解されにくくなり、かつ疎水性がより強くなる。さらに、反応温
度が高くなるほど、加水分解速度及び重縮合速度は速くなり、一方で相分離速度は小さく
なる。すなわち、より低温で反応を行い、よりアルキル鎖長の長い4官能ケイ素アルコキ
シド及びアルコールを使用し、また混合工程1で加える水の量を少なくすることによって
、シリカヒドロゲル相表面の疎水性を増すことができ、その結果、溶媒相との相分離が起
こりやすくなるため、細孔径を大きくすることができ、平均直径で10nm以上~10μ
m程度、最大で100μm程度まで大きくすることもできる。
【0025】
なお、反応温度に特に規定はないが、室温で反応を最適化できれば、特別な加熱及び冷却
装置が不要になるのでより好ましい。このように、シリカヒドロゲル相と溶媒相との相分
離を起こさせ、その相分離の起こりやすさを制御することで、平均直径10nm以上の細
孔を有するシリカヒドロゲルを形成することができる。また、最終的な組成が同じ溶液で
も混合工程1、混合工程2の条件により細孔径と細孔体積など細孔構造が異なる乾燥シリ
カゲルを得ることができる。
【0026】
また、細孔部分の容積は溶媒量に比例するため、4官能ケイ素アルコキシドに対する水と
アルコールの添加量を増やすことによって、溶媒相の容積が増大し、その部分が最終的に
細孔となるため、細孔容積を大きくすることができる。このように大きな細孔径をもった
多孔質シリカヒドロゲルは、亀裂を発生させずに迅速に乾燥することができ、かつ乾燥シ
リカゲルに発泡及び亀裂を発生させずに迅速に焼結してシリカガラスとすることができる
。一方で、焼結してシリカガラスとせずに、乾燥シリカゲルの細孔をそのまま利用するこ
とで、触媒担体やエアロゲル、断熱材、液相クロマトグラフィーのカラム材料などへ応用
が期待できる。
【0027】
また、反応前の4官能ケイ素アルコキシド溶液、混合工程1で添加する水溶液、混合工程
2で添加する水溶液のいずれかに、予め金属元素の化合物を溶解させておくことによって
、該金属元素のドープされたシリカゲルを作製することができる。金属元素は、Nd,E
r,Eu、Ybなどの希土類元素、Mn,Cr,Tiなどの遷移金属元素及びP,B,A
lなどである。希土類元素及び遷移金属元素を含むシリカガラスはレーザー、光増幅器媒
体、蛍光体、光磁気光学材料など光・磁気機能材料として使用することができる。また、
希土類元素及び遷移金属元素は、単独ではシリカガラスへ溶解しにくいことが多いが、P
,B及びAlの少なくとも1種を共添加することで、該希土類元素及び遷移金属元素のシ
リカガラスへのドープ量を増加させることができる。金属元素の化合物としては、例えば
、金属塩化物、金属硝酸塩、金属カルボン酸塩、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属酸化物
、金属アルコキシド、有機金属錯体が使用できる。
【0028】
上記の方法で得られる多孔質シリカゲルを焼結することによりシリカガラスを製造するこ
とができる。多孔質シリカゲルを焼結してシリカガラスを製造すること自体は公知であり
、例えば、空気中で多孔質シリカゲルの空隙を閉気孔化しない程度の500~900℃程
度で焼成して有機成分と水分とを除き、その後ヘリウムガス中で1000~1500℃程
度まで昇温して焼結を行い、シリカガラスとする。
【実施例1】
【0029】
テトラエトキシシラン5.21gに、硝酸0.0032gを含む水0.81+x g(x=0)、水0.81+xg
(x=0.04)、水0.81+xg(x=0.09)からなる3種類の酸性水溶液をそれぞれ添加し
て酸性下で25℃で1時間攪拌し部分加水分解させ、均一透明な3種の反応溶液A,B,C
を得た。さらに、最終的な組成が同じ溶液となるように水の量を調整した弱酸の塩を含む
水溶液として、酢酸アンモニウム0.0385gを溶解させた水3.69-xg(x=0)、水3.69-x
g(x=0.04)、水3.69-xg(x=0.09)からなる3種類の水溶液を反応溶液A,B,
Cにそれぞれ添加して1分間攪拌し該反応溶液を中和した後、密封して25℃で保持したと
ころ反応溶液A,B,Cは約10分で白濁しながら固化した。
【0030】
固化した試料を密封したまま60℃で12時間熟成させた。開封してヒドロゲルから浸み出た
溶媒を捨てた後、容器をアルミ箔で覆い、80℃で2日間乾燥させたところ、亀裂のない白
色の乾燥シリカゲルが得られた。電子顕微鏡観察によって、混合工程1で水0.81g(x=0
)を添加したときの反応溶液Aから得られた乾燥シリカゲルの平均細孔径は約1μmと見
積もられた。平均細孔径は混合工程1の水の添加量である0.81+xgのxが増大するにつ
れて小さくなり、x=0.04(反応溶液B)、x=0.09(反応溶液C)のときの平均細孔径は
それぞれ約200nm、20nmであった。この実施例から、最終的な組成が同じ溶液でも混合工
程1、混合工程2の条件により細孔径と細孔体積など細孔構造が異なる乾燥シリカゲルが
得られることが分かる。
【実施例2】
【0031】
テトラメトキシシラン3.80gに、硝酸0.0003gを含む水0.41gを添加して酸性下で5℃で30分
間攪拌し部分加水分解させ、均一透明な反応溶液を得た。さらに、弱酸の塩として酢酸ア
ンモニウム0.0385gを溶解させた水4.10gを添加して1分間攪拌し反応溶液を中和した後、
密封して5℃で保持したところ約10分で白濁しながら固化した。
【0032】
固化した試料を密封したまま60℃で12時間熟成させた。開封してヒドロゲルから浸み出た
溶媒を捨てた後、容器をアルミ箔で覆い、80℃で2日間乾燥させたところ、亀裂のない白
色の乾燥シリカゲルが得られた。電子顕微鏡観察によって、平均細孔径は約50nmと見積も
られた。
【実施例3】
【0033】
テトラメトキシシラン3.80gにn-プロピルアルコール1.50gを添加し、更に、硝酸0.0032g
を含む水0.63gを添加して酸性下で25℃で30分間攪拌し部分加水分解させ、均一透明な反
応溶液を得た。さらに、弱酸の塩として酢酸アンモニウム0.0385gを溶解させた水3.87gを
添加して1分間攪拌し反応溶液を中和した後、密封して25℃で保持したところ約10分で白
濁しながら固化した。
【0034】
固化した試料を密封したまま60℃で12時間熟成させた。開封してヒドロゲルから浸み出た
溶媒を捨てた後、容器をアルミ箔で覆い、80℃で2日間乾燥させたところ、亀裂のない白
色の乾燥シリカゲルが得られた。電子顕微鏡観察によって平均細孔径は約5μmと見積もら
れた。
【実施例4】
【0035】
テトラエトキシシラン5.21gに、硝酸0.0032gを含む水0.88 gを添加して酸性下で25℃で1
時間攪拌し部分加水分解させ、均一透明な反応溶液を得た。さらに、弱酸の塩として酢酸
アンモニウム0.0385gを溶解させた水3.63 gを添加して1分間攪拌し反応溶液を中和した後
、密封して25℃で保持したところ約10分で白濁しながら固化した。
【0036】
固化した試料を密封したまま60℃で12時間熟成させた。開封してヒドロゲルから浸み出た
溶媒を捨てた後、容器をアルミ箔で覆い、80℃で2日間乾燥させたところ、亀裂のない、
電子顕微鏡観察によって平均細孔径約50nmの白色の多孔質乾燥シリカゲルが得られた。
【0037】
該乾燥シリカゲルを大気中で毎時200℃の昇温速度で600℃まで加熱して残留有機成分を除
去した。続いて、雰囲気をヘリウムガスに置換し、毎時200℃の昇温速度で1200℃まで加
熱した後1200℃で1時間保持して焼結したところ、亀裂及び気泡を含まないシリカガラス
が得られた。
【実施例5】
【0038】
テトラエトキシシラン5.21gに、硝酸0.0032gを含む水0.88 gを添加して酸性下で25℃で1
時間攪拌し部分加水分解させ、均一透明な反応溶液を得た。さらに、ドープするリンの原
料を兼ねた弱酸の塩としてリン酸水素ニアンモニウム((NH4)2HPO4)0.0109g及びリン酸ニ
水素アンモニウム(NHPO)0.0190gを溶解させた水3.63 gを添加して1分間攪
拌し反応溶液を中和した後、密封して25℃で保持したところ約10分で白濁しながら固化し
た。
【0039】
固化した試料を密封したまま60℃で12時間熟成させた。開封してヒドロゲルから浸み出た
溶媒を捨てた後、容器をアルミ箔で覆い、80℃で2日間乾燥させたところ、亀裂のない、
電子顕微鏡観察によって平均細孔径50nmの白色の多孔質乾燥シリカゲルが得られた。
【0040】
該シリカゲルを大気中で毎時200℃の昇温速度で600℃まで加熱して残留有機成分を除去し
た。続いて、雰囲気をヘリウムガスに置換し、毎時200℃の昇温速度で1200℃まで加熱し
た後1200℃で1時間保持して焼結したところ、ドープしたリンを1mol%含み、かつ亀裂及び
気泡を含まないシリカガラスが得られた。
【実施例6】
【0041】
テトラエトキシシラン5.21gに、硝酸0.0032gを含む水0.88 gを添加して酸性下で25℃で1
時間攪拌し部分加水分解させ、均一透明な反応溶液を得た。この溶液に、弱酸の塩として
酢酸アンモニウム0.0385gとシリカガラスにドープするユーロピウムの原料として塩化ユ
ーロピウム(III) 0.0065gを溶解させた水3.63 gを添加して1分間攪拌し反応溶液を中和
した後、密封して25℃で保持したところ約10分で白濁しながら固化した。
【0042】
固化した試料を密封したまま60℃で12時間熟成させた。開封してヒドロゲルから浸み出た
溶媒を捨てた後、容器をアルミ箔で覆い、80℃で2日間乾燥させたところ、亀裂のない、
電子顕微鏡観察によって平均細孔径50nmの白色の多孔質乾燥シリカゲルが得られた。
【0043】
該シリカゲルを大気中で毎時200℃の昇温速度で600℃まで加熱して残留有機成分を除去し
た。続いて、雰囲気をヘリウムガスに置換し、毎時200℃の昇温速度で1200℃まで加熱し
た後1200℃で1時間保持して焼結したところ、ドープしたユーロピウムを0.1mol%含み、か
つ亀裂及び気泡を含まないシリカガラスが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
多孔質シリカゲルは触媒担体やエアロゲル、断熱材、液相クロマトグラフィーのカラム材
料などへ、シリカガラスは各種金属イオンのホストとして蛍光材料、レーザー材料、光磁
気光学材料など、光・磁気機能材料への応用が期待される。本発明は、これらの用途に適
する多孔質シリカゲル及びシリカガラスを製造するための新規な方法として有用である。