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明細書 :発光素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4928321号 (P4928321)
公開番号 特開2008-243915 (P2008-243915A)
登録日 平成24年2月17日(2012.2.17)
発行日 平成24年5月9日(2012.5.9)
公開日 平成20年10月9日(2008.10.9)
発明の名称または考案の名称 発光素子
国際特許分類 H01S   3/05        (2006.01)
H01S   5/10        (2006.01)
FI H01S 3/05
H01S 5/10
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願2007-078817 (P2007-078817)
出願日 平成19年3月26日(2007.3.26)
審査請求日 平成21年12月21日(2009.12.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】山口 真
【氏名】浅野 卓
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
審査官 【審査官】傍島 正朗
参考文献・文献 特表2008-513988(JP,A)
特開2008-135591(JP,A)
特開2001-267682(JP,A)
特表2004-529387(JP,A)
特開2003-298153(JP,A)
特開2004-006567(JP,A)
国際公開第06/095648(WO,A1)
国際公開第06/103850(WO,A1)
特開平03-291985(JP,A)
山口 真 M Yamaguchi,2次元フォトニック結晶ナノ共振器を用いた発光制御についての考察,応用物理学関係連合講演会講演予稿集2007春3 Extended Abstracts (The 54th Spring Meeting, 2007);The Japan Society of Applied Physics and Related Societies No.3,(社)応用物理学会
調査した分野 H01S 3/00 - 5/50
Science Direct
IEEE Xplore
CiNii
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
微小光共振器に発光体を導入して成る発光素子において、
前記微小光共振器の光子寿命の2π倍とラビ振動周期の半周期とが一致するように設定されていることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
微小光共振器の共振周波数をωcav、微小光共振器と発光体の結合定数をgkとすると、微小光共振器のQ値が次の式
Q=ωcav/4gk
(但し、結合定数は、電子系位置の電界をEcav(r)、共振モード電界の最大値をEcav,max、共振モードの有効モード体積をVeff、電子系がもつ電気双極子モーメントをd21、発光体周囲の屈折率をn、発光体位置における偏光の単位ベクトルをecavとすると前記結合定数gkは次の式
【数1】
JP0004928321B2_000015t.gif
で求められる。)
を満たすように設計されることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
微小共振器の共振周波数をωcav、微小光共振器と発光体の結合定数をgk、発光体から微小光共振器以外に漏れるエネルギーの割合のうち非発光エネルギーの割合を2Γres、自然放出エネルギーの割合を2Γsponとすると、微小光共振器のQ値が次の式
【数2】
JP0004928321B2_000016t.gif
(但し、電子系位置の電界をEcav(r)、共振モード電界の最大値をEcav,max、共振モードの有効モード体積をVeff、電子系がもつ電気双極子モーメントをd21、発光体周囲の屈折率をn、発光体位置における偏光の単位ベクトルをecavとすると前記結合定数gkは次の式
【数1】
JP0004928321B2_000017t.gif
で求められる。)
を満たすように設計されることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記微小光共振器が、スラブ状の母材に該母材とは屈折率の異なる異屈折率領域を周期的に設けて成るフォトニック結晶の前記異屈折率領域の周期的配列を点状に欠陥させることにより構成されたフォトニック結晶共振器であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
前記発光体が量子ドットであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の発光素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、単一光子光源に利用可能な発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
微小光共振器に発光体を導入すると発光遷移割合(発光速度)が増大することから(Purcell効果)、高性能な発光素子の実現が期待されている(例えば特許文献1参照)。
次の式は、Purcell効果による発光遷移割合WsponとQ値との関係を表す式である。
【数3】
JP0004928321B2_000002t.gif
(但し、ω21cav=0)
ここで、gkは光共振器と発光体の結合定数、ωcavは光共振器の共振振動数、ω21は2準位電子系の振動数を示す。
また、光共振器と発光体の結合定数gkは次の式で表される。
【数4】
JP0004928321B2_000003t.gif
尚、Ecav(r)は光共振器中の電子系位置における電界、Ecav,maxは共振モード電界の最大値、ecavは電子系位置における偏光の単位ベクトル、nは電子系周囲の屈折率、d21は電子系が有する電気双極子モーメント、Veffは共振モードの有効モード体積を示す。
従って、式(1)及び式(2)から発光遷移割合Wsponは次の式(3)で表される。
【数5】
JP0004928321B2_000004t.gif
式(3)より、発光遷移割合はQ/Veffに比例することが分かる。つまり、光共振器のQ値を大きくするほど、また、Veffを小さくするほど、発光体は発光しやすくなる。

【特許文献1】特開2001-267682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
Purcell効果は共振器モードと発光体の結合の強さが弱い弱結合領域でのみ成り立つ。また、共振器モードと発光体の結合が強い強結合領域ではラビ(Rabi)振動が生じることが期待される。従って、弱結合領域や強結合領域における発光遷移割合は摂動近似から予想できるが、中間領域では摂動近似が破綻する。
本発明が解決しようとする課題は、微小光共振器と発光体の結合の強さに関係なく、微小光共振器に発光体を導入したときの発光遷移割合を最大化することができる発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために成された本発明は、微小光共振器に発光体を導入して成る発光素子であって、前記微小光共振器の光子寿命の2π倍とラビ振動周期の半周期とが一致するように設定したことを特徴とする。
微小光共振器としては、スラブ状の母材に該母材とは屈折率の異なる異屈折率領域を周期的に設けて成るフォトニック結晶の前記異屈折率領域の周期的配列を点状に欠陥させることにより構成されたフォトニック結晶共振器を用いることができる。また、発光体としては、量子ドットを用いることができる。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、微小光共振器に発光体を導入したことにより発光遷移割合が増大する効果を最大限に引き出すことが出来る。これにより、高効率光源、単一光子光源などの発光効率を最大化することができる。また、電子注入から光子放出までのタイミングジッターを最小化することができ、量子暗号通信や量子演算に利用する上で優れた単一光子光源を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明者は、光共振器と発光体との結合が弱い弱結合領域及び結合が強い強結合領域における発光は摂動近似を用いて求めることができるのに対して、中間結合領域では摂動近似が破綻することから、摂動近似を用いず、環境系も含めてシュレディンガー方程式を解くことで、発光遷移割合及び発光の振動周波数を解析的に求め、この解析結果に基づき発光遷移割合を最大化するための条件を得た。
【0007】
具体的には、図1に示す物理モデルから発光遷移割合及び振動周波数を解析的に求めた。この物理モデルでは、光共振器に2準位電子系を導入し、そのときの共振モードエネルギー、自由空間中の光子エネルギー(共振器から漏れる光子エネルギー)、光共振器以外に漏れるエネルギーを考えたものである。
発光遷移割合を求める式を次に示す。
【数6】
JP0004928321B2_000005t.gif
また、振動周波数を求める式を次に示す。
【数7】
JP0004928321B2_000006t.gif
ここで、電子系位置の電界をEcav(r)、共振モード電界の最大値をEcav,max、共振モードの有効モード体積をVeff、電子系がもつ電気双極子モーメントをd21、発光体周囲の屈折率をn、電子系位置における偏光の単位ベクトルをecavとすると結合定数gkは次の式から求められる。
【数8】
JP0004928321B2_000007t.gif

【0008】
図2は、δω21,cav≡ω21-ωcav=0、かつΓspon+Γres<2gkのときの、光共振器のQ値に対する発光遷移割合(実線)及び発光の振動周波数(一点鎖線)の解析結果を示している。尚、参考として、摂動論のPurcell効果から予想される発光遷移割合を波線で示す。
【0009】
Q値の増大に伴い、発光遷移割合は(Γspon+Γres)に漸近し、発光の振動周波数は{4gk2-(Γspon+Γres21/2 に漸近する。そして、図2に示すように、Q値が小さい極限の弱結合領域ではPurcell効果が、Q値が大きい極限の強結合領域ではラビ振動が生じ、摂動近似と同一の結論が得られた。一方、中間領域では、発光遷移割合に極値(最大値:図2中、矢印で示す)が存在することが分かった。発光遷移割合が最大となるときの共振器のQ0値は次の式で表される。
【数9】
JP0004928321B2_000008t.gif
また、発光遷移割合の最大値ΓMは次の式で表される。
【数10】
JP0004928321B2_000009t.gif
従って、Q値が上記式(4)を満たすように光共振器を設計することにより、発光遷移割合を最大化することができる。
【0010】
特に、共振器以外に漏れるエネルギー(2Γspon+2Γres)を0とすると、共振器のQ値は次の式で表される。
【数11】
JP0004928321B2_000010t.gif
ラビ振動の振動数Ωrab及び1周期Trabiと結合定数gとの間には次の関係がある。
【数12】
JP0004928321B2_000011t.gif
また、共振器の光子寿命をτphと共振器のQ値及び振動数ωcavとの間には次の関係がある。
【数13】
JP0004928321B2_000012t.gif
式(6)~(8)より、共振器の光子寿命τphとラビ振動の1周期Trabiとの間には次の関係式が成り立つ。
【数14】
JP0004928321B2_000013t.gif
つまり、ラビ振動の半周期が光共振器の光子寿命の2π倍と一致するように光共振器を設定すれば、発光遷移割合を最大化することができる。
【実施例】
【0011】
図3は、2次元フォトニック結晶共振器に発光体としての量子ドットを導入したときの解析結果を示す。2次元フォトニック結晶共振器は、三角格子状に周期的に配置された多数の異屈折率領域を有する2次元フォトニック結晶に、3個の異屈折率領域を欠損させることにより点状欠陥を形成したものであり、前記点状欠陥に量子ドットを導入した。
2次元フォトニック結晶共振器及び量子ドットについての各条件は次のように設定した。
フォトニック結晶の母材の屈折率:n=3.4
自然放出割合:2Γspon=1/17.0[1/nsec]
非発光割合:2Γres=0.0[1/nsec]
量子ドットの電気双極子モーメント:
【数15】
JP0004928321B2_000014t.gif
共振モードの有効モード体積:Veff=0.67(λ/n)3
2準位のエネルギー差:ω21=1.64×1015[rad/sec]
上記条件のときの結合定数gは、1.99×10[1/nsec]であり、発光遷移割合が最大値となるQ値はQ=2060であった。
尚、本発明は、2次元フォトニック結晶共振器以外の例えばマイクロピラー、マイクロディスク等の微小光共振器に発光体を導入して成る発光素子に適用可能である。また、発光体としては、量子ドット以外に量子井戸、色素分子、ランタン系原子等がある。

【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の発光素子の物理モデルを示す図
【図2】発光遷移割合及び発光の振動周波数と共振器のQ値の関係を示す解析結果
【図3】2次元フォトニック結晶の点状欠陥に量子ドットを導入したときの発光遷移割合及び発光の振動周波数と共振器のQ値の関係を示す解析結果
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2