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明細書 :植物資源相分離系変換装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5167554号 (P5167554)
公開番号 特開2008-266266 (P2008-266266A)
登録日 平成25年1月11日(2013.1.11)
発行日 平成25年3月21日(2013.3.21)
公開日 平成20年11月6日(2008.11.6)
発明の名称または考案の名称 植物資源相分離系変換装置
国際特許分類 C07G   1/00        (2011.01)
C08H   7/00        (2011.01)
FI C07G 1/00
C08H 7/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2007-114874 (P2007-114874)
出願日 平成19年4月24日(2007.4.24)
審査請求日 平成22年4月14日(2010.4.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】390006264
【氏名又は名称】関西化学機械製作株式会社
発明者または考案者 【氏名】舩岡 正光
【氏名】野田 秀夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査官 【審査官】戸来 幸男
参考文献・文献 特開2004-115736(JP,A)
特開2004-137347(JP,A)
特開平9-271649(JP,A)
化学工学会年会研究発表講演要旨集,2007年 2月,vol.72,p.795
調査した分野 C07G 1/00
C08H 7/00
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
植物資源をリグニンの相と炭水化物の相とに変換して分離する装置であって、
原料前処理部と、濃酸処理部と、回収部とを備え、
上記原料前処理部は、原料の撹拌乾燥釜を含み、該撹拌乾燥釜はフェノール類及び溶媒の導入口を備えており、上記原料を脱脂し、該脱脂原料をフェノール収着木紛とし、
上記濃酸処理部は、上記フェノール収着木紛と濃酸を混合する撹拌タンクと、該撹拌タンクに接続される振動反応器と、上記フェノール収着木紛と濃酸との反応により生成したリグニン層と濃酸層を液液分離する分離抽出器と、を含んで構成され、
リグニン層と濃酸層を分離する上記分離抽出器は、上部に配設された軽液排出口と、中間部に配設されたフェノール収着木粉の原料供給口と、下部に配設されたフェノール類の供給口と、最下部に配設された重液排出口とを備えるフローミキサーで成り、
上記回収部は晶析器又は混合器を含ことを特徴とする、植物資源相分離系変換装置。
【請求項2】
前記回収部は、遠心分離器と、該遠心分離器に接続する液液分離する混合器と、該混合器に接続される蒸発缶と、該蒸発缶に接続される凝縮器とを含み、
前記リグニン層中のリグノフェノールが前記分離抽出器で回収され、上記リグニン層中のフェノールが上記蒸発缶から回収され、上記凝縮器からは溶媒が回収されることを特徴とする、請求項1記載の植物資源相分離系変換装置。
【請求項3】
前記振動反応器は、筒状部と、該筒状部に挿入される超音波振動子と、該筒状部の外周部に冷却部とを備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の植物資源相分離系変換装置。
【請求項4】
前記原料前処理部は、前記フェノール類と溶媒とを回収する蒸発缶と凝縮器とを備えており、前記フェノール類と溶媒との反応液及び前記溶媒を回収することを特徴とする、請求項1又は2に記載の植物資源相分離系変換装置。
【請求項5】
前記回収部の晶析器は、超音波振動子又は高速撹拌機を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の植物資源相分離系変換装置。
【請求項6】
前記回収部の混合器は、超音波振動子又は高速撹拌機を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の植物資源相分離系変換装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、植物体の構成成分を分離及び変換する装置に係り、特に、細胞壁構成成分であるリグニン及び炭水化物を利用可能な誘導体に変換し、さらに、完全に分離する植物資源相分離系変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、中国、インドなどの石油の需要増加、及びヘッジファンドなどによる投資対象のため、石油価格の高騰が続いている。また、地球温暖化防止に関して京都議定書に定められた二酸化炭素削減目標を達成するために、温室効果ガスの増加を抑制する循環型社会の形成やバイオマス資源の利活用を促進する必要があるとされている。
【0003】
再生可能なバイオマス資源は、石油や石炭などと異なり、大気中の二酸化炭素を炭素源とし、燃焼廃棄しても大気中の二酸化濃度の増加は防げることからバイオマス資源の活用が望まれている。その中でも植物由来のリグノセルロース資源は再生可能な材料として再注目され、バイオマス発電やガス化などの熱化学的変換や発酵によるエタノールの生産など、エネルギーとしての利用に関する研究が多くなされている。しかし、リグノセルロース資源は、エネルギーとして利用するのみでは、植物資源の再生能力を越えてしまい植物資源の枯渇の可能性が生じる。
【0004】
植物資源を石油の代替工業原料として有効に利用するためには、石油から様々な有機化学製品が導かれるのと同様、生活に必要な製品の原料を植物資源から誘導することが重要である。植物資源を分子素材として完全活用するためには、分子レベルで高度に複合化された植物体の各構成成分をそれぞれの機能を活かした状態で効率よく分離することが重要である。
【0005】
このように、各種資源の枯渇のために、近時、化学工業原料として再生可能なバイオマスの関心が高まっている。しかしながら、リグノセルロース系物質、例えば、木材は、構造及び性質の全く異なる炭水化物及びリグニンの複合体であり、構成成分の完全な有効利用を達成するためには、先ず木材をその構成成分へと分解することが必要となる。この観点から、近年、成分分離手法として、オルガノソルプ法やソルボリシス法、あるいは前処理方法として、爆砕法、オートハイドロリシス法などが提案されている。しかし、これらの方法による成分分離は、高エネルギーを必要とし、しかも分離は完全には進行しない。これは、細胞壁中で、炭水化物及びリグニンが複雑に絡み合っていることによる。さらに、高エネルギー付加時にリグニンが大きく変質し、その後の利用が困難となる。
したがって、リグニンの特性を破壊することなく完全な成分分離を達成するためには、構成素材個々に最適環境を設定し、低エネルギー条件下で両者のからまりを解くことが必要である。
【0006】
木材の組織構造を分子レベルで破壊する一つの方法は、硫酸による処理である。例えば濃硫酸処理によってセルロースは膨潤し、さらに部分的な加水分解および溶解が生じ、結果として細胞壁構造は破壊される。濃硫酸による木材の加水分解手法は、すでに技術的にはほぼ確立されており、さらに本法は成分分離という意味において、完璧かつ安価な方法である。しかし、木材の完全利用を目指した成分分離手法として、酸加水分解法は、縮合によるリグニンの不活性化という重大な欠点を有する。この種の高縮合リグニンは分子が剛直であるため、通常、構造修飾による活性化あるいはその解重合は困難であり、これが酸加水分解を核とする木材工業がこれまで成立しなかった一つの理由である。
【0007】
濃酸処理過程におけるリグニンの不活性化は、反応糸にリグニンに対する楳体がないことに基づく。
【0008】
植物体の主たる構成成分である細胞壁構成成分、すなわち、リグニンとセルロースやヘミセルロースなどとの複合系含有材料(以下、リグノセルロース系材料という。)を、フェノール誘導体と酸とを用いて分離・誘導体化する技術がある(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0009】
フェノール誘導体、例えば、クレゾールはリグニンの良溶媒であり、しかもその反応性はリグニン芳香核のそれに類似している。さらにクレゾールは濃酸と混合しない。木紛をまずクレゾールで処理し、木紛内部にクレゾールを十分浸透させる。その後、浪合物を室温で激しく撹拌しながら、濃酸を加える。濃酸は炭水化物との親和性が高く、セル口ースは速やかに膨潤し、これによって組織構造が破壊される。
【0010】
他方、クレゾールはリグニンとの親和性が高く、反応系において常にリグニンと共存する。言い換えれば、リグニンは濃酸と混合しないクレゾールによって取り囲まれており、これによって、酸とリグニンの接触は可及的に抑制される。また、処理過程でリグニンは部分的に解重合されるが、その際生成したカルボニウムイオンはクレゾールにより速やかに安定化され、リグニンの自己縮合は抑圧される。処理後、撹拌を停止することにより、反応混合物は速やかにクレゾール層と水層に分離する。リグニンはクレゾール層に含まれており、また炭水化物は水層に存在する。クレゾールを留去することにより、MWL(Milled Wood Lignin)よりも明色で活性なリグニンが得られる。他方、酸溶液中には炭水化物がグルコースポリマー、オリゴ糖、単糖として含有されている。
【0011】
このような技術においては、リグニンと炭水化物を完全分離するために、相分離系変換という手法を用いている。すなわち、予め、リグノセルロース系材料をフェノール化合物で溶媒和させておいた上で、リグノセルロース系材料を酸と接触させることにより、リグニンにフェノール化合物を選択的にグラフトさせると同時にセルロースを膨潤、加水分解により溶解させ、両者を分離するというものである。また、これらの方法において、分離効率を改善する技術もある(特許文献3)。
【0012】
さらに、特許文献2には、リグノフェノールを成形体の成分として用い、しかも、成形体として使用が済んだ場合においても、リグノフェノールが有機溶媒に可溶であることから、再度有機溶媒で回収して再利用できることが開示されている。
【0013】

【特許文献1】特開平2-233701号公報
【特許文献2】特開平9-278904号公報
【特許文献3】特開2001-131201号公報
【特許文献4】特許第3129395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
リグニン含有材料から上記した相分離系変換を伴う構造変換によりリグニン誘導体を得ようとする場合、リグニン誘導体の収率、分子量、フェノール化合物の導入率等をある程度制御できることが望まれる。特に、リグニン誘導体と糖質を工業的に得ようとする場合は、効率的な反応をさせるための連続処理が可能な植物資源相分離系変換装置が必要となる。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑み、リグノセルロース系材料を、リグニン誘導体と糖質に変換し、分離するに際して、植物資源から連続してリグニン誘導体と加水分解された糖質とを効率よく製造し得る植物資源相分離系変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は鋭意研究を重ねたところ、リグノセルロース系材料をセルロースとリグニン誘導体とに分離するにあたり、分離変換に必要とされるファクターを検討し、リグニンに親和性の高い媒体であるフェノール誘導体との親和工程、リグニン-セルロース複合体からの成分分離媒体であり反応媒体でもある酸性媒体との接触工程に着目し、超音波などの物理的エネルギーの付加について検討したところ、超音波照射、効率の良い液液分離抽出器を併用することにより、リグノセルロース複合体の脱複合を促進できることを見出し、本発明に至った。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は、植物資源をリグニンの相と炭水化物の相の区分に相分離系にて変換し、分離する植物資源相分離系変換装置であって、原料前処理部と濃酸処理部と回収部とを備え、原料前処理部は原料の撹拌乾燥釜を含み、撹拌乾燥釜はフェノール類及び溶媒の導入口を備えており、原料を脱脂し、脱脂原料をフェノール収着木紛とし、濃酸処理部は、フェノール収着木紛と濃酸を混合する撹拌タンクと、撹拌タンクに接続される振動反応器と、フェノール収着木紛と濃酸との反応により生成したリグニン層と濃酸層を液液分離する分離抽出器と、を含んで構成され、リグニン層と濃酸層を分離する分離抽出器は、上部に配設された軽液排出口と、中間部に配設されたフェノール収着木粉の原料供給口と、下部に配設されたフェノール類の供給口と、最下部に配設された重液排出口とを備えるフローミキサーで成り、回収部は晶析器又は混合器を含ことを特徴とする。
上記構成によれば、植物資源である木材などの原料から再使用できるリグノフェノールを連続的に得ることができる。
【0018】
回収部は、遠心分離器と、遠心分離器に接続する液液分離する混合器と、混合器に接続される蒸発缶と、蒸発缶に接続される凝縮器とを含み、リグニン層中のリグノフェノールが分離抽出器で回収され、リグニン層中のフェノールが蒸発缶から回収され、凝縮器からは溶媒が回収されることを特徴とする。
上記構成によれば、回収部は、遠心分離器と、遠心分離器に接続する液液分離する混合器と、を備えているので、さらに、効率良くリグノフェノールを連続的に得ることができる。

【0019】
上記構成において、振動反応器は、好ましくは、筒状部と筒状部に挿入される超音波振動子と筒状部の外周部に冷却部とを備えている。振動反応器が冷却されることで、相分離系を維持し、リグニン及び炭水化物の変換を効果的に進行させることができる。
【0020】
濃酸処理部の分離抽出器は、好ましくは、フェノール類が導入される導入口を備えている。これにより、分離抽出器にフェノール類が導入されるので、リグノフェノールを効果的に濃酸と分離することができる。
【0021】
原料前処理部は、好ましくは、フェノール類と溶媒とを回収する蒸発缶と凝縮器とを備えており、フェノール類と溶媒との反応液及び溶媒を回収する。この構成により、リグノフェノールの抽出に用いるフェノール類と溶媒とを効率良く回収して、再利用することができる。
【0022】
回収部の晶析器は、好ましくは、超音波振動子又は高速撹拌機を備えている。回収部の混合器は、好ましくは、超音波振動子又は高速撹拌機を備えている。これらを備えることで、フェノール類に含まれているリグノフェノールを効率良く回収することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、植物資源であるリグノセルロース系材料から、有用なリグノフェノールなどのリグニン誘導体を連続的に抽出して糖を分離することができる、植物資源相分離系変換装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
最初に、本発明の第1の実施形態に係る植物資源相分離系変換装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る植物資源相分離系変換装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、植物資源相分離系変換装置1は、原料前処理部2と、原料前処理部2から供給される前処理された原料を濃酸処理する濃酸処理部3と、この濃酸処理部で分離されたリグノフェノールを回収する回収部4と、から構成されている。
【0025】
原料前処理部2は、攪拌乾燥釜10を含んで構成される。攪拌乾燥釜10の上部には、木材供給フィーダー11と、薬剤供給部12と、薬剤回収部17が接続されている。薬剤供給部12は、フェノール誘導体13や溶媒14を供給するための導入口を有している。
ここで、溶媒14としては、アセトンやアルコールを用いることができる。フェノール誘導体13としては、1価のフェノール、2価のフェノール、3価のフェノール等を用いることができる。木材に含まれるリグニンとこのようなフェノール誘導体により合成されるリグノフェノール誘導体の疎水性は、リグノモノフェノール誘導体の疎水性が最も高い。したがって、疎水性成形体の合成には1価のフェノールを用いるのが好ましい。1価のフェノールとしては、フェノール、クレゾールなどのアルキルフェノール、メトキシフェノール、ナフトールなどを挙げることができる。以下では、溶媒としてアセトンを、1価のフェノールとしてクレゾールを用いる場合を例にとって説明する。
【0026】
攪拌乾燥釜10においては、自然乾燥された木材15とアセトンとが撹拌され、樹脂分を除いた後、クレゾールとアセトンとからなる溶液が投入されてさらに撹拌され、木材15中のリグニンがクレゾールにより溶媒和される。その後、アセトンを留去させることによりクレゾールが収着した木紛、すなわち収着木紛16が得られる。この収着木紛16は、所謂フェノール収着木紛であり、フェノールがクレゾールの場合には、クレゾール収着木紛と呼ぶ。つまり、攪拌乾燥釜10においては、原料となる自然乾燥された木材15が溶媒14で脱脂され、この脱脂された原料がフェノール収着木紛16にされる。
【0027】
上記攪拌乾燥釜10において用いたアセトン18などは、薬剤回収部17で回収して再利用することができる。
【0028】
濃酸処理部3は、攪拌タンク20と濃硫酸供給部21と振動反応器22と分離抽出器25と、を含んで構成されている。
攪拌タンク20には、収着木紛16と濃酸21Aとが供給される。濃酸としては、好ましくは濃硫酸を用いることができる。濃硫酸の濃度は65~72重量%が好ましい。濃硫酸21Aは、濃硫酸供給部21からポンプを介して攪拌タンク20に供給される。
【0029】
攪拌タンク20において、攪拌されたフェノール収着木紛16が濃硫酸により加水分解され、一方、リグニンは活性な側鎖ベンジル位でフェノール化が進行する。さらに、振動反応器22から超音波振動が印加されることで、濃酸は炭水化物との親和性が高いのでセル口ースは速やかに膨潤する。同様に、超音波振動が印加されることで、リグニンのベンジル位のエーテル結合開裂により組織構造の破壊が促進される。
【0030】
図2は振動反応器22の構成を示す模式的な部分断面図である。図2に示すように、振動反応器22は、流路となる筒状部22Aの中に超音波振動子22Bが挿入されており、筒状部22Aの外周部には冷却用配管22Cが配置されている。この冷却用配管22Cにより、筒状部22A内部が所定温度に冷却され、リグニンと濃硫酸との不必要な変性を抑制している。この場合、冷却温度としては30℃以下が好ましい。
【0031】
攪拌タンク20及び振動反応器22における反応を説明する。
クレゾールはリグニンとの親和性が高く、反応系において、常にリグニンと共存する。言い換えれば、リグニンは濃酸と混合しないクレゾールによって取り囲まれており、これによって、酸とリグニンの接触は可及的に抑制される。この処理過程で、リグニンは部分的に解重合されるが、その際生成したカルボニウムイオンはクレゾールにより速やかに安定化され、リグニンの自己縮合は抑圧される。処理後、反応混合物は速やかにリグノフェノールとクレゾールとからなる層と濃酸と濃酸により分解されたセルロースなどからなる炭水化物とに分離する。以下、リグノフェノールとクレゾールとからなる層をクレゾール層と呼び、濃酸と濃酸により分解されたセルロースなどからなる炭水化物とを濃酸層と呼ぶ。
【0032】
振動反応器22で処理されたフェノール収着木紛16は、所定の処理量に達すると開閉弁24を介して分離抽出器25に導入される。振動反応器22で処理されたフェノール収着木紛16は、保持容器23で一旦貯蔵され、所定の処理量に達すると、開閉弁24を介して分離抽出器25に導入されてもよい。
【0033】
分離抽出器25は、所謂フローミキサーであって、液の流れによる運動エネルギーを利用する方法で液液分散を行うことができ、液輸送時の流路内に設置されるものであればよい。このような分離抽出器25としては、特許文献4に開示されている混合装置(関西化学機械製作株式会社製、商品名MSカラム)が好適である。図示の分離抽出器25では、その上部又は中間部には、硫酸処理されたフェノール収着木紛の原料供給口25Aと、下部にはフェノール類26の供給口25Bと、上部には軽液排出口25Cと、さらに最下部には重液排出口25Dが設けられている。フェノール類26としては、好ましくは、クレゾールを用いることができる。
【0034】
分離抽出器25においては、変換されたリグニン区分が速やかにクレゾールで抽出され、一方、重液である硫酸と炭水化物とを含む濃酸層27は下方へ沈殿し、両者が分離される。濃酸層27は、分離抽出器25の重液排出口25Dから回収することができる。この濃酸層27は、さらに希釈液処理を継続することにより、工業原料として有用な糖類に変換することができる。クレゾール層は後述する回収部4で回収される。
【0035】
回収部4は、晶析器30から構成されている。晶析器30は、分離抽出器25からクレゾール層が導入される導入口30Aと、溶媒導入口30Bと、溶媒排出口32と、を備えている。溶媒に溶出したクレゾールは留去され、クレゾール層に含まれているリグノフェノール31を回収することができる。晶析器30は、液液分散をする混合器を使用してもよい。このような混合器としては、上記分離抽出器25を用いることができる。
【0036】
晶析器30は、超音波照射部35又は高速回転撹拌機を備えていることが好ましい。この超音波照射部35は、晶析器30内のクレゾール層導入口30A付近に設ける超音波振動子と、晶析器30の外部に設ける超音波振動子の駆動用発振器などから構成することができる。
【0037】
回収部4で用いる溶媒としては、リグノフェノールが溶解し難い貧溶媒が好ましい。貧溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタンの何れか一つの溶媒、またはこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒を使用することができる。
【0038】
上記溶媒に超音波照射又は高速撹拌を施すことで、フェノールとリグノフェノールとの分離を迅速、効果的に行うことができる。超音波照射は、クレゾール層の溶媒への導入時に行うのが効果的である。超音波照射をすることにより、クレゾール層の導入速度を高速とすることができ、分離に要する時間と、溶媒の使用量を減少させることができる。
【0039】
本発明の第1の実施形態に係る植物資源相分離系変換装置1によれば、植物資源である木材などの原料から再使用できるリグノフェノールを連続的に得ることができる。
【0040】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る植物資源相分離系変換装置40の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、第2の実施形態に係る植物資源相分離系変換装置40が、第1の実施形態に係る植物資源相分離系変換装置と異なるのは、濃酸処理部3と回収部4である。濃酸処理部3は、第1の実施形態に係る植物資源相分離系変換装置1にさらに、フェノール収着木紛槽41とフィーダー42を備えている。
【0041】
回収部4は、第1の実施形態に係る植物資源相分離系変換装置1の晶析器30の前段に、さらに、遠心分離器44と回収用混合器45とを備え、回収用混合器45に蒸発缶46と凝縮器47とを設けることが異なっている。
【0042】
遠心分離器44は、クレゾール層に残留している濃酸層に由来する残留物を除去する。
【0043】
回収用混合器45は、濃酸処理部3で用いる分離抽出器25と同様の構成を備える液液分離装置を使用することができる。回収用混合器45は、遠心分離器44で分離されたクレゾール層の導入口45Aと溶媒導入口45Bと溶媒排出口45Cと、を備えている。ここで、クレゾール層の溶媒としては、上記晶析器30で用いた貧溶媒を用いることができる。例えば、ヘキサン、ジイソプロピルエーテル、ジクロロメタン、ヘキサンと酢酸エチルとの混合溶媒(例えば、1:1)の何れかを好適に用いることができる。
【0044】
回収用混合器45は、晶析器30と同様に超音波照射部又は高速撹拌機48を備えることが好ましい。この超音波照射部48は、回収用混合器45内のクレゾール層導入口45A付近に設ける超音波振動子と、回収用混合器45の外部に設ける超音波振動子の駆動用発振器などから構成することができる。
【0045】
上記溶媒に超音波照射又は高速撹拌を施すことで、フェノールとリグノフェノールとの分離を迅速、効果的に行うことができる。超音波照射は、クレゾール層の溶媒への導入時に行うのが効果的である。超音波照射をすることにより、クレゾール層の適下速度を高速とすることができ、分離に要する時間と、溶媒の使用量を減少させることができる。回収用混合器45の下部から抽出されリグノフェノールは、晶析器30を介して回収してもよい。
【0046】
蒸発缶46には、回収用混合器45から抽出された溶媒及びクレゾールが導入される導入口46Aと、留去される溶媒排出口46Bを備えており、留去されないクレゾールの排出口46Cが設けられている。クレゾールはこの蒸発缶46のクレゾール排出口46Cから、開閉弁46Dを介して回収される。
【0047】
凝縮器47には、蒸発缶46から留去した溶媒が導入される導入口47Aを備えており、凝縮された溶媒が溶媒排出口47Bから開閉弁47Cを介して回収される。
【0048】
本発明の第2の実施形態による植物資源相分離系変換装置40によれば、遠心分離器44と遠心分離器44で分離されたクレゾール層を液液分離する第2の混合器45を備えているので、クレゾール層に含有する濃酸層の残留物が減少すると共に、第2の混合器45で用いた溶媒に含まれて分離される主として有機溶媒とを、凝縮器47を介して回収することができ、リグノフェノールの抽出に使用したクレゾール及び溶媒を効率良く回収して再利用することができる。
【0049】
図4は、本発明の第1及び第2の実施形態に係る植物資源相分離系変換装置1,40の原料前処理部2におけるアセトン及びアセトンフェノール回収を行うための構成を示すブロック図である。図に示すように、フェノール収着木紛16を形成するために用いる、アセトンやフェノール18は、撹拌乾燥釜10の底部に設ける開閉弁51を介して接続される、蒸発缶52と凝縮器53により回収することができる。蒸発缶52から回収されたアセトンフェノールは、配管54を介して撹拌乾燥釜10の上部に設けた薬剤供給部12Aへ供給することで、フェノール収着木紛を処理するために再使用することができる。なお、廃アセトン55は、開閉弁51から回収し貯蔵した後で、蒸発缶52及び凝縮器53で処理してもよい。
【0050】
本発明は、上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。例えば、上記工程における液液分離抽出器や晶析器を多段設けることなどは、適宜に設計できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る植物資源相分離系変換装置の構成を示すブロック図である。
【図2】振動反応器の構成を示す模式的な部分断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る植物資源相分離系変換装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1及び第2の実施形態に係る植物資源相分離系変換装置の原料前処理部におけるアセトン及びアセトンフェノール回収を行うための構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
1,40:植物資源相分離系変換装置
2:原料前処理部
3:濃酸処理部
4:回収部
10:攪拌乾燥釜
11:木材供給フィーダー
12,12A:薬剤供給部
13:フェノール誘導体
14:溶媒(アセトン)
15:自然乾燥された木材
16:フェノール収着木紛
17:薬剤回収部
18:アセトン及びアセトンフェノール
20:攪拌タンク
21:濃硫酸供給部
21A:濃酸(濃硫酸)
22:振動反応器
22A:筒状部
22B:超音波振動子
22C:冷却用配管
23:保持容器
24:開閉弁
25:分離抽出器
25A:原料供給口
25B:フェノール類供給口
25C:軽液排出口
25D:重液排出口
26:フェノール類
30:晶析器(混合器)
30A:クレゾール層の導入口
30B:溶媒導入口
31:リグノフェノール
32:溶媒排出口
35,48:超音波照射部(高速撹拌機)
41:収着木紛槽
42:フィーダー
44:遠心分離器
45:回収用混合器
45A:導入口
45B:溶媒導入口
45C:溶媒排出口
46,52:蒸発缶
46A:導入口
46B:溶媒排出口
46C:クレゾールの排出口
46D:開閉弁
47,53:凝縮器
47A:溶媒導入口
47B:溶媒排出口
47C:開閉弁
54:配管
55:廃アセトン
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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