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明細書 :脳型有機アニオントランスポーターとその遺伝子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4223536号 (P4223536)
公開番号 特開2007-209350 (P2007-209350A)
登録日 平成20年11月28日(2008.11.28)
発行日 平成21年2月12日(2009.2.12)
公開日 平成19年8月23日(2007.8.23)
発明の名称または考案の名称 脳型有機アニオントランスポーターとその遺伝子
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/02
請求項の数または発明の数 8
全頁数 24
出願番号 特願2007-126587 (P2007-126587)
分割の表示 特願平11-265963 (P1999-265963)の分割、【原出願日】平成11年9月20日(1999.9.20)
出願日 平成19年5月11日(2007.5.11)
優先権出願番号 1998265126
優先日 平成10年9月18日(1998.9.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年6月11日(2007.6.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】遠藤 仁
【氏名】関根 孝司
【氏名】楠原 洋之
個別代理人の代理人 【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
【識別番号】100113332、【弁理士】、【氏名又は名称】一入 章夫
審査官 【審査官】中野 あい
参考文献・文献 国際公開第97/042321(WO,A1)
国際公開第01/042321(WO,A1)
The Journal of Biological Chemistry, 1999年5月, vol. 274, no. 19, p13675-13680
The Journal of Biological Chemistry, 1997年7月, vol. 272, no. 30, p18526-18529
調査した分野 C12N 15/00-15/90
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/PIR/GeneSeq
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)


特許請求の範囲 【請求項1】
配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる有機アニオントランスポーターOAT3を発現する組み換え細胞と化合物とを溶液中で培養することを特徴とする、化合物の前記組み換え細胞への取込能の測定方法。
【請求項2】
少なくとも以下の(1)~(3)の工程;
(1)配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる有機アニオントランスポーターOAT3を発現する組み換え細胞を得る工程、
(2)化合物を工程(1)で得られた組み換え細胞を含む溶液に添加し、一定時間培養後、当該細胞内への化合物の取り込み量を測定する工程、及び
(3)工程(2)で得られた測定値がコントロール細胞を用いて同様の操作を行った場合の測定値と比較して有意な差を示した化合物を選択する工程
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも以下の(1)~(4)の工程;
(1)配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる有機アニオントランスポーターOAT3を発現する組み換え細胞を得る工程、
(2)有機アニオントランスポーターOAT3によって前記組み換え細胞内に取り込まれることが確認された化合物を少なくとも2種以上選択し、それぞれを単独で、工程(1)で得られた組み換え細胞を含む溶液に添加し、一定時間培養後、前記組み換え細胞への各化合物の取り込み量を測定する工程、
(3)工程(2)で選択した2種以上の化合物を組み合わせて、工程(1)で得られた組み換え細胞を含む溶液に添加し、工程(2)と同一条件下で同一時間培養後、前記組み換え細胞内へのそれぞれの化合物の取り込み量を測定する工程、及び
(4)工程(3)で得られた測定値を工程(2)で得られた測定値と比較することで、選択された2種以上の化合物同士の相互作用を観察する工程、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の測定方法。
【請求項4】
配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる有機アニオントランスポーターOAT3を発現する組み換え細胞と化合物とを溶液中で培養することを特徴とする、化合物の脳細胞への取込能の測定方法。
【請求項5】
少なくとも以下の(1)~(3)の工程;
(1)配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる有機アニオントランスポーターOAT3を発現する組み換え細胞を得る工程、
(2)化合物を工程(1)で得られた組み換え細胞を含む溶液に添加し、一定時間培養後、当該細胞内への化合物の取り込み量を測定する工程、及び
(3)工程(2)で得られた測定値がコントロール細胞を用いて同様の操作を行った場合の測定値と比較して有意な差を示した化合物を選択する工程、
を含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物の脳細胞への取り込み能が、脳細胞内に取り込まれることが既知の2種以上の化合物同士の相互作用に基づく取り込み能であって、少なくとも以下の(1)~(4)の工程を含むことを特徴とする、請求項4に記載の測定方法;
(1)配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる有機アニオントランスポーターOAT3を発現する組み換え細胞を得る工程、
(2)脳細胞内に取り込まれることが既知の化合物を少なくとも2種以上選択し、それぞれを単独で、工程(1)で得られた組み換え細胞を含む溶液に添加し、一定時間培養後、前記組み換え細胞への各化合物の取り込み量を測定する工程、
(3)工程(2)で選択した2種以上の化合物を組み合わせて、工程(1)で得られた組み換え細胞を含む溶液に添加し、工程(2)と同一条件下で同一時間培養後、前記組み換え細胞内へのそれぞれの化合物の取り込み量を測定する工程、及び
(4)工程(3)で得られた測定値を工程(2)で得られた測定値と比較することで、選択された2種以上の脳細胞内に取り込まれることが既知の化合物同士の相互作用を観察する工程。
【請求項7】
少なくとも以下の(1)~(4)の工程;
(1)配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる有機アニオントランスポーターOAT3を発現する組み換え細胞を得る工程;
(2)有機アニオントランスポーターOAT3によって前記組み換え細胞内に取り込まれることが確認された化合物を、工程(1)で得られた組み換え細胞を含む溶液に添加し、一定時間培養後、当該組み換え細胞内への当該確認された化合物の取り込み量を測定する工程、
(3)試験化合物を工程(2)で用いたと同一の確認された化合物と共に工程(1)で得られた組み換え細胞を含む溶液に添加し、工程(2)と同一条件下で同一時間培養後、当該組み換え細胞内への前記確認された化合物の取り込み量を測定する工程、及び
(4)工程(3)で得られた測定値が工程(2)で得られた測定値と比較して有意な差を示した場合の試験化合物を選択する工程、
を含む、有機アニオントランスポーターOAT3の有機アニオン取り込み能を促進又は阻害する化合物をスクリーニングする方法。
【請求項8】
少なくとも以下の(1)~(4)の工程;
(1)配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる有機アニオントランスポーターOAT3を発現する組み換え細胞を得る工程;
(2)脳細胞内に取り込まれることが既知の化合物を工程(1)で得られた組み換え細胞を含む溶液に添加し、一定時間培養後、当該組み換え細胞内への当該既知の化合物の取り込み量を測定する工程、
(3)試験化合物を、工程(2)で用いたと同一の化合物と共に、工程(1)で得られた組み換え細胞を含む溶液に添加し、工程(2)と同一条件下で同一時間培養後、当該組み換え細胞内への前記確認された化合物の取り込み量を測定する工程、及び
(4)工程(3)で得られた測定値が工程(2)で得られた測定値と比較して有意な差を示した場合の試験化合物を選択する工程。
を含む、脳細胞内に取り込まれることが既知の化合物の脳細胞への取り込み能を促進又は阻害する物質をスクリーニングする方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は有機陰イオン(有機アニオン)輸送に関与する遺伝子と、その遺伝子がコードするポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓および腎臓は、生体異物や薬物の代謝および体外排出に関して重要な役割を果たしている。尿細管細胞および肝細胞は極性を有する上皮細胞でありアニオン性の物質の一部は、輸送担体(トランスポーター)により側底膜を介して腎臓および肝臓中に取り込まれ、また細胞内で代謝により産生された有機アニオンもトランスポーターにより排出されることが推測される。
尿細管細胞や肝細胞の側底膜を介した有機アニオンの取り込みについては、これまで摘出臓器灌流法や単離細胞膜小胞系などを用いた実験系により研究されてきた。
【0003】
しかし従来の手法では、側底膜を介した有機アニオン輸送について詳細に解析することは困難であり、トランスポーターそのものを単離して詳細に解析することが望まれてきた。
一方、脳においても有機アニオン輸送がおこなわれていることも複数の実験結果から推測されている。脳における有機アニオン輸送は、主に内因性および外来性の有機アニオンの脳外への排泄に働いているものと考えられる。
脳における有機アニオン輸送は、内因性アニオンおよび外来性異物の脳からの排除という重要な役割を担っていると予想されているにも関わらず、生理的実験が困難なことから、腎臓や肝臓以上にその輸送の詳細は不明である。
【0004】
これらの背景をふまえ、有機アニオントランスポーターの分子実体の探索が1990年代に入り積極的に行われた。この結果、肝臓の側底膜の有機アニオントランスポーターが昨年までに二つ単離された。(Hagenbuch, B.らProc Natl Acad Sci USA 88巻、10629-33頁、1991年、Jacquemin, E.ら、Proc Natl Acad Sci USA、91巻、133-7頁、1994年)。
昨年、本発明者らは独自に、腎臓での有機アニオン輸送において最も重要な役割を果たしている有機アニオントランスポーターOAT1の単離に成功し(Sekine, T.ら、J Biol Chem 272巻, 18526-9頁、1997)、既に特許出願済みである。OAT1は化学構造の異なる多くの有機アニオンを輸送することの出来るトランスポーターであり、種々のアニオン性薬物の輸送も行っている。
【0005】
OAT1の発現は腎特異的で、腎以外では脳に極めてわずかな発現をみるのみである。
最近本発明者らはさらに、OAT1とアミノ酸レベルで40%台の弱い相同性を持つ肝特異的有機アニオントランスポーター(OAT2)を同定した(FEBS letter 429巻、179-182頁、1998年)(特願平10-169174号)。
OAT1およびOAT2の単離、同定は有機アニオントランスポーターがファミリーを形成することを示している。さらにOAT2が肝特異的に発現していることから、このファミリーが腎特異的ではなく、種々の臓器にも発現していることも示唆する。
【0006】
既に述べたように脳には有機アニオン輸送系が存在するものと考えられるが、脳でのOAT1の発現は極めてわずかであり、又、OAT2は存在しない。本発明者らは、これらの事実から脳における有機アニオン輸送を担う未知のトランスポーターの存在を予想した。
他方、肝臓の側底膜における有機アニオン輸送は複雑であり、特に肝細胞内で多量に産生される抱合体(その多くは有機アニオン)の血中への流出経路は未だ不明である。この肝臓での有機アニオン輸送についても、OAT2を含む上記有機アニオントランスポーターのみでは説明しきれず、さらなる未知のトランスポーターの存在が予想される
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、脳および肝臓における有機アニオン輸送に関与する新規な有機アニオンントランスポーター遺伝子およびその遺伝子がコードするポリペプチドである有機アニオントランスポーターを同定し、提供することにある。その他の目的については以下の記載より明白である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、腎臓での有機アニオン輸送において最も重要な役割を果たしている有機アニオントランスポーターOAT1を単離した(Sekine, T.ら、J Biol Chem 272巻, 18526-9頁、1997)。さらにOAT1との構造上の類似性から、肝特異的な有機アニオントランスポーター(OAT2)を同定した(Sekine, T.ら、FEBS letter 429巻、179-182頁、1998年)。さらにOAT1およびOAT2が、有機カチオントランスポーターOCT1(Grundemann, D.ら、Nature, 372巻, 549-52頁、1994)とも弱い相同性があることを既に報告している(Sekine, T.ら、J Biol Chem 272巻, 18526-9頁、1997)。
【0009】
これらの事実をふまえ、OAT1、OAT2、OCT1に共通する配列を同定し、さらにその配列からデジェネレイトプライマー(degenerate primer)を作成した。このデジェネレイトプライマー(degenerate primer)を用い、ラット脳mRNAからRT(reverse transcript)-PCR(polymerase chain reaction)法によって、OAT1、OAT2、OCT1と弱い相同性を有する新規cDNA断片を同定した。このcDNA断片を用いて、ラットcDNAライブラリーよりこれまでに報告のないcDNAを同定し、この蛋白質をOATファミリーの第三のメンバーとして脳型有機アニオントランスポーターOAT3(Organic Anion Transporter 3)と命名した。
【0010】
本発明は、有機アニオントランスポーターOAT3に関し、本発明の有機アニオントランスポーターOAT3は、異なる化学構造を持った有機アニオンに対してこれらを輸送する(取り込む能力を有する)、広い範囲の基質選択性を有するトランスポーターであるが、代表的な有機カチオンであるTEA(テトラエチルアンモニウム)を輸送しなかった。したがって、本発明の有機アニオントランスポーターOAT3は、有機アニオンに対する広い範囲の基質選択性を有するが、代表的な有機カチオンであるTEA(テトラエチルアンモニウム)に対する基質選択性は実質的に有さず、主として脳、肝臓などの器官に選択的に分布する有機アニオントランスポーターである。
本発明のタンパク質は、前記した有機アニオントランスポーターOAT3である配列番号2(ヒト)又は4(ラット)で示されたアミノ酸配列を有するもののほか、例えば、配列番号2又は4で示されたアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するものが挙げられる。

【0011】
また、本発明は、前記した有機アニオントランスポーターOAT3を含む本発明のタンパク質をコードする核酸、好ましくはDNA又はRNAに関する。本発明の核酸は、本発明のタンパク質をコードするもののほか、さらに前記核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションし得る核酸を包含する。
本発明において、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションとは、通常、ハイブリダイゼーションを、5×SSC又はこれと同等の塩濃度のハイブリダイゼーション溶液中、37~42℃の温度条件下、約12時間行い、5×SSCまたはこれと同等の塩濃度の溶液等で予備洗浄を行った後に、1×SSC又はこれと同等の塩濃度で洗浄を行うことにより実施できる。また、より高いストリンジェンシーを得るためには、洗浄を0.1×SSC又はこれと同等の塩濃度の溶液中で洗浄を行うことにより実施できる。
さらに、本発明は、本発明のタンパク質をコードする核酸の部分配列又は当該配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るヌクレオチドに関する。
また、本発明は、本発明のタンパク質または、これと免疫学的同等性を有するポリペプチドに対する抗体に関する。
【0012】
本発明の有機アニオントランスポーター遺伝子は、適当な哺乳動物の腎臓、脳などの臓器の組織や細胞を遺伝子源として用いてスクリーニングを行うことにより単離取得できる。哺乳動物としては、イヌ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、サル、ブタ、ウサギ、ラット、マウスなどの非ヒト動物のほか、ヒトが挙げられる。
遺伝子のスクリーニングおよび単離は、ホモロジースクリーニングおよびPCRスクリーニングなどにより好適に実施できる。得られたcDNAは、常法により塩基配列を決定し、翻訳領域を解析して、これにコードされるタンパク質、即ちOAT3のアミノ酸配列を決定することができる。
得られたcDNAが有機アニオントランスポーター遺伝子のcDNAであること、即ちcDNAにコードされた遺伝子産物が有機アニオントランスポーターであることは、例えば次のようにして検証することができる。即ち、得られたOAT3遺伝子から調製したcRNAを卵母細胞に導入して発現させ、有機アニオンを細胞内に輸送する(取り込む)能力を、適当な有機アニオンを基質とする通常の取り込み実験(Sekine, T.ら、J Biol Chem 272巻, 18526-9頁、1997)により、細胞内への基質取り込みを測定することにより確認できる。
また、発現細胞に同様の取り込み実験を応用して、OAT3の輸送特性や基質特異性などを調べることができる。
【0013】
配列表の配列番号3にこのような方法により得られたラットの有機アニオントランスポーターOAT3のcDNAの塩基配列を示し、配列番号4にそのアミノ酸配列を示す。
【0014】
得られたOAT3遺伝子のcDNAを用いて、異なる遺伝子源で作製された適当なcDNAライブラリー又はゲノミックDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、異なる組織、異なる生物由来の相同遺伝子や染色体遺伝子等を単離することができる。
配列表の配列番号1にこのような方法により得られたヒトの有機アニオントランスポーターOAT3のcDNAの塩基配列を示し、配列番号2にそのアミノ酸配列を示す。
【0015】
また、開示された本発明の遺伝子の塩基配列(配列番号1又は3)に示された塩基配列、もしくはその一部の情報に基づいて設計された合成プライマーを用い、通常のPCR法によりcDNAライブラリーから遺伝子を単離することが出来る。
cDNAライブラリー及びゲノミックDNAライブラリー等のDNAライブラリーは例えば、「Molecular Cloning;Sambrook, J., Fritsh, E.F.およびManiatis, T.著、Cold Spring Harbor Laboratory Pressより1989年に発刊」に記載の方法により調製することができる。あるいは、市販のライブラリーがある場合にはこれを用いてもよい。
【0016】
本発明の有機アニオントランスポーター(OAT3)は、例えば、有機アニオントランスポーターをコードするcDNAを用い、遺伝子組み換え技術により生産することができる。例えば、有機アニオントランスポーターをコードするDNA(cDNA等)を適当な発現ベクターに組み込み、得られた組み換えDNAを適当な宿主細胞に導入することができる。ポリペプチドを生産するための発現系(宿主ベクター系)としては、例えば、細菌、酵母、昆虫細胞および哺乳動物細胞の発現系等が挙げられる。このうち、機能タンパクを得るためには、昆虫細胞および哺乳動物細胞を用いることが望ましい。
【0017】
例えば、ポリペプチドを哺乳動物で発現させる場合には、本発明の有機アニオントランスポーターをコードするDNAを、適当な発現ベクター(例えば、レトロウイルス系ベクター、パピローマウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、SV40系ベクター等)中の適当なプロモーター(例えばSV40プロモーター、LTRプロモーター、エロンゲーション1αプロモーター等)の下流に挿入して発現ベクターを構築する。次に、得られた発現ベクターで適当な動物細胞を形質転換して、形質転換体を適当な培地で培養することによって、目的とするポリペプチドが生産される。宿主とする哺乳動物細胞としては、サルCOS-7細胞、チャイニーズハムスターCHO細胞、ヒトHela細胞または、腎臓組織由来の初代培養細胞やプタ腎由来LLC-PK1細胞、フクロネズミ腎由来OK細胞等の細胞株が挙げられる。
【0018】
有機アニオントランスポーターOAT3をコードするcDNAとしては、例えば、配列番号1又は3に示される塩基配列を有するcDNAを用いることが出来るほか、前記のcDNAに限定されることなく、アミノ酸配列に対応するDNAを設計し、ポリペプチドをコードするDNAを用いることもできる。この場合、一つのアミノ酸をコードするコドンは各々1~6種類知られており、用いるコドンの選択は任意でよいが、例えば発現に利用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、より発現の高い配列を設計することができる。設計した塩基配列をもつDNAはDNAの化学合成、前記cDNAの断片化と結合、塩基配列の一部改変等によって取得できる。人為的な塩基配列の一部改変、変異導入は、所望の改変をコードする合成オリゴヌクレオチドからなるプライマーを利用して部位変異導入法(site specific mutagenesis)「Mark, D.F. ら、Proc Natl Acad Sci USA 第18巻、5662-5666頁、1984年」等により実施できる。
【0019】
本発明の有機アニオントランスポーター遺伝子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド(オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド)は、有機アニオントランスポーター遺伝子を検出するためのプローブとして使用できるほか、有機アニオントランスポーターの発現を変調させるために、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、デコイとして使用することもできる。
また、本発明は、本発明のタンパク質をコードする核酸の部分配列又は当該配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るヌクレオチドに関する。このようなヌクレオチドとしては、例えば、配列番号1又は3で示される塩基配列の中の通常、連続する14塩基以上の部分配列もしくはその相補的な配列を含むヌクレオチドを用いることができ、ハイブリダイズをより特異的とするためには、部分配列としてより長い配列、例えば20塩基以上あるいは30塩基以上の配列を用いても良い。これらのヌクレオチドは、必要に応じて放射性元素や、蛍光性物質又は化学発光物質などを用いて標識化することもできる。
本発明の配列番号1又は3で示される塩基配列の中の連続する14塩基以上の部分配列もしくはその相補的な配列を含むヌクレオチドは、本発明の有機アニオントランスポーターOAT3をコードする塩基配列中の特異的な塩基配列を有するものが好ましく、必要により標識化されていてもよい。
【0020】
また、本発明の有機アニオントランスポーターまたは、これと免疫学的同等性を有するポリペプチドを用いて、その抗体を取得することが出来、抗体は、有機アニオントランスポーター検出や精製などに利用できる。抗体は、本発明の有機アニオントランスポーター、その断片、またはその部分配列を有する合成ペプチド等を抗原として用いて製造できる。ポリクロナール抗体は、宿主動物(たとえば、ラットやウサギ)に抗原を接種し、免疫血清を回収する通常の方法により製造することができ、モノクロナール抗体は、通常のハイブリドーマ法などの技術により製造できる。また、本発明の抗体は、常法によりキメラ型やヒト型抗体としたものであってもよい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例をもって本説明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
【0022】
なお下記実施例において、各操作は特に断りがない限り、「Molecular Cloning:Sambrook, J., Fritsh, E.F.およびManiatis, T. 著、Cold Spring Harbor Laboratory Pressより1989年に発刊」に記載の方法により行うか、または、市販のキットを用いる場合には市販品の指示書に従って使用した。
【0023】
実施例1
多選択性有機アニオントランスポーター3(OAT3)cDNAの単離とその解析
(1)OAT1、OAT2、OCT1の塩基配列情報を基にしたデジェネレイトプライマー(degenerate primer)の作成
既に本発明者らが単離したOAT1、OAT2、および報告されているOCT1の塩基配列情報から、これら3つのトランスポーター間で共通するアミノ酸配列(OAT1のアミノ酸配列の267-275および447-452に相当部分)より、デジェネレイトプライマー(degenerate primer)を作成した。
【0024】
ラット脳よりGITC法により全RNAを抽出し、さらにオリゴdT(oligo dT)カラムを用いてポリ(A)+RNAを精製した。このラット脳ポリ(A)+RNAより逆転写酵素(reverse transcriptase)を用いてcDNAを作成し、これを鋳型として上記デジェネレイトプライマー(degenerate primer)によりPCRを行った。この結果、約550bpのPCR産物が得られた。
このPCR産物を、TAクローニングキット(インヴィトロゲン社製)を用いてクローン化し、そのいくつかの塩基配列を決定したところ、OAT1とアミノ酸レベルで50%台の相同性を有する新規cDNA(B10)が得られた。
【0025】
B10 cDNAを32Pでラベルしたプローブを用いて、ラットの種々の臓器より抽出したポリ(A)+RNAによるノーザンハイブリダイゼーション(Northern hybridization)をおこなったところ、肝臓、腎臓、脳および目に陽性のバンドを検出した。
【0026】
既に本発明者らは、ラット腎の良好なcDNAライブラリーを持っていたため、このラット腎cDNAライブラリーをB10プローブ用いてスクリーニングした。ハイブリダイゼーションは、37℃のハイブリダイゼーション用溶液中で一昼夜行い、その後フィルター膜は、37℃で0.1×SSC/0.1%SDSで洗浄した。ハイブリダイゼーション溶液としては、50%ホルムアミド、5×標準クエン酸Nacl溶液(standard saline citrate(SSC))、3× デンハード液、0.2%SDS、10%硫酸デキストラン、0.2mg/ml変性サーモン精子DNA、2.5mMピロリン酸ナトリウム、25mM MES、0.01%AntifoamB(シグマ社製)を含むpH6.5の緩衝液を用いた。λZipLox中に単離されたクローンは、in vivo excision法によりプラスミドベクタ-pZLにさらにサブクローン化した。この結果、有機アニオン輸送活性を持つ新規クローン(rkl411)が得られた(輸送機能解析については以下の実施例2参照)。
【0027】
上記により得られたクローン(rkl411)の塩基配列の決定は以下のようにして行った。まず、キロシークエンス用デリーションキット(タカラ社製)を用いて、rkl411を片側より約300bpづつ削除した複数のプラスミドDNAを得た。これらを自動シークエンサー(アプライドバイオシステム社製)を用いてその塩基配列を解析した。さらにrkl411に対する特異的オリゴヌクレオチドプライマーを合成し、自動シークエンサーを用いて逆方向からもその塩基配列を解析し、最終的にrkl411の全塩基配列を決定した。この塩基配列を配列表の配列番号3に記載する。また、このタンパク質のアミノ酸配列を配列表の配列番号4に記載する。
【0028】
実施例2(rkl411の機能の特定)
(1)上記により得られたクローン(rkl411)を含むプラスミドから、T7RNAポリメラーゼを用いて、インビトロでcRNA(cDNAに相補的なRNA)を調製した(Sekine, T., et al. J Biol Chem 272巻、18526-9頁、1997年参照)。
得られたcRNAを、既に報告されている方法に従い(Sekine, T., et al. J Biol Chem 272巻、18526-9頁、1997年)、アフリカツメガエルの卵母細胞に注入し、この卵母細胞について放射能標識された種々の有機アニオンおよび有機カチオンによる取り込み実験を行った。この結果、図1に示すようにrkl411を発現させた卵母細胞は14C-PAH(パラアミノ馬尿酸)、H-オクラトキシンA、H-エストロン硫酸の取り込みを示すことが判明した。これに対して代表的な有機カチオンである14C-TEA(テトラエチルアンモニウム)を輸送しなかった。
【0029】
rkl411の有機アニオン輸送のミカエリス-メンテン動力学試験をおこなった。種々の濃度のPAH、エストロン硫酸、オクラトキシンAのrkl411による取り込み量の変化を調べることにより、これらの基質のrkl411による輸送の濃度依存性を検討した。放射能標識されたPAH、エストロン硫酸、オクラトキシンAの取り込み実験は、rkl411 cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記記載の方法に準じて実施した。この結果(図2参照)、PAH、エストロン硫酸、オクラトキシンAのKm値はそれぞれ4.7μM、2.3μMおよび0.74μMであった。結果を次の表1に示す。
【0030】
【表1】
JP0004223536B2_000002t.gif

【0031】
(2)rkl411の基質選択性をさらに検討するために、rkl411 cRNAを注入した卵母細胞によるH-エストロン硫酸の取り込み実験系において、系へ各種アニオン性物質を添加し、その影響を調べた(阻害実験)。H-エストロン硫酸の取り込み実験は、rkl411 cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記記載方法に準じて実施した。1mMの各種化合物(非標識)の存在下および非存在下で、H-エストロン硫酸の取り込みを測定した。その結果、種々のアニオン性物質(タウロコール酸、コール酸、ブロモサルフォフタレイン、プロベネシド、インドシアニングリーン、ブメタニド、セフォペラゾン、ピロキシカム、フロセミド、アジドチミジン、ベンジルペニシリンなど)はrkl411によるH-エストロン硫酸の輸送を有意に阻害した(図3参照)。一方、テトラエチルアンモニウム、グアニジン、キニジン、ベラパミルのようなカチオン性物質は阻害作用を示さなかった(図3参照)。以上の結果から、rkl411は多選択性トランスポーターであり、又、主に有機アニオンを認識することから、rkl411をOATファミリーの第三のメンバーとして、OAT3(organic anion transporter 3)と命名した。
【0032】
実施例3
ラットの各組織におけるOAT3遺伝子の発現(ノーザンブロッティング)の解析を行った。OAT3 cDNAの全長を32P-dCTPでラベルし、これをプローブとして用いてラットの種々の組織から抽出したRNAに対してノーザンブロッティングを以下のように行った。3μgのポリ(A)+RNAを1%アガロース/ホルムアルデヒドゲルで電気泳動した後にニトロセルロースフィルターにトランスファーした。このフィルターを42℃で、32P-dCTPでラベルしたOAT3 cDNA全長を含んだハイブリダイゼーション液で一晩ハイブリダイセーションを行った。フィルターを65℃にて、0.1%SDSを含む0.1xSSCで洗浄した。
ノーザンブロットの結果(図4参照)、腎臓、肝臓、脳において、2.4Kb付近に強いバンドが検出された。また目に弱い発現が観察された。
【0033】
実施例4
OAT3がOATファミリーのメンバーの中では最も強く脳に発現していたため、その脳での役割を推測する試みとして、神経伝達物質の種々の代謝物(主に有機アニオン)によるOAT3の輸送阻害実験を行った。図5に示すように、ノルアドレナリンやセロトニン代謝物はOAT3によるエストロン硫酸輸送を阻害し、それら自身がOAT3の基質となる可能性を示した。この事実は、OAT3の脳型での役割のひとつとして神経伝達物質の代謝物の脳外排出作用を示唆するものである。
【0034】
実施例5
ヒト型多選択性有機アニオントランスポーター3(OAT3)cDNAの単離とその解析
既に本発明者らが単離したラットOAT3のcDNAを用いてEST(expressed sequence tag)データベースを検索したところ、ラットOAT3と高い相同性を有するヒトESTクローン(H20345)を同定した。このクロ--ンの塩基配列の一部(333bp)をPCR法を用いて合成した。このcDNA断片を32Pでラベルしたものをプローブとして用い、以下のようにスクリーニングを行った。
【0035】
すでに本発明者らが保持していたヒト腎臓cDNAライブラリーを、上記プローブを用いてスクリーニングした。ハイブリダイゼーションは、37℃のハイブリダイゼーション用溶液中で一昼夜行い、その後フィルター膜は、37℃で0.1×SSC/0.1%SDSで洗浄した。ハイブリダイゼーション溶液としては、50%ホルムアミド、5×SSC(standard saline citrate)、3×デンハード液、0.2%SDS、10%硫酸デキストラン、0.2mg/ml変性サーモン精子DNA、2.5mMピロリン酸ナトリウム、25mM MES、0.01%Antifoam(シグマ社製)を含むpH6.5の緩衝液を用いた。λZipLox中に単難されたクローンは、インビトロエキサイション(in vitro excision)法によりプラスミドベクタ-pZLにさらにサブクローン化した。この結果、有機アニオン輸送活性を持つhOAT3(human organic anion transporter 3:ヒト型有機アニオントランスポーター3)が得られた。このものの輸送機能の解析については以下の実施例6で説明する。
【0036】
hOAT3の塩基配列は以下の方法により決定した。hOAT3に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを順次合成し、自動シークエンサー(アプライドバイオシステム社製)を用いて5’および3’側の両方向から塩基配列の解析を行い、最終的にhOAT3の全塩基配列を決定した。決定された塩基配列を配列表の配列番号1に記載する。このcDNA配列からhOAT3をコードするアミノ酸配列を配列表の配列番号2に記載する。
また、cDNAの塩基配列を表2~6に示し、そのアミノ酸配列を塩基配列と対応させて表3に示す。
【0037】
【表2】
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【0038】
【表3】
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【0039】
【表4】
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【0040】
【表5】
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【0041】
【表6】
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【0042】
実施例6
hOAT3の機能の特定
上記により得られたhOAT3を含むブラスミドから、T7RNAボリメラーセを用いて、インビトロでcRNA(cDNAに相補的なRNA)をセキネらの方法(Sekine, T., et al., J. Biol. Chem., 272, 18526-9 (1997))に準じて調製した。
得られたhOAT3 cRNAを、既に報告されているセキネらの方法(Sekine, T., et al., J. Biol. Chem., 272, 18526-9 (1997))に従い、アフリカツメガエルの卵母細胞に注入し、この卵母細胞について放射能標識された種々の有機アニオンおよび有機カチオンの取り込み実験を行った。コントロール卵母細胞(hOAT3 cRNAを注入していない卵母細胞)、およびhOAT3 cRNAを注入した卵母細胞を、以下の放射能標識体を含む緩衝液中で1時間培養し、卵母細胞内への放射能標識体の取り込みを測定した。
この結果を図6~図18に示す。各図の白色(open column)の方はコントロール卵母細胞を用いた場合を示し、黒色(closed column)の方はhOAT3 cRNAを注入した卵母細胞を用いた場合を示す。図6は14C-PAH(パラアミノ馬尿酸)(10μM)、図7はH-エストロン硫酸(50nM)、図8はH-デヒドロエピアンドロステロン硫酸(50nM)、図9はH-オクラトキシンA(100nM)、図10はH-シメチジン(150nM)、図11はH-エストラジオールグルクロニド(50nM)、図12はH-プロスタグランジンE2(1nM)、図13は14C-タウロコール酸(1μM)、図14は14C-グルタル酸(10μM)、図15はH-メトトレキセート(100nM)、図16は14C-サリチル酸(1μM)、図17は14C-インドメタシン(10μM)、図18は14C-コール酸(10μM)の場合をそれぞれ示す。
【0043】
これらの図に示されるように、これらの放射能標識体において、hOAT3を発現した卵母細胞における値は、コントロール卵母細胞に比べ高く、これらの化合物をhOAT3が輸送することが示された。
この結果、hOAT3を発現させた卵母細胞は、14C-PAH(パラアミノ馬尿酸)、H-エストロン硫酸、H-デヒドロエピアンドロステロン硫酸、H-オクラトキシンA、H-シメチジン、H-エストラジオールグルクロニド、H-プロスタグランジンE2、14C-タウロコール酸、14C-グルタル酸、H-メトトレキセート、14C-サリチル酸、14C-インドメタシン、14C-コール酸の取り込みを示すことが判明した。 これに対して、hOAT3は代表的な有機カチオンである14C-TEA(テトラエチルアンモニウム)を輸送しなかった(図には示さず)。
【0044】
次いで、hOAT3の有機アニオン輸送のミカエリスーメンテン動力学試験を行った。種々の濃度のエストロン硫酸およびメトトレキセートのhOAT3による取り込み量の変化を調べることにより、これらの基質のhOAT3による輸送の濃度依存性を検討した。放射能標識されたエストロン硫酸およびメトトレキセートの取り込み実験は、hOAT3 cRNAを注入した卵母細胞およびコントロール卵母細胞(cRNAを注入していないもの)を用い、前記に記載した方法に準じて実施した。この結果、エストロン硫酸およびメトトレキセートのKm値はそれぞれ3.08μMおよび2.22μMであった。
【0045】
hOAT3の基質選択性をさらに検討するために、hOAT3 cRNAを注入した卵母細胞によるH-エストロン硫酸の取り込み実験系において、系へ各種アニオン性物質を添加し、その影響を調べた(阻害実験)。
H-エストロン硫酸の取り込み実験は、hOAT3 cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記に記載した方法に準じて実施した。
即ち、コントロール卵母細胞(hOAT3 cRNAを注入していない卵母細胞)、およびhOAT3 cRNAを注入した卵母細胞を、50nMH-エストロン硫酸単独、又は500μM若しくは図に表示されている濃度の放射能非標識化合物を含む緩衝液中で1時間培養し、H-工スト口ン硫酸の取り込みを測定した。結果は、50nMH-エスト口ン硫酸単独を含む緩衝液中でのhOAT3 cRNAを注入した卵母細胞の示す取り込みを100%とし、阻害薬を含む緩衝液中での各々の値を%で表示した。
【0046】
その結果を図19に示す。図19に示すように、これらの化合物は全てhOAT3 cRNAを注入した卵母細胞によるH-エストロン硫酸の取り込みを阻害し、これらの化合物がhOAT3と相互作用することが示された。この結果、種々のアニオン性物質(エストロン硫酸、PAH、タウロコール酸、プロベネシド、フロセミド.ジドブジン、ペニシリンG、BSP、グルタル酸、インドメタシン、メトトレキセート)は、hOAT3によるH-エストロン硫酸の輸送を有意に阻害することがわかった(図19参照)。一方、代表的な有機カチオンであるテトラエチルアンモニウムは、阻害作用を示さなかった。以上の結果から、本発明のhOAT3は多選択性有機アニオントランスボーターであることが明かとなった。
【0047】
本発明は、有機アニオンに対して広い基質選択性を有し、脳や肝臓などに選択的に分布する新規な有機アニオントランスポーターを提供するものである。
本発明の有機アニオントランスポーターは、種々の薬物の細胞への取り込みに関与しており、薬物の生体内での動態にも関与している。したがって、本発明の有機アニオントランスポーターは、細胞の維持や活性化のみならず、薬物の動態をスクリーニングする際にも有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明のラットOAT3をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた時の、有機アニオン取り込み活性を示すものである。
【図2】図2は、本発明のラットOAT3の卵母細胞を用いた、PAH、エストロン硫酸及びオクラトキシンAの輸送の動力学試験の結果を示すものである。
【図3】図3は、本発明のラットOAT3の有機アニオン輸送における、各種有機物質の阻害作用の試験の結果を示すものである。
【図4】図4は、本発明のラットOAT3遺伝子のノーザンブロッティング解析の結果を示す図面に代わる写真である。
【図5】図5は、脳型神経伝達物質の種々の代謝物による、ラットOAT3の輸送阻害試験の結果を示すものである。
【図6】図6は、本発明のhOAT3をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた時の、14C-PAH(パラアミノ馬尿酸)の取り込み活性を示すものである。
【図7】図7は、本発明のhOAT3をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた時の、H-エストロン硫酸の取り込み活性を示すものである。
【図8】図8は、本発明のhOAT3をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた時の、H-デヒドロエピアンドロステロン硫酸の取り込み活性を示すものである。
【図9】図9は、本発明のhOAT3をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた時の、H-オクラトキシンAの取り込み活性を示すものである。
【図10】図10は、本発明のhOAT3をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた時の、H-シメチジンの取り込み活性を示すものである。
【図11】図11は、本発明のhOAT3をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた時の、H-エストラジオールグルクロニドの取り込み活性を示すものである。
【図12】図12は、本発明のhOAT3をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた時の、H-プロスタグランジンE2の取り込み活性を示すものである。
【図13】図13は、本発明のhOAT3をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた時の、14C-タウロコール酸の取り込み活性を示すものである。
【図14】図14は、本発明のhOAT3をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた時の、14C-グルタル酸の取り込み活性を示すものである。
【図15】図15は、本発明のhOAT3をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた時の、H-メトトレキセートの取り込み活性を示すものである。
【図16】図16は、本発明のhOAT3をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた時の、14C-サリチル酸の取り込み活性を示すものである。
【図17】図17は、本発明のhOAT3をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた時の、14C-インドメタシンの取り込み活性を示すものである。
【図18】図18は、本発明のhOAT3をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた時の、14C-コール酸の取り込み活性を示すものである。
【図19】図19は、本発明のhOAT3によるH-エストロン硫酸の輸送における、各種有機物質の阻害作用の試験の結果を示すものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図11】
9
【図12】
10
【図13】
11
【図14】
12
【図15】
13
【図16】
14
【図17】
15
【図18】
16
【図19】
17
【図4】
18