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明細書 :核酸抽出用の組成物およびキット、ならびにこれらの利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5105237号 (P5105237)
公開番号 特開2009-082068 (P2009-082068A)
登録日 平成24年10月12日(2012.10.12)
発行日 平成24年12月26日(2012.12.26)
公開日 平成21年4月23日(2009.4.23)
発明の名称または考案の名称 核酸抽出用の組成物およびキット、ならびにこれらの利用
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
FI C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 15
全頁数 11
出願番号 特願2007-255947 (P2007-255947)
出願日 平成19年9月28日(2007.9.28)
審査請求日 平成22年2月4日(2010.2.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
発明者または考案者 【氏名】頼 泰樹
【氏名】大塚 重人
【氏名】中西 友子
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】神谷 昌男
参考文献・文献 特表2006-506057(JP,A)
調査した分野 C12N 15/00-15/90

JSTPlus/JMEDPlus/JST7580
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
pHが7~9の核酸抽出液を調製するための組成物であって、
5~50g/Lの範囲内の濃度で核酸抽出液中に供給されるようにNaSiFを含み、かつ、リン酸を含んでいることを特徴とする組成物。
【請求項2】
EDTAをさらに含んでいることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
50~100mMの範囲内の濃度で核酸抽出液中に供給されるようにEDTAを含んでいることを特徴とする請求項に記載の組成物。
【請求項4】
100~300mMの範囲内の濃度で核酸抽出液中に供給されるようにリン酸を含んでいることを特徴とする請求項に記載の組成物。
【請求項5】
界面活性剤をさらに含んでいることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤がSDS、CTAB、Triton X-100およびN-ラウロイルサルコシンナトリウムからなる群より選択されることを特徴とする請求項に記載の組成物。
【請求項7】
5%以下の濃度で核酸抽出液中に供給されるように界面活性剤を含んでいることを特徴とする請求項に記載の組成物。
【請求項8】
土壌、堆肥、水系堆積物、活性汚泥および糞便からなる群より選択される少なくとも1つに由来するサンプルから核酸を抽出する核酸抽出液を調製するために用いられることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
調製される核酸抽出液中において5~50g/Lの範囲内の濃度となるようにNaSiFを備え、かつ、リン酸を備えていることを特徴とするpHが7~9の核酸抽出液を調製するためのキット。
【請求項10】
EDTAをさらに備えていることを特徴とする請求項に記載のキット。
【請求項11】
界面活性剤をさらに備えていることを特徴とする請求項に記載のキット。
【請求項12】
5~50g/Lの範囲内の濃度でNaSiFを含み、かつ、リン酸を含むpHが7~9の抽出液中でサンプルから核酸を抽出する工程を包含することを特徴とする核酸抽出方法。
【請求項13】
5~50g/Lの範囲内の濃度でNaSiFを含む溶液を調製する工程、及び、該溶液にリン酸を含ませる工程を包含することを特徴とするpHが7~9の核酸抽出液の製造方法。
【請求項14】
前記溶液にEDTAを含ませる工程をさらに包含することを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記溶液に界面活性剤を含ませる工程をさらに包含することを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌中の微生物に関する情報を簡便に得る技術に関するものであり、より詳細には、土壌から核酸を高収量で簡便に抽出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生育している植物内での物質の分布および動態を知るために、植物内における物質動態をイメージングする技術が開発されている。
【0003】
植物におけるイメージングを行う際の環境がその植物にとっての本来の生育環境に近似していることは、植物内における本来の物質動態を知るために重要であると考えられる。土壌のpH、無機塩類濃度といった土壌の理化学性および土壌中に存在する微生物が植物の生育に大きな影響を与えることは、古くから知られている。また、空気中に含まれている物質(特に微生物)も植物の生育に影響を与え得る。植物にとっての本来の生育環境を知るためには、植物が生育する土壌や、植物が置かれた雰囲気についての情報を解析する、優れた技術が不可欠であると考えられる。
【0004】
微生物は、土壌中に非常に多く存在している(土壌1gあたりに10~10個)。その種類は極めて多様であり、天然に存在する微生物のうち、かなりの種類が土壌に分布しているといわれている。しかし、土壌中に存在する微生物は、培養が非常に困難であり、培養可能な土壌微生物は全体の10%に満たない。このように、土壌微生物はそのほとんどが未知の存在である。
【0005】
近年、土壌から核酸を直接抽出して分子生物学的手法での解析を行うことにより、土壌微生物についての情報を得ることが可能になってきた。すなわち、土壌中の微生物に関する情報は、微生物由来の核酸(DNAまたはRNA)を土壌から検出することによって得られている。
【0006】
土壌から微生物DNAを検出または分離する技術は、これまでにいくつも報告されている。土壌からのDNAの抽出技術は、培養困難な土壌微生物の遺伝子の取得を容易にし、未解明であった土壌微生物の群集解析、および酵素合成などに有用なコンビナトリアルケミストリーへ新たな土壌微生物遺伝子資源の供給を可能とし、学術的にも産業面にも大きく寄与した。
【0007】
しかし、日本特有の土壌である火山灰土壌は、非晶質アルミニウム(アロフェン)を含有しているので、これらの物質が核酸抽出工程において溶液中の核酸を強力に吸着してしまい、その結果として、火山灰土壌からの核酸抽出が困難であった。
【0008】
本発明者らは、EDTAおよびリン酸溶液を高濃度で使用することによってアロフェンの吸着能力を不活性化し、簡便にDNAを抽出する技術を開発している(特許文献1参照)。

【特許文献1】WO2005/073377(国際公開日:2005(平成17)年8月11日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
DNAは比較的安定な物質であり、土壌に残留する傾向がある。しかし、DNAはすでに死滅した微生物まで評価している可能性がある。一方、RNAは化学的に不安定であり、DNAよりもはるかに分解されやすく、微生物が死滅するとRNaseなどによって速やかに分解される。よって、RNAを抽出および解析することができれば、土壌中の生きた微生物を正確に評価することが可能となる。
【0010】
しかし、RNAはDNAよりも強力かつ迅速にアロフェンに吸着されてしまうので、特許文献1記載の技術ではRNA抽出を効率よく行うことができなかった。また、RNA抽出に関しては、土壌からRNAを高収量で抽出する技術は未だ開発されていない。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、土壌中の微生物に関する情報を簡便に得ることであり、具体的には、土壌から核酸(特にRNA)を高収量で簡便に抽出する技術を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
火山灰土壌のようにアロフェンを含有する土壌から核酸(DNAまたはRNA)を効率よく抽出するためには、核酸を吸着し得るアロフェンを効果的に破壊するか、またはDNAもしくはRNA(アロフェンに特に吸着されやすい)が吸着されてしまう前にアロフェンの吸着部位をブロックする必要がある。本発明者らは試行錯誤の結果、抽出液にフッ素化合物を添加することにより、核酸を効率よく抽出し得ることを見出した。
【0013】
本発明に係る組成物は、核酸抽出液を調製するためのものであり、フッ化化合物およびケイ酸化合物から選択される化合物の少なくとも1つを含んでいることを特徴としている。上記化合物は、NaF、NaSiF、KSiF、(NHSiF、NaPF、KPFおよびNHPFからなる群より選択される化合物であることが好ましく、NaSiFであることがより好ましい。なお、本発明を用いて調製される核酸抽出液は、NaSiFを5~50g/Lの範囲内の濃度で含んでいることがなお好ましい。よって、本発明に係る組成物は、5~50g/Lの範囲内の濃度で核酸抽出液中に供給されるようにNaSiFを含んでいることが好ましい。
【0014】
本発明に係る組成物は、EDTAおよび/またはリン酸をさらに含んでいてもよい。本発明にEDTAが用いられる場合、本発明を用いて調製される核酸抽出液は、EDTAを50~100mMの範囲内の濃度で含んでいることが好ましい。よって、本発明に係る組成物は、50~100mMの範囲内の濃度で核酸抽出液中に供給されるようにEDTAを含んでいることが好ましい。また、本発明にリン酸が用いられる場合、本発明を用いて調製される核酸抽出液は、リン酸を100~300mMの範囲内の濃度で含んでいることが好ましい。よって、本発明に係る組成物は、100~300mMの範囲内の濃度で核酸抽出液中に供給されるようにリン酸を含んでいることが好ましい。
【0015】
本発明に係る組成物は、界面活性剤をさらに含んでいてもよい。本発明に界面活性剤が用いられる場合、本発明を用いて調製される核酸抽出液は、界面活性剤を5%以下の濃度で含んでいることが好ましい。よって、本発明に係る組成物は、5%以下の濃度で核酸抽出液中に供給されるように界面活性剤を含んでいることが好ましい。なお、本発明に利用可能な界面活性剤は、SDS、CTAB、Triton X-100およびN-ラウロイルサルコシンナトリウムからなる群より選択されることが好ましい。
【0016】
本発明に係るキットは、核酸抽出液を調製するためのものであり、上述した組成物の成分を別個に備えている形態であればよい。すなわち、本発明に係るキットは、フッ化化合物およびケイ酸化合物から選択される化合物の少なくとも1つを備えていることを特徴としており、EDTA、リン酸および/または界面活性剤をさらに備えていてもよい。
【0017】
本発明に係る組成物およびキットは、土壌、堆肥、水系堆積物、活性汚泥および糞便からなる群より選択される少なくとも1つに由来するサンプルから核酸を抽出する核酸抽出液を調製するために用いられることが好ましい。
【0018】
本発明に係る核酸抽出方法は、上述した核酸抽出液を用いることを特徴としており、具体的には、フッ化化合物およびケイ酸化合物から選択される化合物の少なくとも1つを含む抽出液中でサンプルから核酸を抽出する工程を包含している。
【0019】
本発明に係る核酸抽出方法は、土壌、堆肥、水系堆積物、活性汚泥および糞便からなる群より選択される少なくとも1つに由来するサンプルから核酸を抽出するために用いられることが好ましい。
【0020】
本発明に係る核酸抽出液の製造方法は、フッ化化合物およびケイ酸化合物から選択される化合物の少なくとも1つを含む溶液を調製する工程を包含することを特徴としており、該溶液にEDTAを含ませる工程、該溶液にリン酸を含ませる工程、または該溶液に界面活性剤を含ませる工程をさらに包含してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明を用いれば、土壌からDNAだけでなくRNAも高収量で抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔1:核酸抽出液調製用の組成物およびキット〕
本発明は、核酸抽出液を調製するための組成物およびキットを提供する。本発明に係る組成物およびキットは、土壌、堆肥、水系堆積物、活性汚泥および糞便からなる群より選択される少なくとも1つに由来するサンプルから核酸を抽出する核酸抽出液を調製するために用いられることが好ましく、火山灰土壌に由来するサンプルから核酸を抽出する核酸抽出液を調製するために用いられることがさらに好ましい。
【0023】
本明細書中において使用される場合、用語「組成物」は、各種成分が一物質中に含有されている形態であることが意図され、用語「キット」は、各種成分の少なくとも1つが別物質(例えば、容器)中に含有されている状態であることが意図される。
【0024】
上述したように、火山灰土壌のようにアロフェンを含有する土壌から核酸を効率よく抽出するためには、核酸を吸着し得るアロフェンを効果的に破壊するか、またはDNAもしくはRNA(アロフェンに特に吸着されやすい)が吸着されてしまう前にアロフェンの吸着部位をブロックする必要がある。本発明者らは、EDTAおよびリン酸溶液を高濃度で使用することによってアロフェンの吸着能力を不活性化し、簡便にDNAを抽出する技術を開発している(特許文献1参照)。この技術は、アロフェンを含有する土壌からDNAを効率よく抽出する技術として非常に優れている。しかし、RNAは高塩濃度条件下で不溶化して沈殿してしまうので、RNA抽出用の技術として適切ではない。
【0025】
本発明者らは土壌からのRNA抽出技術を開発するために更なる検討を重ねたが、土壌からRNAを高収量で抽出する技術は未だ知られていないので、開発に適用すべき具体的な指標がなく、試行錯誤を繰り返した。その結果、特定の化合物を用いれば、低塩濃度条件下であってもアロフェンの吸着能力を不活性化し得ることを見出した。
【0026】
本発明に係る組成物は、核酸抽出液を調製するためのものであり、フッ化化合物およびケイ酸化合物から選択される化合物の少なくとも1つを含んでいることを特徴としている。また、本発明に係るキットは、フッ化化合物およびケイ酸化合物から選択される化合物の少なくとも1つを備えていることを特徴としている。
【0027】
フッ化化合物およびケイ酸化合物から選択される化合物としては、例えば、NaF、NaSiF、KSiF、(NHSiF、NaPF、KPF、NHPFなどが挙げられるがこれらに限定されない。後述する実施例においてNaSiFを用いて本発明を実証し、NaSiFは溶解度が低いがアロフェンとの反応性が高いことを示している。RNAは塩濃度が高いと不溶化して沈殿してしまうため、塩濃度が高くなる高濃度のEDTA、リン酸溶液は使用することが困難である。しかし、水溶液中でNaSiFを土壌と混和すると徐々に反応が進み、塩濃度が比較的低い状態でアロフェンを不活性化し得ることがわかった。なお、本明細書を読んだ当業者であれば、このような効果を奏する化合物はNaSiFに限定されないことを容易に理解する。
【0028】
本発明においてNaSiFが用いられる場合、調製された核酸抽出液中においてNaSiFは好ましくは1~100g/L、より好ましくは5~50g/L、さらに好ましくは25~50g/Lの範囲内の濃度で含まれ得る。よって、本発明に係る組成物は、好ましくは1~100g/L、より好ましくは5~50g/L、さらに好ましくは25~50g/Lの範囲内の濃度で核酸抽出液中に供給されるようにNaSiFを含んでいる。
【0029】
特許文献1に開示されるように、EDTAもまたアロフェンを不活性化するに有効である。よって、本発明に係る組成物もまた、EDTAをさらに含んでいてもよい。ただし、特許文献1において用いられているような高濃度のEDTAでは目的の効果を奏さないので、本発明にEDTAが用いられる場合、調製された核酸抽出液中においてEDTAは好ましくは10~300mM、より好ましくは50~200mM、さらに好ましくは50~100mMの範囲内の濃度で含まれ得る。よって、本発明に係る組成物は、好ましくは10~300mM、より好ましくは50~200mM、さらに好ましくは50~100mMの範囲内の濃度で核酸抽出液中に供給されるようにEDTAを含んでいる。なお、DNaseの不活性化を考慮すると、抽出液中のEDTAの濃度は100mM以下で用いられることが好ましい。よって、本発明に係る組成物は、100mM以下で核酸抽出液中に供給されるようにEDTAを含んでいることがなおさらに好ましい。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「リン酸」はリン酸緩衝液またはリン酸緩衝化剤を包含する。リン酸緩衝液は当該分野において周知であり、DNA抽出においてよく用いられている。特許文献1に開示されるように、リン酸もまたアロフェンを不活性化するに有効である。よって、本発明に係る組成物もまた、リン酸をさらに含んでいてもよい。特許文献1において用いられているような高濃度でなくても目的の効果を奏し得るが、後述する実施例において示すように、リン酸濃度は高い方が好ましい。本発明にリン酸が用いられる場合、調製された核酸抽出液中においてリン酸は10~500mM、より好ましくは50~300mM、さらに好ましくは200~300mMの範囲内の濃度で含まれ得る。よって、本発明に係る組成物は、好ましくは10~500mM、より好ましくは50~300mM、さらに好ましくは200~300mMの範囲内の濃度で核酸抽出液中に供給されるようにリン酸を含んでいる。本発明に係る組成物が含んでいるリン酸の形態は特に限定されず、固体であっても液体であってもよく、当業者に容易に理解され得る。なお、本発明を実施するにおいて、リン酸はEDTAと併用されても単独で用いられてもよい。
【0031】
細菌や真菌などからの核酸抽出の際には、界面活性剤によって細胞のタンパク質を変性させて細胞構造を破壊することが必要である。よって、本発明に係る組成物は、界面活性剤をさらに含んでいてもよい。本発明に界面活性剤が用いられる場合、調製された核酸抽出液中において、界面活性剤は好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下の濃度で含まれ得る。よって、本発明に係る組成物は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下の濃度で核酸抽出液中に供給されるように界面活性剤を含んでいることが好ましい。なお、本発明に利用可能な界面活性剤は、SDS、CTAB、Triton X-100およびN-ラウロイルサルコシンナトリウムからなる群より選択されることが好ましいがこれらに限定されない。
【0032】
なお、核酸抽出液のpHは好ましくは7以上、より好ましくは7.5以上、さらに好ましくは8.0~9.0の範囲内である。よって、本発明に係る組成物は、調製された核酸抽出液中において上記pH環境が提供されるように、緩衝液(または緩衝化剤)をさらに含んでいてもよい。
【0033】
本発明に係るキットは、フッ化化合物およびケイ酸化合物から選択される化合物の少なくとも1つ以外に、上述した組成物の成分をさらに別個に備えている形態であってもよい。すなわち、本発明に係るキットは、フッ化化合物およびケイ酸化合物から選択される化合物の少なくとも1つを備えていることを特徴としており、EDTA、リン酸および/または界面活性剤をさらに備えていてもよい。また、核酸抽出を実施するために必要な試薬または器具をさらに備えていてもよく、抽出後に精製を行う場合は、精製を実行するに必要な試薬又は器具をさらに備えていてもよい。
【0034】
本明細書中において使用される場合、用語「キット」は、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装が意図される。好ましくは試薬または器具の各々を使用するための指示書が備えられている。本明細書中にてキットの局面において使用される場合、「備えた(備えている)」は、キットを構成する個々の容器のいずれかの中に試薬などが内包されている状態が意図される。「指示書」は、紙またはその他の媒体に印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピューター読み取り可能ディスクまたはテープ、CD-ROMなどのような電子媒体に記録されていてもよい。
【0035】
〔2:核酸抽出液およびその製造方法〕
本発明に係る核酸抽出液の製造方法は、フッ化化合物およびケイ酸化合物から選択される化合物の少なくとも1つを含む溶液を調製する工程を包含することを特徴としており、該溶液にEDTAを含ませる工程、該溶液にリン酸を含ませる工程、または該溶液に界面活性剤を含ませる工程をさらに包含してもよい。
【0036】
種々の核酸抽出液が当該分野において知られている。すなわち、本発明に係る核酸抽出液の製造方法は、フッ化化合物およびケイ酸化合物から選択される化合物の少なくとも1つを含む溶液を公知の核酸抽出液に混合(添加)することによって製造され得る。また、用いられる公知の核酸抽出液がEDTA、リン酸および/または界面活性剤を含んでいない場合は、これらをさらに混合(添加)すればよいといえる。
【0037】
このように本発明に係る核酸抽出液は、フッ化化合物およびケイ酸化合物から選択される化合物の少なくとも1つを含んでおり、EDTA、リン酸および/または界面活性剤をさらに含んでいてもよい。本発明を用いれば、土壌からDNAだけでなくRNAも高収量で抽出することができる。
【0038】
〔3:核酸抽出方法〕
本発明に係る核酸抽出方法は、上述した核酸抽出液を用いることを特徴としており、具体的には、フッ化化合物およびケイ酸化合物から選択される化合物の少なくとも1つを含む抽出液中でサンプルから核酸を抽出する工程を包含している。
【0039】
本発明に係る核酸抽出方法は、土壌、堆肥、水系堆積物、活性汚泥および糞便からなる群より選択される少なくとも1つに由来するサンプルから核酸を抽出するために用いられることが好ましい。
【0040】
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0041】
〔土壌サンプル〕
図1に示した2種類の土壌を用いた。弥生堆肥区土壌は堆肥を年に一回投入しているため、比較的有機物の集積が進んだ淡色黒ボク土壌である。群馬農業試験場の畑地土壌は有機物の集積があまり進んでいない淡色黒ボク土壌である。
【0042】
〔土壌核酸溶液の抽出〕
上記2種類の土壌の風乾細土50gに、20mlのLB培地(tryptone 10g,yeast extract 5g/1L)を添加し、30℃で2日間インキュベートした。インキュベートした土壌0.25gを2mlのスクリューキャップチューブに取り、これに1gのシリカ/ジルコニアビーズ(直径0.1mmのものと0.5mmのものとを2:1で混合したもの)と直径5mmのガラスビーズを一個添加した。このチューブにNaSiF溶液(0.5g/ml)を10μl、25μl、50μlまたは100μl添加し、さらに抽出液[I]~[III]のいずれかを先に添加したNaSiF溶液と合わせて1250μlになるように添加した。なお、抽出液にはRNase阻害剤としてATA(aurintricarboxylic acid)を含有させている。
【0043】
【化1】
JP0005105237B2_000002t.gif

【0044】
これらチューブ中の試料に対して、ビーズ破砕機(Micro Smash MS-100 トミー精工)で3000rpmにて30秒間のBeads Beating処理を行い、次いで、この試料を65℃で30分間インキュベートした。続いて、10,000×g、25℃で5分間遠心分離し、上清を回収した。この上清750μlに等量のクロロホルムを添加し、次いでvortexし、12,000×g、25℃で20分間遠心分離し、上清500μlを回収した。この上清を適時希釈後に等量の2-propanolを添加し、次いでvortexし、20000×g、4℃で20分間遠心分離し、DNAおよびRNAを沈殿として回収した。この沈殿物を、70%エタノールで洗浄し、次いで乾燥した。乾燥させた沈殿物を50μlのTE緩衝液(pH8.0)に溶解して、土壌核酸溶液を得た。
【0045】
〔DNAおよびRNAの定量〕
DNAとRNAを1.5%アガロースゲル電気泳動(×0.5 TAE緩衝液中で50Vにて30分間)によって分離した後に、このゲルをSYBR GreeIIで1時間染色した。BAS3000(富士写真フィルム社製)を用いて、473nm励起、532nmカットの条件でDNA、RNAを蛍光により定量的に検出した。ゲルの上端に近い5000bpより大きいサイズの部分をDNAとして、23S rRNAと16S rRNAの2本のrRNAバンドをRNAとして、Image Gaugeによって輝度を計測した。なお、各ゲルには、4~5段階の標準としてλDNAのHindIII消化物を0.05μg~0.25μgを同時に電気泳動し、λDNAのHindIII消化物を基準にした検量線に基づいてDNA量およびRNA量を定量した。
【0046】
〔結果〕
結果を図2~4に示す。NaSiFの添加により土壌からのDNAおよびRNAの抽出量が増加したことがわかる。NaSiFの添加量を土壌250mgあたり5mg~50mgの範囲内で検討した。NaSiFの添加の必要量は土壌によって異なっていたが、250mgの土壌に対し50mg程度添加すると良好な結果が得られた。NaSiFを多く入れることによるpH低下に伴って収量が低下することが懸念されたが、特に問題なかった。なお、従来DNAの抽出が非常に困難であった群馬農業試験場土壌(有機物含量が少ない淡色黒ボク土壌)に対しては、250mgの土壌に対し50mgのNaSiFの添加により抽出量の大幅な向上が得られた。また、抽出液のリン酸濃度が濃いほど抽出量が向上し、抽出液[III]が最もよい結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、土壌からのRNAの抽出技術として、土壌からのDNAの抽出技術と同様に有用であるとともに、土壌で活動している微生物を正確に評価し得、その結果、土壌での土壌微生物の生態をリアルタイムに検出し得る。このように、本発明は、土壌からのRNAの抽出技術は、植物病害や特定の遺伝子発現解析など幅広い分野への活用が期待し得るとともに、わが国の土壌微生物の生態を明らかにするためにも非常に有用な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例において用いた土壌の性状を示す図である。
【図2】弥生堆肥区土壌から抽出したDNAの量を示すグラフである。
【図3】弥生堆肥区土壌から抽出したRNAの量を示すグラフである。
【図4】群馬農業試験場の畑地土壌から抽出したDNAの量を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3