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明細書 :酸素含有炭化水素の改質用触媒、それを用いた水素又は合成ガスの製造方法及び燃料電池システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5178143号 (P5178143)
公開番号 特開2008-279427 (P2008-279427A)
登録日 平成25年1月18日(2013.1.18)
発行日 平成25年4月10日(2013.4.10)
公開日 平成20年11月20日(2008.11.20)
発明の名称または考案の名称 酸素含有炭化水素の改質用触媒、それを用いた水素又は合成ガスの製造方法及び燃料電池システム
国際特許分類 B01J  23/745       (2006.01)
B01J  23/889       (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
B01J  37/04        (2006.01)
B01J  37/18        (2006.01)
C01B   3/32        (2006.01)
H01M   8/06        (2006.01)
FI B01J 23/74 301M
B01J 23/84 311M
B01J 37/08
B01J 37/04 101
B01J 37/18
C01B 3/32 Z
H01M 8/06 G
請求項の数または発明の数 15
全頁数 19
出願番号 特願2007-275772 (P2007-275772)
出願日 平成19年10月23日(2007.10.23)
優先権出願番号 2007104227
優先日 平成19年4月11日(2007.4.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年4月30日(2010.4.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】カジョンサック ファウンナワキッチ
【氏名】江口 浩一
【氏名】菊地 隆司
【氏名】福永 哲也
個別代理人の代理人 【識別番号】100078732、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 保
審査官 【審査官】田澤 俊樹
参考文献・文献 特開2005-342543(JP,A)
特開2003-010685(JP,A)
特開2003-320254(JP,A)
特開2003-010684(JP,A)
特開2003-033656(JP,A)
菊地隆司 他,"Cu系スピネル触媒によるジメチルエーテルの水蒸気改質反応",触媒,2006年,Vol.48, No.6,p.458-460
田中洋平 他,"Cu-Mn-Fe系酸化物とAl2O3の混合触媒によるジメチルエーテルの水蒸気改質反応",第94回触媒討論会討論会A予稿集,2004年,p.390
調査した分野 B01J 21/00-38/74
C01B 3/00-3/58
H01M 8/00-8/24
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
(A)Cu-Fe型スピネル、Cu-Mn型スピネル及びCu-Mn-Fe型スピネルの中から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物と(B)固体酸との混合物を、少なくとも酸素含有気体雰囲気下に700~800℃で焼成処理する工程を経て調製されてなる酸素含有炭化水素の改質用触媒。
【請求項2】
(A)成分の金属酸化物が、500~1000℃の温度で焼成することにより得られたCu-Fe型スピネルである請求項に記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒。
【請求項3】
少なくともCu-Fe型スピネルと固体酸を含む改質用触媒であって、CuKα線を入射するX線回折の測定において、少なくとも以下の3つの位置に回折線を持つ、請求項1又は2に記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒。
2θ=24.1°、33.2°、49.6°
【請求項4】
前記2θ=33.2°に現れる回折線強度と、2θ=36.1°に現れるCuFe24スピネルの最強線である回折線強度との比が、0.1~0.9の範囲にある、請求項に記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒。
【請求項5】
(A)成分の金属酸化物が、ニッケル、コバルト及び白金族元素の中から選ばれる少なくとも一種の元素を含む請求項1~のいずれかに記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒。
【請求項6】
(B)成分の固体酸が、アルミナである請求項1~のいずれかに記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒。
【請求項7】
(B)成分の固体酸が、300~750℃の温度で焼成することにより得られたγ-アルミナである請求項に記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒。
【請求項8】
焼成処理工程における酸素含有気体雰囲気が、空気雰囲気である請求項1~のいずれかに記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の改質用触媒を還元処理してなる酸素含有炭化水素の改質用触媒。
【請求項10】
酸素含有炭化水素が、ジメチルエーテルである請求項1~のいずれかに記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の改質用触媒を用い、酸素含有炭化水素を水蒸気改質することを特徴とする水素又は合成ガスの製造方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載の改質用触媒を用い、酸素含有炭化水素を自己熱改質することを特徴とする水素又は合成ガスの製造方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれかに記載の改質用触媒を用い、酸素含有炭化水素を部分酸化改質することを特徴とする水素又は合成ガスの製造方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれかに記載の改質用触媒を用い、酸素含有炭化水素を二酸化炭素改質することを特徴とする水素又は合成ガスの製造方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれかに記載の改質用触媒を備える改質器と、該改質器により製造される水素を燃料とする燃料電池とを有することを特徴とする燃料電池システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素含有炭化水素の改質用触媒、それを用いた水素又は合成ガスの製造方法及び燃料電池システムに関する。さらに詳しくは、本発明は、銅を含むスピネル構造を有する金属酸化物と固体酸との混合物を、酸素含有気体雰囲気下に特定の温度で焼成処理する工程を経て調製されてなる酸素含有炭化水素の改質用触媒、及びこの改質用触媒を用いて酸素含有炭化水素に各種改質を施し、水素又は合成ガスを効率よく製造する方法、並びにこの改質用触媒を利用した燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
合成ガスは、一酸化炭素と水素とからなり、メタノール合成、オキソ合成、フィッシャートロプシュ合成などの原料ガスとして用いられるほか、アンモニア合成や各種化学製品の原料として広く用いられている。
この合成ガスは、従来石炭のガス化による方法、あるいは天然ガスなどを原料とする炭化水素類の水蒸気改質法や部分酸化改質法などにより製造されてきた。しかしながら、石炭のガス化方法においては、複雑で高価な石炭ガス化炉が必要である上、大規模なプラントになるなどの問題があった。また、炭化水素類の水蒸気改質法においては、反応が大きな吸熱を伴うため、反応の進行に700~1200℃程度の高温を必要とし、特殊な改質炉が必要となる上、使用される触媒に高い耐熱性が要求されるなどの問題があった。さらに、炭化水素類の部分酸化改質においても、高温を必要とするために、特殊な部分酸化炉が必要となり、また反応に伴って大量の煤が生成することから、その処理が問題となる上、触媒が劣化しやすいなどの問題があった。
【0003】
そこで、このような問題を解決するために、近年、ジメチルエーテル(DME)などの酸素含有炭化水素を原料として用い、これに各種の改質を施し、合成ガスを製造することが試みられている。一方、近年、環境問題から新エネルギー技術が脚光を浴びており、この新エネルギー技術の一つとして燃料電池が注目を集めている。
この燃料電池は、水素と酸素を電気化学的に反応させることにより、化学エネルギーを電気エネルギーに変換させるものであって、エネルギーの利用効率が高いという特徴を有しており、民生用、産業用あるいは自動車用などとして、実用化研究が積極的になされている。また、発電効率が高く、最近注目度の高い固体酸化物形燃料電池は、水素以外に一酸化炭素も利用することができる。この燃料電池の水素源(固体酸化物形燃料電池においては、水素及び一酸化炭素源)としては、メタノール、メタンを主体とする液化天然ガス、この天然ガスを主成分とする都市ガス、天然ガスを原料とする合成液体燃料、さらには石油系のナフサや灯油などの石油系炭化水素の研究がなされている。
【0004】
これらの石油系炭化水素を用いて水素を製造する場合、一般に、該炭化水素に対して、触媒の存在下に水蒸気改質処理や自己熱改質処理、部分酸化改質処理などが施されるが、この場合、前記のような問題が生じる。したがって、水素の製造においても、ジメチルエーテルなどの酸素含有炭化水素を原料として用いる方法が、種々試みられている。ジメチルエーテルなどの酸素含有炭化水素を原料として、これに各種の改質を施して、水素や合成ガスを製造する際に使用される触媒については、これまで各種のものが開示されているが、その中でCu系の触媒を用いて、酸素含有炭化水素を改質する技術としては、例えばCu含有触媒を用いて、酸素含有炭化水素と二酸化炭素から合成ガスを製造させる触媒及びそれを用いた合成ガスの製造方法(特許文献1等)、Cu含有触媒を用いて、酸素含有炭化水素と水蒸気から水素を製造する触媒及びそれを用いた水素の製造方法(特許文献2等)、固体酸にCuを含む金属が担持されたものからなる酸素含有炭化水素改質用触媒(特許文献3および4等)、Cu含有物質と固体酸性物質との混合物からなる、酸素含有炭化水素と水蒸気から水素を製造する触媒及びそれを用いた水素の製造方法(特許文献5等)、Cu含有物質と固体酸性物との混合物からなる、酸素含有炭化水素と水蒸気から合成ガスを製造する触媒及びそれを用いた合成ガスの製造方法(特許文献6等)などが開示されている。
しかしながら、特許文献1~6の技術において用いられるCu系触媒は、いずれも活性が不十分であり、したがって、反応活性を向上させるために反応温度を上げると触媒が劣化するのを免れないという問題があった。
【0005】
上記問題を解決するために、銅を含み、かつスピネル構造を有する金属酸化物または、さらに固体酸性物質を含有する酸素含有炭化水素改質用触媒が提案されているが(特許文献7等)、活性はまだ充分とは言えない。特許文献7では、固体酸性物質としてアルミナ、シリカ・アルミナ、ゼオライト等が列挙されており、そしてアルミナが好ましい旨記載されている。また、特許文献8では、Cu-Zn-Al型メタノール分解型触媒とZSM-5を混合した触媒を開示しているが、特許文献7の触媒と比較して、触媒劣化の原因となるコークが生成し易い点が問題である。
一方、特許文献9では、改質触媒IIの例として、CuMnをアルミナに担持したのち、仮焼を経て500~1000℃の温度で焼成することが開示されているが、この技術においては、スピネルになる前にアルミナに担持して、その後に高温で焼成することでスピネルを生成させており、スピネル構造のものとアルミナを混合して焼成する技術とは本質的に異なるものである。
【0006】

【特許文献1】特開平10-174869号公報
【特許文献2】特開平10-174871号公報
【特許文献3】特開2001-96159号公報
【特許文献4】特開2001-96160号公報
【特許文献5】特開2003-10684号公報
【特許文献6】特開2003-33656号公報
【特許文献7】特開2005-342543号公報
【特許文献8】特開平9-118501号公報
【特許文献9】WO2004/103555号パンフレット(8、9頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下でなされたもので、銅を含み、かつスピネル構造を有する金属酸化物の酸素含有炭化水素改質用触媒としての性能をさらに改良し、ジメチルエーテルなどの酸素含有炭化水素の改質活性に優れ、かつ耐久性の向上した改質用触媒、及びこの改質用触媒を用いて、酸素含有炭化水素に各種改質を施し、水素又は合成ガスを効率よく製造する方法、並びに当該改質用触媒を用いた燃料電池システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた。その結果、銅を含むスピネル構造を有する金属酸化物と固体酸との混合物を、酸素含有気体雰囲気下に特定の温度で焼成処理する工程を経て調製されてなる触媒が、酸素含有炭化水素の改質用触媒として、その目的に適合し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)(A)銅を含み、かつスピネル構造を有する金属酸化物と(B)固体酸との混合物を、少なくとも酸素含有気体雰囲気下に300~850℃で焼成処理する工程を経て調製されてなる酸素含有炭化水素の改質用触媒、
(2)(A)成分の金属酸化物が、Cu-Fe型スピネル、Cu-Mn型スピネル及びCu-Mn-Fe型スピネルの中から選ばれる少なくとも一種である上記(1)に記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒、
(3)(A)成分の金属酸化物が、500~1000℃の温度で焼成することにより得られたCu-Fe型スピネルである上記(2)に記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒、
(4)少なくともCu-Fe型スピネルと固体酸を含む改質用触媒であって、CuKα線を入射するX線回折の測定において、少なくとも以下の3つの位置に回折線を持つ、上記(2)又は(3)に記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒、
2θ=24.1°、33.2°、49.6°
(5)前記2θ=33.2°に現れる回折線強度と、2θ=36.1°に現れるCuFe24スピネルの最強線である回折線強度との比が、0.1~0.9の範囲にある、上記(4)に記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒、
(6)(A)成分の金属酸化物が、ニッケル、コバルト及び白金族元素の中から選ばれる少なくとも一種の元素を含む上記(1)~(5)のいずれかに記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒、
(7)(B)成分の固体酸が、アルミナである上記(1)~(6)のいずれかに記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒、
(8)(B)成分の固体酸が、300~750℃の温度で焼成することにより得られたγ-アルミナである上記(7)に記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒、
(9)焼成処理工程における酸素含有気体雰囲気が、空気雰囲気である上記(1)~(8)のいずれかに記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒、
(10)上記(1)~(9)のいずれかに記載の改質用触媒を還元処理してなる酸素含有炭化水素の改質用触媒、
(11)酸素含有炭化水素が、ジメチルエーテルである上記(1)~(10)のいずれかに記載の酸素含有炭化水素の改質用触媒、
(12)上記(1)~(11)のいずれかに記載の改質用触媒を用い、酸素含有炭化水素を水蒸気改質することを特徴とする水素又は合成ガスの製造方法、
(13)上記(1)~(11)のいずれかに記載の改質用触媒を用い、酸素含有炭化水素を自己熱改質することを特徴とする水素又は合成ガスの製造方法、
(14)上記(1)~(11)のいずれかに記載の改質用触媒を用い、酸素含有炭化水素を部分酸化改質することを特徴とする水素又は合成ガスの製造方法、
(15)上記(1)~(11)のいずれかに記載の改質用触媒を用い、酸素含有炭化水素を二酸化炭素改質することを特徴とする水素又は合成ガスの製造方法、
および
(16)上記(1)~(11)のいずれかに記載の改質用触媒を備える改質器と、該改質器により製造される水素を燃料とする燃料電池とを有することを特徴とする燃料電池システム、
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、銅を含み、かつスピネル構造を有する金属酸化物の酸素含有炭化水素改質用触媒としての性能をさらに改良し、ジメチルエーテルなどの酸素含有炭化水素の改質活性に優れ、かつ耐久性の向上した改質用触媒、及びこの改質用触媒を用いて、酸素含有炭化水素に各種改質を施し、水素又は合成ガスを効率よく製造する方法、並びに当該改質用触媒を用いた燃料電池システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、本発明の酸素含有炭化水素の改質用触媒について説明する。
[酸素含有炭化水素の改質用触媒]
本発明の酸素含有炭化水素の改質用触媒は、(A)銅を含み、かつスピネル構造を有する金属酸化物と(B)固体酸との混合物を、少なくとも酸素含有気体雰囲気下に焼成処理する工程を経て調製された触媒である。
(銅を含むスピネル構造の金属酸化物)
本発明において、(A)成分として用いるスピネル構造を有する金属酸化物とは、AB24型の金属複酸化物にみられる代表的結晶構造型の一つで立方晶系を有している。前記AB24において、通常Aは二価の金属であり、Bは三価の金属である。
本発明においては、銅を含むスピネル構造の金属酸化物が用いられ、このような金属酸化物としては、触媒活性及び耐熱性などの点から、Cu-Mn型スピネル、Cu-Fe型スピネル、Cu-Mn-Fe型スピネルが好ましい。前記Cu-Mn型スピネルとしては、例えばCuMn24などを挙げることができ、Cu-Fe型スピネルとしては、例えばCuFe24などを挙げることができる。Cu-Mn-Fe型スピネルとしては、Cu(Mn,Fe)24スピネルであるCu(Mn1.5Fe0.5)O4、Cu(Mn1.0Fe1.0)O4、Cu(Mn2/3Fe4/3)O4、Cu(Mn0.5Fe1.5)O4スピネルなどが挙げられる。
また、CuCr24などのCu-Cr型スピネル、さらにはCuAl24スピネルや、Cu(FeCr)24、Cu(FeAl)24スピネルなどを用いることもできる。
【0012】
当該(A)成分の金属酸化物は、ニッケル、コバルト及び白金族元素の中から選ばれる少なくとも1種の元素を含むことができる。このニッケル、コバルトおよび白金族元素は上述のようにCuとともにスピネル構造を有していても良いし、Cu含有スピネルに混合されている状態でも良い。なお、白金族元素は、Pt、Ru、Rh、Pd、Irを包含する。
前記ニッケルやコバルトがCuとともにスピネル構造を有するものとしては、前記スピネルの一部をNi、Coで置換したCu-Ni-Mn型スピネル、Cu-Co-Mn型スピネル、Cu-Ni-Mn-Fe型スピネル、Cu-Ni-Fe型スピネル、Cu-Co-Fe型スピネル、Cu-Co-Mn-Fe型スピネルなどを例示することができる。
なお、本発明の改質用触媒においては、(A)成分の銅を含むスピネル構造の金属酸化物として、非スピネル構造の銅を含む化合物を、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により含有するものも用いることができる。
【0013】
次に、銅を含むスピネル構造の金属酸化物の調製方法の一例について、CuMn24スピネルを調製する場合を例に挙げて説明する。
まず、銅源として、硝酸銅などの水溶性銅塩を、マンガン源として、硝酸マンガンなどの水溶性マンガン塩を用い、これらを実質上化学量論的な割合、すなわちCuとMnのモル比が、実質上1:2になるように含む水溶液を調製する。次いで、この水溶液に、クエン酸などのキレート剤を加えたのち、加熱して水を蒸発させてゲルを生成させる。次に、このゲルを加熱処理して、ゲル中の硝酸根やクエン酸などを分解して得られた酸化物微粉末を、空気中で300~500℃程度の温度で1~5時間程度仮焼したのち、さらに500~1,000℃程度の温度で5~15時間程度焼成することにより、CuMn24スピネルからなる触媒が得られる。また700℃以上の高温で焼成した場合は、Mn23とCu1.5Mn1.54スピネルの混合物になると言われているが、この場合も(A)成分として使用可能である。
【0014】
この方法においては、CuがMnに対して化学量論的な割合より過剰になるように、銅源を用いることができる。この場合、得られた触媒は、銅の酸化物(Cu2O又はCuOあるいはそれらの混合物)とスピネル型酸化物との混合物となり、このものも、(A)成分として用いることができる。
また、CuFe24スピネルからなる触媒を調製する場合には、前記マンガン源の代わりに、硝酸鉄などの水溶性鉄塩等の鉄源を用いればよい。さらに、前記マンガン源の代わりに、鉄源とマンガン源との混合物を用いることにより、Cu(FeMn)24スピネルからなる触媒を得ることができる。このものも、もちろん(A)成分として用いることができる。
これらの(A)成分は、通常適当な大きさのペレット状に成型されて用いられる。
本発明においては、(A)成分の銅を含むスピネル構造を有する金属酸化物として、前記スピネルを一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、触媒活性の点から、特に500~1000℃の温度で焼成することにより得られたCu-Fe型スピネルが好適である。
【0015】
(固体酸)
本発明の改質用触媒において、(B)成分として用いる固体酸とは、固体でありながらブレンステッド酸又はルイス酸の特性を示すものであり、具体的にはアルミナ、シリカ・アルミナ、シリカ・チタニア、ゼオライト、シリコリン酸アルミニウム(SAPO)などが挙げられる。これらは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で得られる触媒の活性などの点から、アルミナが好適である。
この固体酸として用いられるアルミナとしては、市販のα、β、γ、η、θ、κ、χのいずれの結晶形態のものも使用できる。また、ベーマイト、バイアライト、ギブサイト等のアルミナ水和物を焼成したものも使用できる。この他に、硝酸アルミニウムにpH8~10程度のアルカリ緩衝液を加えて水酸化物の沈殿を生成させ、これを焼成したものを使用してもよいし、塩化アルミニウムを焼成してもよい。また、アルミニウムイソプロポキシド等のアルコキシドを2-プロパノール等のアルコールに溶解させ加水分解用の触媒として塩酸等の無機酸を添加してアルミナゲルを調製し、これを乾燥、焼成するゾル・ゲル法によって調製したものを使用することもできる。
本発明においては、(B)成分として、前記固体酸を一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、触媒活性の点から、特に300~750℃程度の温度で焼成することにより得られたγ-アルミナが好適である。
【0016】
(焼成処理)
本発明の改質用触媒は、前述した(A)成分の銅を含むスピネル構造の金属酸化物と、(B)成分の固体酸との混合物を、酸素含有気体雰囲気下に焼成処理する工程を経て調製される。
前記(A)成分と(B)成分との混合割合については特に制限はないが、触媒活性の観点から、混合物中に、Cuとして、通常1~50質量%、好ましくは2~30質量%の範囲で含まれることが望ましい。
前記混合物の調製法に特に制限はないが、各種の物理的混合方法を採用することができる。
また、焼成時の雰囲気としては、酸素含有気体であればよく、特に制限はないが、経済性などの観点から、空気雰囲気が好適である。
焼成温度は、触媒活性の観点から、300~850℃、好ましくは350~800℃、より好ましくは700~800℃の範囲で選定される。300℃未満では触媒活性又は耐久性の向上効果が充分でなく、850℃を超えると固体酸の凝集や相変化がおこり、酸としての性能を発揮できなくなる。焼成時間は、焼成温度に左右され、一概に決めることはできないが、通常10分~50時間程度、好ましくは1~20時間程度である。
【0017】
また、本発明の改質用触媒は、CuKα線を入射するX線回折の測定において、少なくとも2θ=24.1°、33.2°、49.6°の3つの位置に回折線強度を持つものが好ましい。この位置に回折線強度を有すると、酸素含有炭化水素の改質能力が向上する。特に好ましくは、前記2θ=33.2°に現れる回折線強度と、2θ=36.1°に現れるCuFe24スピネルの最強線である回折線強度との比が、0.1~0.9の範囲にある改質用触媒である。
本発明者らは、CuFeスピネルとアルミナの混合物を高温で焼成することにより、CuFeAlスピネルが生成し、それが高活性の要因となっている可能性があると推定した。そのとき、スピネル内のFeがAlと置換するので、押し出されたFeがFe23の形態で存在し、2θ=24.1°、33.2°、49.6°に新たにピークが現れたものと推定される。
すなわち、(i)CuFe型スピネルを有する酸素含有炭化水素の改質用触媒であって、かつその触媒が少なくとも2θ=24.1°、33.2°、49.6°にX線回折線強度を持つ触媒、より好ましくは〈ii〉更に前記2θ=33.2°に現れる回折線強度と、2θ=36.1°に現れるCuFe24スピネルの最強線である回折線強度との比が、0.1~0.9の範囲にある改質用触媒は、酸素含有炭化水素の改質用触媒として優れたものになる。
【0018】
かかるX線回折線強度を有する酸素含有炭化水素の改質用触媒の製造方法として、例えば、前述した(A)成分のCu-Fe型スピネルと、(B)固体酸との混合物を700~800℃で焼成処理する方法を挙げることができる。
【0019】
(還元処理)
本発明においては、前記のようにして焼成処理して得られた改質用触媒を、還元処理することにより、さらに活性を向上させることができる。還元処理は、水素を含む気流中で処理する気相還元方法と、還元剤で処理する湿式還元方法がある。前者の還元処理は、通常水素を含む気流下、150~500℃程度、好ましくは、200~400℃の温度で30分~24時間、好ましくは、1~10時間実施する。水素ガス以外に、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを共存させてもよい。
後者の湿式還元法としては、液体アンモニア/アルコール/Na,液体アンモニア/アルコール/Liを用いるBirch還元、メチルアミン/Li等を用いるBenkeser還元、Zn/HCl,Al/NaOH/H2O,NaH,LiAlH4又はその置換体、ヒドロシラン類、水素化ホウ素ナトリウム又はその置換体、ジボラン、蟻酸、ホルマリン、ヒドラジン等の還元剤で処理する方法がある。この場合、通常、室温~100℃で、10分~24時間程度、好ましくは、30分~10時間行うものである。
また、反応原料を流すことによって、生成した水素やCOによって反応中にも触媒は還元される。
本発明においては、触媒は還元前処理あるいは生成ガスによって還元されることで、Cuあるいは他の元素はスピネル構造から脱離し、スピネル構造は一部あるいは全部が保持されていない状態になっているが、最初にスピネル構造を有するCu触媒を使用することが本発明の重要な点である。
【0020】
本発明の改質用触媒が適用される酸素含有炭化水素としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテルなどのエーテル類を好ましく挙げることができる。この中でジメチルエーテルが特に好ましい。
本発明の水素又は合成ガスの製造方法においては、前述の本発明の改質用触媒を用いてジメチルエーテルなどの酸素含有炭化水素を、(1)水蒸気改質、(2)自己熱改質、(3)部分酸化改質又は(4)二酸化炭素改質することにより、水素又は合成ガスを製造する。
次に、各改質方法についてジメチルエーテルを用いた場合を例に挙げて説明する。
【0021】
[水蒸気改質]
本発明の改質用触媒を用いる場合、ジメチルエーテルの水蒸気改質は、以下に示す反応式に従って、反応が進行するものと思われる。
CH3OCH3 + H2O → 2CH3OH ・・・(1)
2CH3OH + 2H2O → 2CO2 + 6H2 ・・・(2)
2CO2 + 2H2 → 2CO + 2H2O ・・・(3)
したがって、水素を製造する場合には、前記(3)の反応が進行しにくいように、
すなわち
CH3OCH3 + 3H2O → 2CO2 + 6H2 ・・・(4)
の反応が起こるように反応条件を選択すればよい。
一方、合成ガスを製造する場合には、前記(1)、(2)及び(3)の反応が生じるように、すなわち
CH3OCH3 + H2O → 2CO + 4H2 ・・・(5)
の反応が起こるように反応条件を選択すればよい。
水素を製造する場合、水蒸気/ジメチルエーテルモル比は、理論的には3であるが、3~6程度が好ましく、一方、合成ガスを製造する場合、水蒸気/ジメチルエーテルモル比は、理論的には1であるが、1~2程度が好ましい。
反応温度は、通常200~500℃、好ましくは250~450℃の範囲で選定される。この温度が200℃以上であればジメチルエーテルの転化率の低下を抑えることができ、500℃以下であれば触媒の熱劣化を防止することができる。GHSV(ガス時空間速度)は、ジメチルエーテル基準で50~5,000h-1、更に好ましくは100~1600h-1の範囲である。このGHSVが50h-1以上であれば生産効率が低下するのを抑制することができ、5,000h-1以下であればジメチルエーテルの転化率が低下するのを抑制することができる。また、反応圧力は、通常、常圧~1MPa程度である。この圧力をこのような範囲とすることにより、ジメチルエーテルの転化率が低下するのを防止することができる。
【0022】
[自己熱改質]
自己熱改質反応においては、ジメチルエーテルの酸化反応と水蒸気との反応が同一リアクター内で、又は連続したリアクター内で起こる。この場合、水素製造と合成ガス製造では、反応条件は若干異なるが、一般的には、酸素/ジメチルエーテルモル比は、好ましくは0.1~1の範囲で選定され、水蒸気/ジメチルエーテルモル比は、好ましくは0.5~3の範囲で選定される。酸素/ジメチルエーテルモル比が0.1以上であれば発熱による反応熱の供給を十分に行うことができ、一方1以下であれば完全酸化が生じて水素濃度が低下するのを防止することができる。また、水蒸気/ジメチルエーテルモル比が0.5以上であれば水素濃度の低下を抑制することができ、一方3以下であれば発熱の供給が足りなくなるのを防止することができる。
反応温度は、通常200~800℃、好ましくは250~500℃の範囲で選定される。また、GHSV及び反応圧力については、前記水蒸気改質の場合と同様である。
【0023】
[部分酸化改質]
部分酸化改質反応は、ジメチルエーテルの部分酸化反応が起こり、水素製造と合成ガス製造では、反応条件が若干異なるが、一般的には、酸素/ジメチルエーテルモル比は、好ましくは0.3~1.5の範囲で選定される。この酸素/ジメチルエーテルモル比が0.3以上であればジメチルエーテルの転化率が十分に高くなり、一方1.5以下であれば完全酸化が起こり、水素濃度が低下するのを防止することができる。反応温度は、通常200~900℃、好ましくは250~600℃の範囲で選定される。また、GHSV及び反応圧力については、前記水蒸気改質の場合と同様である。
【0024】
[二酸化炭素改質]
二酸化炭素改質反応は、ジメチルエーテルと二酸化炭素の反応が起こり、水素製造と合成ガス製造では、反応条件は若干異なるが、一般的には、CO2/ジメチルエーテルモル比は、好ましくは0.8~2、より好ましくは0.9~1.5の範囲で選定される。このCO2/ジメチルエーテルモル比が0.8以上であればジメチルエーテルの転化率が十分に高くなり、一方2以下であれば生成物中にCO2が多く残り、水素の分圧が低下するのを防止することができる。この反応では、水蒸気を導入することができ、この導入により水素濃度を高めることが可能となる。また、反応温度、GHSV及び反応圧力については、前記水蒸気改質の場合と同様である。
【0025】
[燃料電池システム]
本発明の燃料電池システムは、前述の改質用触媒を備える改質器と、該改質器により製造される水素を燃料とする燃料電池とを有することを特徴とする燃料電池システムであり、図1により説明する。図1は本発明の燃料電池システムの一例の流れ図である。
燃料タンク21内の燃料(酸素含有炭化水素)は脱硫器23に導入される(図1には示されていないが、酸素含有炭化水素が液体の場合はポンプを介して導入される)。通常、酸素含有炭化水素として好適なジメチルエーテルやメタノールを使用する場合には硫黄は含まれないが、着臭剤等として硫黄含有化合物を含む場合等に脱硫器が有効である。脱硫器23には例えば活性炭、ゼオライト又は金属系の吸着剤などを充填することができる。脱硫器23で脱硫された燃料は水タンクから水ポンプ24を経た水と混合した後、気化器1に導入されて気化され、改質器31に送り込まれる。改質器31には前述の改質触媒が充填されており、改質器31に送り込まれた燃料混合物(酸素含有炭化水素及び水蒸気)から、前述した水蒸気改質反応によって水素が製造される。
【0026】
このようにして製造された水素はCO変成器32、CO選択酸化器33を通じてCO濃度が燃料電池の特性に影響を及ぼさない程度まで低減される。これらの反応器に用いる触媒例としては、CO変成器32においては、鉄-クロム系、銅-亜鉛系、貴金属系触媒が用いられ、CO選択酸化器33においては、ルテニウム系、白金系触媒あるいはそれらの混合触媒が用いられる。改質反応で製造された水素中のCO濃度が低い場合、CO変成器32を取り付けなくてもよい。
【0027】
燃料電池34は負極34Aと正極34Bとの間に高分子電解質34Cを備えた固体高分子形燃料電池の例である。負極側には上記の方法で得られた水素リッチガスが、正極側には空気ブロアー35から送られる空気が、それぞれ必要であれば適当な加湿処理を行った後(加湿装置は図示せず)導入される。
この時、負極側では水素ガスがプロトンとなり電子を放出する反応が進行し、正極側では酸素ガスが電子とプロトンを得て水となる反応が進行し、両極34A、34B間に直流電流が発生する。その場合、負極には、白金黒もしくは活性炭担持のPt触媒あるいはPt-Ru合金触媒などが使用され、正極には、白金黒もしくは活性炭担持のPt触媒などが使用される。
【0028】
負極34A側に改質器31のバーナ31Aを接続して余った水素を燃料とすることができる。また、正極34B側に気水分離器36を接続し、正極34B側に供給された空気中の酸素と水素との結合により生じた水と排気ガスとを分離し、水を水蒸気の生成に利用することができる。燃料電池34では発電に伴って熱が発生するため、排熱回収装置37を付設してこの熱を回収して有効利用することができる。排熱回収装置37は、燃料電池34に付設され反応時に生じた熱を奪う熱交換器37Aと、この熱交換器37Aで奪った熱を水と熱交換するための熱交換器37Bと、冷却器37Cと、これら熱交換器37A、37B及び冷却器37Cへ冷媒を循環させるポンプ37Dとを備え、熱交換器37Bにおいて得られる温水は他の設備などで有効に利用することができる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0030】
調製例1 CuFe24スピネル型酸化物
ビーカーに硝酸銅(和光純薬工業株式会社製,99.9%Cu(NO32・3H2O) 24.184gと硝酸鉄(和光純薬工業株式会社製,99.9%Fe(NO33・9H2O)80.881gを入れ蒸留水に溶かして300mlとした。それを60℃に加温し2時間攪拌した。
次いで,この溶液にクエン酸一水和物(和光純薬工業株式会社製、99.5%C6872)92.926gを加え、更に60℃で1時間攪拌したのち,90℃に昇温して水を蒸発させた。
このようにして生成したゲルの硝酸根およびクエン酸を空気中140~200℃にて分解し、酸化物微粉末を得たのち、空気中にて900℃で10時間焼成を行ないCuFe24スピネル型酸化物を得た。
【0031】
調製例2 CuMn24スピネル型酸化物
ビーカーに硝酸銅(和光純薬工業株式会社製,99.9%Cu(NO3) 2・3H2O)24.184gと硝酸マンガン(Aldrich社製,98%Mn(NO3)2・6H2O)58.588gを入れ蒸留水に溶かして300mlとした。それを60℃に加温し2時間攪拌した。
次いで,この溶液にクエン酸一水和物(和光純薬工業株式会社製、99.5%C6872)92.926gを加え、更に60℃で1時間攪拌したのち,90℃に昇温して水を蒸発させた。
このようにして生成したゲルの硝酸根およびクエン酸を空気中140~200℃にて分解し、酸化物微粉末を得たのち、空気中にて900℃で10時間焼成を行ないCuMn24スピネル型酸化物を得た。
【0032】
調製例3 CuFe1.5Mn0.54スピネル型酸化物
ビーカーに硝酸銅(和光純薬工業株式会社製,99.9%Cu(NO3)2・3H2O)24.184gと硝酸鉄(和光純薬工業株式会社製,99.9%Fe(NO3)3・9H2O)60.661gと硝酸マンガン(Aldrich社製,98%Mn(NO3)2・6H2O)14.647gを入れ蒸留水に溶かして300mlとした。それを60℃に加温し2時間攪拌した。
次いで,この溶液にクエン酸一水和物(和光純薬工業株式会社製、99.5%C6872)92.926gを加え、更に60℃で1時間攪拌したのち,90℃に昇温して水を蒸発させた。
このようにして生成したゲルの硝酸根およびクエン酸を空気中140~200℃にて分解し、酸化物微粉末を得たのち、空気中にて900℃で10時間焼成を行ない、CuFe1.5Mn0.54スピネル型酸化物を得た。
【0033】
実施例1
調製例1で得たCuFe24スピネル型酸化物10gと、700℃で30分間焼成したγ-アルミナ(住友化学社製「AKP-G015」)5gを乳鉢で混合した。それを10体積%の水素を含む窒素ガス中にて、600℃で3時間還元し、その後、空気雰囲気下、350℃にて10時間焼成することにより、改質用触媒を調製した。
実施例2
実施例1において、空気雰囲気下での焼成条件を、500℃、10時間に変更した以外は、実施例1と同様にして改質用触媒を調製した。
実施例3
実施例1において、空気雰囲気下での焼成条件を、700℃、10時間に変更した以外は、実施例1と同様にして改質用触媒を調製した。
実施例4
実施例1において、空気雰囲気下での焼成条件を、800℃、10時間に変更した以外は、実施例1と同様にして改質用触媒を調製した。
【0034】
実施例5
実施例1において、10体積%の水素を含む窒素ガス中での還元条件を、350℃、3時間に変更した以外は、実施例1と同様にして改質用触媒を調製した。
実施例6
実施例2において、10体積%の水素を含む窒素ガス中での還元条件を、350℃、3時間に変更した以外は、実施例2と同様にして改質用触媒を調製した。
実施例7
実施例3において、10体積%の水素を含む窒素ガス中での還元条件を、350℃、3時間に変更した以外は、実施例3と同様にして改質用触媒を調製した。
【0035】
実施例8
実施例7で得られた触媒を10~18.5メッシュに加圧成型後、所定量を反応器に充填し、10体積%の水素を含む窒素ガス中にて、350℃で3時間還元することにより、改質用触媒を調製した。
実施例9
実施例4において、10体積%の水素を含む窒素ガス中での還元条件を、350℃、3時間に変更した以外は、実施例4と同様にして改質用触媒を調製した。
【0036】
実施例10
調製例1で得たCuFe24スピネル型酸化物10gと、700℃で30分間焼成したγ-アルミナ(住友化学株式会社製「AKP-G015」)5gを乳鉢で混合した。その後、空気雰囲気下、350℃にて10時間焼成することにより、改質用触媒(SCFAc35、焼成温度:350℃)を調製した。得られた触媒を用いて下記の測定条件でX線回折を行なった。そのチャート図を図2に示した。
装置:リガク-RINT-2200、線源:CuKα線、40kV、40mA、
ステップ:0.02°、スキャンスピード:1°/分
なお、図2中、SCAFc100は、空気雰囲気下での焼成条件1000℃と変更した以外は、実施例10と同様にして得た改質用触媒のX線回折図であるが、X線回折の結果、SCFAc90より性能が悪いと判断し、DMEの改質反応性評価を行っていない。
実施例11
実施例10において、空気雰囲気下での焼成条件を、500℃、10時間に変更した以外は、実施例10と同様にして改質用触媒(SCFAc50、焼成温度:500℃)を調製した。得られた触媒を用いて実施例10に示した測定条件でX線回折を行なった。そのチャート図を図2に示した。
実施例12
実施例10において、空気雰囲気下での焼成条件を、700℃、10時間に変更した以外は、実施例10と同様にして改質用触媒(SCFAc70、焼成温度700℃)を調製した。
得られた触媒を用いて実施例10に示した測定条件でX線回折を行なった。そのチャート図を図2に示した。その結果、2θ=33.2°に現れる回折線強度と、2θ=36.1°に現れるCuFeO4スピネルの最強線である回折線強度との比は0.23であった。
実施例13
実施例12で得られた触媒を10~18.5メッシュに加圧成型後、所定量を反応器に充填し、10体積%の水素を含む窒素ガス中にて、350℃で3時間還元することにより、改質用触媒を調製した。
実施例14
実施例10において、空気雰囲気下での焼成条件を、800℃、10時間に変更した以外は、実施例10と同様にして改質用触媒(SCFAc80、焼成温度800℃)を調製した。
得られた触媒を用いて実施例10に示した測定条件でX線回折を行なった。そのチャート図を図2に示した。その結果、2θ=33.2°に現れる回折線強度と、2θ=36.1°に現れるCuFeO4スピネルの最強線である回折線強度との比は0.68であった。
【0037】
実施例15
実施例10において、空気雰囲気下での焼成条件を、700℃、1時間に変更した以外は、実施例10と同様にして改質用触媒を調製した。
実施例16
実施例10において、空気雰囲気下での焼成条件を、700℃、5時間に変更した以外は、実施例10と同様にして改質用触媒を調製した。
実施例17
実施例10において、空気雰囲気下での焼成条件を、700℃、20時間に変更した以外は、実施例10と同様にして改質用触媒を調製した。
【0038】
比較例1
調製例1で得たCuFe24スピネル型酸化物10gと、700℃で30分間焼成したγ-アルミナ(住友化学株式会社製「AKP-G015」)5gを乳鉢で混合した。それを10体積%の水素を含む窒素ガス中にて、600℃で3時間還元することにより、改質用触媒を調製した。
比較例2
実施例1において、空気雰囲気下での焼成条件を、900℃、10時間に変更した以外は、実施例1と同様にして改質用触媒を調製した。
比較例3
比較例1において、10体積%の水素を含む窒素ガス中での還元条件を、350℃、3時間に変更した以外は、比較例1と同様にして改質用触媒を調製した。
【0039】
比較例4
比較例2において、10体積%の水素を含む窒素ガス中での還元条件を、350℃、3時間に変更した以外は、比較例2と同様にして改質用触媒を調製した。
比較例5
調製例1で得たCuFe24スピネル型酸化物10gと、700℃で30分間焼成したγ-アルミナ(住友化学株式会社製「AKP-G015」)5gを乳鉢で混合することにより、改質用触媒(SCFA)を調製した。得られた触媒を用いて実施例10に示した測定条件でX線回折を行なった。そのチャート図を図2に示した。
比較例6
実施例10において、空気雰囲気下での焼成条件を、900℃、10時間に変更した以外は、実施例10と同様にして改質用触媒(SCFAc90、焼成温度900℃)を調製した。得られた触媒を用いて実施例10に示した測定条件でX線回折を行なった。そのチャート図を図2に示した。
【0040】
実施例18
調製例2で得たCuMn24スピネル型酸化物10gと、700℃で30分間焼成したγ-アルミナ(住友化学株式会社製「AKP-G015」)5gを乳鉢で混合した。その後、空気雰囲気下、700℃にて10時間焼成することにより、改質用触媒を調製した。
【0041】
比較例7
調製例2で得たCuMn24スピネル型酸化物10gと、700℃で30分間焼成したγ-アルミナ(住友化学株式会社製「AKP-G015」)5gを乳鉢で混合することにより、改質用触媒を調製した。
【0042】
実施例19
調製例3で得たCuFe1.5Mn0.54スピネル型酸化物10gと、700℃で30分間焼成したγ-アルミナ(住友化学株式会社製「AKP-G015」)5gを乳鉢で混合した。その後、空気雰囲気下、700℃にて10時間焼成することにより、改質用触媒を調製した。
【0043】
比較例8
調製例3で得たCuFe1.5Mn0.54スピネル型酸化物10gと、700℃で30分間焼成したγ-アルミナ(住友化学株式会社製「AKP-G015」)5gを乳鉢で混合することにより、改質用触媒を調製した。
比較例9
調製例1で得たCuFe24スピネル型酸化物10gを、空気雰囲気下、700℃で10時間焼成したものと、700℃で10時間焼成したγ-アルミナ(住友化学株式会社製「AKP-G015」)5gを乳鉢で混合することにより、改質用触媒を調製した。
【0044】
参考例1
CuZnAl(ズードケミー社製「MDC-3」)10gと700℃で30分間焼成したγ-アルミナ(住友化学社製「AKP-G015」)5gを乳鉢で混合することにより、改質用触媒を調製した。
参考例2
CuZnAl(ズードケミー社製「MDC-3」)10gと700℃で30分間焼成したγ-アルミナ(住友化学株式会社製「AKP-G015」)5gを乳鉢で混合した。その後、空気雰囲気下、700℃で10時間焼成することにより、改質用触媒を調製した。
【0045】
試験例
実施例1~19、比較例1~9及び参考例1、2で得られた改質用触媒について、以下に示すような性能評価試験を行った。その結果を第1表に示す。
<前処理条件>
・10~18.5メッシュに成型した触媒を,反応器に充填した。
(実施例8、13については記載の通り、反応器中で反応前に水素還元を実施)
<反応条件:DME水蒸気改質反応>
・GHSV=9100h-1(DME+H2O基準)(DME基準では1517h-1)、スチーム/炭素モル比=2.5,反応温度=375℃,反応時間=50時間
・DME転化率(%)=(A/B)×100,
A:出口COモル濃度+出口CO2モル濃度+出口CH4モル濃度
B:出口COモル濃度+出口CO2モル濃度+出口CH4モル濃度+出口DMEモル濃度×2
・劣化率(%)=[(C-D)/C]×100
C:反応開始7時間後のDME転化率
D:反応開始50時間後のDME転化率
(ただし、比較例8、実施例19は、Dとして35時間後のデータを使用)
【0046】
【表1】
JP0005178143B2_000002t.gif

【0047】
【表2】
JP0005178143B2_000003t.gif

【0048】
第1表から、以下に示すことが分かる。
・比較例1と実施例1~4の比較:
350℃、500℃の焼成工程を入れる(実施例1、2)ことにより、未焼成(比
較例1)よりも劣化が大きく抑制され50時間後の活性は実施例の方が高くなっている。
700℃、800℃での焼成工程を入れる(実施例3、4)ことにより、未焼成(比較例1)よりも初期活性と耐久性が大きく向上した。また、900℃の焼成(比較例2)では初期活性が著しく低い。
・比較例3、4と実施例5~9の比較:
350℃の焼成工程を入れる(実施例5)ことにより、未焼成(比較例3)と比べ初期性能は若干低下するが活性劣化が抑制され50時間後の活性は実施例5の方が高くなっている。500℃、700℃、800℃での焼成工程を入れる(実施例6、7、8、9)ことにより、未焼成(比較例3)よりも初期活性と耐久性が大きく向上した。また、900℃の焼成(比較例4)では初期活性が著しく低い。
また、反応直前の還元の有無の影響は小さい(実施例7と8の比較)。
【0049】
・比較例5、6と実施例10~14の比較:
350℃、500℃の焼成工程を入れる(実施例10、11)ことにより、未焼成(比較例5)と比べ初期性能はほぼ同等でも活性劣化が抑制され50時間後の活性は高くなっている。700℃、800℃での焼成工程を入れる(実施例12、13、14)ことにより、未焼成(比較例5)よりも初期活性と耐久性が大きく向上した。また、900℃の焼成(比較例6)では初期活性が著しく低い。
また、反応直前の還元の有無の影響は大きくない(実施例12、13の比較)。
・比較例5と実施例12、15、16、17の比較(700℃焼成時間の比較):
700℃焼成の時間は1時間(実施例15)でも効果があるが、5時間以上(実施例16、12、17)で更に大きな効果がある。
・比較例7と実施例18の比較:
CuMnスピネルにおいてもアルミナとの混合後の700℃焼成により初期活性向上効果が認められた。
・比較例8と実施例19の比較:
CuFeMnスピネルにおいてもアルミナとの混合後の700℃焼成により初期活性向上、耐久性向上の効果が認められた。
・比較例9と実施例12の比較:
CuFeスピネルとアルミナをそれぞれ700℃焼成した後に混合(比較例9)しても、実施例12のような混合後の焼成効果は現れない。また、それぞれを焼成せずに混合し混合後も焼成しなかった場合(比較例5)よりも初期活性は若干低い。
・参考例1、2の比較
CuZnAl(非スピネル)とアルミナを混合後に700℃焼成した場合も初期活性向上の効果があるが、活性の絶対値が低い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の酸素含有炭化水素改質用触媒は酸素含有炭化水素から水素または合成ガスを高い転化率で効率よく製造することができ、効率の高い燃料電池システムに応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の燃料電池システムの一例の流れ図である。
【図2】実施例10~12及び14、比較例5及び6で得られた改質用触媒のX線回折図である。なお、SCAFc100は、空気雰囲気下での焼成条件1000℃と変更した以外は、実施例10と同様にして得た改質用触媒のX線回折図である。
【符号の説明】
【0052】
1:気化器
11:水供給管
12:燃料導入管
15:接続管
21:燃料タンク
23:脱硫器
24:水ポンプ
31:改質器
31A:改質器のバーナ
32:CO変成器
33:CO選択酸化器
34:燃料電池
34A:燃料電池負極
34B:燃料電池正極
34C:燃料電池高分子電解質
35:空気ブロワー
36:気水分離器
37:排熱回収装置
37A:熱交換器
37B:熱交換器
37C:冷却器
37D:冷媒循環ポンプ
図面
【図1】
0
【図2】
1