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明細書 :親水性置換基を有するポリ(メタフェニレン)誘導体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5231783号 (P5231783)
公開番号 特開2009-114072 (P2009-114072A)
登録日 平成25年3月29日(2013.3.29)
発行日 平成25年7月10日(2013.7.10)
公開日 平成21年5月28日(2009.5.28)
発明の名称または考案の名称 親水性置換基を有するポリ(メタフェニレン)誘導体
国際特許分類 C07C  43/205       (2006.01)
C08G  61/10        (2006.01)
FI C07C 43/205 CSPC
C08G 61/10
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2007-285155 (P2007-285155)
出願日 平成19年11月1日(2007.11.1)
審査請求日 平成20年12月8日(2008.12.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】古荘 義雄
【氏名】賁 騰
【氏名】五藤 秀俊
【氏名】八島 栄次
個別代理人の代理人 【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
審査官 【審査官】今井 周一郎
参考文献・文献 特開2002-289222(JP,A)
Macromolecules,1997年,30,479-481
調査した分野 C08G 61/10
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
次式(1)
【化1】
JP0005231783B2_000006t.gif
(式中、Rは一般式(2)、
-R-(O-R)m-O-R (2)
(式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~6のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~5のアルキル基を表し、R、R及びRはさらにアルキル基で置換されていてもよく、mは3~10であり繰り返し数を表す。)で表わされるオリゴアルキレンオキシ基を表し、nは38~49でありポリマーの繰り返し数を示す。)
で表されるポリ(メタフェニレン)誘導体。
【請求項2】
mが、4又は5である請求項1に記載のポリ(メタフェニレン)誘導体。
【請求項3】
オリゴアルキレンオキシ基が、光学活性なオリゴアルキレンオキシ基である請求項1又は2のいずれかに記載のポリ(メタフェニレン)誘導体。
【請求項4】
溶液中で一重鎖らせん構造をとる請求項1~3のいずれかに記載のポリ(メタフェニレン)誘導体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で安定ならせん構造をとる新規な化合物に関する。詳しくは、5位に親水性の置換基を導入した水溶液中で安定な新規ポリ(メタフェニレン)誘導体及びその重合物に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界には数多くのらせん構造をとる物質が存在し、その一部は生命の源として重要な役割を担っている。一方、合成化学、特に合成高分子の世界でも多くのらせん構造化合物が作られ、工業的にも重要な位置を占めている。加えて、最近では、天然物模倣の視点から種々のらせん高分子が合成されてきた。しかしながら、こうした合成高分子の多くは、有機溶媒中や固体状態では安定であっても水系溶媒中では不安定な場合が多い。メタフェニレン骨格からなるオリゴマーやポリマーは、固体中では5-らせん構造を形成するが、溶液中では構造を維持できずランダムなコンホメーションをとることが知られている。水系でのらせん高分子の合成は緒についたばかりであり、ポリフェニルアセチレン(非特許文献1)、ポリイソシアニド(非特許文献2)、ポリシラン(非特許文献3)等、報告例は少ない。
【0003】

【非特許文献1】K. Maeda et al . J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 16284-16285.
【非特許文献2】M. Ishikawa. et al. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 732-733.
【非特許文献3】K. Oka, et al. J. Organomet. Chem. 2000, 611, 45-51.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既に述べた様に、数少ない水中でのらせん構造化合物の例として、ポリフェニルアセチレン、ポリイソシアニド、ポリシラン等があるが、これらは何れも光や空気(酸素)あるいは熱により分解してしまう。従って、これらは工業的な利用には至っていない。
本発明の目的は、水中で安定ならせん構造化合物を創製し、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者らは、こうした欠点を克服し、水中でも安定ならせん構造を有する化合物の合成とこれらの重合、高分子化をめざして、鋭意、研究を進めてきた。その結果、5位に親水性の基、好ましくは光学活性な置換基を導入したポリ(メタフェニレン)誘導体(以下、poly-1と略称する)が予想に反して、水中で安定ならせん構造をとることを見出し、本願発明を完成した。
即ち本発明は、フェニル環の5位に親水性の置換基を導入したポリ(メタフェニレン)誘導体に関する。より詳細には、本発明は、次式(1)、
【0006】
【化2】
JP0005231783B2_000002t.gif

【0007】
(式中、Rは親水性の置換基を表し、nはポリマーの繰り返し数を表す。)
で表されるポリ(メタフェニレン)誘導体に関する。
本発明をさらに詳細に説明すれば、以下のとおりとなる。
(1)前記式(1)、
(式中、Rは親水性の置換基を表し、nはポリマーの繰り返し数を示す。)
で表されるポリ(メタフェニレン)誘導体。
(2)親水性の置換基が、オリゴアルキレンオキシ鎖である前記(1)に記載のポリ(メタフェニレン)誘導体。
(3)親水性の置換基が、繰り返し単位3以上のオリゴアルキレンオキシ鎖である前記(1)又は(2)に記載のポリ(メタフェニレン)誘導体。
(4)親水性の置換基が繰り返し単位4又は5であるオリゴアルキレンオキシ鎖である前記(1)~(3)のいずれかに記載のポリ(メタフェニレン)誘導体。
(5)親水性の置換基が、アルキル基、エーテル基、エステル基、ケトン基、ニトリル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、スルフィド基、チオール基、又はジスルフィド基の何れかの基でさらに置換されていていてもよいオリゴアルキレンオキシ鎖である前記(1)~(4)のいずれかに記載のポリ(メタフェニレン)誘導体。
(6)親水性の置換基が、光学活性なオリゴアルキレンオキシ鎖である前記(1)~(5)のいずれかに記載のポリ(メタフェニレン)誘導体。
(7)溶液中で一重鎖らせん構造をとる前記(1)~(6)のいずれかに記載のポリ(メタフェニレン)誘導体。
【発明の効果】
【0008】
本発明による5位に親水性の置換基を導入したポリ(メタフェニレン)誘導体(poly-1)は新規物質であり、本発明は、空気中や高温下、あるいは光の当たる環境下で安定な水溶性のらせん構造を有する化合物を提供する。
本発明は、光線、水中、空気中で安定な、水溶性人工らせん化合物を提供するものであり、その結果、医学、工学の分野での大きな貢献が期待できる。更に、例えば、HPLCのキラル検知・分取カラム、キラル蛍光センサー等の他、分子レベルでの混合が可能になる特徴を生かし、従来は酵素反応などの生体反応以外にはなし得なかった生物化学的な反応を低温域あるいは高温域で実施するなども可能になり、遺伝子情報に類似の情報伝達や増殖に似た自発反応の誘起も可能になる。また、通常の環境下で安定な水溶性のらせんにすることで、フィルムの弾性率や耐熱性、熱物性等の飛躍的な向上が期待できる。
更に、液晶材料への応用も期待できる。
【0009】
本発明のポリ(メタフェニレン)誘導体は、フェニル環の5位に親水性の置換基を有することを特徴とするものである。
本発明における「親水性の置換基」としては、親水性で5原子~40原子、好ましくは9原子~20原子程度の大きさを有する有機基が挙げられる。
好ましい親水性の置換基としては、次の一般式(2)、
-R-(O-R)m-O-R (2)
(式中、R及びRは、それぞれ独立してアルキレン基を表し、Rはアルキル基を表し、mは繰り返し数を表す。)
で表されるオリゴアルキレンオキシ基が挙げられる。
及びRのアルキレン基としては、炭素数1~6、好ましくは2~5の直鎖状又は分岐鎖状の2価のアルキレン基が挙げられる。好ましいアルキレン基としてはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基などが挙げられる。
のアルキル基としては、炭素数1~8、好ましくは1~5、更に好ましくは1~3の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、メチル基、エチル基などが挙げられる。
mの繰り返し数としては、3以上であれば特に制限はないが、好ましくは3~10、より好ましくは3~6、更に好ましくは4~6が挙げられる。好ましい繰り返し数mとしては3~5が挙げられる。
【0010】
本発明の親水性の置換基、又は前記してきたアルキレン基若しくはアルキル基は、さらに置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、特に制限はないが、親水性の置換基が好ましい。このような置換基の例としては、例えば、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ニトリル基、カルボキシル基、アミノ基、アルキル置換アミノ基、チオール基などが挙げられる。特に好ましい置換基としては、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ニトリル基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。ここにおいてアルキル基としては前記してきたアルキル基、アルコキシ基としては前記してきたアルキル基から誘導されるアルコキシ基が挙げられる。
また、本発明の親水性の置換基、又は前記一般式(2)で表されるオリゴアルキレンオキシ基のなかの1個以上、好ましくは1~m個、又は1~6個のメチレン基又は酸素原子が、2価の官能基、例えば、エーテル基(-O-)、エステル基(-COO-)、ケトン基(-CO-)、アミド基(-CONH-)、スルフィド基(-S-)、又はジスルフィド基(-S-S-)などでさらに置換されていてもよい。特に好ましい置換基としては、エーテル基、エステル基、ケトン基、スルフィド基などが挙げられる。
【0011】
本発明の親水性の置換基、又は一般式(2)で表されるオリゴアルキレンオキシ基は、不斉炭素原子を含有する光学活性体が好ましい。一般式(2)で表されるオリゴアルキレンオキシ基の場合には、R、R、及びRのいずれか少なくとも1つ、好ましくはRが不斉炭素原子を含有する光学活性体が好ましい。このような不斉炭素原子は、アルキレン基又はアルキル基自体により形成されてもよいし、また水酸基やアルコキシ基などの官能基が置換して形成されるものであってもよい。
また、これらの不斉炭素原子の少なくとも1個は光学活性体であることが好ましい。
本発明のポリ(メタフェニレン)誘導体は、例えば、次の反応式、
【0012】
【化3】
JP0005231783B2_000003t.gif

【0013】
(式中、Rは親水性の置換基を表し、nはポリマーの繰り返し数を示す。)
で表される方法により製造することができる。3,3-ジブロモフェノールをR-OHを用いて親水性の置換基を導入し、これをニッケル触媒の存在下で縮合させて目的のポリ(メタフェニレン)誘導体を製造することができる。
Rが、次の式、
【0014】
【化4】
JP0005231783B2_000004t.gif

【0015】
の場合を例として本発明のポリ(メタフェニレン)誘導体の一種であるpoly-1の製造法について、さらに詳細に説明する。先ず、3,5-ジブロモフェノールに光延反応を利用して光学活性又は光学不活性な親水性置換基を導入することにより、(S)-1,3-ジブロモ-5-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)プロポキシ)ベンゼン((S)-1,3-dibromo-5-(2-(2-(2-methoxyethoxy) ethoxy) ethoxy) propoxy) benzene)(以下モノマー(1)と略記する)が得られる。次に、これをビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(bis(1,5-cyclooctadiene)nickel )(以下、Ni(cod) と略記)などのニッケル触媒を用いてモノマー(1)を重合する。この結果、環状オリゴマーと直鎖状ポリマーからなる混合物が得られるので、これらの混合物をHPLCにより分取して、高分子量成分(poly-1と略記)を製造することができる。
【0016】
このようにして製造されたpoly-1の円二色性分散(以下、CDと略称)及び紫外可視近赤外吸収スペクトル(以下、UV-Visと略称)を測定すると、クロロホルム溶液中では明瞭なコットン効果を示さないが、メタノール中では吸収スペクトルの明確な淡色効果とともに主鎖の吸収領域に強いコットン効果が観測される。これらの事実はpoly-1が芳香族相互作用を介して一方向巻きに偏ったらせん構造をとっていることを示している。poly-1はまた、水—メタノール混合溶媒中でも含水率が50体積%以下では、吸収スペクトルの単色効果と主鎖の吸収領域に強いコットン効果を示すことから、一方向巻きに偏ったらせん構造をとっていることがわかる。クロロホルム-メタノール系の溶媒中で希釈実験を行っても濃度依存性が全く観測されないことから、poly-1が二重鎖らせんではなく、一重鎖らせん構造を形成していることが確認できる。これらの結果は、ポリメタフェニレン誘導体として、一重鎖らせん構造を示す初めてのものである。
【0017】
本発明を分りやすく説明するために実施例を示すが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
(1)アルゴン雰囲気中、水冷下(約22℃)、3,5-ジブロモフェノール(4.81g,19.0mmol,Aldrich)、(S)-2-(2-(2-)メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)プロパノール((S)-2-(2-(2-methoxyethoxy)ethoxy)ethoxy)propanol)(3.70g,16.6mmol)、トリフェニルホスフィン(5.07g,19.1mmol)の無水テトラヒドロフラン(THF,200mL)溶液へ、アゾジカルボン酸ジイソプロピルエステル(3.87g,19.1mmol)のTHF(100mL)溶液を30分かけて徐々に滴下した後、さらにその温度で22時間撹拌した。
反応終了後、反応溶液を濃縮し、酢酸エチルを加えて懸濁液を得た。酢酸エチル不溶部をセライトろ過で除いた後、その可溶部を濃縮して粗生成物を得た。さらにこの粗生成物をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1/1,v/v)で精製して、淡黄色オイル状のモノマー(1)を得た。収量5.32g(11.7mmol,収率70.1%)。
【0019】
(2)アルゴン雰囲気中、無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF,1.6ml)へ、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)(1.04g,3.78mmol),2,2’-ビピリジン(0.627g,4.01mmol),無水1,5-シクロオクタジエン(0.49 ml)を加えて、80℃で1時間撹拌し、0価ニッケル錯体を調整した。そのニッケル錯体の溶液へ、前記(1)で製造した化合物1(1.00g,2.19mmol)を加えた後、その温度で12時間攪拌した。室温下、反応溶液を冷却した後、濃塩酸を加えて緑色の透明な溶液とした後、トリエチルアミンで中和した。溶媒を完全に留去した後、乾燥した固体をTHFで抽出し、THF可溶部を回収した。さらにその可溶部をアミノ化シリカゲルカラム(メタノール)で精製して、淡褐色オイル状の粗生成物を得た。収量611mg(2.06mmol),収率94.1%。さらに、それをHPLCで分取して、淡褐色ロウ状の高分子量ポリマー(poly-1)を得た。収量 154mg(0.520mmol),収率23.7%。poly-1の数平均分子量(M)は1.09×10、重合度(DP) は38、分子量分散M/Mは1.29であった。
【0020】
次に、CDCl、CDOD、又はCDOD/DOの混合溶媒中でpoly-1のCDおよび吸収スペクトルを測定した。測定条件は、25℃で、濃度は1mM/ユニットである。結果を図1に示す。図1の横軸は波長(nm)を示し、左側の縦軸はΔε(cm-1・M-1・ユニット-1)を示し、右側の縦軸はε(10×cm-1・M-1・ユニット-1)を示す。図1の破線はCDClの場合を示し、細い実線はCDODの場合を示し、太い実線はCDOD/DOの混合溶媒(1:1)の場合を示す。poly-1はCDCl溶液では明瞭なコットン効果を示さないが、CDOD中では吸収スペクトルの明確な淡色効果とともに、主鎖の吸収領域に強いコットン効果が観測された。これらの結果は、poly-1が芳香族相互作用を介して一方向巻きに偏ったらせん構造をとっていることを示している。また、CDOD/DOの混合溶媒中でも含水率が50体積%以下では、吸収スペクトルの単色効果と主鎖の吸収領域に強いコットン効果を示すことから、一方向巻きに偏ったらせん構造をとっていると考えられる。
【0021】
次に、CHCl/MeOH(20/80,v/v)中で希釈実験を行った。測定条件は、25℃で、poly-1の濃度を0.02mMから5.19mMに変化させた。結果を図2に示す。図2の横軸は、ポリマーのモル濃度([P1]/M)を示し、左側の縦軸はΔε267(cm-1・M-1・ユニット-1)を示し、右側の縦軸はε306(10×cm-1・M-1・ユニット-1)を示す。図2の白丸は吸光度(モル吸光係数)の場合を示し、黒丸はモル円二色性の場合を示す。この結果、濃度依存性が全く観測されなかったことから、poly-1が二重らせんではなく、一本鎖からなるらせん構造を形成していることが確認できた。以上の結果は、ポリメタフェニレン誘導体の一重らせん構造の初めてのものである。
【実施例2】
【0022】
1,3-ジブロモ-5-((2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)-ベンゼン(1,3-dibromo-5-((2-(2-(2-methoxyethoxy)ethoxy)ethoxy)ethoxy)benzene)(2)の製造:
標記ポリマーを次に示す反応式にしたがって製造した。
【0023】
【化5】
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【0024】
(1)アルゴン雰囲気中、水冷下(約20℃)、3,5-ジブロモフェノール(5.49g,21.8mmol)、2-((2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エタノール(2-((2-(2-methoxyethoxy)ethoxy)ethoxy)ethanol)(5.00g,24.0mmol)、トリフェニルホスフィン(6.25g,23.8mmol)の無水テトラヒドロフラン(THF,200ml)溶液へ、アゾジカルボン酸ジイソプロピルエステル(4.81g,23.8mmol)のTHF(125ml)溶液を30分かけて徐々に滴下した後、さらにその温度で一日撹拌した。
反応終了後、反応溶液を濃縮し、酢酸エチルを加えて懸濁液を得た。酢酸エチル不溶部をセライトろ過で除いた後、その可溶部を濃縮して粗生成物を得た。さらにこの粗生成物をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1/1,v/v) で精製して、淡黄色オイル状のモノマー(2)を得た。収量6.83g(15.4mmol,収率70.6%)。
【0025】
(2)モノマー(2)の重合によるpoly-2の合成:
アルゴン雰囲気中、無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF,2.4ml)へ、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)(1.20g,4.36mmol), 2,2’-ビピリジン(0.680g,4.35mmol)、無水1,5-シクロオクタジエン(0.51ml)を加えて、80℃で1時間撹拌し、0価ニッケル錯体を調整した。そのニッケル錯体の溶液へ、前記(1)で製造したモノマー(2)(0.53g,1.20mmol)を加えた後、その温度で12時間攪拌した。室温下、反応溶液を冷却した後、濃塩酸を加えて緑色の透明な溶液とした後、トリエチルアミンで中和した。溶媒を完全に留去した後、乾燥した固体をTHFで抽出し、THF可溶部を回収した。さらにその可溶部をアミノ化シリカゲルカラム(メタノール)で精製して、淡褐色オイル状の粗生成物を得た。収量340mg(1.20mmol),収率100%。さらに、それをHPLCで分取して、淡褐色ロウ状の高分子量ポリマー(poly-2)を得た。収量76.0mg(0.268mmol),収率22.3%。poly-2の数平均分子量(M)は1.39×10、重合度(DP)は49、分子量分散M/Mは1.32であった。
【0026】
次に、CHCl、MeOH、又はMeOH/HO混合溶媒中でpoly-2の吸収スペクトルを測定した。測定条件は、25℃で、濃度は1mM/ユニットである。結果を図3に示す。図3の横軸は波長(nm)を示し、縦軸は吸光度ε(10×cm-1・M-1・ユニット-1)を示す。この結果、poly-2はMeOH中およびMeOH/HO混合溶媒中では、CHCl中の場合と比べて明確な淡色効果が観測された。この結果は、poly-2がpoly-1と同様に一本鎖からなるらせん構造を形成していることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、光線、水中、空気中で安定な、水溶性の人工らせん化合物を提供するものであり、例えば、HPLCのキラル検知・分取カラム、キラル蛍光センサー等の他、分子レベルでの混合が可能になる特徴を生かし、従来は酵素反応などの生体反応以外にはなし得なかった生物化学的な反応を低温域あるいは高温域で実施するなども可能になり、遺伝子情報に類似の情報伝達や増殖に似た自発反応の誘起も可能になる。また、通常の環境下で安定な水溶性のらせんにすることで、フィルムの弾性率や耐熱性、熱物性等の飛躍的な向上が期待でき、試薬や分析分野だけでなく、各種の材料分野において、産業上の利用可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、各種溶媒中(重クロロホルム、重メタノール、重メタノール/重水(1/1))におけるpoly-1のCD及び吸収スペクトルを示す。
【図2】図2は、重クロロホルム/重メタノール(2/8)混合溶媒中でのpoly-1のΔε267及びε306の濃度依存性の結果を示す。
【図3】図3は、poly-2の吸収スペクトルを示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2