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明細書 :細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4302167号 (P4302167)
公開番号 特開2008-148705 (P2008-148705A)
登録日 平成21年5月1日(2009.5.1)
発行日 平成21年7月22日(2009.7.22)
公開日 平成20年7月3日(2008.7.3)
発明の名称または考案の名称 細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質
国際特許分類 C12Q   1/02        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12Q 1/02
G01N 33/15 Z
G01N 33/50 Z
C12N 15/00 A
A01K 67/027 ZNA
C12N 5/00 B
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 12
全頁数 26
出願番号 特願2007-330778 (P2007-330778)
分割の表示 特願2000-219652 (P2000-219652)の分割、【原出願日】平成12年7月19日(2000.7.19)
出願日 平成19年12月21日(2007.12.21)
審査請求日 平成19年12月21日(2007.12.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】審良 静男
【氏名】辺見 弘明
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】中村 正展
参考文献・文献 国際公開第98/050547(WO,A1)
特開2002-034565(JP,A)
Curr. Opin. Immunol.,2000年 2月,vol. 12,35-43
Bioorg. Med. Chem. Lett.,1999年,vol. 9,1819-1824
GenBank Accesion AF245704,2000年 6月21日,gi: 8575528,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?8575528:OLD06:73634, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/sutils/girevhist.cgi?val=AF245704,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?8575528:OLD06:73634
調査した分野 C12Q 1/02
G01N 33/15
G01N 33/50
A01K 67/027
C12N 5/00- 5/10
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68
PubMed
JSTPlus(JDreamII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq

特許請求の範囲 【請求項1】
TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞に、
(a)被検物質の存在下又は非存在下で、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを接触させ、
(b)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、
(c)野生型動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が、被検物質の存在により上昇し、モデル非ヒト動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が被検物質の存在による影響を受けないとき、
(d)前記被検物質を非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の促進物質と評価することを特徴とする、
非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の促進物質のスクリーニング方法。
【請求項2】
TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物と、同種の野生型動物に、
(a)被検物質を投与した後に、免疫細胞を採取し、
(b)インビトロで非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを接触させ、
(c)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、
(d)被検物質を投与した野生型動物由来免疫細胞の上記活性の程度は、投与しない野生型動物由来免疫細胞の程度より高く、被検物質を投与したモデル非ヒト動物由来免疫細胞の上記活性の程度は、投与しないモデル非ヒト動物由来免疫細胞の程度と変わらないとき、
(e)前記被検物質を非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の促進物質と評価することを特徴とする、
非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の促進物質のスクリーニング方法。
【請求項3】
TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物と、同種の野生型動物に、
(a)細菌を感染させた後に、免疫細胞を採取し、
(b)被検物質の存在/非存在下でインビトロ培養し、
(c)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、
(d)被検物質を投与した野生型動物由来免疫細胞の上記活性の程度は、投与しない野生型動物由来免疫細胞の程度より高く、被検物質を投与したモデル非ヒト動物由来免疫細胞の上記活性の程度は、投与しないモデル非ヒト動物由来免疫細胞の程度と変わらないとき、
(e)前記被検物質を非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の促進物質と評価することを特徴とする、
非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の促進物質のスクリーニング方法。
【請求項4】
TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞に、
(a)被検物質の存在下又は非存在下で、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを接触させ、
(b)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、
(c)野生型動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が、被検物質の存在により低下し、モデル非ヒト動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が被検物質の存在による影響を受けないとき、
(d)前記被検物質を非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の抑制物質と評価することを特徴とする、
非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の抑制物質のスクリーニング方法。
【請求項5】
TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物と、同種の野生型動物に、
(a)被検物質を投与した後に、免疫細胞を採取し、
(b)インビトロで非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを接触させ、
(c)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、
(d)被検物質を投与した野生型動物由来免疫細胞の上記活性の程度は、投与しない野生型動物由来免疫細胞の程度より低く、被検物質を投与したモデル非ヒト動物由来免疫細胞の上記活性の程度は、投与しないモデル非ヒト動物由来免疫細胞の程度と変わらないとき、
(e)前記被検物質を非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の抑制物質と評価することを特徴とする、
非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の抑制物質のスクリーニング方法。
【請求項6】
TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物と、同種の野生型動物に、
(a)細菌を感染させた後に、免疫細胞を採取し、
(b)被検物質の存在/非存在下でインビトロ培養し、
(c)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、
(d)被検物質を投与した野生型動物由来免疫細胞の上記活性の程度は、投与しない野生型動物由来免疫細胞の程度より低く、被検物質を投与したモデル非ヒト動物由来免疫細胞の上記活性の程度は、投与しないモデル非ヒト動物由来免疫細胞の程度と変わらないとき、
(e)前記被検物質を非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の抑制物質と評価することを特徴とする、
非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の抑制物質のスクリーニング方法。
【請求項7】
TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞に、
(a)被検物質を接触させ、
(b)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞におけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、
(c)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が被検物質の接触による影響を受けないが、野生型動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が被検物質の接触により増加したとき、
(d)前記被検物質をTLR9のアゴニストと評価することを特徴とする、
TLR9のアゴニストのスクリーニング方法。
【請求項8】
TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物と、同種の野生型動物に、
(a)被検物質を投与した後に、免疫細胞を採取し、
(b)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、
(c)被検物質を投与した野生型動物由来免疫細胞の上記活性の程度が、投与しない野生型動物由来免疫細胞の程度より高く、被検物質を投与したモデル非ヒト動物由来免疫細胞の上記活性の程度が、投与しないモデル非ヒト動物由来免疫細胞の程度と変わらないとき、
(d)前記被検物質をTLR9のアゴニストと評価することを特徴とする、
TLR9のアゴニストのスクリーニング方法。
【請求項9】
TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞に、
(a)被検物質の存在下又は非存在下で、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを接触させ、
(b)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、
(c)野生型動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が、被検物質の存在により低下し、モデル非ヒト動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が被検物質の存在による影響を受けないとき、
(d)前記被検物質をTLR9のアンタゴニストと評価することを特徴とする、
TLR9のアンタゴニストのスクリーニング方法。
【請求項10】
免疫細胞が、腹腔マクロファージであることを特徴とする請求項1~9のいずれか記載の方法。
【請求項11】
TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した非ヒト動物を、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル動物として使用する方法。
【請求項12】
非ヒト動物がマウスであることを特徴とする請求項1~11のいずれか記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質、該受容体タンパク質の遺伝子及びそれらの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
トール(Toll)遺伝子は、ショウジョウバエの胚発生中の背腹軸の決定(非特許文献1及び2参照)、また成体における抗真菌性免疫応答に必要であることが知られている(非特許文献3参照)。かかるTollは、細胞外領域にロイシンリッチリピート(LRR)を有するI型膜貫通受容体であり、この細胞質内領域は、哺乳類インターロイキン-1受容体(IL-1R)の細胞質内領域と相同性が高いことが明らかとなっている(非特許文献4、5、及び6参照)。
【0003】
近年、Toll様受容体(TLR)と呼ばれるTollの哺乳類のホモログが同定され、TLR2やTLR4など現在までに6つのファミリーが報告されている(非特許文献7、8、9、及び10参照)。このTLRファミリーは、上記IL-1Rと同様にアダプタータンパク質であるMyD88を介し、IL-1R結合キナーゼ(IRAK)をリクルートし、TRAF6を活性化し、下流のNF-κBを活性化することが知られている(非特許文献11、12、及び13参照)。また、哺乳類におけるTLRファミリーの役割は、細菌の共通構造を認識するパターン認識受容体(PRR:pattern recognition receptor)として、先天的な免疫認識に関わっているとも考えられている(非特許文献14参照)。
【0004】
上記PRRにより認識される病原体会合分子パターン(PAMP:pathogen-associated molecular pattern)の一つは、グラム陰性菌の外膜の主成分であるリポ多糖(LPS)であって(非特許文献14参照)、かかるLPSが宿主細胞を刺激して宿主細胞にTNFα、IL-1及びIL-6等の各種炎症性サイトカインを産生させること(非特許文献15及び16参照)や、LPS結合タンパク質(LBP:LPS-binding protein)により捕獲されたLPSが細胞表面上のCD14に引き渡されることが知られている(非特許文献16及び17参照)。本発明者らは、TLR4のノックアウトマウスを作製し、TLR4ノックアウトウスが上記グラム陰性菌の外膜の主成分であるLPSに不応答性であること(非特許文献18参照)や、TLR2ノックアウトマウスを作製し、TLR2ノックアウトマウスのマクロファージがグラム陽性菌細胞壁やその構成成分であるペプチドグリカンに対する反応性が低下すること(非特許文献19参照)を報告している。
【0005】
他方、細菌DNA(バクテリア由来DNA)や非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドが、マウス及びヒトの免疫細胞を刺激すること(非特許文献20及び21参照)や、IL-12及びIFNγの放出に支配されるTヘルパー1細胞(Th1)様炎症性応答を刺激すること(非特許文献22、23、及び24参照)から、CpG配列を含むオリゴヌクレオチドは、癌、アレルギー及び伝染病のワクチンを含むワクチン戦略のアジュバントとしての使用可能性が提唱されている(非特許文献25、26、及び27参照)。このように臨床実用において効果が期待されるにも関わらず、非メチル化CpG配列を含む細菌DNAが免疫細胞を活性化する分子メカニズムはよくわかっていない。
【0006】

【非特許文献1】Cell 52, 269-279, 1988
【非特許文献2】Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 12, 393-416, 1996
【非特許文献3】Cell 86, 973-983, 1996
【非特許文献4】Nature 351, 355-356, 1991
【非特許文献5】Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 12, 393-416, 1996
【非特許文献6】J. Leukoc. Biol. 63, 650-657, 1998
【非特許文献7】Nature 388, 394-397, 1997
【非特許文献8】Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 588-593, 1998
【非特許文献9】Blood 91, 4020-4027, 1998
【非特許文献10】Gene 231, 59-65, 1999
【非特許文献11】J. Exp. Med. 187, 2097-2101, 1998
【非特許文献12】Mol. Cell 2, 253-258, 1998
【非特許文献13】Immunity 11, 115-122, 1999
【非特許文献14】Cell 91, 295-298, 1997
【非特許文献15】Adv. Immunol. 28, 293-450, 1979
【非特許文献16】Annu. Rev. Immunol. 13, 437-457, 1995
【非特許文献17】Science 249, 1431-1433, 1990
【非特許文献18】J. Immunol. 162, 3749-3752, 1999
【非特許文献19】Immunity 11, 443-451, 1999
【非特許文献20】Trends Microbiol. 4, 73-76, 1996
【非特許文献21】Trends Microbiol. 6, 496-500, 1998
【非特許文献22】EMBO J. 18, 6973-6982, 1999
【非特許文献23】J. Immunol. 161, 3042-3049, 1998
【非特許文献24】Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 9305-9310, 1999
【非特許文献25】Adv. Immunol. 73, 329-368, 1999
【非特許文献26】Curr. Opin. Immunol. 12, 35-43, 2000
【非特許文献27】Immunity 11, 123-129, 1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、メチル化されていないCpGモチーフを含有するバクテリア由来DNAは免疫細胞を非常に活性化し、Th1の応答を誘導するが、その分子レベルでの活動はあまり理解されていない。本発明の課題は、細菌DNAの非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドの分子レベルでの作用を明らかにすることができる、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識するTLRファミリーのメンバー受容体タンパク質TLR9や、それをコードするDNAや、細菌性伝染病に対する宿主免疫細胞の応答性を調べる上で有用な実験モデル動物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
細菌の共通構造を認識するパターン認識受容体として、先天的な免疫認識に関わっている哺乳類におけるTLRファミリーは、現在までに6つのメンバー(TLR1-6)が公表されており(Nature 388, 394-397, 1997、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 588-593, 1998、Gene 231, 59-65, 1999)、TLR7及びTLR8の新たな2つのメンバーがGenBankに登録されている(登録番号AF240467及びAF246971)。また、TLR9についても完全長cDNAが見い出されGenBankに登録されている(登録番号AF245704)が、その機能については知られていなかった。
【0009】
本発明者らは、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識するTLRファミリーのメンバー受容体タンパク質をコードするDNAを、BLASTサーチによりスクリーニングし、既に同定されている各種TLRと高い相似性を有する多くのシークエンス・タグ(EST)クローンをスクリーニングし、これらの遺伝子フラグメントをプローブにして、マウス・マクロファージcDNAライブラリーから完全な長さを有するcDNAを単離し、これを用いてヒトcDNAも単離した。次に、これらcDNAの塩基配列を解析し、このTLRファミリーにLRR及びTIR領域などの保存領域が存在するTLR9であることを確認した。そこで、このTLR9ノックアウトマウスを作製し、TLR9が細菌DNAの非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドの受容体タンパク質であることを明らかにし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
(1)TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞に、(a)被検物質の存在下又は非存在下で、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを接触させ、(b)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、(c)野生型動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が、被検物質の存在により上昇し、モデル非ヒト動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が被検物質の存在による影響を受けないとき、(d)前記被検物質を非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の促進物質と評価することを特徴とする、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の促進物質のスクリーニング方法や、
(2)TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物と、同種の野生型動物に、(a)被検物質を投与した後に、免疫細胞を採取し、(b)インビトロで非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを接触させ、(c)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、(d)被検物質を投与した野生型動物由来免疫細胞の上記活性の程度は、投与しない野生型動物由来免疫細胞の程度より高く、被検物質を投与したモデル非ヒト動物由来免疫細胞の上記活性の程度は、投与しないモデル非ヒト動物由来免疫細胞の程度と変わらないとき、(e)前記被検物質を非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の促進物質と評価することを特徴とする、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の促進物質のスクリーニング方法に関する。
【0011】
また本発明は、
(3)TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物と、同種の野生型動物に、(a)細菌を感染させた後に、免疫細胞を採取し、(b)被検物質の存在/非存在下でインビトロ培養し、(c)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、(d)被検物質を投与した野生型動物由来免疫細胞の上記活性の程度は、投与しない野生型動物由来免疫細胞の程度より高く、被検物質を投与したモデル非ヒト動物由来免疫細胞の上記活性の程度は、投与しないモデル非ヒト動物由来免疫細胞の程度と変わらないとき、(e)前記被検物質を非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の促進物質と評価することを特徴とする、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の促進物質のスクリーニング方法や、
(4)TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞に、(a)被検物質の存在下又は非存在下で、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを接触させ、(b)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、(c)野生型動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が、被検物質の存在により低下し、モデル非ヒト動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が被検物質の存在による影響を受けないとき、(d)前記被検物質を非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の抑制物質と評価することを特徴とする、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の抑制物質のスクリーニング方法に関する。
【0012】
また本発明は、
(5)TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊
され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに
対して不反応性のモデル非ヒト動物と、同種の野生型動物に、(a)被検物質を投与した
後に、免疫細胞を採取し、(b)インビトロで非メチル化CpG配列を有する細菌DNA
を接触させ、(c)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細
胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若
しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはM
HCクラスIIの発現量の程度を測定し、(d)被検物質を投与した野生型動物由来免疫細
胞の上記活性の程度は、投与しない野生型動物由来免疫細胞の程度より低く、被検物質を
投与したモデル非ヒト動物由来免疫細胞の上記活性の程度は、投与しないモデル非ヒト動
物由来免疫細胞の程度と変わらないとき、(e)前記被検物質を非メチル化CpG配列を
有する細菌DNAによるTLR9活性化の抑制物質と評価することを特徴とする、非メチ
ル化CpG配列を有する細菌DNAによるTLR9活性化の抑制物質のスクリーニング方
法や、
(6)TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊
され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに
対して不反応性のモデル非ヒト動物と、同種の野生型動物に、(a)細菌を感染させた後
に、免疫細胞を採取し、(b)被検物質の存在/非存在下でインビトロ培養し、(c)モ
デル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα
、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、
細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量
の程度を測定し、(d)被検物質を投与した野生型動物由来免疫細胞の上記活性の程度は
、投与しない野生型動物由来免疫細胞の程度より低く、被検物質を投与したモデル非ヒト
動物由来免疫細胞の上記活性の程度は、投与しないモデル非ヒト動物由来免疫細胞の程度
と変わらないとき、(e)前記被検物質を非メチル化CpG配列を有する細菌DNAによ
るTLR9活性化の抑制物質と評価することを特徴とする、非メチル化CpG配列を有す
る細菌DNAによるTLR9活性化の抑制物質のスクリーニング方法に関する。
【0013】
さらに本発明は、
(7)TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞に、(a)被検物質を接触させ、(b)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞におけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、(c)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が被検物質の接触による影響を受けないが、野生型動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が被検物質の接触により増加したとき、(d)前記被検物質をTLR9のアゴニストと評価することを特徴とする、TLR9のアゴニストのスクリーニング方法や、
(8)TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物と、同種の野生型動物に、(a)被検物質を投与した後に、免疫細胞を採取し、(b)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、(c)被検物質を投与した野生型動物由来免疫細胞の上記活性の程度が、投与しない野生型動物由来免疫細胞の程度より高く、被検物質を投与したモデル非ヒト動物由来免疫細胞の上記活性の程度が、投与しないモデル非ヒト動物由来免疫細胞の程度と変わらないとき、(d)前記被検物質をTLR9のアゴニストと評価することを特徴とする、TLR9のアゴニストのスクリーニング方法に関する。
【0014】
また本発明は、
(9)TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞に、(a)被検物質の存在下又は非存在下で、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを接触させ、(b)モデル非ヒト動物由来の免疫細胞と、同種の野生型動物由来の免疫細胞とにおけるTNFα、IL-6、若しくはIL-12の産生量、NF-κB、JNK若しくはIRAK活性、細胞増殖反応、又は、CD40、CD80、CD86、若しくはMHCクラスIIの発現量の程度を測定し、(c)野生型動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が、被検物質の存在により低下し、モデル非ヒト動物由来の免疫細胞における上記活性の程度が被検物質の存在による影響を受けないとき、(d)前記被検物質をTLR9のアンタゴニストと評価することを特徴とする、TLR9のアンタゴニストのスクリーニング方法に関する。
【0015】
また本発明は、
(10)免疫細胞が、腹腔マクロファージであることを特徴とする前記(1)~(9)のいずれか記載の方法に関する。
【0016】
本発明はまた、
(11)TLR9タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部が遺伝子変異により破壊され、TLR9を発現する機能を喪失した非ヒト動物を、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル動物として使用する方法に関する。
【0017】
さらに本発明は、
(12)非ヒト動物がマウスであることを特徴とする前記(1)~(11)のいずれか記載の方法に関する。
【0018】
さらに本発明は、
[1](a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるTLR9タンパク質、又は(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ免疫細胞を活性化し、免疫応答を誘導することができる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有するタンパク質をコードするDNAであって、前記受容体タンパク質を介して、免疫細胞を活性化し、免疫応答を誘導することができる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNAや、
[2]配列番号1に示される塩基配列又はその相補的配列並びにこれらの配列の全部を含むことを特徴とする前記[1]の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNAや、
[3]配列番号1に示される塩基配列の相補的配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることを特徴とする前記[1]の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNAや、
[4](a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるTLR9タンパク質、又は(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ免疫細胞を活性化し、免疫応答を誘導することができる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有するタンパク質であって、前記受容体タンパク質を介して、免疫細胞を活性化し、免疫応答を誘導することができる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質に関することもできる。
【0019】
また本発明は、
[5]以下の(a)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるTLR9タンパク質、又は(b)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有するタンパク質をコードするDNAであって、前記受容体タンパク質を介して、免疫細胞を活性化し、免疫応答を誘導することができる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNAや、
[6]配列番号3に示される塩基配列を含むことを特徴とする前記[5]の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNAや、
[7]配列番号3に示される塩基配列の相補的配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることを特徴とする前記[5]の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNAや、
[8](a)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるTLR9タンパク質、又は(b)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有する受容体タンパク質であって、前記受容体タンパク質を介して、免疫細胞を活性化し、免疫応答を誘導することができる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質に関することもできる。
【0020】
また本発明は、[9]TLR9タンパク質と、マーカータンパク質及び/又はペプチドタグとを結合させた融合タンパク質や、[10]TLR9タンパク質と特異的に結合するモノクローナル抗体等の抗体や、[11]TLR9タンパク質を発現することができる発現系を含んでなる宿主細胞や、[12]TLR9タンパク質をコードする遺伝子が過剰発現することを特徴とする非ヒト動物に関してもよい。
【0021】
さらに本発明は、[13]TLR9受容体タンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した細胞に、TLR9をコードするDNAを導入することを特徴とする非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有するタンパク質を発現する細胞の調製方法や、[14]非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を発現する細胞の調製方法により得られることを特徴とする非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を発現する細胞に関することもできる。
【発明の効果】
【0022】
メチル化されていないCpGモチーフを含有するバクテリア由来DNAは免疫細胞を非常に活性化し、Th1の応答を誘導するが、そのバクテリア由来DNAを認識する受容体は知られていなかった。本発明により、細菌DNAの非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドの受容体が明らかとなったことから、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識するTLRファミリーのメンバー受容体タンパク質TLR9や、それをコードする遺伝子DNA等は、細菌性疾病等の診断や、治療に用いることができ、またTLR9ノックアウト動物を用いると、バクテリア由来DNAの分子レベルにおける作用機作を明らかにすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質としては、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識することができるタンパク質であれば特に制限されるものではなく、例えば、配列表の配列番号2で示されるヒト由来のTLR9や、配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上記非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識することができるタンパク質や、これらの組換えタンパク質を具体的に挙げることができる。かかる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質は、そのDNA配列情報等に基づき公知の方法で調製でき、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAをリガンドとして特異的に認識する受容体として使用することができる。
【0024】
本発明における非メチル化CpG配列を有する細菌DNAとしては、T細胞、B細胞、抗原提示細胞等の免疫細胞を活性化し、免疫応答を誘導することができる、メチル化されていないCpGモチーフを有するオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)等のバクテリアに由来するDNAであって、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAをリガンドとして特異的に認識する受容体のリガンドとして使用できるDNAであればどのようなものでもよく、エセリシア・コリ、クレブシェラ・ニューモニエ、シュードモナス・アエルギノサ、サルモネラ・チフィムリウム、セラチア・マルセッセンス、フレクスナー赤痢菌、ビブリオ・コレレェ、サルモネラ・ミネソタ、ポルフィロモナス・ジンジバリス、スタフィロコッカス・アウレウス、コリネバクテリウム・ジフテリア、ノカルジア・コエリアカ、ストレプトコッカス・ニューモニアなどのバクテリア由来のDNAを具体的に挙げることができる。
【0025】
また、本発明の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNAとしては、配列表の配列番号2で示されるヒト由来のTLR9をコードするDNA、例えば配列番号1で示されるものや、配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上記非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識することができるタンパク質をコードするDNAや、これらDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ上記非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識することができるタンパク質をコードするDNAも包含され、これらはそのDNA配列情報等に基づき、例えばマウス由来のTLR9においてはマウスRAW264.7cDNAライブラリーや129/SvJマウス遺伝子ライブラリーなどから公知の方法により調製することができる。
【0026】
また、配列番号1に示される塩基配列又はその相補的配列並びにこれらの配列の一部又は全部をプローブとして、マウス由来のDNAライブラリーに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションを行ない、該プローブにハイブリダイズするDNAを単離することにより、受容体タンパク質TLR9と同効な目的とする免疫誘導非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNAを得ることもできる。かかるDNAを取得するためのハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、65℃でのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC,0.1%のSDSを含む緩衝液による65℃での洗浄処理を挙げることができる。なお、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える要素としては、上記温度条件以外に種々の要素があり、当業者であれば、種々の要素を適宜組み合わせて、上記例示したハイブリダイゼーションのストリンジェンシーと同等のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0027】
本発明の融合タンパク質とは、マウス、ヒト等の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質に、マーカータンパク質及び/又はペプチドタグを結合させたものをいい、マーカータンパク質としては、従来知られているマーカータンパク質であればどのようなものでもよく、例えば、アルカリフォスファターゼ、抗体のFc領域、HRP、GFPなどを具体的に挙げることができ、また本発明におけるペプチドタグとしては、Mycタグ、Hisタグ、FLAGタグ、GSTタグなどの従来知られているペプチドタグを具体的に例示することができる。かかる融合タンパク質は、常法により作製することができ、Ni-NTAとHisタグの親和性を利用した非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質の精製や、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質の検出や、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質に対する抗体の定量や、その他当該分野の研究用試薬としても有用である。
【0028】
本発明の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質に特異的に結合する抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体等の免疫特異的な抗体を具体的に挙げることができ、これらは上記非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を抗原として用いて常法により作製することができるが、その中でもモノクローナル抗体がその特異性の点でより好ましい。かかるモノクローナル抗体等の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質に特異的に結合する抗体は、例えば、TLR9の変異又は欠失に起因する疾病の診断やTLR9の制御分子機構を明らかにする上で有用である。
【0029】
非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質に対する抗体は、慣用のプロトコールを用いて、動物(好ましくはヒト以外)に該非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質若しくはエピトープを含む断片、又は該タンパク質を膜表面に発現した細胞を投与することにより産生され、例えばモノクローナル抗体の調製には、連続細胞系の培養物により産生される抗体をもたらす、ハイブリドーマ法(Nature 256, 495-497, 1975)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Immunology Today 4, 72, 1983)及びEBV-ハイブリドーマ法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, pp.77-96, Alan R.Liss, Inc., 1985)など任意の方法を用いることができる。以下に非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質として、マウス由来のTLR9を例に挙げてマウス由来のTLR9に対して特異的に結合するモノクローナル抗体、すなわち抗mTLR9モノクローナル抗体の作製方法を説明する。
【0030】
上記抗mTLR9モノクローナル抗体は、抗mTLR9モノクローナル抗体産生ハイブリドーマをインビボ又はインビトロで常法により培養することにより生産することができる。例えば、インビボ系においては、齧歯動物、好ましくはマウス又はラットの腹腔内で培養することにより、またインビトロ系においては、動物細胞培養用培地で培養することにより得ることができる。インビトロ系でハイブリドーマを培養するための培地としては、ストレプトマイシンやペニシリン等の抗生物質を含むRPMI1640又はMEM等の細胞培養培地を例示することができる。
【0031】
抗mTLR9モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、例えば、マウス等から得られた受容体タンパク質TLR9を用いてBALB/cマウスを免役し、免疫されたマウスの脾臓細胞とマウスNS-1細胞(ATCC TIB-18)とを、常法により細胞融合させ、免疫蛍光染色パターンによりスクリーニングすることにより、抗mTLR9モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを作出することができる。また、かかるモノクローナル抗体の分離・精製方法としては、タンパク質の精製に一般的に用いられる方法であればどのような方法でもよく、アフィニティークロマトグラフィー等の液体クロマトグラフィーを具体的に例示することができる。
【0032】
また、本発明の上記非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質に対する一本鎖抗体をつくるためには、一本鎖抗体の調製法(米国特許第4,946,778号)を適用することができる。また、ヒト化抗体を発現させるために、トランスジェニックマウス又は他の哺乳動物等を利用したり、上記抗体を用いて、その非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を発現するクローンを単離・同定したり、アフィニティークロマトグラフィーでそのポリペプチドを精製することもできる。非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質に対する抗体は、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質の分子機構を明らかにする上で有用である。
【0033】
また上記抗mTLR9モノクローナル抗体等の抗体に、例えば、FITC(フルオレセインイソシアネート)又はテトラメチルローダミンイソシアネート等の蛍光物質や、125I、32P、35S又は3H等のラジオアイソトープや、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ又はフィコエリトリン等の酵素で標識したものや、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光発光タンパク質などを融合させた融合タンパク質を用いることによって、上記非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質の機能解析を行うことができる。また免疫学的測定方法としては、RIA法、ELISA法、蛍光抗体法、プラーク法、スポット法、血球凝集反応法、オクタロニー法等の方法を挙げることができる。
【0034】
本発明はまた、上記非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を発現することができる発現系を含んでなる宿主細胞に関する。かかる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子の宿主細胞への導入は、Davisら(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, 1986)及びSambrookら(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載される方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープローディング(scrape loading)、弾丸導入(ballistic introduction)、感染等により行うことができる。そして、宿主細胞としては、大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス等の細菌原核細胞や、酵母、アスペルギルス等の真菌細胞や、ドロソフィラS2、スポドプテラSf9等の昆虫細胞や、L細胞、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、C127細胞、BALB/c3T3細胞(ジヒドロ葉酸レダクターゼやチミジンキナーゼなどを欠損した変異株を含む)、BHK21細胞、HEK293細胞、Bowesメラノーマ細胞、卵母細胞等の動植物細胞などを挙げることができる。
【0035】
また、発現系としては、上記非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を宿主細胞内で発現させることができる発現系であればどのようなものでもよく、染色体、エピソーム及びウイルスに由来する発現系、例えば、細菌プラスミド由来、酵母プラスミド由来、SV40のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、レトロウイルス由来のベクター、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来及びこれらの組合せに由来するベクター、例えば、コスミドやファージミドのようなプラスミドとバクテリオファージの遺伝的要素に由来するものを挙げることができる。これら発現系は、発現を起こさせるだけでなく、発現を調節する制御配列を含んでいてもよい。
【0036】
上記発現系を含んでなる宿主細胞やかかる細胞の細胞膜、またかかる細胞を培養して得られる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識するタンパク質は、後述するように本発明のスクリーニング方法に、受容体として使用することができる。例えば、細胞膜を得る方法としては、F. Pietri-Rouxel(Eur. J. Biochem., 247, 1174-1179, 1997)らの方法などを用いることができ、また、かかる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を細胞培養物から回収し精製するには、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた公知の方法、好ましくは、高速液体クロマトグラフィーが用いられる。特に、アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えば、抗TLR9モノクローナル抗体等の抗非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質抗体を結合させたカラムや、上記TLR9等の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質に通常のペプチドタグを付加した場合は、このペプチドタグに親和性のある物質を結合したカラムを用いることにより、これらの非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を得ることができる。
【0037】
本発明において、上記非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識するTLR9タンパク質をコードする遺伝子が過剰発現する非ヒト動物とは、野生型非ヒト動物に比べてかかる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を大量に産生する非ヒト動物をいい、また、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物とは、染色体上の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識するTLR9タンパク質をコードする遺伝子の一部若しくは全部が破壊・欠損・置換等の遺伝子変異により不活性化され、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識するTLR9タンパク質を発現する機能を失った非ヒト動物をいう。そして、本発明における非ヒト動物としては、ウサギや、マウス、ラット等の齧歯目動物などの非ヒト動物を具体的に挙げることができるが、これらに限定されるものではない。上記TLR9タンパク質を発現する機能を失った非ヒト動物は、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性のモデル動物として使用することができる。
【0038】
また、本発明において非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性とは、細菌DNAによる刺激に対する生体又は生体を構成する細胞、組織若しくは器官の反応性が低下しているか、あるいはほぼ失われていることを意味する。したがって、本発明において非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不反応性の非ヒト動物とは、細菌DNAによる刺激に対して、生体又は生体を構成する細胞、組織若しくは器官の反応性が低下しているか、あるいはほぼ失われているマウス、ラット、ウサギ等のヒト以外の動物をいう。また、細菌DNAによる刺激としては、細菌DNAを生体に投与するインビボでの刺激や、生体から分離された細胞に細菌DNAを接触させるインビトロでの刺激等を挙げることができ、具体的には、TLR9ノックアウトマウス等のTLR9遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物を挙げることができる。
【0039】
ところで、メンデルの法則に従い出生してくるホモ接合体非ヒト動物には、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質欠損型又は過剰発現型とその同腹の野生型とが含まれ、これらホモ接合体非ヒト動物における欠損型又は過剰発現型とその同腹の野生型を同時に用いることによって個体レベルで正確な比較実験をすることができることから、野生型の非ヒト動物、すなわち非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損又は過剰発現する非ヒト動物と同種の動物、さらには同腹の動物を、例えば下記に記載する本発明のスクリーニングに際して併用することが好ましい。かかる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損又は過剰発現する非ヒト動物の作製方法を、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質のノックアウトマウスやトランスジェニックマウスを例にとって以下説明する。
【0040】
例えば、TLR9等の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損したマウス、すなわち非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質ノックアウトマウスは、マウス遺伝子ライブラリーからPCR等の方法により得られた遺伝子断片を用いて、上記非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子をスクリーニングし、スクリーニングされた非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子をウイルスベクター等を用いてサブクローンし、DNAシーケンシングにより特定する。このクローンの非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部をpMC1ネオ遺伝子カセット等に置換し、3′末端側にジフテリアトキシンAフラグメント(DT-A)遺伝子や単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子等の遺伝子を導入することによって、ターゲットベクターを作製する。
【0041】
この作製されたターゲティングベクターを線状化し、エレクトロポレーション(電気穿孔)法等によってES細胞に導入し、相同的組換えを行い、その相同的組換え体の中から、G418やガンシクロビア(GANC)等の抗生物質により相同的組換えを起こしたES細胞を選択する。また、この選択されたES細胞が目的とする組換え体かどうかをサザンブロット法等により確認することが好ましい。その確認されたES細胞のクローンをマウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションし、かかる胚盤胞を仮親のマウスに戻し、キメラマウスを作製する。このキメラマウスを野生型のマウスとインタークロスさせると、ヘテロ接合体マウスを得ることができ、また、このヘテロ接合体マウスをインタークロスさせることによって、本発明の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質ノックアウトマウスを作製することができる。また、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質ノックアウトマウスが生起しているかどうかを確認する方法としては、例えば、上記の方法により得られたマウスからRNAを単離してノーザンブロット法等により調べたり、またこのマウスの発現をウエスタンブロット法等により調べる方法がある。
【0042】
また、作出されたTLR9ノックアウトマウスが非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して不応答性であることは、例えば、CpG ODNをTLR9ノックアウトマウスのマクロファージ、単核細胞、樹状細胞などの免疫細胞にインビトロ又はインビボで接触せしめ、かかる細胞におけるTNF-α、IL-6、IL-12、IFN-γ等の産生量や、脾臓B細胞の増殖応答や、脾臓B細胞表面でのCD40、CD80、CD86、MHCクラスII等の抗原の発現量や、NF-κB、JNK、IRAK等のTLR9のシグナル伝達経路における分子の活性化を測定することにより確認することができる。そして、本発明のTLR9ノックアウトマウスは、非メチル化CpG配列を有する細菌DNA等の作用機序の解明や細菌感染に対するワクチン開発に有用なモデルとすることができる。
【0043】
非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質のトランスジェニックマウスは、TLR9等の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするcDNAにチキンβ-アクチン、マウスニューロフィラメント、SV40等のプロモーター、及びラビットβ-グロビン、SV40等のポリA又はイントロンを融合させて導入遺伝子を構築し、該導入遺伝子をマウス受精卵の前核にマイクロインジェクションし、得られた卵細胞を培養した後、仮親のマウスの輸卵管に移植し、その後被移植動物を飼育し、産まれた仔マウスから前記cDNAを有する仔マウスを選択することによりかかるトランスジェニックマウスを創製することができる。また、cDNAを有する仔マウスの選択は、マウスの尻尾等より粗DNAを抽出し、導入した非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子をプローブとするドットハイブリダイゼーション法や、特異的プライマーを用いたPCR法等により行うことができる。
【0044】
また、本発明の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNAの全部あるいは一部を用いると、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質の欠失又は異常に起因する疾病等の遺伝子治療に有効な細胞を調製することができる。本発明におけるこれら細胞の調製方法としては、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した細胞に、上記本発明のDNAの全部あるいは一部をトランスフェクション等により導入し、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を発現する細胞を得る方法を挙げることができ、特に、かかる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を発現する細胞としては、上記DNA等が染色体にインテグレイトされ、ステイブルにTLR9活性を示す細胞を用いることが好ましい。
【0045】
そしてまた、上記非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNA、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質とマーカータンパク質及び/又はペプチドタグとを結合させた融合非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質に対する抗体、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を発現することができる発現系を含んでなる宿主細胞、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子が過剰発現する非ヒト動物、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を発現する細胞等を用いると、本発明の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質のアゴニスト又はアンタゴニストや、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対する反応性の抑制物質又は促進物質をスクリーニングすることができる。これらのスクリーニングにより得られたものは、細菌感染症に対する抑制物質又は促進物質や、アレルギー性疾患若しくは癌に対する抑制剤、予防剤又は治療薬や、遺伝子治療等において副作用を抑制剤又は阻害剤や、TLR9活性の欠失又は異常に起因する疾病等の診断・治療に有用な物質である可能性がある。
【0046】
上記TLR9活性とは、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAと特異的に反応し、細胞内にシグナルを伝達する機能をいい、シグナル伝達機能としては、TNF-α、IL-6、IL-12、IFN-γ等のサイトカインを産生する機能や、亜硝酸イオンを産生する機能や、細胞を増殖する機能や、細胞表面においてCD40、CD80、CD86、MHCクラスII等の抗原を発現する機能や、NF-κB、JNK、IRAK等のTLR9のシグナル伝達経路における分子を活性化させる機能などを具体的に例示することができる。
【0047】
本発明の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質TLR9のアゴニスト又はアンタゴニストのスクリーニング方法としては、被検物質の存在下、マクロファージ、脾臓細胞又は樹状細胞などの免疫細胞、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を発現している細胞、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質を発現する細胞等の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有するタンパク質を発現している細胞をインビトロで培養し、TLR9活性を測定・評価する方法や、野生型非ヒト動物、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物、又は、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子が過剰発現した非ヒト動物に被検物質を投与し、該非ヒト動物から得られるマクロファージ、脾臓細胞、又は樹状細胞などの免疫細胞のTLR9活性を測定・評価する方法等を具体的に挙げることができる。
【0048】
また、マクロファージ活性又は脾臓細胞活性の程度を測定・評価するに際し、対照として野生型非ヒト動物、特に同腹の野生型非ヒト動物の測定値と比較・評価することが個体差によるバラツキをなくすることができるので好ましい。このことは、以下に示す非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対する反応性の抑制物質又は促進物質のスクリーニングや、TLR9のアゴニスト又はアンタゴニストのスクリーニングにおいても同様である。例えば、野生型非ヒト動物の免疫細胞とTLR9がノックアウトされたモデル非ヒト動物由来の免疫細胞に被検物質を接触させて免疫細胞活性の程度を測定し、野生型動物由来の免疫細胞における活性が増加してモデル動物由来の免疫細胞における活性が変わらないときは前記被検物質はTLR9のアゴニストと評価することができ、野生型非ヒト動物の免疫細胞とTLR9がノックアウトされたモデル非ヒト動物由来の免疫細胞に非メチル化CpG配列を有する細菌DNAの存在下に被検物質を接触させて免疫細胞活性の程度を測定し、野生型動物由来の免疫細胞における活性が低下してモデル動物由来の免疫細胞における活性が変わらないとき前記被検物質はTLR9のアンタゴニストと評価することができる。
【0049】
また、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識するタンパク質に対する被験物質の親和性を指標とする、免疫応答反応性の抑制物質又は刺激/促進物質のスクリーニング方法としては、被検物質と非メチル化CpG配列を有する細菌DNAとの存在下/又は非存在下で、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有するタンパク質、又は該タンパク質を発現している細胞膜をインビトロでインキュベーションし、該タンパク質との反応性を測定・評価する方法や、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有するタンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物から得られるマクロファージ又は脾臓細胞と被検物質とをあらかじめインビトロで接触せしめた後、該マクロファージ又は脾臓細胞を非メチル化CpG配列を有する細菌DNAの存在下で培養し、該マクロファージ若しくは脾臓細胞のマクロファージ活性又は脾臓細胞活性の程度を測定・評価する方法や、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有するタンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物から得られるマクロファージ又は脾臓細胞と非メチル化CpG配列を有する細菌DNAとをあらかじめインビトロで接触せしめた後、該マクロファージ又は脾臓細胞を被検物質の存在下で培養し、該マクロファージ若しくは脾臓細胞のマクロファージ活性又は脾臓細胞活性の程度を測定・評価する方法や、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有するタンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物にあらかじめ被検物質を投与した後、該非ヒト動物から得られるマクロファージ又は脾臓細胞を非メチル化CpG配列を有する細菌DNAの存在下で培養し、該マクロファージ若しくは脾臓細胞のマクロファージ活性又は脾臓細胞活性の程度を測定・評価する方法や、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有するタンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物にあらかじめ被検物質を投与した後、該非ヒト動物を細菌により感染させ、該非ヒト動物から得られるマクロファージ若しくは脾臓細胞のマクロファージ活性又は脾臓細胞活性の程度を測定・評価する方法や、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有するタンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物をあらかじめ細菌により感染させた後、該非ヒト動物から得られるマクロファージ又は脾臓細胞を被検物質の存在下で培養し、該マクロファージ若しくは脾臓細胞のマクロファージ活性又は脾臓細胞活性の程度を測定・評価する方法や、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有するタンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物をあらかじめ細菌により感染させた後、該非ヒト動物に被検物質を投与し、該非ヒト動物から得られるマクロファージ若しくは脾臓細胞のマクロファージ活性又は脾臓細胞活性の程度を測定・評価する方法や、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有するタンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物にあらかじめ被検物質を投与した後、該非ヒト動物を細菌により感染させ、該非ヒト動物におけるマクロファージ活性又は脾臓細胞活性の程度を測定・評価する方法や、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対して反応性を有するタンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物をあらかじめ細菌により感染させた後、該非ヒト動物に被検物質を投与し、該非ヒト動物におけるマクロファージ活性又は脾臓細胞活性の程度を測定・評価する方法などを具体的に挙げることができる。また、これらのスクリーニング方法に用いる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAとしては、CpG ODN(TCC-ATG-ACG-TTC-CTG-ATG-CT:配列番号5)を用いることが好ましいが、これに限定されるのもではない。
【0050】
本発明はまた、検体中の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNA配列を、本発明の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNA配列と比較することからなる、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質の活性又は発現と関連する疾病の診断に用いられる診断キットに関する。非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNAの変異型の検出は、遺伝子に変異がある個体をDNAレベルで見い出すことにより行うことができ、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質の過少発現、過剰発現又は変異発現により生ずる疾病の診断に有効である。かかる検出に用いられる検体としては、被験者の細胞、例えば血液、尿、唾液、組織等の生検から得ることができるゲノムDNAや、RNA又はcDNAを具体的に挙げることができるがこれらに限定されるものではなく、かかる検体を使用する場合、PCR等により増幅したものを用いることもできる。そして、塩基配列の欠失や挿入変異は、正常な遺伝子型と比較したときの増幅産物のサイズの変化により検出でき、また点突然変異は増幅DNAを標識非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子とハイブリダイズさせることで同定することができる。このように、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードする遺伝子の変異を検出することで、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質の活性又は発現と関連する疾病の診断又は判定をすることができる。
【0051】
本発明はまた、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNA又はRNAのアンチセンス鎖の全部又は一部からなる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質の活性又は発現と関連する疾患の診断用プローブ、及び当該プローブ及び/又は本発明の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質に特異的に結合する抗体を含有してなる非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質の活性又は発現と関連する疾患の診断キットに関する。前記診断用プローブとしては、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNA(cDNA)又はRNA(cRNA)のアンチセンス鎖の全部又は一部であり、プローブとして成立する程度の長さ(少なくとも20ベース以上)を有するものであれば特に制限されるものではない。かかるプローブ及び/又は本発明の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質に特異的に結合する抗体を細菌感染症等のような症状の疾患の診断薬の有効成分とするためには、プローブが分解されないような適当なバッファー類や滅菌水に溶解することが好ましい。また、これらの診断薬を用いた、免疫染色法(Dev.Biol. 170, 207-222, 1995、J. Neurobiol. 29, 1-17, 1996)や、In situハイブリダイゼーション法(J. Neurobiol. 29, 1-17, 1996)や、in situ PCR法等の方法により細菌感染症等のような症状の疾患を診断することもできる。
【0052】
本発明の医薬組成物としては、TLR9等の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質の全部又はその一部や、上記受容体タンパク質のアゴニストやアンタゴニストを含むものであれば、どのようなものでもよい。具体的には、細菌感染症に対するワクチンや、癌に対するワクチンや、気管支喘息をはじめとするアレルギー疾患の治療薬や、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた治療や遺伝子治療において障害となるCpGモチーフの存在による副作用の克服剤・抑制剤・阻害剤などを挙げることができる。
【0053】
前記のように、本発明の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNA配列の欠失、置換及び/又は付加に関連する疾病の診断キットとしては、TLR9をコードするDNAを含むものであればどのようなものでもよく、かかるTLR9をコードするDNAと検体中の非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNAとの塩基配列を比較することにより、非メチル化CpG配列を有する細菌DNAを特異的に認識する受容体タンパク質をコードするDNA配列の欠失、置換及び/又は付加に関連する疾病、例えば、癌、アレルギー、伝染病等の診断が可能となる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれら実施例により限定されるものではない。
実施例1(TLR9のクローニング)
ヒトTLR4のDNA配列情報を用いて、GenBankをサーチした結果、相同性がきわめて高いマウスEST(登録番号AA273731;マウス)を見い出した。このマウスESTのPCR増幅産物をプローブとして、マウスRAW264.7cDNAライブラリーをスクリーニングし、完全なTLR9オープンリーディングフレームを含む配列番号3に示される完全長のcDNAクローンを単離した。このマウスTLR9のDNA配列情報を用いてGenBankをサーチし、高い相同性を有するヒトゲノム配列を見い出した。このヒトゲノム配列に基づいて、cDNA端部を増幅し、U937細胞(J. Immunol. 163, 5039-5048, 1999)から、配列番号1に示される塩基配列を有する完全長のヒトTLR9のcDNAを単離した。
【0055】
実施例2(TLR9ノックアウトマウスの作製)
129/SvJマウス遺伝子ライブラリー(ストラタジーン社製)からTLR9ゲノムDNAを単離し、pBluescript II SK(+)ベクター(ストラタジーン社製)中でサブクローンし、制限酵素マッピング及びDNA配列決定により特定した。ターゲッティングベクターは、LRR(ロイシンリッチリピート)領域の一部分をコードする1.0kbのフラグメントを、ネオマイシン耐性遺伝子カセット(pMC1-neo;ストラタジーン社製)に置換し、負の選択マーカーとして単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)を挿入することにより構築した(図1)。このターゲッティングベクターを線状化し、胎生14.1日目の胚幹細胞(ES細胞)にエレクトポレーションし、G418及びガンシクロビアに抵抗性を示す292個のクローンを選択し、PCR法及びサザンブロット法により14個のクローンをスクリーニングした。
【0056】
突然変異TLR9対立遺伝子を含有していた3個の標的ESクローンを、C57BL/6マウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションしキメラマウスを作製した。この雄のキメラマウスをC57BL/6雌マウスと交配させ、ヘテロ接合体F1マウスを作製し、かかるヘテロ接合体F1マウスをインタークロスすることによってホモ接合体マウス(TLR9ノックアウトマウス:TLR9-/-)を得た(図2)。なお、ホモ接合体マウスの確認は、マウスの尾から抽出した各ゲノムDNAをScaIでダイジェストし、図1に示すプローブを用いたサザンブロット法により行った。本発明のTLR9ノックアウトマウス(TLR9-/-)はメンデルの法則に従い作製することができ、12週目までは顕著な異常を示さなかった。
【0057】
突然変異によりTLR9遺伝子の不活性化が生起していることを確認するため、野生型マウス(+/+)及びTLR9ノックアウトマウス(-/-)の脾臓細胞から抽出した全RNA(10μg)を電気泳動にかけナイロン膜に移して、[32P]で標識したTLR9のC-末端フラグメント若しくはN-末端フラグメント、又はβ-アクチン(β-actin)に特異的なcDNAを用いてノーザンブロット分析を行った(図3)。これらの結果から、TLR9mRNAのN-末端フラグメントはTLR9ノックアウトマウスの脾臓細胞からは検出されなかった。また、C-末端フラグメントをプローブとした場合、変異マウス由来のTlr9の転写は野生型マウス由来のものとほぼ同じサイズのものが検出されたが、生産量においては少ないことがわかった。そこで、変異マウスから得られた脾臓細胞のmRNAを用いてRT-PCR法を行い、得られた生成物の配列分析を行った。この結果、転写されたTlr9遺伝子にはneo遺伝子が含まれており、このneoの挿入によって、TLR9のN-末端部位にストップコドンが出現し、変異マウスにおいて機能的なTLR9タンパク質が発現しないことがわかった(図4)。なお、TLR9ノックアウトマウスのリンパ細胞をフローサイトメトリーで測定した結果、異常成分は見られなかった。
【0058】
実施例3(腹腔マクロファージの調製)
野生型マウス(wild-type)及びTLR9ノックアウトマウス(TLR9-/-)のそれぞれの腹腔内に4%のチオグリコール酸培地(DIFCO社製)を2mlずつ注入し、3日後に各マウスの腹腔内から腹膜滲出細胞を単離し、これらの細胞を10%のウシ胎仔血清(GIBCO社製)を添加したRPMI1640培地(GIBCO社製)中で37℃にて2時間培養し、氷温のハンクス緩衝液(Hank's buffered salt solution:HBSS;GIBCO社製)で洗浄することにより非付着細胞を取り除き、付着細胞を腹膜マクロファージとして以下の実験に使用した。
【0059】
実施例4(TLR9ノックアウトマウスの非メチル化CpG配列を有する細菌DNAに対する応答性)
最近、CpG ODN(oligodeoxynucleotide)の応答性は、TLRを介するシグナル伝達経路の中のアダプタータンパク質であるMyD88に依存していることが明らかになった。このMyD88ノックアウトマウスはCpG ODNに対して応答しないが、TLR2ノックアウトマウスやTLR4ノックアウトマウスは正常にCpG ODNに対して応答する。これらのことは、CpG ODNがTLR2及びTLR4以外のTLRによって認識されることを示している。そこで、TLR9ノックアウトマウスのCpG ODNに対する応答性を調べてみた。まず、腹腔マクロファージにおける炎症性サイトカインの産生量を以下のように測定した。
【0060】
実施例3により調製した各腹膜マクロファージをINFγ(30unit/ml)の存在下又は非存在下において、図5に示された各種濃度のCpG ODN(0.1又は1.0μM;TIB MOLBIOL社製;TCC-ATG-ACG-TTC-CTG-ATG-CT)、PGN(10μg/ml;Sigma and Fluka社製;スタフィロコッカス・アウレウス由来)、LPS(1.0μg/ml;Sigma社製;サルモネラ・ミネソタRe-595由来)といっしょに24時間培養した。培養後、培養上清中のTNFα、IL-6及びIL-12 p40の各濃度をELISA法により測定した。この結果を図5に示す。これらの結果から、野生型マウス(Wild-type)のマクロファージはCpG ODNに応答してTNFα、IL-6及びIL-12を産生し、さらにIFNγ及びCpG ODNで刺激すると、TNFα、IL-6及びIL-12の産生量が増加することがわかった。しかし、TLR9ノックアウトマウス(TLR9-/-)由来のマクロファージは、IFNγの存在下でさえ、CpG ODNに対する応答において検出可能なレベルの炎症性サイトカインを産生していなかった。また、野生型マウス及びTLR9ノックアウトマウス由来のマクロファージは、LPS又はPGNに対する応答によりTNFα、IL-6及びIL-12をほぼ同程度産生することがわかった(図5)。なお、それぞれの実験結果はn=3の平均値を示す。図中のN.D.は検出できなかったことを示す。
【0061】
また、CpG ODN又はLPSに対する野生型マウス(Wild-type)及びTLR9ノックアウトマウス(TLR9-/-)の脾臓細胞の応答性について調べてみた。それぞれのマウスの脾臓細胞(1×105)を単離し、図6に示す各種濃度のCpG ODN又はLPSにより96ウェルプレート内で培養して脾臓細胞を刺激した。培養から40時間後に1μCiの[3H]-チミジン(デュポント社製)を添加して更に8時間培養し、[3H]の摂取量をβシンチレーションカウンター(パッカード社製)で測定した(図6)。この結果から、野生型マウスの脾臓細胞では、CpG ODNやLPSの投与量に依存して細胞増殖反応を促進していたが、TLR9ノックアウトマウスの脾臓細胞では、いかなる濃度のCpG ODN刺激においてもCpG ODNによる細胞増殖反応は見られなかった。また、CpG ODNに応答して、野生型マウス由来のB細胞表面の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIIの発現が増加した。しかし、TLR9ノックアウトマウス由来のB細胞ではCpG ODNに誘導されたMHCクラスIIの発現の増加は見られなかった。以上のことから、TLR9ノックアウトマウスのマクロファージやB細胞は、CpG ODNに対する応答性を特異的に欠如していることがわかった。
【0062】
次に、CpG ODNを含有するバクテリア由来DNAは樹状細胞を潜在的に刺激し、Th1細胞の発達をサポートすることが知られている(EMBO J. 18, 6973-6982, 1999、J. Immunol. 161, 3042-3049, 1998、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 9305-9310, 1999)。そこでCpG ODN誘導サイトカインの産生と、骨髄由来の樹状細胞の表面分子のアップレギュレーションを分析した。野生型マウス(Wild-type)又はTLR9ノックアウトマウス(TLR9-/-)の骨髄細胞を、10ng/mlのマウス顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(Peprotech社製)を含む10%のウシ胎仔血清を添加したRPMI1640培地で培養し(J. Exp. Med. 176, 1693-1702, 1992)、培養後6日目に未成熟の樹状細胞を回収し、0.1μMのCpG ODN又は0.1μg/mlのLPSの存在下若しくは非存在下において、10%のウシ胎仔血清を添加したRPMI1640培地中で2日間培養した。培養後、上清中のIL-12 p40の濃度をELISA法で測定した(図7)。この結果から、野生型マウス由来の樹状細胞はCpG ODNに応答してIL-12を産生したが、TLR9ノックアウトマウス由来の樹状細胞においては、CpG ODNはIL-12の産生を誘導しなかった。
【0063】
上記10ng/mlのマウス顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(Peprotech社製)を含む10%のウシ胎仔血清を添加したRPMI1640培地で培養し、6日目に回収された樹状細胞を、CD40、CD80、CD86及びMHCクラスIIに対する、それぞれのビオチン化抗体により染色し、フィコエリトリン(phycoerythrin:PE;ファーミンジェン社製)で標識したストレプトアビジンで発展させ、これらの細胞をセルクエストソフトウェア(ベクトンディッキンソン社製)により蛍光活性化セルソーターキャリバー(FACS Calibur)で分析した(図8)。この結果から、CpG ODNで刺激すると、野生型マウス由来の樹状細胞表面においては、CD40、CD80、CD86及びMHCクラスIIの発現を促進していたが、TLR9ノックアウトマウス由来の樹状細胞表面では、CpG ODNに対する応答によりこれらの分子の発現を促進しなかった(図8)。LPSによる刺激では、野生型マウス由来の樹状細胞もTLR9ノックアウトマウス由来の樹状細胞も同様の応答がみられた。以上の結果から、TLR9はCpGODNの細胞応答に不可欠な受容体であることがわかった。
【0064】
実施例5(TLR9ノックアウトマウス由来のマクロファージのCpG ODNに対する応答によるNF-κB、JNK及びIRAKの活性化)
TLRのシグナルは、アダプター分子であるMyD88を介してセリン/トレオニンキナーゼであるIRAKを活性化し、次いでMAPキナーゼ及びNF-κBを活性化することが知られている(Immunity 11, 115-122, 1999)。そこでCpG ODNが、かかる細胞内シグナル伝達分子を活性化するかどうかを調べてみた。実施例3により調製した野生型マウス及びTLR9ノックアウトマウスの腹腔マクロファージ(1×106cells)を、1.0μMのCpG ODN又は1.0μg/mlのサルモネラ・ミネソタRe-595のLPSで図9に示された時間刺激し、各マウスのマクロファージから核蛋白質を抽出し、NF-κBのDNA結合部位を含む特異的プローブといっしょにインキュベートし、電気泳動を行い、オートラジオグラフィーにより視覚化した(図9)。
【0065】
この結果から、CpG ODNで刺激すると、野生型マウス由来のマクロファージではNF-κBのDNA結合活性が増加するのに対し、TLR9ノックアウトマウス由来のマクロファージではNF-κBのDNA結合活性は増加しなかった。TLR9ノックアウトマウス由来のマクロファージをLPSで刺激したものは、野生型マウス由来のマクロファージをLPSで刺激したものと同様のNF-κBの活性化が見られた。以上の結果から、CpG ODNの誘導によるNF-κBの活性がTLR9ノックアウトマウス由来のマクロファージにおいて特異的に欠損していることがわかる。なお、図中の矢印はNF-κBと特異的プローブとの複合物の位置を示し、矢頭は特異的プローブのみの位置を示している。
【0066】
上記と同様に図10又は図11で示された時間、CpG ODN又はLPSで刺激した野生型マウス及びTLR9ノックアウトマウスのマクロファージを、溶解緩衝液(最終濃度で1.0%のトリトンX-100、137mMのNaCl、20mMのトリス-HCl、5mMのEDTA、10%のグリセロール、1mMのPMSF、20μg/mlのアプロチニン、20μg/mlのロイペプチン、1mMのNa3VO4及び10mMのβ-グリセロリン酸を含有する緩衝液;pH8.0)中にて溶解し、この細胞溶解物を抗JNK抗体(サンタクルス社製)又は抗IRAK抗体(林原生化学研究所株式会社製)で免疫沈降して、文献(Immunity 11, 115-122, 1999)記載のように、インビトロキナーゼアッセイを行い、GST-c-Jun溶解蛋白質(GST-c-Jun)を基質としたJNK活性及びIRAKの活性を測定した(図10,11における上段;GST-c-Jun,Auto)。
【0067】
また、上記細胞溶解物を、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離させ、ニトロセルロース膜に移し、この膜を抗JNK抗体(サンタクルス社製)又は抗IRAK抗体(Transduction Laboratories社製)でブロットして、エンハンスド・ケミルミネッセンス装置(デュポント社製)を使用して視覚化した(図10,11における下段;WB)。以上の結果から、CpG ODNは野生型マウス由来のマクロファージのJNK及びIRAKを活性化するが、TLR9ノックアウトマウス由来のマクロファージでは全く活性化しないことがわかった(図10,11)。したがって、CpG ODNを介する情報伝達はTLR9に依存していることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明のTLR9ノックアウトマウスと野生型マウスの遺伝子地図を示す図である。
【図2】本発明のTLR9ノックアウトマウスのサザンブロット分析の結果を示す図である。
【図3】本発明のTLR9ノックアウトマウスの脾臓細胞におけるノーザンブロット分析の結果を示す図である。
【図4】本発明のTLR9ノックアウトマウスと野生型マウスのアミノ酸配列の比較結果を示す図である。
【図5】本発明のTLR9ノックアウトマウス及び野生型マウスにおけるCpG ODN、PGN又はLPS誘導によるTNFα、IL-6又はIL12の産生量の結果を示す図である。
【図6】本発明のTLR9ノックアウトマウス及び野生型マウスにおけるCpG ODN又はLPS誘導による細胞増殖応答の結果を示す図である。
【図7】本発明のTLR9ノックアウトマウス及び野生型マウスにおけるCpG ODN又はLPS誘導によるIL-12の産生量の結果を示す図である。
【図8】本発明のTLR9ノックアウトマウス及び野生型マウスにおけるCpG ODN又はLPS誘導によるCD40、CD80、CD86及びMHCクラスIIの発現量の結果を示す図である。
【図9】本発明のTLR9ノックアウトマウス及び野生型マウスにおけるCpG ODN又はLPS誘導によるNF-κBの活性化の結果を示す図である。
【図10】本発明のTLR9ノックアウトマウス及び野生型マウスにおけるCpG ODN又はLPS誘導によるJNKの活性化の結果を示す図である。
【図11】本発明のTLR9ノックアウトマウス及び野生型マウスにおけるCpG ODN又はLPS誘導によるIRAKの活性化の結果を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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