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明細書 :マイクロリアクター及びそれを用いた接触反応方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4734505号 (P4734505)
登録日 平成23年5月13日(2011.5.13)
発行日 平成23年7月27日(2011.7.27)
発明の名称または考案の名称 マイクロリアクター及びそれを用いた接触反応方法
国際特許分類 B01J  19/00        (2006.01)
B01J   3/00        (2006.01)
B01J   3/02        (2006.01)
B01J  31/24        (2006.01)
C07C   5/03        (2006.01)
C07C  15/12        (2006.01)
C07C  67/303       (2006.01)
C07C  69/24        (2006.01)
C07C  29/17        (2006.01)
C07C  31/125       (2006.01)
C07C  33/20        (2006.01)
C07C  45/62        (2006.01)
C07C  49/213       (2006.01)
C07C  41/20        (2006.01)
C07C  43/164       (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 19/00 321
B01J 3/00 A
B01J 3/02 A
B01J 31/24 Z
C07C 5/03
C07C 15/12
C07C 67/303
C07C 69/24
C07C 29/17
C07C 31/125
C07C 33/20
C07C 45/62
C07C 49/213
C07C 41/20
C07C 43/164
C07B 61/00 300
C07B 61/00 C
請求項の数または発明の数 10
全頁数 17
出願番号 特願2007-500578 (P2007-500578)
出願日 平成18年1月26日(2006.1.26)
国際出願番号 PCT/JP2006/301239
国際公開番号 WO2006/080404
国際公開日 平成18年8月3日(2006.8.3)
優先権出願番号 2005018954
優先日 平成17年1月26日(2005.1.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年12月7日(2006.12.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】森 雄一朗
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査官 【審査官】神田 和輝
参考文献・文献 特開2002-003529(JP,A)
特開2004-053545(JP,A)
特表2004-534012(JP,A)
特表2004-504289(JP,A)
Juta Kobayashi et al,,"A Microfluidic Device for Conducting Gas-Liquid-Solid Hydrogenation Reactions",Science,米国,2004年 5月28日,Vol.304,p.1305-1308
調査した分野 B01J 3/00-3/04
B01J 19/00-19/32
B01J 21/00-38/74
C07B 31/00-63/04
C07C 1/00-409/44
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
マイクロチャンネルと、基質と該基質と反応する気体と超臨界流体との混合物を該マイクロチャンネルへ供給する超臨界流体供給部と、マイクロチャンネルにおける反応生成物を回収する回収部と、を備え、
上記マイクロチャンネルは、流路を有し該流路の内壁に固相となる金属触媒を担持しており、
上記金属触媒はパラジウムが高分子に取り込まれた触媒であり、該高分子に取り込まれたパラジウム触媒が、該高分子表面の基を介して、上記流路の内壁表面のシラノール基又はスペーサーにある基との共有結合により上記流路の内壁に担持されており、
上記高分子は、下記化学式(1)で表される3種のモノマーからなり、
上記超臨界流体供給部は、二酸化炭素からなる超臨界流体の原料を収容する原料収容部と、上記基質と反応する気体として水素を収容する気体収容部と、上記基質を収容する基質収容部と、を有し、
上記超臨界流体の原料及び水素を上記基質収容部へ導入して該原料を加圧及び加温して水素と基質と超臨界流体との混合物とし、
上記混合物を上記マイクロチャンネルの流路へ所定の圧力及び温度で、かつ、所定の流量で連続的に流すことにより、上記基質及び水素の反応を上記パラジウム触媒により促進される固相-超臨界流体相の2相系接触反応で行うことを特徴とする、マイクロリアクター。
【化1】
JP0004734505B2_000002t.gif

【請求項2】
マイクロチャンネルと、基質及び該基質と反応する気体を混合した超臨界流体を該マイクロチャンネルへ供給する超臨界流体供給部と、マイクロチャンネルにおける反応生成物を回収する回収部と、を備え、
上記マイクロチャンネルは、流路を有し該流路の内壁に固相となる金属触媒を担持しており、
上記金属触媒はパラジウムが高分子に取り込まれた触媒であり、該高分子に取り込まれたパラジウム触媒が、該高分子表面の基を介して、上記流路の内壁表面のシラノール基又はスペーサーにある基との共有結合により上記流路の内壁に担持されており、
上記高分子は、下記化学式(1)で表される3種のモノマーからなり、
上記超臨界流体供給部は、二酸化炭素からなる超臨界流体の原料を収容する原料収容部と、上記基質と反応する気体として水素を収容する気体収容部と、上記基質を収容する基質収容部と入口側及び出口側に設けた第1及び第2の弁と、を有し、
上記回収部は、上記マイクロチャンネルの流路を通過する基質と水素と超臨界流体との混合物の圧力を調整する背圧調整部と反応生成物を回収する回収容器とを有し、
上記第1の弁を開いて上記超臨界流体の原料及び水素を上記基質収容部へ導入して該基質収容部内で上記超臨界流体の原料を加圧及び加温して水素と基質と超臨界流体との混合物とし、
上記混合物を上記第2の弁を開いて上記マイクロチャンネルの流路へ所定の圧力及び温度で、かつ、所定の流量で連続的に流すことにより、上記基質及び水素の反応を上記パラジウム触媒により促進される固相-超臨界流体相の2相系接触反応で行うことを特徴とする、マイクロリアクター。
【化2】
JP0004734505B2_000003t.gif

【請求項3】
マイクロチャンネルと、基質及び該基質と反応する気体を混合した超臨界流体を該マイクロチャンネルへ供給する超臨界流体供給部と、マイクロチャンネルにおける反応生成物を回収する回収部と、を備え、
上記マイクロチャンネルは、流路を有し該流路の内壁に固相となる金属触媒を担持しており、
上記金属触媒はパラジウムが高分子に取り込まれた触媒であり、該高分子に取り込まれたパラジウム触媒が、該高分子表面の基を介して、上記流路の内壁表面のシラノール基又はスペーサーにある基との共有結合により上記流路の内壁に担持されており、
上記高分子は、下記化学式(1)で表される3種のモノマーからなり、
上記超臨界流体供給部は、二酸化炭素からなる超臨界流体の原料を収容する原料収容部と、上記基質と反応する気体として水素を収容する気体収容部と、上記超臨界流体の原料を加圧及び加温し超臨界流体とするオートクレーブと、該オートクレーブへ上記超臨界流体の原料を送出する送液ポンプと、上記基質を収容する基質収容部と、上記原料及び水素の該オートクレーブへの導入を制御する第1の弁と、上記水素と混合した超臨界流体のオートクレーブから上記基質収容部への導入を制御する第2の弁と、上記基質と水素と超臨界流体との混合物の上記マイクロチャンネルへの送出を制御する第3の弁と、を有し、
上記回収部は、上記マイクロチャンネルの流路を通過する超臨界流体の圧力を調整する背圧調整部と反応生成物を回収する回収容器とを有し、
上記第1の弁を開いて上記超臨界流体の原料及び水素を上記オートクレーブへ導入して超臨界流体の原料を超臨界流体とし、
上記第2の弁を開いて上記水素を混合した超臨界流体を基質収容部へ導入して基質と水素と超臨界流体との混合物を作り、
上記第3の弁を開いて上記混合物をマイクロチャンネルへ送出し、
上記混合物を上記マイクロチャンネルの流路へ所定の圧力及び温度で、かつ、所定の流量で連続的に流すことにより、上記基質及び水素の反応を上記パラジウム触媒により促進される固相-超臨界流体相の2相系接触反応で行うことを特徴とする、マイクロリアクター。
【化3】
JP0004734505B2_000004t.gif

【請求項4】
前記高分子は、前記化学式(1)で表される3種のモノマーが、左側の高分子から順に、91:5:4の比で構成される高分子であることを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載のマイクロリアクター。
【請求項5】
前記高分子表面の基がエポキシ基であり、前記スペーサーにある基がエポキシ基と結合する官能基で修飾されていることを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載のマイクロリアクター。
【請求項6】
前記マイクロリアクターは制御部を有し、該制御部は、前記基質及び基質と反応する水素と超臨界流体との前記混合物を、前記マイクロチャンネルの流路へ所定の圧力及び温度、かつ、所定の流量で連続的に流すように制御することを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載のマイクロリアクター。
【請求項7】
流路の内壁に固相となる金属触媒又は金属錯体触媒を担持し、該流路に超臨界流体を流すマイクロリアクターを用いた接触反応方法であって、
上記金属触媒はパラジウムが高分子に取り込まれた触媒であり、該高分子に取り込まれたパラジウム触媒が、該高分子表面の基を介して、上記流路の内壁表面のシラノール基又はスペーサーにある基との共有結合により上記流路の内壁に担持されており、
上記高分子は、下記化学式(1)で表される3種のモノマーからなる高分子であり、
上記二酸化炭素からなる超臨界流体に、基質及び該基質と反応する気体として水素を混合し、
上記基質及び基質と反応する水素との反応を上記パラジウム触媒により促進される固相-超臨界流体相の2相系接触反応で行うことを特徴とする、マイクロリアクターを用いた接触反応方法。
【化4】
JP0004734505B2_000005t.gif

【請求項8】
前記高分子表面の基がエポキシ基であり、前記スペーサーにある基がエポキシ基と結合する官能基で修飾されていることを特徴とする、請求項7に記載のマイクロリアクターを用いた接触反応方法。
【請求項9】
前記基質は、4-メチル-2,4—ジフェニル-1-ペンテン、エチル ウンデシレネート、10-ウンデセン-1-オール、3—フェニル-2-プロピン-1-オール、トランス-4-フェニル-3-ブテン-2-オン、1-ベンジルオキシ-3-フェニル-2-プロピン、の何れかであることを特徴とする、請求項7に記載のマイクロリアクターを用いた接触反応方法。
【請求項10】
前記高分子は、前記化学式(1)で表される3種のモノマーが、左側の高分子から順に、91:5:4の比で構成される高分子であることを特徴とする、請求項7に記載のマイクロリアクターを用いた接触反応方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、基質と気体との接触反応に利用できる、マイクロリアクター及びそれを用いた接触反応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不均一系触媒を用いる接触水素化反応、所謂、接触還元反応は化学工業の最も重要なプロセスの一つであり、芳香族ニトロ化合物や不飽和結合の水素化や水素化分解による脱ベンジル化反応など広く利用されているが、しばしば収率の低下や反応の進行の遅れなどが認められる。これらの問題点は、触媒表面(固相)-溶液(液相)-水素ガス(気相)(以下、固相-液相-気相反応又は3相系接触還元反応と呼ぶ。)の各層間の接触面積を増大させることにより改善されるため、激しく攪拌したり、水素ガスを細かい泡として吹き込むなどの工夫が試みられてきた。
通常の反応容器(以下、適宜、フラスコ反応と呼ぶ。)による接触水素化反応では、系内に水素ガス、溶媒蒸気、高活性な金属触媒が共存するため発火や爆発が生じる可能性がある。
【0003】
一方、近年、マイクロリアクターを用いる有機合成が急速に発展しつつある。マイクロリアクターは、ガラスなどの不活性材料にその大きさが数~数百μmのマイクロ流路(以下、適宜マイクロチャンネルと呼ぶ。)を有する微小反応器の総称である。マイクロリアクターの反応器は小さいので、厳密な温度コントロールを容易に行うことができる。したがって、マイクロリアクターを用いる合成反応では、単位体積あたりの表面積が大きいため、
(1)界面での反応効率が高い、
(2)分子拡散による混合が効率的、
(3)温度制御が容易などの利点を有している。
このように、マイクロリアクターによる合成反応は通常の反応容器による合成反応よりも反応時間が早く、取り扱う薬液も微少量で済むためにコストが低く、新規な化合物や薬品のために開発用反応器として注目されている。本発明者らによる非特許文献1には、マイクロリアクター内での気体-液体-固体の三相系水素化反応が速やかに進行することが報告されている。
【0004】
一方、新しい反応媒体としての超臨界流体に関する研究が近年盛んに行われている。このような超臨界流体としては、超臨界二酸化炭素や超臨界水が挙げられる。超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を有し、気体とも液体とも混じる性質がある。このため、超臨界二酸化炭素を用いれば、反応後に二酸化炭素は蒸発してしまうので、生成物が単離された状態で得られる。
【0005】
非特許文献2においては、超臨界二酸化炭素を媒体とするフローシステムが報告されている。非特許文献3においては、超臨界二酸化炭素中に生成させたマイクロエマルジョンをマイクロリアクターとして用いることが報告されている。非特許文献4及び5においては、超臨界水を媒体として用いるマイクロリアクター中での化学反応が報告されている。
【0006】

【非特許文献1】J. Kobayashi, Y. Mori, K. Okamoto, R. Akiyama, M. Ueno, T. Kitamori, and S. Kobayashi, Science, Vol.304, pp.1305-1308 (2004)
【非特許文献2】M. G. Hitzler, M. Poliakoff, Chem. Commun., pp.1667-1668 (1997)
【非特許文献3】N. Kometani, Y. Toyoda, K. Asami, Y. Yonezawa, Chem. Lett., pp.682-683 (2000)
【非特許文献4】M. Sasaki, T. Adschiri, K. Arai, J. Agric. Food Chem. Vol.51, pp.5376-5381 (2003)
【非特許文献5】Y. Ikushima, M. Sato, Chem. Eng. Sci.,Vol.59,pp.4895-4901 (2004)
【非特許文献6】R. Akiyama and S. Kobayashi, J. Am. Chem. Soc., Vol.125, pp.3412-3413 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これまでに超臨界二酸化炭素を媒体として用いるマイクロリアクター内での化学反応例は知られておらず、不均一系触媒を用いた固相-超臨界流体相との2相系接触反応をマイクロリアクターにより効果的に実現できていない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、基質と気体との接触反応を超臨界流体相と固相の二相系で短時間で収率良く行うことができる、マイクロリアクター及びそれを用いた接触反応方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のマイクロリアクターの第1の構成は、マイクロチャンネルと、基質と基質と反応する気体と超臨界流体との混合物をマイクロチャンネルへ供給する超臨界流体供給部と、マイクロチャンネルにおける反応生成物を回収する回収部と、を備え、マイクロチャンネルは、流路を有し流路の内壁に固相となる金属触媒又は金属錯体触媒を担持しており、金属触媒又は金属錯体触媒が高分子に取り込まれた触媒であり、高分子に取り込まれた触媒が、高分子表面の基を介して、流路の内壁表面の基又はスペーサーにある基との共有結合により流路の内壁に担持されており、超臨界流体供給部は、超臨界流体の原料を収容する原料収容部と、基質と反応する気体を収容する気体収容部と、基質を収容する基質収容部と、を有し、超臨界流体の原料及び気体を基質収容部へ導入して原料を加圧及び加温して気体と基質と超臨界流体との混合物とし、混合物をマイクロチャンネルの流路へ所定の圧力及び温度で、かつ、所定の流量で連続的に流すことにより、基質及び気体の反応を金属触媒又は金属錯体触媒により促進される固相-超臨界流体相の2相系接触反応で行うことを特徴とする。
本発明のマイクロリアクターの第2の構成は、マイクロチャンネルと、基質及び基質と反応する気体を混合した超臨界流体をマイクロチャンネルへ供給する超臨界流体供給部と、マイクロチャンネルにおける反応生成物を回収する回収部と、を備え、マイクロチャンネルは、流路を有し流路の内壁に固相となる金属触媒又は金属錯体触媒を担持しており、金属触媒又は金属錯体触媒が高分子に取り込まれた触媒であり、高分子に取り込まれた触媒が、高分子表面の基を介して、流路の内壁表面の基又はスペーサーにある基との共有結合により流路の内壁に担持されており、超臨界流体供給部は、超臨界流体の原料を収容する原料収容部と、基質と反応する気体を収容する気体収容部と、基質を収容する基質収容部と、基質収容部へ超臨界流体の原料を送出する送液ポンプと、基質収容部の入口側及び出口側に設けた第1及び第2の弁と、を有し、回収部は、マイクロチャンネルの流路を通過する基質と気体と超臨界流体との混合物の圧力を調整する背圧調整部と反応生成物を回収する回収容器とを有し、第1の弁を開いて超臨界流体の原料及び気体を基質収容部へ導入して基質収容部内で超臨界流体の原料を加圧及び加温して気体と基質と超臨界流体との混合物とし、混合物を第2の弁を開いてマイクロチャンネルの流路へ所定の圧力及び温度で、かつ、所定の流量で連続的に流すことにより、基質及び気体の反応を金属触媒又は金属錯体触媒により促進される固相-超臨界流体相の2相系接触反応で行うことを特徴とする。
上記構成によれば、基質と、基質と反応する気体と、の反応を金属触媒又は金属錯体触媒で促進する2相系接触反応により短時間で収率よく行うことができるマイクロリアクターを提供できる。
【0010】
また、本発明のマイクロリアクターの第3の構成は、マイクロチャンネルと、基質及び基質と反応する気体を混合した超臨界流体をマイクロチャンネルへ供給する超臨界流体供給部と、マイクロチャンネルにおける反応生成物を回収する回収部と、を備え、マイクロチャンネルは、流路を有し流路の内壁に固相となる金属触媒又は金属錯体触媒を担持しており、金属触媒又は金属錯体触媒が高分子に取り込まれた触媒であり、高分子に取り込まれた触媒が、高分子表面の基を介して、流路の内壁表面の基又はスペーサーにある基との共有結合により流路の内壁に担持されており、超臨界流体供給部は、超臨界流体の原料を収容する原料収容部と、基質と反応する気体を収容する気体収容部と、超臨界流体の原料を加圧及び加温し超臨界流体とするオートクレーブと、オートクレーブへ超臨界流体の原料を送出する送液ポンプと、基質を収容する基質収容部と、原料及び気体のオートクレーブへの導入を制御する第1の弁と、気体と混合した超臨界流体のオートクレーブから基質収容部への導入を制御する第2の弁と、基質と気体と超臨界流体との混合物のマイクロチャンネルへの送出を制御する第3の弁と、を有し、回収部は、マイクロチャンネルの流路を通過する超臨界流体の圧力を調整する背圧調整部と反応生成物を回収する回収容器とを有し、第1の弁を開いて超臨界流体の原料及び気体をオートクレーブへ導入して超臨界流体の原料を超臨界流体とし、第2の弁を開いて気体を混合した超臨界流体を基質収容部へ導入して基質と気体と超臨界流体との混合物を作り、第3の弁を開いて混合物をマイクロチャンネルへ送出し、混合物をマイクロチャンネルの流路へ所定の圧力及び温度で、かつ、所定の流量で連続的に流すことにより、基質及び気体の反応を金属触媒又は金属錯体触媒により促進される固相-超臨界流体相の2相系接触反応で行うことを特徴とする。
上記構成において、好ましくは、流路の内壁表面の基はシラノール基であり、スペーサーはシラノール基とSi-O-Si結合により共有結合している。好ましくは、高分子表面の基はエポキシ基であり、スペーサにある基はエポキシ基と結合する官能基で修飾されている。
上記構成によれば、超臨界流体の原料として例えば液体を用い、この液体原料をオートクレーブにより超臨界流体とすることができる。このため、マイクロリアクターへの超臨界流体の供給及びその圧力制御などを容易に行うことができ、マイクロリアクターを小型化することができる。
【0011】
マイクロリアクターは、さらに制御部を有し、制御部は、基質及び基質と反応する気体と超臨界流体との混合物を、マイクロチャンネルの流路へ所定の圧力及び温度、かつ、所定の流量で連続的に流すように制御する。この構成によれば、マイクロリアクターの送液ポンプなどが制御部により制御される。このため、マイクロリアクターの制御を精度良く行うことができる。
【0012】
本発明は、流路の内壁に固相となる金属触媒又は金属錯体触媒を担持し、流路に超臨界流体を流すマイクロリアクターを用いた接触反応方法であって、金属触媒又は金属錯体触媒が高分子に取り込まれた触媒であり、高分子に取り込まれた触媒が、高分子表面の基を介して、流路の内壁表面の基又はスペーサーにある基との共有結合により流路の内壁に担持されており、超臨界流体に基質及び基質と反応する気体とを混合し、基質及び基質と反応する気体の反応を金属触媒又は金属錯体触媒により促進される固相-超臨界流体相の2相系接触反応で行うことを特徴とする。
上記構成において、好ましくは、流路の内壁表面の基はシラノール基であり、スペーサーはシラノール基とSi-O-Si結合により共有結合している。好ましくは、高分子表面の基はエポキシ基であり、スペーサにある基はエポキシ基と結合する官能基で修飾されている。
この構成によれば、基質の2相系接触反応による反応を短時間で収率よく行うことができる。
【0013】
上記構成において、好ましくは気体は水素であり、超臨界流体は超臨界二酸化炭素であり、基質が2相系接触反応により還元される。これにより、被還元物質となる基質の2相系接触反応による水素化反応及び水素分解反応を短時間で収率よく行うことができる。
【0014】
上記構成において、金属触媒又は金属錯体触媒は、好ましくは高分子に取り込まれている。金属触媒は、好ましくは、パラジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、タングステン、オスミウム、イリジウム、白金のいずれかである。
上記構成において、金属錯体触媒は、好ましくは、パラジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、タングステン、オスミウム、イリジウム、白金のいずれかの金属錯体触媒である。
これらの触媒によれば、マイクロリアクターのマイクロチャンネルの内壁部に触媒を担持して、2相系接触還元反応を短時間で行うことができる。さらに、生成物と触媒との分離や触媒の回収などの煩雑な操作も不要となる上、長時間の連続運転が可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマイクロリアクターによれば、被還元物質の水素化などの反応を短時間にしかも収率よく実施することができる。例えば、1秒以内で水素化反応がほぼ定量的に進行する。このため、従来のマイクロリアクター内での三相系水素化反応での反応時間の2分以内よりも大幅に速い。
超臨界流体として、超臨界二酸化炭素を用いた場合には、反応後は蒸発してしまうので、生成物が単離された状態で得られる。このため、様々な基質に対して適用可能である。マイクロリアクターを構成する反応容器や触媒は、繰り返し使用及び連続使用することが可能である。
【0016】
本発明のマイクロリアクターを用いた接触還元反応方法においては、被還元物質、気体等の原料とその供給や撹拌などに必要な電気などの動力の消費量が極めて小さいので、従来の反応容器を用いた反応に比べて低コストである。したがって、薬剤やファインケミカルの探索などに必要な2相系接触還元反応などを低コストで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に用いるマイクロリアクターの構成を模式的に示す図である。
【図2】図1のY-Y線に沿う部分断面図である。
【図3】混合物が通過するマイクロチャンネルの流路を示す断面図である。
【図4】PI触媒をマイクロチャンネルに担持させるための工程を模式的に示す図である。
【図5】PI触媒をマイクロチャンネルに担持させるための別の工程を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に用いるマイクロリアクターの構成の変形例を模式的に示す図である。
【図7】実施例1~6の基質、水素化反応による反応生成物及び収率を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1,40:マイクロリアクター
2,3:基板
4:流路
4a:流路の入力部
4b:流路の出力部
4c:流路の内壁
4d:流路の表面基と触媒のスペーサー
5:流路の表面に担持(固定)された触媒
5a:マイクロカプセル化された触媒(PI触媒)
6:基質と基質と反応する気体と超臨界流体とからなる混合物
10:マイクロチャンネル
20,50:超臨界流体供給部
21:基質収容部
22:液体収容部(液化二酸化炭素ボンベ)
22a:液化二酸化炭素
23:気体収容部(水素ボンベ)
23a:気体(水素)
24:第1の弁
25,31:配管
26:送液ポンプ(HPLCポンプ)
27:第2の弁
30:回収部
32:背圧調整器
33:回収容器
42:オートクレーブ
43:第2の弁
44:第3の弁
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に用いるマイクロリアクターの構成を模式的に示す図で、図2は図1のY-Y線に沿う部分断面図である。マイクロリアクター1は、マイクロチャンネル10と、このマイクロチャンネル10に超臨界流体を供給する超臨界流体供給部20と、マイクロチャンネル10での反応生成物を回収する回収部30と、を備えている。
【0020】
図2に示すように、マイクロチャンネル10は、不活性材料であるガラスなどからなる基板2,3と、基板2に蛇行して設けられる流路4と、流路4の表面に固定すなわち担持された触媒5と、から構成されている。この流路4は、エンドミルなどの工具による研削やマスクを用いたエッチングにより、その断面が矩形や半円形状に刻設される。この流路4が設けられた基板2は、同じ大きさの流路を刻設しない基板3と対向するようにして超臨界流体供給部20から供給される超臨界流体が漏れないように密着固定されている。流路4を刻設する基板2及び対向させる基板3は、超臨界流体、被還元物質である原料(以下、適宜、基質とも呼ぶ)などに侵されない材料であればよく、ガラスの他には樹脂や金属などの材料でもよい。
【0021】
超臨界流体供給部20は、基質と、基質と反応する気体とが混合された超臨界流体を、マイクロチャンネル10に供給する。基質は、基質収容部21に収容されている。気体は基質と反応するものであれば何れでもよい。このような気体としては、水素,酸素,一酸化炭素などが挙げられる。超臨界流体としては、例えば、超臨界二酸化炭素や超臨界水などが挙げられる。この基質収容部の入口21aには超臨界流体の原料収容部22及び基質と反応する気体収容部23が、第1の弁24を介して配管25により接続されている。以下の説明においては、気体は水素、超臨界流体は超臨界二酸化炭素として説明する。この場合には、超臨界流体の原料収容部22は液化二酸化炭素ボンベとし、気体収容部23は水素ボンベとする。
【0022】
液化二酸化炭素ボンベ22は、送液ポンプ26を介してステンレス製チューブなどの配管25a,25bにより第1の弁24に接続されている。液化二酸化炭素ボンベ22内から送出される液化二酸化炭素22aの流量が、送液ポンプ26により精密に制御される。この送液ポンプ26としては、液化二酸化炭素22aの高圧に耐え圧力変動がなく、一定の流速で送出できるポンプを用いればよい。例えば、高速液体クロマトグラフィに使用される所謂HPLCポンプを好適に用いることができる。
【0023】
水素を収容しているボンベ23は、配管25c、第1の弁24、配管25dにより基質収容部21へ接続されており、図示しない圧力調整器により基質収容部21へ供給する水素23aの圧力を調整している。そして、基質収容部の出口21bが、配管25e、第2の弁27、配管25fによりマイクロチャンネルの流路入力部4aに接続されている。
【0024】
基質収容部21としての容器内には基質が収容されていて、第1の弁24が開くと、液化二酸化炭素22a及び水素23aが導入される。基質収容部21において、液化二酸化炭素22aを超臨界二酸化炭素とするように加温及び加圧がされる。本発明においては、超臨界二酸化炭素は、臨界温度(Tc=31℃)と臨界圧力(Pc=7.4MPa)との両方を超えた状態と定義する。このため、超臨界流体供給部20及びマイクロチャンネル10の超臨界二酸化炭素22aが通過する箇所は、臨界温度及び臨界圧力の両方を超えた所定の温度及び圧力を一定に保持するように、適宜に加熱と加圧がされている。
これにより、基質収容部21内において、超臨界二酸化炭素に基質及び水素が混合される。本発明では、基質と、基質と反応する気体と、超臨界流体(超臨界二酸化炭素)と、が混合されてなる流体を、混合物と称する。このようにして形成された混合物が、マイクロチャンネルの流路4に送出される。
【0025】
回収部30は、マイクロチャンネルの流路の出力部4bに配管31により接続されている背圧調整器32及び回収容器33から構成されている。背圧調整器32は、マイクロチャンネルの流路4を通過する上記混合物の圧力を一定の圧力値に制御するために配設されている。そして、回収容器33は、混合物及びマイクロチャンネル10で生成した反応生成物を回収する容器であり、その内部には、例えば有機溶媒が収容されている。
【0026】
図3はマイクロチャンネルの流路を通過する混合物の状態を示す断面図である。図示するように、超臨界二酸化炭素に基質及び水素が混合された混合物6は、流路の内壁部4cに担持された触媒5と接触しながら、流路の入力部4aから出力部4bまでを通過する(図中の矢印(→)参照)。この際、超臨界流体相である混合物6と、固相である触媒5の反応が生起し、反応生成物が生じる。正確には、マイクロチャンネル10を通過する混合物6には反応生成物が混入しているが、特に区別すべき場合以外は、混合物6とする。
【0027】
このようなマイクロリアクター1を用いて、触媒5からなる固相と混合物6からなる超臨界流体相との2相反応(固相-超臨界流体相)を行うには、最初に、基質を基質収容部21に導入する。
次に、液化二酸化炭素22a及び水素23aを、第1の弁24を開いて基質収容部21に導入する。この際、基質収容部21が、液化二酸化炭素を超臨界二酸化炭素とするように加圧及び加温されているので、基質収容部21内において、超臨界二酸化炭素と基質及び水素が混合された混合物が作られる。上記混合物を、基質収容部の出口側21bに配設されている第2の弁27を開いて、マイクロチャンネルの流路4に送出する。
混合物6に含有されている基質及び水素は、流路4を通過中に、その内壁4cに担持した触媒5の作用により反応する。反応により生成した目的物である反応生成物を含む混合物6は、回収容器33に集められる。回収される混合物6中の超臨界二酸化炭素は、回収容器33の雰囲気が常温、大気圧下では気体となり蒸発する。そして、有機溶媒の入った回収容器33の場合には、有機溶媒を留去することで目的物としての反応生成物が得られる。
【0028】
固相-超臨界流体相反応に用いる固相の触媒5としては、特にパラジウム(Pd)又はパラジウム錯体を好適に用いることができる。さらに、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)のいずれかの金属触媒又は金属錯体触媒を用いることができる。
【0029】
触媒5は、上記の金属触媒又は金属錯体触媒をポリマー内に固定化したポリマー封入触媒(以下、PI触媒と呼ぶ。)5aが好適である。このPI触媒は非特許文献6により公知である。PI触媒5aは、マイクロチャンネルの内壁4cから脱離しないように強固な接合とするために、共有結合で固定化、すなわち担持することが好ましい。このためには、触媒を内包した高分子を、高分子表面の基を介して、流路の内壁4cの基、又は、スペーサー4dにある基と共有結合を形成させることにより、流路の内壁4cに担持することができる。ここでスペーサーは、流路の内壁4c表面と高分子表面との間を適当な距離或いは強度でつなぐ役割を果たす。流路の内壁4cがガラスの場合には、アルコキシシリル基を一端に、他端にアミノ基構造を有するスペーサーを用いて、ガラス表面のシラノール基とスペーサーのアルコキシシリル基とをSi-O-Si結合により共有結合させると共に、高分子表面のエポキシ基とスペーサーのアミノ基とをC-NH-C結合により共有結合させることができる。流路の内壁4cが樹脂の場合は、樹脂表面に公知の化学修飾方法を用いてエポキシ基と共有結合する官能基を導入することにより、触媒を内包した高分子と共有結合させることができる。
具体的には、マイクロチャンネルの内壁4cがガラスの場合には、後述するPI触媒5aのスペーサー4dの一端をトリアルコキシシラン構造で修飾して、マイクロチャンネルの流路の内壁4cとなるガラス表面のシラノール基と結合させる。スペーサー4dの他端をアミノ基等の官能基で修飾しておくことにより直接PI触媒5aの高分子表面の例えばエポキシ基と結合させることができる。マイクロチャンネルの内壁4cが樹脂の場合には、樹脂表面をアミノ基等の官能基で修飾すれば、同様に上記のエポキシ基と結合させることができる。これにより、PI触媒5aをマイクロチャンネルの内壁4cに強固に担持できるので、マイクロチャンネルの内壁4cからの脱離が生じなくなり、繰り返し使用ができる。
【0030】
PI触媒5aの担持方法の一例を説明する。
図4は、PI触媒5aをマイクロチャンネル4に担持させるための工程を模式的に示す図である。図示するように、ポリマーが適当な溶媒に溶解され、さらに触媒を含む材料が添加されることで、触媒がマイクロカプセル化される(図4(a)参照)。このマイクロカプセル化された触媒5aにおいては、金属あるいは金属錯体はカプセル内部だけでなく表面や表面近くに存在する。
マイクロカプセル化した触媒5aを含む溶液をマイクロチャンネル内に通し、加熱することにより、アミノ基を有するスペーサーで修飾された内壁4cと結合させる(図4(b)参照)。図4(c)は、このようにして得られたPI触媒5aが担持されたマイクロチャンネルの内壁を模式的に示す図であり、4dはマイクロチャンネルの表面基と触媒とのスペーサーを示している。
図4(a)及び図5にマイクロカプセル化パラジウムの製造方法の一例を示す。この例では、3種類のモノマー(単量体)を重合して得られるコポリマー(共重合体、式左辺の構造)とテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムとを溶媒中で混合することにより、マイクロカプセル化したパラジウムを製造している。図4(a)では溶媒としてTHF及びヘキサンを用い、図5の場合には、溶媒として塩化メチレンとt-アミルアルコールを用いている。
次に、このようにして得られたマイクロカプセル化パラジウムを含む溶液をマイクロチャンネル10内に通し、加熱することにより、高分子間では水酸基とエポキシ基との間で架橋反応が進行して不溶性のポリマー封入パラジウム触媒(PIパラジウム触媒)5aが形成されると同時に、PIパラジウム表面のエポキシ基と流路表面の基とが共有結合を形成する。
【0031】
本発明の実施の形態に用いるマイクロリアクターの構成の変形例について説明する。
図6は本発明の実施の形態に用いるマイクロリアクターの構成の変形例を模式的に示す図である。マイクロリアクター40の特徴は、さらに、超臨界流体の原料を加圧及び加温し超臨界流体にするオートクレーブ42が配設されることである。すなわち、マイクロリアクター40が、図1に示したマイクロリアクター1と異なるのは、超臨界流体供給部50が、オートクレーブ42及び第1~第3の弁24,43,44を備えている点である。他の構成はマイクロリアクター1と同じであるので説明は省略する。
オートクレーブの入口42aと液化二酸化炭素ボンベ22及び水素ボンベ23とは、第1の弁24を介して配管25gにより接続されている。一方、オートクレーブの出口42bは、配管25h,第2の弁43,配管25iを介して基質収容部の入口21aに接続されている。基質収容部の出口21bは、配管25e,第3の弁44,配管25fを介してマイクロチャンネル10の入力部4aに接続されている。
【0032】
オートクレーブ42には、液化二酸化炭素ボンベ22からHPLCポンプにより送出される液化二酸化炭素22a及び水素23aが、第1の弁24を開いて導入される。オートクレーブ42内では、導入された液化二酸化炭素22aが加圧及び加温されて超臨界二酸化炭素となり、この超臨界二酸化炭素と水素が混合される。この超臨界二酸化炭素及び水素は、第2の弁43を開くと基質収容部21に導入され、超臨界二酸化炭素、基質及び水素からなる混合物6となる。第3の弁44は、このようにして作られる混合物のマイクロチャンネル10への送出を制御する。
この超臨界流体供給部50によれば、液化二酸化炭素22aをオートクレーブ42で超臨界二酸化炭素にするので、マイクロリアクター40への混合物6の供給及びその圧力制御などを容易に行うことができる。また、マイクロリアクター40を小型化できる。
【0033】
さらに、本発明のマイクロリアクター1,40は、図示しない制御部を有してもよい。この制御部は、混合物6を、マイクロチャンネルの流路4へ所定の圧力及び温度、かつ、所定の流量で連続的に流すように制御する。制御部により好適に制御されるのは、送液ポンプ26、第1~第3の弁24,27,43,44、背圧調整器32、オートクレーブ42などである。さらに、マイクロチャンネル10及び基質収容部21の温度なども、制御部により制御される温度調整器で制御されることが好ましい。
【0034】
以上説明したように、本発明の2相系接触還元反応方法によれば、基質と還元物質である水素などを含む気体と超臨界流体からなる混合物6を、触媒5が担持された流路の内壁4cに接するように流すことで、2相系接触反応を短時間に行うことができる。この2相系接触反応に要する反応時間は、マイクロリアクターを用いた触媒となる固相-基質を含む溶液からなる液相-気相となる水素による3相系接触反応よりも、さらに短時間とすることができる。
この際、流路内壁4cに金属触媒5が担持されているので、例えば高価なパラジウム触媒の回収再生の手間が不要となり、さらに、マイクロリアクター1,40による反応であるので、反応に使用する基質、水素、超臨界二酸化炭素の使用量も激減することから、低コストである。また、多数のマイクロリアクター1,40を平行に並べるだけで、反応装置のスケールアップは容易であるので、望ましい生成物を容易に迅速に且つ必要量だけ得られ、原料消費量、所要時間、空間が少なく、分離精製のような処理を要しないほど純粋な形で生成物を得ることができる。したがって、本発明の2相系接触還元反応方法によれば、医薬とその製造工程開発用の極めて好適な反応方法となる。また、グリーン化学(環境適合化学)にも好適である。
【実施例1】
【0035】
次に、本発明の実施例について説明する。
図1及び図6に示したマイクロリアクター1,40を用いて、被還元物質となる基質として、4-メチル-2,4-ジフェニル-1-ペンテンの水素化を行った。マイクロチャンネル10は、大きさが3cm×7cmのガラス板2に長さが45cmの流路4を有するものを用いた。流路4の断面形状は、幅200μm、深さが100μmの半円形状である。そして、流路の内壁4cには、パラジウムをポリマー上に固定化したポリマー封入パラジウム(以下、PIパラジウム触媒と呼ぶ。)5aを、150℃で固定化した。
【0036】
PIパラジウム触媒5の流路への固定は以下のように実施した。即ち、ガラス基板2,3に形成したマイクロチャンネル10の内壁4cを、1N水酸化ナトリウム水溶液/エタノール(容積比=1/1)、水、エタノール、メタノールで順次洗浄した後、マイクロチャンネル10内に3-アミノプロピルトリエトキシシランのメタノール溶液(10%、1ml)を15時間かけて通した後、メタノールで洗浄した。
次に、図4(a)に示した3種類のモノマーの共重合物(コポリマー、分子量3万)(50mg)とテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(50mg)とを、塩化メチレン(1ml)とt-アミルアルコール(5ml)に溶解し、室温で12時間攪拌した。この溶液の4分の1を上記のように洗浄処理したマイクロチャンネル10内に40時間かけて通し、次に空気を通して過剰の溶液を除去した後、ガラス基板2,3を150℃で5時間加熱した。
続いて、上記パラジウムを含む溶液を通し、その後加熱する操作を、さらに3回繰り返すことにより、PIパラジウム触媒5aを、流路の内壁4cに担持されたマイクロチャンネル10を製作した。
【0037】
オートクレーブ42を用いたマイクロリアクター40の場合には、予め50℃に加熱しておいた容積200cm3 のオートクレーブ42に、9気圧(9.09×105 Pa)の水素23aを導入した。
次に、オートクレーブ21に液化二酸化炭素41aをHPLCポンプ26を用いて送り込み、超臨界状態の二酸化炭素とした。このときの総圧力は95kgf/cm2 (約9.5MPa)程度であった。これにより、超臨界状態の二酸化炭素に水素を混合した。そして、この水素を含有した超臨界二酸化炭素を1時間放置した。
予め約50℃に加熱しておいたステンレス製の基質収容部21内に0.20ミリモル(1ミリモル=10-3mol)の基質となる4-メチル-2,4-ジフェニル-1-ペンテンを導入した。
背圧調整器32を9MPaにセットし、基質収容部の入口21a側の第2の弁43を開き、基質収容部21内に水素を含有した超臨界二酸化炭素を導入した。これにより、基質収容部21内は、超臨界二酸化炭素に基質と水素とが混合された混合物6で満たされた状態となる。
次に、基質収容部の出口21b側の第3の弁44を開き、混合物6を、約60℃に加熱した流路4へ流した。この際、液化二酸化炭素41aはHPLCポンプ26により1.0cm3 /分の流速で、定常的にオートクレーブ42に送出した。
マイクロリアクター10内の圧力が9MPaを越えると、背圧調整器の出口32bからガスが断続的に排出される。これを有機溶媒を用いたトラップからなる回収容器33で回収した。この反応中も、液化二酸化炭素41aはHPLCポンプ26にて、上記流速で定常的にオートクレーブ42へと送り込んだ。混合物6を流路4へ2時間流した後に、HPLCポンプ26を停止した。そして、トラップとして用いた有機溶媒を留去することで反応生成物となる目的物を得た。
【0038】
上記反応生成物をプロトンNMR(核磁気共鳴装置、以下、 1H-NMRと呼ぶ。)により分析した。図7は、実施例1の基質、水素化反応による反応生成物及び収率を示す図である。図から明らかなように、4-メチル-2,4-ジフェニル-1-ペンテンの水素化により、2-メチル-2,4-ジフェニルペンタンが94%の収率で得られた。実施例1の水素化反応時間の実測値は1秒以内であった。この反応時間の値は、通常のフラスコ反応の場合の約1時間と比較すると約1/3600である。
【実施例2】
【0039】
実施例2では、基質としてエチル ウンデシレネートを使用し、実施例1と同じ条件で水素化反応を行った。反応時間は5秒以内であった。反応生成物を 1H-NMRで分析したところ、エチル ウンデシレネートがほぼ完全に水素化され、収率96%でエチル ウンデカノエートが得られた(図7参照)。
【実施例3】
【0040】
実施例3では、基質として10-ウンデセン-1-オールを使用し、実施例1と同じ条件で水素化反応を行った。反応時間は5秒以内であった。反応生成物を 1H-NMRで分析したところ、10-ウンデセン-1-オールが完全に水素化され、収率100%で1-ウンデカノールが得られた(図7参照)。
【実施例4】
【0041】
実施例4では、被還元物質として3-フェニル-2-プロピン-1-オールを使用し、実施例1と同じ条件で水素化反応を行った。反応時間は5秒以内であった。反応生成物を 1H-NMRで分析したところ、3-フェニル-2-プロピン-1-オールがほぼ完全に水素化され、収率91%で3-フェニル-1-プロパノールが得られた(図7参照)。
【実施例5】
【0042】
実施例5では、被還元物質としてトランス-4-フェニル-3-ブテン-2-オンを使用し、実施例1と同じ条件で水素化反応を行った。反応時間は5秒以内であった。反応生成物を 1H-NMRで分析したところ、トランス-4-フェニル-3-ブテン-2-オンがほぼ完全に水素化され、収率92%で4-フェニル-2-ブタノンが得られた(図7参照)。
【実施例6】
【0043】
実施例6では、被還元物質として1-ベンジルオキシ-3-フェニル-2-プロピンを使用し、実施例1と同じ条件で水素化反応を行った。反応時間は5秒以内であった。反応生成物を 1H-NMRで分析したところ、1-ベンジルオキシ-3-フェニル-2-プロピンがほぼ完全に水素化され、収率91%で1-ベンジルオキシ-3-フェニルプロパンが得られた(図7参照)。
【0044】
上記実施例1乃至6においては、オートクレーブを用いたマイクロリアクター40の結果を示したが、マイクロリアクター1の場合でもほぼ同様の結果が得られた。したがって、本発明のマイクロリアクター1,40によれば被還元物質の水素化などの反応を短時間にかつ収率よく実施することができた。例えば、1秒以内で水素化反応がほぼ定量的に進行した。このため、反応が従来のマイクロリアクター内での三相系水素化反応での反応時間の2分以内よりも大幅に速いことが分かった。
超臨界二酸化炭素を用いた場合には、反応後は蒸発してしまうので、生成物が単離された状態で得られる。このため、様々な基質に対して適用可能である。さらに、マイクロリアクターを構成する反応容器や触媒は、繰り返し使用することが可能である。
【0045】
本発明のマイクロリアクターを用いた接触反応方法においては、例えば被還元物質、気体等の原料とその供給や撹拌などに必要な電気などの動力の消費量が極めて小さいので、従来の反応容器を用いた反応に比べて低コストである。したがって、薬剤やファインケミカルの探索などに必要な2相系接触還元反応などを低コストで行うことができる。
【0046】
本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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