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明細書 :ナノ炭素担持体の製造方法とその方法で製造されたナノ炭素担持体を用いたそのDDS薬剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4090496号 (P4090496)
登録日 平成20年3月7日(2008.3.7)
発行日 平成20年5月28日(2008.5.28)
発明の名称または考案の名称 ナノ炭素担持体の製造方法とその方法で製造されたナノ炭素担持体を用いたそのDDS薬剤
国際特許分類 A61K  47/48        (2006.01)
A61K  47/04        (2006.01)
A61K  47/34        (2006.01)
A61K  47/40        (2006.01)
A61K  47/32        (2006.01)
A61K  47/22        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI A61K 47/48 ZNM
A61K 47/04
A61K 47/34
A61K 47/40
A61K 47/32
A61K 47/22
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 10
出願番号 特願2007-506393 (P2007-506393)
出願日 平成18年6月30日(2006.6.30)
国際出願番号 PCT/JP2006/313074
国際公開番号 WO2007/004545
国際公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
優先権出願番号 2005194385
優先日 平成17年7月1日(2005.7.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年1月29日(2007.1.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
発明者または考案者 【氏名】飯島 澄男
【氏名】湯田坂 雅子
【氏名】村上 達也
【氏名】芝 清隆
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】小堀 麻子
参考文献・文献 国際公開第2004/089818(WO,A1)
国際公開第03/004416(WO,A1)
特開2002-241307(JP,A)
特開2005-104762(JP,A)
特開2005-028560(JP,A)
特開平09-235235(JP,A)
国際公開第02/066061(WO,A1)
PANTAROTTO,D. et al,Synthesis, structural characterization, and immunological properties of carbon nanotubes functionalized with peptides,J Am Chem Soc,2003年,Vol.125, No.20,p.6160-4
PANTAROTTO,D. et al,Functionalized carbon nanotubes for plasmid DNA gene delivery,Angew Chem Int Ed Engl,2004年,Vol.43, No.39,p.5242-6
調査した分野 A61K 47/00-47/48
A61K 9/00- 9/72
特許請求の範囲 【請求項1】
ナノ炭素材の外壁部に、水溶性または水分散性化合物との付加体として機能性有機分子の少くとも1種が担持または付着されているナノ炭素担持体の製造方法であって、ナノ炭素材の分散液と、生理活性分子もしくは薬物分子と水溶性もしくは水分散性化合物との付加体を混合して、ナノ炭素材の外壁部に該付加体を担持もしくは付着させることを特徴とするナノ炭素担持体の製造方法。
【請求項2】
ナノ炭素材は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノホーンであることを特徴とする請求項1のナノ炭素担持体の製造方法。
【請求項3】
ナノ炭素材は、あらかじめ加熱処理、酸化処理および還元処理の少くともいずれかの処理がされたものであることを特徴とする請求項1または2のナノ炭素担持体の製造方法。
【請求項4】
機能性有機分子は、共有結合によって水溶性もしくは水分散性化合物と付加体を形成していることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれかのナノ炭素担持体の製造方法。
【請求項5】
機能性有機分子は、生理活性分子または薬物分子であることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれかのナノ炭素担持体の製造方法。
【請求項6】
水溶性もしくは水分散性化合物は、アルキレングリコールのオリゴマーまたはポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、クラウンエーテルおよびシクロデキストリンのうちの少くとも1種であることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれかのナノ炭素担持体の製造方法。
【請求項7】
付加体は、生理活性分子または薬物分子を介してナノ炭素材の外壁部に担持もしくは付着されていることを特徴とする請求項1から6のうちのいずれかのナノ炭素担持体の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のうちのいずれかのナノ炭素担持体の製造方法で得られたナノ炭素担持体を用いてなるドラッグデリバリーシステム(DDS)薬剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ(NT)、カーボンナノホーン(NH)等のナノサイズの大きさのナノ炭素材に薬物等の機能性有機分子を担持させたナノ炭素担持体の製造方法とその方法で製造されたナノ炭素担持体を用いたドラッグデリバリーシステム(DDS)薬剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等のナノサイズの大きさを有するナノ炭素材に関する技術の進展にともなって、これらのナノ炭素材を修飾して、ナノサイズ物質としての特徴的な構造に由来する性質とともに、触媒、生体適合性、あるいは薬物特性等の機能をも発現させようとする試みがなされてきている。
【0003】
本出願の発明者らは、ナノ炭素材としてのカーボンナノチューブ(NT)やカーボンナノホーン(NH)の研究、開発に先導的な役割を果たしてきているところであるが、特にカーボンナノホーンの特異な構造に注目し、その内部に、生理活性や薬理活性を有する有機分子を導入担持させた新規な複合体とその製造方法に係わる技術を確立し、これをすでに提案している(たとえば特願2005-051816号出願)。
【0004】
しかしながら、一般的に生理活性や薬理活性を有する有機分子は嵩高いことが多く、例えば多くの抗癌剤、DNA、RNA、および生理活性ペプチドおよびタンパク質をナノホーン(NH)やナノチューブ(NT)の内部に導入担持することは難しい場合がある。
【0005】
そしてまた、DDS薬剤への応用等の観点からは、有機溶媒でなく水溶液中での分散性を高めることが望まれてもいた。
【0006】
だが、ナノ炭素材の外部、すなわち外壁部に嵩高い有機分子を付着、担持可能としつつ、水分散性を良好とすることは容易ではない。たとえばフラーレンの場合には、骨格炭素に結合させた水素基(OH)を介して有機分子を化学結合させること等が可能とされてきているが、カーボンナノチューブやカーボンナノホーンの場合においては、その外壁部に機能性有機分子を安定担持させ、しかも水分散性を良好とすることは難しいのが実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のとおりの背景から、従来の問題点を解消し、薬物分子等の機能性有機分子をナノ炭素材の外壁部に担持させ、かつ水分散性も良好とした新しい物質製造方法等を提供することを課題としている。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
【0009】
第1:ナノ炭素材の外壁部に、水溶性または水分散性化合物との付加体として機能性有機分子の少くとも1種が担持または付着されているナノ炭素担持体の製造方法であって、ナノ炭素材の分散液と、生理活性分子もしくは薬物分子と水溶性もしくは水分散性化合物との付加体を混合して、ナノ炭素材の外壁部に該付加体を担持もしくは付着させることを特徴とするナノ炭素担持体の製造方法
【0010】
第2:ナノ炭素材は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノホーンであることを特徴とする上記のナノ炭素担持体の製造方法
【0011】
第3:ナノ炭素材は、あらかじめ加熱処理、酸化処理および還元処理の少くともいずれかの処理がされたものであることを特徴とする上記のナノ炭素担持体の製造方法
【0012】
第4:機能性有機分子は、共有結合によって水溶性もしくは水分散性化合物と付加体を形成していることを特徴とする上記のナノ炭素担持体の製造方法
【0013】
第5:機能性有機分子は、生理活性分子または薬物分子であることを特徴とする上記のナノ炭素担持体の製造方法
【0014】
第6:水溶性もしくは水分散性化合物は、アルキレングリコールのオリゴマーまたはポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、クラウンエーテルおよびシクロデキストリンのうちの少くとも1種であることを特徴とする上記のナノ炭素担持体の製造方法。
第7:付加体は、生理活性分子または薬物分子を介してナノ炭素材の外壁部に担持もしくは付着されていることを特徴とする上記のナノ炭素担持体の製造方法。

【0015】
第8:上記のいずれかのナノ炭素担持体の製造方法で得られたナノ炭素担持体を用いてなるドラッグデリバリーシステム(DDS)薬剤。

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例4におけるゲルろ過カラムを用いた水溶液中分散性の評価結果を例示した写真図である。
【図2】図2は、実施例5における純水中平均粒径の測定結果を例示した図である。
【図3】図3は、実施例6におけるin vitro薬効評価の結果を例示した写真図である。
【図4】図4は、実施例7における腫瘍体積の測定結果を示した図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態に付いて説明する。
【0019】
本発明のナノ炭素担持体は、
A)ナノ炭素材の外壁部に
B)機能性有機分子と水溶性または水分散性の化合物との付加体が
C)担持もしくは付着されている
ものであるが、ナノ炭素材については、その大きさがナノサイズ、通常は500nm以下のサイズのものであれば各種のものであってよく、たとえば代表的にはカーボンナノチューブ(NT)やカーボンナノホーン(NH)、あるいはそれらの集合体が例示される。フラーレンあるいはフラーレンチューブ等であってもよい。
【0020】
また、これらのナノ炭素材については、その製造方法も、従来公知の方法をはじめとして様々な方法により製造されたものであってよい。アーク放電法、レーザーアブレーション法、あるいはその他各種の気相法、液相法によって製造されたものであってよい。
【0021】
以上のようなナノ炭素材については、本発明においては、後述の実施例にも例示したように、その特異な構造体としてのカーボンナノホーン(NH)がより好適なものの一つとして例示される。このカーボンナノホーン(NH)は、本発明者が開発を主導してきたものである。
【0022】
ナノ炭素材は、機能性有機分子を担持、付着させる前に、あらかじめ、加熱処理、酸化処理、あるいは還元もしくは水素化処理しておくことが、担持、付着のための外壁部の表面活性化のために有効でもある。
【0023】
たとえば以下のような形態での処理が考慮されてよい。
<1>前記酸化処理は、酸素や、水蒸気、二酸化炭素等の1種以上による200℃~1200℃での加熱または酸化剤による処理とする。
<2>前記酸化処理は、酸素濃度1%以上の気流中での温度200℃~600℃の範囲の加熱処理とする。
<3>前記酸化処理は、過酸化水素、そして硝酸、塩酸等の無機酸のいずれか、もしくはその混合物を用いる液相酸化処理とする。
<4>前記還元処理は、水素または還元剤による200℃~1200℃での加熱処理とする。
<5>前記還元処理は、水素濃度0.1%以上の気流中での温度300℃~1000℃の範囲の加熱処理とする。
<6>前記酸化・還元処理は、酸化処理に続いての還元処理もしくは還元処理に続いての酸化処理とする。
【0024】
本発明における機能性有機分子については、通常は、担持、付着されない状態において、特有の機能、たとえば生理活性、薬物活性、あるいは触媒活性や光学分割性、抗酸化活性、界面活性、香料、光学活性等の機能を有するものとして考慮される。なかでも、機能性有機分子としては、生理活性分子あるいは薬物分子が代表的なものとして例示される。抗がん剤、抗ウイルス剤等の公知のものをはじめとする各種の生理活性分子または薬物分子である。
【0025】
本発明では、これらの機能性の有機分子は、水溶性もしくは水分散性の化合物との付加体としてナノ炭素材の外壁部に担持もしくは付着されることになる。この場合の付加体は、一般的には、機能性の有機分子と水溶性もしくは水分散性の化合物が共有結合で結ばれているものが、安定した担持、付着の点において好適なものとして考慮される。
【0026】
水溶性または水分散性化合物については、従来より薬剤組成物、あるいは化粧品組成物等に用いられている各種のものが考慮されてよい。たとえば代表的なものとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコールのオリゴマーやポリマーがある。また、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、クラウンエーテル、シクロデキストリン、あるいはそれらの誘導体等がある。
【0027】
付加体におけるこれら化合物と機能性有機分子との割合は各々の種類や付加特性等に応じて適宜に調整される。そして、付加体は、両者の溶液もしくは分散液の場合と精製によって容易に製造される。所要の分子構成、分子量のものとして調整可能である。
【0028】
以上のような付加体のナノ炭素材外壁部への担持、付着も、両者の混合によって簡便に可能とされる。なお、付加体のナノ炭素材外壁部への担持、付着に際しては、たとえばナノ炭素材としてのカーボンナノホーン(NH)内部に入らないようするためにその孔のサイズよりも付加体の分子サイズを大きくすることや孔サイズを小さくすることが考慮される。孔サイズを小さくするには、たとえば、酸化処理温度を低下(Murata et al.J.Phys.Chem.B 2002,106,12668-12669)すること、または酸化処理時間の短縮が有効である。あるいは、孔のふちにある官能基に化学修飾するか物理吸着する(Selective deposition of a gadolinium(III)cluster in a hole opening of single-wall carb on nanohorn″,Ayako Hashimoto,H.Yorimitsu,K.Ajima,K.Suenaga,H.Isobe,J.Miyawaki,M.Yudasaka,S.Iijima,E.Nakamura,Proceedings of the National Acade my of Sciences,101,8527(2004).)ことでも、カーボンナノホーン(NH)内部への付加体の進入を抑えることができる。あるいは、孔を開けないで、as-grownのままで使用するようにしてもよい。以上の処理によって、付加体のカーボンナノホーン(NH)内部への進入を抑えることができ、ナノ炭素材外壁部への担持、付着を好適におこなうことができるのである。
【0029】
本発明のナノ炭素担持体の大きな特徴は、良好な水分散性を有していることと、機能性有機分子が有する本来の機能が顕著に発現可能とされていることである。このため、ナノサイズの大きさという特徴とともに、これらの特徴とから、たとえばDDS薬剤としての応用に大きな展望が拓されることになる。
【0030】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく本発明について例示説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0031】
<実施例1>5PEG-DXRの合成
14mgのDXR(ドキソルビシン:抗ガン活性化合物)と3.2μlのトリエチルアミンを9mlのDMF(ジメチルホルムアミド)に溶解し、この混合溶液を80mgの平均分子量5000のポリエチレングリコール誘導体(5PEG、日本油脂(株)製)を含むDMF溶液(1ml)に攪拌しながら滴下した。4℃で終夜攪拌した後、分画分子量3500の透析膜を用いて水に対して透析を行った。得られた溶液を凍結乾燥し、少量の水に溶解した後、LH-20カラム(アマシャムバイオサイエンス社製)に通塔して精製した。溶出液を凍結乾燥し、粉末状の5PEG-DXRを得た。次式は、その構造を示したものである。式中のPEGは、この実施例1では5PEGを示している。後述する実施例2では式中のPEGは20PEGを示している。
【0032】
【化1】
JP0004090496B1_000002t.gif

【0033】
1H-NMR(CDCl,500MHz):
δ(ppm):1.29(d,CH-),2.42(t),2.62-2.66cm),2.69-2.72(m),3.05(d),3.38(s,CHO-),3.65(s,-OCHCHO-),4.09(s,ArOCH),4.21-4.25m),4.63(s),4.77(m),5.52(d),7.40(d,ArH),7.80(t,ArH),8.06(d,ArH)
質量分析(TOF-MS):6247.1
<実施例2>20PEG-DXRの合成
7mgのDXRと1.7μlのトリエチルアミンを18mlのDMFに溶解し、この混合溶液を160mgの平均分子量20000のポリエチレングリコール誘導体(20PEG、日本油脂(株)製)を含むDMF溶液(2ml)に攪拌しながら滴下した。4℃で終夜攪拌した後、分画分子量3500の透析膜を用い水に対して透析を行った。得られた溶液を凍結乾燥し、水量の水に溶解した後、LH-20カラム(アマシャムバイオサイエンス社製)に通塔した。溶出液を凍結乾燥し、粉末状の20PEG-DXRを得た。
1H-NMR(CDCl,500MHz):
δ(ppm):1.29(d,CH-),2.42(t),2.62-2.66cm),2.69-2.72(m),3.06(d),3.38(s,CHO-),3.65(s,-OCHCHO-),4.09(s,ArOCH),4.21-4.25(m),4.63(s),4.77(m),5.53(d),7.41(d,ArH),7.80(t,ArH),8.06(d,ArH)
質量分析(TOF-MS):22436.8
<実施例3>PEG-DXR処理oxNHの調製
oxNH(酸化処理されたカーボンナノホーン)をDMSO(ジメチルスルホキシド)もしくはDMFに懸濁し、30秒間隔で5分間超音波処理した。このoxNH懸濁液とoxNHの4倍重量の5PEG-DXRもしくは20PEG-DXRをエッペンチューブ内で混合し、室温で1時間震盪した。得られた混合液を攪拌しながら、その9倍体積の水を滴下し、その後遮光下4℃で終夜攪拌した。得られた溶液を分画分子量100000のアミコン限外ろ過器(ミリポア社製)で濃縮した。水で希釈した後再度アミコン限外ろ過器で濃縮し、これらの操作を繰り返してPEG-DXR処理oxNH(PEG-DXR-oxNH)を得た。
【0034】
使用したoxNHは、以下の方法で製造した。すなわち、グラファイトを室温Ar760Torr中でCO2レーザーアブレーションし(Nano-aggregates of single-walled graphitic carbon nano-horns″,Sumio Iijima,M.Yudasaka,R.Yamada,S.Bandow,K.Suenaga,F.Kokai,K.Takahashi,Chemical Physics Letters,309,165(1999))、開孔処理(Murata et al.J.Phys.Chem.B 2001,105,10210-10216)は、その条件、570℃、酸素中、15分(Material storage mechanism in porous anocarbon″,Kumiko Ajima,M.Yudasaka,K.Suenaga,D.Kasuya,T.Azami,S.Iijima,Advanced Materials,16,397(2004))としてoxNHを得た。
<実施例4>ゲルろ過カラムを用いたPEG-DXR-oxNHの水溶液中分散性の評価
様々な条件で水に分散させたoxNHをPD-10脱塩用ゲルろ過カラム(アマシャムバイオサイエンス社製)に流し込み、ゲル内への浸透性を観察することにより水溶中分散性の評価を行った(図1)。DMSOのみで処理したoxNH、およびDXRあるいはPEG処理したoxNHでは、PD-10カラムへほとんど浸透しなかった。一方、5P-EG-DXR-oxNHもしくは20PEG-DXR-oxNHはPD-10カラム底部まで浸透し、水溶液中分散性の向上が明らかとなった。この浸透性はDXRを共存させることで阻害され、oxNHへのPEG-DXR吸着がDXR部分を介して生じていることも示唆された(図1a)。
【0035】
これらのPD-10カラムに水を添加してoxNHの溶出を検討したところ、PEG-DXR-oxNHのみ溶出された(図1b)。バイアル瓶内の溶出液からも、PEG-DXR-oxNHの水溶液中分散性が向上したことは明らかである(図1c)。
【0036】
なお、以上の結果からoxNHの外壁にPEG-DXRが担持または付着されていることは明らかである。また、TEM観察結果からも上記のことが確認された。
<実施例5>動的光散乱法によるPEG-DXR処理oxNHの純水中平均粒径の測定
純水中におけるPEG-DXR-oxNH(oxNH換算で200μg/ml)の平均粒径を、濃厚系粒径アナライザーFPAR-1000(大塚電子社製)で測定した。この結果、5PEG-DXR処理oxNHの平均粒径は251nm(図2a)、20PEG-DXR処理oxNHの平均粒径は254nm(図2b)と算出された。
<実施例6>TUNEL(Terminal deoxynucleotidyl transferase biotin-dUPTP nick end labeling)染色法によるPEG-DXR処理oxNHのin vitro薬効評価
ヒト非小細胞肺癌細胞株NCI-H460の培養液に、各種条件で処理したoxNH(oxNH換算で200μg/ml)を添加し、3日後にTUNEL染色を行った。TUNEL染色に際し、In Situ Cell Death Detection Kit,Fluorescein(Roche Molecular Biochemicals社製)を用いた。10μg/ml DXR処理群(図3b)ですべての細胞がTUNEL陽性となり、DXR処理で細胞にアポトーシスが引き起こされていることを確認した。未処理群(図3a)、5PEG処理oxNH添加群(図3c)および20PEG処理oxNH添加群(図3d)においてTUNEL陽性細胞は見られなかったが、5PEG-DXR-oxNH(図3e)、および20PEG-DXR--oxNH(図3f)添加群では明らかにTUNEL陽性細胞数が増加した。以上の結果から、PEG-DXR-oxNHは、癌細胞に対してDXR同様アポトーシス誘導活性を有していることが明らかとなった。
<実施例7>
5PEG-DXR-oxNH(5PEG-DXR-oxSWNH)、5PEG-DXR、および生理食塩水をマウスに投与したときの腫瘍サイズの減少をしらべた。投与量、検体数(n)および実験方法は以下のとおりである。
<投与量>
5PEG-DXR-oxNH:100μg/injection(5PEG-DXR:24μg/injection相当)
<検体数(n)>
0.9%NaCl(n=4),5PEG-DXR(n=4),5PEG-DXR-oxNH(n=5)
<実験方法>
day 0,4に各種溶液(100μl)を腫瘍内に投与し、day6に腫瘍体積を測定した。(腫瘍体積=0.5×短径×短径×長径(mm))
<結果>
day 0における腫瘍体積を1として各群の値(Relative tumor volume)を図4に示す。
5PEG-DXRと5PEG-DXR-oxNHの間には統計学的有意差があり、5PEG-DXR-oxNHを投与したときに、腫瘍サイズの減少が顕著であった。以上の結果から、PEG-DXR-oxNHは、DDS薬剤として有用であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明においては、たとえば生体内水素系においても良好な水分散性が得られるように、機能性の有機分子と水溶性または水分散性化合物との付加体をナノ炭素材の外壁部に担持、付着させている。このため、水分散性に優れ、しかも安定した担持、付着が可能とされていることから、DDS薬剤等としての応用展開が拡大される。
【0038】
そして、ナノ炭素材の外壁部に機能性有機分子が担持、付着されていることから、たとえば生体内において、生体組織や細胞に対してより直接的な機能性の発現が可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3