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明細書 :中性子検出装置及び中性子イメージングセンサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4669996号 (P4669996)
登録日 平成23年1月28日(2011.1.28)
発行日 平成23年4月13日(2011.4.13)
発明の名称または考案の名称 中性子検出装置及び中性子イメージングセンサ
国際特許分類 G01T   1/26        (2006.01)
G01T   3/08        (2006.01)
G01T   1/24        (2006.01)
G01T   1/29        (2006.01)
H01L  27/14        (2006.01)
H01L  27/148       (2006.01)
FI G01T 1/26
G01T 3/08
G01T 1/24
G01T 1/29 C
H01L 27/14 K
H01L 27/14 B
請求項の数または発明の数 11
全頁数 12
出願番号 特願2007-507088 (P2007-507088)
出願日 平成18年3月3日(2006.3.3)
国際出願番号 PCT/JP2006/304137
国際公開番号 WO2006/095659
国際公開日 平成18年9月14日(2006.9.14)
優先権出願番号 2005062794
優先日 平成17年3月7日(2005.3.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年1月28日(2009.1.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000205627
【氏名又は名称】大阪府
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 和郎
【氏名】四谷 任
【氏名】石田 武和
【氏名】三木 茂人
個別代理人の代理人 【識別番号】100107308、【弁理士】、【氏名又は名称】北村 修一郎
【識別番号】100128901、【弁理士】、【氏名又は名称】東 邦彦
【識別番号】100120352、【弁理士】、【氏名又は名称】三宅 一郎
審査官 【審査官】青木 洋平
参考文献・文献 特開2002-357660(JP,A)
特開2002-071821(JP,A)
特開2004-214293(JP,A)
特開2005-286245(JP,A)
三木茂人 他,超伝導MgB2薄膜を用いた中性子検出器の開発1,第51回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,日本,(社)応用物理学会,2004年,Vol.51,No.1,p278
三木茂人 他,超伝導MgB2薄膜を用いた中性子検出器の開発2,応用物理学会学術講演会講演予稿集,日本,(社)応用物理学会,2004年,Vol.65,No.1,p188
田中啓一 他,陽極接合ウエハーを用いたTransition Edge X-ray Sensor,電気学会論文誌,日本,(社)電気学会,2002年,Vol.122-E,No.11,p517-522
調査した分野 G01T 1/00-7/12
H01L 27/14
H01L 27/148
H01L 39/00
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも一方の表面が誘電体材料で形成された基材と、前記表面上に形成される超伝導材料のストリップラインと、前記ストリップラインの両端部分に形成された電極部とを有する超伝導素子と、
前記ストリップライン中の超伝導元素と中性子との核反応による発熱を、前記ストリップラインの抵抗値の変化で測定する抵抗測定手段と、
前記ストリップラインが形成された前記表面とは反対側の前記基材の裏面部に、前記核反応による発熱の放熱性を調節する放熱調節手段とを有する中性子検出素子部を複数備え、
前記中性子検出素子部間で前記放熱性を異ならせている中性子検出装置。
【請求項2】
前記複数の中性子検出素子部が同一の前記基材上に設けられている請求項1記載の中性子検出装置。
【請求項3】
前記中性子検出素子部を3個以上備え、前記中性子検出素子部間で前記放熱性を3段階以上に異ならせている請求項1記載の中性子検出装置。
【請求項4】
前記基材の前記裏面部の厚さの設定により前記放熱調節手段が構成されている請求項1記載の中性子検出装置。
【請求項5】
前記中性子検出素子部間で、前記基材の前記裏面部の厚さが互いに異なる請求項1記載の中性子検出装置。
【請求項6】
前記抵抗測定手段は、前記複数の中性子検出素子部のそれぞれについて個別に抵抗値を測定する請求項1記載の中性子検出装置。
【請求項7】
前記複数の中性子検出素子部の中の一部が、前記放熱調節手段による前記放熱性を他の前記中性子検出素子部より良くして時間分解能を向上させた分解能優先型の中性子検出素子部である1記載の中性子検出装置。
【請求項8】
前記複数の中性子検出素子部の中の一部が、前記放熱調節手段による前記放熱性を他の前記中性子検出素子部より悪くして感度を向上させた感度優先型の中性子検出素子部である1記載の中性子検出装置。
【請求項9】
前記超伝導材料がMgBを含み、前記ストリップライン中の10Bが中性子と核反応するように構成されている請求項1記載の中性子検出装置。
【請求項10】
前記ストリップラインがメアンダ形状に形成されている請求項1記載の中性子検出装置。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の中性子検出素子部を複数個アレイ状に並べて配置した中性子イメージングセンサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の中性子検出素子部を備える中性子検出装置及び中性子イメージングセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超伝導転移温度の高い材料を利用した装置の開発が行われている。超伝導転移温度の高い超伝導材料として、超伝導転移温度が39KであるMgBが知られている。そして、例えば、10Bを構成材料として含むエネルギギャップの大きな10Bを濃縮したMgB2を中性子検出プレートとし、この検出プレートに、中性子が入射した際発生するα線により発生するフォノンを検出するように構成されたものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、シンチレータ板を用いて中性子を二次元的に検出することのできる中性子イメージングセンサも提案されている。このような中性子イメージングセンサは、中性子が入射した際に発光するシンチレータ板と、シンチレータ板に面して二次元的に設けられた波長シフトファイバとを備えることで、二次元的な中性子検出が可能となっている(例えば、特許文献2を参照)。

【特許文献1】特開2003-14861号公報
【特許文献2】特開2002-71816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の中性子検出装置は、単純に中性子を検出することを目的とした汎用的なものである。したがって、検出感度を犠牲にしても時間分解能が必要な用途や、時間分解能を犠牲にしても検出感度が必要な用途など、様々な用途に応じて構成されたものではない。
本願に係る中性子検出装置の用途としては、例えば、中性子回折を用いて物質の構造を解析するために用いる場合等がある。この用途にあっては、低強度の中性子源を用いて長時間の観測を行うとき、時間分解能は低くても検出感度の高い中性子検出装置が必要になる。また、高強度の中性子源を用いて短時間の観測を行うとき、中性子源自体が高強度であることから検出感度が低くても良く、時間分解能が高い中性子検出装置が必要になる。
【0005】
このように従来の中性子検出装置では、中性子検出の高感度及び高時間分解能といった用途に合ったものではなく、どのような構成にすれば簡単に中性子検出の高感度及び高時間分解能を実現できるかについても不明である。また、中性子検出を二次元的に行うことも求められるが、二次元的な中性子検出を良好な感度及び時間分解能で実施できていないという問題もある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な装置構成の変更で感度や時間分解能の調節が可能な中性子検出装置及び中性子イメージングセンサを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る中性子検出装置の特徴構成は、少なくとも一方の表面が誘電体材料で形成された基材と、前記表面上に形成される超伝導材料のストリップラインと、前記ストリップラインの両端部分に形成された電極部とを有する超伝導素子と、前記ストリップライン中の超伝導元素と中性子との核反応による発熱を、前記ストリップラインの抵抗値の変化で測定する抵抗測定手段と、前記ストリップラインが形成された前記表面とは反対側の前記基材の裏面部に、前記核反応による発熱の放熱性を調節する放熱調節手段とを有する中性子検出素子部を複数備え、前記中性子検出素子部間で、前記放熱性を互いに異ならせている点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、放熱調節手段が、ストリップライン中の超伝導元素と中性子との核反応による発熱の放熱性を調節するように構成されている。放熱調節手段によって放熱性を調節することで、核反応によって発生する熱量は同じであっても、ストリップラインの付近で滞留する熱量の大きさ、及び、滞留期間が異なってくる。そして、放熱性を良くすることで、ストリップラインの付近で滞留する熱量は小さくなるものの、熱の滞留期間が短くなるので、ストリップライン中の超伝導元素と中性子との核反応の時間分解能を向上させることができる。また、放熱性を悪くすることで、ストリップラインの付近での熱の滞留期間が長くなるものの、滞留する熱量が大きくなるので、ストリップライン中の超伝導元素と中性子との核反応の検出感度を高くすることができる。
【0009】
更に、中性子検出素子部間で核反応による発熱の放熱性が互いに異なるので、放熱性が良いことで時間分解能に優れる超伝導素子と、放熱性が悪いことで検出感度に優れる超伝導素子とを共に有する中性子検出装置を得ることができる。
【0010】
ここで、前記複数の中性子検出素子部が同一の前記基材上に設けられていると好適である。
この構成によれば、例えばシリコン基板等を前記基材として用いることで、同一基材上に半導体製造プロセスにより、中性子検出素子部を高密度に集積した中性子検出装置を得ることができる。
【0011】
また、前記中性子検出素子部を3個以上備え、前記中性子検出素子部間で前記放熱性を3段階以上に異ならせた構成とすることもできる。
この構成によれば、3段階以上の時間分解能及び検出感度で中性子の検出を行うことができる。したがって、検出対象の中性子の量や強度が様々に変化する場合であっても単一の装置によって適切に中性子の検出を行うことが可能となる。
【0012】
また、前記基材の前記裏面部の厚さの設定により前記放熱調節手段が構成されていると好適である。
この構成によれば、例えば半導体製造プロセスにより中性子検出素子部を製造する際において、前記基材の裏面部をエッチングする深さを調節することにより、比較的容易に前記放熱調節手段を形成することが可能となる。
【0013】
また、前記中性子検出素子部間で、前記基材の前記裏面部の厚さが互いに異なる構成であると好適である。
更に、前記抵抗測定手段は、前記複数の中性子検出素子部のそれぞれについて個別に抵抗値を測定する構成であると好適である。
【0014】
また、前記複数の中性子検出素子部の中の一部が、前記放熱調節手段による前記放熱性を他の前記中性子検出素子部より良くして時間分解能を向上させた分解能優先型の中性子検出素子部である構成であると好適である。
また、前記複数の中性子検出素子部の中の一部が、前記放熱調節手段による前記放熱性を他の前記中性子検出素子部より悪くして感度を向上させた感度優先型の中性子検出素子部である構成であると好適である。
【0015】
これらの構成によれば、時間分解能に優れる超伝導素子と検出感度に優れる超伝導素子とを共に有する中性子検出装置を得ることができる。したがって、検出対象の中性子の量や強度が変化する場合であっても単一の装置によって適切に中性子の検出を行うことが可能となる。
【0016】
また、前記超伝導材料がMgBを含み、前記ストリップライン中の10Bが中性子と核反応するように構成されていると好適である。
【0017】
この構成によれば、ストリップラインを構成する超伝導材料が、高い温度で超伝導転移温度を示すMgBを含むので、ストリップラインを冷却するための冷却装置を大規模なものとする必要がない利点がある。
【0018】
また、前記ストリップラインがメアンダ形状に形成されていると好適である。
【0019】
この構成によれば、ストリップラインがメアンダ形状に形成されるので、細幅のストリップラインが面状に形成されることになる。その結果、ストリップラインを構成する超伝導材料と中性子とが核反応する確率を高めることができる。
【0020】
上記目的を達成するための本発明に係る中性子イメージングセンサの特徴構成は、上記の構成を備える中性子検出素子部を複数個アレイ状に並べて配置した点にある。
【0021】
この特徴構成によれば、中性子検出素子部がアレイ状に二次元的に並べて配置されるので、二次元的に広い範囲に渡って、中性子を高い検出感度及び高い時間分解能で検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本願に係る中性子検出装置は、複数の中性子検出素子部21を備えて構成される。よって、先ず、単一の中性子検出素子部21の構成から説明する。
図1に示すのは、超伝導素子20を有する中性子検出素子部21の概略図であり、図2に示すのは、図1の線分A-Aにおける縦断面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、超伝導素子20は、少なくとも一方の表面が誘電体材料で形成された基材10と、その表面上に形成されるMgBを含む超伝導材料のストリップライン2と、そのストリップライン2の両端部分に形成された電極部1とを有する。そして、ストリップライン2中の10Bと中性子とが核反応すると、その核反応による発熱によって、上記ストリップライン2に抵抗値の変化が現れることになる。ストリップライン2の抵抗値の変化は、電流部16が、ストリップライン2を超伝導転移温度:Tc付近又はそれ以下の温度に冷却した状態で上記電極部1間に電流を流し、電圧部17が、ストリップライン2の電位差を測定することで、信号処理部18によって導出される。或いは、電圧部17が、上記ストリップライン2を超伝導転移温度:Tc付近又はそれ以下の温度に冷却した状態で上記電極部1間に定電圧を印加し、電流部16が、ストリップライン2の電流を測定することで、信号処理部18によって導出される。よって、電流部16、電圧部17及び信号処理部18が抵抗測定手段として機能する。
【0024】
図3に示すのは、ストリップライン2を形成する前のMgBの温度と抵抗値との関係を示す図である。
ストリップライン2の超伝導材料は、超伝導転移温度:Tc以下では電気抵抗がほぼ零となり、熱エネルギの影響を受けて温度がΔTcだけ上昇して超伝導転移温度:Tc以上になると、電気抵抗:Rが生じる。また、ストリップライン2の超伝導材料を冷却して超伝導転移温度:Tc以下になると、再び電気抵抗がほぼ零となる。例えば、ストリップライン2を超伝導転移温度:Tc以下に冷却している状態において、ストリップライン2中の10Bと中性子とが核反応することで発熱があったときには、再びストリップライン2が超伝導転移温度:Tc以下になるまで電気抵抗が生じることになる。つまり、ストリップライン2の抵抗値を測定することで、ストリップライン2中の10Bと中性子とが核反応したか否かを検出できる。言い換えると、ストリップライン2の抵抗値を測定することで、中性子の検出を行うことができる。
【0025】
また図2に示すように、この超伝導素子20では、ストリップライン2が形成された表面とは反対側の基材10の裏面部に、上述の核反応による発熱の放熱性を調節する放熱調節手段5が設けられている。図3に示す、ストリップライン2における温度と抵抗値との関係から分かるように、ストリップライン2における核反応によって発熱が生じると、ストリップライン2の温度が上昇して抵抗値が上昇する。そして、核反応による熱が放熱されると、ストリップライン2の温度が低下して抵抗値が減少する。つまり、放熱調節手段5によって、ストリップライン2において発生した熱の放熱性が良くなるように調節すると、核反応による熱が素早く放熱されてストリップライン2の温度も素早く低下するため、中性子検出の時間分解能が向上する。また、放熱調節手段5によって、ストリップライン2において発生した熱の放熱性が悪くなるように調節すると、核反応による熱が局所的に滞留してストリップライン2の温度も長時間上昇し易くなるため、中性子検出の感度が向上する。
【0026】
次に、図4から図10を参照して、図1及び図2に例示した超伝導素子20の製造工程について説明する。
図4に示すのは、超伝導素子20の基材10となる構造である。この基材10は、Si層13(厚さ400μm)の両面をSiO層12、14(厚さ300nm)で挟んだ構造の上に、SiN層11(厚さ1μm)を成膜したものである。よって、SiO層12及びSiN層11の積層構造が、ストリップライン2の熱を下方に通過させて放熱させるメンブレン層として作用する。
【0027】
次に、図5に示すように上記SiN層11上に、超伝導材料であるMgB層(厚さ170nm)を成膜する。このMgB層はスパッタリングにより形成され、10Bを主に含んでいる。このMgB層の一部がストリップライン2となる。そして、図6に示すように、MgB層を図1に示すようなメアンダ形状にエッチングする。このとき、MgB層上に形成したレジストを電子線描画し、ECRプラズマによるエッチングによって、図1に示すような線幅が及び線間隔が約1μmのメアンダ形状が得られる。次に図7に示すように、MgB層を保護するための保護層(SiO)3を形成する。この保護層3を形成するのは、ストリップライン2を構成する超伝導材料が常温の空気中で自然酸化して超伝導特性が劣化することを防止するためである。その後、図1に示す電極部1を作製するために、保護層3を部分的にエッチングしてMgB層を露出させる。そして、MgB層の露出部分に電極材料を堆積させることで図8に示す構造が得られる。
以上のようにして、中性子検出素子部21を構成する超伝導素子20において、中性子を検出する側である基材10の表面側の構造が作製される。
【0028】
次に、図2、図9及び図10を参照して、基材10の裏面部の構造について説明する。上述したように、ストリップライン2が形成された表面とは反対側の基材10の裏面部には、ストリップライン2中の超伝導元素と中性子との核反応による発熱の放熱性を調節する放熱調節手段5が設けられている。図9に示すのは、図8に示した構造の表面側及び裏面部にレジスト層15を塗布した後、裏面部に塗布されたレジスト層15の一部分を除去してマスクを形成した状態を示す。このとき、表面側にもレジスト層15を塗布するのは、後のエッチング工程において基材10の表面側に形成された保護層3、電極部1、ストリップライン2が損傷を受けないようにするためである。
【0029】
図10に示すのは、図9に示した裏面部のSiO層14の一部をエッチングにより除去した構造である。このエッチング工程は、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)等のドライエッチングやBHF溶液を用いたウェットエッチングにより行うことができる。その後、図9のように窓部分が空いたSi層13をEDP(エチレンジアミンピロカテコール)を用いた異方性ウェットエッチングで除去する。その結果、図2に示したような基材10の裏面部にSi層13が取り除かれた凹部が形成されることになる。このとき、Si層13がエッチングによって除去される範囲は、基材10の表面側にメアンダ形状のストリップライン2が形成された範囲に対応する。
以上のようにして、図1及び図2に示したような超伝導素子20を形成することができる。
【0030】
次に、上述した超伝導素子20を備える中性子検出素子部21の特性について説明する。
図1に示したように、電極部1間には、ストリップライン2に電流を流すことができる電流源、又は、流れる電流を測定することができる電流計として用いることができる電流部16と、ストリップライン2に電圧を印加することができる電圧源、又は、生じている電位差を測定することができる電圧計として用いることができる電圧部17とが接続されている。また、電流部16及び電圧部17で得られた電流値及び電位差に基づいてストリップライン2の抵抗値を導出することのできる抵抗測定手段が設けられている。従って、抵抗測定手段は電流部16、電圧部17及び信号処理部18を用いて実現可能である。
【0031】
後述する本発明の中性子検出装置において、中性子検出素子部21の基材10の裏面部の厚さ、すなわち本例では、Si層13をエッチングすることにより設定されるSiN層11、SiO層12及びSi層13(但し、Si層13の厚さはゼロにすることも可能である。)の厚さは、エッチング深さを調節することで適宜変更可能である。そして、Si層13の厚さを変えることで、ストリップライン2における核反応による発熱の放熱性を変化させることができる。ここでは基材10の裏面部の厚さ(図14におけるt1及びt2)の設定により放熱調節手段5が構成されている。そして、基材10の裏面部を厚くすることで前記放熱性を良くし、基材10の裏面部を薄くすることで前記放熱性を悪くすることができる。すなわち、基材10の裏面部を厚くすると、その裏面部によって奪い取られるストリップライン近傍の熱量が多くなる。その結果、核反応によって発生する熱量のうち、ストリップラインの付近で滞留する熱量は小さくなるものの、熱の滞留期間を短くして放熱性を良くすることができる。これにより、ストリップライン中の超伝導元素と中性子との核反応の時間分解能を向上させることができる。一方、基材10の裏面部を薄くすると、その裏面部によって奪い取られるストリップライン近傍の熱量が少なくなる。その結果、核反応によって発生する熱量のうち、ストリップラインの付近での熱の滞留期間は長くなり放熱性が悪くなるものの、滞留する熱量を大きくすることができる。これにより、ストリップライン中の超伝導元素と中性子との核反応の検出感度を高くすることができる。
【0032】
図11に示すのは、中性子検出素子部21の動作例を説明するグラフである。具体的には、電流部16において定電流を流しながら電圧部17で電圧(電位差)を測定した結果であり、特性Aは放熱調節手段5の放熱性を良くしたときの結果、及び、特性Bは放熱調節手段5の放熱性を悪くしたときの結果である。具体的には、図14におけるt1又はt2で示す部分に相当する基材10の裏面部の厚さについて、特性Aはその厚さを380〔μm〕としたとき、特性Bはその厚さを100〔μm〕としたときの結果である。図11から分かるように、特性Aでは、検出される電圧の絶対値は小さくなるものの、電圧が検出されている期間は短くなり、時間分解能が向上していると言える。また、特性Bでは、電圧が検出されている期間は長くなるものの、検出される電圧の絶対値は大きくなり、検出感度が向上していると言える。
【0033】
また、図12は、基材10の裏面部の厚さと出力信号の減衰期間との関係を示すグラフである。また、図13は、基材10の裏面部の厚さと出力信号ピーク電圧との関係を示すグラフである。これらのグラフに示されるように、基材10の裏面部の厚さが厚いほど出力信号の減衰時間が短く、時間分解能に優れた特性を示すことが分かる。一方、基材10の裏面部の厚さが薄いほど出力信号のピーク電圧が大きく、検出感度に優れた特性を示すことが分かる。なお、これらのグラフにおいて、2つの黒丸の点は実測値であり、破線はこれらの関係の推測値を示している。
【0034】
図14に示す中性子検出装置は、上述したものと同様の構成の2個の中性子検出素子部21a、21bを同一の基材10上に備えている。そして、これらの中性子検出素子部21a、21b間で、基材10の裏面部の厚さを互いに異ならせることにより、ストリップライン2における核反応による発熱の放熱性を互いに異ならせて構成されている。具体的には、図14において、右側の中性子検出素子部21aは、基材10の裏面部の厚さt1が左側の中性子検出素子部21bの基材10の裏面部の厚さt2より厚く構成されている(t1>t2)。これにより、右側の中性子検出素子部21aは、放熱調節手段5による放熱性を左側の中性子検出素子部21bより良くして時間分解能を向上させた分解能優先型の中性子検出素子部21となっている。すなわち、この右側の中性子検出素子部21aの放熱調節手段5は、基材10の裏面部の厚さt1の設定により時間分解能を調節する時間分解能調節部7として機能する。一方、左側の中性子検出素子部21bは、基材10の裏面部の厚さt2が右側の中性子検出素子部21aの基材10の裏面部の厚さt1より薄く構成されている。これにより、左側の中性子検出素子部21bは、放熱調節手段5による放熱性を右側の中性子検出素子部21aより悪くして感度を向上させた感度優先型の中性子検出素子部21となっている。すなわち、この左側の中性子検出素子部21bの放熱調節手段5は、基材10の裏面部の厚さt2の設定により感度を調節する感度調節部8として機能する。なお、これらの2個の中性子検出素子部21a、21bは、基材10の裏面部の厚さt1、t2以外の構造は互いに同じである。
図14に示す構造に形成することで、中性子検出装置は、分解能優先型の中性子検出素子部21aによる時間分解能に優れた中性子検出と、感度優先型の中性子検出素子部21bによる検出感度に優れた中性子検出との双方を行うことができる。
【0035】
図15に示すのは上記中性子検出素子部21を二次元的に複数個アレイ状に並べて配置した中性子イメージングセンサ30の概略図である。この中性子イメージングセンサ30は、ストリップライン2における核反応による発熱の放熱性を変化させたときの抵抗変化によって発生した電流信号又は電圧信号を出力する複数の中性子検出素子部21と、その信号を転送する垂直転送用CCD22及び水平転送用CCD23とで構成されている。図14に示したように複数の中性子検出素子部21間で放熱性は互いに異なっている。各中性子検出素子部21の構成は図1に示したものと同様である。したがって、電流部16、電圧部17及び信号処理部18は、複数の中性子検出素子部21のそれぞれに個別に設けられて抵抗値を測定する構成となっている。そして、信号処理部18は、ノイズフィルタ、増幅器などを用いて電流信号又は電圧信号を検出し、電流信号又は電圧信号が検出されると、その信号強度に拘わらずに一定時間の間、一定の電流を出力する。これにより、垂直転送用CCD22に電荷が蓄積される。或いは、信号処理部18は、ノイズフィルタを介して電流信号又は電圧信号を検出し、その信号強度に拘わらずに一定の信号強度に増幅して、一定時間の間、一定の電流を出力する。これにより、垂直転送用CCD22に電荷が蓄積される。そして、垂直転送用CCD22に蓄積された電荷は、水平転送用CCD23へと転送され、最終的に二次元イメージを表すデータとして出力される。その結果、二次元的な中性子検出が可能となる。なお、この中性子イメージングセンサ30を構成する複数の中性子検出素子部21、垂直転送用CCD22、及び水平転送用CCD23は、同一の基材10上に設けられた構成とすると好適である。
【0036】
図16に示すのは、上記中性子検出素子部21を二次元的に複数個アレイ状に並べて配置した中性子イメージングセンサ30であって、中性子検出素子部21間で放熱性を4段階に異ならせている場合の配置を示す説明図である。図中において、異なる模様のハッチングが施されている中性子検出素子部21は、異なる放熱性を有している。したがって、この中性子イメージングセンサ30は、4段階の時間分解能及び検出感度で中性子の検出を行うことができる。本例では、2行2列に配置された4個の放熱性の異なる中性子検出素子部21を一組の検出ユニット24として、複数組の検出ユニット24を二次元的に配置して中性子イメージングセンサ30を構成している。なお、中性子検出素子部21間で放熱性を複数段階に異ならせて構成する場合、それを2段階又は3段階とし、或いは5段階以上とすることも可能である。これらの場合において、各段階の中性子検出素子部21の配置に関して、同じ段階の放熱性を有する中性子検出素子部21同士が偏って配置されないようにすると好適である。
【0037】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態において、図示した超伝送素子の材料、形状、寸法、電極部10の配置などは改変してもよい。例えば、上記実施形態では、超伝導材料としてのMgBを含むストリップライン2を形成したが、Nb、NbNなどの超伝導材料上又は超伝導材料下に10B薄膜を含む化合物薄膜を蒸着したメアンダ形状のストリップラインを形成してもよい。また上記実施形態では、超伝導材料としてMgBを含み、前記ストリップライン2中の10Bが中性子と核反応する例を示したが、これら二つの組合せの以外の組合せであってもよい。
また更に、ストリップライン2の下方に位置する基材10を構成する各層の厚さや、基材10を構成する層の数などを変更してもよい。また、ストリップライン2を、図1に示したようなメアンダ形状に描いたが、単なる直線などの他の形状に改変してもよい。
【0038】
<2>
上記実施形態では、図2及び図14に示したように、Si層13をエッチングすることで形成した凹部の深さの設定により放熱調節手段を実現していたが、他の構成で実現してもよい。例えば、エッチングすることで形成した凹部に熱伝導性の良い又は悪い物質を堆積させるなどして埋め込むことで、ストリップライン2における核反応による発熱の放熱性を調節してもよい。
【0039】
<3>
上記実施形態では、ストリップライン2の熱を下方に通過させて放熱させるメンブレン層が、SiO層12及びSiN層11の積層構造によって形成される例について説明したが、メンブレン層の構造はこれに限定されない。例えば、Si層13上にSiO層12又はSiN層11を成膜した単層構造のメンブレン層を形成し、その上にストリップライン2を形成してもよい。或いは、メンブレン層を3層以上の多層構造としてもよい。
また、メンブレン層を構成する材料は、上述したSiO及びSiN以外の材料でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の中性子検出装置及び中性子イメージングセンサは、例えば原子炉内における中性子検出や、中性子回折を用いた物質の構造解析などに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】中性子検出素子部の概略的な斜視図
【図2】図1の線分A-Aにおける縦断面図
【図3】ストリップラインにおける温度と抵抗値との関係を示す図
【図4】超伝導素子の製造工程を説明する図
【図5】超伝導素子の製造工程を説明する図
【図6】超伝導素子の製造工程を説明する図
【図7】超伝導素子の製造工程を説明する図
【図8】超伝導素子の製造工程を説明する図
【図9】超伝導素子の製造工程を説明する図
【図10】超伝導素子の製造工程を説明する図
【図11】中性子検出素子部の動作例を説明するグラフ
【図12】基材の裏面部の厚さと出力信号の減衰期間との関係を示すグラフ
【図13】基材の裏面部の厚さと出力信号ピーク電圧との関係を示すグラフ
【図14】中性子検出装置の縦断面図
【図15】中性子イメージングセンサの模式図
【図16】中性子イメージングセンサにおける中性子検出素子部の配置説明図
【符号の説明】
【0042】
1 電極部
2 ストリップライン
5 放熱調節手段
10基材
11 SiN層(誘電体材料)
16 電流部(抵抗測定手段)
17 電圧部(抵抗測定手段)
18 信号処理部(抵抗測定手段)
20 超伝導素子
30 中性子イメージングセンサ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
14
【図16】
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