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明細書 :走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー及びそれを具備する走査型プローブ顕微鏡

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5172331号 (P5172331)
登録日 平成25年1月11日(2013.1.11)
発行日 平成25年3月27日(2013.3.27)
発明の名称または考案の名称 走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー及びそれを具備する走査型プローブ顕微鏡
国際特許分類 G01Q  60/22        (2010.01)
G01Q  60/38        (2010.01)
G01Q  60/60        (2010.01)
FI G01Q 60/22 101
G01Q 60/38 101
G01Q 60/60 101
請求項の数または発明の数 7
全頁数 15
出願番号 特願2007-512847 (P2007-512847)
出願日 平成18年3月30日(2006.3.30)
国際出願番号 PCT/JP2006/306648
国際公開番号 WO2006/106818
国際公開日 平成18年10月12日(2006.10.12)
優先権出願番号 2005100934
優先日 平成17年3月31日(2005.3.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年10月14日(2008.10.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
発明者または考案者 【氏名】丸山 健一
【氏名】鈴木 孝治
【氏名】伊與木 誠人
個別代理人の代理人 【識別番号】100088546、【弁理士】、【氏名又は名称】谷川 英次郎
審査官 【審査官】秋田 将行
参考文献・文献 特開平08-129017(JP,A)
特開平08-219744(JP,A)
特開平09-229948(JP,A)
特開平11-248720(JP,A)
特開2000-131216(JP,A)
特開2001-004519(JP,A)
特表2003-536059(JP,A)
特表2003-511690(JP,A)
小川 証、他,EC-NSOM(走査型電気化学・近接場光学顕微鏡)の開発とバイオ応用,第65回分析化学討論会講演要旨集,2004年 5月 1日,第67頁
小川 証、他,走査型電気化学・近接場光学顕微鏡(EC-NSOM)の開発とDNAチップイメージングへの応用,電気化学会第71回大会講演要旨集,2004年 3月24日,第89頁
小川 証、他,近接場プローブの電気化学ナノプローブへの応用とElectrochemical(EC)-NSOMへの展開,第65回応用物理学会学術講演会講演予稿集第3分冊,2004年 9月 1日,第914頁
調査した分野 G01Q 10/00 -90/00
特許請求の範囲 【請求項1】
先端にプローブが設けられた走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーであって、前記プローブは、少なくとも一部が光透過性である基材と、該基材上に形成された導体層と、該導体層上に積層された絶縁層を具備し、前記プローブの先端には、前記絶縁層が存在せず、前記カンチレバーは、前記プローブの前記光透過性基材に連通する光導波路を有し、前記光透過性基材は前記プローブの先端まで連続し、前記プローブの先端には、前記導体層が存在せず、前記光透過性の基材及び前記導体層の端面が露出しており、前記プローブを先端側から見た場合、前記導体層が存在しない前記プローブ先端の開口部の外周上に前記導体層が形成され、該導体層の外周上に前記絶縁層が形成され、前記開口部の基端部の直径が0.2nm~200nmであり、走査型プローブ顕微鏡が、原子間力顕微鏡、電気化学顕微鏡及び近接場光顕微鏡としての機能を有するものであり、前記導体層が電気化学顕微鏡の作用極として用いられ、前記光透過性基材を介してエバネッセント光が照射され及び/又は試料表面に発生したエバネッセント光が集光される、走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーの製造方法であって、基材上に導体層を形成する工程と、該導体層を一方の電極として絶縁性塗料により絶縁層を電着する工程と、形成された絶縁層を加熱してプローブ先端の導体層を前記絶縁層から露出させる工程を含み、プローブ先端において前記絶縁層から露出している導体層の少なくとも一部を除去して開口部を形成する工程をさらに含む、カンチレバーの製造方法
【請求項2】
前記カンチレバーが、前記プローブと一体に光ファイバーにより形成され、該光ファイバーの先端が先鋭化され、かつ、該光ファイバーの長軸に対して先端が湾曲している請求項1記載の方法
【請求項3】
前記導体層の最表面が金、金合金、白金又はカーボンから成る請求項1又は2記載の方法
【請求項4】
前記導体層の表面が、段差又は角を持たず滑らかに形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法
【請求項5】
イオンビームを照射して、前記導体層の少なくとも一部を、その下の基材と共に除去する請求項1~4のいずれか1項に記載の記載の方法。
【請求項6】
ストレート型の走査型プローブ顕微鏡用プローブであって、前記プローブは、少なくとも一部が光透過性であり先端が先鋭化された基材と、該基材上に形成された導体層であって、該導体層の表面が、段差又は角を持たず滑らかに形成されており、該導体層上に積層された絶縁層を具備し、前記プローブの先端には、前記絶縁層が存在せず、前記光透過性基材は前記プローブの先端まで連続し、前記プローブの先端には、前記導体層が存在せず、前記光透過性の基材及び前記導体層の端面が露出しており、前記プローブを先端側から見た場合、前記導体層が存在しない前記プローブ先端の開口部の外周上に前記導体層が形成され、該導体層の外周上に前記絶縁層が形成され、前記開口部の基端部の直径が0.2nm~200nmであり、走査型プローブ顕微鏡が、原子間力顕微鏡、電気化学顕微鏡及び近接場光顕微鏡としての機能を有するものであり、前記導体層が電気化学顕微鏡の作用極として用いられ、前記光透過性基材を介してエバネッセント光が照射され及び/又は試料表面に発生したエバネッセント光が集光される、ストレート型の走査型プローブ顕微鏡用プローブの製造方法であって、基材上に導体層を形成する工程と、該導体層を一方の電極として絶縁性塗料により絶縁層を電着する工程と、形成された絶縁層を加熱してプローブ先端の導体層を前記絶縁層から露出させる工程を含み、プローブ先端において前記絶縁層から露出している導体層の少なくとも一部を除去して開口部を形成する工程をさらに含む、プローブの製造方法
【請求項7】
前記導体層の最表面が金、金合金、白金又はカーボンから成る請求項記載の方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー及びそれを具備する走査型プローブ顕微鏡に関する。本発明の走査型プローブ顕微鏡は、原子間力顕微鏡、近接場光学顕微鏡及び電気化学顕微鏡として機能し得る。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡は、試料の極近傍を、先端のとがったプローブで走査して試料を観察する顕微鏡の総称であり、代表的なものとして原子間力顕微鏡が知られている。原子間力顕微鏡としては、先端部が鉤状に湾曲したカンチレバーを具備し、鉤状に湾曲した先端部をプローブとして用いるものが知られている。試料とプローブ先端との間の原子間力に基づくカンチレバーの変位を測定することにより、試料の表面形状が観察される。
【0003】
このような原子間力顕微鏡のカンチレバー及びプローブを、光ファイバーのような光導波性材料で形成し、プローブ先端部以外の部分又はプローブ先端部を含めて、プローブを金属層で被覆することにより、該プローブを、近接場光学顕微鏡のプローブとして兼用することにより、原子間力顕微鏡と近接場光学顕微鏡の機能を兼備した走査型プローブ顕微鏡も知られている(特許文献1)。すなわち、光導波性のカンチレバーにレーザー光を通してプローブ先端に導くと、プローブ先端部からエバネッセント光が照射され、例えば蛍光標識した試料等をこのエバネッセント光により励起し、発せられる蛍光を検出することにより試料を光学的に観察することが可能になる。このように、原子間力顕微鏡と近接場光顕微鏡の機能を兼備した顕微鏡では、原子間力顕微鏡により試料の形状を観察でき、同時に、蛍光標識した種々の物質を観察できるので、例えば、これを用いて細胞を観察することにより、細胞の微細な形状と、例えば蛍光標識化したカルシウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン等の細胞内分布を同時に観察することができる。
【0004】
一方、本願共同発明者らは、先に、先端がとがった光ファイバー上に形成した金属層を電極として用いて、該金属層の全面上に樹脂被膜を電着し、次いで加熱して該樹脂被膜を収縮させて樹脂被膜の先端部を破り、下層の金属層を露出させることにより、極めて微細な電極を形成する方法を発明した(特許文献2)。
【0005】

【特許文献1】特許第2704601号掲載公報
【特許文献2】特開2004-45394号公報
【特許文献3】特開2001-208671号公報
【特許文献4】特許第3264824号掲載公報
【特許文献5】特開平9-89911号公報
【特許文献6】特開平11-51943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるような、原子間力顕微鏡と近接場光学顕微鏡の機能を兼備した顕微鏡は、試料の表面形状の情報と、蛍光等の光学的な情報を同時に得ることができ、細胞のような生物試料の観察に威力を発揮する。しかし、この顕微鏡をもってしても、例えば、細胞内で起きている化学反応を電気化学的に測定することはできない。本願発明者らは、もし、原子間力顕微鏡と近接場光学顕微鏡を兼備した顕微鏡で電気化学測定も行うことができれば、細胞内で起きる化学反応をも計測することができ、例えば、神経細胞内における、ドーパミンやセロトニンのような神経伝達物質の分布等をも観察することができ、細胞の形状と化学情報の相関を調べることができ、細胞内レベルでの生理学的研究等に大いに役立つことに想到した。しかしながら、原子間力顕微鏡と近接場光学顕微鏡を兼備した顕微鏡で電気化学測定も行うことができる顕微鏡は知られていない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、原子間力顕微鏡と近接場光学顕微鏡を兼備した顕微鏡で電気化学測定も行うことができる顕微鏡及びそのためのカンチレバー及びプローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、原子間力顕微鏡のプローブとして用いられる、先端が尖った光透過性材料を金属層で被覆し、さらに該金属層を絶縁層で被覆し、先端部のみ絶縁層を除去して金属層を露出させ、この僅かに露出した金属層を作用電極として用いることにより、該プローブを原子間力顕微鏡及び近接場光学顕微鏡のプローブとしてのみならず、電気化学顕微鏡の電極としても用いることができ、それによって、原子間力顕微鏡、近接場光学顕微鏡及び電気化学顕微鏡の機能を兼備させることができることに想到し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、先端にプローブが設けられた走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーであって、前記プローブは、少なくとも一部が光透過性である基材と、該基材上に形成された導体層と、該導体層上に積層された絶縁層を具備し、前記プローブの先端には、前記絶縁層が存在せず、前記カンチレバーは、前記プローブの前記光透過性基材に連通する光導波路を有し、前記光透過性基材は前記プローブの先端まで連続し、前記プローブの先端には、前記導体層が存在せず、前記光透過性の基材及び前記導体層の端面が露出しており、前記プローブを先端側から見た場合、前記導体層が存在しない前記プローブ先端の開口部の外周上に前記導体層が形成され、該導体層の外周上に前記絶縁層が形成され、前記開口部の基端部の直径が0.2nm~200nmであり、走査型プローブ顕微鏡が、原子間力顕微鏡、電気化学顕微鏡及び近接場光顕微鏡としての機能を有するものであり、前記導体層が電気化学顕微鏡の作用極として用いられ、前記光透過性基材を介してエバネッセント光が照射され及び/又は試料表面に発生したエバネッセント光が集光される、走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーの製造方法であって、基材上に導体層を形成する工程と、該導体層を一方の電極として絶縁性塗料により絶縁層を電着する工程と、形成された絶縁層を加熱してプローブ先端の導体層を前記絶縁層から露出させる工程を含み、プローブ先端において前記絶縁層から露出している導体層の少なくとも一部を除去して開口部を形成する工程をさらに含む、カンチレバーの製造方法を提供する。また、本発明は、ストレート型の走査型プローブ顕微鏡用プローブであって、前記プローブは、少なくとも一部が光透過性であり先端が先鋭化された基材と、該基材上に形成された導体層であって、該導体層の表面が、段差又は角を持たず滑らかに形成されており、該導体層上に積層された絶縁層を具備し、前記プローブの先端には、前記絶縁層が存在せず、前記光透過性基材は前記プローブの先端まで連続し、前記プローブの先端には、前記導体層が存在せず、前記光透過性の基材及び前記導体層の端面が露出しており、前記プローブを先端側から見た場合、前記導体層が存在しない前記プローブ先端の開口部の外周上に前記導体層が形成され、該導体層の外周上に前記絶縁層が形成され、前記開口部の基端部の直径が0.2nm~200nmであり、走査型プローブ顕微鏡が、原子間力顕微鏡、電気化学顕微鏡及び近接場光顕微鏡としての機能を有するものであり、前記導体層が電気化学顕微鏡の作用極として用いられ、前記光透過性基材を介してエバネッセント光が照射され及び/又は試料表面に発生したエバネッセント光が集光される、ストレート型の走査型プローブ顕微鏡用プローブの製造方法であって、基材上に導体層を形成する工程と、該導体層を一方の電極として絶縁性塗料により絶縁層を電着する工程と、形成された絶縁層を加熱してプローブ先端の導体層を前記絶縁層から露出させる工程を含み、プローブ先端において前記絶縁層から露出している導体層の少なくとも一部を除去して開口部を形成する工程をさらに含む、プローブの製造方法を提供する。

【発明の効果】
【0010】
本発明により、原子間力顕微鏡、近接場光学顕微鏡及び電気化学顕微鏡の機能を兼備した走査型プローブ顕微鏡及びそれを可能にした、走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーが初めて提供された。本発明の走査型プローブ顕微鏡は、原子間力顕微鏡、近接場光学顕微鏡及び電気化学顕微鏡の機能を兼備しているので、例えば、細胞観察において、細胞の表面形状、蛍光観察及び各種化学反応の電気化学的観察を同時に行なうことができ、生理学の研究等に威力を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のカンチレバーの好ましい基本形状を示す斜視図である。
【図2】本発明のカンチレバーの好ましい態様の模式図及びその先端部の断面図である。
【図3】原子間力顕微鏡、近接場光顕微鏡及び電気化学顕微鏡の機能を兼備した本発明の走査型プローブ顕微鏡の好ましい一例の模式図である。
【図4】図2に示す本発明の走査型プローブ顕微鏡の好ましい一例における試料ホルダの平面図である。
【図5】本発明の実施例において作製したカンチレバーの先端部に形成された電極を用いて行なった、サイクリックボルタモグラムを示す図である。
【図6】本発明の実施例において作製した、原子間力顕微鏡、近接場光顕微鏡及び電気化学顕微鏡の機能を兼備した本発明の走査型プローブ顕微鏡により同時観察した、櫛型電極の形状像(a)、近接場像(b)及び電気化学像(c)を示す。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のカンチレバーの基本形状は、特許文献1に記載されたような、公知の原子間力顕微鏡のカンチレバーと同様であってよい。好ましくは、図1に示すように、カンチレバー1は、先端が先鋭化され、かつ、鉤状に湾曲しているものが好ましい。鉤状に湾曲した部分の先鋭化された先端部1aがプローブとして用いられる。プローブ部の基材は、先鋭化されテーパーとなっている部分とテーパーとなっていない部分の境界と、前記プローブを先端側から見た場合の基材の最先端部の外周以外は角を持たず、段差なく連続して形成されることが好ましい。また、プローブの基材の最先端部は先鋭化の方法により平面の場合と、先端が曲率半径を持つ場合があるが、どちらの形状でもかまわない。なお、基材の最先端部の直径は30nm以下となるのが好ましい。また、プローブの基材の先鋭化されテーパーとなっている部分とテーパーとなっていない部分の境界と、前記プローブを先端側から見た場合の基材の最先端部の外周についても曲率半径を設けて角を持たない形状としてもよい。カンチレバー1は、そのプローブ部1aを含め、図1に示すように段差又は鋭角の角を持たず滑らかに形成されていることが好ましく、段差又は角を持たず滑らかに形成されていることが最も好ましい。ここで、鋭角とは90度以下の角度をいう。段差や角がない場合、段差や角の部分が破けるという問題が起きないので好ましい。
【0013】
少なくともプローブ1aは、光透過性の基材を含み、好ましくは、カンチレバー全体が光ファイバーのような光透過性の基材を含み、プローブ部と一体に形成される。もっとも、カンチレバーは、プローブの先端に光を導波することができる光導波路を有しておれば、必ずしもカンチレバー全体を光透過性の基材で形成する必要はない。光ファイバーは、横断面で中央部分に位置する、高屈折率のコア2と、その周囲にある、低屈折率のクラッド3から形成される。後述のように、プローブの最先端部は先鋭化されているので、通常、クラッドが除去されてコアのみを基材とする。
【0014】
なお、カンチレバーの構成は上記構成に限定されず、シリコンやシリコンナイトライドあるいは酸化シリコン製のカンチレバーに導波路や光透過用の貫通穴を設けたものなどでもよい。
【0015】
本発明のカンチレバーのプローブは、図2に示すように、上記基材上に形成された導体層4と、該導体層4上に積層された絶縁層5を具備する。なお、図2の(a)は、図1に示すような基本形状を有するカンチレバーを模式的に示しており、(b)及び(c)は、(a)のプローブの先端部(円で囲んだ部分)の模式断面図を示す。なお、(b)は、後述するFIBによりプローブ先端に開口部を設けた場合の図であり、(c)は、後述する斜め蒸着法によりプローブ先端に開口部を設けた場合の図である。なお、図2(a)中の6はミラー面(後述)、7はカンチレバー取り付け用の治具を示す。通常、導体層4及び絶縁層5は、治具7よりも先端側に形成され、治具よりも基端側はコア2、クラッド3及び光ファイバーの樹脂被膜の3層構造から成る。導体層4は、金属やカーボン等の導電性材料の層であり、好ましくは、その最表面が化学的安定性に優れ、導電性の高い金、金合金、白金又はグラファイトのようなカーボンから成る。プローブ先端部分での導体層の厚さは、特に限定されないが、10~400nm程度が好ましく、さらに好ましくは15~300nm程度である。絶縁層5を形成する材料は、絶縁材料であれば特に限定されないが、後述のように該絶縁層5は、電着により形成することが好ましいので、絶縁性の塗膜を形成する電着塗料で形成することが好ましい。絶縁性の塗膜を与える種々の電着塗料が周知であり、市販されている。本発明においては、これらの市販の電着塗料を好ましく用いることができる。塗膜を形成する樹脂成分としては、何ら限定されるものではなく、アニオン性ポリマーもカチオン性ポリマーも使用することができる。例えば、ポリアクリル酸、ポリエチレンスルホン酸、ポリアミノ酸等を好ましい例として挙げることができる。また、絶縁層の厚さは、特に限定されないが、10~5000nm程度が好ましく、特には100~3000nm程度が好ましい。
【0016】
プローブの先端では、前記絶縁層5が存在せずに前記導体層4が露出している。前記導体層4は、先端の一部又は全部において存在しない。プローブ最先端部以外の導体層4は、導波路から光が外部に漏れることを防止する遮光膜として機能させることもできる。プローブ最先端部の導体層4は薄いので、レーザー光を照射するとエバネッセント波が導体層4を介して発せられる。微弱なエバネッセント光を照射したり集光したりするために、少なくともプローブの最先端部には導体層4が存在せず、プローブを先端側から見た場合、前記導体層4が存在しない前記プローブ先端の開口部(導体層4が存在せずに基材が露出している部分)の外周上に前記導体層4が形成され、該導体層4の外周上に前記絶縁層5が形成される。なお、開口部の基端部の直径は、0.2nm~200nmである。

【0017】
本発明はまた、ストレート型の走査型プローブ顕微鏡用プローブであって、前記プローブは、少なくとも一部が光透過性であり先端が先鋭化された基材と、該基材上に形成された導体層と、該導体層上に積層された絶縁層を具備し、前記プローブの先端には、前記絶縁層が存在せずに前記導体層が露出しており、前記光透過性基材は前記プローブの先端まで連続する、ストレート型の走査型プローブ顕微鏡用プローブをも提供する。ストレート型のプローブ自体はこの分野において周知であり(例えば特許文献5及び特許文献6)、その先端を下側に向け、長手方向が鉛直方向になるように支持して用いられる。鉤状に湾曲していないことを除けば基本的にカンチレバーと同様な構成を有し、同様に動作する。その好ましい構造は、上記したカンチレバーの好ましい構造と同様である。すなわち、例えば、光ファイバーの先端を先鋭化したストレート型のプローブであって、先鋭化された基材がプローブ先端にかけて段差や鋭角の角を持たずに滑らかに形成されていることが好ましい。
【0018】
本発明のカンチレバーは、以下のようにして製造することができる。すなわち、先ず、公知の方法により、好ましくは光ファイバーを材料として用い、図1に示すように、先端が先鋭化されて、好ましくは段差又は角を持たず滑らかに湾曲した形状の基材を形成する。すなわち、テーパーとなっている部分とテーパーとなっていない部分の境界と、プローブの最先端部の外周以外は角を持たず、段差なく連続して形成される。また、好ましくは、カンチレバーは、滑らかに湾曲した形状とし、カンチレバーとして作用する部分と、プローブ部として作用する部分は段差を持たず滑らかに連続して形成される。先端部の先鋭化は、例えば光ファイバーにレーザーを照射して加熱しながら光ファイバーの両端部を引っ張って引きちぎる方法(熱引き法)や、光ファイバーの端部をエッチングする方法により行うことができる。あるいは、これらの両方を組み合わせてさらに微細な先端部を形成することができる。
【0019】
ここで、熱引き法とエッチングを組み合わせた先鋭化方法の一例を説明する。光ファイバーはコア径3.2μm、クラッド径125μmの光ファイバを使用した。この光ファイバーのクラッド部分に炭酸ガスレーザを集光し、加熱しながら両端に引き伸ばして破断させる。これにより、先端の直径を100nm以下まで先鋭化することができる。次にエッチングにより、プローブを更に先鋭化させる。エッチングには、50%フッ酸溶液上にフッ酸の気化防止のためにヘプタンなどの有機溶媒を展開して2相状態とし、その界面より下のフッ酸溶液中で3分から90分間先端を浸漬することによってエッチングを行い先端の直径を50nm以下まで先鋭化する。このような方法を用いることにより、プローブ部分は段差や角を持たず滑らかに形成することができた。
【0020】
先端部を先鋭化した後、カンチレバーの先端部を鉤状に湾曲させる。先鋭化された光ファイバーの先端から0.1mmから2mmの部分に炭酸ガスレーザーの光を集光して当て、変形させる前を0゜としたとき、60゜から90゜程度の鈎状の形状に変形させた。この場合、レーザー光の当たる側がその裏側に対して、熱の吸収量が多いため、軟化にともなうガラスの表面張力によって、光ファイバー先端はレーザー光の当たる方向に折れ曲がっていく。なお、図1において下向きに先鋭化しているプローブ部1aの長さは、特に限定されないが、通常、0.1mm~2mm程度である。
【0021】
次に、後述するカンチレバーの変位検出用のレーザ光の反射面を作製するためカンチレバーのプローブが設けられている側とは反対側の一部を砥石を用いて機械的に研磨して反射面を設ける。
【0022】
次に導体層を形成する。導体層は、少なくともプローブ部1a(図1)に形成する。図1において水平に維持されている、カンチレバーの先端部以外の部分にも導体層を形成してもよい。後述のように、プローブ先端の導体層は作用電極として用いられるので、作用電極リード線を接続する必要があるため、カンチレバーの先端部以外の部分にも導体層を形成し、この部分に作用電極リード線を接続することが好ましい。また、導体層はファイバー内を光が導波する際の遮光膜としても機能する。導体層の形成は、スパッタリング法や真空蒸着法等の金属蒸着により行うことができ、蒸着法が好ましい。蒸着法は、市販の蒸着装置を用いて常法により行うことができる。蒸着する導体層の厚さの好ましい範囲は上記した通りである。
【0023】
次に、導体層上に絶縁層を形成する。これは、例えば、導体層を一方の電極として電着を行うことにより、絶縁性電着塗料層を形成することにより行うことができる。電着は、導体層と、対電極を電着塗料中に浸漬し、これらの間に直流電圧をかけることにより行うことができる。なお、電着塗料中に含まれるポリマーがアニオン性の場合には導体層を陽極にし、カチオン性の場合には導体層を陰極にする。電着の具体的な方法は特に限定されないが、好ましい方法の例として、直径1~2cmのコイル状の金属(白金)を対電極として用い、このコイルの中に光ファイバーを挿入し、該コイルと光ファイバーの先端部を電着塗料に浸漬し、直流電圧をかける方法を挙げることができる。この場合、直流電圧の大きさは、適宜選択されるが、2~3V程度が適当であり、また、電着の時間は0.01~5秒間程度が適当である。あるいは、電圧を1.8~2.2V程度(電圧勾配に換算して3.6~4.4V/cm)と低めにし、電着の時間を8~12秒程度にすることにより、電着層の厚さを100nm程度に薄くすることが可能であり、このような条件を採用することが、極めて微小な開口部(直径0.2~10nm、特に0.2~1nm)の作製に有効であることがわかった。また、電着は、室温下で行うことができる。なお、電圧を一定にして電着時間を変えることにより電着層の厚さを調節することができる。好ましい電着層の厚さは上記した通りである。また、導体層には、銀ペースト(銀粉とエポキシ樹脂との混合物)を用いて導線を接着することができ、この導線を介して電圧をかけることができる。
【0024】
以上の工程により、光透過性基材、その上に形成された導体層及び該導体層上に形成された絶縁層を有するプローブが得られる。次に、プローブの先端部から絶縁層を除去する。これは次のようにして行うことができる。
【0025】
すなわち、上記のとおり形成した絶縁層を、水洗し、絶縁層を加熱する。加熱はオーブン内で行うことができる。加熱条件は、特に限定されないが、通常、80℃~180℃で20分間~1時間程度が好ましい。あるいは、70℃~90℃で20分間から40分間加熱し、次いで、130℃~170℃で10分間~20分間乾燥させることにより、電着で形成した絶縁層を乱すことなく安定に乾燥させることができ、これが極めて微小な開口部(直径0.2~10nm、特に0.2~1nm)の作製に有効であることがわかった。加熱処理により、絶縁層が僅かに収縮し、強度的に最も弱い、先端部が破れて導体層の先端部が露出し、微小な導体層露出部が形成される。ここで、プローブの基材が先鋭化されて、プローブ先端にかけてテーパーとなっている部分とテーパーとなっていない部分の境界と、プローブの最先端部の外周以外は角を持たず、滑らかに形成されることで、その上に形成される導体層も角を持たず滑らかに形成されるので、絶縁層の収縮により、先端部以外の部分が破れて露出してしまうことがない。
【0026】
なお、このようにして絶縁層から露出した導体層を一方の電極として上記の電着及び加熱処理を再度行うことにより、さらに微小な導体層露出部(直径10nm以下)を形成することも可能である。なお、この場合には、加熱処理により導体層の先端部が露出するように、電着時間を短くして、電着層の厚さを第1目の電着の場合よりも薄くする。また、絶縁層の厚さができるだけ厚くなるように精密に制御することにより、一段の電着でも直径10nm以下の極めて微小な導体層露出部を形成することが可能である。
【0027】
上記の方法により、プローブの先端に極めて微小な電極が形成される。これをそのままカンチレバーとして用いることもできるが、微弱な光を照射及び/又は集光できるように、導体層を除去して開口部を設けることも可能である。開口部の形成方法としては、複数の方法が採用できる。
【0028】
第1の方法では、集束イオンビーム(Focused Ion Beam, FIB)でプローブ先端部を切削する。用いるイオンとしては、切削が可能なものであれば何ら限定されず、例えばガリウムイオン等を用いることができる。FIBは微細加工の分野において周知であり、FIBを用いた加工を行なうFIB装置も市販されているので、市販のFIB装置を用いて容易に行うことができる。この方法による場合、絶縁層が存在しない導体層露出部の全体を削り取ってもよいが、さらに微小な開口部を形成したい場合には、円錐状の導体層露出部の頂部近傍ないしは頂部から中部付近までを削り取ってもよい。
【0029】
第2の方法では、サンプル面にプローブを接近させて、プローブとサンプル面間に働く原子間力若しくは接触力又は間欠的な接触力若しくは摩擦力又はトンネル電流のいずれかの作用により、導体層を除去する。この方法自体は、近接場光学顕微鏡のプローブ作製に常用されている方法である(特許文献3)。
【0030】
なお、上記した方法では、プローブの先端まで導体層及び絶縁層を形成し、次いで、プローブ先端部の絶縁層を除去するが、この方法に代えて、導体層をプローブの先端部に形成しない方法を採用することもできる。この方法によれば、導体層がプローブ先端部に形成されないので、当然ながら絶縁層もプローブ先端部には形成されず、このため、絶縁層を後から除去しなくてもプローブ先端部に開口部が形成される。プローブの先端部に導体層を形成しない方法としては、いわゆる斜め蒸着法(特許文献4)を採用することができる。この方法は、金属の蒸着源を配置する位置を工夫することにより、プローブの先端部に金属が蒸着されないようにする方法であり、近接場光顕微鏡のプローブ作製に常用されている方法である。
【0031】
なお、上記製造方法において、前述の第1および第2の開口形成方法で開口を設ける場合には、絶縁層を電着後、加熱により絶縁層を収縮させて先端に導体層を露出させた後開口作製を行ったが、加熱により導体層を露出させる工程を省略し、先端に絶縁層が設けられたままで、第1または第2の開口作成方法により、絶縁層と導体層を除去してもよい。また、開口を作成しない場合には絶縁層のみ除去してもよい。
【0032】
ストレート型のプローブも、上記したカンチレバーと同様な方法により製造することができる。ただし、当然ながら、先端部を鉤状に湾曲させることは不要であり、また、上記した反射面を作製する工程も省略することができる。
【0033】
本発明のカンチレバーは、原子間力顕微鏡のカンチレバーとしても機能するものであるから、通常、カンチレバーの変位を光てこにより検出するための光反射面が、その背部(図1における水平部分の上面)に配置される。光反射面は、別途、光反射板を設けることにより配置することもできるし、上記した導体層を研磨して形成することもできる。導体層を研磨して光反射面とする場合には、絶縁層も研磨等によりを除去するか、又は、電着液に浸漬せずに絶縁層を形成しなかった領域を研磨して研磨面とすることができる。さらに、研磨面上に被膜した絶縁層を光の反射面として利用したり、絶縁層を透過させて導体層の面で光を反射させることもできる。
【0034】
なお、光反射面は必ずしも研磨面である必要はない。また、変位の検出は光てこ法に限定されず、例えばカンチレバーに電気的な抵抗体を設けてカンチレバーが変形した場合のひずみによる抵抗値変化により変位検出を行ってもよい。
【0035】
また、ストレート型のプローブを用いる場合には、試料表面と平行な方向にプローブ先端を加振してプローブの長軸に垂直な方向からレーザ光を照射してプローブで遮られる光の影による強度変化により振幅を検出したり、あるいは、水晶振動子などの圧電体にプローブを固定し、圧電体から出力される電流変化により振幅の検出を行ってもよい。
【0036】
本発明は、上記した本発明のカンチレバー又はストレート型のプローブを具備する走査型プローブ顕微鏡をも提供する。上記した本発明のカンチレバー又はストレート型プローブを用いることにより、原子間力顕微鏡、近接場光学顕微鏡及び電気化学顕微鏡の機能を兼備した走査型プローブ顕微鏡を構築することができる。上記の通り、原子間力顕微鏡と近接場光学顕微鏡を兼備した走査型プローブ顕微鏡は、例えば特許文献1に記載されているように公知である。本発明では、プローブ先端に露出する前記導体層を作用電極として用いると共に、対極及び参照電極を配置した溶液中で試料を観察することにより、試料近傍で起きる化学反応等に基づく電気化学的な変化を検出することができる。プローブ先端に露出する上記導体層を作用極として用いるためには、該導体層を配線に接続する必要があるが、この接続は、プローブの先端部において行なう必要はなく、先端から離れた位置で前記導体層に接続することができる。なお、本発明の走査型プローブ顕微鏡は、原子間力顕微鏡、近接場光学顕微鏡及び電気化学顕微鏡の機能を兼備していることが、本発明のカンチレバー又はストレート型プローブの性能を最大限に利用する点で好ましいが、これら3種類の顕微鏡の機能を兼備する必要はなく、例えば、原子間力顕微鏡と電気化学顕微鏡の2種類の顕微鏡の機能を兼備するものであってもよい。なお、ここで、原子間力顕微鏡とは、カンチレバー型のプローブを利用して、試料に近接した場合のカンチレバーのたわみ量を測定してプローブと試料表面の距離制御を行う方法と、カンチレバー型のプローブを加振して試料に近接させて、試料とサンプル間に働く原子間力や間欠的な接触力による振幅や位相の変化によりプローブと試料表面の距離制御を行う方法、さらには、ストレート型プローブを利用して、試料表面と平行な方向にプローブ先端を加振してサンプル先端にかかる摩擦力や原子間力、吸着層による抵抗などに起因する振幅や位相の変化により試料表面の距離制御を行う方法を含んだ総称として用いている。
【0037】
なお、上記のように、近接場光学顕微鏡の機能を使わずに、原子間力顕微鏡と電気化学顕微鏡の機能を兼備した走査型プローブ顕微鏡として使用する場合には、必ずしも先端に開口を作製する必要はなく、好ましくは、プローブの先端は導体層で覆われており、絶縁層を電着後、絶縁層の収縮により先端の導体層を露出させる。基材を先鋭化する場合に近接場光学顕微鏡に用いる場合よりもより先端の直径を30nm以下までさらに尖らせることが可能で、また、遮光性能を付加する必要がないので遮光膜を兼ねた導体層の膜厚を5nm~100nm程度まで薄くすることが可能となり、形状像の分解能を向上させることができる。
【0038】
なお、原子間力顕微鏡と電気化学顕微鏡に機能を機能限定した場合でも、FIBによる加工や、サンプル面にプローブを接近させて、プローブとサンプル面間に働く原子間力若しくは接触力又は間欠的な接触力若しくは摩擦力又はトンネル電流のいずれかの作用により、導体層を除去する方法により、絶縁層と導体層を同時に除去し導体層を露出させてもかまわない。
【0039】
原子間力顕微鏡、近接場光学顕微鏡及び電気化学顕微鏡の機能を兼備した本発明の走査型プローブ顕微鏡の好ましい一例の模式図を図3に示す。図3中、参照番号10がベース、11がXYZスキャナ、12が試料ホルダ、14が試料、1が本発明のカンチレバー、16が溶液、18がガラス板、20がレーザー照射装置、22が光てこを利用した変位検出部、24がカンチレバーホルダー、26が測定ヘッド部、28が励振用圧電素子、30が光検出器(アバレンシェダイオード又は光電子増倍管)、32がロングパスフィルタ、34が吸収フィルタ、36が励起フィルタ、38が水銀ランプ、40がダイクロイックミラー、42が倒立型蛍光顕微鏡、44が接眼レンズである。光検出器30は、フォトカウンター46に接続され、フォトカウンター46はSPMコントローラ48に接続される。一方、測定ヘッド部26もSPMコントローラ48に接続される。SPMコントローラ48はCRT50に接続され、フォトカウンター46で計測された光及び測定ヘッド部26で計測されたカンチレバーの変位がSPMコントローラ48で処理され、CRTに画像が描かれる。
【0040】
上記した構成は、例えば特許文献1に記載されているような、原子間力顕微鏡と近接場光学顕微鏡を兼備した、公知の走査型プローブ顕微鏡の構成である。本願発明の顕微鏡は、これにさらに電気化学顕微鏡の機能をも兼備したものである。電気化学顕微鏡の機能を兼備させるため、プローブ先端に露出する、上記したカンチレバーの導体層が作用極として用いられる。図3の例では、プローブから離れたカンチレバーの部分に、作用極リード線52が接続されている。なお、作用極リード線52が接続された領域の導体層は、言うまでもなくプローブ先端で露出する導体層と同じ層であり、電気的につながっている。なお、カンチレバーホルダに端子を設けてこの端子を介して導体層に接続してもよい。参照番号54が対極であり、対極リード線56に接続されている。参照番号58が参照電極であり、参照電極リード線60に接続されている。作用電極リード線52、対極リード線56及び参照電極リード線60はポテンシオスタット62に接続され、ポテンシオスタット62は、前記SPMコントローラ48に接続される。作用極と対極54間の電流がポテンシオスタット62により計測され、そのデータがSPMコントローラ48に渡されて、SPMコントローラ48で処理され、CRT50に画像が描かれる。なお、試料ホルダ14の平面図を図4に示す。図4に示すように、図示の例では、対極54は、試料ホルダ12の周縁近傍にU字形に配置され、参照電極58は、U字形の内側に配置されている。なお、作用極、対極及び参照電極をポテンシオスタットに接続して電気化学測定を行うこと自体は周知であり、その情報を画像化することも電気化学顕微鏡の分野において周知である。
【0041】
上記した本発明の走査型プローブ顕微鏡の具体的な使用方法の好ましい1例を以下に記載する。
【0042】
走査型近接場顕微鏡の構成
上記した顕微鏡の例では、走査型近接場顕微鏡部は、ベース上に取り付けられたXYZスキャナと、測定ヘッドに組み込まれたプローブホルダと変位検出機構からなる。
【0043】
距離制御方法(凹凸像の測定)
カンチレバーホルダに取り付けられた、励振用圧電素子により、カンチレバーを共振周波数近傍で加振させながら粗動機構(図示せず)により測定ヘッドをサンプルに近づける。サンプルとプローブ間に原子間力や間欠的な接触力が作用してプローブの振幅や位相が変化し始めたら粗動機構を止める。振幅や位相が一定となるようにZスキャナで距離制御を行う。距離制御を行いながらXYスキャナでラスタスキャンを行い、各々のスキャナに印加する電圧を三次元表示することでサンプルの凹凸像が測定できる。このようにカンチレバーを振動させながら測定を行うことによりサンプルに対するダメージを軽減できて、細胞などの柔らかいサンプルでもサンプルを破壊することなしに測定することが可能である。なお、カンチレバーを振動させずに、コンタクトAFMにより距離制御を行ってもよい。
【0044】
カンチレバーの変位検出、溶液中での測定
カンチレバー背面に半導体レーザを集光させ、反射光を4分割フォトダイオードで受光し光てこ系を構成して変位を検出する。試料面と、カンチレバーホルダに取り付けられたガラス面の間に溶液の膜を作り、光てこの光が散乱しないような構成とすることで液中での測定が可能となる。試料としては、例えば生体細胞などを例示できる。なお、電気化学測定は溶液中で行われるので、例えば光ファイバーのように断面形状が円形材料によりカンチレバーやプローブを作製することで、カンチレバーまたはストレート型のプローブを振動させて距離制御を行う場合に溶液の抵抗による振動減衰が小さくなるので、正確な距離制御が可能となる。また、生体細胞など柔らかなサンプルを測定する場合には、材料となる光ファイバーの直径をエッチングなどで例えば50μm以下まで小さくしてバネ定数を下げることで、サンプルに対するダメージを少なくすることができ、溶液の抵抗をさらに小さくすることもできる。
【0045】
近接場像の測定
試料を予め蛍光染色しておく。カンチレバー末端からレーザ(Arレーザ波長488nmなど)を入射し、プローブ先端からサンプルに照射する。照射された部分から蛍光を発する。この光を対物レンズで集光する。集光された光には(i)励起光(488nm)(ii)蛍光(500~600nm)(iii)光てこの半導体レーザの漏れ光(785nm)が混ざっている。ダイクロイックミラーと吸収フィルタで励起光を取り除く。次に光検出器の前に閾値が650nmのロングパスフィルターを入れ、光てこの光を分離することで蛍光のみを選択的に光検出器に入射させる。検出器に入射した信号は電気信号に変換されて、フォトンカウンターに送られる。プローブとサンプル間の距離を一定に保ちながらラスタスキャンを行い、各ピクセルごとのフォトン数をカウントしSPMコントローラに送り、強度分布を画像化することで近接場イメージングを行うことができる。
【0046】
電気化学像の測定
上記の通り、試料ホルダに、参照電極と対極を設け、プローブ先端を作用極とする。プローブ先端は遮光用の導体層とつながっているので、溶液中にない部分の絶縁膜を剥ぎ取りこの部分に配線を行う(上述)。参照電極、対極、作用極をポテンシオスタットに接続し、電気化学応答をSPMコントローラに送ることで電気化学イメージングを行うことができる。作用極の材料はAu、対極及び参照電極の材料はPtとした。他にもイリジウム、パラジウム、チタン、カーボン、銅、ニッケルなどが使用できる。
【0047】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
(1) カンチレバーの作製
基材として、コアの直径が3.2μm、クラッドの直径が125μmである市販のシリカ光ファイバーを用いた。まず、光ファイバーのクラッド部分に炭酸ガスレーザを集光し、加熱しながら両端に引き伸ばして破断させた。これにより、先端の直径を100nmまで先鋭化した。次にエッチングにより、プローブを更に先鋭化させた。エッチングには、50%フッ酸溶液上にフッ酸の気化防止のためにヘプタンなどの有機溶媒を展開して2相状態とし、その界面より下のフッ酸溶液中で10分間先端を浸漬することによってエッチングを行い先端の直径を約30nmまで先鋭化した。このような方法を用いることにより、プローブ部分は段差や角を持たず滑らかに形成することができた。
【0049】
次に、カンチレバーの先端部を鉤状に湾曲させた。先鋭化された光ファイバーの先端から1.5mmの部分に炭酸ガスレーザーの光を集光して当て、変形させる前を0゜としたとき、77°の鈎状の形状に変形させた。この場合、レーザー光の当たる側がその裏側に対して、熱の吸収量が多いため、軟化にともなうガラスの表面張力によって、光ファイバー先端はレーザー光の当たる方向に折れ曲がっていく。このような方法を行うことにより、カンチレバー部とプローブ部が段差を持たず滑らかに連続して形成することができた。
【0050】
次に、プローブが設けられているカンチレバーの反対側の一部を砥石を用いて機械的に研磨して鏡面化した。この鏡面部分は、上記した光てこによる変位の検出に用いられる。
【0051】
次に、プローブが設けられているカンチレバーの反対側の一部を砥石を用いて機械的に研磨して鏡面化した。この鏡面部分は、上記した光てこによる変位の検出に用いられる。
【0052】
次に、金の導体層を形成した。この導体層は遮光膜を兼ねる。まず、市販の蒸着装置内に鉤状のプローブ部分を蒸着源に対向させてカンチレバーをセットして蒸着を行った。このとき、均一に蒸着膜を形成させるため、プローブ先端を中心にカンチレバーを回転させながら約5分間蒸着した。導体層の厚さはプローブの根元付近で約500nmに形成した。膜厚はプローブのテーパー部分に沿って先端に行くほど薄くなっていき、先端部分は約200nmとなった。
【0053】
このとき、カンチレバー部分の蒸着は不十分であり、光の遮光や導体としての機能しないため2回目の蒸着を行った。いったんカンチレバーを蒸着装置から取り出し、プローブ先端保護のためにマニキュアでコートを行った。そのあと、カンチレバー部分を蒸着源に対向させるように蒸着装置内に固定し、カンチレバーの中心軸を中心に回転させながら約5分間蒸着し、約500nmの膜厚まで金を蒸着した。蒸着後はマニキュアを剥離財で剥離させた。なお、プローブ基材部との密着性を高めるため、下地にクロムなどを蒸着してもよい。
【0054】
次に、銀ペーストを接着剤として用いて、金層に導線を接続した。長さ7 cm の白金線を直径約 1.5 cm のコイル状にして、(株)シミズのアノーディック電着塗料 ELECOAT AE- X(塗膜を形成するポリマーはポリアクリル酸)に浸した。電着は二電極式で行った.すなわち,参照電極、対極用の2本のケーブルで白金線をポテンシオスタットにつないだ。作用電極用ケーブルを、光ファイバーに付けた導線につないだ。コイルの中心に位置するように、金でコーティングした光ファイバーを溶液に浸した。金層を陽極、白金電極を陰極にして、2.0 Vの直流電圧を10秒間印加し、金層上に絶縁性電着塗料層を形成した。水洗後、光ファイバーをオーブンに入れ、150℃、45分間の熱処理を行い、電着塗料膜をしっかりと固化、乾燥させた。この際に電着塗料膜が僅かに収縮して突起先端部が破れ、突起先端部の金層が、絶縁性電着塗料膜から露出した。
【0055】
次に、市販のFIB装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SMI-2200)で光ファイバーの先端を削り、上記の突起を金層ごと削り取り、光ファイバーの端面を露出させて開口部を形成した。なお、当然ながら、金層の端面も露出している。開口部の直径(露出する光ファイバーの直径)は、約100nmであった。
【0056】
(2) カンチレバーの特性の確認
作製されたプローブ先端のサイズを、サイクリックボルタモグラムを測定することにより調べた。すなわち、上記した電着の場合と同様に、対電極としての白金コイル中に、作成されたプローブを挿入し、10mMのK3[Fe(CN)6]溶液中に浸し、スキャン速度10mV/秒で電圧をかけ、流れる電流の大きさを調べた。結果を図5に示す。
【0057】
先端を円形と仮定すると、定常限界電流値から、電極の半径(露出する基材の半径と露出する金層端面の厚さの和)iTはiT=4nFDCrで求められる。ここで、nは電子数、Fはファラデー定数(96485c)、Dは電極面の拡散定数(7.32 x 10-10A)、CはK3[Fe(CN)6]濃度(10mM)であるから、これらを代入すると、電極の半径iTは263nmであった。この測定値は、開口部の基材の直径が約100nm(すなわち、半径では約50nm)、金層の厚さが約200nmであることとよく一致していた。
【0058】
(3) 分解能評価
上記の通りに作製した本発明のカンチレバーを、原子間力顕微鏡と近接場光顕微鏡を兼用する市販の走査型プローブ顕微鏡にカンチレバーとして組み込み、さらに、図3及び図4に示すように、プローブの金層を作用極とし、試料ホルダー内に対極と参照電極を配置し、これらをポテンシオスタットに接続し、ポテンシオスタットをSPMコントローラに接続した。この顕微鏡を用いて、幅1μmの金の畝部と石英の谷部とが交互に縞模様を形成して配置される櫛形電極を観察した。試料は、10mMメチルヒドロキシフェロセン溶液(KClを500mM含む)内に置き、印加電圧を500mV(Ag/AgCl)として、プローブを走査しながら作用極と対極間の電流を測定した。一方、原子間力顕微鏡及び近接場光顕微鏡としての測定は、同時にそれぞれ、常法により行った。
【0059】
結果を図6に示す。図6中、(a)が原子間力顕微鏡部により測定された形状像、(b)が近接場光顕微鏡部により測定された近接場像、(c)が電気化学顕微鏡部により測定された電気化学像である。
【0060】
これらの結果から、本発明のカンチレバーを走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーとして用いることにより、原子間力顕微鏡による形状像、近接場光顕微鏡による近接場像及び電気化学顕微鏡による電気化学像を同時に観察できることが明らかになった。

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5