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明細書 :新規なセラミダーゼ及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4953317号 (P4953317)
登録日 平成24年3月23日(2012.3.23)
発行日 平成24年6月13日(2012.6.13)
発明の名称または考案の名称 新規なセラミダーゼ及びその利用
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   9/80        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C08J  11/18        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 9/80 ZABA
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C08J 11/18
請求項の数または発明の数 14
全頁数 16
出願番号 特願2007-534383 (P2007-534383)
出願日 平成18年9月4日(2006.9.4)
国際出願番号 PCT/JP2006/317422
国際公開番号 WO2007/029630
国際公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
優先権出願番号 2005258833
優先日 平成17年9月7日(2005.9.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年7月8日(2009.7.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】大滝 真作
【氏名】高橋 徹
【氏名】田中 崇裕
【氏名】藤田 仁
【氏名】山形 洋平
【氏名】阿部 敬悦
【氏名】長谷川 史彦
【氏名】五味 勝也
個別代理人の代理人 【識別番号】100100181、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 正博
審査官 【審査官】池上 文緒
参考文献・文献 国際公開第2004/038016(WO,A1)
Appl. Microbiol. Biotechnol. (Jun 2005) vol.67, no.6, p.778-788
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12N 9/80
PubMed
BIOSIS/WPI(DIALOG)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)または(b)の蛋白質であるセラミダーゼ:
(a) 配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b) 配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつセラミダーゼ活性を有する蛋白質。
【請求項2】
以下の(a)または(b)の蛋白質をコードするDNA:
(a) 配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b) 配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつセラミダーゼ活性を有する蛋白質。
【請求項3】
以下の(a)または(b)のDNA:
(a) 配列番号1に示される塩基配列からなるDNA、
(b) 配列番号1に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつセラミダーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
【請求項4】
cDNAである請求項2または3記載のDNA。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載のDNAを含む組換え用DNA。
【請求項6】
組換え用DNAがプラスミドベクターである、請求項5記載の組換え用DNA。
【請求項7】
請求項5叉は6記載の組換え用DNAを有する形質転換体。
【請求項8】
形質転換体の宿主が原核微生物叉は真核微生物であることを特徴とする、請求項7記載の形質転換体。
【請求項9】
原核微生物がエシェリシア属、バチルス属、叉はストレプトマイセス属であることを特徴とする、請求項8記載の形質転換体。
【請求項10】
真核微生物が、酵母、叉は、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ属、リズプス属、メタリチウム属、アクレモニウム属、及びムコール属からなる群から選択される真核糸状菌であることを特徴とする、請求項8記載の形質転換体
【請求項11】
宿主がアスペルギルス・オリゼ叉はアスペルギルス・ソーエであることを特徴とする、請求項10記載の形質転換体。
【請求項12】
更にエステラーゼをコードするDNAを含む組換え用DNAを有する、請求項7~11のいずれか一項に記載の形質転換体。
【請求項13】
エステラーゼがリパーゼまたはクチナーゼである、請求項12記載の形質転換体。
【請求項14】
請求項7~13のいずれか一項に記載の形質転換体を培地に培養し、培養物からセラミダーゼを採取することを含む、セラミダーゼの製造法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なセラミダーゼ、該酵素をコードするDNA(遺伝子)、及び該酵素を利用するプラスチック分解方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
資源の有効利用の為には、不溶性かつ疎水性のために難分解性であるプラスチックや化学繊維を分解してモノマーやオリゴマーとして回収再利用することが望まれる。それらにはウレタン結合またはアミド結合が種々の割合で含まれている場合が多く、回収再利用のためには効率良くウレタン結合またはアミド結合を切断することが必要であり、そのような反応を触媒する酵素が切望されている。
【0003】
これまでにウレタン結合やアミド結合を含むプラスチックや化学繊維を分解する微生物の報告はある(非特許文献1又は2)。しかしながら、それらに記載された微生物由来の酵素はウレタン結合部分を分解するものではなく、ポリエステル部位やポリエーテル部位を分解するものである。
【0004】
プラスチック等の固体に直接作用してウレタン結合部位を直接切断する酵素は殆ど知られていない。ウレタン結合を分解する細菌も極めて稀に報告されているが、その殆どが低分子ウレタンの分解菌であり(特許文献1~5)。また、ロドコッカス属に属するウレタン結合分解能を有する微生物に関する報告もあるが(特許文献6)、該微生物により実際に分解されているのは低分子量のウレタン化合物である。

【非特許文献1】Microbial degradation of polyurethane, polyester polyurethanes and polyether polyurethanes. T. Nakajima-Kambe, Y. Shigeno-Akutsu, N. Nomura, F. Onuma, T. Nakahara. Appl. Microbiol. Biotechnol. , 51, 134-140 (1995)
【非特許文献2】Biodegradation of polyurethane: a review, G. T. Howard. Int. Biodet. Biodeg., 49, 245-252 (2002)
【特許文献1】特開平01-240179
【特許文献2】特開平01-300892
【特許文献3】特開平03-175985
【特許文献4】特開平04-325079
【特許文献5】特開平09-192633
【特許文献6】特開2004-261103
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく、ウレタン結合を含有するプラスチックに微生物のうち疎水性固体表面での生育能力の高いカビに由来する、高分子物質に含まれるウレタン結合及び/又はアミド結合を分解する新規な酵素を取得し、そのような酵素を利用したプラスチックの分解方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は以下の各態様に係るものである。
[1] 以下の(a)または(b)の蛋白質であるセラミダーゼ:
(a) 配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b) 配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつセラミダーゼ活性を有する蛋白質。
[2] 以下の(a)または(b)の蛋白質をコードするDNA:
(a) 配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b) 配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつセラミダーゼ活性を有する蛋白質。
[3] 以下の(a)または(b)のDNA:
(a) 配列番号1に示される塩基配列からなるDNA、
(b) 配列番号1に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつセラミダーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
[4] cDNAである態様2または3記載のDNA。
[5] 態様2~4のいずれか一項に記載のDNAを含む組換え用DNA。
[6] 組換え用DNAがプラスミドベクターである、態様5記載の組換え用DNA。
[7] 態様5叉は6記載の組換え用DNAを有する形質転換体。
[8]形質転換体の宿主が原核微生物叉は真核微生物であることを特徴とする、態様7記載の形質転換体。
[9]原核微生物がエシェリシア属、バチルス属、叉はストレプトマイセス属であることを特徴とする、態様8記載の形質転換体。
「10」真核微生物が、酵母、叉は、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ属、リズプス属、メタリチウム属、アクレモニウム属、及びムコール属からなる群から選択される真核糸状菌であることを特徴とする、態様8記載の形質転換体
[11] 宿主がアスペルギルス・オリゼ叉はアスペルギルス・ソーエであることを特徴とする、態様10記載の形質転換体。
[12] 更にエステラーゼをコードするDNAを含む組換え用DNAを有する、態様7~11のいずれか一項に記載の形質転換体。
[13] エステラーゼがリパーゼまたはクチナーゼである、態様12記載の形質転換体。
[14] 態様7~13のいずれか一項に記載の形質転換体を培地に培養し、培養物からセラミダーゼを採取することを含む、セラミダーゼの製造法。
[15] 態様1記載のセラミダーゼを用いて高分子物質を分解する方法。
[16] 態様1記載のセラミダーゼを用いて高分子物質に含まれるウレタン結合及び/又はアミド結合を分解する方法。
[17] 態様1記載のセラミダーゼとエステラーゼとの組み合わせを用いて高分子物質を分解する方法。
[18] エステラーゼがリパーゼまたはクチナーゼである、態様16記載の方法。
[19] 態様7~13のいずれか一項に記載の形質転換体を高分子物質に接触させることを含む、高分子物質を分解する方法。
[20] 高分子物質がポリウレタン、任意の割合でウレタン結合を含むポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニール、ナイロン、ポリスチレン、デンプン、及びそれらの混合物から成る群から選択されることを特徴と刷る、態様15~19のいずれか一項に記載の方法。
[21] 高分子物質が生分解性プラスチックであることを特徴とする、態様15~19のいずれか一項に記載の方法。
[22] 生分解性プラスチックがポリ乳酸、ポリブチレンコハク酸、ポリブチレンコハク酸・アジピン酸、脂肪族ポリエステル、ポリカプロラクトン、叉はポリハイドロキシ酪酸である態様21記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、数万もの分子量を有する高分子物質中のウレタン結合及び/又はアミド結合を分解する新規なセラミダーゼが麹菌から取得され、そのアミノ酸配列及びそれをコードするDNAの塩基配列が特定され、該酵素を利用したプラスチックの分解方法等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】疎水性カラムに対して強い相互作用を示す麹菌由来のタンパク質の分離の様子を示すSDS-PAGEの写真である。
【図2】セラミダーゼ高発現系の構築の概略を示す。
【図3】セラミダーゼ高発現麹菌株の培養上清を電気泳動したゲルの写真である。
【図4】セラミダーゼによるPBSの分解促進効果を示すグラフである。
【図5】セラミダーゼによるPBS分子内ウレタン結合の減少を示すグラフである。
【図6】BHBの構造を示す。
【図7】セラミダーゼのセラミド蛍光基質の分解の様子を示すグラフである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、「セラミダーゼ」とは、ウレタン結合及び/又はアミド結合を分解する酵素を意味し、従って、本明細書において「セラミダーゼ活性」とは、セラミド、プラスチックや化学繊維等の物質に含まれるウレタン結合及び/又はアミド結合を特異的に分解することができる活性を意味し、具体的には、本明細書中の実施例(7)に記載されたウレタン結合分解、又は、実施例(8)に記載されたセラミド蛍光基質(C12-NBD-セラミド)の分解反応によって測定することが出来る。
【0010】
本発明のセラミダーゼに関して、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、欠失、置換又は付加されるアミノ酸は、好ましくは、同族アミノ酸(極性・非極性アミノ酸、疎水性・親水性アミノ酸、陽性・陰性荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸など)同士が置換されるか、又は、アミノ酸の欠失若しくは付加によって、蛋白質の三次元構造及び/又は局所的電荷状態に大きな変化が生じない、又は、実質的にそれらが影響を受けないようなものが好ましい。又、本発明蛋白質のセラミダーゼ活性が維持されるために、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるセラミダーゼに含まれる機能ドメイン内のアミノ酸は保持されることが望ましい。このような欠失、置換又は付加されるアミノ酸を有する本発明のセラミダーゼは、例えば、部位特異的変異導入法(点突然変異導入及びカセット式変異導入等)、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法、及びPCR法等の当業者に周知の方法を適宜組み合わせて、容易に作成することが可能である。
【0011】
本明細書において、「ストリンジェントな条件下」とは、各塩基配列間の相同性の程度が、例えば、全体の平均で約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上であるような、高い相同性を有する塩基配列間のみで、特異的にハイブリッドが形成されるような条件を意味する。具体的には、例えば、温度60℃~68℃において、ナトリウム濃度150~900mM、好ましくは600~900mM、pH 6~8であるような条件を挙げることが出来る。
ハイブリダイゼーションは、例えば、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987))に記載の方法等、当業界で公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
【0012】
本発明DNAは当業者に公知の方法で調製することが出来る。例えば、実施例に記載されたアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)RIB40株(独立行政法人酒類総合研究所:東広島市鏡山三丁目7番1号、において同番号にて保存され、分譲可能)、又は、市販されているその他の麹菌等の糸状菌の適当な株から実施例で記載した方法によって容易にクローニングすることが出来る。或は、本明細書に記載された本発明DNAの塩基配列又はアミノ酸産配列の情報に基づき、当業者に周知の化学合成、又は、本発明のプライマーを使用したPCRにより増幅して調製することも出来る。従って、本発明のDNAは、ゲノムDNA,cDNA及び合成DNA等の当業者に公知の任意の種類であり得る。
【0013】
当業者に周知の任意の方法に従い、本発明のセラミダーゼをコードするDNAを、プラスミドベクター、ファージベクター、及び各種の混成ベクター等の適当な組換え用DNAに挿入し、こうして得られた発現ベクターを用いて各種の細胞を形質転換することができる。この組換え用DNAは、組換えDNA手法によって取り扱うことが可能な任意のベクターである。これらのベクターは、その導入すべき宿主細胞に依存して適当に選択することが出来る。該ベクターは、宿主細胞の中に導入する際に、宿主細胞のゲノムの中にその全体あるいはその一部がゲノム中の1箇所以上に組込まれることができる。このようなベクターの一例として大腸菌宿主用のpET-12BbやpAUR101、及び、麹菌宿主用のpNEN142等を挙げることができる。
【0014】
本発明の発現ベクターには、典型的には、当業者に公知の、各種プロモーター、エンハンサー及びサイレンサー等の各種調節配列、リボソーム結合部位、シグナル配列、および翻訳開始配列等の各種要素ならびにその他の外来性あるいは内在性タンパク質をコードする遺伝子、各種薬剤耐性遺伝子、栄養要求性を相補する遺伝子等を任意に含むことができる。
【0015】
本発明のセラミダーゼを発現させるに必要なプロモーターは、形質転換によって得られた宿主細胞に依存するが、選択した宿主細胞において、転写活性を有し、かつ宿主細胞に対して相同的または異種的であるタンパク質をコードする遺伝子に由来することができる任意のDNA配列であることができる。尚、これら形質転換体においては各物質の生産誘導の抑制が解除されていることが望ましい。その為には、例えば、本発明のセラミダーゼをコードする遺伝子を構成的発現プロモーター又は各種の誘導型発現プローター等の制御下で発現させることができる。その結果、セラミダーゼが高発現され、細胞表面又は菌体外に多量に生産されプラスチック分解が促進され、更に、有用物質の生産が促進される。
【0016】
本発明においてセラミダーゼをコードするDNAを含むベクターによって形質転換される宿主細胞として、原核微生物、真核微生物、植物細胞、昆虫細胞、卵を含む鳥類細胞、哺乳類細胞等を用いることができる。たとえば、原核微生物の例としてはエシェリヒア属、バチルス属、又は、ストレプトマイセス・グリセウス若しくはストレプトコッカス・セリカラー等のストレプトマイセス属を宿主とすることができる。真核生物としては、サッカロミセス属及びピヒア属等の酵母、アスペルギルス・オリゼ及びアスペルギルス・ソーエ等のアスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属、メタリチウム属、モナスカス属、アクレモニウム属、及びムコール属等の糸状菌、並びに、トリコデルマ属等の担子菌などから選択することができる。昆虫細胞としてはキイロショウジョウバエ、カイコ等の細胞を用いることができる。
【0017】
従って、例えば、原核微生物を宿主とする本発明のクチナーゼ変異体をコードする遺伝子の転写を調節する適当なプロモーターの例として、大腸菌エシェリシア・コリのlac プロモータ、バシルス・リケニフォルミスのα‐アミラーゼ遺伝子(amyL)のプロモータ、バシルス・アミロリクファシエンスのα‐アミラーゼ遺伝子(amyQ)のプロモータを挙げることができる。
【0018】
また、真核微生物を宿主とした際に用いることのできるプロモーターの例として、サッカロミセス・セリビシエのガラクトシダーゼ遺伝子、アスペルギルス・オリゼのタカアミラーゼ遺伝子、エノラーゼ遺伝子、キシラナーゼ遺伝子、ホスホグルコキナーゼ遺伝子、グルコアミラーゼ遺伝子、リゾムコール・ミエハイのアスパラギン酸プロテアーゼ遺伝子、アスペルギルス・ニガーのグルコアミラーゼ遺伝子、リゾムコール・ミエハイのリパーゼ遺伝子などのプロモーターを挙げることができる。
【0019】
本発明のDNAを含む発現ベクター(組換え用DNA)は、例えば、塩化カルシウム法、プロトプラスト‐PEG法、エレクトロポレーション法、Tiプラスミド法、パーティクルガン法、バキュロウィルス法などの公知の任意の方法によって宿主細胞へと導入でき、形質転換体を作成することができる。更に、複数種の組換えDNAを用いるコトランスフェクション法によっても可能である。
【0020】
尚、本発明にかかる形質転換体は、上記ベクターのほかに、任意の外来性あるいは内在性タンパク質をコードする遺伝子を含む別の1つまたはそれ以上の組換え用DNAによって形質転換されることができる。このような遺伝子の例として、国際公開番号WO2004/038016A1パンフレットに記載されているようなクチナーゼ及びリパーゼに代表される各種エステラーゼを挙げることが出来る。
【0021】
上記発現ベクターの代わりに、PCR増幅等により取得される本発明のセラミダーゼをコードする遺伝子を含む適当なDNA断片自体を用いて本発明の形質転換体を得ることも可能である。そのような場合には、かかるDNA断片に加えてさらに適当な緩衝液及びその他の助剤を任意に含む溶液等の組成物として形質転換に使用することができる。
【0022】
本発明のセラミダーゼは、該酵素をコードするDNAを有する形質転換された宿主細胞(形質得転換体)をセラミダーゼの生産に好ましい条件で培養し、該変異体を発現させ、好ましくは、発現させた変異体を細胞外に分泌させ、その宿主細胞および/または培地から回収することにより製造することができる。宿主細胞の培養に用いる培地は、当業者に公知である任意の培地の中から、本発明の形質転換された宿主細胞を増殖させ、本発明のセラミダーゼを発現させるために適当なものを適宜選択することができる。
【0023】
宿主細胞から分泌されたセラミダーゼは、当業者に公知の任意の手段の適当な組み合わせ、例えば、遠心または濾過による培地と細胞の分離、および硫酸アンモニウムの様な塩による培地のタンパク質成分の沈殿、及びこれに続く疎水クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、又はその他のクロマトグラフィーの使用により培地から回収することができる。
【0024】
本発明のセラミダーゼは、ウレタン結合及び/又はアミド結合を特異的に分解する活性を有しているので、ポリウレタン及び任意の割合でウレタン結合を含むポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニール、ナイロン、ポリスチレン、及びデンプン等の高分子物質の分解に有利に使用することができる。
【0025】
高分子物質の好適例として、生分解性プラスチックを挙げることが出来る。一般に、「生分解性プラスチック」とは、「使用状態ではその使用目的において必要とされる充分な機能を保ち、廃棄されたときには土中又は水中の微生物の働きによって、より単純な分子レベルにまで分解されるプラスチック」ともいうべき物質である。分解の程度に基づいて、「完全分解型生分解性プラスチック」と「部分分解(崩壊)型生分解性プラスチック」とに分けられ、更に、材料及び製造方法からは、「微生物生産系」、「天然高分子系」及び「化学合成系」に大きく分けることが出来る。本発明方法では、これらのいずれの種類の生分解性プラスチックも使用することが出来る。
【0026】
本発明方法で分解される生分解性プラスチックの代表的例として、ポリ乳酸、ポリブチレンコハク酸(PBS)、ポリブチレンコハク酸・アジピン酸(PBSA)、脂肪属ポリエステル、ポリカプロラクトン、叉はポリハイドロキシ酪酸を挙げることが出来る。これらの物質は通常、数万の分子量を有するものである。
【0027】
更に、国際公開番号WO2004/038016A1パンフレットに記載されているような、クチナーゼ及びリパーゼに代表される各種エステラーゼを本発明のセラミダーゼと組み合わせて生分解性プラスチック等の高分子物質をより効率的、高収率で分解することが可能となる。
【0028】
上記方法において、プラスチックの分解反応は、目的・規模などに応じて、当業者に公知の任意の反応系(例えば、水溶系及び固相系)及び反応条件(溶媒、培地、温度及びpHなど)を適宜選択して実施することが出来る。
【0029】
生分解性プラスチック等の高分子物質を本発明方法で加水分解する際に用いられる溶媒としては、水、緩衝液、有機溶媒と水、あるいは、有機溶媒と緩衝液の混合物が挙げられる。これらの溶媒には、必要に応じ、界面活性剤、有機物、無機物等を添加することができる。溶媒には、pHを安定させ、加水分解効率を向上させるために、緩衝剤を添加することが好ましい。溶媒のpHは、好ましくは6-10、より好ましくは7-9の範囲に維持する。
【0030】
本発明の分解方法において、本発明のセラミダーゼ、又は、それと上記エステラーゼを培養系に共存させることにより、プラスチックを分解することが出来る。これらの物質は微生物自体により産生されたものでも良いし、それらに加えて、更に培養系の外部より添加することが可能である。添加の量及び割合・添加の時期等の諸条件は当業者が適宜選択することが出来る。これらの物質は必ずしも同時に添加する必要はなく、方法の各段階で逐次的に添加することも可能である。
【0031】
或いは、本発明の分解方法において、上記の形質転換体の培養系に分解したい高分子物質に共存させ、形質転換体を該物質に接触させることによってプラスチックを分解することが可能である。この方法は、例えば、プラスチック乳化液を含む液体培養系及びプラスチック固型ペレット又はプラスチック粉体等を使用する固体培養系等の当業者に公知の任意の培養系において行うことが出来る。
【0032】
本発明方法において、セラミダーゼ及びエステラーゼをコードする遺伝子を夫々別の微生物に導入して、こうして得られた複数種類の形質転換体を用いて反応させることもできる。尚、本発明の形質転換体において導入される、これら酵素をコードする遺伝子は一種類とは限らず、夫々、複数種類の酵素遺伝子で組換えることも可能である。複数種類の微生物を使用する場合には、これら複数種類の微生物を同時に培養する共培養系で実施したり、又は、本発明方法が複数の連続的な培養段階から構成されており、その各段階において、夫々前の段階で得られた培養液に更に異なる微生物を逐次的に作用させて処理することも可能である。
【0033】
上記反応における、形質転換体の培養条件(培地、温度及びpHなど)は、当業者に公知の条件から宿主の種類等に応じて適宜選択することが出来る。更に、上記国際公開に開示されているような、当業者に公知の任意の界面活性物質若しくはバイオサーファクタントを、例えば外部より添加することによって反応系に共存させ、それらの存在下で高分子物質の分解を更に促進することも可能である。
【0034】
本発明の分解方法によって、高分子物質が分解され、可溶化した構成成分モノマー若しくはそれらが複数個重合したオリゴマー、又は、それらの塩を回収することができる。ここで、構成成分モノマーとは、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート-コ-アジペート、ポリヒドロキシブチレート、及び/又は、ポリカプロラクトンを重縮合、共重合、開環重合等により合成する際の原料となるモノマーのことであり、脂肪族カルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、環状エステル等が含まれる。
【0035】
上記培養系において、上記の高分子物質は分解された可溶化した構成成分モノマー若しくはそれらが複数個重合したオリゴマー等の物質自体が形質転換体の唯一の栄養源(炭素源・窒素源)として消費されることもある。或いは、他の炭素源、窒素源を別途、培養系に添加することも出来る。例えば、炭素源としてはグルコース等の各種糖類、窒素源としては有機窒素源、例えばペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーン・スチープ・リカー等、無機窒素源、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等を含有することができる。更に所望により、培地中には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の陽イオンと硫酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン等の陰イオンとからなる無機塩類を含まれていてもよい。さらに、ビタミン類、核酸類等の微量要素を含有されることもできる。
【0036】
更に、本発明のセラミダーゼを用いる全ての方法において、分解の対象となる高分子物質は、所謂「複合材料」の一構成要素として含まれているものでもよい。ここで、「複合材料」とは一般的に2種類以上の異なる物質から構成されている材料であり、例えば、プラスチックと各種金属及びその他の無機物質から構成されているものがある。このような複合材料は各種産業素材として多方面で各種の目的に利用されている。
【0037】
従って、上記の方法によって、例えば、プラスチックを含む複合材料から、プラスチック部分を選択的に分解して、プラスチックをモノマー又はオリゴマーとして回収し、一方で、プラスチックを実質的に含まない金属等のその他の部分を回収することが出来る。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に即して本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの記載によって何等制限されるものではない。尚、実施例における各種遺伝子操作は、Current protocols in molecular biology (edited by Fredrick M. Aausubel et al., 1987) に記載されている方法に従った。尚、以下の実施例で用いた麹菌アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)RIB40株は、独立行政法人酒類総合研究所(東広島市鏡山三丁目7番1号)より分与可能である。
【0039】
(1)麹菌による PBSA 分解産物から疎水性担体吸着タンパク質の分離
1 x 106 個胞子 / ml となるように麹菌アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)RIB40株の胞子懸濁液を 3 リットル 容坂口フラスコ内の1 (w/v %) PBSA 乳化液を唯一の炭素源とした Czapek-Dox 培地1リットルに接種した。30℃にて7日間振盪培養し、その培養液をMIRACROTH (CALBIOCHEM(商品登録))で濾過し菌体を除いた。その濾液を20 % の硫酸アンモニウムで飽和させ1時間氷冷し、10,000×g 、4℃にて30分間遠心分離による沈殿を除去した。その上清を10 mM Tris-HCl 緩衝液、 pH 8.0、 20 % 飽和硫酸アンモニウムで飽和させた Octyl-cellulofine type-S (生化学工業) に供した後、1リットルの精製水でカラムを洗浄した。洗浄後のカラムを0-70 % エタノールの直線勾配で溶出した。
【0040】
各溶出フラクション 0.8 ml に 0.2 ml の 100 % (w/v) トリクロロ酢酸を加え、よく混合した後、氷中に 20 分間静置した。これらのサンプルを 15,000 x g、4 ℃、20 分間遠心分離し、上清を完全に除いた後、 15 μl の SDS 化溶液{5 % (w/v) SDS、5 % (v/v) 2-メルカプトエタノール、0.12 M Tris-塩酸緩衝液(pH 8.8)、0.05 % (w/v) ブロモフェノールブルー、10 % (w/v) グリセロール}に溶解させた。これらのサンプルを沸騰湯浴中で 5 分間煮沸し、SDS-PAGE に供した。SDS-PAGE後のゲルはシルベストステイン、 PAGE蛋白質用(ナカライテスク)を用いて行い、方法は説明書に記載されている方法に基づいて行った。溶出画分中に約 100 kDa のタンパク質が検出された(図1)。以後の SDS-PAGE と PVDF膜へのブロッティングの方法は Schagger ら(Schagger, H., et al. (1987) Anal. Biochem., 166, 368-379)の方法にしたがった。泳動板は、160mm×160mm, 1mm 厚のものを使用し、電流 10mA 一定で泳動を開始しサンプルのグリセロール前線が泳動板の先端まで泳動したところで電気泳動を止めた。SDS-PAGE 泳動後ゲルないタンパク質を PVDF 膜に転写し、PVDF 膜より目的タンパク質のバンドを切り抜き、アミノ末端領域のアミノ酸配列の解析を行った。その結果、目的タンパク質のアミノ末端領域のアミノ酸配列は「 ASDDSVFLLG 」(配列番号1のアミノ酸配列における第50~59番目のアミノ酸に相当)であった。
【0041】
得られたアミノ酸配列をアスペルギルス・オリゼゲノムデータベースの BLAST 検索を利用して相同検索を行ったところ完全一致した配列が取得できた。得られた配列から分子量が100kDaのタンパク質の全長アミノ酸配列を推定し、日本DNAデータバンク(http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome-j.html)にて相同性検索を行った結果、キイロショウジョウバエ、ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)の中性セラミダーゼ(BAC77635.1)と36%、細胞性粘菌、デクテオステリウム・デスコイディウム(Dictyostelium discoideum)の中性セラミダーゼ(AAB69633.1)と36%、そしてゼブラフィッシュ、ダニオ・レリオ(Danio rerio)の中性セラミダーゼ(BAD69590.1)と36% の相同性を示したことから、本タンパク質は中性セラミダーゼであることが示唆された。
【0042】
(2)麹菌による高発現用ベクターの構築
クローニングされた目的遺伝子の周辺塩基配列を参考に一組のオリゴヌクレオチドを設計した(配列番号2:5‘-GTTGCGCACGtgTTCTAATGTCG-3’、 配列番号3:5‘-GCGATGTCTAgATCCCCGAGTCC-3’)。アスペルギルス・オリゼRIB40株のゲノムDNAをテンプレートとしてPCR反応を行った。増幅反応は、95℃、3 分間鋳型 DNA を変性し、95℃、1分間、55℃、1分間、72℃, 3分間保持するサイクルを30 サイクル行った後、72℃、5分間で完全伸長させ、4℃で保持した。そのPCRによる増幅断片をアガロース電気泳動にて確認を行ったところ約3,269塩基対の増幅が見られた。
【0043】
この増幅断片をPmaC I(宝酒造)及びXba I(宝酒造)で消化し、その消化断片をアガロースゲル電気泳動に供したゲル中より prep A gene (BioRad) を用いて DNA を抽出し、これを挿入 DNA 断片とした。次に塩基配列中にグルコアミラーゼのプロモーター配列 (P-enoA142) を有するプラスミド pNEN142 DNA 5 μg をPmaC I及びXba Iで消化し、定法によりフェノール抽出、エタノール沈殿処理をおこなった後、アルカリフォスファターゼ(宝酒造)により 5’ 末端のリン酸を除去した。この反応液を定法によりフェノール抽出、エタノール沈殿処理をおこなった後 TE に溶解したものをベクター DNA 溶液とした。次に、ベクター DNA 1 μg と挿入 DNA 断片 1.5 μg を T4 DNA ライゲース (宝酒造)により連結させ、連結 DNA 溶液を得た。
【0044】
連結 DNA 溶液 10 μl に10 μlの10×KCM(1 M KCl、0.3 M CaCl2、0.5 M MgCl2)、7 μl の30%ポリエチレングリコール(#6000)、73μl の滅菌水を加え、よく撹拌した。これを氷中でよく冷却した後、氷上解凍したコンピテントセル(大腸菌DH5α株:TAKARA)を100μl 加え穏やかに撹拌し、氷中で20分間、続いて室温で10分間放置した。これに、200 μl の LB液体培地を加え、100 μg / ml のアンピシリンを添加したLB平板培地にまき、37℃で一晩培養した。
【0045】
こうして目的のプラスミドDNAを用いて形質転換した大腸菌の単一のコロニーを 3 ml の100 μg / ml のアンピシリンを添加したLB液体培地に植菌し、37℃で一晩振盪培養した。1.5 ml の培養液を2 mlのエッペンドルフチューブに移して15,000×gで1分間遠心分離し、沈殿を100μl の氷冷したTEG(25 mM Tris-HCl、10 mM EDTA、50 mM Glucose、pH 8.0)で懸濁し、これに200 μl の0.2 N NaOH-1% SDS を加えて穏やかに撹拌した後、150 μl の3 M NaOAc pH 5.2 を加えて混合した。これを 15,000×g、4 ℃で5分間遠心分離し上清を回収し450 μl のフェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール(25:24:1)を加えて激しく撹拌した後、15,000×g 、室温で5分間遠心分離し上層を回収した。この溶液に-20 ℃で氷冷した900 μlのエタノールを加えて-20 ℃で10分間放置後、15,000×gで4 ℃で5分間遠心分離した。沈殿を500 μlの70 %エタノールでリンスしたのち、乾燥させ、最後にRNase(100 μg / ml)を含むTE(10 mM Tris-HCl、1 mM EDTA、pH 8.0)50 μlに溶解した。得られたプラスミドをPmaCIとXbaIで切断後、アガロース電気泳動により挿入断片の存在を認め、麹菌形質転換用プラスミドである pNEN-Cer の完成を確認した(図2)。このプラスミド中の挿入DNA 断片を ABI PRISMTM 377 DNA sequencer Long Read (PE Biosystem) のプロトコールに従い、ABI PRISMTM 377 DNA sequencing system (PE Biosystem) にて解析した。
【0046】
(3)セラミダーゼ高発現麹菌の作成
アスペルギルス・オリゼの形質転換はプロトプラスト-PEG法を改良した方法を用い、形質転換するプラスミドDNAは上記で作製したpNEN-Cer及び pNEN142 を用いた。これらのプラスミドDNA10μgをBamHIで完全消化し、定法によりフェノール抽出、エタノール沈澱処理を行った後 10μlのTEに溶解し形質転換用DNA溶液とした。
【0047】
アスペルギルス・オリゼ niaD300 株(RIB40株由来の硝酸還元酵素遺伝子(niaD)欠損変異株:独立行政法人酒類総合研究所:東広島市鏡山三丁目7番1号、において同番号にて保存され、分譲可能)の胞子懸濁液をYPD液体培地に添加し、30℃ 、12時間振盪培養した。培養液よりガラスフィルターを用いで集菌した。菌体を50ml容の遠心チューブに移し、10mlのプロトプラスト化溶液(0.6M KCl、 0.2M NaH2PO4、 pH 5.5、 5mg/ml Lysing enzyme (Sigma Chemical Co.)、 10mg/ml Cellujase Onozuka R-10 (Yakult Pharmaceutical Ind.Co.,Ltd.)、 10mg/ml Yatalase (TaKaRa) )を加え懸濁し、30℃90 rpm、 3 時間振盪しプロトプラスト化反応を行った。滅菌した MIRACLOTH(CALBIOCHEM) にて濾過し、濾液中のプロトプラストを 3,000 x g , 4℃ , 5 分間遠心分離することで沈澱として得た。1.2M ソルビトール、 50 mM CaCl2、 Tris-HCl buffer、 pH7.5 にて3 回プロトプラストを洗浄し、3000 x g、 4℃ , 5 分間遠心分離することで沈澱として得た。このプロトプラストを1 x 109個プロトプラスト/mlになるように 1.2M ソルビトール , 50mM CaCl2、 Tris-HCl buffer、 pH7.5 で懸濁した。プロトプラスト懸濁液100μlに前述の形質転換用プラスミドDNA溶液 各10μl と 12.5μl の SolI (50 (w/v%) PEG♯4000、50mM CaCl2、 10 mM Tris-HCl buffer、 pH7.5を加えよく混合し、氷中で30 分間放置した。次にこの混合液を 50 ml 容の遠心チューブに移し、1mlのSolIを加え混合した後、2 mlの 1.2M ソルビトール、50 mM CaCl2、 Tris-HCl buffer、 pH7.5を加えよく混合した。55℃に温めておいた Czapek-Dox 軟寒天培地にプロトプラスト懸濁液を加え混合し、Czapek-Dox 寒天培地に重層した。その後、30℃ で胞子を形成するまで培養した。
【0048】
胞子形成後、白金針にて分生子柄をかきとり、0.01%(v/v%) Tween80 に懸濁し、この懸濁液を希釈し、Czapek-Dox 寒天培地に広げ 30℃ で培養することを繰り返し単胞子分離した。単胞子分離の確認は Hondel 法 (胞子 PCR 法)を改変しておこなった。白金針にて 200μl の YPD 培地が入った 1.5ml 容マイクロチューブに分生子を添加し、30℃ で 40 時間培養した。培養菌体を新しい 1.5ml 容マイクロチューブに移し、50 μl のプロトプラスト化溶液 0.8M KCl、 10mM クエン酸、 pH6.5、 2.5mg/ml Lysing enzyme (Signa Chemical Co.)、 2.5mg/ml Yatalase (TaKaRa) ) を加えて懸濁し、37℃ で一時間放置し、 5分間以上氷上に放置し菌体を沈澱させた。この上清 5 μl を鋳型として PCR の反応系に用いた。pNEN-CerとpNEN142 の胞子 PCR 用のプライマーとして配列番号4:5’-CTTCCGTCCTCCAAGTTAGTCGA-3’ と 配列番号5:5’-GTAGAATCACGAATGAGACCTTTGACGACC-3’ の 2 種のオリゴヌクレオチドを合成した。PCR 用装置は PCR Thermal Cycler PERSONAL (宝酒造) を用いた。ポジティブコントロールとして形質転換に使用にしたプラスミド DNA を鋳型とした。増幅反応は 95℃、 3 分間鋳型 DNA を変性し、 94℃ 1 分間、 55℃ 1 分間、 72℃ 3 分間保持するサイクルを 30 サイクルおこなった後、 72℃、5分間で完全伸長させ4 ℃ で保持した。得られた PCR 増幅断片をアガロース電気泳動に供したところ、ポジティブコントロールと同じ位置に PCR 断片の増幅が確認され、その結果より、麹菌の染色体 DNA 上に P-enoA142 プロモーター配列下流にセラミダーゼ遺伝子(配列番号1)の挿入された配列の存在が確認され、pNEN142 もまた形質転換されたことが確認された。
【0049】
(4)セラミダーゼ発現の確認
形質転換されたセラミダーゼ高発現麹菌とセラミダーゼ遺伝子を挿入していない麹菌(pNEN142)を 3 ml のYPM 培地 ( 1 (w/v%) 酵母エキス , 2 (w/v%) ペプトン , 2 (w/v%) マルトース) に1 x 106 胞子/ml 濃度で植菌し、30℃ , 24 時間振盪培養した。培養後、ガラスフィルターで菌体を濾過し、培養上清を得た。培養上清 0.2 ml に対して 50 μlの 100 (w/v%) 冷トリクロロ酢酸を加え、よく混合した後、氷中に 20 分間放置した。サンプルを 15,000 x g , 4℃ , 20 分間遠心分離し上清を完全に除いた後、沈澱を 15μl のSDS化溶液に溶解させたあと、沸騰湯浴中に5分間放置し SDS化を行い SDS-PAGE に供した。その後、電気泳動したゲルをPVDF膜に転写し、PVDF膜上より 100 kDa の断片を切り抜き、そのままアミノ末端アミノ酸配列の解析をおこなった。セラミダーゼ高発現麹菌でのみ発現しているタンパク質のペプチド配列の解析の結果、アミノ末端領域のアミノ酸配列が「NTEFA 」であり、セラミダーゼの推定アミノ酸配列(配列番号1のアミノ酸配列における第46~50番目のアミノ酸)と完全一致したためセラミダーゼの高発現が確認された(図3)。
【0050】
(5)麹菌セラミダーゼの精製
セラミダーゼ高発現株の胞子を1×106 個胞子/ml になるように、 1リットルの YPM 培地を入れた3リットル容坂口フラスコに接種し 30℃で 24 時間培養した。培養液を MIRACLOTH (CALBIOCHEM) にて濾過し、培養上清を得た。培養上清に40% 飽和となるように硫酸アンモニウムを加えた後、10,000 x g , 4℃, 40 分間遠心分離し、得られた上清画分を得た。上清画分を 10 mM トリス-塩酸緩衝液, pH 8.0、 40 % 飽和硫安にて平衡化したOctyl-cellulofine type-S(生化学工業)に供した後、1リットルの精製水でカラムを洗浄した。洗浄後のカラムを0-70 % エタノールの直線勾配で溶出した。溶出させた全画分を SDS-PAGEに供し、100 kDa のセラミダーゼが含まれた画分を回収した。回収した画分を 10 mM Tris-HCl 緩衝液 (pH 8.0) で透析し、同緩衝液で平衡化した DEAE-cellulofine A-500 に供し、吸着画分を NaCl、 0-0.5M の直線勾配で溶出させた。回収した全画分を SDS-PAGE に供し、銀染色により 100 kDa であるセラミダーゼの単一バンドが確認されたため、これをセラミダーゼの精製標品とした。精製されたセラミダーゼをミリQ水に対して透析を行った後凍結乾燥を行い、セラミダーゼの乾燥粉末を得た。
【0051】
(6)麹菌セラミダーゼの PBSA 乳化液分解促進効果
セラミダーゼ精製標品の PBSA 分解について検討を行った。セラミダーゼの凍結乾燥粉末を 50 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)に溶解し、100 μg/ml となるように調整した。また、PBSA 分解酵素である麹菌由来のクチナーゼも 100 μg/ml となるように50 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)に溶解した。96穴マイクロタイタープレートのウェルに50 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)に懸濁してある0.15 (w/v) PBSA 乳化液 100μlを入れ、次の条件で各ウェルに酵素を添加した。
【0052】
(条件1)20 μl の50 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)を添加
(条件2)10 μl の50 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)と 10 μl の100 μg/ml のセラミダーゼ溶液を混合して添加
(条件3)10 μl の50 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)と 10 μl の100 μg/ml のクチナーゼ溶液を混合して添加
(条件4)10 μl の100 μg/ml のクチナーゼ溶液と 10 μl の100 μg/ml のセラミダーゼ溶液を混合して添加
【0053】
各条件の溶液を添加したマイクロタイタープレートを 45 ℃ で保温し、10 分おきに PBSA(分子量:6万) 乳化液の分解度を吸光度 630 nm で検出した。保温前の各ウェルの濁度を 100 % とし、各時間における PBSA の分解度を算出した(図4)。酵素を加えなかった条件1とセラミダーゼのみを加えた条件2ではほとんど PBSA 乳化液の分解は見られなかった。また、PBSA 分解酵素であるクチナーゼを加えた条件3において PBSA の分解が見られた。そして、セラミダーゼとクチナーゼを混合した条件4 において最大の PBSA 分解活性が見られた。セラミダーゼとクチナーゼを混合した場合に、クチナーゼを単独で作用させた場合に比べ、最大で 50 % の PBSA 分解促進効果が見られた。このことより、セラミダーゼはクチナーゼによる PBSA 分解を促進する効果があることが示された。
【0054】
(7)セラミダーゼのウレタン結合分解
ポリブチレンスクシネート(PBS、分子量:6万)のペレット 4 mg を 2 ml の 50 mM Tris 塩酸緩衝液(pH 8.5)に懸濁した。この PBS を含む溶液を二つに分け、片方に 100 μl の セラミダーゼ溶液(100 mg/ml)を加え、もう片方にはコントロールとして 100 μl の 50 mM Tris 塩酸緩衝液(pH 8.5)を加えた。この溶液を 37℃ で 12 時間保温した。それぞれの溶液に 500 μl のクチナーゼ溶液(185 μg/ml)を加え 37 ℃ にて 12 時間保温し、PBS のペレットを完全に分解した。この PBS 分解物 400 μl を排除分子量 1 万のセントリカット超ミニ(クラボウ)に供し限外濾過を行った。この濾過物を逆相クロマトグラフィーに供し、PBS 分解物の変化を観察した。尚、逆相クロマトグラフィーの解析に用いた機種は L-4000 UV Detector(日立製作所)、L-6200 Intelligent Pump(日立製作所)、L-6000 Pump(日立製作所)であり、解析条件は以下の通りである。使用カラム:Shodex C18P-4E(昭和電工)、カラム温度:室温、流速:1.0 ml/min、溶離液A:水 / 酢酸 = 100 / 0.1(v/v)、溶離液 B: アセトニトリル / 酢酸 = 100 / 0.1(v/v)、溶出勾配条件(Gradient B [%])= 5(0 min) → 5(5 min) → 100 (50 min)→ 100(60 min)→ 5 (61 min)→ 5(75 min)。解析の結果、セラミダーゼの添加によって保持時間 22.7 分に出現するピークの減少が観察された(図5)。この 22.7 分に出現するピークは 2分子の1,4 ブタンジオールと1分子の1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートからなるエステル化合物(以下、便宜上「 BHB」(図6)とする)であった。BHB はその分子内に二つのウレタン結合を含む。セラミダーゼはセラミド分子内のアミド結合を分解する作用があるため、構造的に類似している BHB のウレタン結合をセラミダーゼが分解している。
【0055】
(8)麹菌セラミダーゼのセラミド蛍光基質の分解
セラミダーゼの活性はジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、第275巻、第3462-3468頁(2000)に記載されている方法を一部改変して行った。すなわち20 μlの25 mM トリス塩酸緩衝液(pH 7.5)中に 550 pmol の、C12-NBD-セラミド(Avanti Polar Lipids, Inc.)、及び適当量のセラミダーゼを溶解した反応混合液を37℃で30分間インキュベートした。この反応液を沸騰水浴で 5 分間インキュベートすることで反応を停止した。得られた反応液を凍結乾燥し、水分を完全に除いた後、乾固物をクロロホルム/メタノール=2/1(V/V)に溶解し、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール/28%アンモニア水=90/20/0.5(V/V/V))で展開した。その後、Fla-2000(フジフィルム)を用い、励起波長 473 nm、蛍光波長 520 で上記の反応によって生成した C12-NBD-脂肪酸の定量を行った。反応系にセラミダーゼを加えなかった場合はC12-NBD-セラミドのスポットのみが検出されたが、反応系にセラミダーゼを加えた場合において C12-NBD-セラミドの分解物である C12-NBD-脂肪酸のスポットが検出された(図7)。このことより本麹菌セラミダーゼはセラミド分解活性を有することが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のセラミダーゼを用いて、ポリウレタン及び任意の割合でウレタン結合を含むポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニール、ナイロン、ポリスチレン、及びデンプン等の高分子物質、特に生体分解プラスチックを効率的、経済的、かつ簡易に分解することが可能となる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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