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明細書 :高耐熱性,高強度Co基合金及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4996468号 (P4996468)
登録日 平成24年5月18日(2012.5.18)
発行日 平成24年8月8日(2012.8.8)
発明の名称または考案の名称 高耐熱性,高強度Co基合金及びその製造方法
国際特許分類 C22C  19/07        (2006.01)
C22F   1/10        (2006.01)
C22F   1/00        (2006.01)
FI C22C 19/07 H
C22F 1/10 J
C22F 1/00 650A
C22F 1/00 630A
C22F 1/00 691B
C22F 1/00 602
C22F 1/00 651Z
C22F 1/00 651B
C22F 1/00 640B
C22F 1/00 640A
C22F 1/00 630K
C22F 1/00 631Z
C22F 1/00 630C
C22F 1/00 630D
C22F 1/00 614
C22F 1/00 611
C22F 1/00 607
C22F 1/00 683
C22F 1/00 685
C22F 1/00 623
C22F 1/00 624
C22F 1/00 625
C22F 1/00 604
C22F 1/00 641Z
C22F 1/00 694B
C22F 1/00 691C
請求項の数または発明の数 8
全頁数 18
出願番号 特願2007-535454 (P2007-535454)
出願日 平成18年9月5日(2006.9.5)
国際出願番号 PCT/JP2006/317939
国際公開番号 WO2007/032293
国際公開日 平成19年3月22日(2007.3.22)
優先権出願番号 2005267964
優先日 平成17年9月15日(2005.9.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年2月29日(2008.2.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】石田 清仁
【氏名】貝沼 亮介
【氏名】及川 勝成
【氏名】大沼 郁雄
【氏名】佐藤 順
個別代理人の代理人 【識別番号】100108121、【弁理士】、【氏名又は名称】奥山 雄毅
審査官 【審査官】田口 裕健
参考文献・文献 特開昭59-232248(JP,A)
特開昭59-129746(JP,A)
特開昭51-064417(JP,A)
特開昭52-011122(JP,A)
米国特許第04152181(US,A)
特開平06-287666(JP,A)
調査した分野 C22C 19/00-19/07
C22C 30/00-30/06
特許請求の範囲 【請求項1】
質量比でAl:0.1~10%、W:3.0~45%で両者の合計が50%未満であって、残部が不可避的不純物を除きCoの組成を有するCo基合金であって、
前記Co基合金が、fcc構造を有するCo主体のマトリックス相(γ相)と、
原子比でCo(Al,W)のL1構造を有するfcc構造の金属間化合物からなり、前記マトリックス相の粒内に析出する析出相(γ´相)とを有し、
前記Co基合金のマトリックス相(γ相)と前記Co(Al,W)の析出相(γ´相)との格子定数のミスマッチが0.5%以下で、
前記Co(Al,W)の析出相(γ´相)は、粒径が50nm~1μmで、析出量が40~85体積%の範囲にあり、かつ、
前記Co基合金が、800℃におけるビッカース硬度が250以上である
ことを特徴とするCo基合金。
【請求項2】
請求項1に記載のCo基合金において、
前記Co基合金は、
前記Co(Al,W)の析出相(γ´相)と前記マトリックス相(γ相)とに対する分配係数が1未満であって、主に、前記Co(Al,W)のCoと置換するIr、Fe、Cr、Mo、Re、Ruの群の中から選択される少なくとも1つ以上の元素を添加する
ことを特徴とするCo基合金。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のCo基合金において、
前記Co基合金は、
前記Co(Al,W)の析出相(γ´相)と前記マトリックス相(γ相)とに対する分配係数が1以上であって、主に、前記Co(Al,W)のAl及び/又はWと置換するNi、Ti、Nb、Zr、V、Ta、Hfの群の中から選択される少なくとも1つ以上の元素を添加する
ことを特徴とするCo基合金。
【請求項4】
請求項3に記載のCo基合金において、
前記Co基合金は、
前記Co(Al,W)のCo、Al,Wとのいずれとも置換するNiを添加し、
前記Niの添加量と前記Coと置換する元素と前記Al及び/又はWと置換する元素が、50%以下のNi、50%以下のIr、10%以下のFe、20%以下のCr、15%以下のMo、10%以下のRe、10%以下のRu、10%以下のTi、20%以下のNb、10%以下のZr、10%以下のV、20%以下のTa、10%以下のHfであって、合計した量が50%以下で添加する
ことを特徴とするCo基合金。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のCo基合金において、
前記Co基合金は、
結晶粒界に析出する0.001~1%のB及び/又は0.001~2.0%のCを添加する
ことを特徴とするCo基合金。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のCo基合金において、
前記Co基合金は、
マトリックス相(γ相)に析出する0.01~1.0%のY及び/又は0.01~1.0%のLa又はミッシュメタルを添加する
ことを特徴とするCo基合金。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のCo基合金において、
前記Co基合金は、
マトリックス相(γ相)に析出する原子比でCoWのDO19型金属間化合物、原子比でCoAlのB2金属間化合物、炭化物の群から選択される1つ以上の析出物を有する
ことを特徴とするCo基合金。
【請求項8】
高耐熱性、高強度を有するCo基合金の製造方法において、
前記Co基合金の製造方法が、
請求項1ないし7のいずれかに記載のCo基合金を所定形状に成形した後、
1100~1400℃の温度域で溶体化した後、温度域:500~1100℃での時効処理を施して製造する
ことを特徴とするCo基合金の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高温強度が要求される用途や高強度,高弾性が要求される用途等に好適なCo基合金及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン部材,飛行機用エンジン部材,化学プラント部材,ターボチャージャーロータ等の自動車用エンジン部材,高温炉部材等では、高温環境下で強度が必要とされ、優れた耐酸化性が要求される場合もある。そのため、Ni基合金やCo基合金がこのような高温用途に使用されてきた。たとえば、タービンブレード等の代表的な耐熱材料に、L1構造のγ’相:Ni(Al,Ti)で強化されたNiベースのスーパーアロイがある。γ’相は、温度上昇に伴い強度も高くなる逆温度依存性を呈することから、耐熱材料の高強度化には好適である。
耐食性,延性が必要な高温用途では、Ni基合金よりもCo基合金が使用されている。Co基合金は、M23又はMC型炭化物により高強度化される。Ni基合金のγ’相の結晶構造と同じL1型構造を有するCoTi,CoTa等が強化相として報告されているが、CoTiは融点が低くCoTaは高温での安定性に乏しい。そのため、CoTiやCoTaを強化相とする材料では、合金元素の添加によっても使用温度の上限が750℃程度に過ぎない。Ni,Al,Ti等を添加しγ’相〔Ni(Al,Ti)〕により析出強化することも特開昭59-129746号公報で報告されているが、Ni基合金ほど著しい強化が得られていない。γ’相と類似の結晶構造であるE2型金属間化合物を有するCoAlC相を利用した析出強化(特開平10-102175号公報)も検討されているが、未だ実用化に至っていない。
【発明の開示】
【0003】
本発明者等は、Co基合金の強化に有効な析出物について種々調査・検討した。その結果、L1構造の三元化合物Co(Al,W)を発見し、当該三元化合物が有効な強化因子であることを解明した。Co(Al,W)は、Ni基合金の主要な強化相であるNiAl(γ’)相と同じ結晶構造を有し、マトリックスとの整合性が良く均一微細な析出が可能なため高強度化に寄与する。
本発明は、かかる知見をベースとし、高融点のCo(Al,W)を析出分散させて高強度化することにより、従来のNi基合金に匹敵する耐熱性を呈し、組織安定性にも優れたCo基合金を提供することを目的とする。
本発明のCo基合金は、質量比でAl:0.1~10%,W:3.0~45%,Co:実質的に残部を基本組成とし、必要に応じグループ(I)及び/又はグループ(II)から選ばれた一種又は二種以上の合金成分を含んでいる。なお、グループ(I)の合金成分を添加する場合には合計含有量を0.001~2.0%の範囲で、グループ(II)の合金成分を添加する場合には合計含有量を0.1~50%の範囲で選定する。
グループ(I):0.001~1%のB,0.001~2.0%のC,0.01~1.0%のY,0.01~1.0%のLa又はミッシュメタル
グループ(II):50%以下のNi,50%以下のIr,10%以下のFe,20%以下のCr,15%以下のMo,10%以下のRe,10%以下のRu,10%以下のTi,20%以下のNb,10%以下のZr,10%以下のV,20%以下のTa,10%以下のHf
Co基合金は、マトリックスにL1型の金属間化合物〔Co(Al,W)〕が析出した二相(γ+γ’)組織をもっている。グループ(II)の合金成分を添加した成分系では、L1型の金属間化合物は、(Co,X)(Al,W,Z)として表される。式中、XはIr,Fe,Cr,Re及び/又はRu,ZはMo,Ti,Nb,Zr,V,Ta及び/又はHfであり、NiはX,Zの双方に入る。また、添え字は各元素の原子比を示す。
金属間化合物〔Co(Al,W)〕又は〔(Co,X)(Al,W,Z)〕は、所定組成に調整されたCo基合金を1100~1400℃で溶体化した後、500~1100℃の温度範囲で時効処理することにより析出する。時効処理は少なくとも一回,或いは複数回の時効処理が繰返し施される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1は、マトリックス,γ’相に対する各元素ごとの分配係数を示したグラフ
図2は、Co-3.6Al-27.3W合金時効材の組織を示すSEM像
図3は、Co-3.7Al-21.1W合金時効材の二相組織を示すTEM像
図4は、Co-3.7Al-21.1W合金時効材のL1型構造を示す電子回折像
図5は、Co-3.7Al-24.6W合金時効材の応力-歪曲線を示すグラフ
図6は、ビッカース硬さの時効温度依存性を示すグラフ
図7は、ビッカース硬さの時効時間依存性を示すグラフ
図8は、Co-Al-W三元合金,Ta添加Co-Al-W合金,Co-Ni-Al-W合金,Waspaloyの相変化を表すDSC曲線のグラフ
図9は、Co-Al-W三元合金,Ta添加Co-Al-W合金,Co-Ni-Al-W合金,Waspaloyの硬さと温度との関係を示すグラフ
図10は、Mo添加で析出物が球状化したCo-Al-W合金の二相(γ+γ’)組織を示すSEM像
図11は、Ta添加で析出物が立方体形状になったCo-Al-W合金の二相(γ+γ’)組織を示すSEM像
図12は、Ni添加がCo-Al-W合金の変態温度に及ぼす影響を示したグラフ
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明Co基合金は、一般的に利用されているNi基合金に比較して融点が50~100℃程度高く、置換型元素の拡散係数がNi基よりも小さいので、高温での使用中に生じる組織変化が少ない。また、Ni基合金に比較して延性に富んでいるので鍛造,圧延,プレス等で塑性加工でき、Ni基合金よりも広い用途展開を期待できる。
従来から強化相に使用されてきたCoTiやCoTaのγ’相は、γマトリックスに対する格子定数のミスマッチが1%以上であり、耐クリープ性の面から不利である。これに対し、本発明で強化相に使用している金属間化合物〔Co(Al,W)〕は、マトリックスとのミスマッチが大きくても0.5%程度であり、γ’相で析出強化したNi基合金を凌駕する組織安定性を呈する。
更に、Ni基合金の200GPaと比較して220~230GPaと1割以上大きな弾性率を示すことから、ゼンマイ,バネ,ワイヤ,ベルト,ケーブルガイド等、高強度,高弾性が必要な用途にも使用でき、硬質で耐磨耗性,耐食性に優れていることから肉盛り材としても使用できる。
L1型の金属間化合物〔Co(Al,W)〕又は〔(Co,X)(Al,W,Z)〕は、析出物粒径:1μm以下,体積分率:40~85%程度で析出していることが好ましい。1μmを超える粒径では、強度,硬さ等の機械的特性が劣化しやすい。析出量が40%未満では強化が不十分になり、逆に85%を超える析出量では延性劣化の傾向がみられる。
本発明のCo基合金では、L1型金属間化合物〔Co(Al,W)〕又は〔(Co,X)(Al,W,Z)〕を適量分散させるため成分・組成を特定している。基本組成は質量比でAl:0.1~10%,W:3.0~45%,Co:残部である。
Alは、γ’相の主要な構成元素であり、耐酸化性の向上にも寄与する。0.1%未満のAlではγ’相が析出せず、或いは析出しても高温強度に寄与しない。しかし、過剰添加は脆弱で硬質な相の生成を助長するので、0.1~10%(好ましくは、0.5~5.0%)の範囲に含有量を定めている。
Wは、γ’相の主要な構成元素であり、マトリックスを固溶強化する作用も呈する。3.0%未満のW添加ではγ’相が析出せず、或いは析出しても高温強度に寄与しない。45%を超える過剰添加は、有害相の生成を助長する。そのため、3.0~45%(好ましくは、4.5~30%)の範囲でW含有量を定めている。
Co-W-Alの基本成分系にグループ(I),グループ(II)から選ばれた一種又は二種以上の合金成分を必要に応じて添加する。グループ(I)から選ばれた複数の合金成分を添加する場合には合計含有量を0.001~2.0%の範囲で、グループ(II)から選ばれた複数の合金成分を添加する場合には合計含有量を0.1~50%の範囲で選定する。
グループ(I)は、B,C,Y,La,ミッシュメタルからなるグループである。
Bは、結晶粒界に偏析して粒界を強化する合金成分であり、高温強度の向上に寄与する。Bの添加効果は0.001%以上で顕著になるが、過剰添加は加工性にとって好ましくないので上限を1%(好ましくは、0.5%)とする。Cは、Bと同様に粒界強化に有効であると共に炭化物となって析出し高温強度を向上させる。このような効果は0.001%以上のC添加でみられるが、過剰添加は加工性や靭性にとって好ましくないので2.0%(好ましくは、1.0%)をC含有量の上限とする。Y,La,ミッシュメタルは共に耐酸化性の向上に有効な成分であり、何れも0.01%以上で添加効果を発揮するが、過剰添加は組織安定性に悪影響を及ぼすので1.0%(好ましくは、0.5%)を上限とした。
グループ(II)は、Ni,Cr,Ti,Fe,V,Nb,Ta,Mo,Zr,Hf,Ir,Re,Ruからなるグループである。グループ(II)の合金成分は、分配係数の大きな元素ほどγ’相の安定化に効果的である。分配係数Kγ’/γは、Kγ’/γ=Cγ’/Cγ〔ただし、Cγ’:γ’相のx元素濃度(原子%),Cγ:マトリックス(γ)相のx元素濃度(原子%)〕と表され、マトリックス相に含まれる所定元素に対するγ’相に含まれる所定元素の濃度比を示す。分配係数≧1はγ’相安定化元素,分配係数<1はマトリックス相安定化元素である(図1)。Ti,V,Nb,Ta,Moはγ’相安定化元素であり、なかでもTaの効果が大きい。
Ni,Irは、L1型金属間化合物のCoと置換し、耐熱性,耐食性を改善する成分であり、Ni:1.0%以上,Ir:1.0%以上で添加効果がみられるが、過剰添加は有害な化合物相を生成するのでNi:50%(好ましくは、40%),Ir:50%(好ましくは、40%)を上限とした。NiはAl,Wとも置換し、γ’相の安定度を向上させ、より高温までγ’相の安定した存在を可能にする。
FeもCoと置換し、加工性を改善する作用があり、1.0%以上で添加効果が顕著になる。しかし、10%を超える過剰添加は、高温域における組織の不安定化をもたらす原因となるので、添加する場合には上限を10%(好ましくは、5.0%)とする。
Crは、Co基合金表面に緻密な酸化皮膜を作り、耐酸化性を向上させる合金成分であり、高温強度,耐食性の改善に寄与する。このような効果は1.0%以上のCrで顕著になるが、過剰添加は加工性劣化の原因になるので20%(好ましくは、15%)を上限とした。
Moは、γ’相の安定化,マトリックスの固溶強化に有効な合金成分であり、1.0%以上でMoの添加効果がみられる。しかし、過剰添加は加工性劣化の原因になるので15%(好ましくは、10%)を上限とした。
Re,Ruは耐酸化性の向上に有効な合金成分であり、何れも0.5%以上で添加効果が顕著になるが、過剰添加は有害相の生成を誘発させるので添加量上限を共に10%(好ましくは、5.0%)とした。
Ti,Nb,Zr,V,Ta,Hfは、何れもγ’相の安定化,高温強度の向上に有効な合金成分であり、Ti:0.5%以上,Nb:1.0%以上,Zr:1.0%以上,V:0.5%以上,Ta:1.0%以上,Hf:1.0%以上で添加効果がみられる。しかし、過剰添加は有害相の生成や融点降下の原因となるので、Ti:10%,Nb:20%,Zr:10%,V:10%,Ta:20%,Hf:10%を上限とした。
所定組成に調整されたCo基合金は、鋳造品として使用する場合、普通鋳造,一方向凝固,溶湯鍛造,単結晶法の何れの方法でも作製される。溶体化温度での熱間加工が可能で、冷間加工性も比較的良好なため、板材,棒材,線材等への加工も可能である。
Co基合金を所定形状に成形した後、溶体化温度:1100~1400℃(好ましくは、1150~1300℃)に加熱し、加工等で導入された歪を除去すると共に析出物をマトリックスに固溶させ、材質の均質化を図る。1100℃に達しない加熱温度では歪除去や析出物の固溶が進行せず、或いは進行しても長時間を要するので生産的でない。逆に1400℃を超える加熱温度では、一部液相が出現したり、結晶粒界の荒れや結晶粒の粗大成長を促し、機械強度を低下させる原因になる。
溶体化されたCo基合金に時効処理が施される。時効処理では、500~1100℃(好ましくは、600~1000℃)の温度域にCo基合金を加熱し、Co(Al,W)を析出させる。Co(Al,W)は、マトリックスとの格子定数ミスマッチが小さいL1の金属間化合物であり、Ni基合金のγ’相〔Ni(Al,Ti)よりも高温安定性に優れ、Co基合金の高温強度,耐熱性の向上に寄与する。グループ(II)の合金成分を添加した成分系における(Co,X)(Al,W,Z)も同様にCo基合金の高温強度,耐熱性の向上に寄与する。
強化相となるL1構造のγ’相は,Ni-Al二元系の平衡状態図ではγ’NiAl相が安定相となっている。そのため,これを基本系とするNi基合金ではγ’相が強化相として利用されてきたが、Co-Al系の平衡状態図にはCoAlなる相が存在せず,γ’相は準安定相と報告されている。Co基合金の強化相としてγ’相を利用するためには、準安定γ’相を安定化する必要がある。本発明では準安定γ’相の安定化をW添加で達成しており、組成比:Co(Al,W)又は(Co,X)(Al,W,Z)のγ’L1相が安定相として析出すると考えられる。
金属間化合物〔Co(Al,W)〕又は〔(Co,X)(Al,W,Z)〕は、粒径:50nm~1μm,析出量:40~85体積%でマトリックスに析出していることが好ましい。析出強化作用は、粒径:10nm以上の析出物で得られるが、1μmを超える粒径では却って低下する。十分な析出強化作用を得るためには40体積%以上の析出量が必要であるが、85体積%を超える過剰析出量では延性低下の傾向がみられる。好適な粒径,析出量を得る上では、所定温度域において段階的な時効処理を行うことが好ましい。
金属素材そのものの価格はCoがNiよりも高価であるが,実価格の大部分を占めるのは製造・加工コストである場合が多く,たとえばNi基合金タービンブレードの場合,素材コストは全体の5%程度という試算もある。高価なCoを用いたとしても,材料コストの上乗せは全体の数%程度にすぎず、熱機関の運転温度の上昇や長寿命化といった利点を考慮すると,十分に実用に値すると考えられる。したがって,優れた高温特性を活かして,従来のCo基耐熱合金が使用されていた部材の高強度化が図られることはもとより,Ni基合金が利用されてきた部材を代替する用途も見込まれる。具体的には、ガスタービン部材,飛行機用エンジン部材,化学プラント部材,ターボチャージャーロータ等の自動車用エンジン部材,高温炉部材等に好適な素材として使用される。高強度,高弾性で耐食性にも良好なことから、表面肉盛り材,ゼンマイ、バネ,ワイヤ,ベルト,ケーブルガイド等の素材としても使用される。
【実施例1】
【0006】
表1の組成をもつCo基合金を不活性ガス雰囲気中で高周波誘導溶解により溶製し、インゴットに鋳造した後、1200℃で板厚:3mmまで熱間圧延した。インゴット,熱延板から採取された試験片に表2の溶体化,時効処理を施した後、組織観察,組成分析,特性試験を行った。
各試験結果を表3に示す。表中、γ’/D019は析出物がγ’相とD019(CoW)相の二種,D019/μはD019相とμ相の二種,B2/μはB2(CoAl)相とμ相の二種が存在することを示す。
試験No.1~13の試料では析出物としてγ’相の一種類が観察されたが、同じ組成の合金であっても試験No.1,2のように時効処理でγ’相の析出量を変えることにより硬さ等の機械的性質を制御できることが判る。γ’量が極端に多くなると室温での延性が低下する傾向にあるが(試験No.9~12)、800℃でのビッカース硬さが約300と十分に高く、良好な高温特性が得られている。No.3合金は、強度,延性の両立を重視した合金設計であり、後述の実施例2,3はNo.3合金を基本組成としている。
試験No.14~19では、D019相,B2相等の析出物がγ’相の他に検出された。D019相,B2相等の析出物は結晶粒界に優先的に析出しており、γ’相は粒内に析出している。粒界,粒内での析出形態に起因して、高温まで粒内が高硬度に維持されるが、室温での破断伸びが小さくなっている。
試験No.13,14は同じ組成のCo基合金であるが、試験No.13では短時間熱処理のためD019相が析出しておらず、比較的大きな伸びを示している。そのため、短時間の時効処理でγ’相のみを析出させることができ、比較的低温で使用される部材への用途展開が図られる。
試験No.20,21は、それぞれNo.12,13合金(比較材)の特性を示しているが、これらの合金ではγ’相が析出せず、非常に脆いμ相が析出するため、硬さは得られるものの延性が極端に劣っていた。
【表1】
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【表2】
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【表3】
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図2は、1000℃×168時間で時効処理したNo.4合金のSEM像である。図2にみられるように、立方体形状の微細な析出物が均一分散しており、従来から使用されているNi基超合金と同様な組織をもっていた。900℃×72時間で時効処理したNo.1合金のTEM像(図3)でも立方体形状の微細な析出物が均一分散しており、電子回折像(図4)からL1型の結晶構造をもつ析出物であることが確認された。
時効処理で析出した析出物は、粗大化し難い特性を呈し、800℃で600時間熱処理した後でも平均粒径が150nm以下であった。粗大化し難い特性は組織の安定性が良好なことを意味し、このようなL1相の均一析出は比較例では検出されなかった。
No.3合金の機械的特性は、応力-歪曲線(図5)にみられるように、引張強さ:1085MPa,0.2%耐力:737MPa,破断伸び:21%であり、Waspaloy等のNi基合金と同程度,或いはそれ以上の機械的特性であった。ただし、γ’相分率が大きくなると延性の低下傾向がみられるので、γ’相分率は40~85体積%の範囲に調整することが好ましい。
ビッカース硬さの時効温度依存性(図6),時効時間依存性(図7)にみられるように、No.3合金の場合、168時間の時効による硬さの上昇は700~900℃で顕著であった。900℃を超える加熱温度では析出物の粗大化が、逆に600℃未満では不十分な析出が硬質化を妨げる原因と推察される。図6では、比較のためCo-Cr-Ta合金,Waspaloyの硬さも併せ示しているが、No.3合金の方がより高温に硬さのピークがあることが判る。硬さの上昇,換言すればγ’相の析出は、およそ5時間までは非常に速やかに進行するが、5時間以降では緩やかに進行していることが図7から読み取れる。
【実施例2】
【0007】
表4は、Co-W-Al合金にグループ(I)の合金成分を添加した合金設計を示す。Al,W量は表1のNo.3合金に基づき決定した。所定組成に調整したCo基合金を実施例1と同様に溶解,鋳造し、熱間圧延後に熱処理した。得られた熱延板の特性を表5に示す。
【表4】
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グループ(I)でC以外の成分は何れも微量添加元素であるため、大きな組織変化はC添加以外に観察されなかった。C添加で炭化物が析出するとCo基合金が硬質化する。C,Bは共に粒界偏析する傾向を示し、何れも高温クリープ強度の向上に寄与する。室温での機械的特性をみると、No.3合金(三元合金)に比べて0.2%耐力は上昇しているが、破断伸びが小さくなっており、引張強さもほぼ同等の値を示している。Y,Laの添加はNi基合金の耐酸化性向上に有効なことが知られているが、本発明の成分系においても同様な効果がみられる。しかも、グループ(I)の元素は、γ’相の安定性,機械的特性に実質的な悪影響を及ぼさないので、非常に有効な添加成分として期待できる。
【表5】
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【実施例3】
【0008】
表6は、Co-W-Al合金にグループ(II)の合金成分を添加した合金設計を示す。所定組成に調整したCo基合金を実施例1と同様に溶解,鋳造し、熱間圧延後に熱処理した。得られた熱延板の特性を表7に示す。比較のため、Ni基超合金Waspaloy(Cr:19.5%,Mo:4.3%,Co:13.5%,Al:1.4%,Ti:3%,C:0.07%)の物性をNo.33合金として表7に併せ示す。
【表6】
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【表7】
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No.3合金,No.30合金,No.32合金,No.33合金(Waspaloy)のDSC曲線を図8に示す。No.30合金は、黒矢印で示すγ’固溶温度がTa添加で三元系合金に比べて大きく上昇しており、Waspaloyより高温までγ’相が安定に存在することが判る。白矢印で示す固相線温度(液相が出現する温度)が高いことからも、No.33合金よりもNo.3,No.30合金が耐熱性に優れていることが理解できる。No.32合金は、No.30合金のCoを一部Niで置換した組成の合金であるが、γ’固溶温度が更に上昇し、固相線温度はほとんど低下していない。
No.3合金,No.30合金,No.32合金,No.33合金の高温硬さを測定した結果を図9に示す。No.3合金はNo.33合金と同程度の硬さであったが、Ta添加のNo.30合金は室温~1000℃の温度域でNo.33合金よりも高硬度を示し、従来のNi基合金よりも優れた機械的特性を示すため非常に有望な耐熱材料といえる。No.32合金は、時効直後の室温でNo.3の三元系合金とほぼ同じ硬さであったが、γ’相が高温まで安定なため高温での硬さ低下が少なく、1000℃ではNo.30合金に匹敵する値を示した。
1000℃×168時間で時効したNo.23合金,No.30合金の二相(γ+γ’)組織を図10,11にそれぞれ示す。Mo添加のNo.23合金はγ’相が球状化し、Ta添加のNo.30合金では立方体形状にγ’相が析出していた。析出形態の相違は、マトリックス(γ相)とγ’相の格子定数の差(格子ミスマッチ)に由来するが、材料の高温特性にも大きな影響を及ぼす。本成分系では、極少量の添加元素によって析出形態を大きく変えることができるので、用途に応じた多彩な合金設計,組織制御が可能になる。
グループ(II)のうち、マトリックス(γ)安定化元素であるFe,Crはγ’相の析出量減少,固溶温度の低下をもたらすが、Crは耐酸化性・耐食性の向上に顕著な効果を奏するので実用上不可欠な元素といえる。Feは、時効処理で硬質脆弱なB2(CoAl)相の析出を促進させ延性低下の原因となるが、溶体化状態では逆に加工性向上に寄与するので用途に応じて添加量を調整する。
Niは分配係数がほぼ1であり、マトリックス,析出物に当量分配される。しかし、本発明者等による研究結果は、Ni添加量を種々変化させたCo-4Al-26.9W三元系合金のγ’相の固溶温度,固相線温度(図12)にみられるように、Niの増量に伴いγ’相の固溶温度が上昇するが固相線温度の低下はほとんどないことを示している。このことは、Ni添加によって高温での硬さ低下が緩やかで優れた高温特性を有するNo.32合金の結果と良く一致している。
Irを添加したNo.20合金は、耐酸化性に加え室温での硬さ,引張強さも上昇していた。No.24合金は、Re添加によって耐酸化性が向上していたが、機械的特性に関してはIrほどの効果が得られなかった。
Ti,Zr,Hf,V,Nb等の第4,5族元素は、何れもγ’相を安定化させ析出量も増加させるので、室温,高温双方で良好な特性を付与する。しかし、D019(CoW)相の析出を促進させる作用がある。D019相は、B2相ほどの悪影響を延性に及ぼさないが,γ’相よりも粗大化しやすいため実際の合金設計では添加量の制御が必要である。
No.31,32合金は、それぞれCrとTa,NiとTaを複合添加したCo基合金であり、双方共に耐酸化性に優れ、Waspaloy合金と同レベルの高温硬さと十分な延性をもっていた。
図面
【図1】
0
【図5】
1
【図6】
2
【図7】
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【図8】
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【図9】
5
【図12】
6
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図10】
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【図11】
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