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明細書 :ずり測定方法及びその装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4615568号 (P4615568)
登録日 平成22年10月29日(2010.10.29)
発行日 平成23年1月19日(2011.1.19)
発明の名称または考案の名称 ずり測定方法及びその装置
国際特許分類 G01N  11/14        (2006.01)
G01N  19/00        (2006.01)
G01N  11/00        (2006.01)
FI G01N 11/14 E
G01N 19/00 C
G01N 11/00 A
請求項の数または発明の数 17
全頁数 12
出願番号 特願2007-537629 (P2007-537629)
出願日 平成18年9月27日(2006.9.27)
国際出願番号 PCT/JP2006/319103
国際公開番号 WO2007/037241
国際公開日 平成19年4月5日(2007.4.5)
優先権出願番号 2005282769
2005282768
優先日 平成17年9月28日(2005.9.28)
平成17年9月28日(2005.9.28)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成20年4月9日(2008.4.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】栗原 和枝
【氏名】佐久間 博
【氏名】水上 雅史
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】福田 裕司
参考文献・文献 特開昭63-047602(JP,A)
特開昭63-135808(JP,A)
特開昭61-132840(JP,A)
特開平06-117824(JP,A)
米国特許第04173142(US,A)
水上雅史,栗原和枝,”ナノ共振ずり測定法によるナノ薄膜の摩擦、粘弾性評価”,第56 回コロイドおよび界面化学討論会講演要旨集,2003年 8月22日,235頁
調査した分野 G01N 11/14
G01N 11/00
G01N 19/00
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
入力信号Uinを共振ずり測定ユニットの水平駆動部に入力し、該共振ずり測定ユニットにおける固体表面に挟まれた試料に対してその片側表面の振動を変位計で出力信号Uoutとして検出し、前記入力信号Uinとともに、前記出力信号Uoutを共振ずり計測装置に入力し、前記共振ずり測定ユニットの固体表面に挟まれた試料のせん断応答を膜厚の変化と共に計測する共振ずり測定方法であって、前記試料の片側表面の振動の減衰曲線をフーリエ変換し、共振ずり曲線を得ることを特徴とする共振ずり測定方法。
【請求項2】
入力信号Uinを共振ずり測定ユニットの水平駆動部に入力し、固体表面間に試料を挟まず固体表面そのものを試料とし、該共振ずり測定ユニットにおける試料の片側表面の振動を変位計で出力信号Uoutとして検出し、前記入力信号Uinとともに、前記出力信号Uoutを共振ずり計測装置に入力し、前記共振ずり測定ユニットの前記試料のせん断応答を膜厚の変化と共に計測する共振ずり測定方法であって、前記試料の片側表面の振動の減衰曲線をフーリエ変換し、共振ずり曲線を得ることを特徴とする共振ずり測定方法。
【請求項3】
請求項1記載の共振ずり測定方法において、前記試料が薄膜であることを特徴とする共振ずり測定方法。
【請求項4】
請求項1記載の共振ずり測定方法において、前記試料が液体であることを特徴とする共振ずり測定方法。
【請求項5】
請求項1記載の共振ずり測定方法において、前記試料が液晶であることを特徴とする共振ずり測定方法。
【請求項6】
請求項1記載の共振ずり測定方法において、前記試料がナノサイズの厚さであることを特徴とする共振ずり測定方法。
【請求項7】
請求項1又は2記載の共振ずり測定方法において、前記試料の表面を吸着や化学修飾法により修飾することを特徴とする共振ずり測定方法。
【請求項8】
請求項1又は2記載の共振ずり測定方法において、前記共振ずり曲線は前記試料のせん断応答の周波数特性であることを特徴とする共振ずり測定方法。
【請求項9】
波形発生器と、該波形発生器に接続される電源と、該電源に接続され、入力信号Uinが入力される共振ずり測定ユニットと、該共振ずり測定ユニットに接続される変位計と、該変位計及び前記電源に接続され、出力信号Uout及び入力信号Uinが入力される共振ずり測定装置であって、
(a)計時部と、
(b)該計時部と前記変位計に接続されるフーリエ変換部と、
(c)該フーリエ変換部に接続される振幅スペクトル生成部と、
(d)振幅(Uout /Uin)の規格部と、
(e)共振ずり曲線作成部とを備え、
(f)更に前記波形発生器と共振ずり測定装置とに接続されるコンピュータとを具備することを特徴とする共振ずり測定装置。
【請求項10】
請求項1記載の共振ずり測定方法において、レーザー光を前記試料の下部表面保持体の底面に取り付けたミラーに照射し、前記ミラーからの反射光の位相変化から前記試料の表面間距離変位を測定するツインパス表面間距離測定法と前記試料の粘弾性および摩擦・潤滑特性を共振曲線から測定する測定法とを組み合わせ、試料のずり応力を測定することを特徴とする共振ずり測定方法。
【請求項11】
請求項9記載の共振ずり測定装置において、
(a)前記試料の上部表面保持体を水平方向に変位させる精密ずり装置と、
(b)前記試料の上部表面保持体の水平方向への変位を検出する変位計と、
(c)先端に前記試料の下部表面保持体を保持するとともに前記下部表面保持体の底面に配置されるミラーを備えた板バネからなる前記試料の下部表面固定ユニットと、
(d)該下部表面固定ユニットを駆動して前記試料の下部表面保持体を上下に駆動する駆動装置と、
(e)前記ミラーにレーザー光を照射し、前記ミラーからの反射光の位相変化に基づいて前記試料の上部表面と前記試料の下部表面間の距離を測定するツインパス表面間距離測定ユニットを備え、
(f)前記試料の上部表面と前記試料の下部表面間の距離ごとの前記試料の粘弾性および摩擦・潤滑特性を測定することを特徴とする共振ずり測定装置。
【請求項12】
請求項11記載の共振ずり測定装置において、前記試料の共振曲線に基づいて前記試料の粘弾性および摩擦・潤滑特性を測定することを特徴とする共振ずり測定装置。
【請求項13】
請求項11又は12記載の共振ずり測定装置において、前記試料が透明試料又は不透明試料であることを特徴とする共振ずり測定装置。
【請求項14】
請求項11又は12記載の共振ずり測定装置において、前記試料が液体薄膜であることを特徴とする共振ずり測定装置。
【請求項15】
請求項11又は12記載の共振ずり測定装置において、前記試料が液晶薄膜であることを特徴とする共振ずり測定装置。
【請求項16】
請求項11又は12記載の共振ずり測定装置において、前記試料が高分子・界面活性剤などの吸着層や化学修飾膜であることを特徴とする共振ずり測定装置。
【請求項17】
請求項11又は12記載の共振ずり測定装置において、前記試料の上部表面保持体及び下部表面保持体の一方、あるいは両方が不透明基板であることを特徴とする共振ずり測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、透明または不透明のいずれであっても2つの固体表面間あるいはその間の薄膜について所望の測定ができるずり測定方法及びその装置に係り、より具体的には、特に、(1)容易に厚みが変化する膜や揮発性の高い液体膜などの測定を行う迅速、簡便、汎用かつ精密な共振ずり測定方法及びその装置、(2)ツインパス型干渉法による表面間距離計測により、ナノメートルレベルで二つの固体表面の間隔を変え、間に挟んだ液体薄膜・液晶薄膜・高分子吸着層などとの間のずり応力を測定する測定方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(1)まず第1に、
固体表面に挟まれた試料(液体・液晶など)のせん断応答をナノメートルレベルの膜厚の変化と共に知ることは、固体表面間の摩擦・潤滑および液体・液晶分子の配向・構造化の理解及び制御において重要である。試料のせん断応答を測定する共振ずり測定は、片側表面を水平方向に振動させて試料にせん断を与え、その応答を共振周波数付近でモニターするものである。このせん断応答を周波数の関数としてプロットしたものが共振曲線となる。共振周波数および共振ピークの高さは固体表面間の試料の物性に敏感で、測定装置外部からの振動ノイズにも強い。
【0003】
従来、固体表面に挟まれた試料のせん断応答を精密に知るために、共振周波数付近で周波数を変えながら試料のせん断応答を測定し、周波数に対してプロットした共振ずり曲線を得ることが行われてきた。このような技術は、例えば、下記非特許文献1に開示されている。
【0004】
また、本願発明者による提案である精密ずり応力測定装置(下記特許文献1)が提案されている。

【特許文献1】特許第3032152号公報
【非特許文献1】液晶 第6巻 第1号 p34-41 2002
【0005】
(2)第2に、本願発明者は、既にナノメートルスケールの微小空間でのレオロジー挙動を高精度に測定可能な精密ずり応力測定装置を提案している(下記特許文献2参照)。
【0006】
また、光が透過不能な試料であっても試料間の表面力を高い精度で測定することができる表面力測定装置及びその方法を提案している(下記特許文献3参照)。

【特許文献2】特許第3032152号公報
【特許文献3】特開2001-108603号公報
【発明の開示】
【0007】
しかしながら、上記(1)の従来の技術は、振動周波数を変化させながら共振周波数付近で試料のせん断応答を測定するため、試料の膜厚を長時間一定に保つことが必要であり、容易に厚みが変化する膜や揮発性の高い液体薄膜の測定は困難であるといった問題があった。
【0008】
また、上記(2)の従来の技術としては、表面間距離を分解能0.1ナノメートルで測定しながら表面に挟まれた試料の粘弾性および摩擦・潤滑特性を測定するためには、等色次数干渉縞(FECO)を用いた光干渉法による表面間距離測定とずり共振測定装置を組み合わせる手法がとられている。この手法は表面を透過した光を用いるため、基板および基板表面に挟まれた試料は光透過性のものに限られている。特に基板は実用的にはほぼ雲母に限られており、試験的にもサファイアやガラスの薄片(厚み2μm程度)が基板に用いられているのみである。
【0009】
また、ツインパス型表面力測定装置(上記特許文献3)は、上下表面にはたらく力を測定するものであって、ずり測定ができない。
【0010】
本発明は、試料が透明または不透明のいずれであっても所望の測定ができるずり測定方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0011】
より具体的に述べると、
本発明の第1の目的は、上記状況に鑑み、試料のせん断応答の測定において、試料の片側表面の振動の減衰曲線をフーリエ変換し、共振ずり曲線を得ることにより、その簡便な短時間測定を行うことができる共振ずり測定方法を提供することにあります。
【0012】
また、本発明の第2の目的は、上記状況に鑑み、基板あるいは試料が不透明である場合に基板間の距離が測定できるツインパス法を用いて、精密なずり応力測定を行うことができるツインパス型ずり応力測定方法及びその装置を提供することにあります。
【0013】
本願発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕共振ずり測定方法において、入力信号Uinを共振ずり測定ユニットの水平駆動部に入力し、この共振ずり測定ユニットにおける固体表面に挟まれた試料に対してその片側表面の振動を変位計で出力信号Uoutとして検出し、前記入力信号Uinとともに、前記出力信号Uoutを共振ずり計測装置に入力し、前記共振ずり測定ユニットの固体表面に挟まれた試料のせん断応答を膜厚の変化と共に計測する共振ずり測定方法であって、前記試料の片側表面の振動の減衰曲線をフーリエ変換し、共振ずり曲線を得ることを特徴とする。
【0014】
〔2〕共振ずり測定方法において、入力信号Uinを共振ずり測定ユニットの水平駆動部に入力し、固体表面間に試料を挟まず固体表面そのものを試料とし、この共振ずり測定ユニットにおける試料の片側表面の振動を変位計で出力信号Uoutとして検出し、前記入力信号Uinとともに、前記出力信号Uoutを共振ずり計測装置に入力し、前記共振ずり測定ユニットの前記試料のせん断応答を膜厚の変化と共に計測する共振ずり測定方法であって、前記試料の片側表面の振動の減衰曲線をフーリエ変換し、共振ずり曲線を得ることを特徴とする。
【0015】
〔3〕上記〔1〕記載の共振ずり測定方法において、前記試料が薄膜であることを特徴とする。
【0016】
〔4〕上記〔1〕記載の共振ずり測定方法において、前記試料が液体であることを特徴とする。
【0017】
〔5〕上記〔1〕記載の共振ずり測定方法において、前記試料が液晶であることを特徴とする。
【0018】
〔6〕上記〔1〕記載の共振ずり測定方法において、前記試料がナノサイズの厚さであることを特徴とする。
【0019】
〔7〕上記〔1〕又は〔2〕記載の共振ずり測定方法において、前記試料の表面を吸着や化学修飾法により修飾することを特徴とする。
【0020】
〔8〕上記〔1〕又は〔2〕記載の共振ずり測定方法において、前記共振ずり曲線は前記試料のせん断応答の周波数特性であることを特徴とする。
【0021】
〔9〕波形発生器と、該波形発生器に接続される電源と、該電源に接続され、入力信号Uinが入力される共振ずり測定ユニットと、該共振ずり測定ユニットに接続される変位計と、該変位計及び前記電源に接続され、出力信号Uout及び入力信号Uinが入力される共振ずり測定装置であって、計時部と、この計時部と前記変位計に接続されるフーリエ変換部と、このフーリエ変換部に接続される振幅スペクトル生成部と、振幅(Uout/Uin)の規格部と、共振ずり曲線作成部とを備え、更に前記波形発生器と共振ずり測定装置とに接続されるコンピュータとを具備することを特徴とする。
【0022】
〔10〕ツインパス型ずり応力測定方法において、レーザー光を試料の下部表面保持体の底面に取り付けたミラーに照射し、前記ミラーからの反射光の位相変化から前記試料の表面間距離変位を測定するツインパス表面間距離測定法と前記試料の粘弾性および摩擦・潤滑特性を共振曲線から測定する測定法とを組み合わせ、試料のずり応力を測定することを特徴とする。
【0023】
〔11〕ツインパス型ずり応力測定装置において、試料の上部表面保持体を水平方向に変位させる精密ずり装置と、前記試料の上部表面保持体の水平方向への変位を検出する変位計と、先端に前記試料の下部表面保持体を保持するとともに前記下部表面保持体の底面に配置されるミラーを備えた板バネからなる前記試料の下部表面固定ユニットと、この下部表面固定ユニットを駆動して前記試料の下部表面保持体を上下に駆動する駆動装置と、前記ミラーにレーザー光を照射し、前記ミラーからの反射光の位相変化に基づいて前記試料の上部表面と前記試料の下部表面間の距離を測定するツインパス表面間距離測定ユニットを備え、前記試料の上部表面と前記試料の下部表面間の距離ごとの前記試料の粘弾性および摩擦・潤滑特性を測定することを特徴とする。
【0024】
〔12〕上記〔11〕記載のツインパス型ずり応力測定装置において、前記試料の共振曲線に基づいて前記試料の粘弾性および摩擦・潤滑特性を測定することを特徴とする。
【0025】
〔13〕上記〔11〕又は〔12〕記載のツインパス型ずり応力測定装置において、前記試料が透明試料又は不透明試料であることを特徴とする。
【0026】
〔14〕上記〔11〕又は〔12〕記載のツインパス型ずり応力測定装置において、前記試料が液体薄膜であることを特徴とする。
【0027】
〔15〕上記〔11〕又は〔12〕記載のツインパス型ずり応力測定装置において、前記試料が液晶薄膜であることを特徴とする。
【0028】
〔16〕上記〔11〕又は〔12〕記載のツインパス型ずり応力測定装置において、前記試料が高分子・界面活性剤などの吸着層や化学修飾膜であることを特徴とする。
【0029】
〔17〕上記〔11〕又は〔12〕記載のツインパス型ずり応力測定装置において、前記試料の上部表面保持体及び下部表面保持体の一方あるいは両方が不透明基板であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例を示す共振ずり測定システムの模式図である。
【図2】本発明の実施例を示す共振ずり測定システムの共振ずり測定ユニットの一例を示す模式図である。
【図3】本発明の変形例を示す共振ずり測定システムの共振ずり測定ユニットの部分構成模式図である。
【図4】本発明の実施例を示す共振ずり測定フローチャートである。
【図5】本発明にかかる共振ずり測定ユニットに試料をセットして測定した場合の片側表面の減衰振動例を示す図である。
【図6】図5に示す減衰振動を本発明のフーリエ変換して得られた共振ずり曲線と従来の方法で得られたそれぞれの曲線を示す図である。
【図7】本発明の他の実施例を示すツインパス型ずり応力測定装置の模式図である。
【図8】本発明の他の実施例を示すツインパス型ずり応力測定装置の適用例を示すために用いた試料の模式図である。
【図9】本発明の他の実施例の雲母表面に挟んだ試料としての液晶(4-cyano-4-hexyl biphenyl,6CB)の化学式である。
【図10】本発明の他の実施例を示す試料としての液晶(4-cyano-4-hexyl biphenyl,6CB)を本発明のツインパス型ずり応力測定装置で測定した結果を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の第1の共振ずり測定方法及びその装置は、入力信号Uinを共振ずり測定ユニットのピエゾ素子に入力し、この共振ずり測定ユニットにおける固体表面に挟まれた試料の片側表面の振動を変位計で出力信号Uoutとして検出し、前記入力信号Uinとともに、前記出力信号Uoutを共振ずり計測装置に入力し、前記共振ずり測定ユニットの固体表面に挟まれた試料のせん断応答を膜厚の変化と共に計測する共振ずり測定方法であって、前記試料の片側表面の振動の減衰曲線をフーリエ変換し、共振ずり曲線を得るようにしたものである。
【0032】
本発明の第2のツインパス型ずり応力測定装置は、試料の上部表面を水平方向に変位させる精密ずり装置と、この試料の上部表面の水平方向への変位を検出する変位計と、先端に前記試料の下部表面を保持するとともにその底面に配置されるミラーを備えた板バネからなる前記試料の下部表面固定ユニットと、この下部表面固定ユニットを駆動して前記試料Aの下部表面を上下に駆動する駆動装置と、前記ミラーからの反射光の位相変化に基づいて前記試料Aの上部表面と前記試料の下部表面間の距離を測定するツインパス表面間距離測定ユニットを備え、前記試料の上部表面と前記試料の下部表面間の距離ごとの前記試料の粘弾性および摩擦・潤滑特性を測定する。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0034】
図1は本発明の実施例を示す共振ずり測定システムの模式図、図2はその共振ずり測定ユニットの一例を示す模式図である。この図において、1は波形発生器、2は波形発生器1に接続される電源、3は電源2に接続され、入力信号としての入力電圧Uinが入力される共振ずり測定ユニット、4は共振ずり測定ユニット3に接続される変位計、例えば、静電容量変位計、5は静電容量変位計4及び電源2に接続され、出力信号としての出力電圧Uout及び入力電圧Uinが入力される共振ずり計測装置であり、この共振ずり計測装置5は計時部5Aとフーリエ変換部5Bと振幅スペクトル生成部5Cと振幅(Uout/Uin)の規格部〔Uin(ω)及びUoutでの規格化部〕5Dと共振ずり曲線作成部5Eからなる。6は共振ずり計測装置5に接続されるパーソナルコンピュータ(PC)6、このパーソナルコンピュータ(PC)6は波形発生器1に接続されるようになっている。なお、上記した変位計としてはひずみゲージを用いるようにしてもよい。
【0035】
図2において、10は共振ずり測定ユニット(図1では共振ずり測定ユニット3に対応)、11はカンチレバー、12はデイスクホルダ、13は白色光、14はデイスクホルダ12上に固定される下部基板、15は上部表面を水平方向に駆動する水平駆動部としての4分割ピエゾ素子、16はその4分割ピエゾ素子15の底部に固定される上部基板、17は4分割ピエゾ素子15を支持する板バネである。18は板バネ17の水平方向変位Δxを計測する静電容量変位計(プローブ)(図1における静電容量変位計4に対応)、19はせん断応答の測定対象となる試料(固体、液体、液晶など)である。なお、ここで、液体は、単成分だけでなく、2成分以上のミセルやコロイド分散系を含む様々な溶液であってもよい。なお、上記した水平駆動部としてはモーターを用いるようにしてもよい。
【0036】
図3は本発明の変形例を示す共振ずり測定システムの共振ずり測定ユニットの部分構成模式図である。
【0037】
この例では、基板そのものを試料21,22とし、図2に示すように基板間に試料を挟むことなく、試料(基板)21と試料(基板)22との互いの摩擦(潤滑)特性を測定することもできる。
【0038】
図4はその共振ずり測定フローチャートである。
(1)まず、図1に示した振幅電圧Uinの正弦波(角周波数ω)をピエゾ素子(図2の4分割ピエゾ素子15)に入力する(ステップS1)。
(2)出力電圧Uout(ω)を取得する(ステップS2)。
(3)入力電圧Uinをストップする(ステップS3)。
(4)出力電圧Uoutと経過時間を取得する(ステップS4)。
(5)フーリエ変換を行う(ステップS5)。
(6)振幅スペクトルを出力する(ステップS6)。
(7)出力電圧Uout(ω)および入力電圧Uinで規格化を行う(ステップS7)。
(8)共振ずり曲線を出力する(ステップS8)。
【0039】
上記した共振ずり測定ユニットに試料をセットして測定すると、試料の片側表面の減衰振動は図5のような曲線を描く。
【0040】
ここで横軸は経過時間、縦軸が振動の振幅を示す。この減衰振動に以下の式で表されるフーリエ変換
【0041】
【数1】
JP0004615568B2_000002t.gif

【0042】
を行い、その振幅スペクトルを取ることにより、共振ずり曲線を得る。ここでωは角振動数、F(ω)は得られたフーリエスペクトル、f(t)は減衰振動、tは時間を示す。
【0043】
以下に共振ずり曲線を本発明の共振ずり測定方法で測定した結果と従来の方法により得られた結果を示す。
【0044】
図6に図5に示す減衰振動を本発明のフーリエ変換して得られた共振ずり曲線と従来の方法で得られたそれぞれの曲線を示す図である。
【0045】
横軸は試料の片側表面の振動数、縦軸は振動振幅を示し、ずり測定ユニットのピエゾに与えた入力電圧(UIN)と静電容量計で測定された出力電圧(UOUT)の比で表される。従来の方法は、各振動周波数に対する片側表面の応答を一点ずつ測定する手法である。図6は本発明が周波数に対する片側表面の応答をよく測定することができ、短時間で広い範囲の振動周波数に対する試料の片側表面の応答を連続的に測定する手法であることを示している。
【0046】
なお、本発明によれば、試料(固体、液体、液晶など)を2つの固体基板間に挟み、その厚みを変えながら、試料の粘弾性変化、摩擦・潤滑特性や試料と固体基板との結合の強さなどを評価することができる。また、基板そのものを試料とし、間に試料を挟むことなく、互いの摩擦(潤滑)特性を測定することもできる。また、その表面を吸着や化学修飾法〔LB(ラングミュア・ブロシェット)修飾法〕などにより修飾することもできる。また、片側表面を水平方向に振動させるだけではなく、表面に垂直方向に振動させて試料の周波数応答を測定することもできる。
【0047】
本発明によれば、従来技術のように各振動周波数におけるせん断応答を1つずつ測定する必要性がなく、短時間で共振ずり曲線を簡便に、しかも正確に測定することができる。
【0048】
次に、本発明の他の実施例のツインパス型ずり応力測定について説明する。
【0049】
図7は本発明の実施例を示すツインパス型ずり応力測定装置の模式図である。
【0050】
この図において、31は共振ずり測定ユニット、32は上部表面を水平方向に駆動する4分割ピエゾ素子、33は4分割ピエゾ素子32を支持する板バネ、34は板バネ33の水平方向変位Δxを計測する静電容量変位計(プローブ)、35は4分割ピエゾ素子32の底部に固定される上部基板である。
【0051】
また、試料Aの下部表面保持体42を固定するユニット40は、板バネ41の先端に試料Aの下部表面保持体42を保持し、その下部表面保持体42の下面にはミラー43が配置されている。一方、板バネ41の基部にはその板バネ41を上下に駆動する駆動装置〔例えば、モータ(図示なし)〕を備えている。
【0052】
さらに、51はツインパス表面間距離測定装置であり、レーザー光源52と、このレーザー光源52からのレーザー光を受けて計測光と基準光に分離する回折格子53と、その回折格子53を調整するピエゾ素子54と、回折格子53からの光を受けるレンズ55と、そのレーザー光の一部である基準光を受ける固定ミラー56と、この固定ミラー56で反射される基準光及び、試料Aの下部表面保持体52の底面に設けられたミラー43で反射される計測光を再びレンズ55を介して受ける回折格子57と、この回折格子57からの光を受けるフォトダイオード58と、ピエゾ素子54とフォトダイオード58に接続されるパーソナルコンピュータ59とを備えている。
【0053】
このように構成したので、試料Aを挟んだ表面間の距離の変化はツインパス表面間距離測定装置51で測定し、試料Aの上部表面は精密ずり共振測定ユニット31に取り付け、試料の粘弾性および摩擦・潤滑特性を測定し、これにより、精密にずり応力測定を行うことができる。
【0054】
図8は本発明のツインパス型ずり応力測定装置の適用例を示すために用いた試料の模式図、図9はその試料としての液晶(4-cyano-4-hexyl biphenyl,6CB)の化学式、図10はその試料としての液晶(4-cyano-4-hexyl biphenyl,6CB)を本発明のツインパス型ずり応力測定装置で測定した共振曲線を示す図である。
【0055】
図8に示すように、試料としての液晶(4-cyano-4-hexyl biphenyl,6CB)61の上下に雲母62,63を配置する。つまり、上部基板35としての雲母62と下部表面保持体42としての雲母63との間に試料としての液晶61が挟まれるように配置されている。
【0056】
その雲母表面に挟んだ試料としての液晶(4-cyano-4-hexyl biphenyl,6CB)の化学式は図9の通りである。
【0057】
図10において、横軸は試料上部の表面の角振動数(s-1)、縦軸は精密ずり共振測定ユニットのピエゾ素子に対する入力電圧(Uin)と静電容量変位計で測定された出力電圧(Uout)の比を示す図である。試料としての液晶を測定した結果に加えて、試料としての液晶を挟まずに保持体の表面を離した状態で測定した結果〔空気中(分離側)〕と保持体の表面を接触させて測定した結果〔空気中(雲母-雲母接触)〕を比較のために描いた。試料の表面間距離の横の実線はその距離での共振ピークを示す。ここで、表面間距離は下部表面保持体を駆動装置で上方に駆動した際に表面間距離が変化しなかった点を0nmと定義した。表面間距離が変化するにしたがって、共振曲線の変化が見られた。0nmのピークが複数あるのは、表面間距離が一定で、負荷が変化した場合を示す。
【0058】
なお、本発明によれば、試料(液体、固体、液晶など)を2つの固体基板間に挟み、その厚みを変えながら、試料の粘弾性変化、摩擦・潤滑特性や試料と固体基板との結合の強さなどを評価することができる。また、基板そのものを試料とし、基板間に試料を挟むことなく、互いの摩擦(潤滑)特性を測定することもできる。また、その表面を吸着や化学修飾法〔LB(ラングミュア・ブロジェット法)〕などにより修飾することもできる。
【0059】
また、レーザーの反射光を用いるため光が基板及び試料を透過する必要性がなく、不透明基板および不透明試料を使用した場合でも表面間距離を測定し、各距離で試料の粘弾性および摩擦・潤滑特性を測定することができる。
【0060】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の第1の共振ずり測定方法は、特に、固体表面間のナノメートルレベルの厚みを持つ液体薄膜の物性の簡便で正確な計測に好適である。
【0062】
本発明の第2のツインパス型ずり応力測定装置は、不透明基板間の距離を測定するためのツインパス法を用いて精密なずり応力測定を行うことができるツインパス型ずり応力測定装置として利用可能であり、第1の共振ずり測定方法同様に、固体表面間のナノメートルレベルの厚みを持つ液体薄膜の物性の簡便で正確な計測に好適である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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