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明細書 :Co基合金製機能部材及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5144270号 (P5144270)
登録日 平成24年11月30日(2012.11.30)
発行日 平成25年2月13日(2013.2.13)
発明の名称または考案の名称 Co基合金製機能部材及びその製造方法
国際特許分類 C22C  19/07        (2006.01)
C22F   1/10        (2006.01)
C22F   1/00        (2006.01)
FI C22C 19/07 Z
C22F 1/10 J
C22F 1/10 K
C22F 1/00 602
C22F 1/00 611
C22F 1/00 623
C22F 1/00 625
C22F 1/00 626
C22F 1/00 630A
C22F 1/00 630B
C22F 1/00 630D
C22F 1/00 630K
C22F 1/00 640A
C22F 1/00 650A
C22F 1/00 675
C22F 1/00 681
C22F 1/00 683
C22F 1/00 685Z
C22F 1/00 691B
C22F 1/00 691C
C22F 1/00 692A
C22F 1/00 692B
C22F 1/00 694A
請求項の数または発明の数 9
全頁数 19
出願番号 特願2007-540225 (P2007-540225)
出願日 平成18年10月11日(2006.10.11)
国際出願番号 PCT/JP2006/320689
国際公開番号 WO2007/043688
国際公開日 平成19年4月19日(2007.4.19)
優先権出願番号 2005296848
優先日 平成17年10月11日(2005.10.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年4月10日(2008.4.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】石田 清仁
【氏名】山内 清
【氏名】貝沼 亮介
【氏名】須藤 裕司
【氏名】大森 俊洋
個別代理人の代理人 【識別番号】100108121、【弁理士】、【氏名又は名称】奥山 雄毅
審査官 【審査官】田口 裕健
参考文献・文献 特開2002-129273(JP,A)
特開平07-331370(JP,A)
特開平06-264195(JP,A)
特開昭59-232248(JP,A)
特開平03-130322(JP,A)
特開2004-269994(JP,A)
調査した分野 C22C 19/00-19/07
特許請求の範囲 【請求項1】
Al:3~15質量%のCo-Al二元合金を基材とし、
fcc構造のα相とB2型のβ相とが層間隔:100μm以下で層状に繰り返されるラメラー組織が30体積%以上の占有率で分布していて、
前記α相又は前記β相の選択除去によって基材表面が多孔質表層域に改質されている
ことを特徴とするCo-Al合金製機能部材。
【請求項2】
量比で
Ni:5~21.6%、Fe:2~10.6%、Mn:2~20%、Cr:5~19.4%、Mo:1~19.3%、W:1~24.6%、Zr:0.1~1.6%、Ta:0.1~6.2%、Hf:0.1~3.1%、Ga:5~6.2%、V:0.1~9.3%、Ti:0.1~7.5%、Nb:0.1~8.1%、C:0.05~0.7%、Rh:1~5.4%、Pd:1~5.6%、Ir:1~9.7%、Pt:1~15.6%、Au:1~9.9%、B:0.005~0.04%、P:0.01~0.02%から選ばれた一種を単独で、または、Ni:5~21.6%、Fe:2~10.6%、Mn:2~20%から選ばれた一種又は二種以上と、Cr:5~19.4%、Mo:1~19.3%、Ga:5~6.2%、V:0.1~9.3%、Ti:0.1~7.5%、Nb:0.1~8.1%、C:0.05~0.7%、B:0.005~0.04%から選ばれた一種又は二種以上との組み合わせを40%以下の添加元素を含むAl:3~15質量%のCo-Al二元合金を基材とし、
fcc構造のα相とB2型のβ相、L1型のγ´相、DO19型の析出物、M23型の炭化物からなる群から選択される少なくとも一つから形成される相とが層間隔:100μm以下で層状に繰り返されるラメラー組織が30体積%以上の占有率で分布していて、
前記α相又は前記B2型のβ相、L1型のγ´相、DO19型の析出物、M23型の炭化物からなる群から選択される少なくとも一つから形成される相の選択除去によって基材表面が多孔質表層域に改質されている
ことを特徴とするCo-Al合金製機能部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のCo-Al合金製機能部材において、
前記Co-Al合金製機能部材の基材表面から500nm以上の深さの多孔質表層域を有し、
前記多孔質化前の表面積に対する多孔質表層域の表面積の比が1.5倍以上である
ことを特徴とするCo-Al合金製機能部材。
【請求項4】
請求項1記載の組成を有するCo-Al合金を溶解した後、
1500~600℃の温度域を平均冷却速度:500°C/分以下で冷却することにより、前記fcc構造のα相と前記B2型のβ相とが層状に繰り返すラメラー組織を30体積%以上の占有率で生成させ、
前記α相又は前記B2型のβ相の何れか一方をCo-Al合金基材の表層域から選択除去し、多孔質化前の表面積に対する多孔質層の表面積の比が1.5倍以上となるように基材表面から深さ:500nm以上を多孔質表層域に改質する
ことを特徴とするCo-Al合金製機能部材の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の組成を有するCo-Al合金を溶解した後、
00~1400°Cで溶体化処理し、500~900℃の時効処理により、前記fcc構造のα相と前記B2型のβ相とが層状に繰り返すラメラー組織を30体積%以上の占有率で生成させ、
前記α相又は前記B2型のβ相の何れか一方をCo-Al合金基材の表層域から選択除去し、多孔質化前の表面積に対する多孔質層の表面積の比が1.5倍以上となるように基材表面から深さ:500nm以上を多孔質表層域に改質する
ことを特徴とするCo-Al合金製機能部材の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のCo-Al合金製機能部材の製造方法において、
前記Co-Al合金製機能部材の製造方法は、物理的研磨、化学的研磨又は電気化学的研磨で前記α相又は前記B2型のβ相との何れか一方を選択除去する
ことを特徴とするCo-Al合金製機能部材の製造方法。
【請求項7】
請求項2に記載の組成を有するCo-Al合金を溶解した後、
1500~600℃の温度域を平均冷却速度:500°C/分以下で冷却することにより、前記fcc構造のα相と前記B2型のβ相、L1型のγ´相、DO19型の析出物、M23型の炭化物からなる群から選択される少なくとも一つから形成される相とが層状に繰り返すラメラー組織を30体積%以上の占有率で生成させ、
前記α相又は前記B2型のβ相、L1型のγ´相、DO19型の析出物、M23型の炭化物からなる群から選択される少なくとも一つから形成される相の何れか一方をCo-Al合金基材の表層域から選択除去し、多孔質化前の表面積に対する多孔質層の表面積の比が1.5倍以上となるように基材表面から深さ:500nm以上を多孔質表層域に改質する
ことを特徴とするCo-Al合金製機能部材の製造方法。
【請求項8】
請求項2に記載の組成を有するCo-Al合金を溶解した後、
900~1400°Cで溶体化処理し、500~900℃の時効処理により、前記fcc構造のα相と前記B2型のβ相、L1型のγ´相、DO19型の析出物、M23型の炭化物とからなる群から選択される相とが層状に繰り返すラメラー組織を30体積%以上の占有率で生成させ、
前記α相又は前記B2型のβ相、L1型のγ´相、DO19型の析出物、M23型の炭化物からなる群から選択される少なくとも一つから形成される相との何れか一方をCo-Al合金基材の表層域から選択除去し、多孔質化前の表面積に対する多孔質層の表面積の比が1.5倍以上となるように基材表面から深さ:500nm以上を多孔質表層域に改質する
ことを特徴とするCo-Al合金製機能部材の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のCo-Al合金製機能部材の製造方法において、
前記Co-Al合金製機能部材の製造方法は、物理的研磨、化学的研磨又は電気化学的研磨で前記α相又は前記B2型のβ相、L1型のγ´相、DO19型の析出物、M23型の炭化物からなる群から選択される少なくとも一つから形成される相との何れか一方を選択除去する
ことを特徴とするCo-Al合金製機能部材の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の機能を付与できる多孔質表層を有するCo基合金製機能部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Co基合金は、耐食性,機械的強度に優れているので医療用器具,生体材料,耐摩耗材等、広範な用途で使用されている。耐食性や耐酸化性,α相の安定化,材料強化等、一層の特性向上を狙ってCr,Ni,Fe,Mo,C等が添加され、固溶強化,析出強化,加工硬化等、種々の強化法が提案されている。
従来の強化法は、何れもα単相又は第二相がα相に連続析出した金属組織を前提にしている(文献1,2)。第二相の析出により高強度がCo基合金に付与されるが、使用条件や細線化・小型化に関する要求が苛酷になるに伴い一層高い強度が必要になってきている。
他の合金系ではラメラー組織による強化も採用されており、代表的な例が鉄鋼材料にみられるパーライト変態である。パーライト変態によりフェライト,セメンタイトのラメラー組織が形成されると、鉄鋼材料が高強度化する。
ラメラー組織を利用した材質強化は、本発明者等も文献3でラメラー組織化したCu-Mn-Al-Ni系合金紹介しており、Co-Al二元合金のラメラー組織化も文献4で報告されている。Co-Al系合金は、微細間隙で軟質のα相と硬質のβ相が繰り返されるラメラー組織を有するため、細線化,小型化しても必要強度を維持する機器の素材として使用される。
文献1:JP7-179967A
文献2:JP10-140279A
文献3:JP5-25568A
文献4:P.Zieba,Acta mater.Vol.46,No.1(1998)pp.369-377
【発明の開示】
【0003】
本発明者等は、ラメラー組織を有するCo基合金の優れた特性を活用しながら、更に機能性を高める方法を種々検討した。その結果、ラメラー組織を構成するα相,β相の何れか一方を選択除去すると、Co基合金の表層域が多孔質化されることを解明した。
本発明は、かかる知見をベースにしたものであり、Co基合金表面にあるラメラー組織からα相又はβ相を選択除去することにより、各種機能を付与できる多孔質表層に改質したCo基合金製機能部材を提供することを目的とする。
本発明のCo基合金製機能部材は、Al:3~15質量%を含み、f.c.c.構造のα相とB2型のβ相とが層状に重なり合って繰り返されるラメラー組織を有するCo基合金を基材とし、α相,β相の何れか一方を選択除去することにより基材表面を多孔質構造に改質している。以下、合金成分の含有量は単に%で、その他の割合については体積%,面積%等と表す。
Co-Al二元合金では、凝固過程,或いは溶体化後の時効処理でf.c.c.構造のα相とB2型のβ相が相互に層状に重なり合うラメラー組織となって析出する。Co-Alの二元系を基本組成とするが、必要に応じ第三成分を添加しても良い。
第三成分には、表1の一種又は二種以上が使用される。第三成分は、合計:0.001~60%の範囲で一種又は二種以上が添加される。表1は、添加可能な第三成分,添加量と析出物の関係を示す。
【表1】
JP0005144270B2_000002t.gif
第三成分を添加した系では、L1型のγ’相,D019型の析出物,M23型の炭化物等がα相中に生成し、ラメラー組織化される。L1型のγ’相,D019型の析出物,M23型の炭化物等を選択除去し、或いは逆にα相を選択除去してL1型のγ’相,D019型の析出物,M23型の炭化物等を残すとき、ラメラー組織に由来する多孔質構造がCo基合金の表面に形成される。以下、L1型のγ’相,D019型の析出物,M23型の炭化物等をβ相で適宜代表させて説明する。
ラメラー組織は、所定組成に調製して溶解したCo基合金を凝固する過程で生成する。通常の鋳型に注入したCo基合金を冷却する外、一方向凝固やブリッジマン炉等の融液成長装置を用いた凝固法も採用可能である。温度:900~1400℃で溶体化処理したCo基合金を温度:500~900℃で時効処理することによっても、f.c.c.構造のα相とβ(B2)相が層状に繰り返されるラメラー組織が得られる。
ラメラー組織を有するCo基合金からα相又はβ相を選択除去すると、残存相でセル骨格が形成された多孔質構造にCo基合金の表面層が改質される。α相又はβ相の選択除去には、物理的研磨,化学的研磨,電気化学的研磨等が単独で或いは組み合わせて採用される。多孔質になったCo基合金の表層に種々の物質を含浸,吸着,結合させると、その物質に応じた特性が付与される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1は、ラメラー組織の生成メカニズムを説明するためのCo-Al二元状態図
図2は、Co-Al二元合金で生成したラメラー組織が電解研磨により多孔質化したことを示すSEM像
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
鉄鋼のパーライト組織に類似するラメラー組織化するため、種々の元素をCoと配合し、添加元素と組織との関係を調査・検討した。その結果、不連続析出物が形成されるように固溶限が高温域で大きく低温域で狭い合金成分がラメラー組織の生成に有効であり、なかでもAlがラメラー組織に効果的な元素であることを見出した。具体的には、適量のAlを含むCo-Al二元合金を冷却・凝固する過程で制御冷却し、或いは時効処理すると、f.c.c.構造のα相マトリックスとβ(B2)相のラメラー組織となる。
α相は、f.c.c(面心立方)の結晶構造を有し、Co-Al二元状態図からも判るようにCoにAlが固溶した相であり、低温でh.c.p.構造にマルテンサイト変態することもある。Co-Al二元系でα相と平衡するβ相はB2型結晶構造を有しているが、適量の第三成分を添加した系ではL1型のγ’相,D019型の相,M23炭化物等も析出する。各種析出物は、X線回折,TEM観察等で同定できる。
ラメラー組織は、α相と晶出相又は析出相が層状に重なり合った複相組織であり、α相と晶出相又は析出相との層間隔(ラメラー間隔)が微細なほど優れた靭性を示す。
ラメラー組織は、α’→α+βで表される不連続析出により形成される。α’相とα相は同じ相であるが、界面に濃度ギャップが存在し、母相の溶質濃度は変化しない。図1のCo-Al二元系では、α単相域で熱処理し、その後、所定のα+β二相域で熱処理をすると不連続析出が生起する。大半の不連続析出では、結晶粒界を起点として二相がコロニーと呼ばれる集団となって成長し、α相とβ相が層状に重なり合って繰り返されるラメラー組織を形成する。
ラメラー組織の生成メカニズムに関しては種々の説がある。たとえば、
・粒界に析出した析出物が粒界とは非整合で、母相とは整合又は半整合であるため、エネルギーの不均衡に起因して粒界が析出物/粒界の界面方向に移動し、粒界移動の繰返しによりラメラー組織が形成される説
・粒界移動が起こり、その過程で粒界に生成した析出物が更なる粒界移動によりラメラー組織となる説
母相と析出相との界面エネルギー,歪エネルギー,融点の差や温度等の様々な要素がラメラー組織化反応に関係するため生成メカニズムの解明は複雑になるが、何れにしても粒界反応型の析出である。0.75~0.8Tm(Tm:融点の絶対温度)付近を境にして高温側では体拡散が支配的,低温側では粒界拡散が支配的になる一般則を前提にすると、粒界反応の結果であるラメラー組織の形成には比較的低温の熱処理が必要といえる。しかし、析出の駆動力(換言すれば、単相域からの過冷度)が小さいと析出反応が緩慢になるため、過冷度をある程度大きくする必要がある。
Co-Al二元状態図(図1)は、磁気変態温度以下でα相の固溶度が大きく低下していることを示している。Co-Al二元合金では、磁気変態温度を境にα相の固溶度が大幅に変化し、固溶度の差が高温域と低温域で大きくなり、析出の駆動力が増加する原因となる。その結果、低温での熱処理により十分にラメラー組織を形成できる。
ラメラー組織は共晶反応でも生成することが知られている。共晶反応はL→α+βで表され、Co-Al二元系(図1)では約10%のAlを含む合金を凝固させると共晶反応が起きる。共晶反応ではα相,β相が同時に晶出し、凝固面全域で溶質原子が拡散してお互いに隣接した二相が同時に成長するのでラメラー組織或いは棒状組織が形成される。両相の体積分率がほとんど等しい場合にラメラー組織となり、体積分率に大きな差があると棒状組織になる傾向がある。共晶組成のCo-Al合金では、金属組織が形成される高温領域でα相とβ相の体積分率に大きな差がないため、ラメラー組織が形成される。
Co-Al二元合金では生じないが、第三成分を含む系では共析反応や連続析出によってもラメラー組織が形成される。通常の連続析出ではラメラー組織は得られないが、方向性をもった析出反応が進行するとラメラー組織になりやすい。
ラメラー組織はα相,β相が周期的に繰り返される組織であり、凝固過程で形成されるラメラー組織は共晶反応に、時効処理で形成されるラメラー組織は不連続析出,共析変態等によるものである。連続析出でも,方向性をもった析出を促進させるとラメラー組織が形成されやすくなる。
層間隔:1μm以下のラメラー組織を有するCo基合金は、機械的強度が高く、多孔質化後に高い表面積増加率を示す。層間隔:1~100μmでは、機械的強度が若干低下するものの、物質侵入の容易なサイズのポアが多孔質化処理で表層域に形成される。ポアサイズを支配する層間隔は凝固過程の冷却条件,時効処理条件等によって制御できる。ポアサイズは、基本的にはラメラー組織の層間隔に依存するが、ラメラー組織に応じて10nm~100μmの範囲に調整できる。また、ラメラー組織形成後のCo基合金を冷間圧延することによっても、ラメラー組織の層間隔が狭められ、ひいてはポアサイズが小さな多孔質表層域を形成できる。
ラメラー組織を有するCo基合金を物理的,化学的又は電気化学的に研磨しα相,β相の何れか一方を選択除去すると、ラメラー組織の骨格を維持した多孔質層が表層に形成される。α相,β相の選択除去は両相の物性的な相違を利用し、比較的軟質で化学的に貴なα相は物理的手法で除去され、比較的硬質で化学的に卑なβ相は化学的又は電気化学的手法で除去される傾向にある。
α相又はβ相の選択除去で形成される多孔質表層域は、当初の基材表面に比較して表面積が大幅に増加しており、研磨後に残留しているα相又はβ相が三次元的に入り組んだミクロポアを有している。このような特異な多孔質構造は、薬剤,体内組織,潤滑剤等の材料表面への侵入を許容し、物質保留能,徐放性,強結合性,生体親和性,放熱性,触媒活性等の機能をCo基合金に付与する。
基材に使用するCo基合金は、Al:3~15%のCo-Al二元系を基本とする。Alは、晶出相や析出相の形成に必須の成分であり、3%以上で目標とするβ(B2)相の生成が確実になる。しかし、15%を超える過剰量のAlが含まれると、マトリックスがβ相になり、α相,β相の周期的繰返しを有するラメラー組織の割合が著しく低下する。好ましくは、4~10%の範囲でAl含有量を選定する。
Ni,Fe,Mnは、α相の安定化に有効な成分であり、延性の向上に寄与する。しかし、過剰添加はラメラー組織の生成に悪影響を及ぼす。Ni,Fe,Mnを添加する場合、Ni:0.01~50%(好ましくは、5~40%),Fe:0.01~40%(好ましくは、2~30%),Mn:0.01~30%(好ましくは、2~20%)の範囲でそれぞれの含有量を定める。
Cr,Mo,Siは耐食性の向上に有効な成分であるが、過剰添加は延性の著しい劣化を招く。Cr,Mo,Siを添加する場合、Cr:0.01~40%(好ましくは、5~30%),Mo:0.01~30%(好ましくは、1~20%),Si:0.01~5%(好ましくは、1~3%)の範囲で含有量を選定する。
W,Zr,Ta,Hfは強度向上に有効な成分であるが、過剰添加は延性の著しい劣化を招く。W,Zr,Ta,Hfを添加する場合、W:0.01~30%(好ましくは、1~20%),Zr:0.01~10%(好ましくは、0.1~2%),Ta:0.01~15%(好ましくは、0.1~10%),Hf:0.01~10%(好ましくは、0.1~2%)の範囲で含有量を選定する。
Ga,V,Ti,Nb,Cは析出物,晶出物の生成を促進させる作用を呈するが、過剰添加すると金属組織全体に対するラメラー組織の占有割合が低下する傾向を示す。添加する場合、Ga:0.01~20%(好ましくは、5~15%),V:0.01~20%(好ましくは、0.1~15%),Ti:0.01~12%(好ましくは、0.1~10%),Nb:0.01~20%(好ましくは、0.1~7%),C:0.001~3%(好ましくは、0.05~2%)の範囲でそれぞれの含有量を選定する。
Rh,Pd,Ir,Pt,Auは、X線造影性,耐食性,耐酸化性の改善に有効な成分であるが、過剰添加するとラメラー組織の生成が抑制される傾向がみられる。添加する場合、Rh:0.01~20%(好ましくは、1~15%),Pd:0.01~20%(好ましくは、1~15%),Ir:0.01~20%(好ましくは、1~15%),Pt:0.01~20%(好ましくは、1~15%),Au:0.01~10%(好ましくは、1~5%)の範囲で含有量を選定する。
Bは結晶粒微細化に有効な成分であるが、過剰量のBが含まれると延性が著しく低下する。添加する場合、0.001~1%(好ましくは、0.005~0.1%)の範囲でB含有量を選定する。
Pは脱酸に有効な成分であるが、過剰量のPが含まれると延性が著しく低下する。添加する場合、0.001~1%(好ましくは、0.01~0.5%)の範囲でP含有量を選定する。
所定組成に調整されたCo基合金を溶解した後、鋳造し冷却すると、凝固時にf.c.c.構造のα相とβ(B2)相がラメラー組織を形成しながら晶出する。ラメラー間隔は、成長速度をvとするとv-1/2に比例するため、冷却速度により成長速度v,ひいてはラメラー間隔を制御できる。具体的には、冷却速度が速いほど成長速度vが大きくラメラー間隔が微細化される。遅い冷却速度では結晶成長が進行し、層間隔が広くなる。鋳造材でも十分満足できる特性が得られるが、熱間加工,冷間加工,歪除去焼鈍等によって特性を改善することも可能である。鋳造材は、必要に応じ鍛造,熱間圧延を経て、冷間加工,引抜き等の加工によって目標サイズの板材,線材,管材等に成形される。
何れの場合も、金属組織全体に占めるラメラー組織の割合を30体積%以上とすることにより、ラメラー組織に由来する高強度,高靭性等の特性が付与される。凝固過程での制御冷却又は時効処理の何れでラメラー組織化する場合でも、f.c.c.構造のα相とβ(B2)相との相間隔を100μm以下にすることがラメラー組織に起因する特性を活用する上で有効である。100μmを超える相間隔では、ラメラー組織の特性,ひいては多孔質化した表層域の特性を十分に発揮できない。
凝固過程でラメラー組織を生成させる場合、溶解したCo基合金を鋳造凝固させることにより、f.c.c.構造のα相とβ(B2)相が相互に重なり合ったラメラー組織を形成しながら晶出する。安定的なラメラー組織化には、1500~600℃の温度域を平均冷却速度:500℃/分以下(好ましくは、10~450℃/分)で凝固冷却させることが好ましい。鋳造材でも十分満足できる特性が得られるが、鋳造後に熱間加工,冷間加工,歪除去焼鈍等を施すことにより特性改善が図られる。
熱処理でラメラー組織を生成させる場合、溶体化,時効処理の工程を経る。
冷間加工されたCo基合金を温度:900~1400℃で溶体化処理すると、冷間加工までの工程で導入された歪を除去し析出物がマトリクスに固溶し材質が均質化される。溶体化温度は、再結晶温度より十分高く設定する必要があるので、900℃以上で融点(1400℃)以下の範囲(好ましくは、1000~1300℃)で選定される。
溶体化処理後、温度:500~900℃で時効処理すると、f.c.c.構造のα相マトリックスにβ(B2)相が層状析出したラメラー組織が形成される。層状析出を促進させるため時効温度を十分な拡散が生じる500℃以上とするが、900℃を超える高温加熱では結晶格子上又は結晶格子間位置を占めながら原子がジャンプして拡散する体拡散(格子拡散)支配となり、粒界反応で形成される層状析出物とは異なる形態で析出物が形成されやすくなる。そのため、500~900℃(好ましくは、550~750℃)の範囲で時効温度を選定する。時効処理に先立って、ラメラー組織形成を促進させるため冷間加工してもよい。一般的に、時効温度を下げると層間隔が微細になり、β(B2)相を初めとする析出物の体積分率が増加する。層間隔の微細化は、時効時間の短縮によっても達成される。
更に、ラメラー組織が形成されたCo基合金を冷間加工すると、ラメラー組織が加工方向に沿って伸長し、組織微細化,加工硬化が一層進行するので、高強度が付与される。強度向上に有効な冷間加工には圧延,伸線,スウェージング等があり、加工率:10%以上で冷間加工の影響がみられるが、過剰な加工率は加工設備にかかる負担を大きくするので、加工設備の能力に応じて加工率の上限が定められる。
鋳造時の制御冷却,時効処理の何れによる場合でも、加熱条件を制御して金属組織全体に占めるラメラー組織の割合を30体積%以上とすることにより、ラメラー組織に由来する高強度,高靭性等の特性が付与される。また、f.c.c.構造のα相とβ(B2)相との相間隔を100μm以下にすると、ラメラー組織に起因する特性を有効活用できる。
凝固冷却によるラメラー組織化では層間隔が比較的大きくなり、時効処理によるラメラー組織化では微細な層間隔でα相マトリックス,β(B2)相が繰り返すラメラー組織が形成される。そこで、凝固冷却によるラメラー組織化,時効処理によるラメラー組織化を組み合わせるとき、粗大ラメラー組織,微細ラメラー組織を併せ持つ複合組織にすることも可能である。
ラメラー組織を有するCo基合金は、優れた機械的特性を活用し種々の用途に使用できるが、本発明ではラメラー組織を構成するα相,β相の何れか一方を選択除去することにより表層域を多孔質化している。多孔質表層域は、ラメラー組織の骨格を維持し、選択除去されたα相又はβ相の痕跡がミクロポアとなっている。ラメラー組織に対応してポアサイズが定まるので、Co基合金製機能部材の用途に見合ったポアサイズが得られるように凝固冷却条件や熱処理条件によってβ(B2)相の析出状態や層間隔を制御することが好ましい。
化学研磨や電解研磨には、塩酸,硝酸,リン酸,乳酸,フッ酸,酢酸,過塩素酸,アンモニア,塩化鉄(III),塩化銅(II),硫化銅,酸化クロム(VI),二アンモニウムテトラクロロカプラート(II),二硫化カリウム,二フッ化水素アンモニウム,グリセリン,過酸化水素,シュウ酸,メタノール,エタノールから選ばれた薬液,混合薬液,水溶液等が研磨液として使用される。
化学的研磨では、ラメラー組織を有するCo基合金を研磨液に浸漬することにより、α相,β相の何れか一方を選択除去する。研磨温度,研磨時間は特に限定されるものではないが、基材表面から深さ:500nm以上の表層域が多孔質化されるように研磨条件を選定する。
電気化学的研磨では、ラメラー組織を有するCo基合金を陽極として研磨液に浸漬し、電気化学的反応でα相,β相の何れか一方を選択除去する。陰極には、ステンレス鋼,白金等の耐食性に優れた材料が使用される。電解条件は特段の制約を受けるものではないが、基材表面から深さ:500nm以上の表層域が多孔質化されるように電圧,電流,研磨温度,研磨時間等を定めることが好ましい。
物理的研磨では、各相の硬度差を利用しα相,β相の何れか一方を選択除去する。具体的には、アルゴンイオンビームを照射するイオンミリング,ガリウムイオンビームを用いた集束イオンビーム照射,ブラスト等を採用できる。
【表2】
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第三成分の添加により生成したL1型のγ’相,D019型の相,M23炭化物等を選択除去する場合、析出相がα相より化学的に卑な場合、化学的研磨、電気化学的研磨により析出相を選択除去でき、化学的に貴な場合、化学的研磨、電気化学的研磨によりα相を選択除去できる。また、析出相がα相より軟質な場合、物理的研磨により析出相を選択除去でき、硬質な場合、物理的研磨によりα相を選択除去できる。
多孔質表層域の機能を有効活用する上では、基材表面から500nm以上の深さに至る表層域の多孔質化が好ましい。多孔質表層域の深さは、使用する処理液の種類,濃度,処理時間等により適宜調整できる。500nmに達しない深さでは、多孔質化による十分な効果が得られないが、深すぎても研磨の負荷に見合った効果が得られないので、多孔質表層域の最大深さを800μm程度とすることが好ましい。
α相又はβ相を選択除去した痕跡がミクロポアとなるが、ミクロポアのサイズは、ラメラー組織の層間隔を反映して100μm以下になっており、物質の貯留,徐放,生体との馴染み等に好適なサイズである。勿論、鋳造時の凝固冷却条件,時効処理条件,時効処理工程に至るまでの製造履歴等によってラメラー組織を微細化すると、それに応じてミクロポアも微細になる。時効処理後の冷間加工も、ラメラー組織の微細化に有効な手段である。
しかも、多孔質表層域がラメラー組織のCo基合金で支持されているので、高強度,耐摩耗性,耐熱性等、Co基合金本来の特性も活用され、各種機能を付与可能な多孔質構造に表層が改質されていることと相俟って、各種機械・器具,医療用器具・工具,触媒担体,機能性材料等、広汎な用途への展開を期待できる。
たとえば、最近の医療分野で使用され始めた薬剤溶出ステントは、ステントに薬剤を塗布して患部に留置し、薬剤の溶出を一定期間継続することにより患部の細胞増殖,ひいては再狭窄を予防している。従来の薬剤溶出ステントでは、薬剤を配合したポリマーをステントに載せ、更にステント表面をポリマーコーティングすることによって薬剤の拡散を抑制している。しかし、ポリマーに起因する炎症反応や過敏性反応等の副作用が懸念され、薬剤の溶出(徐放)制御には薬剤密度,ポリマー材質等の選定が必要になる。これに対し、表層を多孔質化したCo基合金では、コーティング補助材の必要なく薬剤をステント表面に直接塗布でき、多孔質層による薬剤塗布量の増加や、表面形状に由来した徐放性制御も可能になる。
また、人工骨としての用途では、ミクロポア内に生体組織が侵入し、多孔質表層域と強固に結合し、耐食性,強度,生体親和性に優れたCo基合金で表層域が支持されるため、極めて安定した状態で生体内に埋め込まれ、しかも骨の再生を促進する。更に、多孔質表層域をアパタイトで修飾すると、生体組織との結合がより強固になる。
次いで、図面を参照しながら、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0006】
種々の割合でAlを添加したCo-Al二元合金(表3)を溶解し、鋳造した。試験No.7~9では、凝固・冷却過程で生成する鋳造組織のままとした。試験No.1~6,10では、熱間圧延を経て板厚:1mmまで冷間圧延し、溶体化:1200℃×15分,時効:600℃×12時間の熱処理で冷延板をラメラー組織化した。
各Co-Al合金板を顕微鏡観察し、β(B2)相の析出状態を調査した。また、各Co-Al合金板のSEM像を画像処理し、ラメラー組織の面積比率から換算された体積比率,層間隔を求めた。
更に、SUJ-2を相手材にして大越式摩耗試験機を用いて摩耗量を測定し、比摩耗量:1×10-6mm/kg以下を◎,(1.0~5.0)×10-6mm/kgを○,(5.0~10)×10-6mm/kgを△,10×10-6mm/kg以上を×として耐摩耗性を評価した。
表3の調査結果にみられるように、Al含有量を3~15%の範囲に維持した試験No.2~6のCo-Al合金では、f.c.c.構造のα相とβ(B2)相が相互に重なり合ったラメラー組織になっていた。その結果、試験No.5のCo基合金をSEM観察した図2にみられるように、明確なラメラー組織が生成した。
試験No.7,8のCo-Al合金では、凝固過程の晶出反応でf.c.c.構造のα相とβ(B2)相が繰り返されるラメラー組織になっていた。試験No.7に比較して冷却速度の遅い試験No.8では、層間隔が広がっていた。
他方、Al含有量が3%未満の試験No.1合金では、β(B2)相の析出が不十分で、実質的にはα単相の組織であった。逆に15%を超える過剰量のAlを含む試験No.9,10では、マトリックスがβ(B2)相となり、鋳造凝固,時効処理の何れに拠る場合もラメラー組織の割合が極端に低下した。
SEM像の画像処理で求めたラメラー組織の面積比率から換算された体積比率,層間隔を表3に併せ示す。
Co-Al合金の機械強度,耐摩耗性もラメラー組織の生成如何に応じて変わっていた。ラメラー組織が全面に形成されたCo-Al合金では、耐摩耗性に優れ高強度化されていた。これに対し、β(B2)相の析出が不十分なCo-Al合金では引張強さ,耐力に劣り、マトリックスがβ(B2)相となったCo-Al合金では破断伸びに乏しく延性に欠けていた。
【表3】
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ラメラー組織化したCo基合金(No.5)を液温:25℃の酸液(FeCl:HCl:HO=10g:25ml:100ml)に浸漬し、ステンレス鋼を陰極とし直流電源から電流密度:30A/dmで通電することにより電解研磨した。
15分の電解研磨後に研磨液からCo基合金を引き上げて乾燥し、Co基合金表面をSEM観察した。図2(b)にみられるように、選択溶出したβ(B2)相の痕跡がミクロな空洞となった多孔質層がCo基合金の表面に生成していた。
拡大SEM像(図2c)を基に多孔質表層域を計測したところ、Co基合金の表層から28μmの深さまで多孔質化され、電解研磨後に残ったα相で多孔質層の骨格が形成されていることが判った。表3の試験No.1~10のCo基合金について、同様にSEM像から求めた多孔質層の深さを表4に示す。
多孔質層の生成はラメラー組織を有するCo基合金の電解研磨でみられる特有の現象であり、ラメラー組織のない試験No.1,9,10ではこのような明確な多孔質層が検出されなかった。
次いで、電解研磨したCo基合金の表面積をSEM像の画像解析により算出し、電解研磨していないCo基合金の表面積に対する比率として表面積比を算出した。
表4の調査結果にみられるように、ラメラー組織を有するCo基合金を電解研磨すると、表層域が多孔質化してミクロポアを含み、表面積が大幅に増加することが確認された。他方、ラメラー組織のないCo基合金では、電解研磨後に表層が多孔質化しなかった。
【表4】
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【実施例2】
【0007】
実施例1で表面積比の大きな多孔質層が生成した試験No.5のCo-Al合金を例にとって、溶体化処理,時効処理の温度条件がβ(B2)相の層状析出,ひいては多孔質層の形態に及ぼす影響を調査した。多孔質層の形成には、実施例1と同じ電解研磨を採用した。
表5の調査結果にみられるように、溶体化温度:900~1400℃,時効温度:500~900℃でβ(B2)相の層状析出が促進され、電解研磨後に表面積比:5.9以上の多孔質層がCo基合金表面から深さ:5μm以上の表層域に形成された。
500℃未満の時効温度では、β(B2)相の生成・成長が不十分でラメラー組織化しなかったので、電解研磨後にCo基合金表面が多孔質化されなかった。900℃を超える時効温度ではβ(B2)相が層状析出せず、電解研磨されたCo基合金は表面から深さ:100nmまでが表面積比:1.2に留まり、必要機能を付与するには不十分な多孔質構造であった。また、溶体化温度が900℃に達しないと、析出物が十分に固溶されることなく時効処理されたため、析出物の残渣でラメラー組織の生成が阻害され、電解研磨されたCo基合金の表面は多孔質化せずに粗面化していた。逆に、1400℃を超える高温で溶体化処理した場合、部分溶融により生成した液相に由来する塊状の析出物が生成しており、多孔質化に適さない表面状態であった。
【表5】
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【実施例3】
【0008】
1200℃×15分の溶体化処理→600℃×12時間の時効処理でAl:6.9%のCo-Al合金をラメラー組織化した後、電解研磨又は化学研磨でCo基合金表層からβ(B2)相を選択除去した。
電解研磨では、電解液としてHO:HPO=3ml:2mlを用いる電解研磨I,FeCl:HCl:HO=10g:5ml:100mlを用いる電解研磨II,FeCl:HCl:HO=10g:25ml:100mlを用いる電解研磨IIIを採用した。何れの電解研磨も、陰極にステンレス鋼を用い、液温を25℃,電流密度を30A/dm,浸漬時間を15分に設定した。
化学研磨では、酸液にHCl:HNO=3ml:1mlを用いる化学研磨I,HCl:HO=1ml:4mlを用いる化学研磨II,FeCl:HCl:HO=10g:25ml:100mlを用いる化学研磨III,EtOH:HNO=100ml:20mlを用いる化学研磨IVを採用した。何れの化学研磨も液温を25℃,浸漬時間を30分に設定した。
研磨後のCo基合金について、実施例1と同様に多孔質層の形態及び特性を調査した。表6の調査結果にみられるように、研磨法の如何に拘わらず同様な特性の多孔質層が形成されることが判った。多孔質層が深いほど表面積比が大きくなっており、何れの場合も1.5以上の表面積比であった。また、β相の選択除去で多孔質表層域を形成する場合、残存するα相で多孔質骨格が形成されるため、多孔質層域が軟質で延性に富み、ポアサイズが小さく多孔質層の深さが大きくなる傾向にあった。
【表6】
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【実施例4】
【0009】
実施例3と同じ時効処理でラメラー組織化したCo-6.9%Al合金を物理研磨し、Co基合金表層からα相を選択除去した。
物理研磨Iでは、アルゴンガスを用い30μAで4時間イオンミリングした。
物理研磨IIでは、ガリウムイオンビームを用い、30kV、10nAで集束イオンビーム照射した。
物理研磨IIIでは、粒径:1.2μmのアルミナ研磨材を用いてエアーブラストした。
研磨後のCo基合金について、実施例1と同様に多孔質層の形態及び特性を調査した。表7の調査結果にみられるように、研磨法の如何に拘わらず同様な特性の多孔質層が形成されることが判った。多孔質層が深いほど表面積比が大きくなっており、何れの場合も1.5以上の表面積比であった。本例では、比較的硬質のβ相で多孔質構造の骨格が形成されるため、得られた多孔質層域は硬質で強度が高く、ポアサイズが大きく多孔質層の深さが小さくなる傾向にあった。
【表7】
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【実施例5】
【0010】
Co-Al合金に添加する第三成分が機械的性質,ラメラー組織,ひいては多孔質表層域の生成,物性に及ぼす影響を調査した。ラメラー組織は、表8,9のCo基合金を1200℃×15分で溶体化した後、600℃×24時間の時効処理で形成した。多孔質表層域は、FeCl:HCl:HO=10g:25ml:100mlを電解液に用い、30A/dmの陽極電解でα相又は析出相を選択除去することにより形成した。
腐食試験では、25℃のPBS(-)溶液を用いたアノード分極試験により0V vs SCEでの不動態保持電流密度を測定し、不動態保持電流密度が0.05A/m以下を◎,0.05~0.1A/mを○,0.1~0.3A/mを△,0.3A/m以上を×として耐食性を評価した。
表8,9の調査結果にみられるように、何れの試験でもラメラー組織,多孔質表層域が形成され、表面積比が増加した。特に、本発明で規定した第三成分を適量添加すると、延性や耐食性の向上を確認できた。
【表8】
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【表9】
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【産業上の利用可能性】
【0011】
以上に説明したように、ラメラー組織をもつCo-Al合金の表層域からα相又はβ(B2)相を選択除去して多孔質化することにより、物質保留能,徐放性,強結合性,生体親和性,放熱性,触媒活性等の機能が付与される。しかも、Co基合金本来の優れた耐食性,ラメラー組織に起因する高強度,耐摩耗性も活用されるので、薬剤溶出ステント,カテーテル等の医療用器具,人工骨,人工歯根等の生体材料,触媒担体,選択吸着床,ヒートシンクや軸受等として重宝される。
図面
【図1】
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【図2】
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