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明細書 :形状記憶性及び超弾性を有する鉄系合金及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5065904号 (P5065904)
登録日 平成24年8月17日(2012.8.17)
発行日 平成24年11月7日(2012.11.7)
発明の名称または考案の名称 形状記憶性及び超弾性を有する鉄系合金及びその製造方法
国際特許分類 C22C  38/00        (2006.01)
C22C  38/14        (2006.01)
C22C  38/60        (2006.01)
C21D   8/00        (2006.01)
C21D   8/12        (2006.01)
C21D   9/46        (2006.01)
FI C22C 38/00 302V
C22C 38/14
C22C 38/60
C21D 8/00 D
C21D 8/12 F
C21D 9/46 P
請求項の数または発明の数 10
全頁数 15
出願番号 特願2007-544117 (P2007-544117)
出願日 平成18年11月2日(2006.11.2)
国際出願番号 PCT/JP2006/321996
国際公開番号 WO2007/055155
国際公開日 平成19年5月18日(2007.5.18)
優先権出願番号 2005325393
優先日 平成17年11月9日(2005.11.9)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年5月14日(2008.5.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】石田 清仁
【氏名】貝沼 亮介
【氏名】須藤 祐司
【氏名】田中 優樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100080012、【弁理士】、【氏名又は名称】高石 橘馬
審査官 【審査官】河野 一夫
参考文献・文献 特開昭61-106746(JP,A)
特開2003-268501(JP,A)
特開2002-129273(JP,A)
特開平09-176729(JP,A)
特開平05-255815(JP,A)
特開2000-017395(JP,A)
特開平03-257141(JP,A)
特公平05-024983(JP,B2)
調査した分野 C22C 1/00 - 49/14
C21D 8/00
C21D 8/12
C21D 9/46
特許請求の範囲 【請求項1】
形状記憶性及び超弾性を有する鉄系合金において、25~35質量%のNi、13~25質量%のCo、及び2~8質量%のAlを含有し、さらに1~5質量%のTi、2~10質量%のNb、及び3~20質量%のTaからなる群から選ばれた少なくとも一種を合計で1~20質量%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、γ相及びγ’相からなり、冷間加工方向における前記γ相の<100>又は<110>方向の存在頻度(電子背面散乱パターン法により測定)が2以上である再結晶集合組織を有し、前記γ相の結晶粒界の20%以上が、方位差が15°以下の小角粒界であり、マルテンサイト変態及び逆変態の熱ヒステリシスにおける逆変態終了温度とマルテンサイト変態開始温度との差が100℃以下であることを特徴とする鉄系合金。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄系合金において、Ni含有量が26~30質量%であることを特徴とする鉄系合金。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鉄系合金において、Al含有量が4~6質量%であることを特徴とする鉄系合金。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の鉄系合金において、さらにBを合計で0.001~1質量%含有することを特徴とする鉄系合金。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の鉄系合金において、さらにWを合計で0.001~10質量%含有することを特徴とする鉄系合金。
【請求項6】
形状記憶性及び超弾性を有し、25~35質量%のNi、13~25質量%のCo、及び2~8質量%のAlを含有し、さらに1~5質量%のTi、2~10質量%のNb、及び3~20質量%のTaからなる群から選ばれた少なくとも一種を合計で1~20質量%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、γ相及びγ’相からなり、冷間加工方向における前記γ相の<100>又は<110>方向の存在頻度(電子背面散乱パターン法により測定)が2以上である再結晶集合組織を有し、マルテンサイト変態及び逆変態の熱ヒステリシスにおける逆変態終了温度とマルテンサイト変態開始温度との差が100℃以下である鉄系合金を製造する方法であって、焼鈍を介して冷間加工を複数回行い、その際冷間加工方向における前記存在頻度が2以上になるように、最終焼鈍後の冷間加工の合計加工率を50%以上に設定し、前記冷間加工後に800℃以上の温度で溶体化処理し、さらに200℃以上800℃未満の温度で時効処理を行うことを特徴とする鉄系合金の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の鉄系合金の製造方法において、Ni含有量が26~30質量%であることを特徴とする鉄系合金の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の鉄系合金の製造方法において、Al含有量が4~6質量%であることを特徴とする鉄系合金の製造方法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の鉄系合金の製造方法において、さらにBを合計で0.001~1質量%含有することを特徴とする鉄系合金の製造方法。
【請求項10】
請求項6~9のいずれかに記載の鉄系合金の製造方法において、さらにWを合計で0.001~10質量%含有することを特徴とする鉄系合金の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は実用温度域で優れた形状記憶性及び超弾性を有するとともに、加工性、耐食性及び磁気特性が良好な鉄系合金に関する。
【背景技術】
【0002】
一方向又は二方向の形状記憶性及び超弾性(擬弾性)を有する合金(形状記憶合金)としては、Ni-Ti基合金、Cu-Zn-Al基合金、Fe-Mn-Si基合金等が実用化されているが、最も量産化されているのは形状記憶性、機械的強度等の特性に優れたNi-Ti基合金である。しかし、Ni-Ti基合金は冷間加工性に劣り、材料コストも高いという等の欠点がある。Cu-Zn-Al基合金は耐食性に劣り、加工コストがかかるという欠点を有する。
【0003】
これらの非鉄系形状記憶合金に対して、鉄系形状記憶合金は材料コストが低く、加工性に富むので、種々の用途に利用するのが期待されている。しかしながら、今までに開発された鉄系形状記憶合金は超弾性が非鉄系形状記憶合金より著しく劣り、超弾性を利用する応用に適さなかった。
【0004】
従来の鉄系合金が良好な超弾性を有さないのは、変形により転位等の永久歪みが導入され、形状記憶性を示さない不可逆的なレンズ状マルテンサイトの応力誘起が起こるためであると考えられる。これらの問題を解決するには、鉄系形状記憶合金の母相強度の向上、特に金属間化合物による析出強化が有効であると考えられた。この観点から、Fe-Ni-Co-Al-C合金(特開平03-257141号)、Fe-Ni-Al系合金(特開2003-268501号)、及びFe-Ni-Si系合金(特開2000-17395号)等が提案された。しかしこれらの鉄系形状記憶合金でも、超弾性の回復可能な歪み量及び回復率、超弾性作動温度等は必ずしも十分ではなかった。
【0005】
「Scripta Materialia」 Vol. 46, pp. 471-475は、高価なPdを多量に含有し、良好な超弾性を示すFe-Pd合金を提案しているが、この合金の超弾性の回復可能な歪み量は1%以下と小さい。
【0006】
特開平09-176729号は、fcc/hcp変態を利用することにより形状記憶性及び超弾性を示すFe-Mn-Si基合金を開示している。しかしこのFe-Mn-Si基合金が超弾性を示す温度は室温より高いので、これを室温で使用することができない。また耐食性及び冷間加工性が悪く、さらに超弾性を得るために複雑な加工及び熱処理が必要であり、製造コストが高い。
【0007】
米国特許5,173,131号は、9~13重量%のCr、15~25重量%のMn、及び3~6重量%のSiを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成[1.43 (% Si) + 1 (% Cr)≦17を満足する]を有する鉄系形状記憶合金を開示している。この鉄系形状記憶合金では、DSCで測定したマルテンサイト変態温度(Ms点)とその逆変態温度(Af点)との差は110℃である。しかしこの鉄系形状記憶合金の超弾性の回復可能な歪み量及び回復率は必ずしも十分ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、実用温度域で優れた形状記憶性及び超弾性を有するとともに、良好な加工性、耐食性及び磁気特性を有する鉄系合金、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、(a) マルテンサイト変態及び逆変態の熱ヒステリシスにおける逆変態終了温度(Af点)とマルテンサイト変態開始温度(Ms点)との差が100℃以下となるようにし、かつ(b)γ相の特定結晶方位が揃った再結晶集合組織となるような条件で加工することにより、鉄系形状記憶合金に優れた形状記憶性及び超弾性を付与できることを見出し、本発明に想到した。
【0010】
形状記憶性及び超弾性を有する本発明の鉄系合金は、25~35質量%のNi、13~25質量%のCo、及び2~8質量%のAlを含有し、さらに1~5質量%のTi、2~10質量%のNb、及び3~20質量%のTaからなる群から選ばれた少なくとも一種を合計で1~20質量%含有し、残部が実質的にFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、実質的にγ相及びγ’相からなり、前記γ相の特定結晶方位が揃った再結晶集合組織を有し、マルテンサイト変態及び逆変態の熱ヒステリシスにおける逆変態終了温度とマルテンサイト変態開始温度との差が100℃以下であることを特徴とする。
【0011】
前記γ相の特定結晶方位は冷間加工方向に揃っているのが好ましく、特に前記冷間加工方向における前記γ相の特定結晶方位の存在頻度(電子背面散乱パターン法により測定)が2以上であるのが好ましい。前記特定結晶方位は<100>又は<110>方向であるのが好ましい。前記γ相の結晶粒界の20%以上が、方位差が15°以下の小角粒界であるのが好ましい。
【0012】
鉄系合金のNi含有量は26~30質量%であるのが好ましく、Al含有量は4~6質量%であるのが好ましい。
【0013】
本発明の鉄系合金は、さらにB、C、Ca、Mg、P、S、Zr、Ru、La、Hf、Pb及びミッシュメタルからなる群から選ばれた少なくとも一種を合計で0.001~1質量%含有するのが好ましい。
【0014】
本発明の鉄系合金は、さらにBe、Si、Ge、Mn、Cr、V、Mo、W、Cu、Ag、Au、Ga、Pd、Re及びPtからなる群から選ばれた少なくとも一種を合計で0.001~10質量%含有するのが好ましい。
【0015】
形状記憶性及び超弾性を有し、実質的にγ相及びγ’相からなり、前記γ相の特定結晶方位が揃った再結晶集合組織を有し、マルテンサイト変態及び逆変態の熱ヒステリシスにおける逆変態終了温度とマルテンサイト変態開始温度との差が100℃以下である鉄系合金を製造する本発明の方法は、焼鈍を介して冷間加工を複数回行い、その際冷間加工方向における前記γ相の特定結晶方位の存在頻度(電子背面散乱パターン法により測定)が2以上になるように、最終焼鈍後の冷間加工の合計加工率を設定することを特徴とする。
【0016】
前記最終焼鈍後の冷間加工の合計加工率は50%以上とするのが好ましい。前記冷間加工後に、800℃以上の温度で溶体化処理し、さらに200℃以上800℃未満の温度で時効処理を行うのが好ましい。
【0017】
本発明の方法で製造する鉄系合金は、25~35質量%のNi、13~25質量%のCo、及び2~8質量%のAlを含有し、さらに1~5質量%のTi、2~10質量%のNb、及び3~20質量%のTaからなる群から選ばれた少なくとも一種を合計で1~20質量%含有し、残部が実質的にFe及び不可避的不純物からなる組成を有するのが好ましい。
【0018】
本発明の方法で製造する鉄系合金のNi含有量は26~30質量%であるのが好ましく、Al含有量は4~6質量%であるのが好ましい。
【0019】
本発明の方法で製造する鉄系合金は、さらにB、C、Ca、Mg、P、S、Zr、Ru、La、Hf、Pb及びミッシュメタルからなる群から選ばれた少なくとも一種を合計で0.001~1質量%含有することを特徴とするのが好ましい。
【0020】
本発明の方法で製造する鉄系合金は、さらにBe、Si、Ge、Mn、Cr、V、Mo、W、Cu、Ag、Au、Ga、Pd、Re及びPtからなる群から選ばれた少なくとも一種を合計で0.001~10質量%含有することを特徴とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の鉄系合金は、γ相の特定結晶方位が揃った再結晶集合組織を有し、マルテンサイト変態及び逆変態の熱ヒステリシスにおける逆変態終了温度とマルテンサイト変態開始温度との差が100℃以下であるので、従来の鉄系合金に比べて形状記憶性及び超弾性が著しく向上している。その上、Fe-Ni-Co-Al系合金である本発明の鉄系合金は材料コストが安く、加工性及び耐食性に優れているので、線材、板材、箔、バネ材、パイプ材等の種々の加工品に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】形状記憶合金の典型的な電気抵抗曲線を概略的に示すグラフである。
【図2】鉄系合金の第一の焼鈍工程から時効処理までの加工工程の一例を示す概略図である。
【図3(a)】形状記憶合金の引張りサイクル試験により得られる典型的な応力-歪み曲線を概略的に示すグラフである。
【図3(b)】形状記憶合金の応力-歪み曲線から超弾性歪みを求める方法を示すグラフである。
【図4】実施例3の鉄系合金板材における最大歪みが2%のときの応力-歪み曲線を示すグラフである。
【図5(a)】実施例6の鉄系合金の第一の焼鈍工程から時効処理までの加工工程を示す概略図である。
【図5(b)】実施例7の鉄系合金の第一の焼鈍工程から時効処理までの加工工程を示す概略図である。
【図5(c)】実施例8の鉄系合金の第一の焼鈍工程から時効処理までの加工工程を示す概略図である。
【図5(d)】実施例9の鉄系合金の第一の焼鈍工程から時効処理までの加工工程を示す概略図である。
【図5(e)】比較例2の鉄系合金の第一の焼鈍工程から時効処理までの加工工程を示す概略図である。
【図6】実施例9の鉄系合金板材の圧延方向におけるγ相の結晶方位の存在頻度を示す逆極点図である。
【図7】比較例2の鉄系合金板材の圧延方向におけるγ相の結晶方位の存在頻度を示す逆極点図である。
【図8】実施例9の鉄系合金板材における最大歪みが15%のときの応力-歪み曲線を示すグラフである。
【図9】実施例10の鉄系合金の第一の焼鈍工程から時効処理までの加工工程を示す概略図である。
【図10】実施例10の鉄系合金板材における磁化曲線を示すグラフである。
【図11】実施例10の鉄系合金板材に歪みを与えた状態で磁気特性を測定する装置を示す概略図である。
【図12】実施例10の鉄系合金板材に歪みを与える前、歪みを与えた状態、及び歪みを除去した後の磁化曲線を示すグラフである。
【図13】実施例10の鉄系合金板材に磁場を印可したときに生じる歪みを測定する方法を示す概略図である。
【図14】実施例10の鉄系合金板材について磁場と歪みとの関係を示すグラフである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[1] 鉄系合金の組成
(a) 基本組成
本発明の鉄系合金の基本組成は、25~35質量%のNiと、13~25質量%のCoと、2~8質量%のAlとからなる基本元素と、1~5質量%のTi、2~10質量%のNb、及び3~20質量%のTaからなる群から選ばれた少なくとも一種の第一の添加元素(合計で1~20質量%)と含有し、残部は実質的にFe及び不可避的不純物である。なお本明細書において特段の断りがなければ、各元素の含有量は合金全体(100質量%)に対する質量%で表す。
【0024】
Niはマルテンサイト変態を起こすとともにその温度を低下させる元素である。本発明の鉄系合金は25~35質量%のNiを含有する。この範囲のNiの含有により、鉄系合金のマルテンサイト変態温度が下がり、母相(fcc相)は安定化する。Niの含有量を35質量%超にするとマルテンサイト変態温度が低下し過ぎ、実用温度域で変態が現れないため、良好な形状記憶性及び超弾性が得られない。
【0025】
また、Niは時効処理によりNi3Al等のfcc及び/又はfctの規則相を析出させる元素である。上記規則相は、鉄系合金の母相を強化するとともに、マルテンサイトの熱ヒステリシスを減少させるため、形状記憶性及び超弾性を向上させる。Niの含有量が25質量%未満であると、析出する規則相の量が不十分であるため、良好な形状記憶性、及び超弾性が得られない。より好ましいNiの含有量は26~30質量%である。
【0026】
Coは上記γ’規則相の析出量を増加させて母相強度を上昇させ、さらに、母相の剛性率を低下させて変態による体積変化を減少させ、もって形状記憶性を向上させる元素である。本発明の鉄系合金は13~25質量%のCoを含有する。Coの含有量が25質量%を超えると、合金の冷間加工性が低下する。Coの含有量が13質量%未満になると、Coの上記添加効果が十分に発揮されない。より好ましいCoの含有量は15~23質量%である。
【0027】
Alは、Ni同様、時効処理によりNi3Al等のfcc及び/又はfctのγ’規則相を析出させる元素である。Alの含有量が2質量%未満では、析出する規則相の量が不十分であるため、良好な形状記憶性、及び超弾性が得られず、また8質量%を超えると極めて脆くなる。本発明の鉄系合金中のAl含有量は2~8質量%が好ましく、4~6質量%より好ましい。

【0028】
第一の添加元素を含有することにより、γ’規則相の析出量が著しく増加し、これに伴い母相強度も大きく上昇し、マルテンサイトの熱ヒステリシスも大幅に小さくなるため、形状記憶性及び超弾性が向上する。但しこれらの元素の合計含有量が20質量%を超えると、合金の冷間加工性が低下するおそれがある。
【0029】
(b) 基本組成以外の元素
本発明の鉄系合金は、さらにB、C、Ca、Mg、P、S、Zr、Ru、La、Hf、Pb及びミッシュメタルからなる群から選ばれた少なくとも一種の第二の添加元素を含有することができる。第二の添加元素の含有量は合計で1質量%以下であるのが好ましく、0.001~1質量%であるのがより好ましく、0.002~0.7質量%であるのが最も好ましい。第二の添加元素は、時効中に起こるB2構造のβ相の粒界反応を抑制し、形状記憶性及び超弾性を向上させる。
【0030】
本発明の鉄系合金は、さらにBe、Si、Ge、Mn、Cr、V、Mo、W、Cu、Ag、Au、Ga、Pd、Re及びPtからなる群から選ばれた少なくとも一種の第三の添加元素を含有することができる。第三の添加元素の含有量は合計で10質量%以下であるのが好ましく、0.001~10質量%であるのがより好ましく、0.01~8質量%であるのが最も好ましい。
【0031】
第三の添加元素のうち、Si、Ge、V、Mo、W、Ga及びReは、母相γ相とγ’規則相の整合性を向上させ、γ’相の析出強化を向上させ、形状記憶性を向上させる。これらの元素の好ましい含有量は合計で10質量%以下である。
【0032】
Be及びCuは、固溶強化により母相γ相の強度を向上させ、形状記憶性を向上させる。Be及びCuの好ましい含有量はそれぞれ1質量%以下である。
【0033】
Crは耐摩耗性及び耐食性を維持するのに有効な元素である。Crの好ましい含有量は10質量%以下である。
【0034】
MnはMs点を低下させるので、高価なNiの含有量を減らすことができる。Mnの好ましい含有量は5質量%以下である。
【0035】
Ag、Au、Pd及びPtは、α’マルテンサイトの正方晶性を大きくする効果を有し、熱ヒステリシスを減少させ、形状記憶性及び超弾性を向上させる。これらの元素の好ましい含有量は10質量%以下である。
【0036】
[2] 鉄系合金の製造方法
(a) 冷間加工
上記組成を有する本発明の鉄系合金は、溶解鋳造、熱間加工及び冷間加工により所望の形状に成形する。成形加工の後で、溶体化処理及び時効処理を行うが、溶体化処理前の成形加工としては、冷間圧延、冷間伸線、金型プレス等の冷間加工が好ましい。冷間加工後、必要に応じてショットピーニング等の表面加工を行うこともできる。冷間加工により、加工方向にγ相の特定結晶方位が揃った板材、パイプ、線材、加工材等が得られる。
【0037】
鉄系合金に対して1回の冷間加工で得られる加工率はせいぜい10%程度であるので、冷間加工においては、高い合計加工率を得るためには冷間加工を複数回行う必要がある。この時、複数回の焼鈍処理を介して行っても良いが、合金組織の配向性を高めるためには、最終焼鈍後の合計加工率を高くするほど良い。焼鈍処理は800~1400℃の加熱温度で、1分~3時間行うことが好ましい。焼鈍後の冷却は空冷で行うことが好ましく、水冷で行うことがより好ましい。

【0038】
本発明の方法では、γ相の<100>又は<110>方向を圧延又は伸線などの冷間加工方向に揃えている。合金組織の結晶方位は電子背面散乱パターン法で測定することができ、結晶方位の揃え具合を表す存在頻度を求めることができる。例えば加工方向における<100>の存在頻度は、結晶方位が理論上完全にランダムになっている場合における加工方向に向いている<100>の存在頻度を1と仮定したときの存在率であり、値が大きいほど結晶方位がより揃っていることを表す。
【0039】
鋭意研究の結果、γ相の<100>又は<110>等の特定結晶方位の存在頻度が2以上になると優れた形状記憶性及び超弾性を有する鉄系合金が得られることが分かった。本発明における鉄系合金では、上記特定結晶方位の存在頻度は、最終焼鈍後の合計加工率により設定することができる。上記特定結晶方位の存在頻度を高めるためには、最終焼鈍後の合計加工率が高いほどよいが、2以上にする場合は、いずれの合金組成においても、最終焼鈍後の冷間加工の合計加工率は50%以上にする必要がある。最終焼鈍後の冷間加工の合計加工率が低いと合金組織の特定結晶方位が加工方向に揃わず、十分な形状記憶性及び超弾性の向上が得られない。冷間加工の合計加工率は好ましくは70%以上であり、より好ましくは92%以上である。

【0040】
(b) 溶体化処理
冷間加工した鉄系合金を固溶温度まで加熱し、結晶組織をオーステナイトγ相単相に変態させた後、急冷する溶体化処理を行うのが好ましい。溶体化処理は800℃以上の温度で行う。溶体化処理温度は900~1400℃であるのが好ましい。溶体化処理温度での保持時間は1分~50時間であるのが好ましい。1分未満では溶体化処理の効果が十分に得られず、50時間を超えると酸化の影響が無視できなくなる。

【0041】
溶体化処理は応力をかけながら行っても良い。このいわゆるテンション・アニーリングを行うことにより、鉄系合金の記憶形状を精密に制御できるようになる。溶体化処理中に応力をかける場合、応力は0.1~50 kgf/mm2であるのが好ましい。
【0042】
加熱処理後、50℃/秒以上の速度で急冷することにより、γ単相状態を凍結させる。急冷は水などの冷媒に入れるか、強制空冷によって行うことができる。冷却速度を50℃/秒未満にすると、β相(B2構造のβ相)が析出してしまい、形状記憶性が得られない。好ましい冷却速度は50℃/秒以上である。
【0043】
(c) 時効処理
溶体化処理の後に時効処理を行うのが好ましい。時効処理を行うことにより、Ni3Al等のfcc及び/又はfct構造を有する規則相が現れ、母相が強化されると共に、マルテンサイトの熱ヒステリシスが小さくなり、形状記憶性及び超弾性が向上する。時効処理は200℃以上800℃未満の温度で行う。200℃未満で処理すると、上記規則相の析出が不十分となる。一方800℃以上で処理すると、安定相であるβ相が析出するため好ましくない。
【0044】
時効処理時間は鉄系形状記憶合金の組成及び処理温度により異なる。700℃以上800℃未満の温度で行う場合、時効処理時間は10分間~50時間であるのが好ましい。また、200℃以上700℃未満の温度で行う場合、時効処理時間は30分間~200時間であるのが好ましい。時効処理時間が前記時間よりも短いと効果が不十分である。一方、時効処理時間が前記時間を超えると、β相が析出して形状記憶性が消失するおそれがある。
【0045】
[3] 鉄系合金の結晶組織及び特性
本発明の鉄系合金は実質的に、母相である面心立方(fcc)構造のγ相中に、L12構造のγ’規則相が微細に分散した2相組織を有する。前記γ相は冷却することにより体心正方(bct)構造のα’相にマルテンサイト変態し、再度加熱することにより、母相γ相に逆変態する。マルテンサイト変態開始温度(Ms点)、及びその逆変態終了温度(Af点)は、電気抵抗測定により求めることができる。図1に示す通り、一般に形状記憶合金には、マルテンサイト変態とその逆変態とにヒステリシスがある。冷却過程での電気抵抗曲線からマルテンサイト変態開始温度(Ms点)を求めることができ、加熱過程での電気抵抗曲線から逆変態終了温度(Af点)を求めることができる。
【0046】
形状記憶合金における超弾性は、Af点以上におけるマルテンサイトの応力誘起変態、及びその逆変態により得られる。しかし、前記ヒステリシス幅が大きいと、マルテンサイト変態を誘起させるために必要な応力が高くなるため、容易に転位等の永久歪みが導入されてしまい、良好な超弾性が得られなくなる。従ってヒステリシス幅を小さくすることにより、低い応力でマルテンサイト変態を誘起し、変形時に転位等の永久歪みが導入されずに、良好な超弾性を得ることができる。鋭意研究の結果、このような超弾性を得るためには、本発明の鉄系合金の熱ヒステリシスの幅は100℃以下であることが必要なことがわかった。好ましい熱ヒステリシスの幅は70℃以下である。

【0047】
本発明の鉄系合金は、前記母相γ相の特定結晶方位が揃った再結晶集合組織を有する。合金組織の結晶方位は電子背面散乱パターン法で測定することができ、結晶方位の揃え具合を表す存在頻度で表すことができる。γ相の特定結晶方位は、圧延、伸線等の冷間加工方向に揃っていることが好ましく、<100>又は<110>方向であることが好ましい。加工方向における特定結晶方位<100>の存在頻度は、結晶方位が完全にランダムになっている場合を1と仮定したときの存在率であり、値が大きいほど結晶方位がより揃っていることを表す。本発明の鉄系合金の加工方向における特定結晶方位の存在頻度は好ましくは2 以上であり、より好ましくは2.5 以上である。
【0048】
100℃以下の熱ヒステリシスを有し、母相γ相の結晶方位揃った本発明の鉄系合金は、従来の鉄系合金に比べ、実用温度域で安定かつ優れた形状記憶性、及び超弾性を有する。形状回復率は概ね80%以上であり、超弾性は0.5%以上である。また降伏応力(0.2%耐力)は概ね600 MPa以上である。さらに本発明のFe基形状記憶合金は良好な硬度、引張強度及び破断伸びを有するため、加工性に優れている。

【0049】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0050】
実施例1~5及び比較例1
実施例1~5及び比較例1の鉄系合金を、表1に示す合金組成及び時効処理時間で下記の方法により作製した。
【0051】
表1に示す成分の合金を溶解し、平均140℃/分の冷却速度で凝固して、直径12 mmのビレットを作製した。このビレットを1300℃で熱間圧延し、厚さ1.3 mmの板材を得た。この熱間圧延材に対して、1300℃で10分間の第一の焼鈍を行った後に、冷間圧延を複数回行い厚さ0.65 mmとした。その後、同条件で第二の焼鈍を行い、冷間圧延を複数回行い厚さ0.2 mmの板材を作製した。第二の焼鈍(最終焼鈍)後の合計加工率は70%であった。各板材を1300℃で30分間加熱処理した後、氷水中へ投入して急冷した(溶体化処理)。次いで600℃で時効処理を表1に示す時間行い、fcc構造のγ相とL12構造のγ’相の2相からなり、形状記憶性及び超弾性を有する鉄系合金の板材を得た。上記第一の焼鈍工程から時効処理までの工程を図2に概略的に示す。
【0052】
【表1】
JP0005065904B2_000002t.gif

【0053】
実施例1~5及び比較例1の鉄系合金について、マルテンサイト変態及び逆変態の熱ヒステリシスの温度幅[Af点(逆変態終了温度)とMs点(マルテンサイト変態開始温度)との差]、圧延方向における<100>の存在頻度、形状記憶性による形状回復率、及び超弾性歪みの最大値(超弾性)を以下の方法により測定した。結果を表2に示す。
【0054】
(1) 熱ヒステリシスの温度幅(Af点とMs点との差)
板材のMs点及びAf点を、電気抵抗測定により求め(図1参照)、その差を熱ヒステリシスの温度幅とした。
【0055】
(2) 圧延方向における<100>の存在頻度
電子背面散乱パターン測定装置(TSL社製のOrientation Imaging Microscope)を用いて、得られた板材の圧延方向におけるγ相の結晶方位<100>の存在頻度を測定した。

【0056】
(3) 形状記憶性による形状回復率
板材に液体窒素中で2%の曲げ歪みを与え、液体窒素から取り出し、曲がった状態での曲率半径R0を測定した。次に曲がった板材を100℃に加熱し、形状回復を起こさせた後の曲率半径R1を測定し、次式:形状回復率(%)=100×(R1-R0)/R1により、形状回復率を算出した。
【0057】
(4) 超弾性歪みの最大値(超弾性)
超弾性歪みは室温における板材の引張りサイクル試験によって得られる応力-歪み曲線から求めた。典型的な測定結果を図3(a)に示す。引張りサイクル試験は、初期試料長に対して2%(サイクル1)から4%(サイクル2)、6%(サイクル3)・・・と2%ずつ増加する歪みを試料に印加後除くサイクルを試料が破断するまで繰り返すことにより行ったiサイクル目の応力-歪み曲線から、図3(b)に示すように、iサイクル目に得られる超弾性歪み(εSEi)を次式により求めた。
εSEi(%)=εti-εri-εei
(iはサイクル数、εtiはiサイクル目の印可歪み、εriはiサイクル目の残留歪み、及びεeiはiサイクル目の純粋な弾性変形歪みを示す。)
板材が破断するまでに得られた超弾性歪みの最大値を下記の基準により評価した。図4は実施例3の板材の最大歪みが2%のときの応力-歪み曲線を示す。
最大超弾性歪み:4%以上・・・・・・・◎
最大超弾性歪み:2%以上4%未満 ・・・○
最大超弾性歪み:0.5%以上2%未満・・・△
最大超弾性歪み:0.5%未満・・・・・・・×

【0058】
【表2】
JP0005065904B2_000003t.gif
注:(1) マルテンサイト変態及び逆変態の熱ヒステリシスにおける逆変態終了温度(Af点)とマルテンサイト変態開始温度(Ms点)との差(熱ヒステリシスの幅に相関する)。
【0059】
表2からわかるように、マルテンサイト変態及び逆変態の熱ヒステリシスの温度幅が100℃以下である実施例1~5はいずれも、80%以上の形状記憶回復率及び0.5%以上の最大超弾性歪み(超弾性)を示した。しかし、圧延方向における<100>の存在頻度はほぼ同等であるが、熱ヒステリシスの温度幅が200℃の比較例1では、形状回復率が80%未満であった。また超弾性も0.5%未満であった。これらの結果から、熱ヒステリシスの温度幅が小さな実施例1~5の鉄系合金は、熱ヒステリシスの温度幅が大きな比較例1の鉄系合金より優れた形状記憶性及び超弾性を有することが分かる。

【0060】
実施例6
実施例4と同じ組成の鉄系合金を溶解し、平均140℃/分の冷却速度で凝固して、直径20 mmのビレットを作製した。このビレットを1300℃で熱間圧延し、厚さ1.6 mmの板材を得た。この熱間圧延材に対して、1300℃で10分間の第一の焼鈍を行い空冷した後に、冷間圧延を複数回行い厚さ0.8 mmとした。その後、同条件で第二の焼鈍→冷間圧延→第三の焼鈍→冷間圧延を行うことにより、厚さ0.2 mmの板材を作製した。第三の焼鈍(最終焼鈍)後の合計加工率は50%であった。得られた板材を1300℃で30分間加熱処理した後、氷水中へ投入して急冷した(溶体化処理)。次いで600℃で90時間の時効処理を行い、fcc構造のγ相とL12構造のγ’相の2相からなり、形状記憶性及び超弾性を有する鉄系合金の板材を得た。実施例6の合金の第一の焼鈍工程から時効処理までの工程を図5(a)に概略的に示す。
【0061】
実施例7~9及び比較例2
実施例6と同じ組成の鉄系合金に、図5(b)~図5(e)に示すパターンで焼鈍及び冷間圧延を施した。図5(b) は実施例7を示し、図5(c) は実施例8を示し、図5(d) は実施例9を示し、図5(e) は比較例2を示す。最終焼鈍後の冷間加工の合計加工率を表3に示す。

【0062】
実施例6~9及び比較例2について、圧延方向における<100>の存在頻度、形状回復率、及び超弾性を実施例4と同じ方法で測定し、方位差が15°以下の小角粒界の割合を電子背面散乱パターン測定装置により測定した。最終焼鈍後の合計冷間加工率とともに結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
JP0005065904B2_000004t.gif

【0064】
図6及び図7はそれぞれ実施例9及び比較例2で得られた板材の、圧延方向における各結晶方位の存在頻度を等高線で表した逆極点図である。実施例9(図6)では、等高線が<100>方向に集まっており、<100>方向が圧延方向に揃っており、圧延方向における<100>の存在頻度は11.0であった。一方、比較例2(図7)では、結晶方位がほぼランダムに分散しており、圧延方向における<100>の存在頻度は1.5であった。図8は実施例9の最大歪みが15%のときの応力-歪み曲線を示す。約13%の超弾性歪みが得られることが分かる。

【0065】
表3からわかるように、最終焼鈍後の合計加工率が50%以上である実施例6~9は、圧延方向における<100>の存在頻度が2以上であり、<100>方向が圧延方向に揃っていた。また方位差が15°以下の小角粒界の割合20%以上であり、いずれも90%以上の形状回復率及び0.5%以上の超弾性を示した。しかし最終焼鈍後の合計加工率が30%の比較例2は、圧延方向における<100>の存在頻度が1.5であり、<100>の方向がほぼランダムであった。また方位差が15°以下の小角粒界の割合が7%以下であり、形状回復率が90%未満で、超弾性も0.5%未満であった。これらの結果から、最終焼鈍後の冷間加工の合計加工率が高い鉄系合金ほど特定結晶方位が揃っており、もって優れた形状記憶性及び超弾性を有することが分かった。

【0066】
実施例10
実施例4と同じ組成の鉄系合金を溶解し、平均140℃/分の冷却速度で凝固して25 mm角のビレットを作製した。ビレットを1250℃で熱間圧延し厚さ18 mmの板材を得た。得られた熱間圧延材に対して、1300℃で10分間の第一の焼鈍を行い空冷した後に、冷間圧延を複数回行い厚さ5.5 mmの板材を得た。さらに1000℃で1時間の第二の焼鈍を行い空冷した後に、冷間圧延を複数回行い厚さ0.2 mmの板材を得た。板材を1300℃で30分間加熱処理した後、氷水中へ投入し急冷した。次いで600℃で90時間の時効処理を行い、fcc構造のγ相とL12構造のγ’相の2相からなり、形状記憶性及び超弾性を有する鉄系合金の板材を得た。上記第一の焼鈍工程から時効処理までの工程を図9に概略的に示す。得られた板材を用いて以下の測定を行った。
【0067】
(1) 温度変化に伴う磁化曲線変化
振動試料型磁力計(VSM)を用いて、25℃[母相:Af点より高い温度]及び-193℃[マルテンサイト相+母相:Ms点より低い温度]で、板材の板面に平行に外部磁場を印加し磁化特性を測定した。結果を図10に示す。温度低下に伴うマルテンサイト相の生成により、飽和磁化の大きさが急激に上昇することが分かった。
【0068】
(2) 歪み印加に伴う磁化曲線変化
図11に示すように、25℃で各歪み量(0%、4%、8%及び12%)を与えながら磁化特性を測定した。結果を図12に示す。歪み印加によってマルテンサイト相分率の増加(応力誘起変態)が起こり、それに伴って飽和磁化の大きさが増加した。またこの合金は超弾性を示すため、歪みの除去によりほぼ変形前の磁化特性に戻った。
【0069】
(3) 磁歪
図13に示すように、無磁場状態で一定応力を与えた試料板に25℃で磁場を印加して、応力印加方向に生じる歪み変化を測定した。結果を図14に示す。外部磁場の増加に伴い歪みは徐々に増加し、約11 kOeを超えると急激に増加し、最大で0.9%の磁歪となった。磁場を除去しても歪みは元に戻らなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の鉄系合金は、実用温度域で安定かつ良好な形状記憶性、及びTi-Ni基、Cu基等の従来の形状記憶多結晶合金では得られない大きな超弾性を有する。その上、材料コストが安く、加工性にも優れているので、線材、板材、箔、バネ材、パイプ材等の多様な加工品への適用が可能である。電子レンジのダンパー、エアコン風向制御、各種液体及び蒸気調圧弁、建築用の換気口、携帯電話のアンテナ、眼鏡フレーム、ブラジャー、カテーテル用ガイドワイヤー、ステント等医療機器の機能部材、ゴルフクラブ、テニスラケット等のスポーツ用品等の従来の形状記憶合金の代替材としてのみならず、一般構造用材料、建築用材料、鉄道車両や自動車のボディやフレーム材等に使用できる。
【0071】
本発明の鉄系合金は磁性を示すので、磁場駆動マイクロアクチュエータや磁場駆動スイッチ等の磁場駆動素子、磁気歪みセンサー等の応力—磁気機能素子に利用することができる。さらにマルテンサイト変態に伴って大きな磁化変化(飽和磁化の増大)を示すので、温度変化(母相とマルテンサイト相との間の変態)に伴う磁化変化を利用した感温磁性素子、歪み印加及び除去に伴う磁化変化を用いた磁気歪みセンサー、及び母相に磁場印加することにより生じるマルテンサイト変態を利用した巨大磁歪素子として利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3(a)】
2
【図3(b)】
3
【図4】
4
【図5(a)】
5
【図5(b)】
6
【図5(c)】
7
【図5(d)】
8
【図5(e)】
9
【図6】
10
【図7】
11
【図8】
12
【図9】
13
【図10】
14
【図11】
15
【図12】
16
【図13】
17
【図14】
18