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明細書 :フロック加工された体内留置型医療機器、該体内留置型医療機器の製造方法、および該体内留置型医療機器の製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5002784号 (P5002784)
登録日 平成24年6月1日(2012.6.1)
発行日 平成24年8月15日(2012.8.15)
発明の名称または考案の名称 フロック加工された体内留置型医療機器、該体内留置型医療機器の製造方法、および該体内留置型医療機器の製造装置
国際特許分類 A61L  31/00        (2006.01)
A61F   2/06        (2006.01)
A61F   2/04        (2006.01)
FI A61L 31/00 Z
A61F 2/06
A61F 2/04
請求項の数または発明の数 29
全頁数 46
出願番号 特願2007-546527 (P2007-546527)
出願日 平成18年11月27日(2006.11.27)
国際出願番号 PCT/JP2006/323621
国際公開番号 WO2007/061100
国際公開日 平成19年5月31日(2007.5.31)
優先権出願番号 2005342740
優先日 平成17年11月28日(2005.11.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年4月24日(2008.4.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】510094724
【氏名又は名称】独立行政法人国立循環器病研究センター
【識別番号】596041847
【氏名又は名称】株式会社井元製作所
発明者または考案者 【氏名】古薗 勉
【氏名】安田 昌司
【氏名】井元 俊之
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】横田 倫子
参考文献・文献 米国特許第02927584(US,A)
特開平06-327757(JP,A)
特開2005-112848(JP,A)
特開平01-107758(JP,A)
特開平08-206193(JP,A)
特開平07-306201(JP,A)
特開2005-319002(JP,A)
Fiber Preprints, Japan, 56[2] (2001) p.59(2K19)
Soc Plast Eng Annu Tech Conf., 38 (1980) p.622-624
マテリアルインテグレーション, 18[6] (2005.5) p.46-49
Clinical Engineering, 16[9] (2005.8) p.959-966
調査した分野 A61L 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
生体内に挿入される医療用チューブを当該医療チューブの挿入位置で固定するための経皮端子であって、
当該経皮端子の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなり、
上記生体親和性を有する短繊維が、短繊維の形状の基材と生体親和性セラミックスとが結合してなる生体親和性セラミックス複合体からなり、上記生体親和性セラミックスがリン酸カルシウムであることを特徴とする経皮端子。
【請求項2】
上記経皮端子の基体の単位面積と当該単位面積に被覆されている短繊維の表面積との割合が少なくとも2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の経皮端子。
【請求項3】
上記基材は、高分子基材である、請求項1または2に記載の経皮端子。
【請求項4】
上記生体親和性を有する短繊維は、長軸方向の長さが1μm以上1cm未満の範囲内であり、短軸方向の長さが1nm以上1mm未満の範囲内の柱状である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の経皮端子。
【請求項5】
上記経皮端子の基体には、上記医療用チューブの挿入方向に対する当該基体の移動を抑制する鍔部が設けられている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の経皮端子。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の経皮端子を備えることを特徴とする医療用チューブ。
【請求項7】
経皮端子の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなる経皮端子を製造するための方法であって、
第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された経皮端子の基体を配置する工程、
第2電極板上に生体親和性を有する短繊維を載置する工程、
経皮端子の基体を回転させる工程、および
第1電極板と第2電極板に電圧を印加することにより、上記短繊維を起毛させる工程、を含み、
当該第1電極板と経皮端子の基体とが電気的に接続されており、
上記第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された経皮端子の基体を配置する工程は、
経皮端子への医療用チューブの挿入方向に対する第1電極板および第2電極板の角度が、0°を超え90°未満となるように、第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された経皮端子の基体を配置する工程である、方法。
【請求項8】
上記生体親和性を有する短繊維を加湿する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記生体親和性を有する短繊維は、生体親和性セラミックス、または基材と生体親和性セラミックスとが結合してなる生体親和性セラミックス複合体からなる、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
上記生体親和性セラミックスは、リン酸カルシウムである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記基材は、高分子基材である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
上記生体親和性を有する短繊維は、その長軸方向の長さが1μm以上1cm未満の範囲内であり、短軸方向の長さが1nm以上1mm未満の範囲内の柱状である、請求項7ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
経皮端子の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなる経皮端子を製造するための装置であって、
第1電極板、第2電極板、および
経皮端子の基体を支持するための支持部と当該支持部を回転させるための回転部とを備える回転支持部を備え、
重力方向を下とした場合に当該第2電極板は第1電極板の下に配置されており、
当該第2電極板は生体親和性を有する短繊維を載置可能に構成されており、
当該支持部に支持される経皮端子の基体が第1電極板と第2電極板との間に配置されるように回転支持部が配置されており、
当該支持部は第1電極板と電気的に接続されており、かつ当該支持部は経皮端子の基体と電気的に接続可能に構成されており、上記回転支持部は、当該支持部に支持される経皮端子の基体が、第1電極板と第2電極板との間において、経皮端子への医療用チューブの挿入方向に対する第1電極板および第2電極板の角度が、0°を超え90°未満となるように配置されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
上記生体親和性を有する短繊維を加湿するための加湿手段をさらに備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
上記第1電極板、第2電極板、および支持部を少なくとも収容するための容器と、
当該容器内の湿度を制御するための湿度制御部と、
をさらに備える、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
生体内に留置する体内留置型医療機器にあって、
当該体内留置型医療機器の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなり、
上記生体親和性を有する短繊維が、短繊維の形状の基材と生体親和性セラミックスとが結合してなる生体親和性セラミックス複合体からなり、上記生体親和性セラミックスがリン酸カルシウムであることを特徴とする体内留置型医療機器。
【請求項17】
上記体内留置型医療機器の基体の単位面積と当該単位面積に被覆されている短繊維の表面積との割合が少なくとも2倍以上であることを特徴とする請求項16に記載の体内留置型医療機器。
【請求項18】
上記基材は、高分子基材である、請求項16または17に記載の体内留置型医療機器。
【請求項19】
上記生体親和性を有する短繊維は、長軸方向の長さが1μm以上1cm未満の範囲内であり、短軸方向の長さが1nm以上1mm未満の範囲内の柱状である、請求項16ないし18のいずれか1項に記載の体内留置型医療機器。
【請求項20】
上記体内留置型医療機器は、人工血管、ステント、ステントグラフト、人工気管、ペースメーカー、人工心臓及びアクセスポートのうち、いずれか1つの医療機器であることを特徴とする請求項16ないし19のいずれか1項に記載の体内留置型医療機器。
【請求項21】
体内留置型医療機器の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなる体内留置型医療機器を製造するための方法であって、
第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された体内留置型医療機器の基体を配置する工程、
第2電極板上に生体親和性を有する短繊維を載置する工程、
体内留置型医療機器の基体を回転させる工程、および
第1電極板と第2電極板に電圧を印加することにより、上記短繊維を起毛させる工程、を含み、
当該第1電極板と体内留置型医療機器の基体とが電気的に接続されており、
上記第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された経皮端子の基体を配置する工程は、
体内留置型医療機器の挿入方向に対する第1電極板および第2電極板の角度が、0°を超え90°未満となるように、第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された体内留置型医療機器の基体を配置する工程である、方法。
【請求項22】
上記生体親和性を有する短繊維を加湿する工程をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
上記生体親和性を有する短繊維は、生体親和性セラミックス、または基材と生体親和性セラミックスとが結合してなる生体親和性セラミックス複合体からなる、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
上記生体親和性セラミックスは、リン酸カルシウムである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
上記基材は、高分子基材である、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
上記生体親和性を有する短繊維は、その長軸方向の長さが1μm以上1cm未満の範囲内であり、短軸方向の長さが1nm以上1mm未満の範囲内の柱状である、請求項21ないし25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
体内留置型医療機器の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなる体内留置型医療機器を製造するための装置であって、
第1電極板、第2電極板、および
体内留置型医療機器の基体を支持するための支持部と当該支持部を回転させるための回転部とを備える回転支持部を備え、
重力方向を下とした場合に当該第2電極板は第1電極板の下に配置されており、
当該第2電極板は生体親和性を有する短繊維を載置可能に構成されており、
当該支持部に支持される体内留置型医療機器の基体が第1電極板と第2電極板との間に配置されるように回転支持部が配置されており、
当該支持部は第1電極板と電気的に接続されており、かつ当該支持部は体内留置型医療機器の基体と電気的に接続可能に構成されており、上記回転支持部は、当該支持部に支持される体内留置型医療機器の基体が、第1電極板と第2電極板との間において、体内留置型医療機器の挿入方向に対する第1電極板および第2電極板の角度が、0°を超え90°未満となるように配置されていることを特徴とする装置。
【請求項28】
上記生体親和性を有する短繊維を加湿するための加湿手段をさらに備える、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
上記第1電極板、第2電極板、および支持部を少なくとも収容するための容器と、
当該容器内の湿度を制御するための湿度制御部と、
をさらに備える、請求項27または28に記載の装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、体内留置型医療機器(体内留置型医療用デバイス)における生体内挿入部での細菌感染を防止するための経皮端子に関するものであり、または体内でズレを防止する医療機器に関するものであり、より詳細には、基体の表面が生体親和性を有する繊維でフロック加工されており、生体との密着性が高い経皮端子等の体内留置型医療機器に関するものである。また本発明は、上記体内留置型医療機器の製造方法、および上記体内留置型医療機器の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、経皮カテーテル等の体内留置型医療機器が医療に用いられている。例えば、上記経皮カテーテルは、生体外から生体内に挿入され、腹膜透析等の医療行為が行なわれている。ところが、経皮カテーテル等の体内留置型医療機器を生体内に埋植(移植)した場合、生体組織が、上記体内留置型医療機器を異物と認識してしまう。そして、上記生体組織と上記医療機器とが密着しないため、例えば経皮カテーテルの場合、表皮がカテーテルに沿って内側に落ち込む、いわゆるダウングロース(上皮組織がカテーテル表面に沿って内部へ陥入していく現象)が生じることとなる。そして、このダウングロースが深くなると消毒が行き届かず、細菌の感染経路を形成することとなり、皮膚の炎症などを引き起こしてしまう。そして、最終的には上記体内留置型医療機器を引き抜かなければならない状態を生じてしまうという問題がある。また、経皮カテーテル以外の体内留置型医療機器においても、体内で位置がずれるという問題がある。そこで、このような問題点を解決するために、生体への密着性を付与した様々な体内留置型医療機器が提案されている。
【0003】
例えば、腹腔内留置カテーテルや中心静脈カテーテルは、細菌感染防止やカテーテルを生体内に固定するためのダクロン性不織布からなるカフ部材(ダクロンカフ)を備えている(例えば特許文献5参照)。上記ダフロンカフの部分を皮下に埋め込むことにより、皮下の結合組織が増生し強固に固定され、カテーテルの固定が確実となり事故抜去の可能性が減少する。しかしながら、上記カテーテルの場合であっても、上記ダクロンカフと生体組織とが接着しておらず、完全に細菌感染を防止することはできない。
【0004】
また、その他の体内留置型医療機器として、生体親和性の高いハイドロキシアパタイトセラミックスからなる経皮端子が提案されている(非特許文献2参照)。しかしながら、上記の従来の技術に開示の構成では、以下に示す問題がある。上記非特許文献2に開示の構成では、ハイドロキシアパタイトセラミックスのみで経皮端子が構成されている。ハイドロキシアパタイトは、歯の成分であり優れた軟組織に対する親和性を示すが、ハイドロキシアパタイトセラミックスは、硬くて脆い性質がある。よって上記経皮端子は硬く、生体内に埋植した場合にハイドロキシアパタイトセラミックスと生体組織との間に隙間ができる場合があり、生体との密着性が悪いと問題点がある。さらに、ハイドロキシアパタイトセラミックスのみで経皮端子を製造する場合には、当該経皮端子のサイズが大きくなってしまうという問題点もある。よって、上記非特許文献2に開示の構成では、上記経皮端子が破損し易く、また、上記経皮端子を生体内に埋植した場合には、患者が当該経皮端子端子の固さにより違和感を生じてしまうという種々の問題点がある。
【0005】
またその他の例として、生体との密着性を付与すべく、医療用デバイスの基材または医療用材料の基材の表面に、生体親和性の高いリン酸カルシウムを修飾する方法が提案されている。具体的には、例えば、スパッタリングイオンビームを用いて高分子等からなる医療用部品の基材の表面にリン酸カルシウムを修飾する方法が特許文献6に開示されており、ガラスまたはリン酸カルシウム系セラミックス等の基材の表面に、浸漬法によってリン酸カルシウムを修飾させる方法が特許文献7に開示されており、無機生体材料の表面にリン酸カルシウムを析出させる方法が特許文献8に開示されており、医療用材料の表面にリン酸カルシウム等をブラスト処理法などによって機械的に圧接する方法が特許文献9に開示されており、有機高分子等の医療用材料の基材表面に、交互浸漬法を利用してリン酸カルシウムを修飾させる方法が特許文献10に開示されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献6~10に開示の方法において基材の表面に修飾されるリン酸カルシウムはいずれもアモルファスであり、生体内で溶解し易い。それゆえ、上記特許文献6~10に記載された医療用材料を用いて製造された医療用デバイスの生体親和性は、生体内において長期間持続しない。よって、上記リン酸カルシウムを生体において、溶解させる用途(例えば、骨置換材料)においては、好適に使用することができるが、上記リン酸カルシウムを長期間、体内で保持する用途(例えば、経皮端子)等においては、好適に用いることができない。また、上記特許文献6~10に開示の修飾法では、リン酸カルシウムを基材に、物理的または静電的に固着しており、接着強度が弱いという問題点がある。
【0007】
そこで、上記リン酸カルシウムを長期間、体内で保持するという用途に対応するために、高分子基材の表面を上記リン酸カルシウムで修飾する方法が求められ、種々提案された。例えば、特許文献11~13に開示されている方法等が提案されている。上記特許文献11には、腹腔内留置カテーテルの高分子基材の表面にハイドロキシアパタイトからなるセラミック多孔質粒子を、接着剤を用いて固定することや、高分子基材を溶融することによって当該セラミック多孔質粒子をその表面に固定することが記載されている。また、特許文献12には高分子基材の表面にハイドロキシアパタイト等のリン酸カルシウムを化学結合させた医療用材料が開示されている。特許文献13には有機繊維集合体又は無機繊維集合体をリン酸カルシウム系化合物で被覆した上で、人工気管等に接合する技術が開示されている。
【0008】
しかし、特許文献11に記載されているように、カテーテルの表面に生体親和性の高いハイドロキシアパタイトからなる多孔質粒子を接着や溶融させた場合には、カテーテルに直接、ハイドロキシアパタイトを取り付けているため、上記ハイドロキシアパタイトを取り付けた部分の物性が他の部分とは異なってしまうという問題がある。特に、ハイドロキシアパタイトからなる多孔質粒子を溶融によってカテーテルに導入した場合には、カテーテルの物性が損なわれ、破断する恐れがある。また、カテーテルにハイドロキシアパタイトを接着剤によって、直接接着した場合には、接着剤にハイドロキシアパタイトが取り込まれてハイドロキシアパタイトが露出している面積が少なくなったり、接着が不十分である場合にはハイドロキシアパタイトがカテーテルから脱離したりする場合があるという問題点がある。特許文献13に記載されているように、繊維集合体をリン酸カルシウム系化合物で被覆する場合は、リン酸カルシウム系化合物で被覆されていない繊維が露出する恐れがある。また、予め、リン酸カルシウム系で被覆された繊維集合層を作製した上で、プラスチック成形体に接合する必要があるため、複雑な形状の医療機器等に適用することが困難であるという問題点がある。さらに、特許文献13ではリン酸カルシウムを液相析出法で形成しているが、液相析出法で形成されるリン酸カルシウムはアモルファスであるため体内で溶けやすい。また、特許文献13では、段落〔0012〕にも記載の通り、リン酸カルシウムによる被覆の厚さを1μm未満とすることが困難である。これは、液相析出法等の従来の方法では、1μm未満の厚さで工業的に均一に被覆することが困難であり、さらに体内で溶けやすくなるからである。
【0009】
そこで本発明者らは、シルクフィブロインとハイドロキシアパタイトとが化学結合して作製され、かつ生体親和性が高い、ハイドロキシアパタイト複合体粒子を独自に開発した(特許文献14参照)。そして当該ハイドロキシアパタイト複合体粒子を基体表面に接着することによって生体密着性の高い経皮端子を作製した(非特許文献3参照)。上記経皮端子および当該経皮端子を備えるカテーテルは、従来の経皮端子に比してはるかに生体密着性が高いものであった。
【0010】
ところで、従来公知のフロック加工法は、電気植毛または電着植毛とも呼ばれており、高圧静電界における静電吸引力を利用して、あらかじめ接着剤を塗布した基材に短繊維(「パイル・フロック」または「パイル」とよぶ)を垂直に植えつける加工法である。また、単に短繊維を植えつけることのみならず、接着剤、短繊維、基材等を選定することによって、各種各様の効果を得ることができるため、広範な分野において利用されている(非特許文献1参照)。例えば、上記フロック加工法は、衣料製品や繊維製品の加工に利用されており(例えば、特許文献1~3参照)、また化粧・美容用具の加工や(例えば特許文献4参照)、ゴム手袋等の弾性材料の加工にも利用されている(例えば特許文献15参照)。しかしながら、これまでに医療用材料の加工においてフロック加工法が用いられた例はない。これは、短繊維を経皮カテーテル等の体内留置型医療機器の表面にフロック加工するなどという、技術的思想自体がそもそも存在しなかったことによる。

【非特許文献1】「新高分子文庫17 フロック加工の実際」、著者:飯沼憲政、出版社:株式会社高分子刊行会、p1-、発行日:昭和54年8月1日
【非特許文献2】H. AOKI, in“Medical Applications of Hydroxyapatite” (Ishiyaku EuroAmerica, Inc., 1994) p.133-155
【非特許文献3】Tsutomu Fruzono, PhD・Shoji Yasuda, MS・Tsuyoshi Kimura, PhD・Singo Kyotani, MD・Junzo Tanaka, PhD・Akio Kishida, PhD, ”Nano‐scaled hydroxyapatite/polymer composite IV. Fabrication and cell adhesion properties of a three‐dimensional scaffold made of composite material with a silk fibroin substrate to develop a percutaneous device”, J Artif Organs (2004) 7:137-144
【特許文献1】特開平7-116557号公報(公開日:平成7年(1995)5月9日)
【特許文献2】特表2000-505845号公報(公開日:2000年5月16日)
【特許文献3】特開平6-141926号公報(公開日:平成6年(1994)5月24日)
【特許文献4】特開2003-38596号公報(公開日:2003年2月12日)
【特許文献5】特開平8-206193号公報(公開日:平成8年(1996)8月13日)
【特許文献6】特開平8-56963号公報(公開日:平成8年(1996)3月5日)
【特許文献7】特開平7-306201号公報(公開日:平成7年(1995)11月21日)
【特許文献8】特開昭63-270061号公報(公開日:昭和63年(1988)11月8日)
【特許文献9】特開平7-303691号公報(公開日:平成7年(1995)11月21日)
【特許文献10】特開2000-342676公報(公開日:2000年12月12日)
【特許文献11】特開平10-15061号公報(公開日:平成10年(1998)1月20日)
【特許文献12】特開2001-172511号公報(公開日:2001年6月26日)
【特許文献13】特開平06-327757号公報(公開日:平成6年(1994)11月29日)
【特許文献14】特開2004-51952号公報(公開日:2004年2月19日)
【特許文献15】米国特許出願公開第2004/0033334号明細書(公開日:2004年2月19日)
【発明の開示】
【0011】
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、発明者らが作製した経皮端子(非特許文献3)は、生体親和性の高いハイドロキシアパタイト複合体粒子が経皮端子の基体表面に対して垂直(または略垂直)に起毛したものではなく、経皮端子の基体の単位面積と当該単位面積に被覆されているハイドロキシアパタイト複合体粒子の表面積との割合が極めて高いものではなかった。また上記のような経皮端子の基体表面にハイドロキシアパタイト複合体粒子を接着するという方法では、胴部と鍔部とを備えた経皮端子のごとく複雑な形状をした経皮端子の基体表面にハイドロキシアパタイト複合体粒子を接着する場合において、特に胴部と鍔部との境界付近への接着が困難な場合があり、経皮端子の基体の表面をハイドロキシアパタイト複合体粒子で十分に被覆することができない場合があった。よって、上記発明者らが作製した経皮端子を用いた場合であっても、十分な生体密着性が得られない場合があった。
【0012】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、生体組織との密着性(生体密着性)が高く、かつ、医療用チューブを経皮部付近にて固定することができる経皮端子、および該経皮端子を備える医療用チューブ等の医療用デバイスを提供することにある。また本発明は、上記のような生体密着性の高い経皮端子を製造するための方法、特に胴部と鍔部とを備えた経皮端子のごとく複雑な形状をした経皮端子であっても、その基体表面に生体親和性の高いハイドロキシアパタイト複合体粒子等の短繊維を被覆することが可能な方法を提供することを目的としている。さらに本発明は上記のような生体密着性の高い経皮端子を製造するための装置を提供することを目的としている。さらには、本発明は、生体密着性が高く、体内で安定して固定することができる体内留置型医療機器を提供することにある。また本発明は上記のような生体密着性が高い体内留置型医療機器を製造するための方法および装置を提供することを目的としている。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明にかかる経皮端子は、上記課題を解決するために、生体内に挿入される医療用チューブを当該医療チューブの挿入位置で固定するための経皮端子であって、当該経皮端子の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなることを特徴としている。
【0014】
また本発明にかかる経皮端子は、生体内に挿入される医療用チューブを当該医療チューブの挿入位置で固定するための経皮端子であって、当該経皮端子の基体の表面が生体親和性を有する短繊維で被覆されており、かつ当該経皮端子の基体の単位面積と当該単位面積に被覆されている短繊維の表面積との割合が少なくとも2倍以上であることを特徴としている。
【0015】
上記経皮端子とは、例えば、カテーテルや、補助人工心臓(VAS)の送血管・脱血管等の生体内と生体外とを結ぶ医療用チューブを生体内で固定するものである。具体的には、経皮端子は、皮下組織およびその近傍の生体組織を経由して生体のさらに内部に挿入される医療用チューブを経皮部(皮下組織およびその近傍)で固定するものである。
【0016】
上記本発明にかかる経皮端子は、経皮端子の基体の表面が生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなるものであるため、経皮端子の基体の表面に対して垂直または略垂直に生体親和性を有する短繊維が起毛している。その結果、経皮端子の基体の単位面積と当該単位面積に被覆されている生体親和性を有する短繊維の表面積との割合が著しく向上するため、該経皮端子と生体組織との接着性が向上し、該経皮端子を備えたカテーテル等の医療デバイスを安定的に生体へ固定することが可能となる。
【0017】
また本発明にかかる経皮端子は、上記生体親和性を有する短繊維が、生体親和性セラミックス、または基材と生体親和性セラミックスとが結合してなる生体親和性セラミックス複合体からなるものであることが好ましい。また、本発明にかかる経皮端子は、上記生体親和性セラミックスが、リン酸カルシウムであることがさらに好ましい。また本発明にかかる経皮端子は、上記基材が高分子基材であることが好ましい。
【0018】
ここで、生体親和性セラミックスとは、生体組織との親和性(接着性)をもつセラミックスを指し、特にリン酸カルシウム焼結体や粒子表面を処理することにより生体との接着性を発現する酸化チタンなどのことである。すなわち、上記生体親和性セラミックスとは、リン酸カルシウムおよび酸化チタンの少なくとも一方を示す。
【0019】
また、生体親和性セラミックス複合体とは、生体親和性を有する基材(高分子基材)と生体親和性セラミックスとが化学結合や接着剤等を介して結合しているものであり、基材の物性と生体親和性セラミックスの物性との両方の物性を備えているものである。そして、上記生体親和性セラミックスは、生体組織との親和性をもち、また、上記基材および基体は、生体内に埋植した場合でも生体に影響を及ぼさないものである。そして、上記基材および基体は、弾性を有していることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、経皮端子の基体の表面が上記生体親和性セラミックス複合体の短繊維でフロック加工されている。よって、上記生体親和性セラミックス複合体と生体組織とが良好に接着することにより、経皮端子部において生体組織との密着性が高い経皮端子を提供できる。
【0021】
また、生体親和性セラミックスのうち特にリン酸カルシウムが生体との親和性(接着性)が優れているために好ましく、特にリン酸カルシウム焼結体が好ましい。以下そのリン酸カルシウム焼結体について記載する。上記リン酸カルシウム焼結体とは、非晶質(アモルファス)のリン酸カルシウムを高温(例えば、800℃~1300℃の温度範囲内)で焼結させたものである。また、リン酸カルシウム複合体とは、生体親和性を有する基材(高分子基材)とリン酸カルシウム焼結体とが化学結合や接着剤等を介して結合しているものであり、基材の物性とリン酸カルシウム焼結体の物性との両方の物性を備えているものである。そして、上記リン酸カルシウム焼結体は、生体組織との親和性(接着性)に優れており、また、上記基材および基体は、生体内に埋植した場合でも生体に影響を及ぼさないものである。そして、上記基材および基体は、弾性を有していることが好ましい。
【0022】
また、生体親和性セラミックスのうち酸化チタン表面を処理することにより生体との接着性および親和性を発現することができる。そこで、以下その酸化チタンについて記載する。
【0023】
上記酸化チタンとは、粒子表面を生体組織と親和性を持つようにするため、化学処理を行なって粒子表面にアミノ基等のカチオン性官能基を導入したものである。また、酸化チタン複合体とは、生体親和性を有する基材(高分子基材)と酸化チタン粒子とが化学結合や接着剤等を介して結合しているものであり、基材の物性と酸化チタン粒子の物性との両方の物性を備えているものである。つまり、上記酸化チタンとは、カチオン性官能基を有するものである。
【0024】
そして、上記表面処理した酸化チタン(粒子)は、生体組織との親和性(接着性)に優れており、また、上記基材および経皮端子の基体は、生体内に埋植した場合でも生体に影響を及ぼさないものである。この時、上記基材および経皮端子の基体は、弾性を有していることが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、経皮端子の基体の表面が上記生体親和性セラミックス複合体でフロック加工されている。従って、上記生体親和性セラミックス複合体と生体組織とが良好に接着することにより、経皮端子部において生体組織との密着性が高い経皮端子を提供できる。つまり、上記構成とすることで、上記生体親和性セラミックスと医療用チューブの周囲における組織とを好適に密着させることができ、医療用チューブの挿入位置を好適に固定することができるため、ダウングロースを抑制することができる。また、生体親和性セラミックス複合体を被覆した経皮端子は、硬い生体親和性セラミックスを、弾性を有する基材と結合させて用いているので、例えば、ハイドロキシアパタイトからなる経皮端子と比べて破損することがない。さらに、上記経皮端子を生体内に埋植した場合に、患者が感じる違和感を低減させることができる。また、上記構成とすることにより、医療用チューブと異なる基体に生体親和性セラミックス複合体を被覆しているので、医療用チューブの物性を損なわせることがない。つまり、安全に医療用チューブを生体内で固定することができる経皮端子を提供することができる。
【0026】
また、生体親和性セラミックスは、非晶質のものと比べて結晶性が高く、溶解性が低い。従って、上記の構成とすることにより、医療用チューブを長期間、生体内に埋植させる用途で経皮端子を用いる場合であっても、良好に使用することができる。
【0027】
また本発明にかかる経皮端子は、上記生体親和性を有する短繊維はその長軸方向の長さが1μm以上1cm未満(好ましくは5μm以上5mm未満、最も好ましくは50μm以上1mm未満)の範囲内であり、短軸方向の長さが1nm以上1mm未満(好ましくは10nm以上0.5mm未満、最も好ましくは100nm以上0.1mm未満)の範囲内の柱状であることが好ましい。上記好ましい範囲を超えると、フロック加工を行なう際に飛翔し難く、またフロック加工後の経皮端子の表面において短繊維が起毛状態を保つことが困難となる。一方、上記好ましい範囲未満であると、経皮端子の表面積を広くすることができず、生体接着性が高い経皮端子を実現することが困難となる。なお、本発明の説明において、短繊維の長軸とは、短繊維が円柱状または角柱状である場合の、底面に対する高さのことを意味し、短繊維の短軸とは、底面が実質的に円形状である場合はその円の直径が意図され、実質的に楕円形状である場合はその楕円の短径が意図され、実質的に正方形状である場合はその正方形の辺の長さが意図され、実質的に長方形状である場合はその長方形の短辺の長さが意図される。
【0028】
上記の形状を有する短繊維は、経皮端子の基体の表面へのフロック加工を容易に行なうことができるとともに、経皮端子上の短繊維(リン酸カルシウム複合体等)の表面積を増加させることができる。
【0029】
また本発明にかかる経皮端子は、上記経皮端子の基体には、上記医療用チューブの挿入方向に対する当該基体の移動を抑制する鍔部が設けられている構成がより好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、上記医療用チューブの延伸方向に対する上記基体の移動を抑制する鍔部が設けられている。これにより、より一層、医療用チューブの移動(生体内の内部方向に上記経皮端子が移動すること)を抑制することができるので、ダウングロースの進行を抑制することができる。なお、上記移動には、平行移動および回転移動を含む。よって、上記経皮端子を生体内で固定した場合、上記鍔部が、上記経皮端子の生体における位置を固定するとともに、上記経皮端子が回転(生体内での経皮端子のねじれも含む)することを抑制する。
【0031】
また本発明にかかる経皮端子は、上記鍔部には、穴部が形成されている構成がより好ましい。上記の構成によれば、上記鍔部には穴部が形成されている。これにより、例えば、上記経皮端子を生体内に埋入させたとき、生体内の組織は、上記穴部を通り、他の組織と接着することになる。これにより、上記経皮端子の位置をより一層強固に固定することができる。
【0032】
また本発明にかかる経皮端子は、上記鍔部が、上記基体の一端から他端までの間に設けられているとともに、上記一端から鍔部を含む領域(または、上記一端から鍔部までの領域)のみに、生体接着性を有する短繊維(生体親和性セラミックス複合体等)が被覆されている構成がより好ましい。
【0033】
上記の構成によれば、上記基体の一端から鍔部を含む領域のみが生体親和性を有する短繊維(生体親和性セラミックス、生体親和性セラミックス複合体等)で被覆されている。特に上記生体親和性セラミックス複合体は、生体組織との親和性(接着性)に優れるだけでなく、例えば雑菌等の生体外の他の細胞等に対しても良好な接着性を示す。従って、上記構成とすることにより、例えば、経皮端子の生体親和性セラミックス複合体が被覆されていない領域を生体外に出した状態で当該経皮端子を埋植した場合でも、経皮端子の生体外に露出している部分には、生体親和性セラミックス複合体で被覆されていないので、上記雑菌が経皮端子に接着することを防止することができる。すなわち、経皮端子の一部を生体外に露出させた状態での埋植が可能となる。
【0034】
また本発明にかかる経皮端子は、鍔部は、医療用チューブの挿入方向に対して所定の角度を有するように設けられている構成がより好ましい。
【0035】
上記の構成とすることにより、経皮端子を生体内に埋植させて、当該経皮端子で医療用チューブを使用する場合、鍔部を医療用チューブの挿入方向に対して傾斜させることにより、生体外に出ている医療用チューブを生体に沿わせることができる。これにより、医療用チューブが、生体外で邪魔になることを低減させることができる。
【0036】
また本発明にかかる経皮端子の鍔部には、生体内へ上記経皮端子を埋殖する際に、その生体への埋殖し易さと生体への高い接着力の発現の両立を考慮した形状が求められる。具体的には、生体内埋殖時に経皮端子が上記医療用チューブの延伸方向に対して経皮端子生体内側表面と経皮端子生体外側表面が存在する。
【0037】
ここで、経皮端子生体内側表面とは、生体内埋殖時に経皮端子が上記医療用チューブの延伸方向に対して垂直に存在する経皮端子の中心面より挿入方向にある経皮端子表面をいう。また、経皮端子生体外側表面とは、生体内埋殖時に経皮端子が上記医療用チューブの延伸方向に対して垂直に存在する経皮端子の中心面より生体の外側方向の面をいう。
【0038】
そして、形状の対称性が低い場合その埋殖方向により埋殖し易さが違ってくるのである。
【0039】
上記医療用チューブおよび経皮端子を、生体内に埋殖させる場合には、生体における埋殖部上皮を一部切開し、上記医療用チューブを穿刺・留置し、上記医療用チューブを生体へ差し込むこととなる。そこで、経皮端子生体内側表面の鍔部は、差し込み(埋殖し)易い先端の細い形状を持ち、かつ、生体との接着面を得るため広い面積を有していることがより好ましい。そして、上記鍔部における差し込み方向と反対側の端部は、生体との接着面を取るため広い面積を有している構成がより好ましい。
【0040】
上記構成とすることにより、差し込み(埋殖し)易く、そして生体との接着性の向上を図ることができる
また、本発明にかかる経皮端子の鍔部には、鍔部の表面積に対して一定の割合となるように穴部が複数個設けられている構成がより好ましい。
【0041】
上記構成とすることで、経皮端子を埋殖した後、生体組織が上記穴部を伸展することにより通過して、その通過した側の鍔部表面に接着している生体組織とその伸展した組織とが接着し、あたかも経皮端子の鍔部を組織という糸で縫い付けたように生体に固定することができる。これにより、上記医療用チューブの挿入方向に対する当該基体の移動および回転を抑制することができる。
【0042】
上記の構成によれば、上記基体の少なくとも一部が、多数の粒子状の生体親和性セラミックス複合体で被覆されている。これにより、基体の表面を被覆している生体親和性セラミックスの表面積を増加させることができるので、より一層良好に経皮端子を生体組織と密着させることができる。
【0043】
本発明にかかる経皮端子は、上記医療用チューブと一体化されてなる構成であってもよい。
【0044】
上記の構成によれば、経皮端子が、上記医療用チューブと一体化されて構成されているので、上記経皮端子を固定することにより、カテーテルの移動を抑制することができる。
【0045】
以下、生体親和性セラミックスのうち特にリン酸カルシウム焼結体についての説明をする。
【0046】
上記の構成によれば、リン酸カルシウム複合体を粒状または繊維状とすることにより、基体表面を被覆しているリン酸カルシウム複合体の表面積を増加させることができる。
【0047】
本発明にかかる経皮端子は、上記基材がシルクフィブロイン、ポリエステル、ポリテトラフロロエチレン(以下「PTFE」)である構成がより好ましい。
【0048】
特に上記シルクフィブロインは、生体親和性が高い。上記の構成によれば、シルクフィブロインを基材として用いることにより、生体との密着性が高い経皮端子を提供することができる。
【0049】
本発明にかかる経皮端子は、上記課題を解決するために、生体内に挿入される医療用チューブを当該医療チューブの挿入位置で固定する経皮端子であって、上記医療用チューブを保持する基体の表面の少なくとも一部が、シルクフィブロインで被覆されていることを特徴としている。
【0050】
シルクフィブロインは、生体親和性が高いので、上記の構成とすることにより、生体密着性が高い経皮端子を提供することができる。
【0051】
また、本発明にかかる医療用チューブは、上記経皮端子を備えていることを特徴としている。これにより、医療用チューブを生体内に埋植した場合でも、上記医療用チューブが移動することを防止できる。
【0052】
一方、本発明にかかる経皮端子を製造するための方法は、経皮端子の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなる経皮端子を製造するための方法であって、第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された経皮端子の基体を配置する工程、第2電極板上に生体親和性を有する短繊維を載置する工程、経皮端子の基体を回転させる工程、および第1電極板と第2電極板に電圧を印加する工程、を含み、当該第1電極板と経皮端子の基体とが電気的に接続されていることを特徴としている。
【0053】
また上記第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された経皮端子の基体を配置する工程は、経皮端子への医療用チューブの挿入方向に対する第1電極板および第2電極板の角度が、0°を超え90°未満となるように、第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された経皮端子の基体を配置する工程であることが好ましい。
【0054】
上記方法によれば、クーロン力によって、上記第2電極板上の生体親和性を有する短繊維が、第1電極板へ向かって飛翔する。この時、上記外2電極板と第1電極板の間に存在し、かつ表面に接着剤が塗布された経皮端子の基体の表面に、上記生体親和性を有する短繊維が接着する。また上記第1電極板と経皮端子の基体とが電気的に接続されていることによって、経皮端子の基体表面上の生体親和性を有する短繊維に起電力が発生し、当該生体親和性を有する短繊維が起毛する。さらに、経皮端子への医療用チューブの挿入方向に対する第1電極板および第2電極板の角度が0°を超え90°未満となるよう、上記経皮端子の基体が配置され、回転することによって、複雑な形状を有する経皮端子であっても、一様に生体親和性を有する短繊維を接着させることが可能となる。
【0055】
また本発明にかかる経皮端子を製造するための方法は、上記構成に加え、上記生体親和性を有する短繊維を加湿する工程をさらに含む方法であることが好ましい。生体親和性を有する短繊維を加湿することによって、短繊維自体が帯電しやすくなるために、当該生体親和性を有する短繊維が飛翔し易くなり、経皮端子の基体の表面へ、生体親和性を有する短繊維をフロック加工し易くなるという効果が得られる。
【0056】
また本発明にかかる経皮端子を製造するための方法は、上記生体親和性を有する短繊維が、生体親和性を有する短繊維生体接着性セラミックス、または基材と生体親和性セラミックスとが結合してなる生体親和性セラミックス複合体からなるものであることが好ましい。また本発明にかかる方法において、上記生体親和性セラミックスが、リン酸カルシウムであることが好ましい。
【0057】
また本発明にかかる経皮端子を製造するための方法において、上記基材が高分子基材であることが好ましい。また本発明にかかる経皮端子を製造するための方法において、上記生体親和性を有する短繊維はその長軸方向の長さが1μm以上1cm未満(好ましくは5μm以上5mm未満、最も好ましくは50μm以上1mm未満)の範囲内であり、短軸方向の長さが1nm以上1mm未満(好ましくは10nm以上0.5mm未満、最も好ましくは100nm以上0.1mm未満)の範囲内の柱状または球状であることが好ましい。
【0058】
本発明にかかる経皮端子を製造するための方法において、生体親和性を有する短繊維および基材を上記構成とすることの効果は、本発明にかかる経皮端子の説明において既に示した通りである。よって、上記本発明の方法によれば、生体密着性に優れた経皮端子を製造することができるという効果を奏する。
【0059】
一方、本発明にかかる経皮端子を製造するための装置は、経皮端子の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなる経皮端子を製造するための装置であって、第1電極板、第2電極板、および経皮端子の基体を支持するための支持部と当該支持部を回転させるための回転部とを備える回転支持部を備え、重力方向を下とした場合に当該第2電極板は第1電極板の下に配置されており、当該第2電極板は生体親和性を有する短繊維を載置可能に構成されており、当該支持部に支持される経皮端子の基体が第1電極板と第2電極板との間に配置されるように回転支持部が配置されており、当該支持部は第1電極板と電気的に接続されておりかつ当該支持部は経皮端子の基体と電気的に接続可能に構成されていることを特徴としている。
【0060】
また本発明の装置において、上記回転支持部は、当該支持部に支持される経皮端子の基体が、第1電極板と第2電極板との間において、経皮端子への医療用チューブの挿入方向に対する第1電極板および第2電極板の角度が、0°を超え90°未満となるように配置されていてもよい。
【0061】
上記装置を用いて経皮端子を製造する場合は例えば以下のようにする。
(i)上記回転支持部における支持部へ、接着剤を表面に塗布した経皮端子の基体を固定する。
(ii)上記第2電極板上に生体親和性を有する短繊維を載置する。
(iii)上記回転支持部の回転部の作用によって、経皮端子の基体を回転させる。
(iv)上記第1電極板と第2電極板に電圧を印加する。
【0062】
上記の各工程を実施すれば、まずクーロン力によって、上記第2電極板上の生体親和性を有する短繊維が、第1電極板へ向かって飛翔する。この時、上記外2電極板と第1電極板の間に存在し、かつ表面に接着剤が塗布された経皮端子の基体の表面に、上記生体親和性を有する短繊維が接着する。また上記第1電極板と支持部と経皮端子とが電気的に接続されていることによって、経皮端子の基体表面上の生体親和性を有する短繊維に起電力が発生し、当該生体親和性を有する短繊維が起毛する。さらに、経皮端子への医療用チューブの挿入方向に対する第1電極板および第2電極板の角度が0°を超え90°未満となるよう、上記経皮端子の基体が配置され、回転することによって、複雑な形状を有する経皮端子であっても、一様に生体親和性を有する短繊維を接着させることが可能となる。
【0063】
また本発明にかかる経皮端子を製造するための装置は、上記生体親和性を有する短繊維を加湿するための加湿手段をさらに備える装置であることが好ましい。上記構成によれば、生体親和性を有する短繊維を加湿することができる。それゆえ、生体親和性を有する短繊維が短繊維自体が帯電しやすくなるために、生体親和性を有する短繊維が飛翔し易くなり、経皮端子の基体の表面へ生体親和性を有する短繊維をフロック加工し易くなるという効果が得られる。
【0064】
また本発明にかかる経皮端子を製造するための装置は、上記第1電極板、第2電極板、および支持部を少なくとも収容するための容器と、当該容器内の湿度を制御するための湿度制御部と、をさらに備える装置であってもよい。上記構成によれば、生体親和性を有する短繊維の湿度をより緻密に制御することが可能となり、経皮端子の基体の表面へ生体親和性を有する短繊維をフロック加工し易くなるという効果が得られる。なお上記湿度制御部による容器内の相対湿度は、10%以上100%未満が好ましく、20%以上95%未満がさらに好ましく、30%以上90%未満が最も好ましい。上記好ましい範囲を超えると、生体親和性を有する短繊維に水分が過度に付着して、当該短繊維が飛翔し難くなる。一方、上記好ましい範囲未満となると、短繊維自体が帯電し難くなるために短繊維が飛翔し難くなる。
【0065】
本発明にかかる体内留置型医療機器は、上記課題を解決するために、生体内に留置する体内留置型医療機器にあって、当該体内留置型医療機器の基体の表面が、生体親和性を有する短毛繊維でフロック加工されてなることを特徴としている。
【0066】
また、本発明にかかる体内留置型医療機器は、生体内に留置する体内留置型医療機器にあって当該体内留置型医療機器の基体の表面が生体親和性を有する短繊維で被覆されており、かつ当該体内留置型医療機器の基体の単位面積と当該単位面積に被覆されている短繊維の表面積との割合が少なくとも2倍以上であることを特徴としている。
【0067】
上記本発明にかかる体内留置型医療機器は、基体の表面が生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなるものであるため、基体の表面に対して垂直または略垂直に生体親和性を有する短繊維が起毛している。その結果、体内留置型医療機器の基体の単位面積と当該単位面積に被覆されている生体親和性を有する短繊維の表面積との割合が著しく向上するため、該体内留置型医療機器と生体組織との接着性が向上し、該体内留置型医療機器を安定的に生体へ固定することが可能となる。
【0068】
本発明にかかる体内留置型医療機器では、上記生体親和性を有する短繊維は、生体親和性セラミックス、または基材と生体親和性セラミックスとが結合してなる生体親和性セラミックス複合体からなることが好ましい。また、本発明にかかる体内留置型医療機器では、上記生体親和性セラミックスは、リン酸カルシウム、中でもリン酸カルシウム焼結体が好ましい。また、本発明にかかる体内留置型医療機器では、上記基材が高分子基材であることが好ましい。
【0069】
ここで、生体親和性セラミックスのうち、酸化チタンで基体の表面を処理することにより生体との接着性及び親和性を発現することができる。
【0070】
表面処理した酸化チタン(粒子)は、生体組織との親和性(接着性)に優れており、上記基材および体内留置型医療機器の基体は、生体内に埋植した場合でも生体に影響を及ぼさない。この時上記基材および基体は、弾性を有していることが好ましい。
【0071】
上記の構成によれば、体内留置型医療機器の基体の表面が上記生体親和性セラミックス複合体の短繊維でフロック加工されている。よって、上記生体親和性セラミックス複合体と生体組織とが良好に接着することにより、上記体内留置型医療機器のフロック加工された基体において、生体組織との密着性が高い体内留置型医療機器を提供できる。この時上記基材および基体は、弾性を有していることが好ましい。
【0072】
さらに、上記の構成によれば、体内留置型医療機器の基体の表面が上記生体親和性セラミックス複合体でフロック加工されている。従って、上記生体親和性セラミックス複合体と生体組織とが良好に接着することにより、生体組織との密着性が高い体内留置型医療機器を提供できる。つまり、上記構成とすることで、上記生体親和性セラミックスと体内留置型医療機器における生体との接触面における組織とを好適に密着させることができ、体内留置型医療機器の位置を好適に固定することができるため、ダウングロースを抑制することができる。また、生体親和性セラミックス複合体を被覆した体内留置型医療機器は、硬い生体親和性セラミックスを、弾性を有する基材と結合させて用いているので、例えば、ハイドロキシアパタイトからなる体内留置型医療機器と比べて破損することがない。さらに、上記体内留置型医療機器を生体内に埋植した場合に、患者が感じる違和感を低減させることができる。また、上記構成とすることにより、つまり、安全に、生体内で固定することができる体内留置型医療機器を提供することができる。
【0073】
また、生体親和性セラミックスは、非晶質のものと比べて結晶性が高く、溶解性が低い。従って、上記の構成とすることにより、長期間、生体内に埋植させる用途で体内留置型医療機器を用いる場合であっても、良好に使用することができる。
【0074】
本発明にかかる体内留置型医療機器では、上記生体親和性を有する短繊維は、長軸方向の長さが1μm以上1cm未満(好ましくは5μm以上5mm未満、最も好ましくは50μm以上1mm未満)の範囲内であり、短軸方向の長さが1nm以上1mm未満(好ましくは10nm以上0.5mm未満、最も好ましくは100nm以上0.1mm未満)の範囲内の柱状であることが好ましい。上記好ましい範囲を超えると、フロック加工を行なう際に飛翔し難く、またフロック加工後の体内留置型医療機器の表面において短繊維が起毛状態を保つことが困難となる。一方、上記好ましい範囲未満であると、体内留置型医療機器の表面積を広くすることができず、生体接着性が高い体内留置型医療機器を実現することが困難となる。
【0075】
上記の形状を有する短繊維は、体内留置型医療機器の基体の表面へのフロック加工を容易に行なうことができるとともに、体内留置型医療機器上の短繊維(リン酸カルシウム複合体等)の表面積を増加させることができる。
【0076】
本発明にかかる体内留置型医療機器では、上記体内留置型医療機器は、人工血管、ステント、ステントグラフト、人工気管、ペースメーカー、人工心臓及びアクセスポートのうち、いずれか1つの医療機器であることが好ましい。
【0077】
これらの医療機器は、特に、生体内に留置した位置がズレることの抑制が要求される。そして、生体親和性を有する短繊維で、その基体の表面をフロック加工した、上記人工血管等の体内留置型医療機器は、生体組織との密着性に優れているため、生体内で位置ズレすることを抑えることができる。
【0078】
本発明にかかる体内留置型医療機器を製造するための方法は、上記課題を解決するために、体内留置型医療機器の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなる体内留置型医療機器を製造するための方法であって、第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された体内留置型医療機器の基体を配置する工程、第2電極板上に生体親和性を有する短繊維を載置する工程、体内留置型医療機器の基体を回転させる工程、および第1電極板と第2電極板に電圧を印加する工程、を含み、当該第1電極板と体内留置型医療機器の基体とが電気的に接続されていることを特徴としている。
【0079】
上記体内留置型医療機器を製造するための方法によれば、クーロン力によって、上記第2電極板上の生体親和性を有する短繊維が、第1電極板へ向かって飛翔する。この時、上記外2電極板と第1電極板の間に存在し、かつ表面に接着剤が塗布された体内留置型医療機器の基体の表面に、上記生体親和性を有する短繊維が接着する。また上記第1電極板と体内留置型医療機器の基体とが電気的に接続されていることによって、体内留置型医療機器の基体表面上の生体親和性を有する短繊維に起電力が発生し、当該生体親和性を有する短繊維が起毛する。
【0080】
また、本発明にかかる体内留置型医療機器を製造するための方法では、上記生体親和性を有する短繊維を加湿する工程をさらに含むことが好ましい。生体親和性を有する短繊維を加湿することによって、短繊維自体が帯電しやすくなるために、当該生体親和性を有する短繊維が飛翔し易くなり、体内留置型医療機器の基体の表面へ、生体親和性を有する短繊維をフロック加工し易くなるという効果が得られる。
【0081】
また、本発明にかかる体内留置型医療機器を製造するための方法では、上記生体親和性を有する短繊維は、生体親和性セラミックス、または基材と生体親和性セラミックスとが結合してなる生体親和性セラミックス複合体からなることが好ましい。また、本発明にかかる体内留置型医療機器を製造するための方法において、上記生体親和性セラミックスは、リン酸カルシウムであることが好ましい。
【0082】
また、本発明にかかる体内留置型医療機器を製造するための方法において、上記基材は、高分子基材であることが好ましい。また本発明にかかる体内留置型医療機器を製造するための方法では、上記生体親和性を有する短繊維は、長軸方向の長さが1μm以上1cm未満(好ましくは5μm以上5mm未満、最も好ましくは50μm以上1mm未満)の範囲内であり、短軸方向の長さが1nm以上1mm未満(好ましくは10nm以上0.5mm未満、最も好ましくは100nm以上0.1mm未満)の範囲内の柱状であることが好ましい。
【0083】
本発明にかかる体内留置型医療機器を製造するための方法において、生体親和性を有する短繊維及び基材を上記構成とすることの効果は、本発明にかかる体内留置型医療機器の説明において既に示したとおりである。よって、上記本発明にかかる体内留置型医療機器を製造するための方法によれば、生体密着性に優れた体内留置型医療機器を製造することができるという効果を奏する。
【0084】
一方、本発明にかかる体内留置型医療機器を製造するための装置は、体内留置型医療機器の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなる体内留置型医療機器を製造するための装置であって、第1電極板、第2電極板、および体内留置型医療機器の基体を支持するための支持部と当該支持部を回転させるための回転部とを備える回転支持部を備え、重力方向を下とした場合に当該第2電極板は第1電極板の下に配置されており、当該第2電極板は生体親和性を有する短繊維を載置可能に構成されており、当該支持部に支持される体内留置型医療機器の基体が第1電極板と第2電極板との間に配置されるように回転支持部が配置されており、当該支持部は第1電極板と電気的に接続されており、かつ当該支持部は体内留置型医療機器の基体と電気的に接続可能に構成されていることを特徴としている。
【0085】
上記装置を用いて体内留置型医療機器を製造する場合は例えば以下のようにする。
(i)上記回転支持部における支持部へ、接着剤を基体の表面に塗布した体内留置型医療機器を固定する。
(ii)上記第2電極板上に生体親和性を有する短繊維を載置する。
(iii)上記回転支持部の回転部の作用によって、体内留置型医療機器の基体を回転させる。
(iv)上記第1電極板と第2電極板に電圧を印加する。
【0086】
上記の各工程を実施すれば、まずクーロン力によって、上記第2電極板上の生体親和性を有する短繊維が、第1電極板へ向かって飛翔する。この時、上記外2電極板と第1電極板の間に存在し、かつ表面に接着剤が塗布された体内留置型医療機器の基体の表面に、上記生体親和性を有する短繊維が接着する。また上記第1電極板と支持部と体内留置型医療機器とが電気的に接続されていることによって、体内留置型医療機器の基体表面上の生体親和性を有する短繊維に起電力が発生し、当該生体親和性を有する短繊維が起毛する。
【0087】
本発明にかかる体内留置型医療機器では、上記生体親和性を有する短繊維を加湿するための加湿手段をさらに備えることが好ましい。上記構成によれば、生体親和性を有する短繊維を加湿することができる。それゆえ、生体親和性を有する短繊維自体が帯電しやすくなるために、生体親和性を有する短繊維が飛翔し易くなり、体内留置型医療機器の基体の表面へ生体親和性を有する短繊維をフロック加工しやすくなるという効果が得られる。
【0088】
また本発明にかかる体内留置型医療機器を製造するための装置としては、上記第1電極板、第2電極板、および支持部を少なくとも収容するための容器と、当該容器内の湿度を制御するための湿度制御部と、をさらに備える装置であってもよい。
【0089】
上記構成によれば、生体親和性を有する短繊維の湿度をより緻密に制御することが可能となり、体内留置型医療機器の基体の表面へ生体親和性を有する短繊維をフロック加工し易くなるという効果が得られる。なお上記湿度制御部による容器内の相対湿度は、10%以上100%未満が好ましく、20%以上95%未満がさらに好ましく、30%以上90%未満が最も好ましい。上記好ましい範囲を超えると、生体親和性を有する短繊維に水分が過度に付着して、当該短繊維が飛翔し難くなる。一方、上記好ましい範囲未満となると、短繊維自体が帯電し難くなるために短繊維が飛翔し難くなる。
〔発明の効果〕
本発明にかかる経皮端子は、経皮端子の基体の表面が生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなるものであるため、経皮端子の基体の表面に対して垂直または略垂直に生体親和性を有する短繊維が起毛している。その結果、経皮端子の基体の単位面積と当該単位面積に被覆されている生体親和性を有する短繊維の表面積との割合が著しく向上するため、該経皮端子と生体組織との接着性が向上し、該経皮端子を備えたカテーテル等の医療デバイスを安定的に生体へ固定することが、本発明にかかる経皮端子によって可能となる。
【0090】
また本発明にかかる経皮端子を製造するための方法および装置によれば、上記のような経皮端子を製造することが可能となる。それゆえ、本発明にかかる方法および装置によれば、生体組織との密着性が高い経皮端子を提供することができる。
【0091】
また本発明にかかる体内留置型医療機器は、経皮端子の基体の表面が生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなるものであるため、経皮端子の基体の表面に対して垂直または略垂直に生体親和性を有する短繊維が起毛している。その結果、経皮端子の基体の単位面積と当該単位面積に被覆されている生体親和性を有する短繊維の表面積との割合が著しく向上するため、該経皮端子と生体組織との接着性が向上し、該経皮端子を備えたカテーテル等の医療デバイスを安定的に生体へ固定することが、本発明にかかる経皮端子によって可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施例1で製造された経皮端子の走査型電子顕微鏡像である。
【図2(a)】比較例1で製造された経皮端子の走査型電子顕微鏡像である。
【図2(b)】比較例1で製造された経皮端子の走査型電子顕微鏡像である。
【図3】本発明にかかる装置の一実施形態の模式図である。
【図4】円柱型の経皮端子の基体(φ3.0mm、高さ6.0mm)の表面に、生体親和性を有する材料を厚さ0.5mmとなるように被覆して作製したT1型経皮端子(φ4.0mm、高さ6.0mm)の上面図、およびA-A’断面図である。
【図5】経皮端子(一例)を構成する基材の形状を示す斜視図である。
【図6】経皮端子(一例)を構成する基材の他の形状を示す上面図および正面図である。
【図7】経皮端子(一例)を構成する基材のさらに他の形状を示す上面図および正面図である。
【図8(a)】鍔部に穴部が形成された経皮端子の概略構成を示す上面図である。
【図8(b)】鍔部に穴部が形成された経皮端子の概略構成を示す側面図である。
【図9(a)】ムササビ型経皮端子の概略構成を示す上面図である。
【図9(b)】ムササビ型経皮端子の概略構成を示す側面図である。
【図10(a)】スペースシャトル型経皮端子の概略構成を示す上面図である。
【図10(b)】スペースシャトル型経皮端子の概略構成を示す側面図である。
【図11】フロック加工される前のステント(一例)の外観を示す図である。
【図12】フロック加工を施された後のステント(一例)の外観を示す図である。
【図13】カテーテルが埋植されたウサギの残存数を計数した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
1 フロック加工装置
2 第1電極板
3 第2電極板
4 湿度制御部4
5 容器5
6a 支持部
6b 回転部
6 回転支持部
10 短繊維
11 経皮端子の基体
100 経皮端子
101 胴部
102 鍔部
103 穴部
【発明を実施するための最良の形態】
【0094】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである。なお本発明はこれに限定されるものではない。
【0095】
〔1.本発明にかかる経皮端子〕
生体内に挿入される医療用チューブを当該医療チューブの挿入位置で固定するための経皮端子であって、当該経皮端子の基体の表面が生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなるものである。
【0096】
ここで「生体親和性を有する短繊維」とは、生体組織との親和性を有し、それを生体内に埋植した場合でも生体に悪影響を及ぼさない材料からなる短繊維のことである。上記材料としては、生体親和性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、既述の生体親和親和性セラミックス、後述する生体親和性セラミックス複合体、等が挙げられる。
【0097】
以下に、生体親和性を有する短繊維の一例として、「生体親和親和性セラミックス」および「生体親和性セラミックス複合体」を説明する。また「生体親和性セラミックス」の一例として、リン酸カルシウム焼結体を挙げて説明し、「生体親和性セラミックス複合体」の一例として、当該リン酸カルシウム焼結体を用いた作製された生体親和性セラミックス複合体(「リン酸カルシウム複合体」)を用いて本発明を説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。なお、生体親和性セラミックスがリン酸カルシウムの場合における説明を、生体親和性セラミックスが酸化チタンの場合の説明において全て援用することができる。
【0098】
(リン酸カルシウム焼結体)
ここで、上記リン酸カルシウム焼結体について説明する。上記リン酸カルシウム焼結体(リン酸カルシウムセラミックスとも呼ばれる)とは、アモルファス(非晶質)のリン酸カルシウムと比べた場合に結晶性が高いリン酸カルシウムを示している。具体的には、リン酸カルシウム焼結体は、アモルファス(非晶質)のリン酸カルシウムを焼結させることにより得られる。そして、上記リン酸カルシウム焼結体は、該リン酸カルシウム焼結体自体の表面に、カルシウムイオン(Ca2+)、リン酸イオン(PO2-)および水酸化物イオン(OH)の少なくとも何れか1つのイオンを有している。
【0099】
そして、上記リン酸カルシウム焼結体は、生体親和性が高いということが知られている。上記リン酸カルシウム焼結体としては、具体的には、例えば、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))、リン酸トリカルシウム(β(α)-リン酸トリカルシウム(Ca(PO))、メタリン酸カルシウム(Ca(PO)、オクタリン酸カルシウム(OCP)、Ca10(PO、Ca10(POCl等の焼結体が挙げられる。なお、上記リン酸カルシウム焼結体を構成するリン酸カルシウムは、湿式法や、乾式法、加水分解法、水熱法等の公知の製造方法によって、人工的に製造されたものであってもよく、また、骨、歯等から得られる天然由来のものであってもよい。また、上記リン酸カルシウム焼結体には、リン酸カルシウムの水酸イオンおよび/またはリン酸イオンの一部が炭酸イオン、塩化物イオン、フッ化物イオン等で置換された化合物等が含まれていてもよい。
【0100】
そして、リン酸カルシウム焼結体は、非晶質のリン酸カルシウムと比べて、結晶性が高く、生体において溶解性が低いので、上記経皮端子長期間に渡り生体内に埋植する場合であっても、好適に使用することができる。
【0101】
また、リン酸カルシウム焼結体の1つの結晶面には、少なくともリン酸イオンまたはカルシウムイオンが存在する。具体的には、リン酸カルシウムの結晶面によって存在するイオンは異なり、互いに異なる結晶面に、カルシウムイオンおよびリン酸イオンが存在している。また、上記リン酸カルシウム焼結体に水酸化物イオンが含まれている場合には、該水酸化物イオンは、上記カルシウムイオンまたはリン酸イオンが存在している結晶面の少なくとも1つの結晶面に存在することとなる。
【0102】
ここで、上記リン酸カルシウム焼結体の製造方法について説明する。本実施の形態にかかるリン酸カルシウム焼結体は、アモルファスのリン酸カルシウムを焼結させることにより得ることができる。具体的には、上記例示のリン酸カルシウムを800℃~1300℃の温度範囲内で所定時間焼結させることにより、リン酸カルシウム焼結体を得ることができる。上記リン酸カルシウムを焼結させることによって、結晶性を高めることができ、例えば、生体内に導入した場合における溶解性を小さくすることができる。このリン酸カルシウム焼結体の結晶化の度合いは、X線回折法(XRD)により、測定することができる。具体的には、リン酸カルシウム複合体の各結晶面を示すピークの半値幅が狭ければ狭いほど結晶性が高い。
【0103】
上記リン酸カルシウムを焼結させる焼結温度の下限値としては、800℃以上がより好ましく、900℃以上がさらに好ましく、1000℃以上が特に好ましい。焼結温度が800℃よりも低いと、焼結が十分でない場合がある。一方、焼結温度の上限値としては、1300℃以下がより好ましく、1250℃以下がさらに好ましく、1200℃以下が特に好ましい。焼結温度が1300℃よりも高いと、後述する基材が有する官能基と直接化学結合することが困難になる場合がある。従って、焼結温度を、上記範囲内とすることにより、生体内で溶解し難く(結晶性が高く)、かつ、基材が有する官能基と直接化学結合することができるリン酸カルシウム焼結体を製造することができる。また、焼結時間としては、特に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0104】
また、例えば、リン酸カルシウム焼結体を構成する材料として、ハイドロキシアパタイト焼結体またはβ(α)-リン酸トリカルシウムを用いる場合、該ハイドロキシアパタイト焼結体またはβ(α)-リン酸トリカルシウムは、生体組織との親和性および生体環境における安定性が優れているために、医療用材料として好適である。また、ハイドロキシアパタイト焼結体は、生体内で溶解し難い。従って、例えば、上記ハイドロキシアパタイト焼結体を用いてリン酸カルシウム複合体を製造した場合には、生体内で長期間、生体親和性を維持することができる。
【0105】
また、上記リン酸カルシウム焼結体は、粒子状であることがより好ましく、微粒子であることがさらに好ましい。具体的には、リン酸カルシウム焼結体が球形状である場合、その直径は10nm~100μmの範囲内がより好ましく、50nm~10μmの範囲内がさらに好ましい。上記範囲内のリン酸カルシウム焼結体の微粒子を用いることにより、得られる経皮端子に弾性を付すことができる。なお、本発明の説明において「★★~☆☆」は、「★★以上、☆☆以下」を意味する。
【0106】
(基材)
本実施の形態にかかる基材としては、高分子基材がより好ましく、医療用高分子がさらに好ましく、有機高分子が特に好ましい。上記基材としては、具体的には、例えば、シリコーンポリマー(シリコーンゴムであっても良い)、ポリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリアミン、ポリウレア、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等の合成高分子;セルロース、アミロース、アミロペクチン、キチン、キトサン等の多糖類;コラーゲン等のポリペプチド、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類等;シルクフィブロイン等の天然高分子等が挙げられる。上記例示の基材のうち、長期安定性、強度および柔軟性等の特性が優れている点で、シリコーンポリマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、または、シルクフィブロインが好適に使用される。また、例えば、上記有機高分子と上記無機材料とを組み合わせて基材としてもよい。
【0107】
本実施の形態にかかる基材の表面には、リン酸カルシウム焼結体自体と化学結合することができる官能基を有していることが好ましい。上記基材の表面に官能基を有していることにより、リン酸カルシウム焼結体に化学的前処理を施すことなく、化学結合させることができる。以下に、基材表面に、リン酸カルシウム焼結体と化学結合可能な官能基が導入されている場合について説明する。
【0108】
上記リン酸カルシウム焼結体が、ハイドロキシアパタイト焼結体である場合、これらハイドロキシアパタイト焼結体は、イソシアネート基およびアルコキシシリル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基と化学結合することが可能である。つまり、基材が有する官能基として、イソシアネート基およびアルコキシシリル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を有している場合には、この基材とハイドロキシアパタイト焼結体とを化学結合させることができる。なお、上記アルコキシシリル基とは、Si-ORを含む基を示している。つまり、本実施の形態において、アルコキシシリル基には、≡Si-OR,=Si-(OR),-Si-(OR)等が含まれる。なお、上記≡Si-OR,=Si-(OR)の「≡」および「=」は、三重結合、二重結合のみを示すものではなく、それぞれの結合の手が、異なる基と結合していてもよい。従って、例えば、-SiH-(OR)や-SiH-(OR)等もアルコキシシリル基に含まれる。また、上記Si-ORのRとは、アルキル基または水素を示している。
【0109】
上記基材表面の官能基は、基材自体が有する官能基であってもよく、また、基材表面を、例えば、酸・アルカリ処理、コロナ放電、プラズマ照射、表面グラフト重合等の公知の手段によって、上記基材を改質することにより導入されたものであってもよい。
【0110】
また、上記官能基を導入するために、基材に活性基を導入し、この活性基を用いて官能基を導入してもよい。
【0111】
上記基材の形状としては、例えば、シート状であっても、粒子状であっても、繊維状であってもよく、最終的に短繊維として構成することができるものであればその形状は特に限定されるものではない。すなわち、基材の形状がシート状等であれば、リン酸カルシウム焼結体を結合させた後に、所望の短繊維の形状にカットすればよい。また、基材を予め所望の短繊維の形状にした後に、リン酸カルシウム焼結体を結合させてもよい。この場合、基材の形状としては、後述する基体の大きさよりも著しく小さい柱状(例えば円柱状)がより好ましい。そして、基材の形状が柱状である場合、具体的には、その長軸方向の長さが1μm以上1cm未満(好ましくは5μm以上5mm未満、最も好ましくは50μm以上1mm未満)の範囲内であり、短軸方向の長さが1nm以上1mm未満(好ましくは10nm以上0.5mm未満、最も好ましくは100nm以上0.1mm未満)の範囲内であることが好ましい。なお、本発明の説明において、柱状の長軸とは、当該柱状が円柱状または角柱状である場合の、底面に対する高さのことを意味し、短繊維の短軸とは、底面が実質的に円形状である場合はその円の直径が意図され、実質的に楕円形状である場合はその楕円の短径が意図され、実質的に正方形状である場合はその正方形の辺の長さが意図され、実質的に長方形状である場合はその長方形の短辺の長さが意図される。上記範囲内の形状の基材を用いることで、基材におけるリン酸カルシウム焼結体の結合量を増加させることができるので、より生体親和性が高いリン酸カルシウム複合体を得ることができる。
【0112】
(リン酸カルシウム複合体)
上記官能基を有する基材と、リン酸カルシウム焼結体とを結合させることによりリン酸カルシウム複合体を得ることができる。上記基材とリン酸カルシウムとの結合は接着剤を介して行なってもよいし、化学結合によって行なってもよい。上記接着剤を用いてリン酸カルシウム複合体と基体とを接合する場合に用いられる上記接着剤としては、具体的には、例えば、シリコーン系接着剤、ポリエチレン‐酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ナイロン、ウレタンエラストマー、酢酸ビニル、アクリル樹脂等が挙げられる。なお、基材とリン酸カルシウムとの結合が強固であることから、化学結合によって基材とリン酸カルシウムとを結合させることが好ましい。
【0113】
上記基材とリン酸カルシウム焼結体とを化学結合させるには、例えば、上記リン酸カルシウム焼結体と化学結合可能な官能基を基材に導入し、両者を反応させる方法や、リン酸カルシウム焼結体に上記基材と化学結合可能な反応性官能基を導入し、両者を反応させればよい。
【0114】
そして、本実施の形態にかかるリン酸カルシウム複合体が例えば、ハイドロキシアパタイト複合体である場合、基材の表面に、ハイドロキシアパタイト焼結体が化学結合されている。具体的には、ハイドロキシアパタイト焼結体に存在する水酸基(-OH)と、上記基材または表面修飾したリンカーが有するイソシアネート基(—NCO)またはアルコキシシリル基とが、直接、化学結合している。上記基材のアルコキシシリル基が-Si≡(OR)である場合、ハイドロキシアパタイト焼結体と基材との間には、化学式(1)に示すような結合が存在することとなる。
【0115】
【化1】
JP0005002784B2_000002t.gif

【0116】
(ただし、上記X、Yは、基材またはハイドロキシアパタイト焼結体の一方を示し、上記Xが基材の場合にはYはハイドロキシアパタイト焼結体であり、また、XとYとが逆の場合もある)
なお、上記化学式(1)のケイ素原子(Si)は、アルコキシシリル基の一部である。具体的には、上記ケイ素原子は、基材の表面修飾したグラフト鎖の一部でもよく、高分子鎖が有するアルコキシシリル基の一部でもよい。また、上記化学式(1)の酸素原子(O)は、アルコキシシリル基の一部、または、ハイドロキシアパタイト焼結体が有する水酸基の一部である。また、上記化学式(1)のXとSiとの間は、高分子鎖で結合されていてもよく、低分子鎖で結合されていてもよく、直接結合していてもよい。
【0117】
また、上記官能基がイソシアネート基の場合には、ハイドロキシアパタイト焼結体と基材とは、ウレタン結合で化学結合されている。
【0118】
また、本実施の形態において用いるリン酸カルシウム複合体としては、基材に、上記リン酸カルシウム焼結体と化学結合可能な官能基を導入し、上記リン酸カルシウム焼結体と上記官能基とを反応させることにより得られるものがより好ましい。より詳細には、リン酸カルシウム複合体は、イソシアネート基、アルコキシシルル基、および4‐メタクリロキシエチルトリメルリテートアンハイドライド基からなる群より選ばれる少なくとも一つの官能基を有する基材と、リン酸カルシウム焼結体(ハイドロキシアパタイト焼結体がより好ましい)と化学結合してなる構成がさらに好ましい。上記リン酸カルシウム焼結体と化学結合可能な官能基を基材に導入し、当該官能基とリン酸カルシウム焼結体とを反応させることにより、リン酸カルシウム焼結体に化学的前処理を施すことなくリン酸カルシウム複合体を製造することができるので、リン酸カルシウム焼結体の生体親和性を損なわせることなく、リン酸カルシウム複合体を得ることができる。
【0119】
本実施の形態にかかるリン酸カルシウム複合体は、基材におけるリン酸カルシウム焼結体の結合量(吸着率)が5重量%以上であることがより好ましい。上記結合量としては、7重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましく、12重量%以上が特に好ましい。上記結合量が5重量%以上とすることにより、上記リン酸カルシウム複合体を、例えば、経皮端子等の医療用材料に用いた場合に、高い生体接着性を示すことができる。
【0120】
また、本実施の形態にかかるリン酸カルシウム複合体は、リン酸カルシウム焼結体と基材とが、イオン的相互作用によって化学結合していてもよい。これについて以下に説明する。
【0121】
本実施の形態におけるリン酸カルシウム複合体において、リン酸カルシウム焼結体が、当該リン酸カルシウム焼結体と基材とがイオン的相互作用によって化学結合する場合、上記基材の表面には、上記官能基がイオン化されたイオン性官能基が存在している。そして、基材の表面にイオン性官能基が存在している場合には、イオン性官能基とリン酸カルシウム焼結体自体のイオンとがイオン的な相互作用によって化学結合することにより、リン酸カルシウム複合体(リン酸カルシウム複合体)を形成することとなる。
【0122】
上記イオン性官能基は、酸性官能基または塩基性官能基に分類される。
【0123】
上記酸性官能基としては、具体的には、例えば、-COO、-SO2-、-SO、-O、RNC(S)等が挙げられる。また、上記塩基性官能基としては、具体的には、例えば、-NH3+、エチレンジアミン、ピリジン等が挙げられる。つまり、上記基材の表面には、上記例示の、酸性官能基または塩基性官能基が存在している。なお、上記RNC(S)のRは、アルキル基を示している。
【0124】
また、上記イオン性官能基としては、酸処理またはアルカリ処理等の化学的処理によりイオン化するものであればよく、具体的には、例えば、カルボキシル基、ジカルボキシル基、ジチオカルバミン酸イオン、アミン、エチレンジアミン、ピリジン等が挙げられる。
【0125】
なお、上記官能基としては、例えば、該官能基とリン酸カルシウム焼結体自体とが配位結合によって結合することができる、非イオン性官能基(中性官能基)等であってもよい。
【0126】
(基体)
本発明において使用する経皮端子の基体は、弾性を有していることが好ましい。上記基体を構成する材料としては、医療用プラスチック、エラストマー等が好適に使用される。上記医療用プラスチック、エラストマーとしては、例えば、ポリ四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂(フッ素含有樹脂)、シリコーンゴム等のシリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、フッ素化シリコーンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリ‐N‐ビニルピロリドン、セグメント化ポリウレタン等が挙げられる。そして、上記基体を構成する材料としては、最終的に得られる経皮端子に挿入される医療用チューブと同じ材料であることがより好ましい。また、上記基体は、上記生体親和性セラミックス複合体の被覆を良好にするために、例えば、エッチング、グロー放電処理または表面処理剤等の塗布によって表面処理を行なってもよい。
【0127】
ここで、上記基体の形状について説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、筒状のものを基体としてもよい。なお、筒状の内部には、医療用チューブが挿入される。
【0128】
上記基体は、鍔部を有していることがより好ましい。以下の説明では、鍔部を有する経皮端子について説明する。
【0129】
本実施の形態にかかる基体は、図5~10に示すように、胴部101と鍔部102とを有している。鍔部102は、複数個設けられていてもよい。そして、胴部101の内部(内側)に、医療用チューブが挿入される。また、上記胴部101と鍔部102とは同じ材料で構成されていてもよく、互いに異なっていてもよい。また、上記基体には、上記鍔部102に穴部103が設けられている構造もある。このとき、上記穴部103が複数設けられていてもよい。以下、これらについて説明する。
【0130】
上記胴部101は、経皮端子100を医療用チューブに固定するものである。そして、上記胴部101は、当該胴部101に挿入する医療用チューブの挿入方向に延びた形状になっている。そして上記胴部101は、医療用チューブの挿入方向と直交する面における形状(断面形状)が円形または楕円形の筒状になっている。そして、胴部101の医療用チューブの挿入方向の長さについては、使用する用途によって異なるが、例えば、肺高血圧症治療用カテーテル(長期留置型中心静脈カテーテル)用途に使用する場合には、0.5mm~2cm程度であればよく、また、腹膜透析用カテーテル用途に使用する場合には、0.5mm~4cm程度であればよい。また、胴部101の内径は、上記経皮端子100に挿入する医療チューブの太さと同じ程度である。そして、胴部101の厚さ(肉厚)としては、使用する用途によっても異なるが、上記経皮端子100に挿入する医療用チューブの肉厚を100%とした場合、0を超えて10000%以内の範囲内がより好ましく、100~5000%の範囲内がさらに好ましい。上記胴部101の厚さを上記範囲内とすることにより、経皮端子100を医療用チューブに、十分に固定することができる。
【0131】
上記鍔部102は、上記医療用チューブの延伸方向に対する当該基体(経皮端子100)の移動および回転を抑制するものである。上記医療用チューブを生体に埋殖した場合には、当該医療用チューブは、生体外と生体内とを結んだ状態となる。そして、上記医療用チューブは、主に、当該医療用チューブの延伸方向に外力が加わることとなる。このとき、経皮端子100に鍔部102を設けていることにより医療用チューブの延伸方向(医療用チューブにおける経皮端子100の挿入方向)における経皮端子100の移動を抑制することができる。
【0132】
また、外部からの力および生体の動きによる医療用チューブの歪みから上記医療用チューブの円筒の回転方向に上記医療用チューブへローリング力がかかることが知られている。このとき、経皮端子100に鍔部102を設けていることにより医療用チューブの回転方向(医療用チューブにおける経皮端子の胴回りの回転方向)における経皮端子100の移動を抑制することができる。
【0133】
上記鍔部102の形状としては、上記胴部101の胴回り全部に設けられていてもよく、また、胴回りの一部のみに設けられていてもよい。また、上記鍔部102は、複数個設けられていてもよい。具体的には、例えば、胴部101の両方の端部に上記鍔部102が設けられていてもよく、上記胴部101の一方の端部に設けられていてもよい。そして、鍔部102は、経皮端子100における医療用チューブの挿入方向、換言すると、経皮端子100の軸方向から見た面積が、胴部101の面積よりも大きくなるように設けられている。
【0134】
上記鍔部102の形状としては、上記胴部101の胴回り全部に設けられていてもよく、胴回りの一部のみに設けられてもよい。また、上記鍔部102は、複数個設けられていてもよい。具体的には、例えば、胴部101の両方の端部に上記鍔部102が設けられていてもよく、上記胴部101の一方の端部に設けられていてもよい。また、上記胴部101の真ん中部分に設けられていてもよい。そして、鍔部102は、経皮端子100における医療用チューブの挿入方向、換言すると、経皮端子100の軸方向から見た面積が、胴部101の面積よりも大きくなるように設けられている。
【0135】
また、上記鍔部102は、上記胴部101の軸方向(経皮端子100の軸方向)に対して、所定の角度を有するように突出している。具体的には、上記鍔部102は、胴部101の軸方向から見て、30~150°の範囲内の角度を有するように、胴部101から突出していることがより好ましい。そして、上記鍔部102を胴部101の軸方向に対して、所定の角度となるように傾斜させて胴部101に設けることにより、例えば、経皮端子100を生体内に埋植した際に、当該経皮端子100に固定されるカテーテルを生体に沿わせることができる。なお、上記鍔部102の胴部101の軸方向に対する傾斜角としては、用途によって異なるが、例えば、長期留置型中心静脈カテーテルを固定する経皮端子100の場合には、10~170°の範囲内がより好ましく、20~160°の範囲内がさらに好ましい。そして、上記傾斜角のうち最終的に得られる経皮端子の生体適合性の観点では、上記傾斜角は、60~120°の範囲内が特に好ましい。また、上記経皮端子を生体内に埋植して使用するという観点では、上記傾斜角は、15~45°(135~165°)の範囲内が特に好ましい。
【0136】
また、上記長期留置型中心静脈カテーテルを固定する経皮端子100について、好ましい形状について説明する。長期留置型中心静脈カテーテルを生体内に埋植する場合、具体的には、胸のあたりからカテーテルが生体外に延びるように埋植することになる。このとき、経皮端子100の鍔部102を、上記のように所定の傾斜角となるように胴部101に設けることにより、カテーテルを生体外に生体に沿って出すことができる。
【0137】
また、医療用チューブの挿入方向から見た上記鍔部102の面積、換言すると、胴部101の軸方向に対して直交する断面における鍔部102の面積は、胴部101の軸方向に対して直交する断面における胴部101と当該胴部101内の中空部とを併せた面積を1としたとき、0を超えて10以内の範囲内がより好ましく、0.05~5の範囲内がさらに好ましい。
【0138】
つまり、上記基体の形状としては、図5に示したように、上記鍔部102が、上記基体の軸方向における胴部101の中央付近に設けられていてもよく、また、図6に示すように、胴部101の末端に鍔部102が設けられていてもよく、さらには、図7に示すように、鍔部102が、基体の軸方向に対して所定の角度を有するように設けられていてもよい。また、例えば、胴部101の両末端にそれぞれ鍔部102が設けられていてもよく、これら鍔部102は、胴部101の周りの一部のみに突出するように設けられていてもよい。さらには、上記両末端に設けられた鍔部102は、基体の軸方向に対して所定の角度を有するように設けられてもよい。
【0139】
上記鍔部102の形状は、生体内へ埋殖する際のその生体埋殖し易さと生体への高い接着力の発現する形状が求められる。具体的には、生体内埋殖時に経皮端子100が上記医療用チューブの延伸方向に対して経皮端子生体内側表面と経皮端子生体外側表面が存在する。そこで、鍔部102形状、具体的には、鍔部102の対称性によっては、経皮端子100の埋殖のし易さが異なる場合がある。これについて、以下に説明する。
【0140】
上記医療用チューブおよび経皮端子100の生体への埋殖は、生体における埋殖部上皮を一部切開し、上記医療用チューブを穿刺・留置し、上記医療用チューブを生体へ差し込むこととなる。そして、経皮端子100の経皮端子生体内側表面の鍔部102は、医療用チューブを穿刺する際に生体内に差し込み(埋殖し)易い先端の細い形状を有することが好ましい。また、上記に加えて、生体との接着面をより広く取るためには、鍔部102の面積は広いことが好ましい。
【0141】
この2つの観点より、上記経皮端子100の鍔部は、生体内に医療用チューブを差し込む際に差し込みやすいように、差し込み側の鍔部102の形状は先端が細い形状であることがより好ましい。また、差し込み側に対して反対側の鍔部102の形状は、より広い面積(生体に対してより広い接着面)を有するために、突出していることがより好ましい。
【0142】
具体的には、図9(a)、図9(b)、図10(a)および図10(b)に示すような形状が好ましい。
【0143】
上記図9(a)および図9(b)に示す鍔部102の形状はあたかもムササビが、空気から浮力を得るため皮膜を広げたような形状をしており、経皮端子生体内側表面がムササビの頭の方向ということができる。より詳細には、図9(a)および図9(b)に示す経皮端子100は、鍔部102のうちの4箇所が、さらに突出している形状であり、当該経皮端子100を生体内に挿入する際に、上記鍔部102の先端が、他の部分よりも細くなっている形状である。
【0144】
また、図10(a)および図10(b)に示す鍔部102の形状はあたかもスペースシャトルが、空気から浮力を得るため羽を広げたような形状をしており、経皮端子生体内側表面がスペースシャトルの飛行方向ということができる。より詳細には、図10(a)および図10(b)に示す経皮端子100は、鍔部102のうちの生体に埋入させる場合の埋入方向における後端側の2箇所が突出している形状である。
【0145】
上記構成をとることにより、差し込み(埋殖し)易く、そして生体組織との接着性の向上を図ることができる。さらにこの接着力の向上より上記医療用チューブの挿入方向に対する、上記経皮端子100の移動および回転を抑制することができる。
【0146】
また、上記経皮端子100の鍔部102には、複数の穴部103が設けられていることがより好ましい。これについて以下に説明する。
【0147】
図8(a)および図8(b)は、鍔部102に穴部103が設けられている経皮端子100の概略の構成を示す図面である。上記穴部103は、上記医療用チューブの延伸方向に対する当該基体の移動および上記医療用チューブの回転を抑制するために設けられている。上記医療用チューブを生体に埋殖した場合には、当該医療用チューブは、生体外と生体内とを結んだ状態となる。そして、上記医療用チューブは、主に、当該医療用チューブの延伸方向に外力が加わることとなる。このとき、経皮端子100の鍔部102に穴部103を設けていることにより医療用チューブの延伸方向(医療用チューブにおける経皮端子100の挿入方向)における経皮端子100の移動を抑制することができる。また、外部からの力および生体の動きによる医療用チューブの歪みから、上記医療用チューブに対して、ローリング力がかかることが知られている。これにより、上記医療用チューブは回転することになる。そこで、経皮端子100の鍔部102に穴部103を設けることにより、上記医療用チューブの回転方向(医療用チューブにおける経皮端子100の胴回りの回転方向)における経皮端子100の移動および回転を抑制することができる。
【0148】
より具体的には、上記鍔部102に穴部103が存在することにより、上記経皮端子100を生体内に埋殖すると、生体内に存在する生体組織が経皮端子100の穴部103へと伸展して通過する。そして、鍔部102の表面に接着している生体組織とその伸展した組織とが、接着する。これにより、あたかも経皮端子100の鍔部102に存在する穴部103を、組織という糸で縫い付けた状態となるため、上記経皮端子100を生体に固定することができる。そして上記のように経皮端子100を固定することにより、上記医療用チューブの挿入方向に対する経皮端子100の移動および回転を抑制することができる。つまり、上記経皮端子100の鍔部102に穴部を設けることにより、当該経皮端子100を生体内に埋植した際に、上記鍔部102の両側に存在している組織同士が、上記穴部103を介して互いに接着することになる。これにより、生体内に埋植した経皮端子100の、生体内における位置を固定することができるとともに、当該経皮端子100が回転することを抑制することができる。
【0149】
上記穴部103は、上記鍔部102の一部のみに設けられていてもよく、鍔部102の全領域に設けられていてもよい。さらに、上記穴部103は、複数個設けられていてもよい。具体的には、たとえば鍔部102の間部(つばの真ん中)に穴部103が設けられていてもよく、上記鍔部102の端部に設けられていてもよい。また、複数の穴部103の配置が上記鍔部102の形状に対して対称に配置されていなくてもよい。
【0150】
また、鍔部102に配置されたすべての穴部103の個数は、1~20個が好ましく、2~10個がより好ましく、4~8個が特に好ましい。
【0151】
上記穴部103を上記のように鍔部102に設けることで、上記医療用チューブの延伸方向に対する経皮端子100の移動および回転を、より一層抑制することができる。
【0152】
なお、上記穴部103の個数が多すぎる(例えば、20個よりも多く穴部30を設けた)場合には、上記鍔部102の面積が少なくなってしまい、経皮端子100の十分な機械的物性を得ることができなくなる場合がある。また、穴部103の個数を多くしすぎると、上記鍔部102に配置される穴部103の大きさが比較的小さくなってしまうので、生体組織が穴部103を十分に通り抜けることができず上記医療用チューブの延伸方向に対する当該基体の移動および上記医療用チューブの回転を抑制する効果が十分に得られない場合がある。
【0153】
また、鍔部102に設けられた複数の穴部103は、上記胴部101の延伸軸(延伸方向)と直交する線に対して対称に配置されていることがより好ましい。そして、上記複数の穴部103を、上記のように対称に配置することで、経皮端子100の移動および回転を十分に抑制することができる。
【0154】
また、鍔部102に配置されたすべての穴部103の面積の合計は、医療用チューブの挿入方向から見た上記鍔部102の面積(鍔部に配置された穴部の面積も含む。また、鍔部102と同一平面の胴部101の軸方向に対しての直交する断面の面積は含まない。)に対して、鍔部102の面積を100%としたとき0%を超えて40%以内の範囲内の面積が好ましく、0.1~30%の範囲内の面積がより好ましく、1~20%の範囲内の面積が特に好ましい。
【0155】
上記穴部103の面積が40%よりも多い場合には、上記鍔部102における穴部103の割合が大きすぎるため、経皮端子100自体が十分な機械的物性を得ることができない。また、穴部103の1個あたりの面積が大きくなるので、穴部103を通り抜けた組織が他の生体組織と接着した場合でも、上記経皮端子100を十分に固定する力を得ることができなくなる場合があり、上記医療用チューブの延伸方向に対する上記経皮端子100の移動および回転を抑制する効果が十分に得られない場合がある
また、鍔部102に配置されたすべての穴部103形状としては、例えば、丸型形状、楕円形状、三角形状、四角形状等の形状でもよく、不定形でも良い。
【0156】
さらに、鍔部102に配置されたすべての穴部103形状は同じでなくてよく、複数ある穴部103の形状がそれぞれ異なっていてもよい。
【0157】
(経皮端子)
本発明にかかる経皮端子は、上記経皮端子の基体の表面が、上記生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなるものである。上記経皮端子は、例えば、後述する本発明にかかる方法、および本発明にかかる装置によって製造することができる。
【0158】
本発明にかかる経皮端子は、生体親和性を有する短繊維が基体の表面にフロック加工されているため、当該短繊維の長軸が経皮端子の表面に対して垂直(または略垂直)に起毛した状態で存在している。したがって、従来の経皮端子のように生体親和性を有する短繊維の長軸が、経皮端子の表面に対して平行(または略平行)の状態で接着されてなる経皮端子、あるいは生体親和性を有する材料で経皮端子の基体の表面を被覆してなる経皮端子に比して、表面積がはるかに大きくなる。表面積が大きくなるということは、つまり生体親和性を有する材料と生体組織が接する面積が広くなるということを意味している。その結果、経皮端子と生体組織との接着性が向上するという効果が得られる。
【0159】
以下に、図を用いて生体親和性を有する短繊維を経皮端子の基体の表面にフロック加工した場合の表面積と、フロック加工せずに生体親和性を有する材料を被覆した場合の表面積とを比較した結果を示す。図4に、円柱型の経皮端子の基体(φ3.0mm、高さ6.0mm)の表面に、生体親和性を有する材料を厚さ0.5mmとなるように被覆して作製したT1型経皮端子(φ4.0mm、高さ6.0mm)の上面図、およびA-A’断面図を示した。円柱内部(図中斜線で示す)に医療用チューブが挿入される。そして経皮端子が生体内へ埋設された際には、円柱の外側面が生体組織と接する面となる。よってT1型経皮端子における生体親和性を有する材料が生体組織と接する面の面積は、
2×π×2.0mm×6mm=75.40mm
である。
【0160】
一方、生体親和性を有する短繊維を経皮端子の基体の表面にフロック加工した場合は以下の通りである。経皮端子の基体(φ3.0mm、高さ6.0mm)の表面の20μm毎のマトリックスに、直径10μm、高さ100μmの円柱状の短繊維が一本ずつ起立して接着していると仮定すると、
平均100μm繊維(直径10μm)の表面積(経皮端子の基体との接着面を除く)は、
(0.01π×0.1)+(0.005×0.005)πであり、
経皮端子の基体表面上に接着されている短繊維の数は、
(3mm×π×6mm)÷(0.02mm×0.02mm)である。
よって、生体親和性を有する短繊維が生体組織と接する面の面積は、
((0.01π×0.1)+(0.005×0.005)π)×(3mm×π×6mm)÷(0.02mm×0.02mm)=482.78mm となる。
【0161】
したがって、生体親和性を有する短繊維を経皮端子の基体の表面にフロック加工した場合の生体親和性を有する材料が生体組織と接する面の面積は、フロック加工せずに生体親和性を有する材料を基体へ被覆した場合のそれに比して、約6.4倍となる。よって、前者の経皮端子は後者のそれに比して、生体接着性が高いということが分かる。
【0162】
なお、生体親和性を有する材料を基体表面に被覆した基体の表面上にさらに、生体親和性を有する短繊維をフロック加工すれば、さらに生体親和性を有する材料が生体組織と接する面の面積が広がる。よって上記態様も本発明が意図する範囲内である。
【0163】
なお、本発明にかかる経皮端子は、経皮端子の基体の単位面積と当該単位面積に被覆されている短繊維の表面積との割合が少なくとも2倍以上、より好ましくは3倍以上、最も好ましくは4倍以上であることを特徴としている。上記の値は、例えば、経皮端子の基体の表面の単位面積(例えば1mm)に植毛されている短繊維の本数を走査型電子顕微鏡等で求めるとともに、当該短繊維の表面積(基体との接着面を除く)を求め、短繊維の本数と当該短繊維の表面積(基体との接着面を除く)から、単位面積に被覆されている短繊維の表面積を計算し、その計算値と単位面積とを比較することによって、求めることができる。この時、経皮端子上の2箇所以上において、上記の値を求め、その平均をもとめる方が、経皮端子の基体の単位面積と当該単位面積に被覆されている短繊維の表面積との割合を、より正確に求めることができるために好ましい。
【0164】
以下に、本発明の経皮端子の利用例について説明する。本発明にかかる経皮端子は、様々な医療チューブに挿入して使用することが可能である。上記経皮端子の具体的な用途としては、例えば、肺高血圧症治療用カテーテル(長期留置型中心静脈カテーテル)、腹膜透析用カテーテル、補助人工心臓(VAS)の送血管・脱血管の皮膚挿入部位、人工肛門・人工膀胱、高カロリー用カテーテル、胃ろう、経皮電極、外シャント、ブラッドアクセスに好適に利用できる。
【0165】
〔2.本発明にかかる経皮端子を製造する方法および装置〕
本発明にかかる経皮端子を製造する方法は、経皮端子の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなる経皮端子を製造するための方法であって、第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された経皮端子の基体を配置する工程、第2電極板上に生体親和性を有する短繊維を載置する工程、経皮端子の基体を回転させる工程、および第1電極板と第2電極板に電圧を印加する工程、を含み、当該第1電極板と経皮端子の基体とが電気的に接続されていることを特徴としている。また上記第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された経皮端子の基体を配置する工程は、経皮端子への医療用チューブの挿入方向に対する第1電極板および第2電極板の角度が、0°を超え90°未満となるように、第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された経皮端子の基体を配置する工程であることが好ましい。また本発明にかかる方法は、上記構成に加え、上記生体親和性を有する短繊維を加湿する工程をさらに含む方法であることが好ましい。
【0166】
一方、本発明にかかる経皮端子を製造するための装置は、経皮端子の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなる経皮端子を製造するための装置であって、第1電極板、第2電極板、および経皮端子の基体を支持するための支持部と当該支持部を回転させるための回転部とを備える回転支持部を備え、重力方向を下とした場合に当該第2電極板は第1電極板の下に配置されており、当該第2電極板は生体親和性を有する短繊維を載置可能に構成されており、当該支持部に支持される経皮端子の基体が第1電極板と第2電極板との間に配置されるように回転支持部が配置されており、当該支持部は第1電極板と電気的に接続されておりかつ当該支持部は経皮端子の基体と電気的に接続可能に構成されていることを特徴としている。また本発明の装置において、上記回転支持部は、当該支持部に支持される経皮端子の基体が、第1電極板と第2電極板との間において、経皮端子への医療用チューブの挿入方向に対する第1電極板および第2電極板の角度が、0°を超え90°未満となるように配置されていてもよい。
【0167】
上記本発明にかかる経皮端子を製造するための方法は、例えば、上記本発明にかかる経皮端子を製造するための装置によって好適に実施することが可能である。以下に本発明にかかる経皮端子を製造するための装置の一例を挙げて、本発明にかかる経皮端子を製造するための方法および装置を説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0168】
図3に本発明にかかる経皮端子を製造するための装置(フロック加工装置1)の一実施形態の模式図を示す。かかるフロック加工装置1は、第1電極板2、第2電極板3、支持部6aと回転部6bとを備える回転支持部6、加湿センサと加湿器とを備える湿度制御部4、および容器5を備えている。
【0169】
フロック加工装置1において第1電極板2および第2電極板3は、両者が略平行になる位置関係で、かつ重力方向を下とした場合に、第1電極板2が上で第2電極板3が下になるように配置されている。また第1電極板2および第2電極板3はともに平板状の電極であり、両者間に電圧を印加することが可能なようにそれぞれが電源(図示せず)に電気的に接続されている。また第2電極板3上には短繊維10が載置されている。
【0170】
またフロック加工装置1において、回転支持部6の支持部6aは棒状であり、その棒状の支持部6aに経皮端子の基体11が支持されている。上記経皮端子の基体11が支持部6aに支持される方法は特に限定されるものではなく、例えば、図3のごとく経皮端子の基体11の医療用チューブの挿入部に棒状の支持部6aを挿入して支持してもよいし、あるいは支持部6aの先端がクランプ状になっていて経皮端子の基体11を当該クランプで挟持するように支持してもよい。図3では支持部6aが棒状になっているが、本発明にかかる装置は棒状に限られない。また棒状である場合であっても、直線状に限られず曲線状であっても、鍵型に折れ曲がった形状であってもよい。
【0171】
支持部6aによって支持された経皮端子の基体11は、第1電極板2と第2電極板3との間において、当該経皮端子への医療用チューブの挿入方向に対する第1電極板2および第2電極板3の角度が、0°を超え90°未満となるように回転支持部6が配置されている。ここで上記角度は、当該経皮端子への医療用チューブの挿入方向に平行な直線と第1電極板2および第2電極板3の平面との角度であり、特に直線と平面とによって形成される角のうち狭い方の角(狭角)のことを意味する。図3中、上記角度を「θ°」で表す。本発明の装置においては、上記角度が0°を超え90°未満となっている。上記角度が0°、すなわち当該経皮端子への医療用チューブの挿入方向と第1電極板2および第2電極板3の平面とが平行である場合、または上記角度が90°、すなわち当該経皮端子への医療用チューブの挿入方向と第1電極板2および第2電極板3の平面とが直交している場合は、胴部と鍔部とを備えた経皮端子のごとく複雑な形状をした経皮端子の基体11の表面に短繊維10をフロック加工する場合、胴部または鍔部の何れか一方のみが短繊維10の飛翔方向に対向しない場合が多いため、経皮端子の基体11の表面に短繊維10を一様にフロック加工することが困難となる。なお上記角度は、0°を超え90°未満であれば特に限定されるものではないが、5°を超え85°未満がさらに好ましく、10°を超え80°未満が最も好ましい。
【0172】
なお本発明にかかる経皮端子を製造するための装置においては、上記支持部6aは、第1電極板2と電気的に接続されており、かつ当該支持部6aは経皮端子の基体11と電気的に接続可能に構成されていることを特徴としている。すなわち上記第1電極板2と経皮端子の基体11とが電気的に接続されることになる。上記第1電極板2と経皮端子の基体11とが電気的に接続されることよって、経皮端子の基体11の表面上の生体親和性を有する短繊維10に起電力が発生し、当該生体親和性を有する短繊維10が起毛する。以上のように構成するためには、上記支持部6aは少なくとも導電性を有することが必要となる。よって、支持部6aは導体からなることが好ましいといえる。上記導体は特に限定されるものではなく、銅、鉄、ニッケル、白金等の金属であっても、カーボン、電導性高分子等の材料であってもよい。また支持部6aと第1電極板2との電気的な接続方法は、特に限定されるものではないが、例えば図3に示す接点Aのように、支持部6aと第1電極板2とが部分的に接触するようにしてもよい。
【0173】
また支持部6aは回転部6bと接続され、支持部6aおよびそれに支持されている経皮端子の基体11が回転する。フロック加工装置11において回転部6bは、電動モーターにより構成されている。ただし回転部6bは支持部6aを回転させることができる手段であれば特に限定されるものではなく、上記の電動モーターにより構成されていても、またエンジンにより構成されていてもよい。さらに上記回転部6bは、支持部6aの軸受として構成されており、人力で支持部6aを回転させるように構成されていてもよい。この時の回転数は、特に限定されるものではないが、例えば、0.1rpm以上1000rpm未満が好ましく、0.5rpm以上500rpm未満がさらに好ましく、1rpm以上100rpm未満が最も好ましい。上記好ましい範囲を超えると経皮端子の基体11にかかる遠心力が強くなりすぎ、経皮端子の基体11上の接着剤が剥離したり、歪に変形したりする。上記好ましい範囲未満であると接着剤が流れ落ち接着ムラができる場合がある。
【0174】
フロック加工装置1は、容器5、および加湿センサと加湿器とを備える湿度制御部4を備えている。容器5は第1電極板2と第2電極板3と支持部6aとを収納している。加湿制御部の加湿センサ、および加湿器の一部は容器5に挿入されており、容器内の湿度を制御している。上記のように容器内の湿度を制御することによって、第2電極板3上に載置された短繊維10をフロック加工に好適な湿度にすることができる。最適な湿度については既述の通りである。なお、湿度制御部4は従来公知の手段を適宜選択の上、採用すればよい。
【0175】
上記容器5の形状当は特に限定されるものではないが、例えば、容器5の一部が開閉可能な構造となっていることが好ましい。換言すれば、容器5が開閉可能なドア構造を有していることが好ましい。上記構成とすることで、短繊維10および経皮端子の基体11を容器へセットしたり、作製された経皮端子を回収したり、容器5内の洗浄したりすることが容易となる。また容器5内の湿度を緻密に制御するためには、容器5は密閉または半密閉の状態にすることができるものであることが好ましい。
【0176】
フロック加工装置1は上記構成のほか、漏電を防止するためのブレーカー、運転中であることを通知するための加工運転通知用ランプ、容器5のドアの開閉を指示するためのドア開閉スイッチ、運転の異常を示すブザーおよびランプ等が備わっていてもよい。
【0177】
次に、フロック加工装置11を用いて経皮端子を製造する方法の一例を説明する。
(i)回転支持部6における支持部6bへ、接着剤を表面に塗布した経皮端子の基体11を固定する。上記接着剤は、公知のものを適宜利用可能であり、例えば、シリコーン系接着剤、ポリエチレン‐酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ナイロン、ウレタンエラストマー、酢酸ビニル、アクリル樹脂等が挙げられる。
(ii)第2電極板4上に生体親和性を有する短繊維10を載置する。短繊維10は「1.本発明の経皮端子」の項で説示した生体親和性を有する短繊維を適宜利用することができる。
(iii)容器5の蓋を閉める。
(iv)湿度制御部4を作動させる。
(v)回転支持部6の回転部6bを動作させることによって、経皮端子の基体11を回転させる。
(vi)第1電極板2と第2電極板3に電圧を印加する。この時、印加する電圧は電極間の距離、短繊維10の大きさや材料等、支持部6aの材質に応じて最適な電圧を検討の上採用すればよい。通常の場合、1kV以上100kv未満が好ましく、2kV以上75kv未満がさらに好ましく、5kV以上50kv未満が最も好ましい。
【0178】
なお上記(i)および(ii)の項手の順序は相互間で入れ替えることが可能である。また上記(iv)については(i)、(ii)、(iii)、(v)、(vi)のいずれの工程の前後で行なってもよい。(v)については(i)の工程の後であれば、どのタイミングで行なってもよい。
【0179】
上記の操作を行なうことによって、経皮端子の基体11の表面が短繊維10でフロック加工されてなる経皮端子を製造することができる。
【0180】
なお本発明にかかる経皮端子を製造するための方法は、上記工程に限定されるものではなく、接着剤を塗布する工程、フロック加工が終了した経皮端子を乾燥する工程、経皮端子に電気的に付着している無駄な短繊維を経皮端子表面から除去する工程等がさらに含まれていてもよい。また、上記の各工程は、本発明にかかる経皮端子を製造するための方法を実施することができる範囲において、順序を適宜入れ替えることが可能である。
【0181】
〔3.本発明にかかる体内留置型医療機器〕
本発明にかかる体内留置型医療機器は、基体の表面が生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなる。
【0182】
以下に、本発明にかかる体内留置型医療機器の一実施形態について説明するが、上述の〔1.本発明にかかる経皮端子〕の項の説明を、本発明にかかる経皮端子が、本発明にかかる体内留置型医療機器の場合において援用することができる。そこで、本項では、〔1.本発明にかかる経皮端子〕の項との相違点について説明する。つまり、本項で説明をしない構成は、全て〔1.本発明にかかる経皮端子〕の項の説明に準じればよい。
【0183】
本明細書において「体内留置型医療機器」とは、生体内に留置させて用いられる医療機器を意図する。そして、本明細書において「医療機器」とは、日本国薬事法第二条第4項に定義された「医療機器」を意図し、具体的には日本国薬事法施行例第一条別表第一に挙げられた医療機器を意図する。
【0184】
つまり、本発明において、生体親和性を有する短繊維でフロック加工する医療機器としては、生体内に留置して用いる、上記薬事法に定められた医療機器である限り限定されるものではないが、人工血管、ステント、ステントグラフト、人工気管、ペースメーカー、人工心臓、アクセスポートであることが好ましい。これらの医療機器は、特に、生体内に留置した位置がズレることの抑制が要求される。そして、生体親和性を有する短繊維で、その基体の表面をフロック加工した本発明にかかる体内留置型医療機器は、生体組織との密着性に優れているため、生体内で位置ズレすることを抑えることができる。
【0185】
また、上述のように本発明にかかる経皮端子の基体は鍔部を備えていることが好ましかったが、本発明にかかる体内留置型医療機器としては、当該体内留置型医療機器の種類に応じて、適宜鍔部を設ければよい。
【0186】
また、本発明にかかる体内留置型医療機器には、経皮端子のように体内と体外とを繋ぐ医療機器のみならず、例えば人工心臓等、体内に機器全体を埋め込んで用いる医療機器も含まれる。体内に機器全体を埋め込む医療機器は、体内と体外とを繋ぐ医療機器に比べて、さらに体内での位置のズレが問題となるが、本発明にかかる体内留置型医療機器は、生体との密着性が高く、位置安定性が確保されているため、体内に機器全体を埋め込む医療機器として好適に用いることができる。
【0187】
〔4.本発明にかかる体内留置型医療機器を製造する方法および装置〕
本発明にかかる体内留置型医療機器を製造する方法は、体内留置型医療機器の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなる体内留置型医療機器を製造するための方法であって、第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された体内留置型医療機器の基体を配置する工程、第2電極板上に生体親和性を有する短繊維を載置する工程、体内留置型医療機器の基体を回転させる工程、および第1電極板と第2電極板に電圧を印加する工程、を含み、当該第1電極板と体内留置型医療機器の基体とが電気的に接続されていることを特徴としている。また本発明にかかる方法は、上記構成に加え、上記生体親和性を有する短繊維を加湿する工程をさらに含む方法であることが好ましい。
【0188】
一方、本発明にかかる体内留置型医療機器を製造するための装置は、体内留置型医療機器の基体の表面が、生体親和性を有する短繊維でフロック加工されてなる体内留置型医療機器を製造するための装置であって、第1電極板、第2電極板、および体内留置型医療機器の基体を支持するための支持部と当該支持部を回転させるための回転部とを備える回転支持部を備え、重力方向を下とした場合に当該第2電極板は第1電極板の下に配置されており、当該第2電極板は生体親和性を有する短繊維を載置可能に構成されており、当該支持部に支持される体内留置型医療機器の基体が第1電極板と第2電極板との間に配置されるように回転支持部が配置されており、当該支持部は第1電極板と電気的に接続されておりかつ当該支持部は体内留置型医療機器の基体と電気的に接続可能に構成されていることを特徴としている。
【0189】
上記本発明にかかる体内留置型医療機器を製造するための方法は、例えば、上記本発明にかかる体内留置型医療機器を製造するための装置によって好適に実施することが可能である。
【0190】
ここで、上述の〔2.本発明にかかる経皮端子を製造する方法および装置〕の項の説明は、本発明にかかる経皮端子を製造する方法および装置が、本発明にかかる体内留置型医療機器を製造する方法および装置の場合において援用され得る。つまり、本発明にかかる体内留置型医療機器を製造する方法および装置の具体的な構成は、〔2.本発明にかかる経皮端子を製造する方法および装置〕の項の説明に準じればよい。
【0191】
なお、本発明にかかる経皮端子を製造する方法および装置では、上記第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された経皮端子の基体を配置する工程において、経皮端子への医療用チューブの挿入方向に対する第1電極板および第2電極板の角度が、0°を超え90°未満となるように、第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された経皮端子の基体を配置することが好ましかったが、本発明にかかる体内留置型医療機器を製造する方法および装置ではこの限りではない。即ち、体内留置型医療機器の種類や形態に応じて、上記第1電極板と第2電極板との間に配置する角度は適宜設定すればよい。
【0192】
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様および以下の実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
【0193】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0194】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例および比較例に限定されるものではない。
【0195】
まず、実施例1および比較例1において短繊維として使用するハイドロキシアパタイト複合体粒子の製造例1を示す。
【0196】
〔製造例1〕
(ハイドロキシアパタイト焼結体の製造方法)
まず、本実施例にかかるハイドロキシアパタイト焼結体の製造方法について説明する。
【0197】
連続オイル相としてドデカン、非イオン性界面活性剤として曇天31℃のペンタエチレングリコールドデシルエーテルを用いて、上記非イオン性界面活性剤0.5gを含有している連続オイル層40mlを調製した。次に、上記調製した連続オイル層にCa(OH)分散水溶液(2.5モル%)を10ml添加した。そして、得られた分散液を十分に撹拌した後、その水/オイル(W/O)乳濁液に1.5モル%のKHPO溶液10mlを添加して、反応温度50℃で、24時間撹拌しながら反応させた。得られた反応物を遠心分離により分離することにより、ハイドロキシアパタイトを得た。そして、上記ハイドロキシアパタイトを800℃の条件で、1時間加熱することにより、ハイドロキシアパタイト焼結体の粒子(以下、HAp粒子と称する)を得た。このHAp粒子は、単結晶体であり、長径が300~400nmであった。
【0198】
(ハイドロキシアパタイト複合体粒子の製造方法)
まず、基材である繊維状のシルクフィブロイン(藤村製糸株式会社製、品名;羽二重、以下、SF繊維と称する)を、長軸方向の平均長さ100μm、短軸方向の平均長さ10μmに切断した。そして、得られたSF繊維(以下、cutSFと称する)をソックスレー抽出器で不揮発成分の抽出除去を行なった。
【0199】
次に、ソックスレー抽出済みのcutSF600mgをドクター試験管に入れた後、そこに、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)82mgを純水18mlに溶かしたもの、および、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(KBE503)1088μlをペンタエチレングリコールドデシルエーテル292μlに加えて十分に撹拌したものを添加した。そして、液体窒素にて凍結、脱気、解凍、窒素置換するという作業を2回繰り返した。
【0200】
次に、反応溶液を、50℃の湯浴で、60分間加熱することにより反応を行なった。その後、反応溶液を、定性濾紙(保留粒子径5μm)を用いて濾過した。これにより、cutSFの表面にアルコキシシリル基が導入されたシルクフィブロイン繊維(濾滓)と、高分子化したKBEおよびシリル基がエステル化した分子(濾液)とを分離した。そして、さらに、高分子化したKBEを分離するために、cutSFの表面にアルコキシシリル基が導入されたシルクフィブロイン繊維をエタノール中で、1分間超音波(出力20kHz、35W)処理し、さらに2時間撹拌しながら洗浄した後、定性濾紙にて濾過した。その後、真空乾燥することにより、末端にアルコキシシリル基を有する高分子鎖をグラフト重合させたシルクフィブロイン繊維、すなわち、アルコキシシリル基導入シルクフィブロイン繊維(以下、KBE-cutSFと称する)を得た。また、このときの反応時間におけるアルコキシシリル基の導入率は、8.3重量%であった。なお、上記導入率は、未処理のcutSFの重量をAg、反応後のcutSFの重量(KBE-cutSF)をBgとして、下式により求めた。
【0201】
導入率(重量%)=((B-A)/A)×100
一方、溶媒(トルエン:メタノール=8.6:1)15mlに上記HAp粒子300mgを加え、20秒間超音波処理することで分散させた後、30分~1時間静置した。
【0202】
また、HAp粒子を静置している間に、30mlのエレンマイヤーに溶媒(トルエン:メタノール=8.6:1)15mlに、KBE-cutSF約300mgを分散させた。
【0203】
そして、KBE-cutSFを分散させたエレンマイヤーに、パスツールピペットにて、上記HAp粒子を分散させた上澄み溶媒を静かに移した。その後、1分毎に、KBE-cutSFとHAp粒子とが混合した分散溶媒をスポイドにて静かにかき混ぜた。
【0204】
そして、上記のかき混ぜ操作を10回繰り返した後、上記定性濾紙にてHAp粒子が吸着したKBE-cutSF(以下、「KBE-cutSF-HAp」と称する)と吸着していないHAp粒子を分離した。具体的には、上澄みのHAp粒子を濾過し、その後に、沈殿したKBE-cutSF-HApを回収した。
【0205】
その後、分離したKBE-cutSF-HApをエタノール中で、2時間撹拌・洗浄し、1分間超音波処理した後、上記定性濾紙にて濾過した。
【0206】
そして、濾別したKBE-cutSF-HApを60℃で乾燥後、120℃、1mmHg、2時間処理した。これにより、ハイドロキシアパタイト複合体粒子(KBE-cutSF-HAp)を合成した。なお、上記合成したハイドロキシアパタイト複合体粒子をFT-IR(拡散反射法)を用いて分析した結果、HAp粒子が基材に結合していることがわかった。
【0207】
〔実施例1〕
KBE-cutSF-HApを基体にフロック加工を行なって、経皮端子を製造する方法について説明する。
【0208】
上記経皮端子の製造には、図3に示すフロック加工装置1を用い、その工程については「2.本発明にかかる方法および装置」の項の説明に準じて行なった。またフロック加工の条件については以下の通りとした。
電源電圧・・・・・・・・・・・・・・・・・・直流DC:25kV
第1電極板-第2電極板間距離・・・・・・・・約50mm
第2電極板-経皮端子の基体間距離・・・・・・約15mm
第2電極板-経皮端子の基体間距離・・・・・・約35mm
湿度制御・・・・・・・・・・・・・・・・・・相対湿度95%
回転支持部の回転数・・・・・・・・・・・・・3rpm
加工時間・・・・・・・・・・・・・・・・・・5分間
装置内温度・・・・・・・・・・・・・・・・・25℃
霧吹きの使用・・・・・・・・・・・・・・・・有り
なお、加工前にKBE-cutSF-HApを霧吹きで湿らせておいた。
【0209】
また基体に対する接着剤の塗布は、以下の〔比較例1〕と同様にした。
【0210】
〔比較例1〕
KBE-cutSF-HApを基体に被覆して、経皮端子を製造する方法について説明する。
【0211】
まず、基体の表面のうち、KBE-cutSF-HApを被覆しない部分(被覆部以外)にはカバーテープを巻いておいた。
【0212】
次に、シリコンラバーの基体におけるカテーテルが挿入される方向を軸として360rpmで回転させながら、シリコーン接着剤(GE東芝シリコーン株式会社製、非腐食性速乾性接着シール材、TSE-399)を基体に塗布した後、5600rpmで10秒間回転させることにより、余分な接着剤を取り除いた。
【0213】
そして、上記接着剤が塗布された基体を360rpmで回転させながら、上記KBE-cutSF-HApをまんべんなくつけ、その後、余分なKBE-cutSF-HApを取り去った。
【0214】
その後、KBE-cutSF-HApで被覆された基体を85℃で5分間乾燥させ、5分後に回転棒からはずした。そして、減圧下(133Pa(1mmHg))で120℃、2時間乾燥を行なった。
【0215】
次に、上記基体を純水に浸し、超音波(出力20kHz、35W)を3分間照射することにより、上記基体を洗浄した。さらに超音波照射終了後、純水中で基体を1時間攪拌して洗浄した後、乾燥させ、24時間放置することにより本発明かかる経皮端子を製造した。なお、カバーテープについては、KBE-cutSF-HApを接着剤が塗布されている基体につけた後で取り除いた。
【0216】
実施例1で製造された経皮端子の走査型電子顕微鏡像を図1に示し、比較例1で製造された経皮端子の走査型電子顕微鏡像を図2(a)および図2(b)に示した。図2(a)および図2(b)によれば、KBE-cutSF-HApの繊維が寝た状態で経皮端子表面上に付着していることが分かる。これに対して図1に示す経皮端子では、KBE-cutSF-HApの繊維が起毛した状態で経皮端子表面上に付着していることが分かる。よって、実施例1にかかる経皮端子は、比較例1にかかる経皮端子に比して、その表面積が明らかに広いものであるということが分かった。
【0217】
〔実施例2〕植毛密度の評価
本実施例では、実施例1に記載の操作及び条件にて作製した経皮端子の植毛密度の評価を行なった。
【0218】
植毛密度の評価は、フロック加工を施した経皮端子の一部を切り取り、当該一部の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製(JEOL Ltd.);JSM-6301F)を用いて観察することにより行なった。具体的には、SEMの倍率を100倍として、一辺200μmの正方形内に存在するフロックを数えた。なお、当該正方形を、無作為に5箇所選抜してフロックを数え、その平均値を植毛密度として評価した。
【0219】
また、同様の操作を、比較例1に記載の操作及び条件にて作製した経皮端子を用いて行ない、当該経皮端子の植毛密度を評価した。
【0220】
実施例1に記載の操作及び条件にて作製した経皮端子の植毛密度と、比較例1に記載の操作及び条件にて作製した経皮端子の植毛密度とを比較した結果を表1に示す。
【0221】
【表1】
JP0005002784B2_000003t.gif

【0222】
経皮端子にフロック加工を施すことによって、従来技術より高い植毛密度で、KBE-cutSF-HApを植毛することが可能であることが示された。
【0223】
〔実施例3〕植毛密度の制御
本実施例では、電源電圧及び相対湿度を変化させた以外は、実施例1に記載の方法および条件で経皮端子を作製して、実施例2に記載の方法で植毛密度を評価した。具体的な電源電圧及び相対湿度の条件、及び、それぞれの条件により得られた経皮端子の植毛密度を表2に示す。
【0224】
【表2】
JP0005002784B2_000004t.gif

【0225】
表2に示すように、電源電圧及び相対湿度を調整することにより、経皮端子の植毛密度を制御することが可能であることが確認された。なお、比較例1に記載の方法および条件では、植毛密度を制御することができなかった。
【0226】
〔実施例4〕ステントに対するフロック加工
KBE-cutSF-HApを、316L stainless steel製Palmaz‐Schatz型ステント(以下、本実施例において単に「ステント」と表記する)の基体に、フロック加工する方法について説明する。なお、図11はフロック加工する前のステントの外観を示す図である。
【0227】
上記ステントの製造には、図3に示すフロック加工装置1を用い、その工程については「2.本発明にかかる方法および装置」の項の説明に準じて行なった。またフロック加工の条件については以下の通りとした。
電源電圧・・・・・・・・・・・・・・・・・・直流DC:25kV
第1電極板-第2電極板間距離・・・・・・・・約50mm
第2電極板-ステントの基体間距離・・・・・・約15mm
ステントの基体-第1電極板距離・・・・・・・約35mm
湿度制御・・・・・・・・・・・・・・・・・・相対湿度約95%
回転支持部の回転数・・・・・・・・・・・・・3rpm
加工時間・・・・・・・・・・・・・・・・・・5分間
装置内温度・・・・・・・・・・・・・・・・・25℃
霧吹きの使用・・・・・・・・・・・・・・・・有り
接着剤としては、比較例1に記載の接着剤と同じものを用いた。なお、ステント表面のみをフロック加工することを目的としたため、接着剤を染みこませた脱脂綿にステントの基体を軽く押しあてながら基体表面へ接着剤を塗布した。
【0228】
フロック加工を施したステントを図12に示す。図12に示されるように、ステントの表面に、KBE‐cutSF‐HApが三次元的に起毛した状態で付着したことが確認できた。
【0229】
〔実施例5〕グラフト(人工血管)に対するフロック加工
KBE-cutSF-HApを、合成高分子材料(ダクロン)製グラフト(以下、本実施例において単に「グラフト」と表記する)の基体に、フロック加工する方法について説明する。
【0230】
グラフトは、特願2005‐203517に記載の方法により得た。また、グラフトに対するフロック加工は、図3に示すフロック加工装置1を用い、その工程については「2.本発明にかかる方法および装置」の項の説明に準じて行なった。またフロック加工の条件および接着剤の塗布方法は、実施例3に記載の操作及び条件により行なった。
【0231】
その結果、グラフト表面には、KBE‐cutSF‐HApが三次元的に起毛した状態で付着したことが確認された。
【0232】
〔実施例6〕動物実験
本実施例では、実施例1に記載の操作および条件にて作製した経皮端子を装着した経皮端子装着カテーテル、ダクロン(ポリエステル繊維)製のカフを装着したカフ付きカテーテル(C. R. Bard社製、販売名:ヒックマンカテーテル、仕様:シングル・ルーメン、規格:9.6FR、長さ:90cm、内径:1.6mm)、経皮端子を装着していない、実施例1で用いたシリコーン製カテーテル(以下、「コントロールカテーテル」と表記する)をウサギに埋植した場合の影響を調べた。
【0233】
カテーテルをウサギに埋植する方法は、特開2005-342508に記載の「動物埋植実験」に従って行なった。具体的には以下のようにして行なった。
【0234】
まず、それぞれのカテーテルをオートクレープにて殺菌処理した。
【0235】
次に、ウサギ(Japanese White)の頸部(背面側)表皮を切開し、表皮下に経皮トンネルを作製した。作製した経皮トンネルにカテーテルを挿入した。経皮端子装着カテーテルの埋植では、経皮端子を頸部切開部直下の位置で固定した後、切開部を縫合した。同様に、カフ付きカテーテルの埋植では、カフを頸部切開部直下の位置で固定した後、切開部を縫合した。このようにして、ウサギ1羽に1本のカテーテルを埋植氏、経皮端子装着カテーテル、カフ付きカテーテル、コントロールカテーテルを、それぞれウサギ10羽に埋植した。
【0236】
カテーテルの埋植後、一日二回、観察を行ない、自然抜去の確認を行なった。また、炎症、膿瘍の有無を確認し、異常を認めた時点で埋植したカテーテルを抜去した。なお、カテーテルの埋植日より14日後に縫合部の抜糸を行なった。観察は84日間行ない、カテーテルが埋植されたウサギの残存数をカウントした。その結果を表3及び図13に示す。
【0237】
【表3】
JP0005002784B2_000005t.gif

【0238】
図13は、カテーテルが埋植されたウサギの残存数を計数した結果を示す図であり、縦軸がウサギの残存数(羽)、横軸が埋植後経過した日数を示す。また、実線、破線、一転鎖線は、それぞれ、経皮端子装着カテーテル、カフつきカテーテル、コントロールカテーテルを埋植したウサギの残存数を示す。図13において、黒三角はカテーテルが自然抜去したことを示し、白三角は膿瘍等の確認によりカテーテルを抜去したことを示す。なお、図13において、「×5」と付した黒三角は、その時点で5匹のウサギからカテーテルが自然抜去したことを示している。
【0239】
表3及び図13に示されるように、本発明にかかる経皮端子装着カテーテルは、カフ付きカテーテル及びコントロールカテーテルに比べて、生体に対するカテーテルの密着性が高く位置ズレを抑制し、さらに、細菌の感染を抑制することが示された。
【産業上の利用の可能性】
【0240】
本発明にかかる経皮端子は、生体内に長期間に渡り埋植する医療用カテーテルを固定する経皮端子として好適に利用できる。それゆえ、本発明は、特に医療および医療機器の分野において有用である。本発明に係る体内留置医療機器は、生体組織との密着性に優れているため、生体内で位置ズレすることを抑え、さらに、細菌の感染を抑制することができる。それゆえ、本発明に係る体内医療機器は、例えば、人工血管、ステント、ステントグラフト、人工気管、ペースメーカー、人工心臓、アクセスポート等の、体内に埋植する医療機器として有用である。
図面
【図3】
0
【図5】
1
【図6】
2
【図7】
3
【図8(a)】
4
【図8(b)】
5
【図9(a)】
6
【図9(b)】
7
【図10(a)】
8
【図10(b)】
9
【図13】
10
【図1】
11
【図2(a)】
12
【図2(b)】
13
【図4】
14
【図11】
15
【図12】
16