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明細書 :CD166に対するモノクローナル抗体およびその産生方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5612247号 (P5612247)
登録日 平成26年9月12日(2014.9.12)
発行日 平成26年10月22日(2014.10.22)
発明の名称または考案の名称 CD166に対するモノクローナル抗体およびその産生方法
国際特許分類 C07K  16/18        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N  15/02        (2006.01)
C12P  21/08        (2006.01)
G01N  33/574       (2006.01)
G01N  33/577       (2006.01)
FI C07K 16/18 ZNA
C12N 5/00 102
C12N 15/00 A
C12N 15/00 C
C12P 21/08
G01N 33/574 A
G01N 33/574 D
G01N 33/577 B
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2007-547940 (P2007-547940)
出願日 平成18年11月28日(2006.11.28)
国際出願番号 PCT/JP2006/323662
国際公開番号 WO2007/063825
国際公開日 平成19年6月7日(2007.6.7)
優先権出願番号 2005344779
優先日 平成17年11月29日(2005.11.29)
優先権主張国 日本国(JP)
審判番号 不服 2012-008215(P2012-008215/J1)
審査請求日 平成20年9月16日(2008.9.16)
審判請求日 平成24年5月7日(2012.5.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
発明者または考案者 【氏名】塚本 康浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100098464、【弁理士】、【氏名又は名称】河村 洌
【識別番号】100110984、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 敬子
【識別番号】100111279、【弁理士】、【氏名又は名称】三嶋 眞弘
参考文献・文献 特開2005-127754(JP,A)
Eur.J.Immunol.,Vol.27,(1997)p.1469-1478
調査した分野 C07K 16/00-16/46
特許請求の範囲 【請求項1】
細胞接着分子CD166/ALCAMのN端末から4番目の免疫グロブリン様ループに存在する、配列番号1に示すアミノ酸配列または配列番号2に示すNATを含むアミノ酸配列に対し特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項2】
請求項記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項3】
キジ科動物のCD166のN端末から4番目の免疫グロブリン様ループに存在する、配列番号1に示すアミノ酸配列または配列番号2に示すNATを含むアミノ酸配列を有する蛋白質で免疫したマウスから得た抗体をモノクローナル化するモノクローナル抗体の製造方法。
【請求項4】
請求項記載のモノクローナル抗体を用いたCD166の含有量の測定方法。
【請求項5】
細胞接着分子CD166/ALCAMのN端末から4番目の免疫グロブリン様ループに存在する、配列番号1に示すアミノ酸配列または配列番号2に示すNATを含むアミノ酸配列に対し特異的に結合するモノクローナル抗体であって、血液中のCD166の含有量から癌の進行状態を推定するために用いるモノクローナル抗体
【請求項6】
細胞接着分子CD166/ALCAMのN端末から4番目の免疫グロブリン様ループに存在する、配列番号1に示すアミノ酸配列または配列番号2に示すアミノ酸配列に対し特異的に結合するモノクローナル抗体であって、血液中のCD166の含有量から肺癌の進行状態を推定するために用いるモノクローナル抗体
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍細胞上に高率に発現するCD166/ALCAM(Activated Leukocyte Cell Adhesion Molecule:以下「CD166」で統一する。)に特異的に結合するモノクローナル抗体およびその産生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌治療用抗体は、癌細胞に作用し、従来の抗癌剤では難しい治療(「従来の抗癌剤では治療が難しい部位の治療」か、「従来の抗癌剤では治療が困難な癌の治療」か)や治療に伴う副作用の低減につながると期待されている。つまり、癌に特異的な治療用抗体の種類の増加や質の向上が進むほど、癌の治療実績は上がると考えられる。そのためには、癌に特異的に発現する蛋白質を知る必要がある。
【0003】
その1つとして、従来ヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)に特異的に結合するモノクローナル抗体の開示はあった(特許文献1参照)。
【0004】
EpCAMは、上皮細胞表面の先端に非常に低レベルで発現する細胞接着分子であるが、上皮起源の腫瘍細胞上に高率に発現する。すなわち、EpCAMは腫瘍の特異なマーカーとなりえる。上記のモノクローナル抗体はこのEpCAMと特異的に結合することを利用し、ドラッグデリバリーなどに使おうというものである。
【0005】
細胞接着分子(Cell
Adhesion Molecule)とは、細胞と細胞間または細胞と細胞骨格の接着を司る分子である。そして、その歴史は1976年にEdelmanらが鶏の神経細胞接着分子(Neural
Cell Adhesion Molecule)を研究したことに始まる。
【0006】
従来の研究では、細胞接着分子は、その大きさから、インテグリン、カドヘリン、セレクチン、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)の4つに分類されている。
【0007】
この細胞接着分子は癌細胞に特異的に発現する分子が多く、最近研究がすすんでいる。その中で注目されている分子にCD166がある。
【0008】
CD166は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞接着分子である。この分子は、神経系の発生に重要な働きをするが、ある種の癌細胞にも過剰発現する。特にこの分子は、がん細胞の悪性化や転移を促進すると考えられている(非特許文献1乃至3)。
【0009】
そこで、CD166に対するモノクローナル抗体があれば、転移抑制、ドラッグデリバリーシステムとして有用であると考えられる。本発明者はすでにCD166に着目し、抗CD166ポリクローナル抗体や抗CD166モノクローナル抗体を作成しCD166の検出を行っていた(特許文献2参照)。

【特許文献1】特表2004-533248号公報
【特許文献2】特開2005-127754号公報
【非特許文献1】J.Exp.Med.,181,2213-2220,(1995)
【非特許文献2】Am.J.Pathol,152,805-813,(1998)
【非特許文献3】Biochem.Biophys.Res.Cummun.,267,870-874(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
癌細胞はアポトーシスをせずに生き続けるという特徴と共に、細胞の接触阻止を乗り越えて増幅するという特徴を有する。なんらかの方法で、この特徴を低減させることができれば、癌細胞の増殖を抑制することができる。
【0011】
接触阻止を克服して増殖するという特徴は、癌細胞の表面に発現する接着分子に原因がある点は予想されていた。免疫グロブリンスーパーファミリーに属するCD166は、癌細胞に過剰に発現するために、接触阻止に関係する蛋白質である可能性は高いと考えられていた。
【0012】
従って、CD166に特異的に吸着する抗体があれば、癌細胞を検出し、薬をデリバリーし、増殖を抑制できる可能性がある。そして、本発明者は上記特許文献2で示すように、CD166蛋白質と結合するモノクローナル抗体の作成に成功はしていたが、その抗体が認識するアミノ酸配列を特定するには至らなかった。さらに、発明者は、そのモノクローナル抗体が癌細胞の増殖作用を抑制する効果までは確認できていなかった。
【0013】
また、CD166の抗体(モノクローナル抗体)を得るには、以下のような課題があった。通常モノクローナル抗体の産生は、抗原をマウスに投与し、マウス体内で産生された抗体を不死化したハイブリドーマを作成することで得る。
【0014】
しかし、哺乳類のCD166は類似性が高いので、ヒトのCD166蛋白質に特異的に吸着し、さらに細胞接着活性を抑制しうるモノクローナル抗体は、マウスの体内で容易に産生されない。
つまり上記のように以前作成した抗CD166抗体は、特異的な吸着の度合いが十分でないことが考えられた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、精製した鶏のCD166蛋白質をマウスに免疫することにより、より強く多くの動物種と交叉するモノクローナル抗体を作成した。
【0016】
より具体的に、CD166は、Igドメインと呼ばれるジスフィド結合を有するアミノ酸配列のループが5つ有する。このドメインの中で糖鎖が結合する部分(アミノ酸配列でNATつまり、アスパラギン、アラニン、スレオニンの配列の部分)を含むアミノ酸配列を人工的に精製し、マウスに免疫を行う。
【0017】
ここで、精製したアミノ酸配列は鶏由来のものを使う。このようにすることによって、マウスにとっては異物と認識しやすくなり、特異的な抗体を産生することになる。この抗体を用いてCD166に特異的に吸着するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。特に本発明では、N端末から4番目の免疫グロブリン様ループにある、糖鎖結合部分を狙ったモノクローナル抗体を得ることができた。
【発明の効果】
【0018】
この抗体は癌細胞膜上のCD166に結合することにより、培養条件下での細胞間接着能を阻害し、さらには癌細胞の運動性を抑制した。実験的に癌罹マウス体中にこの抗体を投与すると、その後の癌の増殖抑制および転移が抑制された。このことより、本願発明の抗CD166モノクローナル抗体は、新規の癌治療抗体として、利用できる。
【0019】
さらに、この抗体は患者体内において癌細胞と選択的に結合した。このことより、この抗体に抗癌剤や放射性同位元素を標識し投与すれば癌存在部に効率よく運搬され、新規のデリバリーシステムが開発されることが期待できる。このことは、癌治療効果の増大が期待できることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の抗体AおよびBがCD166と吸着することをWestern Blot法で確認した写真である。
【図2】図2は、本発明の抗体AおよびCがin vivoで腫瘍に吸着することを示す写真である。
【図3】図3は、本発明の抗体AおよびBが腫瘍の増殖抑制機能を有することを示すグラフである。
【図4】図4は、本発明の抗体を用いたELISA法によるCD166の含有量を測定したグラフである。
【図5】図5は、癌進行状況によって増加したCD166を本発明の抗体を用いて測定した結果を示すグラフである。
【図6】図6は、癌進行状況によって増加したヒトのCD166を本発明の抗体を用いて測定した結果を示すグラフである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
CD166のアミノ酸配列および遺伝子配列は既に明らかになっている。例えばヒト由来のCD166のアミノ酸配列およびその遺伝子配列は、データベース(DDBJ/EMBK/GenBank databases)にアクセッション番号L38608(およびNM_001627)として登録されている。
【0022】
ここでは、上記に説明したように鶏のCD166を用いる。鶏のCD166のアミノ酸配列および遺伝子配列も、すでに明らかにされている。抗原となるアミノ酸配列は遺伝子配列から組み換え体によって得た。この抗原となるアミノ酸配列は、鶏のCD166のアミノ酸配列から「NAT」の部分を調べ、それを含むような配列を選び決定した。
【0023】
選んだ配列に対応する遺伝子配列から常法により組み換え体によって、所望のアミノ酸配列分子を得る。これを抗原としてマウスに免疫し、抗体を産生させる。マウスの脾臓から得た細胞をハイブリドーマ化してモノクローナル抗体を得る。これにはハイブリドーマ法(Kohler,G. and Milstein,C.,Nature256,495-497(1975))を用いればよいが、これに限定されるものではない。
【0024】
本発明の実施例を以下に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本明細書で使用するアミノ酸配列は、当該分野における慣用略語に基づくものであり、その例を以下に記載する。また、アミノ酸に関し光学異性体がある場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
アミノ酸の略語
3文字 : 1文字 : 日本名
Gly : G : グリシン
Ala : A : アラニン
Val : V : バリン
Leu : L : ロイシン
Ile : I : イソロイシン
Ser : S : セリン
Thr : T : スレオニン
Cys : C : システイン
Met : M : メチオニン
Glu : E : グルタミン酸
Asp : D : アスパラギン酸
Lys : K : リジン
Arg : R : アルギニン
His : H : ヒスチジン
Phe : F : フェニルアラニン
Tyr : Y : チロシン
Trp : W : トリプトファン
Pro : P : プロリン
Asn : N : アスパラギン
Gln : Q : グルタミン
Sec : U : セレノシステイン
【実施例1】
【0025】
実施例1:モノクローナル抗体の作製
鶏CD166(別名SC1、BEN,ALCAM)蛋白質のN末端から第4番目のイムノグロブリン様ループの一部を構成する、下記表1に記載する配列番号1および2のアミノ酸の合成ペプチドを抗原とし、オス6週齢のオスBALB/cマウスに免疫した。
【表1】
JP0005612247B2_000002t.gif


【0026】
初回免疫では、125μgの合成ペプチドを完全アジュバントに混和させたものを皮内接種した。追加免疫として、初回免疫2週間後に125μgの合成ペプチドを不完全アジュバントに混和させたものを、2週毎に計3回皮内接種した。
【0027】
マウスの抗体価の上昇はELISA法でモニターした。そして、抗体価の上昇が見られたマウス個体の脾細胞と、骨髄腫細胞(NS-1)をポリエチレングリコール(PEG)を用いてケーラーとミルスタインの方法(Nature、256巻、495頁、1975年)により融合させた。
【0028】
その結果、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を用いた常法のハイブリドーマのスクリーニングと限界希釈法によるクローニングにより、CD166蛋白質を認識する2種類(AおよびBと命名)の抗体産生ハイブリドーマを得た。以下、抗体産生ハイブリドーマAの産生する抗体を抗体Aと、抗体産生ハイブリドーマBの産生する抗体を抗体Bと呼ぶ。
【0029】
ここでいう抗体Aとは配列番号1の合成ペプチドを免疫したマウス由来ハイブリドーマAから産生されるモノクローナル抗体であり、抗体Bとは配列番号2の合成ペプチドを免疫したマウス由来ハイブリドーマBから産生されるモノクローナル抗体である。抗体のサブクラスをしらべた結果、抗体AはIgG1、抗体BはIgG2であることが判明した。
【0030】
上記2種のハイブリドーマをそれぞれヌードマウスの腹腔内に移植し、約3週間後に腹水を採取した。常法にしたがいIgGに特異的に結合する蛋白質であるプロテインAにより腹水からIgGを精製した。つまり、得られた2種のハイブリドーマは培養液中にも抗体の分泌が可能であると同時に、マウスにも可移植性であり腹水中にも抗体を分泌することが確認された。
【0031】
ウエスタンブロット法により、得られたモノクローナル抗体はヒト肺癌細胞、ラット大腸癌、鶏胚子の膜分画より得たCD166蛋白質を認識することが判明した。図1にこの結果を示す。
【0032】
図1の結果は具体的には以下の手順で得た。ヒト肺癌細胞(A549)、ラット大腸癌細胞、鶏胚子の細胞膜分画由来CD166蛋白質を蒸留水で煮て高次構造をほどいた。それぞれの蛋白質を8% SDS(Sodium Dodecyl Sulfate:ドデシル硫酸ナトリウム)に混ぜて、SDSを吸着させた。
【0033】
用意するゲルは、アクリルアミドとN、N’-メチレンビスアクリルアミドの混合溶液をAPS(過硫酸アンモニウム)でラジカル重合させたものである。重合開始剤はTEMED(テトラメチルエチレンジアミン)である。
【0034】
SDSを吸着させたそれぞれのCD166を、ゲル中で電気泳動させた。以上の手順によって、それぞれのCD166のSDS-PAGE(SDSアクリルアミドゲル電気泳動)の手順は終了する。
【0035】
次にそのゲル中の電気泳動した蛋白質をPVDF(ポリビリニデンジフルオライド)膜に吸着させた。そして、このPVDF膜を通常のマウスのIgG(免疫グロブリンG)と、本願の発明である抗体Aと抗体Bに反応させた。
【0036】
その後に、HRP(過酸化酵素)標識を施した抗マウスIgG抗体と反応させ、ECL(Enhanced Chemiluminescence)によってX線フィルム上に撮影し、図1を得た。
【0037】
抗マウスIgG抗体は、マウス由来のIgGに特異的に吸着する。本発明で得た抗体AおよびBは、上述のようにフローサイトメトリーによりIgGのタイプであることがわかっているので、通常マウスのIgG、抗体Aもしくは抗体Bがあれば、標識抗体として吸着する。HRP標識は、ECLによって428nmの波長で発光するため、X線写真撮影を行うと、黒線として観測される。すなわち、上記のPVDF膜にマウス由来のIgGがあれば、その部分が黒線として観測されることになる。
【0038】
図1においては、CD166はおよそ100から120KDa(キロダルトン)の大きさの部分に電気泳動している。ヒト肺癌細胞(図1で「ヒトCD166」と記載)、ラット大腸癌細胞(「ラットCD166」と記載)、鶏胚子の細胞膜分画由来CD166(「鶏CD166」と記載)のそれぞれは、抗体A(「A」と記載)と抗体B(「B」と記載)において、100から120KDaの範囲に黒い線が観測できた。図1の各レーンにおいて、矢印で示す部分が、抗体A、BがCD166と反応している黒い線である。この結果は、抗体A、Bが、CD166と反応していることを示している。つまり、抗体Aと抗体BはCD166に吸着していることいえる。
【0039】
一方、通常マウスのIgG(「Control IgG」と記載)には、黒線がなく、通常のIgGはCD166には吸着しないことがわかる。
【0040】
実施例2
実施例1では、本願発明の抗体AおよびBが、in vitroでCD166に特異的に吸着することを確認した。そこで次にin vivoでの特異的な吸着を確認する。
【0041】
ヒト肺癌細胞(A549細胞)10個をヌードマウスの頚部皮下に移植し、21日目に正常マウスIgG、上記2種の抗CD166モノクローナル抗体(抗体Aおよび抗体B)それぞれ100μgを尾静脈内投与した。
【0042】
投与して12時間後に腫瘍を摘出し凍結切片を作製した。FITC標識抗マウスIgG抗体と反応させた結果を図2に示す。図2で、写真中の白いバーは、20ミクロンの大きさである。FITC標識抗体は、存在していれば、白く映る。従って、正常マウスIgGは、凍結切片にはほとんど存在していないことがわかる。
【0043】
一方、抗体AおよびBは、白く映っている部分に存在し、in vivoでも腫瘍部分に特異的に吸着することを確認できた。これによって本発明のモノクローナル抗体は、DDS(Drug Delivery System)効果を有することも確認できた。
【0044】
実施例3:抗CD166モノクローナル抗体の抗腫瘍効果
次に本発明の抗体AおよびBの増殖抑制作用を、確認した。ヒト肺癌細胞(A549細胞)106個をヌードマウスの頚部皮下に移植し、5、10、14日目に正常マウスIgG、上記2種の抗CD166モノクローナル抗体(抗体Aおよび抗体B)をそれぞれ100μgを腹腔内に接種した。
【0045】
移植3週間目(21日目)にそれぞれの抗体を接種したマウス群の腫瘍体積を計測した結果を図3に示す。図で(1)の棒は、癌細胞を接種しただけの場合で、正常マウスIgGも、抗体A,Bも与えていない場合の結果である。
【0046】
(2)は、正常マウスIgGを与えた場合の結果で、何も与えなかった場合とほぼ同じ結果である。一方、(3)と(4)はそれぞれ抗体AおよびBを与えたマウス群の結果であるが、(1)や(2)の場合と比較して明らかに有意な差があった。すなわち、本発明の抗体AとBは腫瘍の増殖を抑制する作用を有することを確認した。
【0047】
また、この結果より、腫瘍細胞の表面に発現しているCD166のN端末から4番目にあるループドメインの糖鎖結合部分に抗体を吸着させることで、腫瘍細胞の増殖を抑制できることも同時にわかった。
【0048】
実施例4
本発明の抗体AおよびBは、ELISA(Enzyme Linked Immuno Sorbent Assay)法にも応用できる。
【0049】
通常使われる96穴マイクロタイタープレート(ウェル)に本発明の抗体Aを入れ、4℃で一晩放置することでウェルの内側に抗体Aを固層化させた。別途、ヒト肺癌細胞A549の膜分画より精製したCD166蛋白質をリン酸緩衝液(10mMリン酸ナトリウム、150mMNaCl、pH7.2)で100ng/10μlの濃度にし、この液をリン酸緩衝液で段階希釈(10倍づつの希釈法)により0.001~100ng/10μlの溶液を用意した。
【0050】
このCD166を含む溶液をそれぞれのウェルに入れ、37℃で1時間インキュベートさせ、抗体と結合させた。その後リン酸緩衝液で各ウェルを3回洗浄した。
【0051】
リン酸緩衝液で1000倍に希釈したHRP標識抗CD166ウサギポリクローナル抗体を各ウェルに分注し、37℃で1時間インキュベートした。その後リン酸緩衝液で3回洗浄した。以上のようにして、ELISA法のサンドイッチ法を行った。
【0052】
各ウェルの波長450nmにおける吸光度を、プレートリーダーにて測定した。CD166の濃度毎に整理したグラフを図4に示す。
【0053】
図4は縦軸に450nmの吸光度を、横軸にCD166の濃度(ng/10μl)を示す。吸光度は基準の光強度Iに対して、基準強度Iから透過光強度Iを引いたものの割合I/ (I-I)で示した。
【0054】
CD166の含有量に応じて吸光度が変わっていることが確認できた。また、検出範囲は、0.01から10(ng/10μl)であった。これによって、本発明の抗体はELISA法によるCD166の測定にも利用できることを確かめた。なお、抗体Bも同様の結果を得られることを確認している。
【0055】
また、本発明の抗体がELISA法で利用できることが確認できたので、本発明による抗体AもしくはBを予め固層化したウェルと、HRP標識抗CD166ウサギポリクローナル抗体の組み合わせで、ELISA法のキットを構成することができる。また、抗体アフィニティーカラムを作成することもできる。
【0056】
実施例5
次に実施例4のELISA法で血液検査によって癌の進行度の測定ができる点を説明する。CD166は上述のように、癌細胞の表面に多く発現する分子であるが、癌の進行によって血液中のCD166の含有量が増加してくる。これをELISA法で確認することで、癌の進行度合いを相対的に判断することができる。
【0057】
ヒト肺癌細胞A549細胞をヌードマウス(10匹)の頚部皮下に移植した。その後7日(初期)、14日(中期)、21日(末期)に、それぞれの血液を採取した。これらの血液を遠心分離にかけ、血清100マイクロリットルを得た。この血清を実施例4のELISA法でCD166の含有量を測定した。
【0058】
結果を図5に示す。図5において、縦軸はCD166の血中濃度(ng/10μl)を実施例4で得たCD166の含有量と吸光度の関係を用いて求めたもので、横軸は癌の進行度を表す。横軸の(1)は正常マウスの血清。(2)は肺癌移植して7日(初期)のマウスの血清、(3)は同14日、(4)は同21日のマウスの血清である。
【0059】
癌の進行によってCD166の血中濃度が上昇するのが、本発明の抗体Aを用いたELISA法で確認することができた。これによって血液を用いた癌診断法に用いることができる。
【0060】
実施例6
本実施例では、ヒトの血液中のCD166を測定することで、癌の進行度を測定した。
【0061】
大阪府立大学の倫理委員会により承認されたガイドラインに従ってインフォームドコンセントを得た後、健常人の血清(A)、肺癌I・II期患者の血清(B)、肺癌III期患者の血清(C)、肺癌IV期患者の血清(D)、大腸癌末期患者の結成(E)を用いて、以下の実験を行った。
【0062】
前記血清(A~E)それぞれ5μlを、実施例4のELISA法でCD166の含有量を測定した。結果を図6に示す。図6において、縦軸はCD166の血中濃度(ng/μg)を実施例4で得たCD166の含有量と吸光度の関係を用いて求めたもので、横軸は上記A~Dを示す。
【0063】
肺癌患者の血清のCD166値(B~E)は、健常人のCD166値と比べて優位であった(P<0.05(スチューデントt-検定))。また、図6から、肺癌では癌の初期段階からすでにCD166値が上昇していることがわかる(B)。一方、大腸癌では末期癌においては、CD166値は上昇していない(E)。
【0064】
本実施例より、血液中のCD166値の測定は、肺癌の検査方法として利用できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、医療機関において、腫瘍の治療に貢献できる。外科的なアプローチが困難な深部や細部の腫瘍にも適用できる。また、副作用の低減がはかれるため、癌患者の負担が軽くなる。
【0066】
抗CD166/ALCAM抗体の投与により、癌の存在部が検出可能となるので、PET法などのような健康診断の一部として応用できる。
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図2】
5