TOP > 国内特許検索 > 制御された主鎖らせん構造を有するポリイソシアニド誘導体 > 明細書

明細書 :制御された主鎖らせん構造を有するポリイソシアニド誘導体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5189368号 (P5189368)
登録日 平成25年2月1日(2013.2.1)
発行日 平成25年4月24日(2013.4.24)
発明の名称または考案の名称 制御された主鎖らせん構造を有するポリイソシアニド誘導体
国際特許分類 C08G  61/00        (2006.01)
FI C08G 61/00
請求項の数または発明の数 28
全頁数 30
出願番号 特願2007-548025 (P2007-548025)
出願日 平成18年12月1日(2006.12.1)
国際出願番号 PCT/JP2006/324115
国際公開番号 WO2007/063994
国際公開日 平成19年6月7日(2007.6.7)
優先権出願番号 2005347943
2006238533
優先日 平成17年12月1日(2005.12.1)
平成18年9月4日(2006.9.4)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成20年6月3日(2008.6.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】大越 研人
【氏名】八島 栄次
【氏名】尾之内 久成
【氏名】櫻井 慎一郎
【氏名】梶谷 孝
個別代理人の代理人 【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
審査官 【審査官】井津 健太郎
参考文献・文献 国際公開第2005/080500(WO,A1)
特開2004-018762(JP,A)
特開2001-192450(JP,A)
YAMADA,Y. et al,Synthesis of Polyisocyanide Derived from Phenylalanine and Its Temperature-Dependent Helical Conformation. ,J Polym Sci Part A,2002年,Vol.40, No.3,p.399-408
TAKEI,F. et al,Polymerization of aryl isocyanides by cyclopentadienylnickel-alkynyl complexes,Journal of Organometallic Chemistry,1998年,Vol.559, No.1-2,p.91-96
MA,J. et al,Preparation and reactions of the (pentamethylcyclopentadienyl)rhodium(III) complexes bearing 1,1'-bis(diphenylphosphinomethyl)ferrocene (dpmf) or 1,1'-bis(diphenylphosphino)ferrocene (dppf),Journal of Organometallic Chemistry,1999年,Vol.574, No.1,p.148-154
調査した分野 C08G 61/00-61/12
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の一般式(1)
【化1】
JP0005189368B2_000018t.gif
(式中、Arは芳香環を示し、Rは、炭素数6~30のアルキル基でエステル化された光学活性アミノ酸エステルのアミノカルボニル基、又は炭素数6~30のアルキル基を有するアシル基でN-アシル化されたN-アシル光学活性アミノ酸のカルボニルアミノ基を示し、前記光学活性アミノ酸は左手型(S)又は右手型(R)のいずれかのキラル体であり、xはポリイソシアニド基の繰り返しを示す正の数である。)
で表される安定な主鎖らせん構造を有するポリ芳香族イソシアニド誘導体。
【請求項2】
芳香環が、ベンゼン環である請求項1に記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
【請求項3】
光学活性アミノ酸が、天然のα-アミノ酸である請求項1又は2に記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
【請求項4】
ポリ芳香族イソシアニド誘導体が、側鎖上で隣接するアミド基とアミド基との間で水素結合を形成することができるポリ芳香族イソシアニド誘導体である請求項1~3のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
【請求項5】
ポリ芳香族イソシアニド誘導体の持続長が、100nm以上である請求項1~4のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
【請求項6】
右巻きらせん構造及び左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリ芳香族イソシアニド誘導体の異性体のジアステレオ異性体の過剰率が、90%以上である請求項1~5のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
【請求項7】
重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される分子量分散Mw/Mnが、1.20より小さいことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
【請求項8】
ポリ芳香族イソシアニド誘導体が、溶液中、又は溶融状態においてコレステリック液晶相及び/又はネマチック液晶相を示すことができる請求項1~7のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
【請求項9】
ポリ芳香族イソシアニド誘導体が、スメクチック液晶相を形成するものである請求項1~8のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
【請求項10】
その形状が膜状であることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体の少なくとも1種を含有してなる液晶組成物。
【請求項12】
液晶組成物が、スメクチック液晶相を形成するものである請求項11に記載の液晶組成物。
【請求項13】
芳香族環に-CONH-構造を有する置換基を有し、炭素数6~30の疎水性部分を有する芳香族イソシアニド同一の単量体を、重合触媒の存在下で重合溶媒中で重合させて、右巻き若しくは左巻きのいずれか、又はこれらの一方の異性体が過剰に存在する混合物からなる安定な主鎖らせん構造を持つポリ芳香族イソシアニド誘導体を製造する方法。
【請求項14】
重合溶媒の極性により同一の単量体から右巻き、若しくは左巻きのいずれか、又はこれらの一方の異性体が過剰に存在する混合物からなる安定な主鎖らせん構造を持つポリイソシアニド誘導体を製造する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
芳香族環の-CONH-構造を有する置換基が、炭素数6~30のアルキル基でエステル化された光学活性アミノ酸エステルに由来するアミノカルボニル基である請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
芳香族環の-CONH-構造を有する置換基が、炭素数6~30のアルキル基を有する基でN-アシル化されたN-アシル光学活性アミノ酸に由来するカルボニルアミノ基である請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
安定な主鎖らせん構造を持つポリ芳香族イソシアニド誘導体が、右巻き、又は左巻きのいずれか一方向のらせん構造を有するものである請求項13~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
重合溶媒が、非極性溶媒である請求項13~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
重合溶媒が、四塩化炭素、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、又はこれらの混合物から選ばれる溶媒である請求項13~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
重合溶媒が、非極性溶媒と極性溶媒の混合溶媒である請求項13~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
極性溶媒が、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、エタノール、又はこれらの混合物から選ばれる溶媒である請求項13~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
アミド基を有する芳香族イソニトリルを、イソニトリルのリビング重合特性を有する触媒の存在下で重合させて、同一の単量体からなる安定な右巻きらせん構造及び左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリイソシアニド重合体を製造し、次いで得られた右巻きらせん構造及び左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリイソシアニド重合体の混合物を有機溶媒で処理することによりこれらの混合物を分離することからなる同一の単量体からなる安定な右巻きらせん構造、又は左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリイソシアニド重合体を製造する方法。
【請求項23】
有機溶媒の処理が、有機溶媒に対する溶解性の差である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
イソニトリルのリビング重合特性を有する触媒が、有機金属錯体触媒である請求項13又は22に記載の方法。
【請求項25】
イソニトリルのリビング重合特性を有する触媒が、下記(式2)
【化2】
JP0005189368B2_000019t.gif
で表される、アセチレンで架橋した複核の白金-パラジウム-μ-エチンジイル錯体である請求項13、22、又は23のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
下記の一般式(3)
【化3】
JP0005189368B2_000020t.gif
(式中、Arは芳香環を示し、Rは、炭素数6~30のアルキル基でエステル化された光学活性アミノ酸エステルのアミノカルボニル基、又は炭素数6~30のアルキル基を有するアシル基でN-アシル化されたN-アシル光学活性アミノ酸のカルボニルアミノ基を示し、前記光学活性アミノ酸は左手型(S)又は右手型(R)のいずれかのキラル体である。)
で表される芳香族イソシアニド誘導体。
【請求項27】
Arが、ベンゼン環である請求項26に記載の芳香族イソシアニド誘導体。
【請求項28】
光学活性アミノ酸が、天然のα-アミノ酸である請求項26又は27に記載の芳香族イソシアニド誘導体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、静的で安定ならせん高分子であるポリイソシアニド誘導体において、単一の単量体から重合溶媒、温度等の重合反応条件に応じて主鎖のらせん構造の巻き方向が反転した重合体を製造する方法、及び当該方法により製造された重合体に関する。より詳細には、本発明は、芳香族環に-CONH-構造を有する置換基を有し、炭素数6以上の疎水性部分を有する芳香族イソシアニドを、重合溶媒中で重合させることにより、重合溶媒の極性により同一の単量体から右巻き、若しくは左巻きのいずれか、又はこれらの混合物からなる安定な主鎖らせん構造を持つポリイソシアニド誘導体を製造する方法、及び当該方法により製造され得るポリ芳香族イソシアニド誘導体、並びに当該ポリ芳香族イソシアニド誘導体を製造するための単量体である芳香族イソシアニド誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
らせん構造によるキラリティーは高分子物質特有のコンフォメーションに由来するキラリティーであり、代表的ならせん高分子物質であるDNAやたんぱく質は、二重らせんやαヘリックスと呼ばれる特定のらせん構造を形成する。これらは、いずれも一方の鏡像異性体のみから構成されており、より安定な右巻きのらせん構造をとっている。反対の左巻きのらせん構造を構築するには、自然界に殆んど存在しない反対の鏡像異性体を構成単位として用いなければならない。
また近年、人工的に合成されたらせん高分子も数多く知られているが、一方向巻きに片寄った安定ならせん高分子を不斉合成で簡便に作ることは非常に困難であり、従来は、いずれか一方の向きのらせん構造を有する物質は、構造中にいずれか一方の光学活性体を不斉源として用いており(特許文献1参照)、他方のらせん構造は他方の光学活性体を原料として使用しなければならかった。
【0003】
一方、動的らせん高分子と呼ばれる一群の高分子では、溶液中で右巻きと左巻きのらせんの反転が非常に早く起こり、ごく少量の光学活性な部位を側鎖に導入する事によって高分子全体を一方向巻きのらせん構造に変える事が可能である(非特許文献1参照)。これらの高分子群は、温度、溶媒、光学活性添加物等によって容易にそのらせんの巻き方向を反転させるため、室温付近において右巻きと左巻きの両方の高分子を観察することが可能であるが(特許文献2参照)、如何せんそのらせんは動的であるため、外部環境によって容易にらせんの巻き方が再反転し、機能性材料としての実用性は非常に低い。
この様に、右巻きか、左巻きかの一方向の安定ならせん構造を持つ高分子を同一の単量体から作り分けることはこれまで不可能であった。
静的で安定な一方向巻きのらせん高分子は、光学分割カラムクロマトグラフィー用の充填剤、不斉合成用触媒、光学活性配位子材料等として用いることができ、右巻き、左巻きの2種類を安価、簡便に調製することは分離効率の向上や、不斉合成での望みの光学活性体を得る上で非常に重要である。
【0004】
さらに、らせん高分子は多くの場合、非常に剛直な主鎖構造を持つため、溶液中もしくは溶融状態においてコレステリック液晶相を示す(特許文献3参照)。本発明者らも剛直な主鎖構造を持つ高分子化合物や、その液晶としての利用を開発してきた(特許文献4及び5参照)。
このように、主鎖らせんの巻き方向における右巻き、又は左巻きの割合を自由に制御することができれば、形成されるコレステリック液晶相のらせんピッチ(らせん構造の周期)も自在に制御することが可能となる。この構造をフィルム中に固定化すれば、様々な光学デバイスへの応用が簡便にかつ安価で可能となる。
前記のような剛直棒状らせん構造を持つポリマーの他の例としては、長いn-アルキル鎖、例えばn-デシル基を持つポリグルタミン酸も多数報告されている(非特許文献2~5参照)。また、ここにおいて、n-デシル基以上の長鎖のアルキル基を有するポリグルタミン酸では、コレステリック液晶特性ばかりでなくヘキサゴナルカラムナーおよびスメクチック相が観察されるとの報告がされている。
更に、前記ポリグルタミン酸と同様に、いくつかの他の剛直または半剛直ポリマーである、セルロース、ポリイソシアネート、ポリシランおよび全芳香族ポリマーにおいても、サーモトロピック液晶性、およびリオトロピック液晶性を示すことが報告されている。
【0005】

【特許文献1】特開昭56-106907号公報
【特許文献2】特開2001-294625号公報
【特許文献3】特開2001-164251号公報
【特許文献4】WO 01/79310号公報
【特許文献5】WO 2005/080500号公報
【非特許文献1】八島栄次、現代化学, 52 (2000),
【非特許文献2】Y.Fukuda,R.Gehani and I.Uematsu,Macromolecules,17,1004 (1984).
【非特許文献3】H.Ono,A.Abe and I.Uematsu,Macromoleccules,18,2141 (1986).
【非特許文献4】T.Nagase,H.Itoh,T.Ishii and T.Satoh,Mol. Cryst.Liq.Cryst.,160,432 (1988).
【非特許文献5】A.Teramoto,M.Kobayashi and T.Norisue,Eds.,Springer-Verlag,Berlin,Heidelberg,p99-108 (1994).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、同一の単量体から右巻き、又は左巻きの安定ならせん構造を持つ高分子を自在に作り分け、さらにその右巻き、又は左巻きの割合を制御する方法を提供することである。また、本発明は、このようないずれの方向のらせん構造を製造することが可能な高分子材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、安定ならせん構造を有するポリイソシアニド高分子重合体類において、その単量体構造中にアミド基を導入して相互に水素結合を形成させ、重合溶媒、温度を変化させて水素結合の強弱を調節して重合することにより、それぞれ逆巻きのらせん高分子が得られ、さらにその右巻き、又は左巻きの割合をも制御できるか否かを鋭意研究を重ねてきた結果、重合溶媒などの重合条件を特定することにより、得られる高分子重合体のらせん構造が逆巻きであることを見出した。このように、本発明者らは、高分子材料のらせん構造が重合溶媒などの重合条件によって調節することが可能であることを見出し、同一の単量体から右巻き、又は左巻きのらせん構造を有する高分子化合物を作り分けることができることを見出した。
さらに、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ポリイソシアニド高分子重合体類にアミド基を導入して隣接する側鎖間で相互に水素結合を形成させものが、これら右巻き、左巻きの異性体の溶媒に対する溶解性が著しく違うことを発見し、該溶解性の差を利用して容易に得られた右巻き、及び左巻きの異性体の混合物を分離することが可能であることも見出した。これらの知見により本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、芳香族環に-CONH-構造を有する置換基を有し、炭素数6以上の疎水性部分を有する芳香族イソシアニドを、重合溶媒中で重合させることにより、重合溶媒の極性により同一の単量体から右巻き、若しくは左巻きのいずれか、又はこれらの混合物からなる安定な主鎖らせん構造を持つポリイソシアニド誘導体を製造する方法に関する。
また、本発明は、芳香環に光学活性なアミノ酸又はその誘導体がアミド結合したアミド基を有する芳香族イソニトリルをリビング重合させてなる、同一の単量体からなる安定な右巻きらせん構造又は左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリ芳香族イソシアニド誘導体、より詳細には、下記の一般式(1)
【0009】
【化1】
JP0005189368B2_000002t.gif

【0010】
(式中、Arは芳香環を示し、Rは、炭素数6~30のアルキル基でエステル化された光学活性アミノ酸エステルのアミノカルボニル基、又は炭素数6~30のアルキル基を有するアシル基でN-アシル化されたN-アシル光学活性アミノ酸のカルボニルアミノ基を示し、前記光学活性アミノ酸は左手型(S)又は右手型(R)のいずれかのキラル体であり、xはポリイソシアニド基の繰り返しを示す正の数である。)
で表される安定な主鎖らせん構造のポリ芳香族イソシアニド誘導体に関する。
さらに、本発明は、右巻きらせん構造及び左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリイソシアニド重合体の混合物を有機溶媒で処理することによりこれらの混合物を分離することからなる同一の単量体からなる安定な右巻きらせん構造、又は左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリイソシアニド重合体を製造する方法、より詳細には、アミド基を有する芳香族イソニトリルを、イソニトリルのリビング重合特性を有する触媒の存在下で重合させて、同一の単量体からなる安定な右巻きらせん構造及び左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリイソシアニド重合体を製造し、次いで得られた右巻きらせん構造及び左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリイソシアニド重合体の混合物を有機溶媒で処理することによりこれらの混合物を分離することからなる同一の単量体からなる安定な右巻きらせん構造、又は左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリイソシアニド重合体を製造する方法に関する。
本発明の前記した安定な主鎖らせん構造のポリ芳香族イソシアニド誘導体は、溶液中又は溶融状態においてコレステリック液晶相若しくはネマチック液晶相を示すことができることから、さらに、本発明は、前記した本発明の安定な主鎖らせん構造のポリ芳香族イソシアニド誘導体からなる液晶性高分子化合物を提供するものである。
また、本発明は、下記の一般式(3)
【0011】
【化2】
JP0005189368B2_000003t.gif

【0012】
(式中、Arは芳香環を示し、Rは、炭素数6~30のアルキル基でエステル化された光学活性アミノ酸エステルのアミノカルボニル基、又は炭素数6~30のアルキル基を有するアシル基でN-アシル化されたN-アシル光学活性アミノ酸のカルボニルアミノ基を示し、前記光学活性アミノ酸は左手型(S)又は右手型(R)のいずれかのキラル体である。)
で表される芳香族イソシアニド誘導体に関する。一般式(3)で表される本発明の芳香族イソシアニド誘導体は、前記した一般式(1)で表されるポリ芳香族イソシアニド誘導体を製造する際の単量体として使用され得る化合物である。
【0013】
本発明をさらに詳細に説明すれば以下のとおりとなる。
(1)芳香環に光学活性なアミノ酸又はその誘導体がアミド結合したアミド基を有する芳香族イソニトリルをリビング重合させてなる、同一の単量体からなる安定な右巻きらせん構造又は左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリ芳香族イソシアニド誘導体。
(2)下記の一般式(1)
【0014】
【化3】
JP0005189368B2_000004t.gif

【0015】
(式中、Arは芳香環を示し、Rは、炭素数6~30のアルキル基でエステル化された光学活性アミノ酸エステルのアミノカルボニル基、又は炭素数6~30のアルキル基を有するアシル基でN-アシル化されたN-アシル光学活性アミノ酸のカルボニルアミノ基を示し、前記光学活性アミノ酸は左手型(S)又は右手型(R)のいずれかのキラル体であり、xはポリイソシアニド基の繰り返しを示す正の数である。)
で表される安定な主鎖らせん構造の前記(1)に記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
(3)芳香環が、ベンゼン環である前記(1)又は(2)に記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
(4)光学活性アミノ酸が、天然のα-アミノ酸である前記(1)~(3)のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
(5)ポリ芳香族イソシアニド誘導体が、側鎖上で隣接するアミド基とアミド基との間で水素結合を形成することができるポリ芳香族イソシアニド誘導体である前記(1)~(4)のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
(6)ポリ芳香族イソシアニド誘導体の持続長が、100nm以上である前記(1)~(5)のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
(7)右巻きらせん構造及び左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリ芳香族イソシアニド誘導体の異性体のジアステレオ異性体の過剰率が、90%以上である前記(1)~(6)のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
(8)重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される分子量分散Mw/Mnが、1.20より小さいことを特徴とする前記(1)~(7)のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
(9)ポリ芳香族イソシアニド誘導体が、溶液中、又は溶融状態においてコレステリック液晶相及び/又はネマチック液晶相を示すことができる前記(1)~(8)のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
(10)ポリ芳香族イソシアニド誘導体が、スメクチック液晶相を形成するものである前記(1)~(9)のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
(11)その形状が膜状であることを特徴とする、前記(1)~(10)のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体。
(12)前記(1)~(11)のいずれかに記載のポリ芳香族イソシアニド誘導体の少なくとも1種を含有してなる液晶組成物。
(13)液晶組成物が、スメクチック液晶相を形成するものである前記(12)に記載の液晶組成物。
(14)芳香族環に-CONH-構造を有する置換基を有し、炭素数6~30の疎水性部分を有する芳香族イソシアニドを同一の単量体を、重合触媒の存在下で重合溶媒中で重合させて、右巻き若しくは左巻きのいずれか、又はこれらの一方の異性体が過剰に存在する混合物からなる安定な主鎖らせん構造を持つポリ芳香族イソシアニド誘導体を製造する方法。
(15)重合溶媒の極性により同一の単量体から右巻き、若しくは左巻きのいずれか、又はこれらの一方の異性体が過剰に存在する混合物からなる安定な主鎖らせん構造を持つポリイソシアニド誘導体を製造する前記(14)に記載の方法。
(16)芳香族環の-CONH-構造を有する置換基が、炭素数6~30のアルキル基でエステル化された光学活性アミノ酸エステルに由来するアミノカルボニル基である前記(1)又は(15)に記載の方法。
(17)芳香族環の-CONH-構造を有する置換基が、炭素数6~30のアルキル基を有する基でN-アシル化されたN-アシル光学活性アミノ酸に由来するカルボニルアミノ基である前記(14)又は(15)に記載の方法。
(18)安定な主鎖らせん構造を持つポリ芳香族イソシアニド誘導体が、右巻き、又は左巻きのいずれか一方向のらせん構造を有するものである前記(14)~(17)のいずれかに記載の方法。
(19)重合溶媒が、非極性溶媒である前記(14)~(18)のいずれかに記載の方法。
(20)重合溶媒が、四塩化炭素、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、又はこれらの混合物から選ばれる溶媒である前記(14)~(19)のいずれかに記載の方法。
(21)重合溶媒が、非極性溶媒と極性溶媒の混合溶媒である前記(14)~(20)のいずれかに記載の方法。
(22)極性溶媒が、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、エタノール、又はこれらの混合物から選ばれる溶媒である前記(14)~(21)に記載の方法。
(23)右巻きらせん構造及び左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリイソシアニド重合体の混合物を有機溶媒で処理することによりこれらの混合物を分離することからなる同一の単量体からなる安定な右巻きらせん構造、又は左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリイソシアニド重合体を製造する方法。
(24)アミド基を有する芳香族イソニトリルを、イソニトリルのリビング重合特性を有する触媒の存在下で重合させて、同一の単量体からなる安定な右巻きらせん構造及び左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリイソシアニド重合体を製造し、次いで得られた右巻きらせん構造及び左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリイソシアニド重合体の混合物を有機溶媒で処理することによりこれらの混合物を分離することからなる同一の単量体からなる安定な右巻きらせん構造、又は左巻きらせん構造からなる主鎖構造を有するポリイソシアニド重合体を製造する方法。
(25)有機溶媒の処理が、有機溶媒に対する溶解性の差である前記(23)又は(24)に記載の方法。
(26)イソニトリルのリビング重合特性を有する触媒が、有機金属錯体触媒である前記(14)又は(24)に記載の方法。
(27)イソニトリルのリビング重合特性を有する触媒が、下記(式2)
【0016】
【化4】
JP0005189368B2_000005t.gif

【0017】
で表される、アセチレンで架橋した複核の白金-パラジウム-μ-エチンジイル錯体である前記(14)、(24)、又は(25)のいずれかに記載の方法。
(28)下記の一般式(3)
【0018】
【化5】
JP0005189368B2_000006t.gif

【0019】
(式中、Arは芳香環を示し、Rは、炭素数6~30のアルキル基でエステル化された光学活性アミノ酸エステルのアミノカルボニル基、又は炭素数6~30のアルキル基を有するアシル基でN-アシル化されたN-アシル光学活性アミノ酸のカルボニルアミノ基を示し、前記光学活性アミノ酸は左手型(S)又は右手型(R)のいずれかのキラル体である。)
で表される芳香族イソシアニド誘導体。
(29)Arが、ベンゼン環である前記(28)に記載の芳香族イソシアニド誘導体。
(30)光学活性アミノ酸が、天然のα-アミノ酸である前記(28)又は(29)に記載の芳香族イソシアニド誘導体。
【0020】
本発明は、芳香族環に-CONH-構造を有する置換基を有する芳香族イソシアニドが、重合溶媒中で重合させたときに、重合したポリ芳香族イソシアニド誘導体の側鎖上で隣接するアミド基間で水素結合を形成するが、当該水素結合の形成が重合溶媒の極性などの重合条件により変化し、同一の単量体から右巻き、若しくは左巻きのいずれか、又はこれらの一方の異性体が過剰に存在する混合物からなる安定な主鎖らせん構造を持つポリイソシアニド誘導体を制御して製造することができることを見出したものである。したがって、本発明の方法は、本発明の単量体を用いることにより、同一の単量体から重合条件の制御により、生成する重合体の主鎖のらせん構造を右巻き又は左巻きのいずれに制御することを可能にするものである。
【0021】
また、本発明は、単一の単量体を重合させてなるホモポリイソシアニド重合体であって、重合体の主鎖の構造が左巻きらせん(M)構造又は右巻きらせん(P)構造のどちらか一方のものが過剰に存在し、光学活性を有するポリイソシアニド重合体を提供するものである。本発明のポリイソシアニド重合体は、静的らせん構造をとるものであり、温度や溶媒などの外部環境の変化に対して極めて安定にらせん構造を維持することができるものである。
本発明の静的で安定ならせん高分子であるポリイソシアニド誘導体は、リビング重合特性を有する触媒を用いて重合して、同一の単量体から安定な右巻き、左巻きの主鎖らせん構造を持つ異性体を同時に重合し、溶媒への溶解性の差を利用して、右巻き及び左巻きの主鎖らせん構造を持つ異性体をジアステレオ異性体過剰率90%以上で分離することができる。
本発明の方法で得られた、同一のモノマーユニットを有する右巻きらせん構造、又は左巻きらせん構造を有するの2種類のポリマーは、光学分割カラムクロマトグラフィー用の充填剤、不斉合成用触媒、光学活性配位子材料等として用いる事ができる。
さらに、本発明のポリイソシアニド誘導体は、リビング重合で合成されているために非常に狭い分子量分布を持ち、さらに非常に剛直な主鎖構造を持つため、溶液中、もしくは溶融状態において高分子鎖が並列して層状構造を形成したスメクチック液晶相を発現する。
この自発的に形成される数十ナノメートルスケールの一次元周期構造は、近年、棒状形態を有する高分子によって実験的に再現する事が確認された液晶相である。この、自発的に形成されるナノメートルスケールの構造は、溶液中であればその溶媒を蒸発させる事で、また溶融状態であればガラス転移点以下に冷却する事で容易に固定化可能であり、この構造を利用して、リタデーション可変位相差板、化学物質認識センサー、高密度記録デバイス、一次元光学結晶などの分子素子を大型の製造設備なしに簡便かつ安価に製造する事が出来る。
【0022】
本発明のポリイソシアニド重合体は、イソシアニド基(C=N)を有するホモポリマーであることを特徴とするものである。イソシアニド基における窒素原子の置換基として、アミド基を有することをさらに特徴とするものである。このアミド基の存在により、隣接する側鎖間で相互に水素結合を形成させることができ、安定ならせん構造を形成することができるだけでなく、有機溶媒に対する溶解度が相違することになり、左巻きらせん(M)構造又は右巻きらせん(P)構造のポリイソシアニド重合体を、有機溶媒に対する溶解度の差により容易に分離することが可能となった。
本発明の好ましいイソシアニド基における窒素原子の置換基としては、アミド基が結合した芳香族基が挙げられる。当該アミド基は、アミド基のカルボニル基側で芳香族基に結合していてもよいし、またアミド基のアミノ基側で芳香族基に結合していてもよい。当該アミド基は水素結合のためのものであることから、結合の方向性についてはいずれであってもよい。
芳香族基としては、炭素数6~30、好ましくは6~20、より好ましくは6~10の単環式、多環式又は縮合環式の6員芳香環を有する基が挙げられる。好ましい芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。これらの芳香環に結合するアミド基の位置としては、オルト、メタ、パラのいずれの位置であってもよいが、充分な水素結合が形成できるように、パラ位のような主鎖から離れた位置が好ましい。
本発明のポリイソシアニド重合体における、好ましいイソシアニド基(C=N)としては、次のタイプ1及びタイプ2のものが挙げられる。
C=N-(芳香環)-CONH-R タイプ1
C=N-(芳香環)-NHCO-R タイプ2
(式中、Rは、アミド基の残基を示す。)
本発明のイソシアニド基(C=N)としては、前記したタイプ1及びタイプ2のいずれのものであってもよい。アミド基の残基のRとしては、らせん構造を安定に形成することができ、アミド基における水素結合の形成に障害とならないものであって、有機溶媒による溶解度の差が生じるものであれば特に制限はないが、らせん構造を安定にするために光学活性を有する基であることが好ましい。
【0023】
本発明における単量体としては、芳香族イソシアニドであって、当該芳香環上に水素結合が可能な-CONH-基が存在するものであればよい。好ましい単量体としての芳香族イソシアニドとしては、前記した一般式(3)で示される芳香族イソシアニド誘導体が挙げられる。
本発明における好ましい芳香族イソシアニド誘導体としては、次の一般式(4)
【0024】
【化6】
JP0005189368B2_000007t.gif

【0025】
(式中、Rは、炭素数6~30のアルキル基でエステル化された光学活性アミノ酸エステルのアミノカルボニル基、又は炭素数6~30のアルキル基を有するアシル基でN-アシル化されたN-アシル光学活性アミノ酸のカルボニルアミノ基を示し、前記光学活性アミノ酸は左手型(S)又は右手型(R)のいずれかのキラル体である。)
で表される芳香族イソシアニド誘導体が挙げられる。
【0026】
このような疎水性を有する光学活性な基としては、炭素数6~30のアルキル基でエステル化された光学活性アミノ酸エステルから誘導される基、炭素数6~30のアルキル基を有する基でN-アシル化されたN-アシル光学活性アミノ酸から誘導される基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明における好ましい「-CONH-構造を有する置換基」としては、一般式(1)又は(3)におけるRが、アミノ酸のカルボキシル基がC~C30、好ましくはC~C22のアルキル基でエステル化されたアミノ酸のアミノカルボニル基の場合は、前記した「タイプ1」に相当するものであり、また、Rがアミノ酸のアミノ基がC~C30、好ましくはC~C22のアルキル基でアミド化されたアミノ酸のカルボニルアミノ基の場合は、前記した「タイプ2」の相当するものである。アミノ酸のアミノ基とカルボキシル基を除いた部分を式AAで示すとすれば、一般式(1)又は(3)におけるRがアミノ酸のカルボキシル基がC~C30、好ましくはC~C22のアルキル基でエステル化されたアミノ酸のアミノカルボニル基の場合のRは、次の一般式(5)、
-CONH-AA-COOR (5)
で表されることになる。
また、一般式(1)又は(3)におけるRがアミノ酸のアミノ基がC~C30、好ましくはC~C22のアルキル基でアミド化されたアミノ酸のカルボニルアミノ基の場合のRは、次の一般式(6)、
-NHCO-AA-NHCO-R (6)
で表されることになる。
式(5)及び(6)におけるR及びRは、これらの基に疎水性を付与するための基を示し、式(5)及び(6)におけるAAは、アミノ酸からアミノ基部分及びカルボキシ基部分を除いた構造を示し、これらの基に光学活性を付与するための基である。
前記式(5)及び(6)におけるアミノ酸としては、光学活性を有するものであれば特に制限はないが、入手の容易性からは、天然型のα-アミノ酸が好ましい。光学活性体としては、D体でもL体でもよい。好ましいアミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、トレオニンなどが挙げられる。
前記式(5)におけるR基における疎水性の基としては、炭素数6以上、好ましくは炭素数6~30、6~22、6~20の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
前記式(6)におけるR基における疎水性の基としては、炭素数6以上、好ましくは炭素数6~30、6~22、6~20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は当該アルキル基から誘導されるアルコキシ基が挙げられる。
これらのアルキル基の好ましい例としては、オクチル基、デシル基、ドデカニル基などが挙げられる。
【0027】
これらの単量体は、公知の各種の方法により製造することができる。好ましい製造法の例としては、例えば、ニトロ安息香酸を光学活性アミノ酸エステルを用いてアミド化した後、ニトロ基を還元してアミノ基とし、当該アミノ基を蟻酸又はその反応性誘導体などを用いてホルミル化し、次いでトリホスゲンなどを用いてイソニトリル化することにより製造することができる。また、ニトロアニリンを用いて、N-アシル化光学活性アミノ酸でアシル化した後、同様にして対応する前記一般式(3)又は(4)で表される芳香族イソシアニドを製造することもできる。
【0028】
これらの単量体を重合する方法としては、通常のポリイソシアニドの製造方法により行うことができる。例えば、重合溶媒中で遷移金属触媒の存在下に反応させる方法などが挙げられる。使用される遷移金属触媒としては、ニッケル、ロジウムなどの塩や錯体が挙げられるが、ニッケルの塩が好ましい。ニッケル塩の好ましい例としては、塩化ニッケルなどが挙げられる。
重合溶媒としては、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類:ジメチルホルムアミドなどのジアルキルアミド類などが挙げられる。また、溶媒の極性を上げるために、メタノール、エタノールなどのアルコール類を少量転化したものであってもよい。これらの溶媒は、これらを単独で使用することもできるが、任意に混合して使用することもできる。
重合温度としては、0℃~200℃、好ましくは室温~150℃が挙げられる。
重合反応の終了後は、メタノールなどのアルコール類を反応混合物中に添加した後、沈殿物を分離することにより単離することができる。必要により各種の精製手段により精製することもできる。
【0029】
このようにして本発明の前記一般式(1)で表される安定な主鎖らせん構造のポリ芳香族イソシアニド誘導体を得ることができる。このようならせん構造は、主鎖のねじれによるものであるが、ポリ芳香族イソシアニド誘導体の側鎖上で隣接するアミド基間で特定の方向での水素結合が形成されることにより、螺旋構造の安定性が保持されるものと考えられる。
本発明の一般式(1)で表されるポリ芳香族イソシアニド誘導体は、芳香環として前記した単量体と同じものを有するものであり、好ましい本発明の一般式(1)で表されるポリ芳香族イソシアニド誘導体としては、芳香環がベンゼン環である次の一般式(7)
【0030】
【化7】
JP0005189368B2_000008t.gif

【0031】
(式中、Rは、炭素数6~30のアルキル基でエステル化された光学活性アミノ酸エステルのアミノカルボニル基、又は炭素数6~30のアルキル基を有するアシル基でN-アシル化されたN-アシル光学活性アミノ酸のカルボニルアミノ基を示し、前記光学活性アミノ酸は左手型(S)又は右手型(R)のいずれかのキラル体であり、xはポリイソシアニド基の繰り返しを示す正の数である。)
で表されるポリ芳香族イソシアニド誘導体が挙げられる。一般式(7)におけるR及びxは前記した一般式(1)で説明してきたものと同じである。
本発明の前記一般式(1)で表されるポリ芳香族イソシアニド誘導体の分子量として、特に制限はないが、好ましくは10000~1000000、好ましくは30000~500000、より好ましくは50000~500000程度、50000~150000程度が挙げられる。前記一般式(式1)における繰り返し数xにおいては、xが50~2000、好ましくは150~1500程度が挙げられる。また、ポリ芳香族イソシアニド誘導体の持続長としては、長ければ長いほど好ましく、例えば5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらには、50nm以上、好ましくは100nm以上のものが挙げられる。
本発明のポリ芳香族イソシアニド誘導体は、室温で固体状であり、通常の高分子物質とどうような成形を行うこともできる。例えば、膜状に成形することもでき、当該膜状においても方向性を整えることにより、さらに機能的な高分子物質として作用させることもでき得る。
【0032】
らせん構造を有するポリイソシアニド重合体類におけるらせん構造の巻く方向性については、ポリイソシアニドの主鎖の吸収帯である300~400nm付近のCDスペクトルに現れるピークが正であれば、その主鎖らせんの巻き方向は右巻きであり、負であれば左巻きであることが知られている(例えば、Takei,F.;Hayashi,H,;Onitsuka,K.;Kobayashi,N.;Takahashi,S. Angew. Chem.,Int. Ed. 2001,40,4092-4094.を参照されたい。)。したがって、らせん構造が、右巻きか左巻きかは、CDスペクトルにより、簡単に決定することができる。また、AFM(原子間力顕微鏡)などを用いてその表面を直接観察することによっても確認することができる。
【0033】
従来の方法では、使用する単量体のキラリティーによりらせん構造の方向性が決められるでいたが、本発明の方法によれば、同一の単量体、即ち同じキラリティーを有する単量体であっても、重合条件を変化させることにより、らせん構造の方向性を選定することが明らかになった。これは、単量体としてアミド結合を有する光学活性体を含有する芳香族イソシアニドを使用することによるものと考えられる。このような単量体は、単量体のキラリティーに依存することなく、いずれの方向においても安定ならせん構造を維持することが可能な水素結合を形成することができるからであると考えられる。
後述する比較例にも記載されているように、アミド結合ではなく、エステル結合を有する場合には、らせん構造を制御することはできないことからも、アミド結合の存在がらせん構造の方向性の制御に大きな役割を果たしているものと考えられる。
また、アミド基に結合している基における疎水性部分の炭素数が5以下の場合には、いかなる溶媒、反応温度でも主鎖のらせん構造は左巻きとなり、らせん構造の方向性を制御することはできなくなる。したがって、この部分の疎水性もらせん構造の制御には大きな役割を果たしていると考えられる。
【0034】
重合条件としては、使用する溶媒の選択が重要と考えられる。重合過程に於ける重合溶媒として、例えば、四塩化炭素、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、若しくはトルエン、又はこれらの混合物を用いた場合には、波長320~400nmにかけてポリマーの主鎖由来の正のCDピークを誘起させ、右巻きのらせん構造をもたらす。一方、トルエンなどの非極性溶媒に、他の極性溶媒、例えば、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、又はエタノールを添加した混合溶媒を用いた場合には、波長320~400nmにかけてポリマーの主鎖由来の負のCDピークを誘起させ、左巻きのらせん構造をもたらす。このような極性溶媒の添加量としては、トルエンなどの非極性溶媒に対して容量で、1:0.001~1、好ましくは1:0.005~0.1が挙げられるが、必ずしもこの範囲に限定されるものではない。また、極性、非極性の溶媒を混合すると、その混合の比率により応じてらせんの向きを任意に制御することもできる。
また、重合温度としては、高温、例えば60℃以上、好ましくは80℃以上にした場合には左巻きのらせん構造が生成しやすくなると考えられる。
したがって、右巻きのらせん構造を生成させようとする場合には、例えば、四塩化炭素、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、若しくはトルエン、又はこれらの混合物を用いて、室温のような比較的低温で重合させることが好ましく、また左巻きのらせん構造を生成させようとする場合には、トルエンなどの非極性溶媒に、他の極性溶媒、例えば、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、又はエタノールを添加した混合溶媒を用いて、100℃程度の高温で重合させるのが好ましい。こうした効果は、特に四塩化炭素中での右巻きのらせん構造の形成と、100℃トルエン中での左巻きのらせん構造の形成で特に著しく観察される(下記の実施例を参照。)。
【0035】
また、本発明のポリイソシアニド重合体を製造するための対応するイソニトリルを重合する方法としては、リビング重合が挙げられる。当該リビング重合方法自体は公知の方法であり、公知の操作手段により重合させることができる。本発明の方法におけるイソニトリルのリビング重合特性を有する触媒としては、公知の各種の触媒を使用することができる。好ましい触媒としては、パラジウム、白金などの金属を含有してなる有機金属錯体触媒、より好ましい触媒としては前記した式(2)で表されるアセチレンで架橋した複核の白金-パラジウム-m-エチンジイル錯体が挙げられる。この錯体は鬼塚らの方法により製造することができる(K. Onitsuka, K. Yanai, et al., Organometallics 1994, 13, 3862-3867.; K. Onitsuka, T. Joh, et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 1992, 65, 1179-1181.)。
重合は、テトラヒドロフラン(THF)などの溶媒の存在下で行うのが好ましい。溶媒としては、単量体を溶解することができるものであればよく、好ましくはTHFなどのエーテル系のものが挙げられる。単量体の濃度としては、0.0001M~5M、好ましくは0.001M~1M程度が挙げられる。重合温度としては、室温から溶媒の沸点までを選択できるが、好ましくは50~70℃程度が挙げられる。
本発明の方法により製造されるポリイソシアニド重合体の重量平均分子量Mwとしては、前記してきたように10000~1000000、好ましくは30000~500000、より好ましくは50000~150000程度が挙げられる。本発明のポリイソシアニド重合体重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される分子量分散Mw/Mnとしては、特に制限はないが、好ましくは1.50未満、より好ましくは1.20以下、1.16以下のものが挙げられる。
【0036】
前記した方法による重合では左巻きらせん(M)構造のポリイソシアニド重合体と右巻きらせん(P)構造のポリイソシアニド重合体の両方が、これらの混合物として得られる。この分離が従来は非常に困難であったが、本発明のアミド基を有するポリイソシアニド重合体は、意外なことに左巻きらせん(M)構造のポリイソシアニド重合体と右巻きらせん(P)構造のポリイソシアニド重合体とでは、有機溶媒に対する溶解度が相違する。したがって、この混合物を有機溶媒で処理すれば、どちらか一方のらせん構造のものだけが溶解し、他方が沈殿として残るので、これを濾過することにより、どちらか一方のらせん構造のもが過剰になったポリイソシアニド重合体を得ることができる。この過剰率は特に制限はないが、好ましくは一方の異性体のジアステレオ異性体過剰率が、80%以上、より好ましくは90%以上である。有機溶媒の選択により、通常は90%以上のジアステレオ異性体過剰率とすることができる。
有機溶媒としては、ポリイソシアニド重合体のアミノ酸部分の種類や分子量にもよるが、アセトン、もしくは、アセトンとクロロホルム、アセトンとテトラヒドロフランなどの2種以上の溶媒が混合された溶媒系が挙げられる。特に好ましい有機溶媒としては、アセトンが挙げられる。使用する有機溶媒の量は、有機溶媒の種類やポリイソシアニド重合体の種類により相違するが、一般的には、例えば、ポリイソシアニド重合体の重量の10倍から5000倍、好ましくは100倍から1000倍程度であるが、これに限定されるものではない。
【0037】
処理手段としては、前記の方法で製造されたポリイソシアニド重合体の混合物を有機溶媒に懸濁させ、室温から溶媒の沸点までの温度、好ましくは室温付近の温度で充分に攪拌し、不溶物を濾過して、不溶物と溶液とを分離する。不溶物はそのまま一方の異性体が過剰になったものとして使用することもできるが、クロロホルムやTHFなどに再度溶解させて、再沈殿させることにより精製することもできる。また、濾過により得られた溶液は通常の方法で有機溶媒を留去することにより固体状の一方の異性体が過剰になったものを得ることができる。
得られた一方の異性体が過剰になったポリイソシアニド重合体のらせん構造は、公知の各種の手段により解析することができる。例えば、らせん構造を有するポリイソシアニド重合体類については、その主鎖吸収帯である300-400nm付近のCDスペクトルに現れるピークが正であれば、その主鎖らせんの巻き方向は右巻きであり、負であれば左巻きであることが知られている(Takei, F.; Hayashi, H,; Onitsuka, K.; Kobayashi, N.; Takahashi, S. Angew. Chem., Int. Ed. 2001, 40, 4092-4094.)。
【0038】
本発明の液晶組成物を使用する液晶素子の表示方式に関しては、特に限定されるものではない。例えば、ヘリカル変歪型、SSFLC型、TSM型、G-H(ゲスト-ホスト)型、フィールドシーケンシャルカラー型などの各種の表示方式を使用することができる。 また、本発明の液晶組成物を使用する液晶素子の駆動方法は、セグメント型、単純マトリックス型などのパッシブ駆動型であってもよく、TFT(薄膜トランジスタ)型、MIM(メタル-インスレーター-メタル)型等のアクティブ駆動型とすることもできる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、右巻き、又は左巻きの安定ならせん構造を持つ高分子材料を、同一の単量体から安価、簡便に作り分けることが可能となり、右巻き、左巻きの2種類の静的で安定な一方向巻きのらせん構造を有する高分子材料を単一の単量体から供給することが可能となる。右巻き、左巻きの2種類のらせん構造を簡便に製造することができることは、光学分割カラムクロマトグラフィー用の充填剤、不斉合成用触媒、光学活性配位子材料等の用途において分離効率の向上や、不斉合成で望みの光学活性体を得る上で非常に重要なことである。
また、本発明の方法によれば、静的で安定ならせん高分子であるポリイソシアニド誘導体において、リビング重合特性を有する触媒を用いて重合して、同一の単量体から安定な右巻き、左巻きの主鎖らせん構造を持つ異性体を同時に重合し、溶媒への溶解性の差を利用して、右巻きらせん構造及び左巻きらせん構造の主鎖らせん構造を持つそれぞれの異性体をジアステレオ異性体過剰率90%以上で分離できる。
さらに、本発明のポリイソシアニド誘導体は、非常に剛直な主鎖構造を持つため溶液中、もしくは溶融状態においてコレステリック液晶相およびネマチック液晶相を示す。重合反応条件、及び後処理条件を変えることにより、主鎖らせんの巻き方向における右巻き、左巻きの割合を制御する事が可能であるため、形成されるコレステリック液晶相のらせんピッチ(らせん構造の周期)も自在に制御することができるようになる。
この様な自発的に形成されるナノメートルスケールの構造はその溶媒を蒸発させること、又はガラス転移点以下に冷却する事で容易に固定化可能であり、光通信に利用されている1550nm,及び1300nmの赤外光の円偏光フィルター、リタデーション可変位相差板、化学物質認識センサー、高密度記録デバイス等としての利用が考えられ、これらの分子素子を大型の製造設備なしに簡便かつ安価に製造することが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の方法により製造された右巻き、及び左巻きらせん構造を持つ、ポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル)ポリマーL1R及びポリマーL1LのCDスペクトルである。
【図2】図2は、本発明の右巻きらせん構造を持つポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル)ポリマーL1RのAFMでの観察結果を示す図面に代わる写真である。図2の左側は、観察結果をモデル化して示したものである。
【図3】図3は、本発明の左巻きらせん構造を持つ、ポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル)ポリマーL1LのAFMでの観察結果を示す図面に代わる写真である。図3の右側は、観察結果をモデル化して示したものである。
【図4】図4は、比較例で示したアミド結合を持たないポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-乳酸デシルエステル)ポリマーL2R及びポリマーL2LのCDスペクトルである。
【図5】図5は、本発明のポリイソシアニド重合体の(±)体、(-)体、及び(+)体の、UV検出器及びCD検出器を用いたSEC溶出曲線を測定した結果を示すものである。
【図6】図6は、本発明のポリイソシアニド重合体の(±)体、(-)体および(+)体の、CDスペクトルを測定した結果を示すものである。
【図7】図7は、本発明のポリイソシアニド重合体の(±)体、(-)体および(+)体の、AFM写真を撮影した結果を示す図面に代わる写真である。
【図8】図8は、本発明のポリイソシアニド重合体の(-)体および(+)体のクロロホルム溶液の、偏光顕微鏡写真を撮影した結果を示す図面に代わる写真である。
【図9】図9は、本発明のポリイソシアニド重合体の(-)体および(+)体のAFM写真を撮影した結果を示す図面に代わる写真である。
【図10】図10は、本発明のポリイソシアニド重合体の(-)体および(+)体のクロロホルム濃厚溶液から徐々に溶媒を蒸発させる事により作製した固体サンプルの小角X線散乱プロファイルを測定した結果を示すものである。

【0041】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
なお、核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、Varian AS500分光計を用いて、H-NMRでは500MHz、また13C-NMRでは125MHzで操作し、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。
赤外吸収(IR)スペクトルは、Jasco FT/IR-680分光光度計を用いて測定した。
吸収スペクトルおよび円二色性(CD)スペクトルは、ポリマー濃度はモノマーユニットを基に計算し、光路長1.0mmの石英セルを用いて、それぞれJasco V570分光光度計およびJasco J820分光偏光計を用いて測定した。
旋光度は、光路長2.0cmの石英セルを用いて、Jasco P-1030偏光計を用いて測定した。
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、紫外・可視検出器(Jasco UV-2070)とCD検出器(Jasco CD-2095)を備えたJasco PU-2080を用いて行った。また、2本のTosoh TSKgel Multipore HXL-M SECカラム(30cm)をシステムに繋げ、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(0.1wt%)を含むテトラヒドラフラン(THF)溶液を溶離液として、流速を1.0mL/minとした。分子量較正曲線は、ポリスチレン標準物質を用いて得た。
原子間力顕微鏡(AFM)は、高配向熱分解グラファイト(HOPG)を基盤とし、Veeco Instruments Nanoscope IIIa又はNanoscope IV顕微鏡を用いて行った。それぞれのポリマーの乾燥ベンゼン溶液(0.015mg/mL)を調製し、20mLをHOPG上にキャストすることによりサンプルを調製した。溶液のキャストは、ベンゼン蒸気雰囲気下、室温で行い、さらに12時間ベンゼン蒸気に晒した後に減圧乾燥した。
【実施例1】
【0042】
4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステルの製造
次に示す製造経路により、単量体の4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステルを製造した。
【0043】
【化8】
JP0005189368B2_000009t.gif

【0044】
ニトロ安息香酸を、t-ブタノールとジメチルアセトアミド(DMA)中で縮合剤としてDCCの存在下で、L-アラニンデシルエステルと反応させてアミド化した、得られたアミド体を常法にしたがって接触還元してニトロ基をアミノ基に還元した後、酢酸エチル中で無水酢酸の存在下に蟻酸と反応させて、N-ホルミル化して、4-ホルムアミノベンゾイル-L-アラニンデシルエステルを製造した。
乾燥した三口フラスコ(100mL)中に、得られた4-ホルムアミノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル200mg(0.531mmol)を入れ十分脱気し、アルゴンガス置換した後、乾燥ジクロロメタン6mL、トリエチルアミン0.148mL(1.06mmol)を入れ、氷浴上で攪拌溶解した。これに、乾燥ジクロロメタン10mLに溶解させたトリホスゲン87mg(0.292mmol)を添加して、室温で1時間攪拌、反応させた。反応後、ジクロロメタン50mLを加えた反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mLを添加して抽出し、さらに無水硫酸マグネシウム20mgを加えて脱水処理を行った。ジクロロメタンの減圧除去後、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーによって目的のイソシアニド生成物を単離した。
【実施例2】
【0045】
次に示す右巻きらせん構造を持つポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル):ポリマーL1Rの製造
【0046】
【化9】
JP0005189368B2_000010t.gif

【0047】
乾燥した重合管(10mL)中に原料モノマーである4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル50mg(0.140mmol)を入れ十分脱気し、窒素ガス置換した後、四塩化炭素1.4mLを入れ、室温で攪拌、溶解した。これに、乾燥エタノール14μLに溶解させた塩化ニッケル六水和物0.33mgを添加して、窒素雰囲気下、室温で24時間攪拌、反応させた。反応後、反応液をメタノール中に滴下し、3000回転/分の遠心分離によって沈殿物を得た。この沈殿物を回収、乾燥することによってポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル)(以下、ポリマーL1Rという。)を得た。得られたポリマーの数平均分子量は約8万4千であった。
【実施例3】
【0048】
次に示す左巻きらせん構造を持つポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル):ポリマーL1Lの合成
【0049】
【化10】
JP0005189368B2_000011t.gif

【0050】
乾燥した重合管(10mL)中に原料モノマーである4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル50mg(0.140mmol)を入れ十分脱気し、窒素ガス置換した後、トルエン1.4mLを入れ、室温で攪拌、溶解した。これに、乾燥エタノール14μLに溶解させた塩化ニッケル六水和物0.33mgを添加して、窒素雰囲気下、100℃で6日間攪拌、反応させた。反応後、反応液をメタノール中に滴下し、3000回転/分の遠心分離によって沈殿物を得た。この沈殿物を回収、乾燥することによってポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル)(以下、ポリマーL1Lという。)を得た。得られたポリマーの数平均分子量は約23万であった。
【実施例4】
【0051】
実施例2及び3で製造した右巻き、又は左巻きのらせん構造を持つ、ポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル)ポリマーL1R及びポリマーL1LのCDスペクトル測定による主鎖らせん構造の巻き方向の確認
1mgのポリマーL1RおよびポリマーL1Lをそれぞれ5mLのクロロフォルムに溶解し、円二色性スペクトル(CD)を測定したところ、ポリマーL1Rについては波長320-400nmにかけてポリマーの主鎖由来の正CDピークが観察されたが、ポリマーL1Lについては波長320-400nmにかけてポリマーの主鎖由来の負CDピークが観察された。これらの結果を図1に示す。図1の実線はポリマーL1Rを示し、破線はポリマーL1Lを示す。
この結果、ポリマーL1RはCDスペクトルにおいて300-400nm付近に正のピークを示しており、また反対にポリマーL1Lは負のピークを示していることから、ポリマーL1Rは右巻きの、またポリマーL1Lは左巻きの主鎖らせん構造をとっていることが分かった。
【0052】
さらに、これらの右巻き、又は左巻きらせん構造を持つ、ポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル)ポリマーL1RおよびポリマーL1LのAFM観察による主鎖らせん構造の巻き方向の確認を行った。
0.2mgのポリマーL1R及びポリマーL1Lを、それぞれ1mLのトルエンに溶解し、この溶液をHOPG(高配向性熱分解グラファイト)上にスピンキャストし、AFM(原子間力顕微鏡)を用いてその表面を観察した。得られた結果をポリマーL1Rについて図2に、ポリマーL1Lについて図3にそれぞれ示す。
この結果、明瞭に、それぞれ図2においてはポリマーL1Rが右巻きのらせん構造として、図3においてはポリマーL1Lが左巻きのらせん構造として観察された。なお、図2の左側は、及び図3の右側は、観察結果をモデル化して示したものである。
【0053】
比較例1
置換基としてアミド結合を持たない乳酸デシルエステル誘導体の製造
前記した実施例と同様な方法により、次に示す製造経路により、置換基としてアミド結合を持たないポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-乳酸デシルエステル)を製造した。
【0054】
【化11】
JP0005189368B2_000012t.gif

【0055】
(1)原料モノマーである4-イソシアノベンゾイル-L-乳酸デシルエステルの合成
乾燥した三口フラスコ(100mL)中に4-ホルムアミノベンゾイル-L-乳酸デシルエステル200mg(0.530mmol)を入れ十分脱気し、アルゴンガス置換した後、乾燥ジクロロメタン6mL、トリエチルアミン0.148mL(1.06mmol)を入れ、氷浴上で攪拌溶解した。これに、乾燥ジクロロメタン10mLに溶解させたトリホスゲン87mg(0.292mmol)を添加して、室温で1時間攪拌、反応させた。反応後、ジクロロメタン50mLを加えた反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mLを添加して抽出し、さらに無水硫酸マグネシウム20mgを加えて脱水処理を行った。ジクロロメタンの減圧除去後、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーによって生成物を単離した。
【0056】
(2)次に示すポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-乳酸デシルエステル):ポリマーL2Rの合成
【0057】
【化12】
JP0005189368B2_000013t.gif

【0058】
乾燥した重合管(10mL)中に原料モノマーである4-イソシアノベンゾイル-L-乳酸デシルエステル50mg(0.140mmol)を入れ十分脱気し、窒素ガス置換した後、四塩化炭素1.4mLを入れ、室温で攪拌、溶解した。これに、乾燥エタノール14μLに溶解させた塩化ニッケル六水和物0.33mgを添加して、窒素雰囲気下、室温で24時間攪拌、反応させた。反応後、反応液をメタノール中に滴下し、3000回転/分の遠心分離によって沈殿物を得た。この沈殿物を回収、乾燥することによってポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-乳酸デシルエステル)(以下、ポリマーL2Rという。)を得た。得られたポリマーの数平均分子量は約27万であった。
【0059】
(3)次に示すポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-乳酸デシルエステル):ポリマーL2Lの合成
【0060】
【化13】
JP0005189368B2_000014t.gif

【0061】
乾燥した重合管(10mL)中に原料モノマーである4-イソシアノベンゾイル-L-乳酸デシルエステル50mg(0.140mmol)を入れ十分脱気し、窒素ガス置換した後、トルエン1.4mLを入れ、室温で攪拌、溶解した。これに、乾燥エタノール14μLに溶解させた塩化ニッケル六水和物0.33mgを添加して、窒素雰囲気下、100℃で6日間攪拌、反応させた。反応後、反応液をメタノール中に滴下し、3000回転/分の遠心分離によって沈殿物を得た。この沈殿物を回収、乾燥することによってポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-乳酸デシルエステル)(以下ポリマーL2L)を得た。得られたポリマーの数平均分子量は約22万であった。
【0062】
(4)ポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-乳酸デシルエステル)ポリマーL2R及びポリマーL2LのCDスペクトル測定による主鎖らせん構造の巻き方向の確認
1mgのポリマーL2RおよびポリマーL2Lをそれぞれ5mLのクロロフォルムに溶解し、円二色性スペクトル(CD)を測定したところ、ポリマーL2R、ポリマーL2Lいずれについても波長320-400nmにかけてポリマーの主鎖由来の負のCDピークが観察された。これらの結果を図4に示す。図4の実線はポリマーL2Rの場合を示し、破線はポリマーL2Lの場合を示す。
この結果、置換基としてアミド結合を持たないポリマーL2R及びポリマーL2Lは、いずれもCDスペクトルにおいて300-400nm付近に負のピークを示していることから、ポリマーL2RおよびポリマーL2Lは左巻きの、主鎖らせん構造をとっていることが分かった。したがって、置換基としてアミド結合を持たない単量体イソシアニドからは、らせん構造を制御した高分子材料を得ることができないことが分かった。
【0063】
製造例1
単量体4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステルの製造
梶谷らの方法(T. Kajitani, K. Okoshi, S.-i. Sakurai, J. Kumaki, E. Yashima, J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 708-709.)にしたがって、次に示す反応スキームにより4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステルを製造した。
【0064】
【化14】
JP0005189368B2_000015t.gif

【0065】
乾燥した三口フラスコ(100mL)中に4-ホルムアミノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル200mg(0.531mmol)を入れ十分脱気し、アルゴンガスで置換した後、乾燥ジクロロメタン6mL、トリエチルアミン0.148mL(1.06mmol)を入れ、氷浴上で攪拌溶解した。これに、乾燥ジクロロメタン10mLに溶解させたトリホスゲン87mg(0.292mmol)を添加して、室温で1時間攪拌、反応させた。反応後、ジクロロメタン50mLを加えた反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mLを添加して抽出し、さらに無水硫酸マグネシウム20mgを加えて脱水処理を行った。ジクロロメタンを減圧除去した後、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーによって目的の生成物を単離した。
【0066】
製造例2
アセチレンで架橋した複核の白金-パラジウム-m-エチンジイル錯体の製造
イソシアニドのリビング重合特性を有するアセチレンで架橋した複核の白金-パラジウム-m-エチンジイル錯体を、鬼塚らの方法(K. Onitsuka, K. Yanai, F. Takei, T. Joh, S. Takahashi, Organometallics 1994, 13, 3862-3867. K. Onitsuka, T. Joh, S. Takahashi, Bull. Chem. Soc. Jpn. 1992, 65, 1179-1181.)にしたがって製造した。
【実施例5】
【0067】
次の式に示される右巻きらせん構造及び左巻きらせん構造を持つポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル)の混合物の製造
【0068】
【化15】
JP0005189368B2_000016t.gif

【0069】
前記した製造例1で製造した原料モノマーである4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステルを、乾燥させた重合管(20mL)に移した後、減圧乾燥させた。三方コックを取り付け、十分乾燥させたテトラヒドラフラン(THF)(1.35mL)をシリンジで加えた。そこに、別途調製したイソシアニドのリビング重合特性を有するアセチレンで架橋した複核の白金-パラジウム-m-エチンジイル錯体のTHF溶液(5.6mM、0.5mL)をシリンジで加えた。この時の原料モノマーと重合触媒の濃度は、それぞれ0.2Mと0.002Mとした。この溶液を、窒素雰囲気下、55℃で20時間撹拌した。得られたポリマーを、大量のメタノールを用いて再沈殿させた後に遠心分離することにより回収し、室温で減圧乾燥した。目的のポリマー((±)体)は100mg(収率100%)得られた。得られたポリマー((±)体)のスペクトルデータは以下の通りである。
IR(CHCl,cm-1):3284(νN-H),1744(νC=O エステル),
1633(アミドI),1534(アミドII);
H NMR(CDCl,55℃): δ
0.87 (broad, CH3, 3H), 1.26 (broad, CH2, 14H),
1.53 (broad, CH3 and CH2, 5H), 4.09 (broad, CH2, 2H),
4.51 (broad, CH, 1H), 4.8-7.7 (broad, aromatic, 4H),
7.9-9.0 (broad, NH, 1H);
[α]25 -995° (c 0.1,クロロホルム);
元素分析 (C2130)nとして:
計算値 C 70.36; H 8.44; N 7.81;
実測値 C 70.23; H 8.56; N 7.68.
【実施例6】
【0070】
右巻きらせん構造及び左巻きらせん構造を持つポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル)の混合物の右巻きらせん構造及び左巻きらせん構造の異性体への分離
実施例5で得られたポリマー(70.8mg)を、アセトン(30mL)に懸濁させ、室温で3時間撹拌した。ろ過後、ろ液を乾燥することにより(+)体(10.0mg, 14%)を得た。
また、アセトン不溶部として得られたポリマーを少量のクロロホルムに溶解させ、大量のアセトンを用いて再沈殿させた後、フィルターろ過を行った。この操作を数回繰り返した後、(-)体(44.5mg,63%)を得た。得られた(+)体および(-)体のスペクトルデータは以下の通りである。
(+)体:
IR(CHCl,cm-1):3270(νN-H),1742(νC=O エステル),
1636(アミドI),1532(アミドII);
H NMR(CDCl,55℃): δ
0.90 (broad, CH3, 3H), 1.29 (broad, CH2, 14H),
1.62 (broad, CH3 and CH2, 5H), 4.11 (broad, CH2, 2H),
4.51 (broad, CH, 1H), 4.9-7.7 (broad, aromatic, 4H),
8.3-9.0 (broad, NH, 1H);
[α]25 +1530° (c 0.05,クロロホルム);
元素分析 (C2130)nとして:
計算値 C 70.36; H 8.44; N 7.81.
実測値 C 70.18; H 8.44; N 7.78.
(-)体:
IR(CHCl,cm-1):3284(νN-H),1743 (νC=O エステル),
1633(アミドI),1534(アミドII).
H NMR(CDCl,55℃): δ
0.87 (broad, CH3, 3H), 1.25 (broad, CH2, 14H),
1.53 (broad, CH3 and CH2, 5H), 4.09 (broad, CH2, 2H),
4.51 (broad, CH, 1H), 4.8-7.7 (broad, aromatic, 4H),
7.9-8.9 (broad, NH, 1H);
[α]25 -1615° (c 0.1,クロロホルム);
元素分析 (C2130)nとして:
計算値 C 70.36; H 8.44; N 7.81.
実測値 C 70.35; H 8.36; N 7.64.
【実施例7】
【0071】
右巻きらせん構造、及び左巻きらせん構造を持つ、ポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル)(-)体および(+)体のCDスペクトル測定による主鎖らせん構造の巻き方向の確認
それぞれのポリマーについて、SEC測定の結果を図5に、クロロフォルム中でのCDスペクトルを測定した結果を図6に示す。また、(±)体、(-)体および(+)体の、SEC測定より求めた分子量データとCDスペクトルより求めた円偏光二色性のそれぞれの結果を次の表1にまとめた。
【0072】
【表1】
JP0005189368B2_000017t.gif

【0073】
メタノール不溶部として得られた(±)体のSEC測定を行ったところ、生成ポリマーは二峰性を示し、分子量の異なる二成分の混合物であることがわかった(図5参照)。さらに、それぞれのポリマーは異なる符号のCDを示した。そこで、アセトンを用いて可溶媒分別することにより得られたポリマー(不溶部:(-)体、可溶部:(+)体)について、再度SEC測定を行った。その結果、それぞれのポリマーは単峰性のクロマトグラムを示し、数平均分子量(Mn)および多分散度(Mw/Mn)は(-)体が120,000でMw/Mnが1.06、(+)体が56,000でMw/Mnが1.11であった(図5及び表1参照)。これらの結果より、メタノール不溶部として得られた(±)体は、分子量および主鎖のらせんの巻き方向が異なる二成分の混合物であり、それらのポリマーはアセトンへの溶解性が異なることが示された。
次に、分離前の(±)体の円二色性(CD)スペクトルをクロロホルム中で測定したところ、ポリマー主鎖の吸収領域である360nm付近に負のコットン(Cotton)効果が観測された(図6参照)。これは、(±)体が左右どちらか一方向巻きに偏ったらせん構造を形成していることを示している。また、分離した(-)体および(+)体のCDスペクトルは互いに逆符号のコットン(Cotton)効果を示し、そのパターンは鏡像関係に近く、またCD強度は分離前の(±)体と比べて極めて大きなものであった。図6にそれぞれのポリマーの室温でのCDスペクトルを示す。
以上の結果は、(-)体と(+)体は互いに逆巻きのジアステレオマーの関係にあるらせん構造を有しており、重合反応中に両らせんポリマーがリビング的に生成していることを示している。
らせん構造を有するポリイソシアニド重合体類については、その主鎖吸収帯である300-400nm付近のCDスペクトルに現れるピークが正であれば、その主鎖らせんの巻き方向は右巻き、負であれば左巻きである事が下記非特許文献により知られている(Takei, F.; Hayashi, H,; Onitsuka, K.; Kobayashi, N.; Takahashi, S. Angew. Chem., Int. Ed. 2001, 40, 4092-4094.参照)
図6から、(+)体はCDスペクトルにおいて300-400nm付近に正のピークを示しており、また反対に(-)体は負のピークを示している事から、(+)体は右巻きのらせん構造、(-)体は左巻きのらせん構造の主鎖らせん構造をとっていることが分かる。
【実施例8】
【0074】
右巻きらせん構造、及び左巻きらせん構造を持つ、ポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル)(-)体および(+)体のAFMによる主鎖らせん構造の巻き方向の確認
次に、AFMを用いて(-)体と(+)体のらせん構造の直接観察を試みた。得られた結果を図7に示す。その結果、ポリマーの主鎖領域に負のコットン(Cotton)効果を示した(-)体では左巻き、正のコットン(Cotton)効果を示した(+)体では右巻きのらせん構造がそれぞれ観察された。より広範囲のAFM観察を詳細に行ったところ、それぞれのらせん構造はほぼ一方向巻きであることが明らかになった。すなわち、(-)体と(+)体のらせん構造は、それぞれジアステレオマーの関係にある左巻きと右巻きのらせんであることがわかった。
【実施例9】
【0075】
右巻きらせん構造、及び左巻きらせん構造を持つ、ポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル)(-)体および(+)体のクロロホルム濃厚溶液の偏光顕微鏡写真によるスメクチック相の確認
それぞれのポリマーについて、クロロホルム濃厚溶液(約15%)作成し、偏光顕微鏡観察を行なった。結果を図8に示す。(-)体および(+)体共に、スメクチック液晶相に特徴的なファンシェイプ組織が観察される。このことから、(-)体および(+)体共に、クロロホルム濃厚溶液中においてスメクチック相を形成していることがわかった。
【実施例10】
【0076】
右巻きらせん構造、および左巻きらせん構造を持つ、ポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル)(-)体および(+)体のキャストフィルムのAFMによる高次構造の観察
それぞれのポリマーについて、基板上にキャストしたフィルムのAFM観察を行なった。結果を図9に示す。その結果、明瞭な層状構造が(-)体および(+)体共に観察された。このことから、(-)体および(+)体共に、スメクチック相を形成していることがわかった。
【実施例11】
【0077】
右巻きらせん構造、および左巻きらせん構造を持つ、ポリ(4-イソシアノベンゾイル-L-アラニンデシルエステル)(-)体および(+)体のキャストフィルムの小角X線散乱実験
それぞれのポリマーについて、クロロホルム濃厚溶液から徐々に溶媒を蒸発させる事により作製した固体サンプルの小角X線散乱実験を行った。その結果、(-)体および(+)体それぞれについて、散乱角(2θ )0.92° 、1.51° に小角反射が出現し、その面間隔は95.6Å(オングストローム)、58.4Å(オングストローム)であった。結果を図10に示す。これらの値が、AFM観察において測定される分子長とほぼ同程度である事から、(-)体および(+)体共にスメクチック相を形成している事がわかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
右巻き、及び左巻きの2種類のらせん構造を有する高分子材料を単一のモノマー材料から簡便に、かつ安価に製造することができることは、光学分割カラムクロマトグラフィー用の充填剤、不斉合成用触媒、光学活性配位子材料等の用途において分離効率の向上や、不斉合成での望みの光学活性体を得る上で非常に重要なことである。
本発明は、右巻き、及び左巻きの2種類のらせん構造を有する高分子材料を単一のモノマー材料から簡便に、かつ安価に製造することができる方法、及びそのためのモノマー材料を提供するものであり、材料産業のみならず、これらの材料を使用する光学分割カラムクロマトグラフィー用の充填剤、不斉合成用触媒、光学活性配位子材料などを使用する化学物質に関する産業、液晶産業、光学材料や光学素子産業において極めて有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9