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明細書 :動物細胞を無血清培養するための培地用添加剤、キット及びこれらの利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4385076号 (P4385076)
登録日 平成21年10月2日(2009.10.2)
発行日 平成21年12月16日(2009.12.16)
発明の名称または考案の名称 動物細胞を無血清培養するための培地用添加剤、キット及びこれらの利用
国際特許分類 C12N   5/06        (2006.01)
FI C12N 5/00 E
請求項の数または発明の数 33
全頁数 48
出願番号 特願2007-553929 (P2007-553929)
出願日 平成19年1月11日(2007.1.11)
国際出願番号 PCT/JP2007/050232
国際公開番号 WO2007/080919
国際公開日 平成19年7月19日(2007.7.19)
優先権出願番号 2006006706
優先日 平成18年1月13日(2006.1.13)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年6月18日(2008.6.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】503328193
【氏名又は名称】株式会社ツーセル
発明者または考案者 【氏名】加藤 幸夫
【氏名】邵 金昌
【氏名】桂 由紀
【氏名】辻 紘一郎
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】柴原 直司
参考文献・文献 特表2005-515777(JP,A)
J. Cell. Physiol., (2005), 205, [2], p.228-236
化学工学会室蘭大会研究発表講演要旨集, (1998), p.140
Cytotechnology, (2001), 35, [2], p.87-92
J. Immunol. Methods, (1987), 99, [2], p.259-270
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1979), 76, [6], p.2823-2827
J. Biosci. Bioeng., (2001), 92, [3], p.256-261
脂質生化学研究, (2003), 45, p.262-265
Exp. Cell Res., (1981), 134,[2], p.303-311
調査した分野 C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
FGF、
PDGF、
TGF-β、
HGF、
EGF、
少なくとも1つのリン脂質、並びに
少なくとも1つの脂肪酸を含有することを特徴とする間葉系幹細胞又はサル腎臓由来未分化細胞株COS7細胞を無血清培養するための培地用添加剤。
【請求項2】
前記リン脂質が、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン、及びフォスファチジルグリセロールからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の培地用添加剤。
【請求項3】
前記脂肪酸がリノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群より選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の培地用添加剤。
【請求項4】
コレステロールをさらに含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の培地用添加剤。
【請求項5】
CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも1つの因子をさらに含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の培地用添加剤。
【請求項6】
脂質酸化防止剤をさらに含有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の培地用添加剤。
【請求項7】
前記脂質酸化防止剤がDL-α-トコフェロールアセテート(ビタミンE)、L-グルタチオン(L-glutathione)又は2-メルカプトエタノール(2-mercaptoethanol)であることを特徴とする請求項6に記載の培地用添加剤。
【請求項8】
塩化リチウムをさらに含有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の培地用添加剤。
【請求項9】
界面活性剤をさらに含有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の培地用添加剤。
【請求項10】
前記界面活性剤がPluronic(登録商標) F-68又はTween(登録商標) 80であることを特徴とする請求項9に記載の培地用添加剤。
【請求項11】
インスリン、トランスフェリン(transferrin)及びセレネート(selenate)をさらに含有することを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の培地用添加剤。
【請求項12】
デキサメタゾン(Dexamethasone)をさらに含有することを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の培地用添加剤。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の培地用添加剤を含有していることを特徴とする間葉系幹細胞又はサル腎臓由来未分化細胞株COS7細胞を無血清培養するための培養培地。
【請求項14】
請求項13に記載の培養培地中にて間葉系幹細胞又はサル腎臓由来未分化細胞株COS7細胞を培養する工程を包含することを特徴とする間葉系幹細胞又はサル腎臓由来未分化細胞株COS7細胞を無血清培養するための培養方法。
【請求項15】
請求項1に記載の培地用添加剤を備えていることを特徴とする間葉系幹細胞又はサル腎臓由来未分化細胞株COS7細胞を無血清培養するための培地用添加剤キット。
【請求項16】
FGF、
PDGF、
TGF-β、
HGF、
EGF、
少なくとも1つのリン脂質、並びに
少なくとも1つの脂肪酸を別々に備えていることを特徴とする間葉系幹細胞又はサル腎臓由来未分化細胞株COS7細胞を無血清培養するための培地用添加剤キット。
【請求項17】
前記リン脂質が、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン、及びフォスファチジルグリセロールからなる群より選択されることを特徴とする請求項16に記載の培地用添加剤キット。
【請求項18】
前記脂肪酸がリノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群より選択されることを特徴とする請求項16又は17に記載の培地用添加剤キット。
【請求項19】
コレステロールをさらに備えていることを特徴とする請求項16~18のいずれか1項に記載の培地用添加剤キット。
【請求項20】
CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも1つの因子をさらに備えていることを特徴とする請求項16~19のいずれか1項に記載の培地用添加剤キット。
【請求項21】
脂質酸化防止剤をさらに備えていることを特徴とする請求項16~20のいずれか1項に記載の培地用添加剤キット。
【請求項22】
前記脂質酸化防止剤がDL-α-トコフェロールアセテート(ビタミンE)、L-グルタチオン(L-glutathione)又は2-メルカプトエタノール(2-mercaptoethanol)であることを特徴とする請求項21に記載の培地用添加剤キット。
【請求項23】
塩化リチウムをさらに含有することを特徴とする請求項16~22のいずれか1項に記載の培地用添加剤キット
【請求項24】
界面活性剤をさらに備えていることを特徴とする請求項16~23のいずれか1項に記載の培地用添加剤キット。
【請求項25】
前記界面活性剤がPluronic(登録商標) F-68又はTween(登録商標) 80であることを特徴とする請求項24に記載の培地用添加剤キット。
【請求項26】
インスリン、トランスフェリン及びセレネートをさらに備えていることを特徴とする請求項16~25のいずれか1項に記載の培地用添加剤キット。
【請求項27】
デキサメタゾン(Dexamethasone)をさらに備えていることを特徴とする請求項16~26のいずれか1項に記載の培地用添加剤キット。
【請求項28】
請求項16~27のいずれか1項に記載の培地用添加剤キットに備えられた成分を全て含有していることを特徴とする間葉系幹細胞又はサル腎臓由来未分化細胞株COS7細胞を無血清培養するための培養培地。
【請求項29】
請求項28に記載の培養培地中にて間葉系幹細胞又はサル腎臓由来未分化細胞株COS7細胞を培養する工程を包含することを特徴とする間葉系幹細胞又はサル腎臓由来未分化細胞株COS7細胞を無血清培養するための培養方法。
【請求項30】
間葉系幹細胞又はサル腎臓由来未分化細胞株COS7細胞を無血清培養するための培養方法であって、
FGF、
PDGF、
TGF-β、
HGF、
EGF、
少なくとも1つのリン脂質、並びに
少なくとも1つの脂肪酸を、基礎培地に同時に添加する工程を包含することを特徴とする培養方法。
【請求項31】
分化能を維持したまま間葉系幹細胞を連続継代培養するための培地用添加剤であって、
FGF、
PDGF、
TGF-β、
HGF、
EGF、
少なくとも1つのリン脂質、並びに
少なくとも1つの脂肪酸を含有することを特徴とする培地用添加剤。
【請求項32】
分化能を維持したまま間葉系幹細胞を連続継代培養するための培地用添加剤キットであって、
FGF、
PDGF、
TGF-β、
HGF、
EGF、
少なくとも1つのリン脂質、並びに
少なくとも1つの脂肪酸を含有することを特徴とする培地用添加剤キット。
【請求項33】
分化能を維持したまま間葉系幹細胞を連続継代培養する培養方法であって、
FGF、
PDGF、
TGF-β、
HGF、
EGF、
少なくとも1つのリン脂質、並びに
少なくとも1つの脂肪酸を、基礎培地に同時に添加する工程を包含することを特徴とする培養方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、動物細胞の培養培地に添加する組成物、キット及びその利用に関するものであり、より詳細には、動物細胞を、無血清条件下又は低血清条件下において培養するための組成物、キット及びその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
間葉系幹細胞は、骨髄等の組織中に存在する体性幹細胞の一つであり、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞等へ分化する多分化能、及び自己増殖能を有する幹細胞として知られている。現在、間葉系幹細胞は、再生医療分野において移植用細胞として利用されており、間葉系幹細胞の適用対象である疾患は、骨欠損、軟骨欠損、歯周病、心筋梗塞、難治性皮膚疾患、骨粗しょう症、変形性関節病、脊髄損傷、造血支持、臓器移植での拒絶反応抑制等、多岐にわたる。今後、間葉系幹細胞の適用対象となる疾患は、さらに増えるものと予想される(例えば、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症、腎臓疾患等)。
【0003】
この間葉系幹細胞は、骨髄、骨膜等の組織中に存在している。これらの生体組織から採取された間葉系幹細胞を、増殖させ、さらに所望の細胞へと分化させることにより、組織再生医療において利用され得る組織を調製する。しかしながら、生体組織中に存在する間葉系幹細胞の数は少量であるので、間葉系幹細胞を移植用細胞として用いるためには、組織から採取された細胞を十分に増殖させる必要がある。
【0004】
通常、動物細胞の培養は、ウシ胎仔血清等の非ヒト動物由来の血清が5~20%添加された培地を用いて行われる。この血清は、生体外での細胞の成長及び/又は増殖を促進するための栄養源、又はホルモン等の生理活性物質の供給源として用いられている。しかしながら、血清は、非常に高価であり、また天然製品であるがゆえにロット毎に成分の差が生じる。また、培養後の細胞から血清由来のタンパク質等を除去するために精製する必要があり、作業が煩雑になる。さらに、血清中に混入している未知の病原体(ウイルス、病原性プリオン等)により培養細胞が汚染される危険性がある。
【0005】
一方、非ヒト動物由来の血清を用いることなく動物細胞を培養する技術が開発されている。例えば、自家移植治療(すなわち、患者から採取した細胞を培養後に同じ患者へと戻す治療法)において用いられる細胞の培養には、その同じ患者から得た自家ヒト血清を用いる。これにより、培養細胞の汚染は回避される。しかし、血清作製のために大量の血液が必要となるため、患者に多大な負担を与える。
【0006】
これらの問題を回避するために、血清を含まない培地(無血清培地)又は血清含有量の低い培地(低血清培地)の開発が進められている。培地中の血清濃度を低下させることにより、細胞はその増殖性を著しく低下させるか又は死滅する。このため、細胞の増殖性を失うことなく培養することが可能な培地を作製するために、血清に替わる細胞増殖因子を培地中に添加する必要がある。従来、血清に替わる細胞増殖因子として、各種ペプチドホルモン、増殖因子等が用いられている(例えば、特許文献1及び2を参照のこと)。このような無血清培地として、例えば、HAMのF12培地を基礎培地とし、この培地中にインスリン、トランスフェリン等を添加した無血清培地が知られている。
【0007】
無血清培地に増殖因子以外に脂肪酸を含ませることにより、治療に適用するための軟骨細胞を培養する方法もまた知られている(例えば、特許文献3及び4を参照のこと)。さらに、特許文献5には、神経幹細胞を長期培養するための方法及び組成物が記載されている。
〔特許文献1〕
日本国公開特許公報「特開平8-308561号公報(公開日:1996年11月26日)」
〔特許文献2〕
日本国公開特許公報「特開平9-191874号公報(公開日:1997年7月29日)」
〔特許文献3〕
日本国公開特許公報「特表2005-515777号公報(平成17年6月2日公開)」
〔特許文献4〕
日本国公開特許公報「特表2002-529071号公報(平成14年9月10日公開)」
〔特許文献5〕
日本国公開特許公報「特表2003-516141号公報(平成15年5月13日公開)」
【発明の開示】
【0008】
しかしながら、上記のような培地を用いた場合においても、10%血清含有培地と比較して、必ずしも十分な細胞増殖促進効果を得るに至っていない。特に、従来の技術では、大量培養に必須の長期培養ができなかった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、無血清培地でありながら、間葉系幹細胞又はサル腎臓由来未分化細胞株COS7細胞増殖促進効果を有する技術を提供することにある。

【0010】
本発明に係る培地用添加剤は、動物細胞を無血清培養するために、FGF、PDGF、TGF-β及びHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を含有することを特徴としている。
【0011】
本発明に係る培地用添加剤において、上記リン脂質は、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン、及びフォスファチジルグリセロールからなる群より選択されることが好ましい。
【0012】
本発明に係る培地用添加剤は、少なくとも1つの脂肪酸をさらに含有することが好ましい。
【0013】
本発明に係る培地用添加剤において、上記脂肪酸は、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群より選択されることが好ましく、栄養学的必須脂肪酸であるリノール酸、リノレイン酸及びアラキドン酸が特に好ましい。
【0014】
本発明に係る培地用添加剤は、コレステロールをさらに含有してもよい。
【0015】
本発明に係る培地用添加剤は、EGF、CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子をさらに含有してもよい。
【0016】
本発明に係る培地用添加剤は、脂質酸化防止剤をさらに含有してもよい。
【0017】
本発明に係る培地用添加剤において、上記脂質酸化防止剤はDL-α-トコフェロールアセテート(ビタミンE)、L-グルタチオン(L-glutathione)又は2-メルカプトエタノール(2-mercaptoethanol)であることが好ましいが、他の還元剤であってもよい。
【0018】
本発明に係る培地用添加剤は、塩化リチウムをさらに含有してもよい。
【0019】
本発明に係る培地用添加剤は、界面活性剤をさらに含有してもよい。
【0020】
本発明に係る培地用添加剤において、上記界面活性剤はPluronic F-68又はTween 80であることが好ましいが、他の界面活性剤であってもよい。
【0021】
本発明に係る培地用添加剤は、インスリン、トランスフェリン(transferrin)及びセレネート(selenate)をさらに含有してもよい。
【0022】
本発明に係る培地用添加剤は、デキサメタゾン(Dexamethasone)、または他のグルココルチコイドをさらに含有してもよい。
【0023】
本発明に係る培地用添加剤において、上記動物細胞は未分化細胞であることが好ましい。
【0024】
本発明に係る培地用添加剤において、上記動物細胞は間葉系幹細胞であることが好ましい。
【0025】
本発明に係る培地用添加剤において、上記動物細胞は特別な分化能を失って未分化状態に近い細胞(例えば、サル腎臓由来のCOS細胞)であることが好ましい。
【0026】
本発明に係る培養培地は、動物細胞を無血清培養するために上記の培地用添加剤を構成する成分を含有していることを特徴としている。
【0027】
本発明に係る培養方法は、動物細胞を無血清培養するために上記の培養培地中にて動物細胞を培養する工程を包含することを特徴としている。
【0028】
本発明に係る培地用添加剤キットは、動物細胞を無血清培養するために上記の培地用添加剤を備えていることを特徴としている。
【0029】
本発明に係る培地用添加剤キットは、動物細胞を無血清培養するために、FGF、PDGF、TGF-β及びHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を別々に備えていることを特徴としている。
【0030】
本発明に係る培地用添加剤キットは、少なくとも1つの脂肪酸をさらに備えていることが好ましい。
【0031】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記リン脂質は、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン、及びフォスファチジルグリセロールからなる群より選択されることが好ましい。
【0032】
本発明に係る培地用添加剤キットは、脂肪酸はリノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群より選択されることが好ましい。
【0033】
本発明に係る培地用添加剤キットは、コレステロールをさらに備えていてもよい。
【0034】
本発明に係る培地用添加剤キットは、EGF、CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子をさらに備えていてもよい。
【0035】
本発明に係る培地用添加剤キットは、脂質酸化防止剤をさらに備えていてもよい。
【0036】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、脂質酸化防止剤はDL-α-トコフェロールアセテート(ビタミンE)、L-グルタチオン(L-glutathione)又は2-メルカプトエタノール(2-mercaptoethanol)であることが好ましいが、他の還元剤であってもよい。
【0037】
本発明に係る培地用添加剤キットは、塩化リチウムをさらに備えていてもよい。
【0038】
本発明に係る培地用添加剤キットは、界面活性剤をさらに備えていてもよい。
【0039】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、界面活性剤はPluronic F-68又はTween 80であることが好ましいが、他の界面活性剤であってもよい。
【0040】
本発明に係る培地用添加剤キットは、インスリン、トランスフェリン及びセレネートをさらに備えていてもよい。
【0041】
本発明に係る培地用添加剤キットは、デキサメタゾン、または他のグルココルチコイドをさらに備えていてもよい。
【0042】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、動物細胞は未分化細胞であることが好ましい。
【0043】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、動物細胞は間葉系幹細胞であることが好ましい。
【0044】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記動物細胞は特別な分化能を失って未分化状態に近い細胞(例えば、サル腎臓由来のCOS細胞)であることが好ましい。
【0045】
本発明に係る培養培地は、動物細胞を無血清培養するために、上記の培地用添加剤キットに備えられた成分を含有していることを特徴としている。
【0046】
本発明に係る培養方法は、動物細胞を無血清培養するために、上記の培養培地中にて動物細胞を培養する工程を包含することを特徴としている。
【0047】
本発明に係る培養方法は、動物細胞を無血清培養するために、FGF、PDGF、TGF-β及びHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を、基礎培地に同時に添加する工程を包含することを特徴としている。
【0048】
本発明に係る培養方法は、上記基礎培地に少なくとも1つの脂肪酸をさらに添加する工程を包含することが好ましい。
【0049】
本発明に係る培地用添加剤は、分化能を維持したまま幹細胞を連続継代培養するために、FGF、PDGF、TGF-β及びHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を含有することを特徴としている。
【0050】
本発明に係る培地用添加剤は、少なくとも1つの脂肪酸をさらに含有することが好ましい。
【0051】
本発明に係る培地用添加剤キットは、分化能を維持したまま幹細胞を連続継代培養するために、FGF、PDGF、TGF-β及びHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を備えていることを特徴としている。
【0052】
本発明に係る培地用添加剤キットは、少なくとも1つの脂肪酸をさらに備えていることが好ましい。
【0053】
本発明に係る培養培地は、FGF、PDGF、TGF-β及びHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を含有していることを特徴としている。
【0054】
本発明に係る培養培地は、少なくとも1つの脂肪酸をさらに含有していることが好ましい。
【0055】
本発明に係る培養方法は、分化能を維持したまま幹細胞を連続継代培養するために、FGF、PDGF、TGF-β及びHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を、基礎培地に同時に添加する工程を包含することを特徴としている。
【0056】
本発明に係る培養方法は、上記基礎培地に少なくとも1つの脂肪酸をさらに添加する工程を包含することが好ましい。
【0057】
本発明に係る培地用添加剤は、初代培養幹細胞を培養するために、PDGF、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの脂肪酸、並びにEGF、CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子を含有することを特徴としている。
【0058】
本発明に係る培地添加剤は、FGF、TGF-β及びHGFからなる群より選択される少なくとも1つの因子をさらに含有してもよい。
【0059】
本発明に係る培地用添加剤において、上記リン脂質は、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン、及びフォスファチジルグリセロールからなる群より選択されることが好ましい。
【0060】
本発明に係る培地用添加剤において、上記脂肪酸は、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群より選択されることが好ましく、栄養学的必須脂肪酸であるリノール酸、リノレイン酸及びアラキドン酸が特に好ましい。
【0061】
本発明に係る培地用添加剤は、コレステロールをさらに含有してもよい。
【0062】
本発明に係る培地用添加剤は、脂質酸化防止剤をさらに含有してもよい。
【0063】
本発明に係る培地用添加剤において、上記脂質酸化防止剤はDL-α-トコフェロールアセテート(ビタミンE)であることが好ましい。
【0064】
本発明に係る培地用添加剤は、界面活性剤をさらに含有してもよい。
【0065】
本発明に係る培地用添加剤において、上記界面活性剤はPluronic F-68又はTween 80であることが好ましいが、他の界面活性剤であってもよい。
【0066】
本発明に係る培地用添加剤は、インスリン、トランスフェリン(transferrin)及びセレネート(selenate)をさらに含有してもよい。
【0067】
本発明に係る培地用添加剤は、デキサメタゾン(Dexamethasone)、または他のグルココルチコイドをさらに含有してもよい。
【0068】
本発明に係る培地用添加剤キットは、初代培養幹細胞を培養するために、PDGF、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの脂肪酸、並びにEGF、CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子を備えていることを特徴としている。
【0069】
本発明に係る培地添加剤キットは、FGF、TGF-β及びHGFからなる群より選択される少なくとも1つの因子をさらに備えてもよい。
【0070】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記リン脂質は、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン、及びフォスファチジルグリセロールからなる群より選択されることが好ましい。
【0071】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記脂肪酸は、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群より選択されることが好ましく、栄養学的必須脂肪酸であるリノール酸、リノレイン酸及びアラキドン酸が特に好ましい。
【0072】
本発明に係る培地用添加剤キットは、コレステロールをさらに備えていてもよい。
【0073】
本発明に係る培地用添加剤キットは、脂質酸化防止剤をさらに備えていてもよい。
【0074】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記脂質酸化防止剤はDL-α-トコフェロールアセテート(ビタミンE)であることが好ましい。
【0075】
本発明に係る培地用添加剤キットは、界面活性剤をさらに備えていてもよい。
【0076】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記界面活性剤はPluronic F-68又はTween 80であることが好ましいが、他の界面活性剤であってもよい。
【0077】
本発明に係る培地用添加剤キットは、インスリン、トランスフェリン(transferrin)及びセレネート(selenate)をさらに備えていてもよい。
【0078】
本発明に係る培地用添加剤キットは、デキサメタゾン(Dexamethasone)、または他のグルココルチコイドをさらに備えていてもよい。
【0079】
本発明に係る培養方法は、初代培養幹細胞を培養するために、PDGF、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの脂肪酸、並びにEGF、CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子を基礎培地に同時に添加する工程を包含することを特徴としている。
【0080】
本発明に係る培養方法は、上記基礎培地に、FGF、TGF-β及びHGFからなる群より選択される少なくとも1つの因子を添加する工程をさらに包含してもよい。
【0081】
本発明に係る培地用添加剤は、マウス線維芽細胞を連続継代培養するために、TGF-β、PDGF、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの脂肪酸、並びにEGF、CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子を含有することを特徴としている。
【0082】
本発明に係る培地用添加剤は、FGF及び/又はHGFをさらに含有してもよい。
【0083】
本発明に係る培地用添加剤において、上記リン脂質は、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン、及びフォスファチジルグリセロールからなる群より選択されることが好ましい。
【0084】
本発明に係る培地用添加剤において、上記脂肪酸は、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群より選択されることが好ましく、栄養学的必須脂肪酸であるリノール酸、リノレイン酸及びアラキドン酸が特に好ましい。
【0085】
本発明に係る培地用添加剤は、コレステロールをさらに含有してもよい。
【0086】
本発明に係る培地用添加剤は、脂質酸化防止剤をさらに含有してもよい。
【0087】
本発明に係る培地用添加剤において、上記脂質酸化防止剤はDL-α-トコフェロールアセテート(ビタミンE)であることが好ましい。
【0088】
本発明に係る培地用添加剤は、界面活性剤をさらに含有してもよい。
【0089】
本発明に係る培地用添加剤において、上記界面活性剤はPluronic F-68又はTween 80であることが好ましいが、他の界面活性剤であってもよい。
【0090】
本発明に係る培地用添加剤は、インスリン、トランスフェリン(transferrin)及びセレネート(selenate)をさらに含有してもよい。
【0091】
本発明に係る培地用添加剤は、デキサメタゾン(Dexamethasone)、または他のグルココルチコイドをさらに含有してもよい。
【0092】
本発明に係る培地用添加剤キットは、マウス線維芽細胞を連続継代培養するために、TGF-β、PDGF、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの脂肪酸、並びにEGF、CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子を備えていることを特徴としている。
【0093】
本発明に係る培地用添加剤キットは、FGF及び/又はHGFをさらに備えていてもよい。
【0094】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記リン脂質は、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン、及びフォスファチジルグリセロールからなる群より選択されることが好ましい。
【0095】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記脂肪酸は、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群より選択されることが好ましく、栄養学的必須脂肪酸であるリノール酸、リノレイン酸及びアラキドン酸が特に好ましい。
【0096】
本発明に係る培地用添加剤キットは、コレステロールをさらに備えていてもよい。
【0097】
本発明に係る培地用添加剤キットは、脂質酸化防止剤をさらに備えていてもよい。
【0098】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記脂質酸化防止剤はDL-α-トコフェロールアセテート(ビタミンE)であることが好ましい。
【0099】
本発明に係る培地用添加剤キットは、界面活性剤をさらに備えていてもよい。
【0100】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記界面活性剤はPluronic F-68又はTween 80であることが好ましいが、他の界面活性剤であってもよい。
【0101】
本発明に係る培地用添加剤キットは、インスリン、トランスフェリン(transferrin)及びセレネート(selenate)をさらに備えていてもよい。
【0102】
本発明に係る培地用添加剤キットは、デキサメタゾン(Dexamethasone)、または他のグルココルチコイドをさらに備えていてもよい。
【0103】
本発明に係る培養方法は、マウス線維芽細胞を連続継代培養するために、TGF-β、PDGF、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの脂肪酸、並びにEGF、CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子を、基礎培地に同時に添加する工程を包含することを特徴としている。
【0104】
本発明に係る培養方法は、上記基礎培地に、FGF及び/又はHGFを添加する工程をさらに包含してもよい。
【0105】
本発明に係る培地用添加剤は、チャイニーズハムスター卵巣由来細胞を連続継代培養するために、PDGF、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの脂肪酸、並びにEGF、CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子を含有することを特徴としている。
【0106】
本発明に係る培地用添加剤は、FGF、TGF-β及びHGFからなる群より選択される少なくとも1つの因子をさらに含有してもよい。
【0107】
本発明に係る培地用添加剤において、上記リン脂質は、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン、及びフォスファチジルグリセロールからなる群より選択されることが好ましい。
【0108】
本発明に係る培地用添加剤において、上記脂肪酸は、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群より選択されることが好ましく、栄養学的必須脂肪酸であるリノール酸、リノレイン酸及びアラキドン酸が特に好ましい。
【0109】
本発明に係る培地用添加剤は、コレステロールをさらに含有してもよい。
【0110】
本発明に係る培地用添加剤は、脂質酸化防止剤をさらに含有してもよい。
【0111】
本発明に係る培地用添加剤において、上記脂質酸化防止剤はDL-α-トコフェロールアセテート(ビタミンE)であることが好ましい。
【0112】
本発明に係る培地用添加剤は、界面活性剤をさらに含有してもよい。
【0113】
本発明に係る培地用添加剤において、上記界面活性剤はPluronic F-68又はTween 80であることが好ましいが、他の界面活性剤であってもよい。
【0114】
本発明に係る培地用添加剤は、インスリン、トランスフェリン(transferrin)及びセレネート(selenate)をさらに含有してもよい。
【0115】
本発明に係る培地用添加剤は、デキサメタゾン(Dexamethasone)、または他のグルココルチコイドをさらに含有してもよい。
【0116】
本発明に係る培地用添加剤キットは、チャイニーズハムスター卵巣由来細胞を連続継代培養するために、PDGF、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの脂肪酸、並びにEGF、CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子を備えていることを特徴としている。
【0117】
本発明に係る培地用添加剤キットは、FGF、TGF-β及びHGFからなる群より選択される少なくとも1つの因子をさらに備えていてもよい。
【0118】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記リン脂質は、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン、及びフォスファチジルグリセロールからなる群より選択されることが好ましい。
【0119】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記脂肪酸は、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群より選択されることが好ましく、栄養学的必須脂肪酸であるリノール酸、リノレイン酸及びアラキドン酸が特に好ましい。
【0120】
本発明に係る培地用添加剤キットは、コレステロールをさらに備えていてもよい。
【0121】
本発明に係る培地用添加剤キットは、脂質酸化防止剤をさらに備えていてもよい。
【0122】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記脂質酸化防止剤はDL-α-トコフェロールアセテート(ビタミンE)であることが好ましい。
【0123】
本発明に係る培地用添加剤キットは、界面活性剤をさらに備えていてもよい。
【0124】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記界面活性剤はPluronic F-68又はTween 80であることが好ましいが、他の界面活性剤であってもよい。
【0125】
本発明に係る培地用添加剤キットは、インスリン、トランスフェリン(transferrin)及びセレネート(selenate)をさらに備えていてもよい。
【0126】
本発明に係る培地用添加剤キットは、デキサメタゾン(Dexamethasone)、または他のグルココルチコイドをさらに備えていてもよい。
【0127】
本発明に係る培養方法は、チャイニーズハムスター卵巣由来細胞を連続継代培養するために、PDGF、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの脂肪酸、並びにEGF、CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子を、基礎培地に同時に添加する工程を包含することを特徴としている。
【0128】
本発明に係る培養方法は、上記基礎培地に、FGF、TGF-β及びHGFからなる群より選択される少なくとも1つの因子を添加する工程をさらに包含してもよい。
【0129】
本発明に係る培地用添加剤は、ヒト皮膚由来線維芽細胞を連続継代培養するために、FGF、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの脂肪酸、並びにEGF、CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子を含有することを特徴としている。
【0130】
本発明に係る培地用添加剤は、TGF-β、HGF及びPDGFからなる群より選択される少なくとも1つの因子をさらに含有してもよい。
【0131】
本発明に係る培地用添加剤において、上記リン脂質は、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン、及びフォスファチジルグリセロールからなる群より選択されることが好ましい。
【0132】
本発明に係る培地用添加剤において、上記脂肪酸は、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群より選択されることが好ましく、栄養学的必須脂肪酸であるリノール酸、リノレイン酸及びアラキドン酸が特に好ましい。
【0133】
本発明に係る培地用添加剤は、コレステロールをさらに含有してもよい。
【0134】
本発明に係る培地用添加剤は、脂質酸化防止剤をさらに含有してもよい。
【0135】
本発明に係る培地用添加剤において、上記脂質酸化防止剤はDL-α-トコフェロールアセテート(ビタミンE)であることが好ましい。
【0136】
本発明に係る培地用添加剤は、界面活性剤をさらに含有してもよい。
【0137】
本発明に係る培地用添加剤において、上記界面活性剤はPluronic F-68又はTween 80であることが好ましいが、他の界面活性剤であってもよい。
【0138】
本発明に係る培地用添加剤は、インスリン、トランスフェリン(transferrin)及びセレネート(selenate)をさらに含有してもよい。
【0139】
本発明に係る培地用添加剤は、デキサメタゾン(Dexamethasone)、または他のグルココルチコイドをさらに含有してもよい。
【0140】
本発明に係る培地用添加剤キットは、ヒト皮膚由来線維芽細胞を連続継代培養するために、FGF、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの脂肪酸、並びにEGF、CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子を備えていることを特徴としている。
【0141】
本発明に係る培地用添加剤キットは、TGF-β、HGF及びPDGFからなる群より選択される少なくとも1つの因子をさらに備えていてもよい。
【0142】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記リン脂質は、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン、及びフォスファチジルグリセロールからなる群より選択されることが好ましい。
【0143】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記脂肪酸は、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群より選択されることが好ましく、栄養学的必須脂肪酸であるリノール酸、リノレイン酸及びアラキドン酸が特に好ましい。
【0144】
本発明に係る培地用添加剤キットは、コレステロールをさらに備えていてもよい。
【0145】
本発明に係る培地用添加剤キットは、脂質酸化防止剤をさらに備えていてもよい。
【0146】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記脂質酸化防止剤はDL-α-トコフェロールアセテート(ビタミンE)であることが好ましい。
【0147】
本発明に係る培地用添加剤キットは、界面活性剤をさらに備えていてもよい。
【0148】
本発明に係る培地用添加剤キットにおいて、上記界面活性剤はPluronic F-68又はTween 80であることが好ましいが、他の界面活性剤であってもよい。
【0149】
本発明に係る培地用添加剤キットは、インスリン、トランスフェリン(transferrin)及びセレネート(selenate)をさらに備えていてもよい。
【0150】
本発明に係る培地用添加剤キットは、デキサメタゾン(Dexamethasone)、または他のグルココルチコイドをさらに備えていてもよい。
【0151】
本発明に係る培養方法は、ヒト皮膚由来線維芽細胞を連続継代培養するために、FGF、少なくとも1つのリン脂質、少なくとも1つの脂肪酸、並びにEGF、CTGF、VEGF及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子を、基礎培地に同時に添加する工程を包含することを特徴としている。
【0152】
本発明に係る培養方法は、上記基礎培地に、TGF-β、HGFおよびPDGFからなる群より選択される少なくとも1つの因子を添加する工程をさらに包含してもよい。
【0153】
本発明の他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分分かるであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】無血清培地への血清代替物質の添加によるヒト間葉系幹細胞(MSC)の増殖に対する影響を示した図である。
【図2】無血清培地中で培養したヒト間葉系幹細胞(MSC)の形態学的な変化を示す図である。
【図3】無血清培地中で培養したヒト間葉系幹細胞(MSC)の骨分化能の評価を示す図である。
【図4】無血清培地中で培養したヒト間葉系幹細胞(MSC)の脂肪分化能の評価を示す図である。
【図5】無血清培地中で培養したヒト間葉系幹細胞(MSC)の軟骨分化能の評価を示す図である。
【図6】無血清培地中で培養したヒト間葉系幹細胞(MSC)の軟骨分化能の評価を示す図である。
【図7】無血清培地への血清代替物質の添加によるヒト間葉系幹細胞(MSC)の増殖に対する影響を示した図である。
【図8】無血清培地への血清代替物質の添加によるヒト間葉系幹細胞(MSC)の増殖に対する影響を示した図である。
【図9】無血清培地への血清代替物質の添加によるヒト間葉系幹細胞(MSC)の増殖に対する影響を示した図である。
【図10】無血清培地への血清代替物質の添加によるC2C12細胞の増殖に対する影響を示した図である。
【図11】無血清培地への血清代替物質の添加によるヒト間葉系幹細胞(MSC)の細胞増殖シグナル伝達系に対する影響を示した図である。
【図12】無血清培地への血清代替物質の添加によるヒト間葉系幹細胞(MSC)の細胞増殖シグナル伝達系に対する影響を示した図である。
【図13】間葉系幹細胞(MSC)の無血清培地に添加する血清代替物質を示す図である。
【図14】C2C12細胞の無血清培地に添加する血清代替物質を示す図である。
【図15(a)】無血清培地への血清代替物質の添加によるヒト間葉系幹細胞(MSC)の増殖に対する影響を示した図である。
【図15(b)】無血清培地への血清代替物質の添加によるヒト間葉系幹細胞(MSC)の増殖に対する影響を示した図である。
【図16(a)】無血清培地への血清代替物質の添加による初代ヒト間葉系幹細胞(MSC)の増殖に対する影響を示した図である。
【図16(b)】無血清培地への血清代替物質の添加による初代ヒト間葉系幹細胞(MSC)の増殖に対する影響を示した図である。
【図17(a)】無血清培地への血清代替物質の添加による10T1/2細胞の増殖に対する影響を示した図である。
【図17(b)】無血清培地への血清代替物質の添加によるCHO細胞の増殖に対する影響を示した図である。
【図17(c)】無血清培地への血清代替物質の添加によるヒトのヒフ由来の線維芽細胞(Fibroblast)の増殖に対する影響を示した図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0155】
上述したように、血清を含まない培地(無血清培地)において増殖性を失わせることなく細胞を培養するために、各種ペプチドホルモン、増殖因子、脂質等が用いられている。しかし、これらの血清代替成分を添加した培地は、血清含有培地と比較して、十分な細胞増殖促進効果を必ずしも有していない。そこで、本発明者らは、低血清(0.5~2%)の条件下であっても、10%血清含有培地を用いる従来の培養方法に匹敵するヒト間葉系幹細胞培養法を検討した。その結果、特定の増殖因子群と脂肪酸複合物とを基礎培地に添加することにより、低血清条件下であっても10%血清の場合と同等以上の細胞増殖を導くことを見出し、ヒト間葉系幹細胞を培養するための「基本培地」を完成させた。また、この条件をさらに検討することにより、特定の因子をさらに添加することにより無血清条件下であっても10%血清の場合と同等以上の細胞増殖を導く条件を見出した。
【0156】
本発明を用いれば、動物細胞を低血清条件下又は無血清条件下の培養系において大量に増殖させることができる。特に、間葉系幹細胞のような再生医療用途を有する細胞について、試験管内だけでなく工業規模での細胞増殖を実現し得、生産コストを大きく低減し得る。
【0157】
(1)動物細胞を無血清培養するための培地用添加剤
本発明は、動物細胞を無血清培養するための培地用添加剤を提供する。本発明に係る培地用添加剤は、FGF、PDGF、TGF-βおよびHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を含有している。
【0158】
本発明に係る培地用添加剤が含有しているリン脂質としては、例えば、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン及びフォスファチジルグリセロールなどが挙げられ、本発明に係る培地用添加剤はこれらのリン脂質を単独で含有しても組み合わせて含有してもよい。一実施形態において、本発明に係る培地用添加剤はフォスファチジン酸とフォスファチジルコリンとを組み合わせて含有している。また、これらのリン脂質は、動物由来であっても、植物由来であってもよい。
【0159】
一実施形態において、本発明に係る培地用添加剤は、少なくとも1つの脂肪酸をさらに含有していることが好ましい。本実施形態に係る培地用添加剤が含有している脂肪酸としては、例えば、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸及びステアリン等が挙げられ、本実施形態に係る培地用添加剤はこれらの脂肪酸を単独で含有しても組み合わせて含有してもよい。また、本実施形態に係る培地用添加剤は、上記脂肪酸以外にさらにコレステロールを含有していてもよい。
【0160】
本明細書中で使用される場合、FGFは、線維芽細胞増殖因子(FGF:fibroblast growth factor)ファミリーから選択される増殖因子が意図され、FGF-2(bFGF)であることが好ましいが、FGF-1など他のFGFファミリーから選択されてもよい。また、本明細書中で使用される場合、PDGFは、血小板由来増殖因子(PDGF:platelet derived growth factor)ファミリーから選択される増殖因子が意図され、PDGF-BBまたはPDGF-ABであることが好ましい。さらに、本明細書中で使用される場合、TGF-βは、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β:transforming growth factor-β)ファミリーから選択される増殖因子が意図され、TGF-βであることが好ましいが、他のTGF-βファミリーから選択されてもよい。
【0161】
本発明に係る培地用添加剤は、上皮増殖因子(EGF:epidermal growth factor)、結合組織増殖因子(CTGF:connective tissue growth factor)、血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)及びアスコルビン酸化合物からなる群より選択される少なくとも2つの因子をさらに含有していてもよい。
【0162】
本明細書中で使用される場合、アスコルビン酸化合物は、アスコルビン酸(ビタミンC)もしくはアスコルビン酸2リン酸、またはこれらに類似する化合物が意図される。
【0163】
なお、本発明に係る培地用添加剤に含有されている増殖因子は、天然のものであっても、遺伝子組換えによって製造されたものであってもよい。
【0164】
1つの局面において、本発明に係る培地用添加剤は、脂質酸化防止剤を含有していることが好ましい。一実施形態において、本実施形態に係る培地用添加剤に含有される脂質酸化防止剤は、DL-α-トコフェロールアセテート(ビタミンE)であり得る。本発明に係る培地用添加剤はまた、界面活性剤をさらに含有していてもよい。一実施形態において、本実施形態に係る培地用添加剤に含有される界面活性剤はPluronic F-68またはTween 80であり得る。
【0165】
本発明に係る培地用添加剤は、インスリン、トランスフェリンおよびセレネートをさらに含有していてもよい。本明細書中で使用される場合、インスリンは、インスリン様増殖因子であってもよく、天然の細胞由来であっても、遺伝子組換えによって製造されたものでもよい。本発明に係る培地用添加剤はさらに、デキサメタゾン、あるいは他のグルココルチコイドを含有していてもよい。
【0166】
(2)動物細胞を無血清培養するためのキット
本発明は、動物細胞を無血清培養するための培地用添加剤キットを提供する。本発明に係る培地用添加剤キットは、FGF、PDGF、TGF-βおよびHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を備えている。本発明に係る培地用添加剤キットは、FGF、PDGF、TGF-βおよびHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子と、少なくとも1つのリン脂質とを同一容器内に備えていても、これらの成分を別々に備えていてもよい。
【0167】
一実施形態において、本発明に係る培地用添加剤キットは、少なくとも1つの脂肪酸をさらに備えていることが好ましい。本実施形態に係る培地用添加剤キットは、FGF、PDGF、TGF-βおよびHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子と、少なくとも1つのリン脂質と、少なくとも1つの脂肪酸とを同一容器内に備えていても、これらの成分を別々に備えていてもよい。
【0168】
本明細書中で使用される場合、「組成物」は各主成分が一物質中に含有されている形態であり、「キット」は各主成分の少なくとも1つが別物質中に含有されている形態であることが意図される。よって、本発明に係る培地用添加剤キットに備えられている増殖因子、リン脂質及び脂肪酸は、培地用添加剤について上述したものと同一であることが容易に理解される。
【0169】
(3)動物細胞を無血清培養するための培養培地
本発明は、動物細胞を無血清培養するための培養培地を提供する。本発明に係る培養培地は、FGF、PDGF、TGF-βおよびHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を含有している。本発明に係る培養培地は、FGF、PDGF、TGF-βおよびHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子と、少なくとも1つのリン脂質とを含有していればよく、これらの成分は基礎培地に同時に添加されても別々に添加されてもよい。すなわち、本発明に係る培養培地は、上述した培地用添加剤に含有されている成分または培地用添加剤キット中に備えられている成分を含んでいればよいといえる。
【0170】
一実施形態において、本発明に係る培養培地は、少なくとも1つの脂肪酸をさらに含有していることが好ましい。本実施形態に係る培地用添加剤キットは、FGF、PDGF、TGF-βおよびHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子と、少なくとも1つのリン脂質と、少なくとも1つの脂肪酸とを含有していればよく、これらの成分は基礎培地に同時に添加されても別々に添加されてもよい。すなわち、本発明に係る培養培地は、上述した培地用添加剤に含有されている成分または培地用添加剤キット中に備えられている成分を含んでいればよいといえる。
【0171】
本発明に係る培養培地を構成するための基礎培地は、当該分野において周知の動物細胞用培地であれば特に限定されず、好ましい基礎培地としては、例えば、Ham’s F12培地、DMEM培地、RPMI-1640培地、MCDB培地などが挙げられる。これらの基礎培地は、単独で使用されても、複数を混合して使用されてもよい。一実施形態において、本発明に係る培養培地を構成するための基礎培地は、MCDBとDMEMとを1:1の比率で混合した培地が好ましい。
【0172】
(4)動物細胞を無血清培養するための培養方法
本発明は、動物細胞を無血清培養するための培養方法を提供する。本発明に係る培養方法は、FGF、PDGF、TGF-βおよびHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を含有している培養培地中において動物細胞を培養する工程を包含している。上記培養培地は、少なくとも1つの脂肪酸をさらに含有していてもよい。すなわち、本発明に係る培養方法は、動物細胞を培養する際に、上述した培養培地を用いればよいといえる。
【0173】
一実施形態において、本発明に係る培養方法は、FGF、PDGF、TGF-β及びHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質とを、基礎培地に同時に添加する工程を包含してもよい。上記基礎培地は、上述したように当該分野において周知の動物細胞用培地であれば特に限定されない。
【0174】
(5)さらなる用途
上述したように、本発明は、無血清培地であっても10%血清含有培地において培養した場合と同等又はそれ以上の速度で、動物細胞をその特性を保持したまま増殖させることができる。本発明に従って幹細胞(特に、ヒト間葉系幹細胞)を培養すると、その特性(骨分化能、脂肪分化能など)を高レベルに維持したまま連続的に継代培養することができる。実施例に示すように、本発明に係る無血清培地を用いれば、培養開始時の少なくとも10000倍以上に細胞数を増やすことができる。すなわち、本発明はまた、幹細胞を連続継代培養するための培地用添加剤、培地用添加剤キット、培養培地及び培養方法を提供する。
【0175】
1つの局面において、本発明は、幹細胞を連続継代培養するための培地用添加剤を提供する。本発明に係る培地用添加剤は、FGF、PDGF、TGF-βおよびHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を含有している。一実施形態において、本発明に係る培地用添加剤は、少なくとも1つの脂肪酸をさらに含有していることが好ましい。
【0176】
他の局面において、本発明は、幹細胞を連続継代培養するための培地用添加剤キットを提供する。本発明に係る培地用添加剤キットは、FGF、PDGF、TGF-βおよびHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を含有している。一実施形態において、本発明に係る培地用添加剤キットは、少なくとも1つの脂肪酸をさらに含有していることが好ましい。
【0177】
別の局面において、本発明は、幹細胞を連続継代培養するための培養培地を提供する。本発明に係る培養培地は、FGF、PDGF、TGF-βおよびHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を含有している。一実施形態において、本発明に係る培養培地は、少なくとも1つの脂肪酸をさらに含有していることが好ましい。
【0178】
さらなる局面において、本発明は、幹細胞を連続継代培養するための培養方法を提供する。本発明に係る培養方法は、FGF、PDGF、TGF-βおよびHGFからなる群より選択される少なくとも3つの増殖因子、並びに少なくとも1つのリン脂質を含有している培養培地中において動物細胞を培養する工程を包含している。上記培養培地は、少なくとも1つの脂肪酸をさらに含有していてもよい。すなわち、本発明に係る培養方法は、幹細胞を連続継代培養する際に、上述した培養培地を用いればよいといえる。
【0179】
なお、実施例において詳述するように、本発明は、幹細胞などの未分化細胞に対してより強い効果を示すが、特別な分化能を失って未分化状態に近い細胞(例えば、サル腎臓由来のCOS細胞)の無血清条件での培養においても非常に有効である。すなわち、本発明の適用対象となり得る細胞は、未分化細胞が好ましく、未分化細胞は、骨髄未分化間葉系幹細胞、骨格筋幹細胞、造血系幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、脂肪組織幹細胞、脂肪前駆細胞、血管内皮前駆細胞、軟骨前駆細胞、リンパ球系前駆細胞、NK前駆細胞、胚性幹細胞等の幹細胞、または線維芽細胞であり得、間葉系幹細胞がより好ましい。なお、これらの細胞を用いる際に留意すべき培養方法は、各細胞について既知の培養方法に従えばよい。
【0180】
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様および以下の実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
【0181】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0182】
〔材料の調製〕
10mgの3-sn-phosphatidylcholine from egg yolk(PC,Wako:163-21181)又は3-sn-phosphatidic acid from egg yolk(PA,Sigma:P9511)を0.01%Tween80(-)を含有するPBS10mlに添加し、次いで、超音波を用いてこの液体を5分間懸濁した。この懸濁液を、氷中にて30秒間超音波処理した後、室温にて5分間遠心分離(2500rpm)した。沈殿が生じた場合は氷上にて5分間さらに超音波処理を行い、沈殿が消失するまでこの操作を繰り返した。得られた溶液を0.45μm径のフィルターにて濾過し、窒素ガスで封入した後、遮光下にて冷蔵保存した。これらをいずれも培地の1/100量添加した。脂肪酸複合体としてのChemically defined lipid concentrate(CD,Gibco:11905-031)を培地の1/100量添加した。なお、この脂肪酸複合体に含有される脂質を図13及び図14に示す。図13は、間葉系幹細胞(MSC)の培養に用いた培地中の成分を示し、図14は、C2C12細胞の培養に用いた培地中の成分を示す。なお、これらの成分については、図13及び図14に示した値の上限より高濃度であってもよい。
【0183】
300ng/mlのFGF-2を、1mg/ml BSA(ウシ血清アルブミン)を含む培地に溶解してストック溶液(100倍溶液)を作製した。1000ng/mlのEGFを、培地に溶解してストック溶液(100倍溶液)を作製した。1000μg/mlのInsulinを培地に溶解してストック溶液(100倍溶液)を作製した。これらをいずれも100倍希釈で使用した。Dexamethasoneを最終濃度10-8Mで使用した。
【0184】
〔実施例1:骨髄由来の間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)の無血清培養〕
〔I:リン脂質の効果〕
ヒト腸骨骨髄由来の間葉系幹細胞(3継代目:Bio-Whittaker社(Walkersville,MD)より購入)を、血清を含まないDMEM培地で3回洗浄した後、細胞を24ウェルのプレートに5000個/cm2の密度で播種し、5%CO2存在下のCO2インキュベータ内にて37℃で培養した。
【0185】
基礎培地としてのDMEM/MCDB=1:1に以下の添加物を添加して培養に用いた:
(培地1)添加なし
(培地2)10%FBS(ウシ胎仔血清)
(培地3)増殖因子群及び脂肪酸群
(培地4)増殖因子群及び脂肪酸群、並びにリン脂質(PA、PC)。
【0186】
なお、ウシ胎仔血清(FBS)の成分はロット毎に差があるので、FBSのロット毎に培養細胞への増殖効果が異なる。そこで、本実施例において培地2に添加するFBSとして、間葉系幹細胞に特に高い増殖効果をもたらすものを用いた。
【0187】
無血清培地の基礎培地の組成を表1に示す。培地に添加した種々の成分は図13及び図14に示した会社から購入した。基礎培地であるMCDB201(Sigma:M-6770)培地は、ニワトリ胚線維芽細胞のクローン増殖用に開発されたものであり、完全な微量元素(trace element)を含んでいる。従来の間葉系幹細胞の基礎培地DMEM又はDMEM/Ham’s F-12と比べて、MCDB201/DMEM(1:1)を用いることにより、間葉系幹細胞の最適な増殖促進が示された(図示せず)。
【0188】
【表1】
JP0004385076B2_000002t.gif
JP0004385076B2_000003t.gif
【0189】
本発明に係る基本培地(培地3)は、増殖因子群(FGF、HGF、TGF-β、PDGF)及び脂肪酸複合物(アラキドン酸、レチノイン酸、リノレン酸、オレイン酸、リノレイン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸及びステアリン酸)を含み、これら以外に、培地添加サプリメントとして知られるインスリン、トランスフェリン、セレネート(セレン酸ナトリウムなど)、並びにコレステロール、デキサメタゾン(Dex)、ウシ血清アルブミン(BSA)を含み、脂質酸化防止剤としてのビタミンE、界面活性剤としてのPluronic F-68及びTween 80をさらに含んでいる。
【0190】
各々の培地毎に実験を三連にて行った(n=3)。培地を2日又は3日毎に交換した。細胞を、コンフルエントになる前にPBSで2回洗浄し、0.05%トリプシン及び0.2mM EDTAを含有するPBS中にて2分間インキュベートすることにより、プレートから剥離し、血清を含有しない植物由来のTrypsin inhibitor(Sigma:T6522)とともに再懸濁させた。血清を含まないDMEM培地で細胞を3回洗浄した後、細胞数をCoulterカウンター(Z1シングル、コールター社製)で計測した。結果を図1に示す。
【0191】
また、細胞を継代するために、各々の培地を使用して、再懸濁した細胞を24ウェルプレートに5000個/cm2の密度で再播種した。7日毎に継代培養を繰り返して、5継代目まで培養した。各々の培地毎に実験を三連にて行った実験の平均値±SDを図1に示す(n=3)。
【0192】
本発明に係る基本培地(培地3)は、2%FBSを添加すると従来の10%FBS含有培地と同等の細胞増殖効果を示した(図示せず)。この基本培地を無血清条件下で用いた場合、10%FBS含有培地よりは劣るが、優れた細胞増殖効果を示した(10%FBS含有培地における細胞増殖レベルの約45%:図1)。基本培地(培地3)に動物由来のリン脂質(フォスファチジン酸(PA)、フォスファチジルコリン(PC))をさらに添加した場合(培地4)、血清非存在下であっても優れた細胞増殖効果を示した(10%FBS含有培地における細胞増殖レベルの約8.5倍:図1)。
【0193】
以上より、増殖因子群及び脂肪酸群を含有する無血清培地中にリン脂質を添加することにより、ヒト間葉系幹細胞の無血清培養を有意に改善することができることがわかった。
【0194】
〔II:脂肪酸の効果〕
次いで、基本培地における脂肪酸の重要性について検討した。
(培地1)添加なし
(培地2)10%FBS(ウシ胎仔血清)
(培地3)増殖因子群及び脂肪酸群
(培地5)増殖因子群+リノレイン酸+レシチン+EGF+ビタミンC(VC)。
【0195】
培地5は、基本培地(培地3)からリノレイン酸以外の脂肪酸群を除去して植物由来のリン脂質(レシチン)を添加した。なお、植物由来のリン脂質(レシチン)は以下の方法で調製した。
【0196】
植物由来のレシチン(Lecithin from Soybean,Wako:120-00832)200mgをクロロホルム(Chloroform)に添加した。これを、窒素ガス蒸留法を用いて乾燥させた後、PBS(-)20mlを添加した。この溶液を、室温にて15分間超音波処理を行うことにより平衡化し、窒素ガス下で氷上にてさらに30秒~2分間超音波処理を行った後、室温にて5分間遠心分離(2500rpm)した。沈殿があればさらに氷上にて5分間超音波処理を行った後、室温にて5分間遠心分離(2500rpm)した。この工程を繰り返した後に回収した上清を0.45μm径のフィルターにて濾過し、窒素ガスで封入した後、遮光下にて冷蔵保存した。
【0197】
図1に示すように、培地5は、血清非存在下であっても基本培地(培地3)と同等の優れた細胞増殖効果を示した(10%FBS含有培地における細胞増殖レベルの約40%:図1)。
【0198】
以上より、増殖因子群を含有する無血清培地中に脂肪酸が少なくとも1種類含まれていれば、ヒト間葉系幹細胞の無血清培養におけるリン脂質の効果を導くことができることがわかった。
【0199】
〔III:増殖因子の効果〕
次いで、基本培地(培地3)から増殖因子をいずれか1つ除去した培地を用いて、無血清条件下での間葉系幹細胞の増殖を比較することにより、培地中に添加する増殖因子について検討した:
(培地1)添加なし
(培地3)増殖因子群及び脂肪酸群
(培地3-1)培地3よりPDGFのみを除去
(培地3-2)培地3よりTGF-βのみを除去
(培地3-3)培地3よりHGFのみを除去
(培地3-4)培地3よりFGFのみを除去
(培地3-5)培地3よりデキサメタゾン(Dex)のみを除去。
(培地3-6)培地3よりインスリン、トランスフェリン、セレネートを除去。
【0200】
図1に示すように、増殖因子群に含まれる増殖因子が1つでも欠落すると無血清条件下での間葉系幹細胞の活発な増殖は阻害されることがわかった。例えば、HGF、TGF-βのみを除去すると本培養での増殖が明らかに低下した。また、HGF及びTGF-βの両者を除去すると細胞増殖は著しく阻害された(データ示さず)。
【0201】
また、図1には示さないが、リン脂質に加えてEGF及びVCをさらに添加した培地(培地4+EGF+VC)を用いることにより無血清培地での間葉系幹細胞の増殖をさらに促進し得ることがわかった(図10:培地4-2)。
【0202】
〔IV:培地による間葉系幹細胞の形態に対する影響〕
本実施例において用いた無血清培地にて培養した間葉系幹細胞の形態を図2に示す。図2に示されるように、無血清培地で培養した細胞(3継代目)は、10%FBS含有培地で培養した細胞と比較して、間葉系幹細胞に典型的な紡錘形の形を示していた。また、TGF-β又はHGFのみを除いた無血清培地では、細胞増殖が低減した。
【0203】
〔実施例2:無血清培養した間葉系幹細胞の分化能の評価〕
〔I:骨芽細胞への分化誘導〕
実施例1にて示した無血清培地を用いて増殖させた間葉系幹細胞の分化能を評価するために、無血清培地にて連続的に継代培養した3代目のヒト腸骨由来の間葉系幹細胞を収集した後、骨分化誘導培地(α-MEM、10% FBS、100nM Dexamethasone、10mM β-Glycerophosphoric acid、及び50μg/ml L-Ascorbic acid 2-phosphateを含む。)へ移した。骨分化誘導培地中の間葉系幹細胞を、5%炭酸ガス存在下にて37℃で培養し、さらに2~3日おきに同一の分化誘導培地と交換し、合計28日間培養した。骨分化して石灰化した細胞層をアリザリン赤にて染色した。結果を図3に示す。
【0204】
図3に示すように、無血清培地で培養した間葉系幹細胞(4継代目)を骨分化誘導培地で28日間培養した結果、骨芽細胞に特徴的な石灰化を示すアリザリン赤による染色性を示し、カルシウムの沈着が観察された。しかも、10%FBS含有培地と比較して、無血清培地で培養した間葉系幹細胞はいずれも、高い骨分化能力(石灰化能)を保持していた。特に、2種類のリン脂質を追加したもので最も高い骨分化能が観察された。
【0205】
〔II:脂肪細胞への分化誘導〕
実施例1にて示した無血清培地を用いて増殖させた間葉系幹細胞の分化能を評価するために、無血清培地にて連続的に継代培養した3代目のヒト腸骨由来の間葉系幹細胞をコンフルエントになるまで増殖させ、トリプシンにて分散させた後に収集し、脂肪分化誘導培地(高グルコース含有DMEM、10μg/ml Insulin、0.2mM Indomethacin、1μM Dexamethasone、0.5mM 3-Isobutyl-1-methylxanthine、及び10%FBSからなる)に移した。脂肪分化誘導培地中の間葉系幹細胞を、5%炭酸ガス存在下にて37℃で培養し、さらに2~3日おきに同一の分化誘導培地と交換し、合計28日間培養した。細胞をオイルレッドOにて染色することによって脂肪分化の評価を行った。結果を図4に示す。
【0206】
図4に示すように、無血清培地で培養した間葉系幹細胞(4継代目)を脂肪分化誘導培地で28日間培養した結果、脂肪を示すオイルレッドOによる染色性を示した。しかも、10%FBS含有培地と比較して、無血清培地で培養した間葉系幹細胞はいずれも、高い脂肪分化能力を保持していた。
【0207】
〔III:軟骨細胞への分化誘導〕
実施例1にて示した無血清培地を用いて増殖させた間葉系幹細胞の分化能を評価するために、無血清培地にて連続的に継代培養した5代目のヒト腸骨由来の間葉系幹細胞を収集した後、軟骨分化誘導培地(高グルコースα-MEM、10ng/mlTGF-β3、100nM Dexamethasone、50μg/ml L-Ascorbic acid 2‐phosphate、100μg/ml Sodium pyruvate、ITS-プラス(6.25μg/ml Transferrin、6.25μg/ml Insulin、6.25ng/ml selenate、5.33μg/ml linoleic acid、1.25mg/mlウシ血清アルブミン:BSA)を含む。)へ移した。なお、遠心管(15ml用)に、20万個の細胞を入れ、0.5-1mlの以下の培地でインキュベートした。また、上記の軟骨分化誘導培地からTGF-βを除いたコントロール培地に間葉系幹細胞を移した。軟骨分化誘導培地およびコントロール培地中の間葉系幹細胞を、5%炭酸ガス存在下にて37℃で培養した。培養開始から24時間後には、細胞は球状のペレットを形成した。さらに2~3日おきに同一の分化誘導培地と交換し、21日間培養した。硫酸化グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan:GAG)定量用キット(Biocolor社製)を用いて培養後のペレットのGAGを定量した。結果を図5に示す。なおGAG量は細胞のDNA含量によってノーマライズした。また、培養後の軟骨分化誘導培地中の軟骨分化した細胞をトルイジンブルーにより染色した。結果を図6に示す。
【0208】
図5に示すように、無血清培地および10%FBS含有培地で培養した間葉系幹細胞を軟骨分化誘導培地で21日間培養した結果、無血清培地で培養した間葉系幹細胞(5継代目)は、10%FBS含有培地で培養した間葉系幹細胞と比較して、著しく高いGAG量を示した(p<0.01)。なお、無血清培地および10%FBS培地で培養した間葉系幹細胞をそれぞれコントロール培地で21日間培養した結果、いずれの培地中においてもGAG量の増加が観察されなかった(数値は三連にて行った実験の平均値±SDを示す)。
【0209】
また、図6に示すように、無血清培地および10%FBS含有培地で培養した間葉系幹細胞を軟骨分化誘導培地で21日間培養した結果、無血清培地で培養した間葉系幹細胞(5継代目)は、10%FBS含有培地で培養した間葉系幹細胞と比較して、著しく高いレベルのトルイジンブルーによる染色性を示し、マトリックスの蓄積が観察された。
【0210】
〔実施例3:骨髄由来の間葉系幹細胞の無血清培養における増殖因子の作用〕
ヒト腸骨骨髄由来の間葉系幹細胞(3代目)を、血清を含まないDMEM培地で3回洗浄した後、細胞を24ウェルのプレートに5000個/cm2の密度で播種し、5%CO2存在下のCO2インキュベータ内にて37℃で培養した。
【0211】
基礎培地としてのDMEM/MCDB=1:1に以下の添加物を添加して培養に用いた:
(培地1)添加なし
(培地2)10%FBS(ウシ胎仔血清)
(培地3)増殖因子群及び脂肪酸群
(培地3-2)培地3よりTGF-βのみを除去
(培地3-3)培地3よりHGFのみを除去
(培地3-7)培地3よりTGF-β及びHGFを除去
(培地3-8)培地3+EGF
(培地3-9)培地3+VC
(培地4)増殖因子群及び脂肪酸群、並びにリン脂質(PA、PC)
(培地4-1)培地4+EGF+ビタミンC(VC)+ビタミンE(VE)
(培地5)増殖因子群+リノレイン酸+レシチン+EGF+VC。
【0212】
各々の培地毎に実験を三連にて行った(n=3)。培地を2日又は3日毎に交換した。培養8日目の細胞数をcell counting kit WST-8 (同仁化学)を用いて測定した。結果を図7に示す。
【0213】
図7に示すように、無血清培地(培地3-8、培地4、培地4-1、又は培地5)で培養した間葉系幹細胞は、培地3で培養した場合と比較して、培養8日目の細胞増殖率が亢進した(数値は三連にて行った実験の平均値±SDを示す)。特に、この効果は、培地4又は培地4-1で培養した場合に、顕著であった。このことより、リン脂質だけでなく、EGF、VC及び高濃度のVEもまた間葉系幹細胞の増殖を促進するに有効であることがわかった。一方、TGF-β又はHGFの少なくとも一方を基本培地(培地3)から除去した場合、間葉系幹細胞の細胞増殖率が顕著に低下した。このことより、TGF-β及びHGFは間葉系幹細胞の無血清培養に必須であることがわかった。
【0214】
また、植物由来のレシチン(動物由来のフォスファチジルコリン(PC)に相当する)を主成分とする脂質混合物を含有する培地(培地5)もまた、多数の脂肪酸を主成分とする脂質混合物を含有する培地(培地4)と同様に間葉系幹細胞の無血清培養に有用であることがわかった(図7)。
【0215】
〔実施例4:ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の無血清培養における追加増殖因子の作用〕
ヒト腸骨骨髄由来の間葉系幹細胞(3継代目)を、血清を含まないDMEM培地で3回洗浄した後、細胞を24ウェルのプレートに5000個/cm2の密度で播種し、5%CO2存在下のCO2インキュベータ内にて37℃で培養した。
【0216】
基礎培地としてのDMEM/MCDB=1:1に以下の添加物を添加して培養に用いた:
(培地1)添加なし
(培地3)増殖因子群及び脂肪酸群
(培地6)培地3+VEGF
(培地7)培地3+CTGF。
【0217】
各々の培地毎に実験を三連にて行った(n=3)。培地を2日又は3日毎に交換した。培養8日目の細胞数をcell counting kit WST-8 (同仁化学)を用いて測定した。結果を図8に示す。
【0218】
図8に示すように、無血清培地(培地6又は培地7)で培養した間葉系幹細胞は、培地3と比較して、培養8日目の細胞増殖率が亢進した(数値は三連にて行った実験の平均値±SDを示す)。
【0219】
〔実施例5:骨髄由来間葉系幹細胞の無血清培養〕
ヒト腸骨骨髄由来の間葉系幹細胞(3代目)を、血清を含まないDMEM培地で3回洗浄した後、細胞を24ウェルのプレートに5000個/cm2の密度で播種し、5%CO2存在下のCO2インキュベータ内にて37℃で培養した。
【0220】
基礎培地としてのDMEM/MCDB=1:1に以下の添加物を添加して培養に用いた:
(培地1)添加なし
(培地3)増殖因子群及び脂肪酸群
(培地7)増殖因子群+リノレイン酸+PC
(培地8)増殖因子群+リノレイン酸+PA
(培地9)増殖因子群+リノレイン酸+レシチン。
【0221】
各々の培地毎に実験を三連にて行った(n=3)。培地を2日又は3日毎に交換した。培養8日目の細胞数をcell counting kit WST-8 (同仁化学)を用いて測定した。結果を図9に示す。
【0222】
図9に示すように、無血清培地(培地7又は培地8)で培養した間葉系幹細胞は、培地3で培養した場合と同等の細胞増殖率を示した(数値は三連にて行った実験の平均値±SDを示す)。また、植物由来のリン脂質レシチンを主成分とする脂質混合物及びレチノイン酸を含有する培地(培地9)で培養した間葉系幹細胞も、基本培地(培地3)で培養した場合と同等の細胞増殖率を示した。すなわち、脂肪酸1種類とリン脂質1種類との組み合わせであっても、本発明を特徴付ける増殖因子が培地中に含有されている場合は、増殖速度は低いものの間葉系幹細胞の増殖が可能であり、より多くの脂質が組み合わされている場合は、脂肪酸1種類とリン脂質1種類との組み合わせ又は多数の脂肪酸を主成分とする脂質混合物単独もしくは植物由来のリン脂質レシチンを主成分とする脂質混合物単独の場合よりも、大量培養を高速にて行うことができることがわかった(図1と図9との比較)。
【0223】
〔実施例6:未分化細胞株の無血清培養〕
マウス間葉系幹細胞C2C12細胞(あるいはマウス軟骨細胞株ATDC5又はサル腎臓由来未分化細胞株COS7細胞)を、10%ウシ胎仔血清、100単位/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンを含有するDMEM培地を含む10cmプレートにて、5%CO2存在下のCO2インキュベータ内にて37℃で培養した。細胞をPBSで2回洗浄し、0.05%トリプシン及び0.2mM EDTAを含有するPBS中にて2分間インキュベートすることにより、プレートから剥離し、血清を含有しない植物由来のTrypsin inhibitor(Sigma:T6522)とともに再懸濁させた。血清を含まないDMEM培地で細胞を3回洗浄した後、細胞数をCoulterカウンター(Z1シングル、コールター社製)で計測した。結果を図10に示す。
【0224】
さらに、再懸濁した細胞を、以下の異なる培地条件を使用して、24ウェルプレートに5000個/cm2の密度で再播種した。
(培地1)無添加
(培地2)10%FBS
(培地4-2)増殖因子群及び脂肪酸群、並びにリン脂質(PA、PC)+EGF+VC
(培地4-3)増殖因子群及び脂肪酸群、並びにリン脂質(PA、PC)+EGF+VC-HGF。
【0225】
各々の培地毎に実験を三連にて行った(n=3)。培地を2日又は3日毎に交換した。培養8日目の細胞数をcell counting kit WST-8 (同仁化学)を用いて測定した。結果を図10に示す。
【0226】
図10に示すように、無血清培地(培地4-2)で培養した細胞株C2C12細胞は、通常の10%FBS含有培地(培地2)よりはるかに優れた細胞増殖を示した。しかしその培地からHGFのみを除去した培地(培地4-3)を用いると、この細胞株の増殖能は著しく低下した(数値は三連にて行った実験の平均値±SDを示す)。
【0227】
なお、間葉系幹細胞からすでに軟骨へと分化したマウスATDC5細胞株を用いた場合は、本無血清培地(培地4-2)を用いても、10%FBS含有培地(培地2)に匹敵するほどの細胞増殖促進効果を導くことはできなかった。すなわち、本無血清培地(培地5)は、未分化細胞により効果が強いことが示された。また、特別な分化能を失って未分化状態に近い細胞(例えば、サル腎臓由来のCOS7細胞)の無血清条件での培養にも、本発明の無血清培地は有効であり、10%FBS含有培地(培地2)に匹敵する増殖促進効果が得られた。
【0228】
〔実施例7:無血清培地中における細胞増殖メカニズム〕
無血清培地中における細胞増殖メカニズムを明らかにするために、無血清培地中に添加された各添加因子による細胞増殖シグナル伝達系の活性化について検討した。各添加因子による細胞増殖シグナル伝達系の活性状態を、ウエスタンブロット法により検出した。ここで、特に細胞増殖に密接に関連しているタンパク質リン酸化酵素のうち、細胞外シグナル制御キナーゼErk1/2(Extracellular signal‐regulated kinase1/2)、およびAkt(PI3Kの下流に位置して細胞機能の制御に関連するタンパク質リン酸化酵素)に注目した。Erk1/2およびAktはリン酸化されると活性型に変換される。12ウェルプレートの10%FBS含有培地において、ヒト間葉系幹細胞(3株)をサブコンフルエントまで培養した。培養細胞をPBSで2回洗浄し、1.25mg/mlBSA(ウシ血清アルブミン)を含有する無血清培地において、さらに16時間培養した。その後、培養細胞を、各成長因子(E:EGF、F:FGF、G:PDGF、H:HGF、I:Insulin、J:TGF-β)、Dexamethasone(D)、Transferrin(T)、および脂肪酸関連因子(A1:Arachidonic acid、A2:Linoleic acid、A3:Linolenic acid、A4:Oleic acid、A5:B1、A6:Phosphatidic acid、A7:Phosphatidyl choline)をそれぞれ含有する刺激液中、ならびにこれらを含有しないコントロール溶液中において5分間インキュベートした。さらに、各刺激液およびコントロール溶液を氷上において吸引除去し、PBSで2回洗浄した。洗浄後の細胞を、lysis bufferに溶解させた。細胞溶解液を6.500gで、10分間遠心し、上清を10%のSDS-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動を行った。分画されたタンパク質をPVDFメンブラン(Millipore社製)上に移し、抗リン酸化Erk1/2抗体、または抗リン酸化Akt抗体(いずれもCell Signaling Technology社製)を用いて、分画を検出した。結果を図11および12に示す。
【0229】
図11に成長因子(E~J)、Dexamethasone(D)、およびTransferrin(T)によって細胞を刺激したときのタンパク質分画を示す。図11に示すように、コントロール細胞(刺激されていない細胞)と比較して、EGF(E)、FGF(F)、PDGF(G)、Insulin(I)、およびHGF(H)によって刺激された細胞において、Erk1/2がリン酸化されることを示した。特にHGFによって刺激された細胞においては、濃度依存的にErk1/2のリン酸化が促進されると共に、Aktのリン酸化も促進された。
【0230】
図12に脂肪酸関連因子(A1‐A7)によって細胞を刺激したときのタンパク質分画を示す。図12に示すように、コントロール細胞(刺激されていない細胞)と比較して、Phosphatidic acid(A6)によって刺激された細胞において、Erk1/2およびAktのリン酸化が強く促進された。また、Arachidonic acid(A1)、Linoleic acid(A2)、Linolenic acid(A3)、Oleic acid(A4)、および(Phosphatidyl choline(A7)によって刺激された細胞において、Erk1/2のリン酸化が促進された。すなわち、これらの脂肪酸関連因子は、培養細胞に対して単にエネルギーや膜成分を供給するだけでなく、成長因子として細胞増殖シグナル伝達系を活性化することが示された。
【0231】
〔実施例8:ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の無血清培養における追加基本因子の作用〕
10%FBSを含有する培地に塩化リチウム(LiCl)を添加することによって、wingless/int(wnt)シグナル経路が活性化されることにより、ヒト間葉系幹細胞の増殖を促進することが知られている。また、抗酸化剤(還元剤)としてのL-glutathioneが、ヒトの胚性幹細胞(ES細胞)の無血清培養に用いられている。そこで、塩化リチウム(LiCl)及びL-glutathioneの間葉系幹細胞の増殖に対する影響を検討するために、以下に示す無血清培地に塩化リチウム又はL-glutathioneを添加した培地を用いてヒト間葉系幹細胞を培養した。
【0232】
ヒト腸骨骨髄液由来の間葉系幹細胞を、10%FBS、100単位/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを含有するDMEM培地を含む10cmプレートにおいて、5%CO存在下のCOインキュベータ内にて37℃で培養した。サブコンフルエントになった培養細胞を、PBS(-)で2回洗浄し、0.05%トリプシン及び0.2mM EDTAを含有するPBS中にて2分間インキュベートすることにより分散させた後、血清を含有しない植物由来のTrypsin inhibitor (Sigma:T6522)とともに再懸濁した。さらに、培養細胞を、血清を含まないDMEM培地で3回洗浄した後、細胞数をCoulterカウンター(Z1シングル、コールター社製)で計数した。次に、再懸濁した細胞を以下に示す各培地を用いて、96ウェルのプレートに5000個/cmの密度で再播種した。
(培地2)10%FBS
(培地4-2)増殖因子群及び脂肪酸群、並びにリン脂質(PA、PC)+EGF+VC
(培地4-4)培地4-2+塩化リチウム(1mM:Sigma‐L4408)
(培地4-5)培地4-2+L-glutathione(2μg/ml:Sigma‐G6013)
各々の培地毎に実験を三連にて行った(n=3)。培地を2日または3日毎に交換した。培養8日目の細胞の数をcell counting kit WST-8(同仁化学)を用いて測定した。結果を図15(a)および(b)に示す。
【0233】
図15(a)に示すように、培地4-2および培地2で培養した細胞の増殖能と比較して、培地4-4で培養した細胞の増殖能は、培養8日目で著しく高かった(数値は三連にて行った実験の平均値±SDを示す)。
【0234】
図15(b)に示すように、培地4-2および培地2で培養した細胞の増殖能と比較して、培地4-5で培養した細胞の増殖能は、培養8日目で著しく高かった(数値は三連にて行った実験の平均値±SDを示す)。
【0235】
〔実施例9:骨髄由来の間葉系幹細胞の無血清初代培養における増殖因子の作用〕
初代培養幹細胞を培養する培地中に添加する増殖因子について検討するために、広島大学附属病院倫理審査委員会の承認および入院患者の同意を得た上で、広島大学付属病院の入院患者から腸骨由来の骨髄液を採取した。採取した腸骨由来の骨髄液を、密度勾配遠心法によって単核球画分(MSCを含む)を分離した。次に、以下に示す各培地において、24ウェルのプレートに1×10個(有核)細胞/cmの密度で播種し、5%CO存在下のCOインキュベータ内にて、37℃で培養した。
【0236】
基礎培地としてのDMEM/MCDB=1:1に以下の添加物を添加して培養に用いた:
(培地1)添加なし
(培地2)10%FBS(ウシ胎仔血清)
(培地3)増殖因子群および脂肪酸群
(培地10)増殖因子群および脂肪酸群、ならびにリン脂質(PA、PC)+EGF+VC(図10:培地4-2)
(培地10-1)培地10よりFGFのみを除去
(培地10-2)培地10よりTGF-βのみを除去
(培地10-3)培地10よりHGFのみを除去
(培地10-4)培地10よりFGFおよびTGF-βを除去
(培地10-5)培地10よりFGFおよびHGFを除去
(培地10-6)培地10よりTGF-βおよびHGFを除去
(培地10-7)培地10よりFGF、TGF-βおよびHGFを除去
(培地11)間葉系幹細胞増殖培地MF‐medium(TOYOBO製、No:TMMFM-001)
各々の培地毎に実験を三連(三培養系)にて行った(n=3)。培地を2日または3日毎に交換した。培養14日後、培地をPBSで2回洗浄した後、0.05%トリプシンおよび0.2mM EDTAを含有するPBS中にて2分間インキュベートすることによって細胞を回収した。回収した細胞数をCoulterカウンター(Z1シングル、コールター社製)を用いて測定した。結果を図16(a)および(b)に示す。
【0237】
図16(a)に示すように、継代培養で高い細胞増殖効果を示す培地3および培地10は、骨髄由来の間葉系幹細胞の初代培養では細胞増殖促進能力が低かった。このことは、おそらく骨髄単核球画分に含まれる間葉系幹細胞以外の多数の造血系細胞が、間葉系幹細胞の増殖に影響するためであると考えられる。これらの非接着性造血系細胞は、培地を交換する毎に除去され、一回継代培養した後はほとんど存在しない。しかしながら、培地10に含まれる増殖因子を1~3つ除去したとき(培地10-1~培地10-7)、無血清条件下での間葉系幹細胞の増殖能は向上した。例えば、培地10-1では培養細胞の増殖が促進された。また、培地10-4では、培養細胞の増殖能が明らかに向上した。さらに、培地10-7では、培養細胞の増殖能が著しく上昇した(数値は三連にて行った実験の平均値±SDを示す)。このように、間葉系幹細胞以外の細胞、例えば造血細胞等が無血清培地中に多数存在するとき、最適な血清代替物質の組成が変化することが示された。
【0238】
また、図16(b)に示すように、骨髄液から採取した初代間葉系幹細胞を培地2、および市販されている培地11で培養した培養細胞と比較して、骨髄液から採取した初代間葉系幹細胞を培地10-7で培養した培養細胞は、著しく高いレベルの増殖能を示した(いずれもp<0.001)(数値は三連にて行った実験の平均値±SDを示す)。
〔実施例10:未分化細胞株の無血清培養〕
未分化細胞株を継代培養する培地中に添加する増殖因子について検討するために、マウス間葉系細胞株10T1/2(理化学研究所 バイオリソースセンター提供)、チャイニーズハムスターの卵巣由来細胞株CHO細胞(理化学研究所 バイオリソースセンター提供)、およびヒトのヒフ由来の線維芽細胞(Fibroblast)(ヒューマンサイエンス研究資源バンク提供)を以下に示す培地において培養した。
基礎培地としてのDMEM/MCDB=1:1に以下の添加物を添加して培養に用いた:
(培地1)添加なし
(培地2)10%FBS(ウシ胎仔血清)
(培地10-5)培地10よりFGFおよびHGFを除去
(培地10-7)培地10よりFGF、TGF-βおよびHGFを除去
(培地10-8)培地10よりTGF-β、HGFおよびPDGFを除去
10T1/2細胞、CHO細胞、およびFibroblastを、10%ウシ胎仔血清、100単位/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを含有するDMEM培地を含む10cmプレートにて、5%CO存在下のCOインキュベータ内にて37℃で培養した。サブコンフルエントになった細胞をPBS(-)で2回洗浄し、0.05%トリプシンおよび0.2mM EDTAを含有するPBS中にて2分間インキュベートすることにより、プレートから剥離した。剥離した細胞を、血清を含有しない植物由来のTrypsin inhibitor(Sigma:T6522)とともに再懸濁させた。血清を含まないDMEM培地で細胞を3回洗浄した後、細胞数をCoulterカウンター(Z1シングル、コールター社製)で計測した。さらに、再懸濁した細胞を、上記異なる培地条件を使用して、96ウェルのプレートに5000個/cmの密度で再播種した。各々の培地毎に実験を三連にて行った(n=3)。培地を2日または3日毎に交換した。培養8日目の細胞数をcell counting kit WST-8(同仁化学)を用いて測定した。結果を図17(a)~(c)に示す。
【0239】
図17(a)に示すように、培地10-5で培養した細胞株10T1/2細胞は、培地2で培養した細胞株10T1/2細胞とほぼ同等の細胞増殖能を示した(数値は三連にて行った実験の平均値±SDを示す)。また、図17(b)に示すように、培地10-7で培養したCHO細胞は、有効な細胞増殖能を示した(数値は三連にて行った実験の平均値±SDを示す)。さらに、図17(c)に示すように、培地10-8で培養したFibroblastの増殖能は、培地2で培養したFibroblastの増殖能と比較して、培養8日目で著しく高かった(数値は三連にて行った実験の平均値±SDを示す)。
【0240】
本発明に従えば、間葉系幹細胞又はサル腎臓由来未分化細胞株COS7細胞を、無血清培地であっても、その特性を保持したまま増殖させることができる。血清に起因する細胞増殖効果には個体差があるが、本発明に従えば、その個体差を考慮しなくてもよい。また、本発明に従えば、ヒト間葉系幹細胞を、その特性(骨分化能、脂肪分化能など)を高レベルに維持したまま連続的に継代培養することができる。
【0241】
発明の詳細な説明の項においてなされた具体的な実施形態または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0242】
本発明を用いれば、細胞培養に必要な血清の濃度を減らすことによりコストを削減することができるとともに、再生医療で用いられる間葉系幹細胞を安全かつ低コストにて供給することができる。
図面
【図13】
0
【図14】
1
【図1】
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【図2】
3
【図3】
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【図4】
5
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
12
【図12】
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【図15(a)】
14
【図15(b)】
15
【図16(a)】
16
【図16(b)】
17
【図17(a)】
18
【図17(b)】
19
【図17(c)】
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