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明細書 :ビス(ホスフィン)ボロニウム塩、ビス(ホスフィン)ボロニウム塩の製造方法、この製造方法により製造されるビス(ホスフィン)ボロニウム塩

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5223044号 (P5223044)
登録日 平成25年3月22日(2013.3.22)
発行日 平成25年6月26日(2013.6.26)
発明の名称または考案の名称 ビス(ホスフィン)ボロニウム塩、ビス(ホスフィン)ボロニウム塩の製造方法、この製造方法により製造されるビス(ホスフィン)ボロニウム塩
国際特許分類 C07F  19/00        (2006.01)
C07F   9/54        (2006.01)
C07F   5/02        (2006.01)
FI C07F 19/00 CSP
C07F 9/54
C07F 5/02 F
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2007-557790 (P2007-557790)
出願日 平成19年1月30日(2007.1.30)
国際出願番号 PCT/JP2007/051431
国際公開番号 WO2007/091445
国際公開日 平成19年8月16日(2007.8.16)
優先権出願番号 2006030519
優先日 平成18年2月8日(2006.2.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年12月9日(2009.12.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】山口 健太郎
【氏名】檀上 博史
【氏名】小泉 徹
【氏名】今本 恒雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100127764、【弁理士】、【氏名又は名称】小川 泰州
審査官 【審査官】井上 千弥子
参考文献・文献 米国特許第03839392(US,A)
Tetrahedron Letters,2004年,45,pp.9341-9344
Tetrahedron,1983年,39(4),pp. 591-597
J.Am.Chem.Soc. ,1999年,121(50),pp. 11744-11750
Angew. Chem.,1988年,100(8),pp. 1135-1138
Organic Letters,2006年,8(26),pp. 6103-6106
調査した分野 C07F 19/00
C07F 5/02
C07F 9/02-9/6596
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
JP0005223044B2_000008t.gifに記す構造を有することを特徴とするビス(ホスフィン)ボロニウム塩(前記一般式(1)中、R、R、R、Rは、アルキル基、アリール基、水素基、又はアルコキシ基から選択されたいずれか一種の置換基であり、Xは、F、Cl、Br、I、CFSO、BF、PF又はSbFから選択されたいずれか一種のアニオンである。)。
【請求項2】
請求項1に記載のビス(ホスフィン)ボロニウム塩を製造する方法であって、この製造方法は、下記一般反応式(4)
【化2】
JP0005223044B2_000009t.gifに示す合成経路にて、ホスフィン化合物をモノ置換されたボランで処理することを特徴とするビス(ホスフィン)ボロニウム塩の製造方法(前記一般反応式(4)中、Rは、アルキル基、アリール基、水素基、又はアルコキシ基から選択されたいずれか一種の置換基であり、Xは、F、Cl、Br、I、CFSO、BF、PF又はSbFから選択されたいずれか一種のアニオンである。)。
【請求項3】
請求項1に記載のビス(ホスフィン)ボロニウム塩を製造する方法であって、この製造方法は、下記一般反応式(5)
【化3】
JP0005223044B2_000010t.gifに示す合成経路にて、ホスフィン化合物をホウ素原子上の水素基がモノ置換されたホスフィンボランで処理することを特徴とするビス(ホスフィン)ボロニウム塩の製造方法(前記一般反応式(5)中、R、R´は、アルキル基、アリール基、水素基、又はアルコキシ基から選択されたいずれか一種の置換基であり、Xは、F、Cl、Br、I、CFSO、BF、PF又はSbFから選択されたいずれか一種のアニオンである。)。
【請求項4】
ホスフィン化合物におけるリン原子が不斉中心を有する請求項2又は3に記載のビス(ホスフィン)ボロニウム塩の製造方法。
【請求項5】
ホスフィン化合物における置換基のうちの少なくとも一つが、分枝構造を有するアルキル基、環状構造を有するアルキル基、又はアリール基である請求項2ないし4のいずれか1項に記載のジホスフィン化合物の製造方法。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれか1項に記載のビス(ホスフィン)ボロニウム塩の製造方法によって製造されてなる下記一般式(1)
【化4】
JP0005223044B2_000011t.gifに記す構造を有することを特徴とするビス(ホスフィン)ボロニウム塩(前記一般式(1)中、R、R、R、Rは、アルキル基、アリール基、水素基、又はアルコキシ基から選択されたいずれか一種の置換基であり、Xは、F、Cl、Br、I、CFSO、BF、PF又はSbFから選択されたいずれか一種のアニオンである。)。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、種々の遷移金属触媒反応に有効であるジホスフィン化合物を製造するためのビルディングブロックなどとして利用されるビス(ホスフィン)ボロニウム塩、ビス(ホスフィン)ボロニウム塩の製造方法、この製造方法により製造されるビス(ホスフィン)ボロニウム塩に関する。
【背景技術】
【0002】
立体的に込み合った構造を有するホスフィン配位子が、クロスカップリングをはじめとする種々の遷移金属触媒反応に有効であることが報告されており、ホスフィン化合物の合成に関する研究は、現在、国内外で最も重要な課題として取り組まれている分野となっており(例えば、特許文献1~3)、実用性の高い触媒的有機変換工程の開発に対する重要なアプローチとして興味が寄せられている。
【0003】

【特許文献1】特開2001-253889号公報
【特許文献2】特開2003-292498号公報
【特許文献3】特開2003-313194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近接位(特に、隣接位)に二つのホスフィノ基を配し、更に込み合った立体構造を有するジホスフィン化合物の合成については、現在に至るまで有効とされる合成方法は全くといっていいほど提案されていない。
【0005】
この理由は、ジホスフィン化合物の込み合った立体構造に起因するものであり、即ち、近接位に二つのホスフィノ基を段階的に導入すると、二段階目のホスフィノ基の導入において立体障害が生じ、これにより反応が著しく阻害されるのである。
【0006】
そこで、本発明者は、このような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、二つのホスフィノ基をボロニウム架橋で結んだ構造を有するビス(ホスフィン)ボロニウム塩を開発するに至り、ジホスフィン化合物を製造するためのビルディングブロックとしてビス(ホスフィン)ボロニウム塩を用いれば、二段階目のホスフィン導入反応が分子内反応となり比較的スムーズに反応が進行するといった知見を得たのである。
【0007】
又、カップリング反応後の中間生成物におけるボロニウム架橋部位は、比較的酸化されやすいホスフィノ基の保護基としても機能し、しかも、簡単な操作で容易に除去することができるとの知見も得たのである。
【0008】
更に、様々な構造のビス(ホスフィン)ボロニウム塩と求電子剤を組合せることにより、様々な構造のジホスフィン化合物を簡単に得ることもできるといった知見も得たのである。
【0009】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、主として、種々の遷移金属触媒反応に有効であるジホスフィン化合物を製造するためのビルディングブロックなどとして利用されるビス(ホスフィン)ボロニウム塩を提供することを目的とするものであり、更に、このビス(ホスフィン)ボロニウム塩の好適な製造方法、及びこの製造方法により製造されるビス(ホスフィン)ボロニウム塩を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩は、下記一般式(1)
【化5】
JP0005223044B2_000002t.gif
に記す構造を有する化合物であり、即ち、二つのホスフィノ基が、ボロニウム部位により架橋された構造を有する化合物であり、主として種々の遷移金属触媒反応に有効であるジホスフィン化合物を製造するためのビルディングブロックなどとして利用されるものである。
【0011】
ここで、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩をビルディングブロックとして製造されるジホスフィン化合物とは、下記一般式(2)
【化6】
JP0005223044B2_000003t.gif
に記す構造を有する化合物、即ち、ある骨格部位Yに二つのホスフィノ基が導入された構造を有する化合物である。
【0012】
即ち、ある骨格部位に二つのホスフィノ基を求核的に導入する場合、求核剤として大きな置換基を有するホスフィンボランやホスフィンオキシドを用いると、強い立体障害がおきるため反応が進行し難く、特に、ジアルキルホスフィンなどのアルキル置換された嵩高いホスフィノ基の導入については、全く反応が進行せず、その合成は極めて困難とされていた。
【0013】
この点につき、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩をジホスフィン化合物の合成用のビルディングブロックとして用いれば、立体障害の問題は回避されるのであり、そのため、従来では合成し得なかった多くのジホスフィン合成を実現することができるのである。
【0014】
なお、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩をビルディングブロックとしたジホスフィン化合物の合成は、好ましくは塩基条件下、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩と、求電子部位を少なくとも2点有する求電子剤とのカップリング反応により中間生成物を合成した後に、脱ボロニウム剤で処理するものである(下記一般式(3)参照)。
【化7】
JP0005223044B2_000004t.gif

【0015】
即ち、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩中には二つのリン原子が求核部位として存在しているため、求電子部位を少なくとも2点有する求電子剤とのカップリング反応は比較的速やかに進行するのであり、又、片方のリン原子と求電子部位とのカップリングが成立した後のもう片方(2段階目)のカップリングは分子内反応となり、立体障害により反応が阻害されることを回避することができるのである。
【0016】
更に、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩中の二つのリン原子上の置換基の構造・種類により、製造されるジホスフィン化合物における二つのリン原子上の置換基の構造・種類が決定されるのであり、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩中の二つのリン原子上の置換基の構造を適宜選択することにより、立体的・電子的に様々な特性を有するジホスフィン化合物を製造することができるのである。
【0017】
加えて、前記求電子部位を少なくとも2点有する求電子剤の構造により、製造されるジホスフィン化合物の骨格部位Yが決定されるのであり、当該求電子剤を適宜選択することにより様々な骨格部位を有するジホスフィン化合物を製造することができるのである。
【0018】
なお、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩におけるカウンターイオン「X」の種類や構造については、特に限定されるものではなく、種々のアニオンを適宜選択して用いることができるが、具体的には、F、Cl、Br、Iなどのハロゲンや、CFSO、BF、PF及びSbFなどを一般的な例として挙げることができる。
【0019】
ここで、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩の合成方法としては、特に限定されるものではないが、本発明者はその好ましい合成方法として、後述する本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩の製造方法を見出している。
以下、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩を好適に合成し得る本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩の製造方法(以下、本発明方法と称する)について詳細に説明する。
【0020】
本発明方法には、大きく分けて、対称型合成経路と非対称型合成経路の2通りの合成経路がある。
【0021】
前者の対称型合成経路は、最も単純なビス(ホスフィン)ボロニウム塩の製造方法であって、ホスフィン化合物をモノ置換ボランで処理することを特長とするものである(下記の一般反応式(4)参照)。
【化8】
JP0005223044B2_000005t.gif

【0022】
即ち、前記対称型合成経路は、ホスフィン、モノアルキルホスフィン、ジアルキルホスフィン、モノアリールホスフィン、ジアリールホスフィン、或いはアルキルアリールホスフィンなどの所望の置換基を有する各種ホスフィン化合物について、ホウ素原子上の水素基をハロゲン、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などでモノ置換したモノ置換ボラン0.5等量で処理するものであり、立体的・電子的に様々な特徴を持つホスフィン化合物を用いることで、種々の対称型ビス(ホスフィン)ボロニウム塩を得ることができるのである。
【0023】
しかしながら、この対称型合成経路によっては、二つのリン原子が異なる置換パターンを有する非対称型ビス(ホスフィン)ボロニウム塩を製造することはできない。
【0024】
ここで、二つのリン原子が異なる置換パターンを有する非対称型のビス(ホスフィン)ボロニウム塩を合成する場合、最も単純な解決策としては、二種類のホスフィン化合物をモノ置換ボランに対して段階的に1当量ずつ加えていく手段などを挙げることもできるが、本発明者は、より反応を明確に行うために後者の非対称型合成経路を見出したのである。
【0025】
即ち、この非対称型合成経路は、ホスフィン化合物をホウ素原子上の水素基がモノ置換されたホスフィンボランで処理することを特徴とするものであり(下記の一般反応式(5)参照。)、更に詳しくは、ホスフィンボラン中のボラン原子上の水素基をハロゲン、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などでモノ置換したものを用いて、別のホスフィン化合物を処理するものである。
【化9】
JP0005223044B2_000006t.gif

【0026】
ところで、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩中のリン原子上の置換基であるR、R、R及びRは、アルキル基、アリール基、水素基及びアルコキシ基その他の所望の種類・構造の置換基を適宜選択すれば良く、特に限定されるものではないが、一般的には、アルキル基、アリール基及びアルコキシ基などが好適に選択される。
【0027】
具体的に例えば、前記アルキル基としては、最終目的物であるジホスフィンの立体的性質を様々に変換する目的から、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、t-ブチル基、アダマンチル基及びベンジル基などが適宜選択される。
【0028】
又、立体的性質に加えて電子的影響も考慮した場合には、前記アリール基としてフェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、3,5-キシリル基、3,5-ジイソプロピルフェニル基、p-アニシル基、p-トリフルオロメチルフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基などの他、前記アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基及びフェノキシ基などが適宜選択される。
【0029】
もっとも、リン原子上に不斉中心を有するP-キラルホスフィン類を用いたロジウム触媒不斉水素化やパラジウム触媒不斉炭素‐炭素結合形成反応などにおいて、高い反応性と立体選択性が得られることが確認されていることから、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩をビルディングブロックとして製造されるジホスフィン化合物についても、リン原子が不斉中心を有することが好ましい。
【0030】
この点につき、本発明方法においては、原料としてのホスフィン化合物として、リン原子が不斉中心を有するものを用いることにより、少なくとも一方のリン原子が不斉中心を有するビス(ホスフィン)ボロニウム塩を製造することができるのであり、このビス(ホスフィン)ボロニウム塩をビルディングブロックとして用いることにより、リン原子に不斉中心を有するジホスフィン化合物を製造することができるのである。
【0031】
又、モノホスフィンを配位子とした各種遷移金属触媒カップリング反応においては、配位子の嵩高さ、即ち立体障害により触媒活性種が反応中に安定な二量体を形成することを防ぐために反応が速やかに進行すると考えられていることから、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩をビルディングブロックとして製造されるジホスフィン化合物についても、リン原子の置換基R~Rの内の少なくとも一つにつき、嵩高い構造を有するもの、例えば、t‐ブチル基などの分枝構造を有するアルキル基や、シクロヘキシル基及びアダマンチル基などの環状構造を有するアルキル基、或いはアリール基などを選択することが好ましい。
【0032】
この点につき、本発明方法においては、原材料としてのホスフィン化合物におけるリン原子の置換基の内の少なくとも一つにつき、嵩高い構造を有するもの、例えば、t‐ブチル基などの分枝構造を有するアルキル基や、アダマンチル基及びシクロヘキシル基などの環状構造を有するアルキル基、或いはアリール基などを有するもの選択することにより、リン原子の置換基R~Rの内の少なくとも一つにつき、嵩高い構造を有するビス(ホスフィン)ボロニウム塩を製造することができるのであり、このビス(ホスフィン)ボロニウム塩をビルディングブロックとして用いることにより、リン原子の置換基の内の少なくとも一つに嵩高い構造を有するジホスフィン化合物を製造することができるのである。
【0033】
そして、本発明方法によって製造されることを特徴とする本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩は、主として、ジホスフィン化合物の合成用のビルディングブロックとして用いられることにより、立体障害の問題を回避し、従来では合成し得なかった多くのジホスフィン合成を実現することができるのである。
【発明の効果】
【0034】
本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩は、前記構成を有し、簡単な合成工程で様々な構造のジホスフィン化合物を得ることができる新規な化合物である。
【0035】
即ち、ジホスフィン化合物を製造するためのビルディングブロックとして本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩を用いれば、二段階目のホスフィン導入反応が分子内反応となり比較的スムーズに反応が進行するのである。
【0036】
又、カップリング反応後の中間生成物におけるボロニウム架橋部位は、比較的酸化されやすいホスフィノ基の保護基としても機能し、しかも、フッ化物アニオンを始めとする種々の脱ボロニウム剤などで処理することにより容易に除去することができるのである。
【0037】
更に、様々な構造の本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩と求電子剤を組合せることにより、様々な構造のジホスフィン化合物を簡単に得ることもできるのである。
【0038】
本発明方法は、前記本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩を好適に製造する方法であり、対称型合成経路と非対称型合成経路の2通りの合成経路がある。
【0039】
前者の対称型合成経路は、ホスフィン化合物をホウ素原子上の水素基がモノ置換されたモノ置換ボランで処理することを特長とするものであり、立体的・電子的に様々な特徴を持つホスフィン化合物を用いることで、種々の対称型ビス(ホスフィン)ボロニウム塩を得ることができるのである。
【0040】
一方、後者の非対称型合成経路は、ホスフィン化合物をホウ素原子上の水素基がモノ置換されたホスフィンボランで処理することを特徴とするものであり、二つのリン原子が異なる置換パターンを有する種々の非対称型ビス(ホスフィン)ボロニウム塩を合成することができるのである。
【0041】
そして、本発明方法によって製造されることを特徴とする本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩は、主として、ジホスフィン化合物の合成用のビルディングブロックとして用いられることにより、立体障害の問題を回避し、従来では合成し得なかった多くのジホスフィン合成を実現することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0043】
図1は、ホスフィンボラン(脱プロトン化体)5を用いて、ある骨格部位を有する求電子剤3に二つのホスフィノ基を求核的に導入する従来法をイラスト的に示したものであり、即ち、求核剤としてホスフィンボラン5を用いると、二段階目のホスフィノ基の導入の際に強い立体障害がおきるため反応が進行し難く、特に、ジアルキルホスフィンなどのアルキル置換された嵩高いホスフィノ基の導入については、全く反応が進行しないのである。
【0044】
一方、図2は、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩(脱プロトン化体)1を用いて、ある骨格部位を有する求電子剤3に二つのホスフィノ基を求核的に導入する方法をイラスト的に示したものであり、即ち、ジホスフィン化合物2の合成用のビルディングブロックとして本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩1を用いているから、二段階目のホスフィン導入反応が分子内反応となって立体障害の問題が回避されるのであり、そのため、従来では合成し得なかった多くのジホスフィン化合物2の合成を実現することができるのである。
【0045】
表1は、各種構造の求電子剤と本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩とをカップリング反応させた場合に製造されるジホスフィン化合物の各種構造を例示列挙する表である。
【表1】
JP0005223044B2_000007t.gif

【0046】
即ち、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩と、様々な構造の求電子剤との組合せにより、様々な構造のジホスフィン化合物を簡単に得ることができるのであり、その組合せによってジホスフィン化合物ライブラリーを構築することができるのである。
【実施例1】
【0047】
<ヨウ化(S)‐(t‐ブチル(メチル)ホスフィン)(ジ‐t‐ブチルホスフィン)ボロニウムの製造>
30mL二口ナスフラスコに水素化リチウムアルミニウム133mg及び磁気撹拌子を入れて窒素置換し、ジエチルエーテル5mLを加えて撹拌しながら0℃に冷却した。
【0048】
これにジ‐t‐ブチルクロロホスフィン627μLを加え、室温で1時間撹拌した後、反応液を窒素気流下、塩基性アルミナ約3mgを通してろ過し、ジエチルエーテル約15mLで溶出した。
【0049】
ろ液を減圧下で濃縮し、得られた残渣を、再び窒素を導入した後にジクロロメタン9mLに溶解した。
【0050】
一方、30mL二口ナスフラスコに(S)‐t‐ブチル(メチル)ホスフィンボラン300mg、ヨウ素323mg及び磁気撹拌子を入れて窒素置換し、ジクロロメタン5mLを加えて溶解し、これを室温で7時間撹拌した後に、上記で調製したジ‐t‐ブチルホスフィンのジクロロメタン溶液を室温で加えて24時間撹拌した。
【0051】
ボランテトラヒドロフラン錯体の1.2Mテトラヒドロフラン溶液1mLを加え、室温で30分撹拌した後、水5mL及びジクロロメタン7mLを加えて激しく撹拌し、有機層と水層を分離した後、水層をジクロロメタン7mLで二回抽出し、硫酸ナトリウムを加えて得られた有機層を脱水した。
【0052】
これをろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1→10/1)にて精製し、ヨウ化(S)‐(t‐ブチル(メチル)ホスフィン)(ジ‐t‐ブチルホスフィン)ボロニウム618mgを白色固体(収率62%)として得た。
【実施例2】
【0053】
<臭化ビス(ジ‐t‐ブチルホスフィン)ボロニウムの製造>
30mL二口ナスフラスコに水素化リチウムアルミニウム229mg及び磁気撹拌子を入れて窒素置換し、ジエチルエーテル5mLを加えて撹拌しながら0℃に冷却した。
【0054】
これにジ‐t‐ブチルクロロホスフィン1.08mLを加え、室温で1時間撹拌した後、反応液を窒素気流下、塩基性アルミナ約3gを通してろ過し、ジエチルエーテル約15mLで溶出した。
【0055】
ろ液を減圧下で濃縮し、得られた残渣を、再び窒素を導入した後にジクロロメタン10mLに溶解し、これにモノブロモボラン‐メチルスルフィド錯体の1.0Mジクロロメタン溶液2.7mLを室温で加えて40時間撹拌した。
【0056】
これを減圧下で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1→10/1)にて精製し、臭化ビス(ジ‐t‐ブチルホスフィン)ボロニウム743mgを白色固体(収率72%)として得た。
【実施例3】
【0057】
<メソ‐及び(S,S)‐ヨウ化ビス(t‐ブチル(メチル)ホスフィン)ボロニウムの製造>
50mL二口ナスフラスコに炭酸カリウム3.04g、ヨウ化t‐ブチル(メチル)ホスホニウム1.02g及び磁気撹拌子を入れて窒素置換し、ジクロロメタン10mLを加えた。
【0058】
これを室温で1時間撹拌した後、窒素気流下、塩基性アルミナ約3gを通してろ過し、ジクロロメタン約15mLで溶出した。
【0059】
一方、100mL二口ナスフラスコに(S)‐t‐ブチル(メチル)ホスフィンボラン400mg、ヨウ素430mg及び磁気撹拌子を入れて窒素置換し、ジクロロメタン5mLを加えて溶解し、これを室温で7時間撹拌した後に、上記で調製したt‐ブチル(メチル)ホスフィンのジクロロメタン溶液を室温で加えて24時間撹拌した。
【0060】
ボランテトラヒドロフラン錯体の1.2Mテトラヒドロフラン溶液1.4mLを加え、室温で30分撹拌した後、水5mL及びジクロロメタン7mLを加えて激しく撹拌し、有機層と水層を分離した後、水層をジクロロメタン7mLで二回抽出し、硫酸ナトリウムを加えて得られた有機層を脱水した。
【0061】
これをろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1→10/1)にて精製し、ヨウ化ビス(t‐ブチル(メチル)ホスフィン)ボロニウム697mgをメソ体および(S,S)体の混合物として、白色固体(収率59%)として得た。
【0062】
これをテトラヒドロフラン6mLに溶解して再結晶し、メソ体208mgを板状結晶として、また(S,S)体151mgを針状結晶として得た。
【実施例4】
【0063】
<臭化ビス(ジフェニルホスフィン)ボロニウムの製造>
30ml二口ナスフラスコに、ジフェニルホスフィンの10重量%ヘキサン溶液20ml及び磁気撹拌子を入れ、減圧下で濃縮し、窒素を導入した後、得られた残渣をジクロロメタン5mlにて溶解した。
【0064】
これにモノブロモボラン‐メチルスルフィド錯体の1.0Mジクロロメタン溶液3.5mlを室温で加えて35時間撹拌した。
【0065】
更に、これを減圧下で濃縮し、得られた残渣をテトラヒドロフランで洗いこむことにより、臭化ビス(ジフェニルホスフィン)ボロニウム1.0gを白色固体(収率65%)として得た。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、ホスフィンボランを用いて、ある骨格部位に二つのホスフィノ基を求核的に導入する状態を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明のビス(ホスフィン)ボロニウム塩を用いて、ある骨格部位に二つのホスフィノ基を求核的に導入する状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ビス(ホスフィン)ボロニウム塩
2 ジホスフィン化合物
3 求電子剤
4 中間生成物
5 ホスフィンボラン
図面
【図1】
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【図2】
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