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明細書 :マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4236692号 (P4236692)
公開番号 特開2008-173129 (P2008-173129A)
登録日 平成20年12月26日(2008.12.26)
発行日 平成21年3月11日(2009.3.11)
公開日 平成20年7月31日(2008.7.31)
発明の名称または考案の名称 マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物
国際特許分類 A01K  67/027       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI A01K 67/027
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2008-038054 (P2008-038054)
分割の表示 特願2000-232451 (P2000-232451)の分割、【原出願日】平成12年7月31日(2000.7.31)
出願日 平成20年2月19日(2008.2.19)
審査請求日 平成20年2月19日(2008.2.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】審良 静男
【氏名】竹内 理
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】高堀 栄二
参考文献・文献 国際公開第00/041561(WO,A1)
特開2000-128900(JP,A)
Immunity,Vol.11,No.4(1999)p.443-451
Gene,Vol.231,No.1-2(1999)p.59-65
調査した分野 BIOSIS/WPI(DIALOG)
PubMed
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
TLR6をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損し、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する反応性を特異的に欠如した非ヒト哺乳動物を、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル動物として使用する方法。
【請求項2】
非ヒト哺乳動物が齧歯目動物であることを特徴とする請求項1記載の使用する方法。
【請求項3】
齧歯目動物がマウスであることを特徴とする請求項2記載の使用する方法。
【請求項4】
マウスが、マウス遺伝子ライブラリーからマウスESTクローン由来のプローブを用いてスクリーニングすることにより得られたTLR6遺伝子の細胞内領域及び膜貫通領域を含む遺伝子部位の全部又は一部の遺伝子フラグメントを、ポリAシグナルとマーカー遺伝子をもつプラスミドに置換してターゲッティングベクターを構築し、該ターゲッティングベクターを線状化した後胚幹細胞に導入し、TLR6遺伝子機能を欠損した標的胚幹細胞を、マウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションしキメラマウスを作製し、このキメラマウスと野生型マウスとを交配させてヘテロ接合体マウスを作製し、かかるヘテロ接合体マウスをインタークロスすることによって得られるTLR6ノックアウトマウスであることを特徴とする請求項3記載の使用する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するTLR6等のタンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物や、またこれらモデル非ヒト動物を用いたマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答の抑制物質又は促進物質のスクリーニング方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
トール(Toll)遺伝子は、ショウジョウバエの胚発生中の背腹軸の決定(非特許文献1及び2参照)、また成体における抗真菌性免疫応答に必要であることが知られている(非特許文献3参照)。かかるTollは、細胞外領域にロイシンリッチリピート(LRR)を有するI型膜貫通受容体であり、この細胞質内領域は、哺乳類インターロイキン-1受容体(IL-1R)の細胞質内領域と相同性が高いことが明らかとなっている(非特許文献4、5、及び6参照)。
【0003】
近年、Toll様受容体(TLR)と呼ばれるTollの哺乳類のホモログが同定され、TLR2やTLR4など現在までに6つのファミリーが報告されている(非特許文献7、8、9、及び10参照)。このTLRファミリーは、上記IL-1Rと同様にアダプタータンパク質であるMyD88を介し、IL-1R結合キナーゼ(IRAK)をリクルートし、TRAF6を活性化し、下流のNF-κBを活性化することが知られている(非特許文献11、12、及び13参照)。また、哺乳類におけるTLRファミリーの役割は、細菌の共通構造を認識するパターン認識受容体(PRR:pattern recognition receptor)として、先天的な免疫認識に関わっているとも考えられている(非特許文献14参照)。
【0004】
上記PRRにより認識される病原体会合分子パターン(PAMP:pathogen-associated molecular pattern)の一つは、グラム陰性菌の外膜の主成分であるリポ多糖(LPS)であって(非特許文献14参照)、かかるLPSが宿主細胞を刺激して宿主細胞にTNFα、IL-1及びIL-6等の各種炎症性サイトカインを産生させること(非特許文献15及び16参照)や、LPS結合タンパク質(LBP:LPS-binding protein)により捕獲されたLPSが細胞表面上のCD14に引き渡されることが知られている(非特許文献16及び17参照)。本発明者らは、TLR4のノックアウトマウスを作製し、TLR4ノックアウトウスが上記グラム陰性菌の外膜の主成分であるLPSに不応答性であること(非特許文献18参照)や、TLR2ノックアウトマウスを作製し、TLR2ノックアウトマウスのマクロファージがグラム陽性菌細胞壁やその構成成分であるペプチドグリカンに対する反応性が低下すること(非特許文献19参照)を報告している。
【0005】
他方、マイコプラズマは自己増殖可能な最小の微生物で生物学的には細菌に分類されるが、他の細菌と異なり細胞壁を欠くため多形態性を示し、ペニシリン、セフェム等の細胞壁合成阻害剤には感受性を示さない。ヒトからよく分離されるマイコプラズマは7種あるが、このうち病原性が明らかなのはマイコプラズマ・ニューモニエ(M.pneumoniae)のみであり上気道炎、気管支炎、肺炎などの呼吸器感染症を起こすことが知られている。最近、本発明者らは、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドなどの細菌菌体成分が、TLR2及びMyD88シグナル伝達経路を介して生体反応を引き起こしていることを明らかにしている(非特許文献20参照)が、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質は知られておらず、そのためマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドが免疫細胞を活性化する分子メカニズムはよくわかっていなかった。
【0006】

【非特許文献1】Cell 52, 269-279, 1988
【非特許文献2】Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 12, 393-416, 1996
【非特許文献3】Cell 86, 973-983, 1996
【非特許文献4】Nature 351, 355-356, 1991
【非特許文献5】Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 12, 393-416, 1996
【非特許文献6】J. Leukoc. Biol. 63, 650-657, 1998
【非特許文献7】Nature 388, 394-397, 1997
【非特許文献8】Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 588-593, 1998
【非特許文献9】Blood 91, 4020-4027, 1998
【非特許文献10】Gene 231, 59-65, 1999
【非特許文献11】J. Exp. Med. 187, 2097-2101, 1998
【非特許文献12】Mol. Cell 2, 253-258, 1998
【非特許文献13】Immunity 11, 115-122, 1999
【非特許文献14】Cell 91, 295-298, 1997
【非特許文献15】Adv. Immunol. 28, 293-450, 1979
【非特許文献16】Annu. Rev. Immunol. 13, 437-457, 1995
【非特許文献17】Science 249, 1431-1433, 1990
【非特許文献18】J. Immunol. 162, 3749-3752, 1999
【非特許文献19】Immunity 11, 443-451, 1999
【非特許文献20】J. Immunol. 164, 554-557, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インビボにおける菌体成分に対する応答は、細胞表面上の各TLRの発現レベルの差異により変化することが予測されるものの、未だインビボにおける菌体成分刺激によるシグナル伝達に対するTLRファミリーの各メンバーの関わりは明らかにされていない。また、生体膜などに存在する水不溶性のリポタンパク/リポペプチドが免疫細胞を活性化することは知られていた。しかし、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質は知られていなかった。本発明の課題は、インビボにおけるマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド刺激によるシグナル伝達に対するTLRファミリー各メンバーの関わり、特にTLR6のインビボにおける役割を明らかにする上で有用な、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物、特にTLR6遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物や、これらを用いたマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答の抑制物質又は促進物質のスクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のように、細菌の共通構造を認識するパターン認識受容体として、先天的な免疫認識に関わっている哺乳類におけるTLRファミリーは、現在までに6つのメンバー(TLR1-6)が公表されている(Nature 388, 394-397, 1997、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 588-593, 1998、Gene 231, 59-65, 1999)が、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識する受容体は知られていなかった。本発明者らは、既に同定されているTLR6のcDNAを、マウス遺伝子ライブラリーから単離し、このTLR6遺伝子の細胞内領域及び膜貫通領域を含む遺伝子部位を、ネオマイシン耐性遺伝子に置き換え、またそれぞれのC末端側にHSV-tk遺伝子を導入させて、G418とガンシクロビアに対して2重に抵抗力のあるES細胞クローンをスクリーニングし、このES細胞クローンをC57BL/6のマウスの胚盤胞(blastocysts)の中に注入し、その生殖系列をとおして、メンデルの法則に従い出生してくるTLR6遺伝子子機能が染色体上で欠損したTLR6ノックアウトマウスを作製し、このTLR6ノックアウトマウスと野生型マウスとTLR2ノックアウトマウスとを比較・解析することにより、TLR6がマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識する受容体タンパク質であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、(1)TLR6をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損し、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する反応性を特異的に欠如した非ヒト哺乳動物を、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル動物として使用する方法や、(2)非ヒト哺乳動物が齧歯目動物であることを特徴とする上記(1)記載の使用する方法や、(3)齧歯目動物がマウスであることを特徴とする上記(2)記載の使用する方法に関する。
【0010】
また本発明は、(4)マウスが、マウス遺伝子ライブラリーからマウスESTクローン由来のプローブを用いてスクリーニングすることにより得られたTLR6遺伝子の細胞内領域及び膜貫通領域を含む遺伝子部位の全部又は一部の遺伝子フラグメントを、ポリAシグナルとマーカー遺伝子をもつプラスミドに置換してターゲッティングベクターを構築し、該ターゲッティングベクターを線状化した後胚幹細胞に導入し、TLR6遺伝子機能を欠損した標的胚幹細胞を、マウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションしキメラマウスを作製し、このキメラマウスと野生型マウスとを交配させてヘテロ接合体マウスを作製し、かかるヘテロ接合体マウスをインタークロスすることによって得られるTLR6ノックアウトマウスであることを特徴とする上記(3)記載の使用する方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のTLR6ノックアウトマウス等のマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物は、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対してのみ不応答性であるため、このモデル非ヒト動物を用いることによって、マイコプラズマ肺炎等のマイコプラズマ感染症に対する抑制物質若しくは促進物質又はTLR6に対するアゴニスト若しくはアンタゴニストなどのマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答性の抑制物質若しくは促進物質のスクリーニングが可能となり、ひいては、マイコプラズマ属をはじめとする細菌による感染成立の分子機構の解明における新たな有用情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明におけるマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質としては、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識することができるタンパク質であれば特に制限されるものではなく、例えば、TLR6の一部又は全部を具体的に挙げることができる。かかるマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質は、そのDNA配列情報等に基づき公知の方法で調製することができる。また、本発明においてマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドとは、マイコプラズマに由来するリポタンパク/リポペプチドの他、マイコプラズマ菌体自体又はその処理物、MALP-2等の合成マイコプラズマ由来リポペプチド等を意味する。
【0013】
本発明のマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物とは、野生型非ヒト動物に比べてマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドによる刺激に対する生体又は生体を構成する細胞、組織若しくは器官の反応性が特異的に低下しているか、あるいは失われている非ヒト動物、すなわち、スピロヘーターやグラム陰性菌等のリポプロテイン/リポペプチドによる刺激に対しては正常に生体又は生体を構成する細胞、組織若しくは器官において反応性を有するが、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドにおいては、生体又は生体を構成する細胞、組織若しくは器官の反応性が低下しているか、あるいは失われているマウス、ラット、ウサギ等のヒト以外の哺乳動物をいい、具体的には、TLR6ノックアウトマウス等のTLR6遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト哺乳動物を具体的に挙げることができる。また、上記マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドによる刺激としては、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドを生体に投与するインビボでの刺激や、生体から分離された細胞にマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドを接触させるインビトロでの刺激等を挙げることができる。
【0014】
次に、本発明のマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物の作製方法を、TLR6ノックアウトマウスを例にとって説明する。マウス遺伝子ライブラリーからPCR等の方法により得られた遺伝子断片を用いて、TLR6をコードする遺伝子をスクリーニングし、スクリーニングされたTLR6をコードする遺伝子をウイルスベクター等を用いてサブクローンし、DNAシーケンシングにより特定する。このTLR6をコードする遺伝子の全部又は一部をpMC1ネオ遺伝子カセット等に置換し、3′末端側にジフテリアトキシンAフラグメント(DT-A)遺伝子や単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子等の遺伝子を導入することによって、ターゲットベクターを作製する。
【0015】
この作製されたターゲティングベクターを線状化し、エレクトロポレーション(電気穿孔)法等によってES細胞に導入し、相同的組換えを行い、その相同的組換え体の中から、G418やガンシクロビア(GANC)等の抗生物質により相同的組換えを起こしたES細胞を選択する。また、この選択されたES細胞が目的とする組換え体かどうかをサザンブロット法等により確認することが好ましい。その確認されたES細胞のクローンをマウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションし、かかる胚盤胞を仮親のマウスに戻し、キメラマウスを作製する。このキメラマウスを野生型マウスとインタークロスさせると、ヘテロ接合体マウス(F1マウス:+/-)を得ることができ、また、このヘテロ接合体マウスをインタークロスさせることによって、本発明のTLR6ノックアウトマウスを作製することができる。また、TLR6ノックアウトマウスにおいてTLR6が生起しているかどうかを確認する方法としては、例えば、上記の方法により得られたマウスからRNAを単離してノーザンブロット法等により調べたり、またこのマウスにおけるTLR6の発現をウエスタンブロット法等により調べる方法がある。
【0016】
また、作出されたTLR6ノックアウトマウスがマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対して不応答性であることは、例えば、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドをTLR6ノックアウトマウスのマクロファージ、単核細胞、樹状細胞などの免疫細胞にインビトロ又はインビボで接触せしめ、かかる細胞におけるTNF-α、IL-6、IL-12、IFN-γ等の産生量や、脾臓B細胞の増殖応答や、脾臓B細胞表面でのCD40、CD80、CD86、MHCクラスII等の抗原の発現量や、NF-κB、JNK、IRAK等のTLR6のシグナル伝達経路における分子の活性化を測定することにより確認することができる。そして、本発明のTLR6ノックアウトマウスは、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドの作用機序の解明や、肺炎などの感染症を引き起こすマイコプラズマ感染に対する治療戦略を考案する上で有用なモデルとすることができる。
【0017】
ところで、メンデルの法則に従い出生してくるホモ接合体非ヒト動物には、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質欠損型とその同腹の野生型とが含まれ、これらホモ接合体非ヒト動物における欠損型とその同腹の野生型を同時に用いることによって個体レベルで正確な比較実験をすることができることから、野生型の非ヒト動物、好ましくはマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物と同種の野生型非ヒト動物、さらには同腹の動物を、例えば以下に記載する本発明のマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答の抑制物質又は促進物質のスクリーニングに際して併用することが好ましい。
【0018】
本発明のマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物や該モデル非ヒト動物由来のマクロファージ、脾臓細胞、樹状細胞等の免疫細胞は、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドの作用機序の解明の他、マイコプラズマ肺炎等のマイコプラズマ感染症に対する抑制物質若しくは促進物質又はTLR6に対するアゴニスト若しくはアンタゴニストなどのマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答の抑制物質若しくは促進物質のスクリーニング等に用いることができる。かかる肺炎等のマイコプラズマ感染症に対する抑制物質若しくは促進物質又はTLR6に対するアゴニスト若しくはアンタゴニストなどのマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答の抑制物質若しくは促進物質のスクリーニング方法を、以下に例を挙げて説明する。
【0019】
本発明のマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答の抑制物質又は促進物質のスクリーニング方法としては、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物に由来するマクロファージ、脾臓細胞、樹状細胞等の免疫細胞と、被検物質と、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドとを用いて、かかる免疫細胞におけるマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法や、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物と、被検物質と、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドとを用いて、かかるモデル非ヒト動物におけるマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法等を挙げることができる。
【0020】
上記マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物に由来する免疫細胞を用いたスクリーニング方法としては、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物から得られる免疫細胞と被検物質とをあらかじめインビトロで接触せしめた後、かかる免疫細胞をマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドの存在下で培養し、該免疫細胞におけるマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法や、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物から得られる免疫細胞とマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドとをあらかじめインビトロで接触せしめた後、該免疫細胞を被検物質の存在下で培養し、該免疫細胞におけるマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法を挙げることができる。
【0021】
また、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物にあらかじめ被検物質を投与した後、該非ヒト動物から得られる免疫細胞をマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドの存在下で培養し、該免疫細胞におけるマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法や、本発明のマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物にあらかじめ被検物質を投与した後、該非ヒト動物をマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドにより感染させ、該非ヒト動物から得られる免疫細胞におけるマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法を挙げることができる。
【0022】
また、本発明のマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物をあらかじめマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドにより感染させた後、該非ヒト動物から得られる免疫細胞を被検物質の存在下で培養し、該免疫細胞におけるマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法や、本発明のマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物をあらかじめマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドにより感染させた後、該非ヒト動物に被検物質を投与し、該非ヒト動物から得られる免疫細胞におけるマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法を挙げることができる。
【0023】
他方、本発明のマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物と、被検物質と、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドとを用いて、かかるモデル非ヒト動物におけるマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法としては、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物にあらかじめ被検物質を投与した後、該モデル非ヒト動物をマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドにより感染させ、該モデル非ヒト動物におけるマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法や、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物をあらかじめマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドにより感染させた後、該モデル非ヒト動物に被検物質を投与し、該モデル非ヒト動物におけるマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法を挙げることができる。
【0024】
本発明においてマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答の測定・評価とは、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドと特異的に反応し、細胞内にシグナルを伝達する機能の測定・評価をいい、かかるシグナル伝達機能としては、TNF-α、IL-6、IL-12、IFN-γ等のサイトカインを産生する機能や、亜硝酸イオンを産生する機能や、細胞を増殖する機能や、細胞表面においてCD40、CD80、CD86、MHCクラスII等の抗原を発現する機能や、NF-κB、JNK、IRAK等のTLR9のシグナル伝達経路における分子を活性化させる機能などを具体的に例示することができるが、これらに限定されるものではない。また前記したように、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価するに際し、対照として野生型非ヒト動物、特に同腹の野生型非ヒト動物の測定値と比較・評価することが個体差によるバラツキをなくすることができるので好ましい。
【0025】
本発明のマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドに対する反応性を特異的に欠如したモデル非ヒト動物により、TLR6がマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドの認識に特異的に関与していることが明らかとなったことから、これらのモデル非ヒト動物は、M.pneumoniaeによる原発性非定型肺炎であるヒトマイコプラズマ肺炎、M.mycoidesによるウシ肺疫、M.agalacliaeによるヒツジ・ヤギ乳房炎又はM.gallisepticumによるニワトリ呼吸器疾患等のマイコプラズマ感染症に対する治療戦略を考案する上で、非常に有用なモデル動物となることが考えられる。またTLR6のアゴニストやアンタゴニストは、上記各種マイコプラズマ感染症に対する抑制物質又は促進物質や、TLR6活性の欠失又は異常に起因する疾病等の診断・治療に有用な物質である可能性がある。
【実施例】
【0026】
以下に、実施例・参考例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれら実施例等により限定されるものではない。
参考例(TLR2ノックアウトマウスの作製)
129/SvJマウス遺伝子ライブラリー(ストラタジーン社製)から、ヒトTLR2遺伝子と類似したマウスESTクローン(登録番号D77677)由来のプローブを用いて、TLR2遺伝子をスクリーニングし、pBluescriptベクター(ストラタジーン社製)中でサブクローンし、制限酵素マッピング及びDNA配列決定により特定した。ターゲッティングベクターは、TLR2遺伝子の細胞内領域を含むエクソン部位1.3kbの遺伝子フラグメントを、ポリAシグナルをもつpMC1-neo(ストラタジーン社製)に置換することにより構築した。かかるターゲッティングベクターは、4.8kbの5′遺伝子フラグメントと1.0kbの3′遺伝子フラグメントとをフランキング配列として有し、HSV-tkカセットを5′末端に含んでいる。このターゲッティングベクターをSalIにより線状化し、胎生14.1日目の胚幹細胞(ES細胞)にエレクトポレーションした。上記エレクトロポレーションしたES細胞から、G418及びガンシクロビアに抵抗性を示し、かつ突然変異TLR2対立遺伝子を含有していたものをスクリーニングし、かかるES細胞をC57BL/6マウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションしキメラマウスを作製し、この雄のキメラマウスとC57BL/6雌マウスとを交配させることによってTLR2ノックアウトマウスを作製した(Immunity 11, 443-451, 1999)。
【0027】
実施例1(TLR6ノックアウトマウスの作製)
129/SvJマウス遺伝子ライブラリー(ストラタジーン社製)から、マウスTLR6遺伝子(登録番号AB020808)由来のプローブを用いて、TLR6遺伝子をスクリーニングし、pBluescript II SK(+)ベクター(ストラタジーン社製)中でサブクローンし、制限酵素マッピング及びDNA配列決定により特定した。ターゲッティングベクターは、マウスTLR6の細胞内領域及び膜貫通領域をコードする遺伝子部位(およそ6kb)を、ネオマイシン耐性遺伝子カセット(pMC1-neo;ストラタジーン社製)に置換し、負の選択マーカーとして単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)を挿入することにより構築した(図1)。このターゲッティングベクターを線状化し、胎生14.1日目の胚幹細胞(ES細胞)にエレクトポレーションし、G418及びガンシクロビアに抵抗性を示す126個のクローンを選択し、PCR法及びサザンブロット法により3個のクローンをスクリーニングした。
【0028】
突然変異TLR6対立遺伝子を含有していた3個の標的ESクローンを、C57BL/6マウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションしキメラマウスを作製した。この雄のキメラマウスをC57BL/6雌マウスと交配させ、ヘテロ接合体F1マウスを作製し、かかるヘテロ接合体F1マウスをインタークロスすることによってホモ接合体マウス(TLR6ノックアウトマウス:TLR6-/-)を得た。なお、ホモ接合体マウスの確認は、マウスの尾から抽出した各ゲノムDNAをEcoRIでダイジェストし、図1に示すプローブを用いるサザンブロット法により行った(図2)。本発明のTLR6ノックアウトマウス(TLR6-/-)はメンデルの法則に従い作製することができ、25週目までは顕著な異常を示
さなかった。
【0029】
実施例2(腹腔マクロファージの調製)
野生型マウス(wild-type)、TLR6ノックアウトマウス(TLR6-/-)及びTLR2ノックアウトマウス(TLR2-/-)のそれぞれの腹腔内に4%のチオグリコール酸培地(DIFCO社製)を2mlずつ注入し、3日後に各マウスの腹腔内から腹腔滲出細胞を単離し、これらの細胞を10%のウシ胎仔血清(GIBCO社製)を添加したRPMI1640培地(GIBCO社製)中で37℃にて2時間培養し、氷温のハンクス緩衝液(Hank's buffered salt solution:HBSS;GIBCO社製)で洗浄することにより非付着細胞を取り除き、付着細胞を腹腔マクロファージとして以下の実験に使用した。
【0030】
実施例3(TLR6ノックアウトマウス由来マクロファージのLPS、スピロヘータ由来リポプロテイン、黄色ブドウ球菌由来ペプチドグリカンに対する応答性)
本発明者らは、TLR2が細菌由来のリポプロテインやペプチドグリカンの認識に必須であり、TLR4がLPSやリポタイコ酸の認識に必須であることを、TLR2ノックアウトマウスやTLR4ノックアウトマウスを作製することにより既に明らかにしている。そこで、TLR6ノックアウトマウスのこれらLPS、スピロヘータ由来リポプロテイン、黄色ブドウ球菌由来ペプチドグリカンに対する応答性を調べてみた。実施例2により調製した野生型マウス及びTLR6ノックアウトマウスの腹腔マクロファージ(5×10cells)を、10μMのB.burgdorferi由来リポプロテインOspA若しくはOspC、10μMのT. pallidum由来リポプロテイン17-kDa(17)若しくは47-kDa(47)、100ng/mlのLPS、又は図3に示された各種濃度のペプチドグリカン(PGN)といっしょに24時間培養した。培養後、培養上清中のTNFαの各濃度をELSIAにより測定した。この結果を図3に示す。これらの結果から、TLR6ノックアウトマウス(TLR6-/-)由来のマクロファージは、OspA、OspC、17、47、LPS、PGNに対して野生型マウス由来のマクロファージとほぼ同程度のTNFαを産生することがわかった。
【0031】
実施例4(TLR6ノックアウトマウス由来マクロファージのリポペプチドに対する応答性)
野生型マウス又はTLR6ノックアウトマウス由来腹腔マクロファージのリポペプチドに対する応答性を、合成グラム陰性菌由来リポペプチドJBT3002及び合成マイコプラズマ由来リポペプチドMALP-2を用いて調べた。実施例2により調製した野生型マウス及びTLR6ノックアウトマウスの腹腔マクロファージ(5×10cells)を、図4に示された各種濃度のJBT3002(Dr.Z. Dongより提供された)又はMALP-2(Dr. P. F. Muhlradtより提供された)といっしょに24時間培養し刺激した。培養後、培養上清中のTNF-α(TNFα)及びNO(NO)の産生量を測定した(図4)。なお、NOはNO/NOアッセイキット(同仁科学研究所社製)を使用し、Greiss法により測定した。
【0032】
上記の結果から、野生型マウス由来腹腔マクロファージ(wild-type)は、グラム陰性菌由来リポペプチドJBT3002やマイコプラズマ由来リポペプチドMALP-2の投与量に応じてTNF-α(TNFα)及びNO(NO)の産生量を増加しているのに対して、TLR6ノックアウトマウス由来腹腔マクロファージ(TLR6-/-)は、グラム陰性菌由来リポペプチドJBT3002の投与量に応じてTNF-αやNOの産生を、野生型マウス由来腹腔マクロファージのものと同様に増加していたが、マイコプラズマ由来リポペプチドMALP-2においてはいかなる濃度においてもTNF-αやNOを産生していなかった(図4)。以上のことから、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドがTLR6を介してマクロファージを活性化することがわかった。
【0033】
実施例5(TLR6を介した細胞内シグナル伝達経路の活性化)
TLRのシグナルは、アダプター分子であるMyD88を介してセリン/トレオニンキナーゼであるIRAKを活性化し、次いでMAPキナーゼ及びNF-κBを活性化することが知られている(Immunity 11, 115-122, 1999)。また、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドが、TLR2及びMyD88シグナル伝達経路を介して生体反応を引き起こしていることも知られている(J. Immunol. 164, 554-557, 2000)。そこで野生型マウス、TLR6ノックアウトマウス及びTLR2ノックアウトマウスを用いて細菌由来のリポタンパク/リポペプチドが細胞内シグナル伝達分子を活性化するかどうかを調べてみた。実施例2により調製した野生型マウス(wild-type)、TLR6ノックアウトマウス(TLR6-/-)及びTLR2ノックアウトマウス(TLR2-/-)の腹腔マクロファージ(1×10cells)を、0.1ng/mlのJBT3002又は0.3ng/mlのMALP-2で20分間又は40分間刺激し、各マウスのマクロファージから核蛋白質を抽出し、NF-κBのDNA結合部位を含む特異的プローブといっしょにインキュベートし、電気泳動を行い、オートラジオグラフィーにより視覚化した(図5)。
【0034】
この結果から、野生型マウス由来マクロファージではMALP-2やJBT3002の刺激に対してNF-κBの活性化が認められた。TLR6ノックアウトマウス由来マクロファージではMALP-2に対する活性化は認められなかったが、JBT3002に対する活性化は認められた。また、TLR2ノックアウトマウス由来マクロファージではMALP-2及びJBT3002に対する活性化は認められなかった。これらのことから、TLR6はマイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドの認識に特異的に関与していることが明らかになった。また、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドの認識にはTLR2及びTLR6の両方が必要であり、これら2つの分子がヘテロダイマーを形成し、マイコプラズマ由来リポタンパク/リポペプチドシグナルを伝えていると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のTLR6ノックアウトマウスと野生型マウスの遺伝子地図を示す図である。
【図2】本発明のTLR6ノックアウトマウスのサザンブロット分析の結果を示す図である。
【図3】本発明のTLR6ノックアウトマウス及び野生型マウスにおけるリポプロテイン、LPS又はPGN刺激によるTNFα産生の結果を示す図である。
【図4】本発明のTLR6ノックアウトマウス及び野生型マウスにおけるリポペプチド刺激によるTNF-α又はNOの産生を示す図である。
【図5】本発明のTLR6ノックアウトマウス及び野生型マウスにおけるリポペプチド刺激によるNF-κBの活性化の結果を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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