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明細書 :音響処理装置及び音響処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4907595号 (P4907595)
公開番号 特開2009-271641 (P2009-271641A)
登録日 平成24年1月20日(2012.1.20)
発行日 平成24年3月28日(2012.3.28)
公開日 平成21年11月19日(2009.11.19)
発明の名称または考案の名称 音響処理装置及び音響処理方法
国際特許分類 G06F  17/17        (2006.01)
FI G06F 17/17
請求項の数または発明の数 22
全頁数 32
出願番号 特願2008-119923 (P2008-119923)
出願日 平成20年5月1日(2008.5.1)
審査請求日 平成20年5月14日(2008.5.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】寅市 和男
【氏名】早川 健介
【氏名】樋口政和
【氏名】諸岡 泰男
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100137800、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 正義
【識別番号】100148253、【弁理士】、【氏名又は名称】今枝 弘充
【識別番号】100148079、【弁理士】、【氏名又は名称】梅村 裕明
審査官 【審査官】漆原 孝治
参考文献・文献 特開平10-004358(JP,A)
特開2006-050429(JP,A)
調査した分野 G06F 17/17
特許請求の範囲 【請求項1】
有限回微分可能であって有限台の値を有した基本標本化関数と、
有限回微分可能であって有限台の値を有し前記基本標本化関数が示す波形と異なる波形を示す制御標本化関数と
からなる標本化関数を用いて、
時間方向に並ぶ複数の離散データに対する前記基本標本化関数および前記制御標本化関数を用いたそれぞれの畳み込み演算と、前記標本化関数を用いた各畳み込み演算結果の線形加算とによって、前記離散データ間の補間値を算出する関数処理手段を備え、
前記関数処理手段は、ユーザによって任意の数値に設定可能な可変パラメータを前記制御標本化関数の値に乗算する係数乗算手段を有し、
前記離散データの標本位置をtとしたとき、
前記基本標本化関数をf(t)とし、前記基本標本化関数は、次式
【数1】
JP0004907595B2_000018t.gif
で表され、
前記制御標本化関数をC0(t)=Cr(t)+Cr(-t)とし、前記Cr(t)は、次式
【数2】
JP0004907595B2_000019t.gif
で表され、
ユーザによって任意の数値に設定可能な可変パラメータをαとしたとき、
前記離散データの標本位置[-2,2]間での前記標本化関数をs2(t)とし、前記標本化関数は、次式
【数3】
JP0004907595B2_000020t.gif
で表される
ことを特徴とする音響処理装置。
【請求項2】
前記関数処理手段は、
前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを用いて、前記離散データに対する前記畳み込み演算をそれぞれ実行した後、前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを用いた前記畳み込み演算によって得られた演算結果を、前記標本化関数を用いて線形加算することにより前記補間値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の音響処理装置。
【請求項3】
前記補間値が算出される着目点を挟んで存在する所定数の前記離散データを抽出する離散データ抽出手段を備え、
前記関数処理手段は、
前記離散データ抽出手段によって抽出された各前記離散データ毎に求めた前記着目点までの距離を用いて前記基本標本化関数の値を計算し、前記離散データのそれぞれに対応させた前記基本標本化関数の値を畳み込み演算することより、前記着目点での基本補間値を計算する基本項演算手段と、
前記離散データ抽出手段によって抽出された各前記離散データ毎に求めた前記着目点までの距離を用いて前記制御標本化関数の値を計算し、前記離散データのそれぞれに対応させた前記制御標本化関数の値を畳み込み演算することより、前記着目点での制御補間値を計算する制御項演算手段と、
前記基本項演算手段により算出した前記基本補間値と、前記制御項演算手段により算出した前記制御補間値との線形加算により前記補間値を算出する線形加算手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の音響処理装置。
【請求項4】
前記関数処理手段は、
前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを予め前記線形加算した前記標本化関数を用いて、前記離散データに対する前記畳み込み演算を行うことにより前記補間値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の音響処理装置。
【請求項5】
前記補間値が算出される着目点を挟んで存在する所定数の前記離散データを抽出する離散データ抽出手段を備え、
前記関数処理手段は、
前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを予め前記線形加算した前記標本化関数が記憶されており、各前記離散データ毎に求めた前記着目点までの距離を用いて前記標本化関数の値を計算する関数演算手段と、
前記離散データのそれぞれに対応させた前記標本化関数の値を畳み込み演算することより、前記着目点での補間値を計算する畳み込み演算手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は4記載の音響処理装置。
【請求項6】
前記基本標本化関数は、前記離散データの標本位置の区間[-1,1]において1回だけ微分可能な区分多項式で他の区間は恒等的に0で表される関数であり、
前記制御標本化関数は、前記離散データの標本位置の区間[-2、2]において1回だけ微分可能な区分多項式関数で他の区間では恒等的に0となる関数である
ことを特徴とする請求項1~5のうちいずれか1項記載の音響処理装置。
【請求項7】
値が異なる複数の前記可変パラメータが予め記憶されており、前記複数の可変パラメータの中から前記制御標本化関数に乗算するいずれか1つの前記可変パラメータを選択させるためのセレクタを備える
ことを特徴とする請求項1~のうちいずれか1項記載の音響処理装置。
【請求項8】
前記関数処理手段は、
ユーザの指定したプログラムデータに基づいてユーザ所望の制御形態でなる回路構成を形成するフイールドプログラマブルゲートアレイにプログラミングされる
ことを特徴とする請求項1~のうちいずれか1項記載の音響処理装置。
【請求項9】
前記関数処理手段は、
ユーザの指定したプログラムデータに基づいてユーザ所望の制御形態でなる演算構成を形成するプログラマブル信号処理デバイスにプログラミングされる
ことを特徴とする請求項1~のうちいずれか1項記載の音響処理装置。
【請求項10】
前記基本標本化関数及び前記制御標本化関数は、
着目する前記離散データ間の所定の区分数に応じて予め計算された前記基本標本化関数及び前記制御標本化関数の演算値をそれぞれテーブル化しておき、
前記制御標本化関数のテーブル値と前記離散データとの畳み込み演算と、
該畳み込み演算の出力と前記可変パラメータの乗算と、
該乗算結果と前記基本標本化関数のテーブル値と前記離散データとの畳み込み演算との前記線形加算と
を前記離散データの入力毎に演算して、前記補間値を出力する
ことを特徴とする請求項1~のうちいずれか1項記載の音響処理装置。
【請求項11】
前記離散データ間の前記区分数が複数の場合、それら区分数の最小公倍数の区分数で前記テーブル値を予め演算しておき、前記離散データの入力開始時に設定される前記区分数に応じて、前記テーブル値を最小公倍数/区分数の間隔毎に選択抽出して、該テーブル値と前記離散データとの畳み込み演算を実行する
ことを特徴とする請求項10記載の音響処理装置。
【請求項12】
ユーザにより任意の数値に可変パラメータが設定されるパラメータ設定ステップと、
有限回微分可能であって有限台の値を有した基本標本化関数と、前記可変パラメータが乗算され有限回微分可能であって有限台の値を有し前記基本標本化関数が示す波形と異なる波形を示す制御標本化関数とからなる標本化関数を用いて、時間方向に並ぶ複数の離散データに対する前記基本標本化関数および前記制御標本化関数を用いたそれぞれの畳み込み演算と、前記標本化関数を用いた各畳み込み演算結果の線形加算とによって、前記離散データ間の補間値を算出する関数処理ステップと
を備え
前記離散データの標本位置をtとしたとき、
前記基本標本化関数をf(t)とし、前記基本標本化関数は、次式
【数4】
JP0004907595B2_000021t.gif
で表され、
前記制御標本化関数をC0(t)=Cr(t)+Cr(-t)とし、前記Cr(t)は、次式
【数5】
JP0004907595B2_000022t.gif
で表され、
ユーザによって任意の数値に設定可能な可変パラメータをαとしたとき、
前記離散データの標本位置[-2,2]間での前記標本化関数をs2(t)とし、前記標本化関数は、次式
【数6】
JP0004907595B2_000023t.gif
で表される
ことを特徴とする音響処理方法。
【請求項13】
前記関数処理ステップは、
前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを用いて、前記離散データに対する前記畳み込み演算をそれぞれ実行する畳み込み演算ステップと、
前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを用いた前記畳み込み演算によって得られた演算結果を前記線形加算することにより前記補間値を算出する線形加算ステップと
を備えることを特徴とする請求項12記載の音響処理方法。
【請求項14】
前記補間値が算出される着目点を挟んで存在する所定数の前記離散データを抽出する離散データ抽出ステップを備え、
前記関数処理ステップは、
前記離散データ抽出ステップにおいて抽出された各前記離散データ毎に求めた前記着目点までの距離を用いて前記基本標本化関数の値を計算し、前記離散データのそれぞれに対応させた前記基本標本化関数の値を畳み込み演算することより、前記着目点での基本補間値を計算する基本項演算ステップと、
前記離散データ抽出ステップにおいて抽出された各前記離散データ毎に求めた前記着目点までの距離を用いて前記制御標本化関数の値を計算し、前記離散データのそれぞれに対応させた前記制御標本化関数の値を畳み込み演算することより、前記着目点での制御補間値を計算する制御項演算ステップと、
前記基本項演算ステップにおいて算出した前記基本補間値と、前記制御項演算ステップにおいて算出した前記制御補間値とを線形加算して前記補間値を算出する線形加算ステップとを備える
ことを特徴とする請求項12又は13記載の音響処理方法。
【請求項15】
前記関数処理ステップは、
前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを予め前記線形加算した前記標本化関数を用いて、前記離散データに対する前記畳み込み演算を行うことにより前記補間値を算出する
ことを特徴とする請求項12記載の音響処理方法。
【請求項16】
前記補間値が算出される着目点を挟んで存在する所定数の前記離散データを抽出する離散データ抽出ステップを備え、
前記関数処理ステップは、
前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを予め前記線形加算した前記標本化関数を記憶しておき、各前記離散データ毎に求めた前記着目点までの距離を用いて前記標本化関数の値を計算する関数演算ステップと、
前記離散データのそれぞれに対応させた前記標本化関数の値を畳み込み演算することより、前記着目点での補間値を計算する畳み込み演算ステップと
を備えることを特徴とする請求項12又は15記載の音響処理方法。
【請求項17】
前記基本標本化関数は、前記離散データの標本位置の区間[-1,1]において1回だけ微分可能な区分多項式で他の区間は恒等的に0で表される関数であり、
前記制御標本化関数は、前記離散データの標本位置の区間[-2、2]において1回だけ微分可能な区分多項式関数で他の区間では恒等的に0となる関数である
ことを特徴とする請求項12~16のうちいずれか1項記載の音響処理方法。
【請求項18】
前記パラメータ設定ステップでは、予め記憶された前記数値が異なる複数の前記可変パラメータの中から、前記制御標本化関数に乗算するいずれか1つの前記可変パラメータを選択させる
ことを特徴とする請求項12~17のうちいずれか1項記載の音響処理方法。
【請求項19】
前記関数処理ステップ
ユーザの指定したプログラムデータに基づいてフイールドプログラマブルゲートアレイにプログラミングされたユーザ所望の制御形態でなる回路構成で実行する
ことを特徴とする請求項12~18のうちいずれか1項記載の音響処理方法。
【請求項20】
前記関数処理ステップ
ユーザの指定したプログラムデータに基づいてプログラマブルな信号処理デバイスにプログラミングされたユーザ所望の制御形態でなる演算回路構成で実行する
ことを特徴とする請求項12~19のうちいずれか1項記載の音響処理方法。
【請求項21】
前記関数処理ステップは、
着目する前記離散データ間の所定の区分数に応じて予め計算された前記基本標本化関数及び前記制御標本化関数の演算値をそれぞれテーブル化しておき、
前記制御標本化関数のテーブル値と前記離散データとの畳み込み演算と、
該畳み込み演算の出力と前記可変パラメータの乗算と、
該乗算結果と前記基本標本化関数のテーブル値と前記離散データとの畳み込み演算との前記線形加算と
を前記離散データの入力毎に演算して、前記補間値を出力することを特徴とする請求項12~20のうちいずれか1項記載の音響処理方法。
【請求項22】
前記関数処理ステップは、
前記離散データ間の前記区分数が複数の場合、それら区分数の最小公倍数の区分数で前記テーブル値を予め演算しておき、前記離散データの入力開始時に設定される前記区分数に応じて、前記テーブル値を最小公倍数/区分数の間隔毎に選択抽出して、該テーブル値と前記離散データとの畳み込み演算を実行する
ことを特徴とする請求項21記載の音響処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、音響処理装置及び音響処理方法に関し、例えば所定のサンプリング周波数でサンプリングされた時間方向に並ぶ離散データ間を補間して、入力時のサンプリング周波数よりも高周波で離散データを生成あるいはアナログ信号を生成する際に適用して好適なものである。なお、本明細書においては、高周波の離散間隔で信号生成することとアナログ信号を生成することを同一の処理として「アナログ信号の生成」と称して説明を行うものとする。また、関数の値が局所的な領域で0以外の有限の値を有し、それ以外の領域で0となる場合を「有限台」と称して説明を行うものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルデータのような離散データからアナログ信号を生成する際には、シャノンの標本化定理に基づき導出されたシャノンの標本化関数が広く用いられてきた。ここでシャノンの標本化関数は、図14に示すように、t=0の標本位置のみで1になるとともに、他の全ての標本位置で0となり、理論的に-∞から+∞までその振動が無限に続く波形を示す。このため、実際に各種のプロセッサ等によってシャノンの標本化関数を用い離散データ間の補間処理を実行する際には、強制的に有限区間で処理が打ち切られており、その結果、打ち切りによる誤差が発生するという問題があった。
【0003】
また、このようなシャノンの標本化関数を用いた場合には、再生されるアナログ信号が帯域制限されてしまうことから、例えばCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)に記録された離散データをアナログ信号に変換して再生すると、22.05kHz以上の超音波を再生し得ず、当該超音波の差音により生じる自然な音が再現できないという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題点を解決するために、打ち切り誤差がなく、更に高次の帯域成分までも再生可能な、有限の範囲で集束する標本化関数が考え出されている(例えば、特許文献1参照)。この標本化関数では、原点から前後2個先の標本位置で0に集束するため、少ない計算量で信号再生を行うことができ、更に高周波まで帯域を有することが確かめられている。

【特許文献1】国際公開第99/38090号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような標本化関数を用いたオーディオ装置では、難聴者や高齢者等の各種ユーザや、音楽再生環境、音源、曲調等の各種条件に応じて高周波の帯域成分を可変することができず、状況に応じて周波数特性を自由に調整することができない。そして、その一方で、近年、各ユーザの好みや音楽の種類等に応じてユーザ自身が高周波の帯域成分も含め音質を自由に調整し得るテーラーメイドのオーディオ装置の提供が望まれている。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、ユーザの好みに応じた良好な音質で離散データを再生することができる音響処理装置及び音響処理方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明の請求項1の音響処理装置は、有限回微分可能であって有限台の値を有した基本標本化関数と、有限回微分可能であって有限台の値を有し前記基本標本化関数が示す波形と異なる波形を示す制御標本化関数とからなる標本化関数を用いて、時間方向に並ぶ複数の離散データに対する前記基本標本化関数および前記制御標本化関数を用いたそれぞれの畳み込み演算と、前記標本化関数を用いた各畳み込み演算結果の線形加算とによって、前記離散データ間の補間値を算出する関数処理手段を備え、前記関数処理手段は、ユーザによって任意の数値に設定可能な可変パラメータを前記制御標本化関数の値に乗算する係数乗算手段を有し、前記離散データの標本位置をtとしたとき、前記基本標本化関数をf(t)とし、前記基本標本化関数は、次式
【0008】
【数7】
JP0004907595B2_000002t.gif

【0009】
で表され、前記制御標本化関数をC0(t)=Cr(t)+Cr(-t)とし、前記Cr(t)は、次式
【0010】
【数8】
JP0004907595B2_000003t.gif

【0011】
で表され、ユーザによって任意の数値に設定可能な可変パラメータをαとしたとき、前記離散データの標本位置[-2,2]間での前記標本化関数をs2(t)とし、前記標本化関数は、次式
【0012】
【数9】
JP0004907595B2_000004t.gif

【0013】
で表されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2の音響処理装置は、前記関数処理手段は、前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを用いて、前記離散データに対する前記畳み込み演算をそれぞれ実行した後、前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを用いた前記畳み込み演算によって得られた演算結果を、前記標本化関数を用いて線形加算することにより前記補間値を算出することにより前記補間値を算出することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項3の音響処理装置は、前記補間値が算出される着目点を挟んで存在する所定数の前記離散データを抽出する離散データ抽出手段を備え、前記関数処理手段は、前記離散データ抽出手段によって抽出された各前記離散データ毎に求めた前記着目点までの距離を用いて前記基本標本化関数の値を計算し、前記離散データのそれぞれに対応させた前記基本標本化関数の値を畳み込み演算することより、前記着目点での基本補間値を計算する基本項演算手段と、前記離散データ抽出手段によって抽出された各前記離散データ毎に求めた前記着目点までの距離を用いて前記制御標本化関数の値を計算し、前記離散データのそれぞれに対応させた前記制御標本化関数の値を畳み込み演算することより、前記着目点での制御補間値を計算する制御項演算手段と、前記基本項演算手段により算出した前記基本補間値と、前記制御項演算手段により算出した前記制御補間値との線形加算により前記補間値を算出する線形加算手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項4の音響処理装置は、前記関数処理手段は、前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを予め前記線形加算した前記標本化関数を用いて、前記離散データに対する前記畳み込み演算を行うことにより前記補間値を算出することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項5の音響処理装置は、前記補間値が算出される着目点を挟んで存在する所定数の前記離散データを抽出する離散データ抽出手段を備え、前記関数処理手段は、前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを予め前記線形加算した前記標本化関数が記憶されており、各前記離散データ毎に求めた前記着目点までの距離を用いて前記標本化関数の値を計算する関数演算手段と、前記離散データのそれぞれに対応させた前記標本化関数の値を畳み込み演算することより、前記着目点での補間値を計算する畳み込み演算手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項6の音響処理装置は、前記基本標本化関数は、前記離散データの標本位置の区間[-1,1]において1回だけ微分可能な区分多項式で他の区間は恒等的に0で表される関数であり、前記制御標本化関数は、前記離散データの標本位置の区間[-2、2]において1回だけ微分可能な区分多項式関数で他の区間では恒等的に0となる関数であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項の音響処理装置は、前記数値が異なる複数の前記可変パラメータが予め記憶されており、前記複数の可変パラメータの中から前記制御標本化関数に乗算するいずれか1つの前記可変パラメータを選択させるためのセレクタを備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項の音響処理装置は、ユーザの指定したプログラムデータに基づいてユーザ所望の制御形態でなる回路構成を形成するフイールドプログラマブルゲートアレイにプログラミングされることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項の音響処理装置は、前記関数処理手段は、ユーザの指定したプログラムデータに基づいてユーザ所望の制御形態でなる演算構成を形成するプログラマブル信号処理デバイスにプログラミングされることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項10の音響処理装置は、前記基本標本化関数及び前記制御標本化関数は、着目する前記離散データ間の所定の区分数に応じて予め計算された前記基本標本化関数及び前記制御標本化関数の演算値をそれぞれテーブル化しておき、前記制御標本化関数のテーブル値と前記離散データとの畳み込み演算と、該畳み込み演算の出力と前記可変パラメータの乗算と、該乗算結果と前記基本標本化関数のテーブル値と前記離散データとの畳み込み演算との前記線形加算とを前記離散データの入力毎に演算して、前記補間値を出力することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項11の音響処理装置は、前記離散データ間の前記区分数が複数の場合、それら区分数の最小公倍数の区分数で前記テーブル値を予め演算しておき、前記離散データの入力開始時に設定される前記区分数に応じて、前記テーブル値を最小公倍数/区分数の間隔毎に選択抽出して、該テーブル値と前記離散データとの畳み込み演算を実行することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項12の音響処理方法は、ユーザにより任意の数値に可変パラメータが設定されるパラメータ設定ステップと、有限回微分可能であって有限台の値を有した基本標本化関数と、前記可変パラメータが乗算され有限回微分可能であって有限台の値を有し前記基本標本化関数が示す波形と異なる波形を示す制御標本化関数とからなる標本化関数を用いて、時間方向に並ぶ複数の離散データに対する前記基本標本化関数および前記制御標本化関数を用いたそれぞれの畳み込み演算と、前記標本化関数を用いた各畳み込み演算結果の線形加算とによって、前記離散データ間の補間値を算出する関数処理ステップとを備え、前記離散データの標本位置をtとしたとき、前記基本標本化関数をf(t)とし、前記基本標本化関数は、次式
【0025】
【数10】
JP0004907595B2_000005t.gif

【0026】
で表され、前記制御標本化関数をC0(t)=Cr(t)+Cr(-t)とし、前記Cr(t)は、次式
【0027】
【数11】
JP0004907595B2_000006t.gif

【0028】
で表され、ユーザによって任意の数値に設定可能な可変パラメータをαとしたとき、前記離散データの標本位置[-2,2]間での前記標本化関数をs2(t)とし、前記標本化関数は、次式
【0029】
【数12】
JP0004907595B2_000007t.gif

【0030】
で表されることを特徴とする。
【0031】
また、本発明の請求項13の音響処理方法は、前記関数処理ステップは、前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを用いて、前記離散データに対する前記畳み込み演算をそれぞれ実行する畳み込み演算ステップと、前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを用いた前記畳み込み演算によって得られた演算結果を前記線形加算することにより前記補間値を算出する線形加算ステップとを備えることを特徴とする。
【0032】
また、本発明の請求項14の音響処理方法は、前記補間値が算出される着目点を挟んで存在する所定数の前記離散データを抽出する離散データ抽出ステップを備え、前記関数処理ステップは、前記離散データ抽出ステップにおいて抽出された各前記離散データ毎に求めた前記着目点までの距離を用いて前記基本標本化関数の値を計算し、前記離散データのそれぞれに対応させた前記基本標本化関数の値を畳み込み演算することより、前記着目点での基本補間値を計算する基本項演算ステップと、前記離散データ抽出ステップにおいて抽出された各前記離散データ毎に求めた前記着目点までの距離を用いて前記制御標本化関数の値を計算し、前記離散データのそれぞれに対応させた前記制御標本化関数の値を畳み込み演算することより、前記着目点での制御補間値を計算する制御項演算ステップと、前記基本項演算ステップにおいて算出した前記基本補間値と、前記制御項演算ステップにおいて算出した前記制御補間値とを線形加算して前記補間値を算出する線形加算ステップとを備えることを特徴とする。
【0033】
また、本発明の請求項15の音響処理方法は、前記関数処理ステップは、前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを予め前記線形加算した前記標本化関数を用いて、前記離散データに対する前記畳み込み演算を行うことにより前記補間値を算出することを特徴とする。
【0034】
また、本発明の請求項16の音響処理方法は、前記補間値が算出される着目点を挟んで存在する所定数の前記離散データを抽出する離散データ抽出ステップを備え、前記関数処理ステップは、前記基本標本化関数と前記制御標本化関数とを予め前記線形加算した前記標本化関数を記憶しておき、各前記離散データ毎に求めた前記着目点までの距離を用いて前記標本化関数の値を計算する関数演算ステップと、前記離散データのそれぞれに対応させた前記標本化関数の値を畳み込み演算することより、前記着目点での補間値を計算する畳み込み演算ステップとを備えることを特徴とする。
【0035】
また、本発明の請求項17の音響処理方法は、前記基本標本化関数は、前記離散データの標本位置の区間[-1,1]において1回だけ微分可能な区分多項式で他の区間は恒等的に0で表される関数であり、前記制御標本化関数は、前記離散データの標本位置の区間[-2、2]において1回だけ微分可能な区分多項式関数で他の区間では恒等的に0となる関数であることを特徴とする。
【0036】
また、本発明の請求項18の音響処理方法は、前記パラメータ設定ステップでは、予め記憶された前記数値が異なる複数の前記可変パラメータの中から、前記制御標本化関数に乗算するいずれか1つの前記可変パラメータを選択させることを特徴とする。
【0037】
また、本発明の請求項19の音響処理方法は、ユーザの指定したプログラムデータに基づいてフイールドプログラマブルゲートアレイにプログラミングされたユーザ所望の制御形態でなる回路構成で実行することを特徴とする。
【0038】
また、本発明の請求項20の音響処理方法は、ユーザの指定したプログラムデータに基づいてプログラマブルな信号処理デバイスにプログラミングされたユーザ所望の制御形態でなる演算回路構成で実行することを特徴とする。
【0039】
また、本発明の請求項21の音響処理方法は、前記関数処理ステップは、着目する前記離散データ間の所定の区分数に応じて予め計算された前記基本標本化関数及び前記制御標本化関数の演算値をそれぞれテーブル化しておき、前記制御標本化関数のテーブル値と前記離散データとの畳み込み演算と、該畳み込み演算の出力と前記可変パラメータの乗算と、該乗算結果と前記基本標本化関数のテーブル値と前記離散データとの畳み込み演算との前記線形加算とを前記離散データの入力毎に演算して、前記補間値を出力することを特徴とする。
【0040】
また、本発明の請求項22の音響処理方法は、前記関数処理ステップは、前記離散データ間の前記区分数が複数の場合、それら区分数の最小公倍数の区分数で前記テーブル値を予め演算しておき、前記離散データの入力開始時に設定される前記区分数に応じて、前記テーブル値を最小公倍数/区分数の間隔毎に選択抽出して、該テーブル値と前記離散データとの畳み込み演算を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
本発明の請求項1の音響処理装置及び請求項12の音響処理方法によれば、制御標本化関数に乗算される可変パラメータの数値が反映した補間値を算出できるようにしたことにより、可変パラメータの数値が変更することで、標本化関数で補間処理して得られる補間値が可変パラメータに応じて調整でき、かくして、音楽再生環境、音源、曲調等の各種条件に応じてユーザが可変パラメータを適宜変更することで、当該補間値に基づいて生成した信号の周波数特性が変化してユーザ所望の音質からなる高音質な音楽を再生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下図面に基づいて本発明の実施の形態を詳述する。
【0043】
(1)本発明の基本概念
図1は、本発明の補間処理に用いられる基本標本化関数f(t)及び制御標本化関数c0(t)が示す波形である。ここで、離散データの標本位置をtとし、当該離散データの標本位置[-2,2]間での基本標本化関数f(t)及び制御標本化関数c0(t)からなる標本化関数s2(t)は、次式、
【0044】
【数13】
JP0004907595B2_000008t.gif

【0045】
によって表され、一般的な制御標本化関数をck(t)とし、ck(t)=cr(t-k)+cr(-t-k)と置いたときは、当該離散データの標本位置[-N,N]間で標本化関数sN(t)は次式
【0046】
【数14】
JP0004907595B2_000009t.gif

【0047】
によって表される。なお、αkは後述する可変パラメータを示し、ユーザによって設定可能な任意の数値を示すもので、α1=α2=α3…のようにkによって可変しないものでも良い。
【0048】
ここで基本標本化関数f(t)は、微分可能性に着目した有限台の関数であり、例えば全域において1回だけ微分可能であって、横軸に沿った標本位置tが-1から+1(すなわち、区間[-1,1])にあるときに0以外の有限な値を有し、他の区間は恒等的に0で表される関数である。具体的には基本標本化関数f(t)は、代表的関数形式が2次式であり、全範囲で1回だけ微分可能な凸形状の波形を示し、t=0の標本位置でのみ1になり、t=±1に向けて0に収束してt=±2の標本位置までそのまま0になるという特徴を有する。
【0049】
また、この基本標本化関数f(t)は、有限台のインパルス応答波形の関数でよく、標本位置区間の任意の位置で少なくとも1回微分可能で連続なn次の区分多項式関数で良い。
【0050】
具体的には、このような基本標本化関数f(t)は、次式、
【0051】
【数15】
JP0004907595B2_000010t.gif

【0052】
によって表される。そして、この基本標本化関数f(t)を用いて各離散データに基づく重ね合わせを行うことにより、離散データ間の値を1回だけ微分可能な関数を用いて仮補間することができる。
【0053】
一方、制御標本化関数c0(t)は、微分可能性に着目した有限台の関数であり、例えば全域において1回だけ微分可能であって、横軸に沿った標本位置tが-2から+2(すなわち、区間[-2,2])にあるときに0以外の有限な値を有し、他の区間では恒等的に0で現される関数である。また、制御標本化関数c0(t)は、全範囲で1回だけ微分可能な波形を示し、t=0,±1,±2の各標本位置で0なるという特徴を有する。また、この制御標本化関数c0(t)は、有限台のインパルス応答波形の関数でよく、標本位置区間の任意の位置で少なくとも1回微分可能で連続なn次の区分多項式関数で良い。
【0054】
ここで、制御標本化関数c0(t)は、上述したように制御標本化関数c0(t)=cr(t)+cr(-t)で表され、このcr(t)は具体的に次式、
【0055】
【数16】
JP0004907595B2_000011t.gif

【0056】
によって表される。そして、この制御標本化関数c0(t)を用いて各離散データに基づく重ね合わせを行うことにより、離散データ間の値を1回だけ微分可能な関数を用いて仮補間することができる。
【0057】
標本化関数sN(t)は、このようにして基本標本化関数f(t)に基づいて算出した仮の補間値(以下、これを基本補間値と呼ぶ)と、制御標本化関数c0(t)に基づいて算出した仮の補間値(以下、これを制御補間値と呼ぶ)とを線形加算することにより、離散データ間の値を1回だけ微分可能な関数を用いて補間することができる。
【0058】
因みに、この基本標本化関数f(t)と制御標本化関数c0(t)との線形結合では、下記の6つの条件が成立する関数であることを特徴としている。第1としては、S2(0)=1,S2(±1)=S2(±2)=0となること。第2としては、偶関数、すなわちy軸に関して対称となること。第3としては、標本位置区間[-∞,-2]、[2,∞]で恒等的に0であること。第4としては、各区間[n/2,(n+1)/2](-4≦n≦3)においては高々二次の多項式であること。第5としては、全区間ではC1級、すなわち連続的一回微分可能であること。第6としては、標本位置区間[-1/2,1/2]において、次式
【0059】
【数17】
JP0004907595B2_000012t.gif

【0060】
となること。なお、N=2のときの標本化関数s2(t)については、説明の便宜上、単に標本化関数sN(t)として以下説明する。
【0061】
また、これに加えて、このとき制御標本化関数c0(t)には、ユーザによって任意の数値が設定された可変パラメータαが乗算され得るようになされている。これにより制御標本化関数c0(t)は、t=0,±1,±2の標本位置で0としたまま、標本位置-2から+2までの間で当該可変パラメータαの数値に応じてその波形の振幅が変形され得る。その結果、制御標本化関数c0(t)は、基本標本化関数f(t)との畳み込み演算による算出結果を変更させ得る。このように、可変パラメータαは、数値が変更されることで、標本化関数sN(t)によって算出して得たアナログ信号の周波数特性を変化させ、高域成分の信号レベルを調整し得るようになされている。
【0062】
従って、本発明では、基本標本化関数f(t)の算出結果と、制御標本化関数c0(t)の算出結果とを畳み込み演算して補間値を求める際に、当該制御標本化関数c0(t)に乗算される可変パラメータαによって補間値を調整できるため、これら離散データ間を補間値で補間したアナログ信号の周波数特性を、可変パラメータαによって自由に調整することが可能になる。
【0063】
(2)オーディオ装置の全体構成
次に、上述した標本化関数sN(t)用いて補間処理を実行するオーディオ装置について以下説明する。図2において、1はオーディオ装置を示し、音響処理部2がフイールドプログラマブルゲートアレイ(以下、これをFPGAと呼ぶ)3にプログラミングされて設けられている。因みに、このFPGA3は複数個の回路ブロックと配線ブロックとがチップ上に規則的に並べられ、当該回路ブロック及び配線ブロックの内部には回路の電気的な接続または非接続をプログラムできるデバイスが多数配置され、ユーザがこれらのデバイスをプログラム(定義)することによりブロック内部とブロック間接続をフイールド(利用現場)にて設計できるようになされている。
【0064】
因みに、このオーディオ装置1は、外部インターフェイス4を介してパーソナルコンピュータ5からシャノンの標本化関数や、本発明による上述した数9の標本化関数、これらとは全く異なる標本化関数等、他の種々の標本化関数がFPGA3にプログラミングされることにより、当該FPGA3の回路ブロック及び配線ブロック間の接続状態を変更して各種標本化関数による補間処理を実行し得るハードウエアに回路構成を変更するようになされている。かくして、このオーディオ装置1では、FPGA3を単にプログラミングするだけでユーザ所望の回路構成に変更できるので、最適な標本化関数を模索する際に、各種標本化関数に応じてその都度、回路基板を実際に作製する必要がなく、その分だけコスト低減を図ることができる。
【0065】
なお、上述した実施の形態において、図2においてはFPGA3を適用して、FPGA3での実現方法を示しているが、本発明はこれに限らず、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)の様なプログラマブルな信号処理デバイスで実現することも可能であり、例えばCPU(Central Processing Unit)及びメモリ等から構成された制御部を適用するようにしてもよい。
【0066】
ここで、本発明のオーディオ装置1では、外部インターフェイス4を介してパーソナルコンピュータ5から上述した数9の標本化関数sN(t)の条件を満たす、数11の基本標本化関数f(t)と、cr(t)が数12で表される制御標本化関数c0(t)とがFPGA3にプログラミングされ得る。
【0067】
これにより、オーディオ装置1は、FPGA3が所定のプログラムに従って全体を統括制御することにより、入力部6によって例えばCDやDVD等の種々の記録媒体を再生し、その結果得られる時間方向に並ぶ複数の離散データを音響処理部2へ順次送出する。因みに、離散データとは、例えば滑らかに変化する連続的な信号を一定の時間間隔で標本化し、その結果得られたサンプリングデータを量子化することにより得られた離散的なデータである。
【0068】
ここで、FPGA3には、ユーザが自由に可変パラメータαの数値を設定できるパラメータ設定部7が接続されており、ユーザがパラメータ設定部7により可変パラメータαを任意の数値に設定すると、設定された数値を示す情報がパラメータ設定部7から音響処理部2に送出され得る。音響処理装置としての音響処理部2は、標本化関数sN(t)を用いて離散データ間を補間して擬似的にサンプリング周波数を上げるいわゆるオーバーサンプリング処理を実行する際に、可変パラメータαの数値が反映された補間値を算出し、これを出力部8へ送出する。
【0069】
出力部8は、音響処理部2から所定の周期で補間値が入力されると、これに対応するアナログ信号に変換し、当該アナログ信号に基づく音楽を放音し得る。このようにオーディオ装置1は、可変パラメータαの数値が変更されることより、当該可変パラメータαの数値が反映されたユーザ所望の高音質なアナログ信号を生成し得るようになされている。
【0070】
また、FPGA3には、複数のセレクタボタン9a,9b,9cを備えたセレクタ10が接続されている。このセレクタ10には、異なる数値の可変パラメータαが各セレクタボタン9a,9b,9c毎に予め対応付けられており、セレクタボタン9a,9b,9cのいずれか1つが選択されることにより対応した可変パラメータαの数値が制御標本化関数c0(t)に乗算され、標本化関数sN(t)による補間処理が実行され得るようになされている。
【0071】
具体的には、この実施の形態の場合、例えばセレクタボタン9aが選択されると、可変パラメータαを-1.5とした標本化関数sN(t)によって補間処理が実行され、他のセレクタボタン9bが選択されると、可変パラメータαを-0.25とした標本化関数sN(t)によって補間処理が実行され、さらに他のセレクタボタン9cが選択されると、可変パラメータαを1.5とした標本化関数sN(t)によって補間処理が実行され得るようになされている。
【0072】
これにより、このオーディオ装置1では、ユーザがパラメータ設定部7で可変パラメータαの数値を任煮の数値に設定できるとともに、他方でセレクタボタン9a,9b,9cのいずれか1つを単に選択するだけで、パラメータ設定部7による可変パラメータαの細かな設定をその都度行うことなく、所望の可変パラメータαを用いた補間処理を容易に実行し得るようになされている。
【0073】
(3)音響処理部の回路構成
(3-1)音響処理部における補間処理の概略説明
実際上、FPGA3には、図3に示すような回路構成を有する音響処理部2がプログラミングされて設けられ得る。この音響処理部2は、所定数(この場合4つ)の離散データを順次抽出して保持する離散データ抽出部15と、離散データ抽出部15で抽出保持された所定数の離散データを一度に受け取り、これら離散データを用いて補間処理を実行する関数処理部14とから構成されており、入力部6から順次入力される離散データ間を所定の時間間隔でデータ補間し得るようになされている。
【0074】
関数処理部14は、離散データを基に標本化関数sN(t)のうち基本標本化関数f(t)の項を演算処理する基本項演算部16と、当該離散データを基に標本化関数sN(t)のうち制御標本化関数c0(t)の項を演算処理する制御項演算部17と、制御項演算部17の算出結果に可変パラメータαを乗算する係数乗算部18と、基本項演算部16の算出結果と係数乗算部18の算出結果とを線形加算する線形加算部19とから構成されている。
【0075】
この実施の形態の場合、離散データ抽出部15は、順次入力される離散データの中から直前の4つの離散データを抽出し、次に新たな離散データが入力されるまでこの4つの離散データを保持して、これら4つの離散データを基本項演算部16及び制御項演算部17へそれぞれ送出する。
【0076】
基本項演算部16は、所定の記憶手段(図示せず)に基本標本化関数f(t)を記憶しており、離散データ間の補間位置が指定されると、この補間位置と離散データとの間の距離に基づいて基本標本化関数f(t)の値を計算する。この基本項演算部16は、離散データ抽出部15から送出される4つの離散データ毎にそれぞれ基本標本化関数f(t)の値が計算され得る。また、基本項演算部16は、離散データ毎に得られた4つの基本標本化関数f(t)の値毎にそれぞれ対応する離散データの値を乗算した後、これら4つの離散データに対応する畳み込み演算を行い、この畳み込み演算の算出結果を線形加算部19へ送出する。
【0077】
これと同時に制御項演算部17は、所定の記憶手段(図示せず)に制御標本化関数c0(t)を記憶しており、補間位置が指定されると、この補間位置と離散データとの間の距離に基づいて制御標本化関数c0(t)の値を計算する。この制御項演算部17は、離散データ抽出部15から送出される4つの離散データ毎にそれぞれ制御標本化関数c0(t)の値が計算され得る。また、制御項演算部17は、離散データ毎に得られた4つの制御標本化関数c0(t)の値毎にそれぞれ対応する離散データの値を乗算した後、これらを加算することにより4つの離散データに対応する畳み込み演算を行い、この畳み込み演算の算出結果を係数乗算部18へ送出する。
【0078】
係数乗算部18は、制御項演算部17から受け取った制御標本関数c0(t)の畳み込み演算の算出結果に可変パラメータαを乗算し、その結果得られた可変パラメータ乗算結果を線形加算部19へ送出する。線形加算部19は、基本項演算部16から受け取った基本標本化関数f(t)の畳み込み演算の算出結果と、係数乗算部18から受け取った可変パラメータ乗算結果とを線形加算することにより、4つの離散データに対応する線形加算結果を得る。この線形加算によって得られる値は、所定の2つの離散データ間の補間位置における補間値となる。因みに、この補間位置は、予め設定された所定の時間間隔、具体的には離散データの入力間隔に対応する周期Tの1/Nの周期(=T/N)毎にその値が更新される。
【0079】
(3-2)4つの離散データに基づいて補間値を求める具体例
次に、時間的に連続して並ぶ4つの離散データに基づいて所定の2つの離散データ間の補間値を算出する補間処理について、連続する4つの離散データと、補間位置である着目点との位置関係を示す図4を用い、以下説明する。この図4では、標本位置t1、t2、t3、t4のそれぞれに対応して順次入力される離散データd1、d2、d3、d4の各値をY(t1)、Y(t2)、Y(t3)、Y(t4)とし、標本位置t2及びt3間の所定位置(すなわち補間位置(t2から距離b))t0に対応した補間値yを求める場合を考える。
【0080】
本実施の形態で用いる標本化関数sN(t)は、t=±2の標本位置で0に収束するため、t=±2までの離散データd1、d2、d3、d4を考慮に入れればよい。従って、図4に示す補間値yを求める場合には、t=t1、t2、t3、t4に対応した4つの離散データd1、d2、d3、d4のみを考慮すればよいことになり、演算量を大幅に削減することができる。しかも、t=±3以上の各離散データ(図示せず)については、本来考慮すべきであるが演算量や精度等を考慮して無視しているというわけではなく、理論的に考慮する必要がないため、打ち切り誤差は発生しない。
【0081】
図5に示すように、離散データ抽出部15は、3つのシフト回路20a,20b,20cを備えており、連続する離散データが入力されると、各シフト回路20a,20b,20c毎に当該離散データを例えばCDのサンプリング周期(44.1kHz)でシフトし、各シフト回路20a,20b,20cで直前の離散データd1、d2、d3、d4をそれぞれ1つ抽出保持し得る。すなわち、離散データ抽出部15は、連続する4つの離散データd1、d2、d3、d4が入力されると、最新の離散データd4をそのまま基本項演算部16の基本項計算回路21a及び制御項演算部17の制御項計算回路22aへそれぞれ送出する。
【0082】
また、離散データ抽出部15は、連続する4つの離散データd1、d2、d3、d4からなる離散データ列をシフト回路20aに送出し、当該シフト回路20bによって離散データ列をシフトして最新の離散データd4から1つ前の離散データd3を抽出し、これを基本項演算部16の基本項計算回路21b及び制御項演算部17の制御項計算回路22bへそれぞれ送出する。
【0083】
さらに、離散データ抽出部15は、残りのシフト回路20b、20cにも離散データ列を順次送出してゆき、シフト回路20bで離散データ列をさらにシフトさせて最新の離散データd4から2つ前の離散データd2を基本項計算回路21c及び制御項計算回路22cへそれぞれ送出するとともに、シフト回路20cで離散データ列をさらにシフトさせて最新の離散データd4から3つ前の離散データd1を基本項計算回路21d及び制御項計算回路22dへそれぞれ送出する。
【0084】
ここで図6及び図7は、本実施の形態の基本項演算部16及び制御項演算部17における所定の補間位置t0に対する補間処理の概略を示す図である。補間処理の内容としては、上述したように先ず始めに、基本項演算部16における基本補間値を算出する演算処理(以下、これを単に基本補間値算出処理と呼ぶ)と、制御項演算部17及び係数乗算部18における制御補間値を算出する演算処理(以下、これを単に制御補間値算出処理と呼ぶ)とが実行される。以下、これら図6及び図7を用い、基本補間値算出処理と制御補間値算出処理とについて説明する。
【0085】
(3-2-1)基本補間値算出処理
基本補間値算出処理の内容としては、図6(A)~(D)に示すように、各標本位置t1、t2、t3、t4毎に、基本標本化関数f(t)のt=0(中心位置)におけるピーク高さを一致させ、このときの補間位置t0におけるそれぞれの基本標本化関数f(t)の値を求めることになる。
【0086】
図6(A)に示す標本位置t1における離散データd1に着目すると、補間位置t0と標本位置t1との距離は1+bとなる。従って、標本位置t1に基本標本化関数f(t)の中心位置を合わせたときの補間位置t0における基本標本化関数の値はf(1+b)となる。実際には、離散データd1の値Y(t1)に一致するように基本標本化関数f(t)の中心位置のピーク高さを合わせるため、上述したf(1+b)をY(t1)倍した値f(1+b)・Y(t1)が求めたい値となる。f(1+b)の計算は基本項演算部16の基本項計算回路21aで行われ、f(1+b)にY(t1)を乗算する計算は基本項演算部16の基本項乗算回路23aで行われる(図5)。
【0087】
同様に、図6(B)に示す標本位置t2における離散データd2の値Y(t2)に着目すると、補間位置t0と標本位置t2との距離はbとなる。従って、標本位置t2に基本標本化関数f(t)の中心位置を合わせたときの補間位置t0における基本標本化関数の値はf(b)となる。実際には、離散データd2の値Y(t2)に一致するように基本標本化関数f(t)の中心位置のピーク高さを合わせるため、上述したf(b)をY(t2)倍した値f(b)・Y(t2)が求めたい値となる。f(b)の計算は基本項演算部16の基本項計算回路21bで行われ、f(b)にY(t2)を乗算する計算は基本項演算部16の基本項乗算回路23bで行われる(図5)。
【0088】
図6(C)に示す標本位置t3における離散データd3の値Y(t3)に着目すると、補間位置t0と標本位置t3との距離は1-bとなる。従って、標本位置t3に基本標本化関数f(t)の中心位置を合わせたときの補間位置t0における基本標本化関数の値はf(1-b)となる。実際には、離散データの値Y(t3)に一致するように基本標本化関数f(t)の中心位置のピーク高さを合わせるため、上述したf(1-b)をY(t3)倍した値f(1-b)・Y(t3)が求めたい値となる。f(1-b)の計算は基本項演算部16の基本項計算回路21cで行われ、f(1-b)にY(t3)を乗算する計算は基本項演算部16の基本項乗算回23c路で行われる(図5)。
【0089】
図6(D)に示す標本位置t4における離散データd4の値Y(t4)に着目すると、補間位置t0と標本位置t4との距離は2-bとなる。従って、標本位置t4に基本標本化関数f(t)の中心位置を合わせたときの補間位置t0における基本標本化関数の値はf(2-b)となる。実際には、離散データd4の値Y(t4)に一致するように基本標本化関数f(2-b)の中心位置のピーク高さを合わせるため、上述したf(2-b)をY(t4)倍した値f(2-b)・Y(t4)が求めたい値となる。f(2-b)の計算は基本項演算部16の基本項計算回路21dで行われ、f(2-b)にY(t4)を乗算する計算は基本項演算部16の基本項乗算回路23dで行われる。(図5)
そして、基本項演算部16は、補間位置t0の着目点に対応して得られた4つの値f(1+b)・Y(t1)、f(b)・Y(t2)、f(1-b)・Y(t3)、f(2-b)・Y(t4)を、基本項畳み込み回路24において畳み込み演算し、着目点に対応する基本補間値yaが計算される。因みに、この実施の形態の場合、補間位置t0の着目点に対応して得られた値f(1+b)・Y(t1)及びf(2-b)・Y(t4)は、図6(A)及び(D)に示すように0となるため、基本補間値yaは、{f(b)・Y(t2)}+{f(1-b)・Y(t3)}となる。
【0090】
(3-2-2)制御補間値算出処理
一方、制御補間値算出処理の内容としては、図7(A)~(D)に示すように、各標本位置t1、t2、t3、t4毎に、制御標本化関数c0(t)のt=0(中心位置)を一致させて、各制御標本化関数c0(t)に対応した離散データd1、d2、d3、d4の値Y(t1)、Y(t2)、Y(t3)、Y(t4)を乗算し、このときの補間位置t0におけるそれぞれの制御標本化関数c0(t)の値を求めることになる。
【0091】
図7(A)に示す標本位置t1における離散データd1の値Y(t1)に着目すると、補間位置t0と標本位置t1との距離は1+bとなる。従って、標本位置t1に制御標本化関数c0(t)の中心位置を合わせたときの補間位置t0における制御標本化関数の値はc0(1+b)となる。実際には、離散データd1の値Y(t1)に対応させて制御標本化関数c0(t)の波形高さを合わせるため、上述したc0(1+b)をY(t1)倍した値c0(1+b)・Y(t1)が求めたい値となる。c0(1+b)の計算は制御項演算部17の制御計算回路22aで行われ、c0(1+b)にY(t1)を乗算する計算は制御項演算部17の制御項乗算回路25aで行われる(図5)。
【0092】
同様に、図7(B)に示す標本位置t2における離散データd2の値Y(t2)に着目すると、補間位置t0と標本位置t2との距離はbとなる。従って、標本位置t2に制御標本化関数c0(t)の中心位置を合わせたときの補間位置t0における制御標本化関数の値はc0(b)となる。実際には、離散データd2の値Y(t2)に対応させて制御標本化関数c0(t)の波形高さを合わせるため、上述したc0(b)をY(t2)倍した値c0(b)・Y(t2)が求めたい値となる。c0(b)の計算は制御項演算部17の制御計算回路22bで行われ、c0(b)にY(t2)を乗算する計算は制御項演算部17の制御項乗算回路25bで行われる(図5)。
【0093】
図7(C)に示す標本位置t3における離散データd3の値Y(t3)に着目すると、補間位置t0と標本位置t3との距離は1-bとなる。従って、標本位置t3に制御標本化関数c0(t)の中心位置を合わせたときの補間位置t0における制御標本化関数の値はc0(1-b)となる。実際には、離散データd3の値Y(t3)に対応させて制御標本化関数c0(t)の波形高さを合わせるため、上述したc0(1-b)をY(t3)倍した値c0(1-b)・Y(t3)が求めたい値となる。c0(1-b)の計算は制御項演算部17の制御計算回路22cで行われ、c0(1-b)にY(t3)を乗算する計算は制御項演算部17の制御項乗算回路25cで行われる(図5)。
【0094】
図7(D)に示す標本位置t4における離散データd4の値Y(t4)に着目すると、補間位置t0と標本位置t4との距離は2-bとなる。したがって、標本位置t4に制御標本化関数c0(t)の中心位置を合わせたときの補間位置t0における制御標本化関数の値はc0(2-b)となる。実際には、離散データd4の値Y(t4)に対応させて制御標本化関数c0(2-b)の波形高さを合わせるため、上述したc0(2-b)をY(t4)倍した値c0(2-b)・Y(t4)が求めたい値となる。c0(2-b)の計算は制御項演算部17の制御計算回路22dで行われ、c0(2-b)にY(t4)を乗算する計算は制御項演算部17の制御項乗算回路25dで行われる(図5)。
【0095】
そして、補間位置t0の着目点に対応して得られた4つの値c0(1+b)・Y(t1)、c0(b)・Y(t2)、c0(1-b)・Y(t3)、c0(2-b)・Y(t4)は、制御項演算部17の制御項畳み込み回路26によって畳み込み演算された後、係数乗算部18において可変パラメータαが乗算され、これにより着目点に対応する制御補間値ybが計算される。
【0096】
(3-2-3)補間値演算処理
線形加算部19は、基本項演算部16により算出された着目点に対応する基本補間値yaと、制御項演算部17及び係数乗算部18により算出された着目点に対応する制御補間値ybとを線形加算することにより、補間位置t0における補間値yを出力し得るようになされている。
【0097】
(3-3)可変パラメータの数値を変更したときの補間処理結果
かかる構成に加えて、音響処理部2は、パラメータ設定部7によって係数乗算部18の可変パラメータαの数値が変更されることにより標本化関数sN(t)の値が変更され、その結果、補間値yが変動してアナログ信号の周波数特性を変化させ得るようになされている。ここでは、可変パラメータαを変更した際に、標本化関数sN(t)がどのように変化するかについて、図1に示した基本標本化関数f(t)が示す波形と、制御標本化関数c0(t)が示す波形とを合成した波形に着目して以下説明する。
【0098】
基本標本化関数f(t)が示す波形と、制御標本化関数c0(t)が示す波形とを合成した標本化関数sN(t)の波形は、図8に示すように、可変パラメータαの数値によって大きく異なるものとなる。この実施の形態の場合、可変パラメータαを-1.5、-0.25、1.5に順次変化させてゆくと、-2≦t≦-1の領域と、1≦t≦2の領域とでは、標本化関数sN(t)の波長の振幅が次第に高くなり波形の極性が反転することを確認した。一方、-1≦t≦0の領域と、0≦t≦1の領域とでは、標本化関数sN(t)の波長の振幅が次第に低くなり波形の極性が反転することを確認した。
【0099】
次に、テスト曲としてCDに記録されたヴァイオリン曲「Zigeunerweisen(ツィゴイナーヴァイゼン)」を、オーディオ装置1において約23秒間再生した。このとき、音響処理部2では、可変パラメータαを-0.25、-1.5及び1.5にそれぞれ設定し、約23秒の間に入力された離散データを補間処理した。そして、このときの各標本化関数sN(t)で補間処理したアナログ信号の周波数特性について比較したところ、図9に示すような結果が得られた。
【0100】
図9に示したように、これら可変パラメータαの数値を変えた各標本化関数sN(t)による補間処理では、可変パラメータαの数値を変化させても、いずれも20kHz以上の高音域で信号レベルが上昇し、従来のシャノンの標本化関数を用いた場合に比べて高域成分を再生できることが確認できた。また、可変パラメータαを1.5に設定したときには、約26kHz未満で信号レベルが低下したものの、約26kHz以上の高音域で、44.1kHz付近を除き信号レベルが上昇し、可変パラメータαを-0.25及び-1.5に設定した場合に比べて高域成分が再生できることが確認できた。
【0101】
一方、可変パラメータαを-1.5に設定したときには、約26kHz付近で信号レベルが急激に低下したものの、約26kHz未満で信号レベルが全体的に上昇するとともに、44.1kHz付近を除き約26kHzよりも高い領域でも信号レベルが上昇し、可変パラメータαを-0.25及び-1.5に設定した場合に比べて異なる信号レベルで高域成分を再生できることが確認できた。
【0102】
さらに、可変パラメータαを-0.25に設定したときには、44.1kHz付近を除いて全体的に信号レベルが上昇し、可変パラメータαを1.5及び-1.5に設定した場合に比べて異なる信号レベルで高域成分を再生できることが確認できた。
【0103】
次に、テスト曲として再生周波数を10kHz及び20kHzに固定した音を、オーディオ装置1で再生した。このとき、音響処理部2は、可変パラメータαの数値を-5~5まで順次切り換えてゆき、入力部6から順次入力された離散データを補間処理した。そして、このときの可変パラメータαが異なる各標本化関数sN(t)で補間処理して得たアナログ信号の信号レベルについて比較したところ、図10に示すような結果が得られた。
【0104】
図10に示したように、10kHzの再生周波数では、可変パラメータαを大きくしてゆくと、信号レベルが次第に下降してゆき、可変パラメータαが2及び3間のときに信号レベルが急速に下降し、その後、再び信号レベルが急激に上昇することが確認できた。一方、20kHZの再生周波数では、可変パラメータαを大きくしてゆくと、信号レベルが次第に下降してゆき、可変パラメータαが4付近のときに信号レベルが急速に下降し、その後、再び信号レベルが急激に上昇することが確認できた。このように、音響処理部2では、可変パラメータαを変動させることにより、同じ再生周波数でも異なる信号レベルで再生できることが確認できた。
【0105】
(4)動作及び効果
以上の構成において、音響処理部2では、基本項演算部16に基本標本化関数f(t)を記憶しておき、離散データ抽出部15によって抽出された各離散データd1、d2、d3、d4毎に補間位置t0までの距離をtとして基本標本化関数f(t)の値を計算し、離散データd1、d2、d3、d4のそれぞれに対応させた基本標本化関数f(t)の値を畳み込み演算することより、補間位置t0での基本補間値yaを計算するようにした。
【0106】
また、これとは別に音響処理部2では、制御項演算部17に制御標本化関数c0(t)を記憶しておき、離散データ抽出部15によって抽出された各離散データd1、d2、d3、d4毎に補間位置t0での距離をtとして制御標本化関数c0(t)の値を計算し、離散データd1、d2、d3、d4のそれぞれに対応させた制御標本化関数c0(t)の値を畳み込み演算した後、ユーザによって任意の数値に設定された可変パラメータαを、制御標本化関数c0(t)の畳み込み演算結果に乗算することにより、補間位置t0での制御補間値ybを計算するようにした。
【0107】
そして、この音響処理部2では、このようにして算出した基本補間値yaと制御補間値ybとを線形加算することにより離散データ間の補間値yを計算するようにしたことにより、制御標本化関数c0(t)の値に乗算される可変パラメータαの数値が反映した補間値yを算出できる。
【0108】
従って、音響処理部2では、可変パラメータαの数値が変更されることにより、標本化関数sN(t)で補間処理して得られる補間値yが可変パラメータαに応じて調整でき、かくして、音楽再生環境、音源、曲調等の各種条件に応じてユーザが可変パラメータαを適宜変更することで、アナログ信号の周波数特性が調整されたユーザ所望の音質からなる高音質な音楽を再生させることができる。
【0109】
また、音響処理部2では、標本化関数sN(t)として全域で1回だけ微分可能な有限台の基本標本化関数f(t)及び制御標本化関数c0(t)を用い、当該制御標本化関数c0(t)に可変パラメータαを乗算しているため、従来のシャノンの標本化関数を用いた場合に比べて離散データ間の補間処理に必要な演算量を大幅に減らすことができ、またシャノンの標本化関数を用いた場合に生じる打ち切り誤差が発生せず、折り返し歪みの発生を防止することができる。
【0110】
この実施の形態の場合では、特に補間位置t0を挟んで前後2つずつの標本位置と同じかそれよりも狭い範囲において標本化関数sN(t)の波形の値を0に収束させることが可能になるため、この標本化関数sN(t)を用いてデータ補間等を行う際に、着目位置の前後2つずつ合計4つの離散データを用いるだけでよくなり、シャノンの標本化関数を用いた場合に比べて処理負担の格段的な軽減が可能になる。
【0111】
また、この実施の形態の場合、標本化関数sN(t)を、基本標本化関数f(t)と制御標本化関数c0(t)とに分離して別々に記憶し、それぞれ個別に離散データに対して畳み込み演算を行い、制御標本化関数c0(t)と離散データとの畳み込み演算結果に対して可変パラメータαを乗算して、これに基本標本化関数sN(t)と離散データとの畳み込み演算結果を加算して出力信号を得るようにしているため、制御標本化関数c0(t)は一つ持てば良く、数式を極力単純化させることができ、制御標本化関数c0(t)の可変制御を容易に行うことができる。
【0112】
(5)他の実施の形態
なお、上述した実施の形態においては、基本項演算部16及び制御項演算部17によって、離散データ間にある複数の補間値を1つずつ順次算出してゆくようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、離散データ間にある複数の補間値を一括に算出するようにしてもよい。
【0113】
この場合、図5との同一部分に同一符号を付して示す図11のように、音響処理部30は、離散データ抽出部15と変換関数行列演算部31とから構成され、当該変換関数行列演算部31において、離散データd1、d2、d3、d4の値Y(t1)、Y(t2)、Y(t3)、Y(t4)と、変換行列A(後述する)とを乗算することにより、離散データ間の複数の補間値yk-2(1),yk-2(2),…,yk-2(n)を順次又は一括して算出し得るようになされている。
【0114】
因みに、この実施の形態では、図4との対応部分に同一符合を付して示す図12のように、連続する4つの離散データd1、d2、d3、d4のうち過去2番目の離散データd2と過去3番目の離散データd3との間を1~nまで区分けして所定の区分数(この場合、n+1)で区切り、各位置での補間値yk-2(1),yk-2(2),…,yk-2(n)を算出する場合について以下説明する。
【0115】
ここで、変換行列Aは次式、
【0116】
【数18】
JP0004907595B2_000013t.gif

【0117】
により表される。この変換行列Aは、4つの離散データd1、d2、d3、d4を用いて標本化関数sN(t)を算出し、離散データd2及びd3間のn個の補間値yk-2(1),yk-2(2),…,yk-2(n)を算出することから、標本化関数sN(t)を要素としてn行4列からなる。そして、変換行列Aは、離散データd1、d2、d3、d4の値Y(t1)、Y(t2)、Y(t3)、Y(t4)を要素とした1列の行列Xが乗算されることにより補正値yk-2(1),yk-2(2),…,yk-2(n)を求めることができる。すなわち、補正値yk-2(1),yk-2(2),…,yk-2(n)は、次式、
【0118】
【数19】
JP0004907595B2_000014t.gif

【0119】
により求めることができる。
【0120】
ここで、変換行列Aは、次式の基本項行列Bと、可変パラメータαを乗算した次式の制御項行列Cとの和であり、A=B+αCで表される。
【0121】
【数20】
JP0004907595B2_000015t.gif

【0122】
【数21】
JP0004907595B2_000016t.gif

【0123】
基本項行列Bは基本標本化関数f(t)を要素とし、制御項行列Cは制御標本化関数c(t)を要素としている(tは補間点と標本位置との距離を示す)。従って、補間値yk-2(1),yk-2(2),…,yk-2(n)は、次式、
【0124】
【数22】
JP0004907595B2_000017t.gif

【0125】
により表される。
【0126】
実際上、変換関数行列演算部31は、図13に示すように、基本項行列B及び行列Xの演算を実行する基本項演算手段としての基本項行列演算回路32と、制御項行列C及び行列Xの演算を実行する制御項演算手段としての制御項行列演算回路33と、制御項行列演算回路33の算出結果に可変パラメータαを乗算する複数の係数乗算部18a1、18a2、…、18anと、基本項行列演算回路32からの算出結果と係数乗算部18a1、18a2、…、18anからの算出結果とを線形加算する複数の線形加算部19a1、19a2、…、19anとから構成されている。
【0127】
基本項行列演算回路32は、離散データ間の区分数に応じて基本標本化関数としての基本項行列Bを予め計算しておき、これにより得られた演算値をテーブル化した基本項行列Bを所定の記憶手段に記憶している。そして、基本項行列演算回路32は、離散データ抽出部15から離散データd1、d2、d3、d4を受け取ると、所定の記憶手段に予め記憶されたテーブル値としての基本項行列Bに、離散データd1、d2、d3、d4の値Y(t1)、Y(t2)、Y(t3)、Y(t4)を一列の行列Xとして乗算する。そして、基本項行列演算回路32は、その結果得られた行列の各行の値を、それぞれ対応する線形加算部19a1、19a2、…、19anへ送出する。すなわち、基本項行列演算回路32は、算出結果として得られた行列の1行目の{f1(n+1)・Y(t1)}+{f2(1)・Y(t2)}+{f3(n-1)・Y(t3)}+{f4(2n-1)・Y(t4)}を線形加算部19a1に送出し、次の2行目の{f1(n+2)・Y(t1)}+{f2(2)・Y(t2)}+{f3(n-2)・Y(t3)}+{f4(2n-2)・Y(t4)}を次の線形加算部19a2に送出し、以後3行目~n行目までの各値をそれぞれ異なる線形加算部19a3、…、19anへ送出する。
【0128】
一方、制御項行列演算回路33は、離散データ間の区分数に応じて制御標本化関数としての制御項行列Cを予め計算しておき、これにより得られた演算値をテーブル化した制御項行列Cを所定の記憶手段に記憶している。そして、制御項行列演算回路33は、離散データ抽出部15から離散データd1、d2、d3、d4を受け取ると、所定の記憶手段に予め記憶されたテーブル値としての制御項行列Cに、離散データd1、d2、d3、d4の値Y(t1)、Y(t2)、Y(t3)、Y(t4)を一列の行列Xとして乗算する。そして、制御項行列演算回路33は、その結果得られた行列の各行の値を、それぞれ対応する係数乗算部18a1、18a2、…、18anへ送出する。すなわち、制御項行列演算回路33は、演算結果として得られた行列の1行目の{c1(n+1)・Y(t1)}+{c2(1)・Y(t2)}+{c3(n-1)・Y(t3)}+{c4(2n-1)・Y(t4)}を係数乗算部18a1に送出し、次の2行目の{c1(n+2)・Y(t1)}+{c2(2)・Y(t2)}+{c3(n-2)・Y(t3)}+{c4(2n-2)・Y(t4)}を次の係数乗算部18a2に送出し、以後3行目~n行目までの各値をそれぞれ異なる係数乗算部18a3、…、18anへ送出する。
【0129】
各係数乗算部18a1、18a2、…、18anは、パラメータ設定部7でユーザにより設定された可変パラメータαを、制御項行列演算回路33で算出された行列の各行の値に乗算し、これを対応する線形加算部19a1、19a2、…、19anへ送出する。各線形加算部19a1、19a2、…、19anは、基本項行列演算回路32から受け取った算出結果と、係数乗算部18a1、18a2、…、18anから受け取った算出結果とを同じ行毎に線形加算し、これにより補間値yk-2(1),yk-2(2),…,yk-2(n)を生成し得る。
【0130】
以上の構成において、音響処理部30では、上述した実施の形態と同様の効果に加えて、基本項行列演算回路32に基本項行列Bを記憶しておくとともに、制御項行列演算回路33に制御項行列Cを記憶しておき、離散データd1、d2、d3、d4の値Y(t1)、Y(t2)、Y(t3)、Y(t4)を一列の行列Xとして乗算するようにしたことにより、連続する4つの離散データd1、d2、d3、d4のうち所定の離散データd2及びd3間の補間位置1~nまでの補間値yk-2(1),yk-2(2),…,yk-2(n)を一括して容易に算出できる。
【0131】
なお、上述した実施の形態においては、着目する離散データ間の区分数がn+1で一定数である離散データ列にのみ適用し得る基本項行列B及び制御項行列Cを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、着目する離散データ間の区分数が異なる複数の離散データ列に適用し得る基本項行列及び制御項行列を用いるようにしてもよい。すなわち、この場合、変換関数行列演算部では、区分数が異なる複数の離散データ列に適用するため、これら複数の区分数の最小公倍数の区分数で基本項行列B及び制御項行列Cを予め演算してテーブル化しておき、離散データの入力開始時に設定される区分数に応じて、基本項行列B及び制御項行列Cのうちから当該区分数に対応した演算値をテーブル値として選択して、選択したテーブル値と離散データとの畳み込み演算を実行する。これにより、変換関数行列演算部では、1つの基本項行列B及び制御項行列Cのみを予め記憶しているだけで、区分数が異なる複数の離散データ列に対応することができることから、記憶手段での記憶容量を減らし、装置全体としての処理負担を低減できる。
【0132】
また、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、標本化関数sN(t)を全域で1回だけ微分可能な有限台の関数としたが、微分可能回数を2回以上に設定してもよい。
【0133】
また、上述した実施の形態においては、標本化関数sN(t)を用いて補間処理を行うことによりアナログ信号を生成するようにした場合についてのべたが、本発明はこれに限らず、標本化関数sN(t)を用いて補間処理を行うことにより単にオーバーサンプリングし、その後にアナログデジタル変換器でアナログ信用を生成するようにしてもよい。
【0134】
さらに、上述した実施の形態においては、標本化関数sN(t)はt=±2で0に収束するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、t=±3以上で0に収束するようにしてもよい。例えば、t=±3で0に収束するようにした場合には、離散データ抽出部15によって直前の6つの離散データを抽出し、関数処理部14によってこれら6つの離散データに対して標本化関数sN(t)の値が計算され得る。
【0135】
さらに、上述した実施の形態においては、基本項演算部16に基本標本化関数f(t)を記憶し、これとは別に制御項演算部17に制御標本化関数c0(t)を記憶しておき、それぞれ基本標本化関数f(t)及び制御標本化関数c0(t)毎に離散データd1、d2、d3、d4に対する畳み込み演算を行って基本補間値yaと制御補間値ybとを算出した後、基本補間値yaと制御補間値ybとの線形和加算で補間値yを算出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、基本標本化関数f(t)及び制御標本化関数c0(t)を一つの標本化関数sN(t)として記憶しておき、可変パラメータαを変更した標本化関数sN(t)を用い、離散データd1、d2、d3、d4に対する畳み込み演算を行って補間値yを直接算出するようにしてもよい。
【0136】
この場合、具体的な構成として、関数処理手段は、基本標本化関数f(t)と制御標本化関数c0(t)とを予め線形加算した標本化関数sN(t)を記憶し、各離散データ毎に求めた着目点までの距離を用いて標本化関数sN(t)の値を計算する演算手段と、離散データのそれぞれに対応させた標本化関数sN(t)の値を畳み込み演算することより、着目点での補間値を計算する畳み込み演算手段とを備えるようにすればよい。これにより関数処理手段では、予め標本化関数sN(t)が演算されているため、基本標本化関数f(t)及び制御標本化関数c0(t)を別々に演算する場合に比べて乗算回数が少なくなり、演算時間の低減や、乗算器の低減が図れ、処理速度の遅い演算デバイスを用いる場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明による基本標本化関数の波形と、制御標本化関数の波形との関係を示す概略図である。
【図2】オーディオ装置の回路構成を示すブロック図である。
【図3】音響処理部の回路構成を示すブロック図である。
【図4】4つの離散データと着目点との位置関係を示す概略図である。
【図5】音響処理部の詳細構成を示すブロック図である。
【図6】本発明による音響処理部2による基本標本化関数を用いた補間処理を示す概略図である。
【図7】本発明による音響処理部2による制御標本化関数を用いた補間処理を示す概略図である。
【図8】可変パラメータを変化させたときの標本化関数の波形を示す概略図である。
【図9】可変パラメータを変化させたときの周波数特性を示す概略図である。
【図10】再生周波数を固定して可変パラメータの数値を変更したときの信号レベルを示す概略図である。
【図11】他の実施の形態による音響処理部の回路構成を示すブロック図である。
【図12】4つの離散データと着目点との位置関係と、補間位置を示す概略図である。
【図13】他の実施の形態による音響処理部の詳細構成を示すブロック図である。
【図14】従来におけるシャノンの標本化関数の波形を示す概略図である。
【符号の説明】
【0138】
2 音響処理部(音響処理装置)
3 FPGA(フイールドプログラマブルゲートアレイ)
10 セレクタ
14 関数処理部(関数処理手段)
15 離散データ抽出部(離散データ抽出手段)
16 基本項演算部(基本項演算手段)
17 制御項演算部(制御項演算手段)
18 係数乗算部(係数乗算手段)
19 線形加算部(線形加算手段)
32 基本項行列演算回路(基本項演算手段)
33 制御項行列演算回路(制御項演算手段)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13