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明細書 :フィルタ、フィルタの設計システム及び設計方法及び設計プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4968850号 (P4968850)
公開番号 特開2009-302664 (P2009-302664A)
登録日 平成24年4月13日(2012.4.13)
発行日 平成24年7月4日(2012.7.4)
公開日 平成21年12月24日(2009.12.24)
発明の名称または考案の名称 フィルタ、フィルタの設計システム及び設計方法及び設計プログラム
国際特許分類 H03H  17/06        (2006.01)
FI H03H 17/06 615E
H03H 17/06 635B
H03H 17/06 635C
請求項の数または発明の数 24
全頁数 40
出願番号 特願2008-151982 (P2008-151982)
出願日 平成20年6月10日(2008.6.10)
審査請求日 平成20年6月10日(2008.6.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】寅市 和男
【氏名】川崎 秀二
個別代理人の代理人 【識別番号】100107010、【弁理士】、【氏名又は名称】橋爪 健
審査官 【審査官】畑中 博幸
参考文献・文献 特開平06-029786(JP,A)
国際公開第2004/008637(WO,A1)
国際公開第2007/102611(WO,A1)
特開2001-177412(JP,A)
調査した分野 H03H 17/06
特許請求の範囲 【請求項1】
有限の区分的多項式で構成される標本化函数の各多項式の接続点である節点値をフィルタ係数とした低域通過型基本フィルタLと、前記低域通過型基本フィルタを周波数スケーリングした複数の低域通過型フィルタLと、前記フィルタ係数の符号をひとつおきに反転して係数とした高域通過型基本フィルタHと、前記高域通過型基本フィルタを周波数スケーリングした複数の高域通過型フィルタHと、により、次式で表されるように縦続接続して形成された通過域部フィルタGpassと、
【数1】
JP0004968850B2_000032t.gif
ここで、Gpassの各添え字については以下の通り。
α,β:累乗値(同じLP,N1や[1-HP,N2]をα回、β回接続することを示す。ここで、記載の都合上、N1=N(1),N2=N(2) とした。)
(1) :Lp,N1においてHのラダー接続の段数
(2) :[1-Hp,N2]においてLのラダー接続の段数
:周波数を(P+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタと、により、次式で表されるように縦続接続して形成された阻止域部フィルタGstopと、
【数2】
JP0004968850B2_000033t.gif
α,β:累乗値(同じLpk,Nkや[1-Hql,Nl]をα回、β回接続することを示す。)
:Lpk,NkにおいてHのラダー接続の段数
:[1-Hql,Nl]においてLのラダー接続の段数
,q:周波数をそれぞれ、(p+1)、(q+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

を備え、
前記通過域部フィルタGpass及び前記阻止域部フィルタGstopを縦続接続することで形成されたフィルタ。

【請求項2】
前記スケーリングについては、次式の関係となることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【数3】
JP0004968850B2_000034t.gif

【請求項3】
前記標本化函数ψでは基本ローパスフィルタは、次のように表されることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタ。

【数4】
JP0004968850B2_000035t.gif
ここで
k:サンプリング時間間隔
:フィルタ係数
【請求項4】
前記標本化函数は、2次の区分多項式であり、次式で与えられることを特徴とする請求項3に記載のフィルタ。
【数5】
JP0004968850B2_000036t.gif

【請求項5】
前記低域通過型基本フィルタL(z)は、
入力信号を入力し、それぞれ1サンプル遅延させる縦続接続された第1~第6の遅延素子と、
前記入力信号に第1の係数を乗算する第1の乗算器と、
前記第2の遅延素子の出力に第2の係数を乗算する第2の乗算器と、
前記第4の遅延素子の出力に前記第2の係数を乗算する第3の乗算器と、
前記第6の遅延素子の出力に前記第1の係数を乗算する第4の乗算器と、
前記第1の乗算器の出力と前記第2の乗算器の出力を加算する第1の加算器と、
前記第1の加算器の出力と前記第3の遅延素子の出力を加算する第2の加算器と、
前記第2の加算器の出力と前記第3の乗算器の出力を加算する第3の加算器と、
前記第3の加算器の出力と前記第4の乗算器の出力を加算して、出力信号を出力する第4の加算器と
を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフィルタ。

【請求項6】
前記低域通過型フィルタL(z)は、
入力信号を入力し、それぞれM+1サンプル遅延させる縦続接続された第1~第6の遅延素子ブロックと、
前記入力信号に第1の係数を乗算する第1の乗算器と、
前記第2の遅延素子ブロックの出力に第2の係数を乗算する第2の乗算器と、
前記第4の遅延素子ブロックの出力に前記第2の係数を乗算する第3の乗算器と、
前記第6の遅延素子ブロックの出力に前記第1の係数を乗算する第4の乗算器と、
前記第1の乗算器の出力と前記第2の乗算器の出力を加算する第1の加算器と、
前記第1の加算器の出力と前記第3の遅延素子ブロックの出力を加算する第2の加算器と、
前記第2の加算器の出力と前記第3の乗算器の出力を加算する第3の加算器と、
前記第3の加算器の出力と前記第4の乗算器の出力を加算して、出力信号を出力する第4の加算器と
を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフィルタ。

【請求項7】
前記第1の係数及び前記第2の係数は、それぞれ、-1/16及び9/16であることを特徴とする請求項5又は6に記載のフィルタ。

【請求項8】
前記高域通過型基本フィルタH(z)は、
入力信号を入力し、それぞれ1サンプル遅延させる縦続接続された第1~第6の遅延素子と、
前記入力信号に第1の係数を乗算する第1の乗算器と、
前記第2の遅延素子の出力に第2の係数を乗算する第2の乗算器と、
前記第4の遅延素子の出力に前記第2の係数を乗算する第3の乗算器と、
前記第6の遅延素子の出力に前記第1の係数を乗算する第4の乗算器と、
前記第1の乗算器の出力と前記第2の乗算器の出力を加算する第1の加算器と、
前記第1の加算器の出力と前記第3の遅延素子の出力を加算する第2の加算器と、
前記第2の加算器の出力と前記第3の乗算器の出力を加算する第3の加算器と、
前記第3の加算器の出力と前記第4の乗算器の出力を加算して、出力信号を出力する第4の加算器と
を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項9】
前記高域通過型フィルタH(z)は、
入力信号を入力し、それぞれM+1サンプル遅延させる縦続接続された第1~第6の遅延素子ブロックと、
前記入力信号に第1の係数を乗算する第1の乗算器と、
前記第2の遅延素子ブロックに第2の係数を乗算する第2の乗算器と、
前記第4の遅延素子ブロックの出力に前記第2の係数を乗算する第3の乗算器と、
前記第6の遅延素子ブロックの出力に前記第1の係数を乗算する第4の乗算器と、
前記第1の乗算器の出力と前記第2の乗算器の出力を加算する第1の加算器と、
前記第1の加算器の出力と前記第3の遅延素子ブロックの出力を加算する第2の加算器と、
前記第2の加算器の出力と前記第3の乗算器の出力を加算する第3の加算器と、
前記第3の加算器の出力と前記第4の乗算器の出力を加算して、出力信号を出力する第4の加算器と
を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項10】
前記第1の係数及び前記第2の係数は、それぞれ、1/16及び-9/16であることを特徴とする請求項8又は9に記載のフィルタ。
【請求項11】
有限の区分的多項式で構成される標本化函数の各多項式の接続点である節点値をフィルタ係数とした低域通過型基本フィルタLと、前記低域通過型基本フィルタを周波数スケーリングした複数の低域通過型フィルタLと、前記フィルタ係数の符号をひとつおきに反転した係数とした高域通過型基本フィルタHと、前記高域通過型基本フィルタを周波数スケーリングした複数の高域通過型フィルタHと、により、次式で表されるように縦続接続して形成された通過域部フィルタGpassと、

【数6】
JP0004968850B2_000037t.gif
ここで、Gpassの各添え字については以下の通り。
α,β:累乗値(同じLP,N1や[1-HP,N2]をα回、β回接続することを示す。ここで、記載の都合上、N1=N(1),N2=N(2) とした。)
(1) :Lp,N1においてHのラダー接続の段数
(2) :[1-Hp,N2]においてLのラダー接続の段数
:周波数を(P+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHと、により、次式で表されるように縦続接続して形成された阻止域部フィルタGstopと、
【数7】
JP0004968850B2_000038t.gif
α,β:累乗値(同じLpk,Nkや[1-Hql,Nl]をα回、β回接続することを示す。)
:Lpk,NkにおいてHのラダー接続の段数
:[1-Hql,Nl]においてLのラダー接続の段数
,q:周波数をそれぞれ、(p+1)、(q+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

を備え、前記通過域部フィルタGpass及び前記阻止域部フィルタGstopを縦続接続することで形成されたフィルタを設計する設計システムであって、
前記設計システムは、
設計仕様・条件、前記低域通過型基本フィルタL・前記複数の低域通過型フィルタL・高域通過型基本フィルタH・前記複数の高域通過型フィルタHの特性、設計されたフィルタ構成を定義するためのデータを記憶する記憶部と、
前記記憶部にアクセスして、フィルタを設計する処理を実行するための処理部と
を備え、

処理部は、通過域、阻止域、遮断特性を表す通過域と阻止域の比Rを含む設計仕様を入力部又は記憶部から入力する手段と、
処理部は、最大スケール値Pを、入力部又は記憶部から入力する、又は、初期設定値に基づき定める手段と、
処理部は、前記通過域部フィルタGpassにおいて設定した乗算器数の上限 Npass∈{1,2,・・・} を越えないように、
(N(1),N(2),α,β)⊂{0,1,2,・・・}
の総当たりにより、該当する前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHの特性を記憶部から読み出し、前記通過域部フィルタGpassの特性を求め、前記設計仕様を満たす組合わせのうち、乗算器数が最少となるものを選択することにより、前記通過域部Gpassを形成し、求めたN(1)、N(2)、α、βを記憶部に記憶する手段と、
処理部は、前記阻止域部フィルタGstop

【数8】
JP0004968850B2_000039t.gif
において、
(N,N,αpk,βql)⊂{0,1,2,・・・}
の総当たりにより、該当する前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタH特性を記憶部から読み出し、前記阻止部フィルタGstopの特性を求め、
G=Gpassstop
を計算したとき、前記設計仕様を満たす組合わせのうち、乗算器数が最少となるものを選択することにより、求めたN,N,αpk,βqlを記憶部に記憶し、

処理部は、前記通過域部フィルタGpass及び前記阻止域部フィルタGstopを縦続接続することより設計仕様を満たす特性を有するフィルタGを形成する手段と、
を含むフィルタの設計システム。

【請求項12】
処理部は、最大スケール値Pを、次式となる最小のpをPとすることを特徴とする請求項11に記載のフィルタの設計システム。

【数9】
JP0004968850B2_000040t.gif
ここで、
:-3[dB]ラインとクロスする周波数(設計仕様で与えられる。)
(0):Lの-3[dB]点(予め設定される。)
(p):Lの-3[dB]点

【請求項13】
処理部は、記憶部からN(1),N(2),α,β,N,N,αpk,βplを含むフィルタ構成を定めるためのパラメータを読み出し、
処理部は、記憶部から、前記パラメータに該当する前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHの特性を記憶部から読み出し、
処理部は、Gpass及びGstopを上述の各式に従い形成し、G=Gpassstopに従いフィルタGを形成し、前記フィルタGの特性を記憶部に記憶する、及び/又は、表示部に表示することを特徴とする請求項11又は12に記載のフィルタの設計システム。

【請求項14】
処理部は、記憶部からN(1),N(2),α,β,N,N,αpk,βplを含むフィルタ構成を定めるためのパラメータを読み出し、各値を出力IF部を介して、フィルタを構成するためのフィルタ回路に出力し、前記フィルタ回路に、Gpass及びGstopを上述の各式に従い形成し、G=Gpassstopに従いフィルタGを形成させるようにしたことを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載のフィルタの設計システム。

【請求項15】
前記フィルタ回路は、フィルタGをコンピュータのシミュレーションで形成する、又は、ソフトウェア、又は、ハードウェアで形成することを特徴とする請求項14に記載のフィルタの設計システム。

【請求項16】
有限の区分的多項式で構成される標本化函数の各多項式の接続点である節点値をフィルタ係数とした低域通過型基本フィルタLと、前記低域通過型基本フィルタを周波数スケーリングした複数の低域通過型フィルタLと、前記フィルタ係数の符号をひとつおきに反転して係数とした高域通過型基本フィルタHと、前記高域通過型基本フィルタを周波数スケーリングした複数の高域通過型フィルタHと、により、次式で表されるように縦続接続して形成された通過域部フィルタGpassと、

【数10】
JP0004968850B2_000041t.gif
ここで、Gpassの各添え字については以下の通り。
α,β:累乗値(同じLP,N1や[1-HP,N2]をα回、β回接続することを示す。ここで、記載の都合上、N1=N(1),N2=N(2) とした。)
(1) :Lp,N1においてHのラダー接続の段数
(2) :[1-Hp,N2]においてLのラダー接続の段数
:周波数を(P+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHと、により、次式で表されるように縦続接続して形成された阻止域部フィルタGstopと、

【数11】
JP0004968850B2_000042t.gif
α,β:累乗値(同じLpk,Nkや[1-Hql,Nl]をα回、β回接続することを示す。)
:Lpk,NkにおいてHのラダー接続の段数
:[1-Hql,Nl]においてLのラダー接続の段数
,q:周波数をそれぞれ、(p+1)、(q+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

を備え、前記通過域部フィルタGpass及び前記阻止域部フィルタGstopを縦続接続することで形成されたフィルタの設計方法であって、
処理部は、通過域、阻止域、遮断特性を表す通過域と阻止域の比Rを含む設計仕様を入力部又は記憶部から入力するステップと、
処理部は、最大スケール値Pを、入力部又は記憶部から入力する、又は、初期設定値に基づき定めるステップと、
処理部は、前記通過域部フィルタGpassにおいて設定した乗算器数の上限 Npass∈{1,2,・・・} を越えないように、
(N(1),N(2),α,β)⊂{0,1,2,・・・}
の総当たりにより、該当する前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHの特性を記憶部から読み出し、前記通過域部フィルタGpassの特性を求め、前記設計仕様を満たす組合わせのうち、乗算器数が最少となるものを選択することにより、前記通過域部Gpassを形成し、求めたN(1)、N(2)、α、βを記憶部に記憶するステップと、
処理部は、前記阻止域部フィルタGstop

【数12】
JP0004968850B2_000043t.gif
において、
(N,N,αpk,βql)⊂{0,1,2,・・・}
の総当たりにより、該当する前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHの特性を記憶部から読み出し、前記阻止部フィルタGstopの特性を求め、
G=Gpassstop
を計算したとき、前記設計仕様を満たす組合わせのうち、乗算器数が最少となるものを選択することにより、求めたN,N,αpk,βqlを記憶部に記憶し、

処理部は、前記通過域部フィルタGpass及び前記阻止域部フィルタGstopを縦続接続することより設計仕様を満たす特性を有するフィルタGを形成するステップと、
を含むフィルタの設計方法。

【請求項17】
処理部は、最大スケール値Pを、次式となる最小のpをPとすることを特徴とする請求項16に記載のフィルタの設計方法。
【数13】
JP0004968850B2_000044t.gif
ここで、
:-3[dB]ラインとクロスする周波数(設計仕様で与えられる。)
(0):Lの-3[dB]点(予め設定される。)
(p):Lの-3[dB]点

【請求項18】
処理部は、記憶部からN(1),N(2),α,β,N,N,αpk,βplを含むフィルタ構成を定めるためのパラメータを読み出し、
処理部は、記憶部から、前記パラメータに該当する前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHの特性を記憶部から読み出し、
処理部は、Gpass及びGstopを上述の各式に従い形成し、G=Gpassstopに従いフィルタGを形成し、前記フィルタGの特性を記憶部に記憶する、及び/又は、表示部に表示することを特徴とする請求項16又は17に記載のフィルタの設計方法。

【請求項19】
処理部は、記憶部からN(1),N(2),α,β,N,N,αpk,βplを含むフィルタ構成を定めるためのパラメータを読み出し、各値を出力IF部を介して、フィルタを構成するためのフィルタ回路に出力し、前記フィルタ回路に、Gpass及びGstopを上述の各式に従い形成し、G=Gpassstopに従いフィルタGを形成させるようにしたことを特徴とする請求項16乃至18のいずれかに記載のフィルタの設計方法。

【請求項20】
有限の区分的多項式で構成される標本化函数の各多項式の接続点である節点値をフィルタ係数とした低域通過型基本フィルタLと、前記低域通過型基本フィルタを周波数スケーリングした複数の低域通過型フィルタLと、前記フィルタ係数の符号をひとつおきに反転した係数とした高域通過型基本フィルタHと、前記高域通過型基本フィルタを周波数スケーリングした複数の高域通過型フィルタHと、により、次式で表されるように縦続接続して形成された通過域部フィルタGpassと、

【数14】
JP0004968850B2_000045t.gif
ここで、Gpassの各添え字については以下の通り。
α,β:累乗値(同じLP,N1や[1-HP,N2]をα回、β回接続することを示す。ここで、記載の都合上、N1=N(1),N2=N(2) とした。)
(1) :Lp,N1においてHのラダー接続の段数
(2) :[1-Hp,N2]においてLのラダー接続の段数
:周波数を(P+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHと、により、次式で表されるように縦続接続して形成された阻止域部フィルタGstopと、

【数15】
JP0004968850B2_000046t.gif
α,β:累乗値(同じLpk,Nkや[1-Hql,Nl]をα回、β回接続することを示す。)
:Lpk,NkにおいてHのラダー接続の段数
:[1-Hql,Nl]においてLのラダー接続の段数
,q:周波数をそれぞれ、(p+1)、(q+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

を備え、前記通過域部フィルタGpass及び前記阻止域部フィルタGstopを縦続接続することで形成されたフィルタをコンピュータで設計するための設計プログラムであって、
処理部が、通過域、阻止域、遮断特性を表す通過域と阻止域の比Rを含む設計仕様を入力部又は記憶部から入力するステップと、
処理部が、最大スケール値Pを、入力部又は記憶部から入力する、又は、初期設定値に基づき定めるステップと、
処理部が、前記通過域部フィルタGpassにおいて設定した乗算器数の上限 Npass∈{1,2,・・・} を越えないように、
(N(1),N(2),α,β)⊂{0,1,2,・・・}
の総当たりにより、該当する前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHの特性を記憶部から読み出し、前記通過域部フィルタGpassの特性を求め、前記設計仕様を満たす組合わせのうち、乗算器数が最少となるものを選択することにより、前記通過域部Gpassを形成し、求めたN(1)、N(2)、α、βを記憶部に記憶するステップと、
処理部が、前記阻止域部フィルタGstop

【数16】
JP0004968850B2_000047t.gif
において、
(N,N,αpk,βql)⊂{0,1,2,・・・}
の総当たりにより、該当する前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHの特性を記憶部から読み出し、前記阻止部フィルタGstopの特性を求め、
G=Gpassstop
を計算したとき、前記設計仕様を満たす組合わせのうち、乗算器数が最少となるものを選択することにより、求めたN,N,αpk,βqlを記憶部に記憶し、

処理部が、前記通過域部フィルタGpass及び前記阻止域部フィルタGstopを縦続接続することより設計仕様を満たす特性を有するフィルタGを形成するステップと、
をコンピュータに実行させるためのフィルタの設計プログラム。

【請求項21】
有限の区分多項式で表されるインパルス応答関数の各多項式の接続点である節点値を係数とする低域通過型フィルタ及び高域通過型フィルタを基本とし、該低域通過型フィルタ及び高域通過型フィルタを周波数スケーリングした複数のスケーリングフィルタを、通過帯域幅が所定の要求幅以上となる様に選択し、該選択された複数のスケーリングフィルタを用いて、通過域特性を所定の要求特性となるように構成した通過域フィルタと、阻止域特性を所定の要求特性となるように構成した阻止域フィルタとを縦続構成で形成することを特徴とするフィルタ。
【請求項22】
有限の区分多項式で表されるインパルス応答関数の各多項式の接続点である節点値を係数とする低域通過型フィルタ及び高域通過型フィルタを基本とし、該低域通過型フィルタ及び高域通過型フィルタを周波数スケーリングした複数のスケーリングフィルタを、通過帯域幅が所定の要求幅以上となる様に選択し、該選択された複数のスケーリングフィルタを用いて、要求特性を満足する低域通過型のスケーリングフィルタを選定し、該選定された低域通過型のスケーリングフィルタに対して、高域通過型のスケーリングフィルタをラダー状に接続することにより、フィルタの通過域特性を形成することを特徴とするフィルタ。
【請求項23】
有限の区分多項式で表されるインパルス応答関数の各多項式の接続点である節点値を係数とする低域通過型フィルタ及び高域通過型フィルタを基本とし、該低域通過型フィルタ及び高域通過型フィルタを周波数スケーリングした複数のスケーリングフィルタを、通過帯域幅が所定の要求幅以上となる様に選択し、該選択された複数のスケーリングフィルタを用いて、要求特性を満足する高域通過型のスケーリングフィルタを選定し、該選定された高域通過型のスケーリングフィルタに対して、低域通過型のスケーリングフィルタをラダー状に接続することにより、フィルタの通過域特性を形成することを特徴とするフィルタ。
【請求項24】
請求項22又は請求項23に記載されたフィルタに対し、阻止域の特性を要求特性とする補正フィルタを前記低域域通過型フィルタおよび高域通過型フィルタにより構成し、該補正フィルタを前記通過域特性フィルタに縦続接続するように構成することを特徴とするフィルタ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ、フィルタの設計システム及び設計方法及び設計プログラムに係り、特に、信号のノイズ除去及び特定周波数帯の信号のみを通過させる、区分多項式函数の区間内分割値によるFIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答)フィルタ、FIRフィルタの設計システム及び設計方法及び設計プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば、非特許文献1には、低折返しマルチレベルFIRフィルタのための非最大間引きフィルタバンクの設計と実装について開示されている。
また、非特許文献2には、低折返し雑音で所望周波数特性を実現するフィルタバンクが開示されている。
さらに、非特許文献3には、完全再構成非最大間引きコサイン変調フィルタバンクの一実現法が開示されている。
その他にも、特許文献1には、サンプリングに使用するクロックの周期の1/2単位よりも細かな単位で遅延時間を設定できるようにしたFIRフィルタが開示されている。
また、特許文献2には、実数値を持つ信号に対する最大間引きフィルタバンクと、その特別の場合であるコサイン変調フィルタバンクを効率的に実現することができるフィルタバンク及びフィルタリング方法が開示されている。
【0003】

【非特許文献1】河野、高沢他 「低折返しマルチレベルFIRフィルタのための非最大間引きフィルタバンクの設計と実装」 計測自動制御学会東北支部 第229回研究集会(2006.6.9) 資料番号 229-8 p1-11
【非特許文献2】高沢、阿部他 「低折返し雑音で所望周波数特性を実現するフィルタバンク」 計測自動制御学会東北支部 第215回研究集会(2004.5.27) 資料番号 215-7 p1-10
【非特許文献3】伊丹、渡部他 「完全再構成非最大間引きコサイン変調フィルタバンクの一実現法」 電子情報通信学会論文誌 A Vol.J83-A No.9 pp.1037-1046 2000年9月
【特許文献1】特開2006-20191号公報
【特許文献2】特開2001-102931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、急峻な減衰特性を持つ高性能フィルタを構成する場合、膨大な入力タップ数、遅延回路及び乗算器を必要とし、所定の特性を持つフィルタ出力が安定するまで長大な経過時間を要していた。
さらに、近年、音、映像などのマルチメディアが音響信号圧縮(MP3)や映像信号圧縮(MPEG)等の形式で配信されているが、情報の洪水や、ジャギー等の発生による品質劣化が課題となっている。また、圧縮処理において、周波数領域での帯域分離が行われるが、過大な乗算器や遅延素子が必要となっている。
また、その他にも、従来のREMEZフィルタはSINC函数(無限区間の函数)を基本函数としているため、実際の回路では有限区間に打ち切る必要があるので、ノイズの発生原因となる可能性があることが分かっている。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、入力タップ数、遅延回路及び乗算器が少なく、所望の特性を確実に得ることができる、周波数分離性の優れた狭帯域FIRフィルタ等のフィルタ及びフィルタの設計システム・設計方法・設計プログラムを提供することを目的の一つとする。
本発明はまた、ノイズ除去特性に優れた低コストなFIRフィルタ等のフィルタ及びフィルタの設計システム・設計方法・設計プログラムを提供することを目的の一つとする。
また、本発明は、ジャギー等を発生させない信号処理に適切なFIRフィルタ等のフィルタ及びフィルタの設計システム・設計方法・設計プログラムを提供することを目的の一つとする。
なお、FIRフィルタは、例えば、アンプ等の音響装置、動画、静止画処理のための画像装置、携帯電話等の通信装置、制御装置、コンピュータ、PC等の様々な各種装置に用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の解決手段によると、
有限の区分的多項式で構成される標本化函数の各多項式の接続点である節点値をフィルタ係数とした低域通過型基本フィルタLと、前記低域通過型基本フィルタを周波数スケーリングした複数の低域通過型フィルタLと、前記フィルタ係数の符号をひとつおきに反転して係数とした高域通過型基本フィルタHと、前記高域通過型基本フィルタを周波数スケーリングした複数の高域通過型フィルタHと、により、次式で表されるように縦続接続して形成された通過域部フィルタGpassと、
【数1】
JP0004968850B2_000002t.gif
ここで、Gpassの各添え字については以下の通り。
α,β:累乗値(同じLP,N1や[1-HP,N2]をα回、β回接続することを示す。ここで、記載の都合上、N1=N(1),N2=N(2) とした。)
(1) :Lp,N1においてHのラダー接続の段数
(2) :[1-Hp,N2]においてLのラダー接続の段数
:周波数を(P+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタと、により、次式で表されるように縦続接続して形成された阻止域部フィルタGstopと、
【数2】
JP0004968850B2_000003t.gif
α,β:累乗値(同じLpk,Nkや[1-Hql,Nl]をα回、β回接続することを示す。)
:Lpk,NkにおいてHのラダー接続の段数
:[1-Hql,Nl]においてLのラダー接続の段数
,q:周波数をそれぞれ、(p+1)、(q+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

を備え、
前記通過域部フィルタGpass及び前記阻止域部フィルタGstopを縦続接続することで形成されたフィルタが提供される。

【0007】
本発明の第2の解決手段によると、
有限の区分的多項式で構成される標本化函数の各多項式の接続点である節点値をフィルタ係数とした低域通過型基本フィルタLと、前記低域通過型基本フィルタを周波数スケーリングした複数の低域通過型フィルタLと、前記フィルタ係数の符号をひとつおきに反転した係数とした高域通過型基本フィルタHと、前記高域通過型基本フィルタを周波数スケーリングした複数の高域通過型フィルタHと、により、次式で表されるように縦続接続して形成された通過域部フィルタGpassと、

【数3】
JP0004968850B2_000004t.gif
ここで、Gpassの各添え字については以下の通り。
α,β:累乗値(同じLP,N1や[1-HP,N2]をα回、β回接続することを示す。ここで、記載の都合上、N1=N(1),N2=N(2) とした。)
(1) :Lp,N1においてHのラダー接続の段数
(2) :[1-Hp,N2]においてLのラダー接続の段数
:周波数を(P+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHと、により、次式で表されるように縦続接続して形成された阻止域部フィルタGstopと、
【数4】
JP0004968850B2_000005t.gif
α,β:累乗値(同じLpk,Nkや[1-Hql,Nl]をα回、β回接続することを示す。)
:Lpk,NkにおいてHのラダー接続の段数
:[1-Hql,Nl]においてLのラダー接続の段数
,q:周波数をそれぞれ、(p+1)、(q+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

を備え、前記通過域部フィルタGpass及び前記阻止域部フィルタGstopを縦続接続することで形成されたフィルタを設計する設計システムであって、
前記設計システムは、
設計仕様・条件、前記低域通過型基本フィルタL・前記複数の低域通過型フィルタL・高域通過型基本フィルタH・前記複数の高域通過型フィルタHの特性、設計されたフィルタ構成を定義するためのデータを記憶する記憶部と、
前記記憶部にアクセスして、フィルタを設計する処理を実行するための処理部と
を備え、

処理部は、通過域、阻止域、遮断特性を表す通過域と阻止域の比Rを含む設計仕様を入力部又は記憶部から入力する手段と、
処理部は、最大スケール値Pを、入力部又は記憶部から入力する、又は、初期設定値に基づき定める手段と、
処理部は、前記通過域部フィルタGpassにおいて設定した乗算器数の上限 Npass∈{1,2,・・・} を越えないように、
(N(1),N(2),α,β)⊂{0,1,2,・・・}
の総当たりにより、該当する前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHの特性を記憶部から読み出し、前記通過域部フィルタGpassの特性を求め、前記設計仕様を満たす組合わせのうち、乗算器数が最少となるものを選択することにより、前記通過域部Gpassを形成し、求めたN(1)、N(2)、α、βを記憶部に記憶する手段と、
処理部は、前記阻止域部フィルタGstop

【数5】
JP0004968850B2_000006t.gif
において、
(N,N,αpk,βql)⊂{0,1,2,・・・}
の総当たりにより、該当する前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタH特性を記憶部から読み出し、前記阻止部フィルタGstopの特性を求め、
G=Gpassstop
を計算したとき、前記設計仕様を満たす組合わせのうち、乗算器数が最少となるものを選択することにより、求めたN,N,αpk,βqlを記憶部に記憶し、

処理部は、前記通過域部フィルタGpass及び前記阻止域部フィルタGstopを縦続接続することより設計仕様を満たす特性を有するフィルタGを形成する手段と、
を含むフィルタの設計システムが提供される。

【0008】
本発明の第3の解決手段によると、
有限の区分的多項式で構成される標本化函数の各多項式の接続点である節点値をフィルタ係数とした低域通過型基本フィルタLと、前記低域通過型基本フィルタを周波数スケーリングした複数の低域通過型フィルタLと、前記フィルタ係数の符号をひとつおきに反転した係数とした高域通過型基本フィルタHと、前記高域通過型基本フィルタを周波数スケーリングした複数の高域通過型フィルタHと、により、次式で表されるように縦続接続して形成された通過域部フィルタGpassと、

【数6】
JP0004968850B2_000007t.gif
ここで、Gpassの各添え字については以下の通り。
α,β:累乗値(同じLP,N1や[1-HP,N2]をα回、β回接続することを示す。ここで、記載の都合上、N1=N(1),N2=N(2) とした。)
(1) :Lp,N1においてHのラダー接続の段数
(2) :[1-Hp,N2]においてLのラダー接続の段数
:周波数を(P+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHと、により、次式で表されるように縦続接続して形成された阻止域部フィルタGstopと、

【数7】
JP0004968850B2_000008t.gif
α,β:累乗値(同じLpk,Nkや[1-Hql,Nl]をα回、β回接続することを示す。)
:Lpk,NkにおいてHのラダー接続の段数
:[1-Hql,Nl]においてLのラダー接続の段数
,q:周波数をそれぞれ、(p+1)、(q+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

を備え、前記通過域部フィルタGpass及び前記阻止域部フィルタGstopを縦続接続することで形成されたフィルタの設計方法、及び、前期フィルタをコンピュータで設計するための設計プログラムであって、
処理部は、通過域、阻止域、遮断特性を表す通過域と阻止域の比Rを含む設計仕様を入力部又は記憶部から入力するステップと、
処理部は、最大スケール値Pを、入力部又は記憶部から入力する、又は、初期設定値に基づき定めるステップと、
処理部は、前記通過域部フィルタGpassにおいて設定した乗算器数の上限 Npass∈{1,2,・・・} を越えないように、
(N(1),N(2),α,β)⊂{0,1,2,・・・}
の総当たりにより、該当する前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHの特性を記憶部から読み出し、前記通過域部フィルタGpassの特性を求め、前記設計仕様を満たす組合わせのうち、乗算器数が最少となるものを選択することにより、前記通過域部Gpassを形成し、求めたN(1)、N(2)、α、βを記憶部に記憶するステップと、
処理部は、前記阻止域部フィルタGstop

【数8】
JP0004968850B2_000009t.gif
において、
(N,N,αpk,βql)⊂{0,1,2,・・・}
の総当たりにより、該当する前記低域通過型基本フィルタL及び前記低域通過型フィルタL、前記高域通過型基本フィルタH及び前記高域通過型フィルタHの特性を記憶部から読み出し、前記阻止部フィルタGstopの特性を求め、
G=Gpassstop
を計算したとき、前記設計仕様を満たす組合わせのうち、乗算器数が最少となるものを選択することにより、求めたN,N,αpk,βqlを記憶部に記憶し、

処理部は、前記通過域部フィルタGpass及び前記阻止域部フィルタGstopを縦続接続することより設計仕様を満たす特性を有するフィルタGを形成するステップと、
を含むフィルタの設計方法、及び、前記フィルタをコンピュータで設計するための設計プログラムが提供される。

【0009】
本発明の第4の解決手段によると、
有限の区分多項式で表されるインパルス応答関数の各多項式の接続点である節点値を係数とする低域通過型フィルタ及び高域通過型フィルタを基本とし、該低域通過型フィルタ及び高域通過型フィルタを周波数スケーリングした複数のスケーリングフィルタを、通過帯域幅が所定の要求幅以上となる様に選択し、該選択された複数のスケーリングフィルタを用いて、通過域特性を所定の要求特性となるように構成した通過域フィルタと、阻止域特性を所定の要求特性となるように構成した阻止域フィルタとを縦続構成で形成することを特徴とするフィルタが提供される。

【0010】
本発明の第5の解決手段によると、
有限の区分多項式で表されるインパルス応答関数の各多項式の接続点である節点値を係数とする低域通過型フィルタ及び高域通過型フィルタを基本とし、該低域通過型フィルタ及び高域通過型フィルタを周波数スケーリングした複数のスケーリングフィルタを、通過帯域幅が所定の要求幅以上となる様に選択し、該選択された複数のスケーリングフィルタを用いて、要求特性を満足する低域通過型のスケーリングフィルタを選定し、該選定された低域通過型のスケーリングフィルタに対して、高域通過型のスケーリングフィルタをラダー状に接続することにより、フィルタの通過域特性を形成することを特徴とするフィルタが提供される。

【0011】
本発明の第6の解決手段によると、
有限の区分多項式で表されるインパルス応答関数の各多項式の接続点である節点値を係数とする低域通過型フィルタ及び高域通過型フィルタを基本とし、該低域通過型フィルタ及び高域通過型フィルタを周波数スケーリングした複数のスケーリングフィルタを、通過帯域幅が所定の要求幅以上となる様に選択し、該選択された複数のスケーリングフィルタを用いて、要求特性を満足する高域通過型のスケーリングフィルタを選定し、該選定された高域通過型のスケーリングフィルタに対して、低域通過型のスケーリングフィルタをラダー状に接続することにより、フィルタの通過域特性を形成することを特徴とするフィルタが提供される。

【発明の効果】
【0012】
本発明によると、入力タップ数、遅延回路及び乗算器が少なく、所望の特性を確実に得ることができる、周波数分離性の優れた狭帯域FIRフィルタ等のフィルタ及びフィルタの設計システム・設計方法・設計プログラムを提供することができる。
また、本発明によると、ノイズ除去特性に優れた低コストなFIRフィルタ等のフィルタ及びフィルタの設計システム・設計方法・設計プログラムを提供することができる。
そして、本発明によると、ジャギー等を発生させない信号処理に適切なFIRフィルタ等のフィルタ及びフィルタの設計システム・設計方法・設計プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1.非再帰形ディジタルフィルタの伝達函数

一般に非再帰形ディジタルフィルタは、インパルス応答が有限個のパルスで表されるので、有限インパルス応答FIR(Finite Impulse Responce)形とも呼ばれる。

図1は、非再帰型ディジタルフィルタの構成図である。
このフィルタは、遅延素子1-1~1-Nと、乗算器2-0~2-Nと、加算器3を備える。
このフィルタの伝達函数を求めてみると、例えばより以下の関係式が成立する。
【数9】
JP0004968850B2_000010t.gif
:入力
:出力
~a:フィルタ係数(タップ係数)

ここで1クロックの各遅延素子1-1~1-Nの伝達函数をz-1で表すことができる。
このとき、xk-1=z-1が成立し、次のように書き改めることが可能である。
Y(z)=aX(z)+a-1X(z)+a-2X(z)+・・・+a-NX(z)
=(a+a-1+a-2+・・・+a-N)X(z)
すなわち、
Y(z)=A(z)X(z)
ここで、伝達函数A(z)は、次のように表せる。
A(z)=a+a-1+a-2+・・・+a-N
以下に、上式の導出についての証明の詳細をz変換で説明する。
[証明]
【数10】
JP0004968850B2_000011t.gif
(∵ p<0 のとき x=0 より)

このように、非再帰形フィルタの伝達函数は、zの多項式で表すことができる。なお、フィルタ係数aが有界な値をもつ限り、このフィルタは安定に動作し、出力の振幅値が発散するようなことはない。
【0014】
図2は、FIRフィルタの構成図を示す。
このフィルタは、遅延素子11-1~11-Mと、乗算器12-0~12-Mと、加算器13を備える。
この図は、今、入力信号をu(k)、フィルタ係数をhで表すとき、M+1個の遅延素子z-1を用いて、上述の関係を示した構成である。
このとき伝達函数は、次式で表される。
【数11】
JP0004968850B2_000012t.gif
ここで、FIRフィルタはインパルス入力に対し、フィルタ係数h,h,h,・・・,hの値が時間列信号となるインパルス応答波形を出力する。したがって、インパルス応答波形が与えられれば、フィルタ係数が決定されるという特徴がある。
【0015】
2.フルーエンシ(Fluency)函数のフィルタへの適用

(1)フルーエンシ函数による基本フィルタ
まず、図3に、フルーエンシ函数のひとつであるC-type Fluency DA函数とその周波数特性の図を示す。
上図のように一般に、C-type Fluency DA函数は次式で表され、2次の区分的多項式で表される(ローカルサポート)。
【数12】
JP0004968850B2_000013t.gif

【0016】
また、下図のように、周波数特性は次式となり、線形位相、及び最大平坦特性を示す。
【数13】
JP0004968850B2_000014t.gif
図4に、C-type Fluency DA函数のフィルタへの適用についての説明図を示す。
図中●印は、C-type Fluency DA函数の標本点(特異点)を示す。有限台のインパルス応答波形として、図に示すC-type Fluency DA函数と呼ばれる函数ψ(t)が与えられた時、フィルタの遅延時間をサンプリング時間幅の1/2として、●印の縦軸の値aをフィルタ係数(タップ係数)h,h,h,・・・,hに与えれば、最も低次のインパルス応答波形が再生される。このフィルタ係数aを持つフィルタを基本ローパスフィルタLとする。
図示 C-type Fluency DA函数ψでは基本ローパスフィルタは次のように表される。
【数14】
JP0004968850B2_000015t.gif

【0017】
図示の函数は、サンプリング時間間隔hで規格化した区間[-2、2]で、次式で表した例である。
【数15】
JP0004968850B2_000016t.gif
上式は、以下の区分多項式で近似することができる。
【数16】
JP0004968850B2_000017t.gif
これより、フィルタ係数は次のように与えられる。
=-1/16
=0
=9/16
=1
=9/16
=0
=-1/16
【0018】
また、図5に、基本ローパスフィルタの周波数特性図を示す。
図示のような、周波数特性は、次のように表される。
【数17】
JP0004968850B2_000018t.gif

【0019】
つぎに、図6に、基本ハイパスフィルタの特性図を示す。
一般に上述のローパスフィルタLが決まれば、次式のようにハイパスフィルタHが求まる。
【数18】
JP0004968850B2_000019t.gif

【0020】
また、図7に、基本ハイパスフィルタの周波数特性図を示す。
図示のような、周波数特性は次のようになる。
【数19】
JP0004968850B2_000020t.gif
以上のようなフルーエンシDA函数を使う意義は、例えば、ローカルサポートのためフィルタ係数を有限個の範囲で取り扱うことができ、また、偶函数(線形位相)であるため、線形位相を実現することができることである。さらに、最大平坦特性により、通過域におけるリップルの課題を解消できることも挙げられる。
【0021】
(2)スケーリング
ここで、上述の基本フィルタに対し、時間軸を(M+1)倍、すなわち、フィルタの遅延時間間隔を1/(M+1)倍にしたフィルタを考える。すなわち、次式のように周波数軸上スケーリングしたフィルタを定義する。ここで、L(z)、H(z)は、L(z)、H(z)をそれぞれ(M+1)倍スケーリングしたものである。なお、このMをスケーリングファクタと呼ぶ。
【数20】
JP0004968850B2_000021t.gif

【0022】
図8に、周波数軸上スケーリングの説明図を示す。
ずなわち、上式のように、周波数軸上スケーリングすることは、時間軸上においてはアップサンプリングに相当する。

図9に、L、L、Lの特性図を示す。
この図は、基本ローパスフィルタLをそれぞれ2倍、3倍にスケーリングしたフィルタL、Lの特性を示す。
フィルタLは、基本フィルタLが図示のようにスケーリングされ、フィルタLはさらにフィルタLが図示のようにスケーリングされる。フィルタL以降も同様にスケーリングされる。
図10に、各スケーリングファクタmのローパスフィルタ、ハイパスフィルタの特性図を示す。
本実施の形態では、図示のような、スケーリングされたローパスフィルタLおよびハイパスフィルタH(m=0,1,2,...)を組み合わせて急峻な遮断特性を実現する。
【0023】
(3)縦続接続
図11に、基本フィルタの縦続接続による周波数特性の変化の説明図を示す。
例えば、上述のような各スケーリングファクタmのフィルタを縦続接続することにより、以下の様なフィルタが構成できる。
図中、1段は、基本フィルタLの場合、2段は基本フィルタLとフィルタLを縦続接続した場合を示す。さらに、3段は、基本フィルタLとフィルタLとフィルタLを縦続接続した場合を示す。このように、スケーリングしたフィルタの縦続接続により、通過帯域幅を狭めること、及び、阻止域を低下させることが可能となる。上述の例はローパスフィルタのみで構成した例であるが、一般にはローパスフィルタとハイパスフィルタの組み合わせで、種々のフィルタX(z)を構成することが可能となる。すなわち、フィルタX(z)を一般的には次式で表すことができる。
【数21】
JP0004968850B2_000022t.gif
は、ローパス基本フィルタ(マザーフィルタ)である。
は、ハイパス基本フィルタ(マザーフィルタ)である。
p,q は、スケーリング数(スケーリングファクタ)である。すなわち、周波数をp+1倍又はq+1倍にスケーリングしたフィルタを示す。
αは、同一スケーリングフィルタの接続回数であり、p+1倍にスケーリングしたローパスフィルタの接続数(累乗値)である。
βは、同一スケーリングフィルタの接続回数であり、q+1倍にスケーリングしたハイパスフィルタの接続数(累乗値)である。
(z)は目標の帯域幅(例えば、-3dB減衰までの周波数幅)を持つ最高次の
(z)=L(zp+1
または、
(z)=H(zq+1
で、その時の最高次数p、qをP,Qとする。
また、目標帯域幅fとマザーフィルタL,Hの帯域幅fとの関係は次式で表される。
=f/(p+1)

以上のような、縦続接続による効果として、通過域においては、帯域幅を縮小させることができ、また、阻止域においては、不要な帯域を減衰させることができる。
【0024】
3.フィルタ回路構成

(1)L(z)の基本構成
(z)は、上述したような定義より
【数22】
JP0004968850B2_000023t.gif
となる。
【0025】
図12に、フィルタの構成図を示す。
一例として、図示のように、上式のフィルタの演算回路は表される。
【0026】
図13に、基本ローパスフィルタL(z)の構成図を示す。
また、上式のような基本ローパスフィルタL(z)は、具体的には図示の回路構成で表される。
この基本ローパスフィルタは、遅延素子21-1、21-2、21-3、21-4、21-5及び21-6と、乗算器22-1、22-2、22-3、22-4及び22-5と、加算器23-1、23-2、23-3及び23-4を備える。乗算器22-1~22-5のフィルタ係数は、それぞれ-1/16、9/16、1、9/16、-1/16である。なお、乗算器22-3は、係数が1なので、省略することができる。
【0027】
図14に、M+1倍にスケーリングしたローパスフィルタL(z)の構成図を示す。
M+1倍にスケーリングしたローパスフィルタL(z)は、図示のように、Lと同様の構造であるが、Z-1がZ-(M+1)となる。
このM+1倍にスケーリングしたローパスフィルタは、M+1個の遅延素子を持つブロック31-1、31-2、31-3、31-4、31-5及び31-6と、乗算器32-1、32-2、32-3、32-4及び32-5と、加算器33-1、33-2、33-3及び33-4を備える。乗算器32-1~32-5のフィルタ係数は、それぞれ-1/16、9/16、1、9/16、-1/16である。なお、乗算器32-3は、係数が1なので、省略することができる。
また、例えば、この図では、各遅延素子31-1~31-6は(M+1)個の遅延素子を持つ。遅延素子の各ブロックは、(M+1)サンプル遅延する遅延素子であれば、個数はいくつでもよい。
【0028】
図15に、基本ハイパスフィルタH(z)の構成図を示す。
また、このような基本ハイパスフィルタH(z)は、具体的には図示の回路構成で表される。
この基本ハイパスフィルタは、遅延素子41-1、41-2、41-3、41-4、41-5及び41-6と、乗算器42-1、42-2、42-3、42-4及び42-5と、加算器43-1、43-2、43-3及び43-4を備える。乗算器42-1~42-5のフィルタ係数は、それぞれ1/16、-9/16、1、-9/16、1/16である。なお、乗算器42-3は、係数が1なので、省略することができる。
【0029】
図16に、M+1倍にスケーリングしたハイパスフィルタH(z)の構成図を示す。
M+1倍にスケーリングしたハイパスフィルタH(z)は、図示のように、Hと同様の構造であるが、Z-1がZ-(M+1)となる。
このM+1倍にスケーリングしたハイパスフィルタは、M+1個の遅延素子を持つブロック51-1、51-2、51-3、51-4、51-5及び51-6と、乗算器52-1、52-2、52-3、52-4及び52-5と、加算器53-1、53-2、53-3及び53-4を備える。乗算器52-1~52-5のフィルタ係数は、それぞれ1/16、-9/16、1、-9/16、1/16である。なお、乗算器52-3は、係数が1なので、省略することができる。
また、例えば、この図では、各遅延素子51-1~51-6は(M+1)個の遅延素子を持つ。遅延素子の各ブロックは、(M+1)サンプル遅延する遅延素子であれば、個数はいくつでもよい。
【0030】
4.フィルタGpass、Gstop、G

図17は、フィルタGの回路図を示す。
図18は、Gpassの回路図を示す。
図19及び図20に、Gpassの展開した図を示す。図19は、Gpassの前項部分を示す。図20は、Gpassの後項部分を示す。
上述のL,Hを用いて、以下の構成でフィルタの通過域主要部Gpassを形成する。
passは、次式で表される。
【数23】
JP0004968850B2_000024t.gif
ここで、Gpassの各添え字については以下の通り。
α,β:累乗値(同じLP,N1や[1-HP,N2]をα回、β回接続することを示す。ここで、記載の都合上、N1=N(1),N2=N(2) とした。)
(1) :Lp,N1においてHのラダー接続の段数(図19の斜めの接続段数を示す。)
(2) :[1-Hp,N2]においてLのラダー接続の段数(図20の斜めの接続段数を示す。)
:周波数を(P+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。
【0031】
スケーリングについては、次式の関係となる。
【数24】
JP0004968850B2_000025t.gif
図21は、Gstopの回路図を示す。
上述のL,Hを用いて、また、阻止域主要部Gstopも同様に形成する。
【0032】
stopは、次式で表される。
【数25】
JP0004968850B2_000026t.gif
α,β:累乗値(同じLpk,Nkや[1-Hql,Nl]をα回、β回接続することを示す。)
:Lpk,NkにおいてHのラダー接続の段数(図19の斜めの接続段数(N(1)に相当)を示す。)
:[1-Hql,Nl]においてLのラダー接続の段数(図20の斜めの接続段数(N(2)に相当)を示す。)
,q:周波数をそれぞれ、(p+1)、(q+1)倍にスケーリングしたフィルタを示す。

ハイパスフィルタの各モジュールLpk,Nkおよび1-Hql,Nlの構造は、ローパスフィルタの各モジュール
【数26】
JP0004968850B2_000027t.gif
と同様である。
【0033】
図22は、本実施の形態に関するハードウェアの構成図である。
このハードウェアは、中央処理装置(CPU)である処理部1、入力部2、出力IF部3、表示部4及び記憶部5、フィルタ回路6を有する。また、処理部1、入力部2、出力IF部3、表示部4及び記憶部5は、スター又はバス等の適宜の接続手段で接続されている。
記憶部5は、設計仕様・条件(例えば、通過域及び阻止域についての条件(範囲、値、割合等)及び乗算器数の上限Npass等)を記憶するフィルタ構成ファイル51、前述のような基本ローパスフィルタ及びスケーリングしたローパスフィルタ(L、L、・・・、L、・・・)、基本ハイパスフィルタ及びスケーリングしたハイパスフィルタ(H、H、・・・、H、・・・)の特性を記憶する基本フィルタ特性ファイル52、及び、設計されたフィルタ構成を定めるためのデータ・パラメータ(例えば、乗算器のフィルタ係数Npass、N(1)、N(2)α、β、P、N、N、αpk、βpl、p、q等)及び設計されたフィルタ特性等の処理部1による中間結果や最終結果等を記憶するフィルタ出力ファイル53を含む。これら各データは、処理部1により、出力IF部3を介して、フィルタ回路6(例えば、乗算器のフィルタ係数等、フィルタ構成を定めるためのデータ・パラメータ)に出力することができる。フィルタ回路6は、ソフトウェア又はハードウェアで構成され、処理部1により出力IF部3を介して、設定された各データに従い、所定の特性のフィルタを実現する。
【0034】
5.フィルタ設計手順(ローパスフィルタ)

図23に、フィルタ設計手順(ローパスフィルタ)のフローチャートを示す。
このフローチャートは、以下の各ステップを含む。

0.設計仕様入力(S0)
1.最大スケール値p=Pの決定(S1)
2.通過域部Gpassの構成(S2)
3.阻止域部Gstopの構成(S3)
4.G=Gpass・Gstop(S4)

以下に、各ステップについて詳細に説明する。
【0035】
0.設計仕様の設定(S0)
処理部1は、設計仕様(例えば、通過域及び阻止域についての条件(範囲、値、割合等)及び乗算器数の上限Npass等)を、入力部2からの操作に従い記憶部5(フィルタ構成ファイル51)に記憶することにより、又は、予め記憶された記憶部5(フィルタ構成ファイル51)に記憶された値を読み出すことにより、予め設定する。
【0036】
図24に、積和モジュールの縦続接続モデルG(f)による遮断特性の図を示す。
図中、f及びf80は次の通り。
:-3[dB]ラインとクロスする周波数 (f=0から右に見て最初に-3[dB]ラインと交差する周波数点)
80:-80[dB]ラインとクロスする周波数(f=f/2から左に見て-80[dB]ラインと最初に交差する周波数点)
また、通過域と阻止域の周波数の比R(0<R≦1)を、 R=f/f80 と定義する。
Rが1に近いほど、急峻さが高いことを意味する。急峻な遮断特性は、例えば、fとf80の比を表した値R(0<R≦1)により、次式で表される。
R=f/f80≒1
【0037】
処理部1は、設計仕様を、例えば、以下のように設定することができる。

通過域 [0,f]で-3[dB]以上
阻止域 [f80,1]で-80[dB]以下
R ≧R(求めたフィルタの比Rが、予め定めた比R以上であることを示す。)
ただし
0 <f<f80<1,
0 <R≦1
【0038】
ステップS1.(pの最大値の決定)
処理部1は、ステップS1により、設定されたf等の各値を記憶部5(フィルタ構成ファイル51)から読み出し、与えられたfに合わせて最大スケール値p=Pを選択する。なお、処理部1は、Pの値を、入力部2又は記憶部5(フィルタ出力ファイル53)により、予め定められるようにしてもよい。
すなわち、処理部1は、f(p)をLの-3[dB]点とし、f(0)は予め求めておき、そのとき
【数27】
JP0004968850B2_000028t.gif
となる最小のpをPとする。
処理部1は、求めたPを記憶部5(フィルタ出力ファイル53)に記憶する。
【0039】
ステップS2.通過域主要部の形成
処理部1は、ステップS1により設定されたNpass、R等の各値を記憶部5(フィルタ構成ファイル51、フィルタ出力ファイル53)から読み出し、
【数28】
JP0004968850B2_000029t.gif
において設定した乗算器数の上限 Npass∈{1,2,・・・} を越えないように、
(N(1),N(2),α,β)⊂{0,1,2,・・・}
の総当たりにより、設計仕様(例:R≧R)となる組合わせのうち、乗算器数が最少となるものを選択する。
例えば、処理部1は、記憶部5(基本フィルタ特性ファイル52)からN(1),N(2),α,βで定められる該当するローパスフィルタ及びハイパスフィルタの特性を読み出し、上式によりGpassの特性を計算して求め、総当たりにより、設計仕様(例:R≧R)となる組合わせのうち、乗算器数が最少となるものを選択する。このとき、処理部1は、通過域および阻止域の設計仕様に合致するものをさらに選択するようにしてもよい。
ただし、組合せルールとして以下を定義する。
(α,β)≠(0,0),
(1)=0⇒α=0,
(2)=0⇒β=0
【0040】
上述の乗算器数は、次のようになる。
【数29】
JP0004968850B2_000030t.gif
この場合、乗算器数には係数1の乗算器もカウントしているが、これを除くと、次式により乗算器数を上限Npass以下とする条件式が表される。
4(N(1)α+N(2)β)≦Npass
このようにして、処理部1は、求めたN(1)、N(2)、α、βを記憶部5(フィルタ出力ファイル53)に記憶する。
【0041】
ステップS3.阻止域部の形成
処理部1は、
【数30】
JP0004968850B2_000031t.gif
において、
(N,N,αpk,βql)⊂{0,1,2,・・・}
の総当たりにより、
G=Gpassstop
を取って計算したとき、設計仕様(例:R≧R)を保持している組合わせのうち、乗算器数が最少となるものを選択する。
例えば、処理部1は、記憶部5(基本フィルタ特性ファイル52)からN,N,αpk,βqlで定められる該当するローパスフィルタ及びハイパスフィルタの特性を読み出し、上式によりGstopの特性を計算して求め、総当たりにより、
G=Gpassstop
を取って計算したとき、設計仕様(例:R≧R)を保持している組合わせのうち、乗算器数が最少となるものを選択する。このとき、処理部1は、通過域および阻止域の設計仕様に合致するものをさらに選択するようにしてもよい。
処理部1は、求めたN,N,αpk,βqlを記憶部5(フィルタ出力ファイル53)に記憶する。
【0042】
ステップS4.Gの構成及び出力
処理部1は、記憶部5(フィルタ出力ファイル53)からN(1),N(2),α,β,N,N,αpk,βpl等のフィルタを構成するための仕様データ・パラメータを読み出し、さらに記憶部5(基本フィルタ特性ファイル52)から基本ローパスフィルタとそのスケーリングしたフィルタ、基本ハイパスフィルタとそのスケーリングしたフィルタの特性を読み出し、Gpass及びGstopを上述の各式に従い形成し、G=Gpassstopに従いフィルタGを形成し、そのフィルタGの特性を表示部4に表示する及び/又は記憶部5(フィルタ出力ファイル53)に記憶する。
【0043】
また、処理部1は、記憶部5(フィルタ出力ファイル53)からN(1),N(2),α,β,N,N,αpk,βpl等のフィルタを構成するための仕様データ・パラメータを読み出し、各値を出力IF部3を介してフィルタ回路6に出力する。そして、処理部1は、読み出した各値に従い、フィルタ回路6により、Gpass及びGstopを上述の各式に従い形成し、G=Gpassstopに従いフィルタGを形成するようにしてもよい。フィルタ回路6は、フィルタGをコンピュータのシミュレーションで形成したり、ソフトウェアで形成することが出来る。また、フィルタ回路6は、出力IF部3から出力された各値に従い、ハードウェアでフィルタGを形成するようにしてもよい。
なお、上述では、基本ローパスフィルタ及び基本ハイパスフィルタをスケーリングしたフィルタの特性を記憶部5(基本フィルタ特性ファイル52)に予め記憶しておく例を説明したが、基本ローパスフィルタ及び基本ハイパスフィルタの特性のみを基本フィルタ特性ファイル52に記憶しておき、処理部1が必要に応じてこれら特性をもとにスケーリングの処理をして所定のスケーリングフィルタの特性を求めて用いるようにしてもよい。
【0044】
5.ローパスフィルタの設計例

(1)基本的な特性改善
図29に、G(f)により特性が改善される例(ローパスフィルタ)の説明図を示す。
この図は、ローパスフィルタL(f)とL(f)を縦続接続することにより、次式のフィルタG(f)を形成し、そのフィルタGの特性を示したものである。
G(f)=L(f)L(f)
このように、要素となるフィルタを縦続接続することにより、急峻な特性に改善することができる。

(2)フローチャートによる設計例
図25は、ローパスフィルタ仕様の説明図である。
ここでは、上述の構成手段に従い、ローパスフィルタの構成例を与える。所望の特性の仕様は、図示の通りとする。通過域、阻止域は正規化した周波数での区間である。
本実施の形態のフローチャートで設計したフィルタの構成式は次の通りである:
G=L7,93,14,25,3(1-H1,1)(1-H2,1
【0045】
この例では、P=7を選択し、その上でα=0,1,2,3,4およびN=0,1,2,3,・・・等をトライアルし、Gpass=L7,9と設定した。
図26は、Gpass及びGstop、フィルタGの説明図である。
図26(a)に、Gpassの特性図を示す。Gpassの特性は、通過域区間=[0,0.096]、阻止域区間=[0.013,1]、およびR=0.738、乗算器数=150個となっている。
次に阻止域については、Gpassの第2~4サイドローブを阻止しなくてはならないが、第3、第4サイドローブについては図26(b)中の(1-H1,1)および(1-H2,1)によりほぼ阻止される。ここでは、P≦5を取ることにし、図26(b)から分かるように、第2サイドローブ中心付近はL3,1とL4,2により、右側付近はL3,1と1-H2,1により阻止されている。左側付近を阻止するために、p=5に対し、N=0,1,2,・・・およびα=0,1,2等をトライアルし、乗算器数との兼合いで(α,N)=(1,3)を選択した。
【0046】
図27に、従来法および本発明で構成したフィルタの特性図を示す。(a)は最小2乗法、(b)はRemez法、(c)は、本発明による方法である。
図28は、各設計法での乗算器数及びRの比較を示す図である。ここで乗算器数は、特性が最初に仕様を完全に満たすようになったときのものである。本発明による方法は、最小2乗法に比べると乗算器数、Rともに優っている。Remez法はRは本発明による方法よりも僅かに優っているが、乗算器数が1142と多い。Remez法に対する優位性の確認を補足するため、Remez法のR=0.762を超えるR値(ここでは=0.767)となったときの乗算器数をみると365であった。
この結果により、本発明による積和モジュールによる要素フィルタの縦続接続による急峻なローパスフィルタ特性近似モデルの有効性が示された。
【0047】
6.追記
本発明のフィルタの設計方法又はフィルタの設計装置・システムは、その各手順をコンピュータに実行させるためのフィルタの設計プログラム、フィルタの設計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、フィルタの設計プログラムを含みコンピュータの内部メモリにロード可能なプログラム製品、そのプログラムを含むサーバ等のコンピュータ、等により提供されることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
上述には、主に、3次のC-type Fluency関数について説明したが、Fluency関数としてはこれに限らず、区分的m次多項式を用いることができ、また、C-typeに限らずE-type(波形調整パラメータ付き補間関数)等のFluency関数を用いてもよい。
本発明は、音響技術、映像技術、画像技術、伝送技術、通信技術、アナログデジタル変換・デジタルアナログ変換技術、圧縮・解凍技術、暗号・解読(解凍)技術、フィルタ技術等、様々な技術に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】非再帰型ディジタルフィルタの構成図である。
【図2】FIRフィルタの構成図を示す。
【図3】フルーエンシ函数のひとつであるC-type Fluency DA函数とその周波数特性の図を示す。
【図4】C-type Fluency DA函数のフィルタへの適用についての説明図を示す。
【図5】基本ローパスフィルタの周波数特性図を示す。
【図6】基本ハイパスフィルタの特性図を示す。
【図7】基本ハイパスフィルタの周波数特性図を示す。
【図8】周波数軸上スケーリングの説明図を示す。
【図9】L、L、Lの特性図を示す。
【図10】各スケーリングファクタmのローパスフィルタ、ハイパスフィルタの特性図を示す。
【図11】基本フィルタの縦続接続による周波数特性の変化の説明図を示す。
【図12】フィルタの構成図を示す。
【図13】基本ローパスフィルタL(z)の構成図を示す。
【図14】M+1倍にスケーリングしたローパスフィルタL(z)の構成図を示す。
【図15】基本ハイパスフィルタH(z)の構成図を示す。
【図16】M+1倍にスケーリングしたハイパスフィルタH(z)の構成図を示す。
【図17】フィルタGの回路図を示す。
【図18】Gpassの回路図を示す。
【図19】Gpassの展開した図を示し、Gpassの前項部分を示す。
【図20】Gpassの展開した図を示し、Gpassの後項部分を示す。
【図21】Gstopの回路図を示す。
【図22】本実施の形態に関するハードウェアの構成図である。
【図23】フィルタ設計手順(ローパスフィルタ)のフローチャートを示す。
【図24】積和モジュールの縦続接続モデルG(f)による遮断特性の図を示す。
【図25】ローパスフィルタ仕様の説明図である。
【図26】Gpass及びGstop、フィルタGの説明図である。
【図27】従来法および本発明で構成したフィルタの特性図を示す。(a)は最小2乗法、(b)はRemez法、(c)は、本発明による方法である。
【図28】各設計法での乗算器数及びRの比較を示す図である。
【図29】G(f)により特性が改善される例(ローパスフィルタ)の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1-1~1-N 遅延素子
2-0~2-N 乗算器
3 加算器
11-1~11-M 遅延素子
12-0~12-M 乗算器
13 加算器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図28】
26
【図27】
27
【図29】
28