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明細書 :フォトニック結晶レーザ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5070161号 (P5070161)
公開番号 特開2009-076900 (P2009-076900A)
登録日 平成24年8月24日(2012.8.24)
発行日 平成24年11月7日(2012.11.7)
公開日 平成21年4月9日(2009.4.9)
発明の名称または考案の名称 フォトニック結晶レーザ
国際特許分類 H01S   5/18        (2006.01)
FI H01S 5/18
請求項の数または発明の数 15
全頁数 21
出願番号 特願2008-222383 (P2008-222383)
出願日 平成20年8月29日(2008.8.29)
優先権出願番号 2007226255
優先日 平成19年8月31日(2007.8.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年8月12日(2011.8.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】黒坂 剛孝
【氏名】酒井 恭輔
【氏名】宮井 英次
【氏名】大西 大
【氏名】國師 渡
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
【識別番号】100154896、【弁理士】、【氏名又は名称】谷口 聡
審査官 【審査官】吉野 三寛
参考文献・文献 特開2003-298183(JP,A)
特開2000-332351(JP,A)
特開2005-31695(JP,A)
国際公開第2006/117863(WO,A1)
調査した分野 H01S 5/00-5/50
特許請求の範囲 【請求項1】
電流が注入されることにより所定の波数域の光を生じさせる活性層と、
前記活性層で生じた光のうち前記所定波数域内にある第1波数の光の定在波を形成する第1フォトニック結晶層と、
前記活性層で生じた光のうち前記所定波数域内にあり前記第1波数とは異なる第2波数の光の定在波を形成する第2のフォトニック結晶層と、
を備えることを特徴とするフォトニック結晶レーザ。
【請求項2】
前記第1フォトニック結晶層を前記活性層の一方の側に備え、前記第2フォトニック結晶層を前記活性層の他方の側に備えることを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶レーザ。
【請求項3】
前記第1フォトニック結晶層が第1周期で周期的屈折率分布を有し、前記第2フォトニック結晶層が前記第1周期とは異なる第2周期で周期的屈折率分布を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトニック結晶レーザ。
【請求項4】
前記第1フォトニック結晶層と前記第2フォトニック結晶層が、板状の部材内に該板状部材とは屈折率が異なる異屈折率部を周期的に配置した2次元フォトニック結晶であることを特徴とする請求項3に記載のフォトニック結晶レーザ。
【請求項5】
前記第1フォトニック結晶層の異屈折率部が直交格子又は三角格子の格子点上に配置されており、
前記第2フォトニック結晶層の異屈折率部が前記第1フォトニック結晶層の異屈折率部と同種の格子の格子点上に配置されている、
ことを特徴とする請求項4に記載のフォトニック結晶レーザ。
【請求項6】
前記第1フォトニック結晶層と前記第2フォトニック結晶層のうち、
いずれか一方が異屈折率部を正方格子状に配置したものであり、
他方が異屈折率部を長方格子状に配置したものであって、該長方格子のうちの1方向の周期が前記正方格子の周期と同じであり、該1方向に直交する方向の周期が前記正方格子の周期と異なる、
ことを特徴とする請求項5に記載のフォトニック結晶レーザ。
【請求項7】
前記第1フォトニック結晶層が、板状の部材内に該板状部材とは屈折率が異なるロッドを該板状部材に対して平行に並べて埋設した第1ロッド群を有し、
前記第2フォトニック結晶層が、板状の部材内に該板状部材とは屈折率が異なるロッドを該板状部材に対して平行且つ第1ロッド群のロッドに対して90°の方向に平行に並べて埋設した第2ロッド群を有し、
第1ロッド群又は第2ロッド群のうち少なくとも一方の周期構造に欠陥が設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載のフォトニック結晶レーザ。
【請求項8】
前記電流を前記活性層の一部にのみ注入し、該注入位置が制御可能である電流注入手段を備え、
前記第2フォトニック結晶層が該層内の位置により異なる第2周期を有する、
ことを特徴とする請求項3~7のいずれかに記載のフォトニック結晶レーザ。
【請求項9】
前記第2フォトニック結晶層が、前記第2周期が異なる複数の異周期領域を有し、
前記電流注入手段が前記活性層、前記第1フォトニック結晶層及び前記第2フォトニック結晶層を挟む1対の電極であって、該1対の電極のいずれか一方が前記異周期領域毎に分割された複数個の分割電極である、
ことを特徴とする請求項8に記載のフォトニック結晶レーザ。
【請求項10】
前記第2フォトニック結晶層が異屈折率部を長方格子状に配置したものであり、該長方格子の1方向の格子点間隔が前記異周期領域毎に異なることを特徴とする請求項9に記載のフォトニック結晶レーザ。
【請求項11】
前記第2フォトニック結晶層が異屈折率部を長方格子状に配置したものであり、該長方格子の2方向の格子点間隔が前記異周期領域毎に異なることを特徴とする請求項9に記載のフォトニック結晶レーザ。
【請求項12】
前記第2周期が前記第2フォトニック結晶層内で連続的に変化していることを特徴とする請求項8に記載のフォトニック結晶レーザ。
【請求項13】
前記電流注入手段が前記活性層、前記第1フォトニック結晶層及び前記第2フォトニック結晶層を挟む1対の電極であって、該1対の電極のいずれか一方が複数個に分割された分割電極であることを特徴とする請求項12に記載のフォトニック結晶レーザ。
【請求項14】
前記第2フォトニック結晶層が異屈折率部を長方格子状に配置したものであり、該長方格子の1方向の格子点間隔が連続的に変化することを特徴とする請求項12又は13に記載のフォトニック結晶レーザ。
【請求項15】
前記第2フォトニック結晶層が異屈折率部を長方格子状に配置したものであり、該長方格子の2方向の格子点間隔が連続的に変化することを特徴とする請求項12又は13に記載のフォトニック結晶レーザ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のビームを出射させることができるレーザに関する。このようなレーザは、例えば光ディスクによる情報の記録再生用の光源に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
例えば、光ディスクに情報を記録する、あるいは光ディスクから情報を再生する装置では、情報を記録する/情報が記録されたトラックに対して、1本の記録再生用レーザビームが照射されると共に、記録再生用レーザビームを軸として対称である2本の位置検出用レーザビームが照射される。これらのビームは、1個の光源(レーザ)から1本のレーザビームを回折格子で分割することにより得られている(例えば特許文献1、非特許文献1参照)。
一般的に、1個のレーザ光源からは1本のレーザビームが所定の方向に向かって出射される。従って、複数のレーザビームが必要な場合には、回折格子等の分光素子を用いて光源から出射される1本のレーザビームを分離したり、複数個の光源を設けたりする必要がある。
そこで、1個の素子から複数のレーザビームを出射させることができれば、回折格子が不要になるため、装置の小型化やコストダウンを図ることができると期待される。
【0003】
一方、2次元フォトニック結晶を用いたレーザでは、通常は2次元フォトニック結晶に垂直な方向に1本のレーザビームが出射する(例えば特許文献2参照)が、2次元フォトニック結晶に設ける孔の形状を制御することにより、出射されるレーザビームの方向を制御できることが知られている(非特許文献2参照)。これは、孔の形状によって、2次元フォトニック結晶に平行な方向の波数成分k//がΓ点以外の時、即ちk//が0以外の時に群速度が0となるフォトニックバンドでの該平行方向に関する光閉じ込め特性(Q//値)が大きくなることによる。
但し、非特許文献2には、レーザから出射されるレーザビームの本数については記載がなく、複数のレーザビームが必要な装置(例えば上述の光ディスク記録再生装置)においては十分に有用ではない。
【0004】

【特許文献1】米国特許第3876842号公報
【特許文献2】特開2000-332351号公報
【非特許文献1】伊藤良一、中村道治 著、「半導体レーザ[基礎と応用]」(1989年4月25日発行)、培風館、pp. 305-306
【非特許文献2】宮井英次 他 著、「フォトニック結晶面発光レーザのΓ点以外での発振の可能性の検討」、第67回応用物理学会学術講演会講演予稿集(2006年8月29日発行)、応用物理学会、第3分冊、p. 968
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、複数のレーザビームを出射させることができるレーザを提供することである。
【0006】
併せて、上記レーザビームの出射方向を制御することができるレーザを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係るフォトニック結晶レーザは、
電流が注入されることにより所定の波数域の光を生じさせる活性層と、
前記活性層で生じた光のうち前記所定波数域内にある第1波数の光の定在波を形成する第1フォトニック結晶層と、
前記活性層で生じた光のうち前記所定波数域内にあり前記第1波数とは異なる第2波数の光の定在波を形成する第2のフォトニック結晶層と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
以下、本発明に係るフォトニック結晶レーザにおいて複数のレーザビームを出射させることができる理由を説明する。
従来のフォトニック結晶レーザでは、活性層とフォトニック結晶層が1層ずつ設けられており、活性層で生じた光のうちフォトニック結晶層の周期構造により定まる特定の波数の光がフォトニック結晶層で定在波を形成する。これにより、その特定波数の光のみが増幅され、レーザ発振する。一方、本発明に係るフォトニック結晶レーザでは、第1フォトニック結晶層で形成される定在波の波数(第1波数)と第2フォトニック結晶層で形成される定在波の波数(第2波数)が異なるため、それらの光が重ね合わされることにより空間的なうなりが生じる。これにより、Γ点以外(k//が0以外)でのレーザ発振が生じ、フォトニック結晶層の垂線に対して傾斜した方向に進行するビームを得ることができる。フォトニック結晶内で定在波が1方向に形成されている場合にはその方向について正方向及び負方向の2本の傾斜ビームが形成され、定在波が2以上の方向に形成されている場合には、各方向毎に2本の傾斜ビームが形成される。このようにして、本発明に係るフォトニック結晶レーザは複数本のレーザビームを出射させることができる。第1波数と第2波数の差が大きくなるほど、フォトニック結晶層の垂線に対する傾斜角は大きくなる。
【0009】
Γ点(波数成分k//が0)でのレーザ発振が得られる場合には、上記傾斜ビームに加えて、フォトニック結晶層に垂直な方向に進行するビームを得ることができる。以下では、このような垂直ビームと傾斜ビームが得られる場合、垂直ビームを「主ビーム」、傾斜ビームを「副ビーム」と呼ぶ。
【0010】
第1フォトニック結晶層と第2フォトニック結晶層は、共に活性層の一方の側(同じ側)に設けてもよいが、構造の対称性が高い方がより効率よくレーザ発振を得ることができるため、前記第1フォトニック結晶層を前記活性層の一方の側に備え、前記第2フォトニック結晶層を前記活性層の他方の側に備えることが望ましい。また、第1フォトニック結晶層と第2フォトニック結晶層を共に活性層の一方の側に設ける場合には、例えば1枚の板状部材の表側に第1フォトニック結晶層を、裏側に第2フォトニック結晶層を設けること等により、それら2つのフォトニック結晶層を一体のものとすることができる。
【0011】
本発明に係るフォトニック結晶レーザにおいては、前記第1フォトニック結晶層が第1周期で周期的屈折率分布を有し、前記第2フォトニック結晶層が前記第1周期とは異なる第2周期で周期的屈折率分布を有するように、第1及び第2フォトニック結晶層を構成することができる。これにより、第1フォトニック結晶層では第1周期に対応した第1波数の定在波が、第2フォトニック結晶層では第2周期に対応し第1波数とは異なる第2波数の定在波が形成される。
【0012】
このような第1フォトニック結晶層及び第2フォトニック結晶層は、板状の部材内に該板状部材とは屈折率が異なる異屈折率部を周期的に配置した2次元フォトニック結晶により形成することができる。例えば、第1フォトニック結晶層の異屈折率部は直交格子(正方格子又は長方格子)又は三角格子の格子点上に配置し、第2フォトニック結晶層の異屈折率部は第1フォトニック結晶層の異屈折率部と同種の格子上に配置することができる。
【0013】
前記第1フォトニック結晶層と前記第2フォトニック結晶層のうち、いずれか一方は異屈折率部を正方格子状に配置したものとし、他方は異屈折率部を長方格子状に配置したものであって、該長方格子のうちの1方向の周期が前記正方格子の周期と同じであり、該1方向に直交する方向の周期が前記正方格子の周期と異なる、という構成を取ることができる。この構成によれば、第1フォトニック結晶層及び第2フォトニック結晶層が同じ周期を有する方向には副ビームが出射されず、異なる周期を有する方向に、主ビームに関して対称の1対(2本)の副ビームが出射される。これら主ビーム及び2本の副ビームは前述の光ディスク記録/再生装置用の光源として好適に用いることができる。
【0014】
第1フォトニック結晶層及び第2フォトニック結晶層を共に、異屈折率部を長方格子状に配置したものにした場合にも、1方向の周期を異なる値とし、それ以外の方向の周期を同じ値とすることにより、同様に主ビームと2本の副ビームを得ることができる。しかし、構造の対称性をできるだけ高くするために、前述のように2つのフォトニック結晶層のうちの一方は異屈折率部を正方格子状に配置することが望ましい。
【0015】
なお、第1フォトニック結晶層及び第2フォトニック結晶層を共に異屈折率部を正方格子状に配置したものにすれば、主ビームの周りに90°毎に副ビーム(合わせて4本)を得ることができる。また、第1フォトニック結晶層及び第2フォトニック結晶層を共に異屈折率部を三角格子状に配置したものにすれば、主ビームの周りに120°毎に副ビーム(合わせて3本)を得ることができる。
【0016】
前記第1フォトニック結晶層には、板状の部材内に該板状部材とは屈折率が異なるロッドを該板状部材に対して平行に並べて埋設した第1ロッド群を備えるものを用い、前記第2フォトニック結晶層には、板状の部材内に該板状部材とは屈折率が異なるロッドを該板状部材に対して平行且つ第1ロッド群のロッドに対して90°の方向に平行に並べて埋設した第2ロッド群を備え、第1ロッド群又は第2ロッド群のうち少なくとも一方の周期構造に欠陥が設けられているものを用いることができる。
【0017】
このようなロッドを有するフォトニック結晶層を用いた場合の動作を、第2ロッド群に欠陥がある場合を例に説明する(第1ロッド群に欠陥がある場合も同様である)。第2フォトニック結晶層には、ロッドに垂直な方向の波数成分k2⊥に加えて、k2⊥よりも十分に小さい、ロッドに平行な方向の波数成分k2//を持つ定在波が形成される。この波数成分k2//を持つ定在波と、第1フォトニック結晶層においてロッドに垂直な方向に形成される波数k1⊥(≠k2//)の定在波により、主ビーム、及び主ビームに対して傾斜した2本の副ビームが得られる。
【0018】
次に、複数のレーザビームの出射方向を制御することができるフォトニック結晶レーザ(以下、「出射方向可変フォトニック結晶レーザ」とする)について説明する。本発明に係る出射方向可変フォトニック結晶レーザは、本発明に係る上記フォトニック結晶レーザにおいて
前記第2周期が前記第2フォトニック結晶層内の位置により異なり、
前記電流が前記活性層の一部にのみ注入され、該注入位置が制御可能である、
ことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る出射方向可変フォトニック結晶レーザの動作を説明する。活性層の一部分(電流注入部分)にのみ電流を注入することにより、その電流注入部分に対向する第1フォトニック結晶層及び第2フォトニック結晶層の一部分において、互いに異なる波数で定在波が形成されて増幅される。それらの光が重ね合わされて空間的なうなりが生じることにより、前述のように傾斜ビームが生成される。その際、第2フォトニック結晶層内の位置により第2周期が異なるため、電流注入部分の位置により第2波数を変化させることができる。前述のように第1波数と第2波数の差により傾斜ビームの出射方向が変化するため、このように第2波数を変化させることにより傾斜ビームの出射方向を制御することができる。
【0020】
本発明に係る出射方向可変フォトニック結晶レーザにおいて、第2フォトニック結晶層には、第2周期が異なる複数の領域(異周期領域)を有するものを用いることができる。この場合、活性層に電流を注入する手段(電流注入手段)として、前記活性層、前記第1フォトニック結晶層及び前記第2フォトニック結晶層を挟む1対の電極であって、該1対の電極のいずれか一方が前記異周期領域毎に分割された複数個の分割電極を用いることができる。このような態様の出射方向可変フォトニック結晶レーザでは、複数個の分割電極から電流の注入に用いる電極を選択することにより、第2フォトニック結晶層内において定在波が形成される異周期領域及びそれにより定まる第2波数を選択することができ、傾斜ビームの出射方向を制御することができる。
【0021】
複数の異周期領域を有する第2フォトニック結晶層の例として、異屈折率部を長方格子状に配置したものであって、該長方格子において直交する2方向の格子点列のうち、(1)1方向の格子点間隔が前記異周期領域毎に異なるものや、(2)2方向共に格子点間隔が前記異周期領域毎に異なるものが挙げられる。
【0022】
また、本発明に係る出射方向可変フォトニック結晶レーザにおいて、前記第2フォトニック結晶層には、前記第2周期が該第2フォトニック結晶層内で連続的に変化しているものを用いることができる。この場合、電流注入手段には、前記活性層、前記第1フォトニック結晶層及び前記第2フォトニック結晶層を挟む1対の電極であって、該1対の電極のいずれか一方が複数個に分割された分割電極を好適に用いることができる。このような分割電極を用いる場合には、分割電極を1個又は隣接する複数個を活性層への電流の注入に用いる電極として選択することにより、活性層における電流の注入位置を制御することができる。そして、このように電流注入位置を制御することにより、第2フォトニック結晶層内において定在波が形成される異周期領域及びそれにより定まる第2波数を選択することができ、傾斜ビームの出射方向を制御することができる。
【0023】
第2周期が連続的に変化している第2フォトニック結晶層の例として、異屈折率部を長方格子状に配置したものであって、(1)該長方格子の1方向の格子点間隔が連続的に変化するものや、(2)該長方格子の2方向の格子点間隔が連続的に変化するものが挙げられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るフォトニック結晶レーザによれば、フォトニック結晶層の垂線に対して傾斜した方向に進行する複数のレーザビームを得ることができる。
【0025】
Γ点(波数成分k//が0)でのレーザ発振が生じる場合には、フォトニック結晶層に垂直な方向に進行する主ビームと、主ビームに対して傾斜した方向に進行する副ビームを、回折格子などを用いることなく1個の素子のみにより出射することができる。そのため、例えば、光ディスクに対する情報の記録/再生を行う際の記録再生用レーザ光(主ビーム)及び位置検出用レーザ光(副ビーム)の光源として好適に用いることができる。
【0026】
本発明に係る出射方向可変フォトニック結晶レーザは、活性層への電流の注入位置を変化させることにより、副ビームの出射方向を制御することができる。この出射方向の制御は、機械的な走査機構を用いることなく、1個のレーザ素子だけで行うことができる。そのため、本発明に係る出射方向可変フォトニック結晶レーザはレーザビームの走査を行う必要がある超小型デバイスに好適に用いることができる。そのような超小型デバイスには、例えば医療用カプセル内蔵レーザメス(患者にカプセルを飲み込ませ、カプセルから出射されるレーザ光を走査することにより消化器内に対する施術を行うレーザメス)や超小型のディスプレイなどがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(1) 本発明に係るフォトニック結晶レーザの一実施形態の構成
本発明に係るフォトニック結晶レーザ(2次元フォトニック結晶レーザ)の一実施形態を、図1~図14を用いて説明する。図1は本実施形態の2次元フォトニック結晶レーザ10の縦断面図である。2次元フォトニック結晶レーザ10は、電子及び正孔が注入されることにより所定の波長域の光を発光する活性層11を有する。また、活性層11の一方の側(図の上側)に、第1キャリアブロック層131を挟んで第1フォトニック結晶層121を有し、活性層11の他方の側(図1の下側)に、第2キャリアブロック層132を挟んで第2フォトニック結晶層122を有する。これら2次元フォトニック結晶層の構成は後述する。第1フォトニック結晶層121の上側にはp型半導体から成る第1クラッド層141を、第2フォトニック結晶層122の下側にはn型半導体から成る第2クラッド層142を、それぞれ有する。また、第1クラッド層141の上側には第1コンタクト層151を、第2クラッド層142の下側には第2コンタクト層152を、それぞれ有する。第1コンタクト層151の表面には第1電極161を、第2コンタクト層152の表面には第2電極162を、それぞれ有する。
【0028】
図2に、第1フォトニック結晶層121及び第2フォトニック結晶層122の斜視図を示す。第1フォトニック結晶層121は、誘電体から成る第1板状部材121Aに、第1空孔121Bを正方格子状に配列して成る。正方格子の周期はa1である。第2フォトニック結晶層122は、第1板状部材121Aと同じ材料から成る第2板状部材122Aに、第1空孔121Bと同じ形状を有する第2空孔122Bを長方格子状に配列して成る。長方格子のうちの1方向(y軸方向)の周期は前記正方格子の周期と同じa1とし、それに直交する方向(x軸方向)の周期はa2(≠a1)とする。周期a1とa2の大小関係は問わない。前記正方格子と前記長方格子はx軸とy軸が同じ方向を向くようにする。
【0029】
活性層11の材料には、例えばInGaAsを用いることができる。また、第1フォトニック結晶層121及び第2フォトニック結晶層122の板状部材の材料にはGaAsを、それぞれ用いることができる。なお、異屈折率部として、空孔の代わりに、板状部材とは屈折率が異なる異屈折率部材を用いることもできる。空孔は容易に加工することができるという点において優れているのに対して、異屈折率部材は加工時の加熱などにより板状部材が変形するおそれがある場合に有利である。
【0030】
(2) 本実施形態の2次元フォトニック結晶レーザの製造方法
図3及び図4を用いて、2次元フォトニック結晶レーザ10の製造方法を説明する。図3は本実施形態の製造方法を示す縦断面図であり、図4は本実施形態の製造方法において使用するレジストに描画された状態を示す上面図である。
まず、第1の基板211を用意し、第1基板211上に、第1エッチストップ層221、第2板状部材122A、第2キャリアブロック層132、活性層11、第1キャリアブロック層131、第1板状部材121Aの順に積層した積層体20を作製する(図3(a))。積層体20は、各層を順にMO-CVD法等により形成することにより作製することができる。なお、第1板状部材121A及び第2板状部材122Aには未だ空孔は形成されていない。
【0031】
次に、第1板状部材121Aの上に第1レジスト231を塗布し、第1レジスト231の四隅に十字のマーク251を描画(図4(a))した後、誘導結合プラズマ(ICP)等を用いて十字マーク251から積層体20をエッチングすることにより、積層体20を貫く位置合わせ用マーク26を形成する(図3(b))。第1レジスト231を除去した後、新たに第2レジスト232を塗布する。第2レジスト232を透過して見える位置合わせ用マーク26の位置を基準として、空孔121Bに対応する位置に円形孔271を描画する(図4(b))。そして、ICP等を用いて円形孔271から第1板状部材121Aをエッチングし、第1板状部材121Aに空孔121Bを形成することにより、第1フォトニック結晶層121を作製する(図3(c))。その後、第2レジスト232を除去する。
【0032】
別途、第2の基板212上に第2エッチストップ層222、第1コンタクト層151、第1クラッド層141、第1板状部材121Aと同じ材料から成る第1融着層121Cをこの順に形成する。そして、第1板状部材121Aと第1融着層121Cを融着する(図3(d))。次に、研磨法及びウエットエッチング法により第1基板211を除去し、更にエッチング剤を変えて第1エッチストップ層221を除去する(図3(e))。そして、第1基板211及び第1エッチストップ層221の除去により露出した第2板状部材122Aの表面に第3レジスト233を塗布し、第3レジスト233を透過して見える位置合わせ用マーク26の位置を基準として、空孔121Bと空孔122Bについてx軸方向(図2)の列の位置が一致するように、空孔122Bに対応する位置に円形孔272を描画する(図4(c))。そして、ICP等を用いて円形孔272から第2板状部材122Aをエッチングし、第2板状部材122Aに空孔122Bを形成することにより、第2フォトニック結晶層122を作製する(図3(f))。その後、第3レジスト233を除去する。
【0033】
別途、第2コンタクト層152と同じ材料から成る第3の基板213上に、第2クラッド層142、及び第2板状部材122Aと同じ材料から成る第2融着層122Cをこの順に形成する。そして、第2板状部材122Aと第2融着層122Cを融着する(図3(g))。その後、研磨法及びウエットエッチング法により第2基板212を除去し、更にエッチング剤を変えて第2エッチストップ層222を除去する。また、第3基板213を鏡面研磨することにより所定の厚さまで減厚する。減厚後の第3基板213は第2コンタクト層152となる。更に、第1コンタクト層151の表面に第1電極161を形成し、第2コンタクト層152の表面に第2電極162を形成することにより、2次元フォトニック結晶レーザ10を得ることができる(図3(h))。
【0034】
(3) 本実施形態の2次元フォトニック結晶レーザの動作
本実施形態の2次元フォトニック結晶レーザ10では、第1電極161と第2電極162の間に電圧を印加すると、活性層11に電子と正孔が供給され、それら電子と正孔が再結合することにより、所定の波長域の発光が生じる。その光は、第1フォトニック結晶層121及び第2フォトニック結晶層122に導入される。そして、第1フォトニック結晶層121において、異屈折率部の周期に対応した波数k1の光が増幅されると共に、第2フォトニック結晶層122において、異屈折率部の周期に対応した、波数k1とは異なる波数k2の光が増幅される。これら波数k1の光と波数k2の光によって光の空間的なうなりが生成され、それにより、Γ点以外(k//≠0)でのレーザ発振が生じ、斜め方向の副ビームが生成される。
【0035】
以下、具体例を用いて、斜め方向の副ビームが生成されることを示す。ここではまず、2次元フォトニック結晶レーザ10においてa1=a, a2=1.02aとした場合を例にして説明する。この場合、第1フォトニック結晶層121の周期a1と第2フォトニック結晶層122の周期a2が異なることにより、各2次元フォトニック結晶層において互いに異なる波数の定在波が形成され、それら2つの定在波の光が重ね合わされることにより、電界強度のx方向成分Exに、空間分布を有するうなりが生じる。図5に、ある時刻におけるExをFDTD法による計算で求めた結果を示す。この計算結果から、Exは周期ab~51aの空間的うなりを有することがわかる。この計算で求めた空間的うなりの周期abは1/a1-1/a2=1/abの関係を満たしている。計算で求めたExをフーリエ変換することにより、波数のx方向成分であるkxのスペクトルを求めることができる。図5で得られたExをフーリエ変換した結果を図6に示す。ここではkxが正の場合のみ示したが、kxが負の場合にも同様の結果が得られる。この結果によれば、ピークがkx=±0.0196×(2π/a)に見られ、それよりも弱いピークがkx=±0.0392×(2π/a)に見られる。なお、y方向には2次元フォトニック結晶層間の周期の違いがないため、波数のy方向成分kyについては、ky=0の場合にのみピークが生じる。
【0036】
2次元フォトニック結晶層に対する垂線と波数ベクトルの成す角度をθとすると、θとkxは、
kx=ksinθ=(a/λ)sinθ …(1)
の関係を満たす(図7)。(1)式に、InGaAsから成る活性層11により得られる光の波長λ=980nm、この波長λの光を増幅させるさせることができる2次元フォトニック結晶の周期a=296nm(板状部材がGaAsの場合)及び図6においてピークが見られたkxの値を代入することにより、この例ではθ=3.8°(kx=0.0196×(2π/a))及び7.6°(kx=0.0392×(2π/a))の方向の副ビームが生成されることがわかる。
【0037】
図6には主ビーム、即ち2次元フォトニック結晶に垂直な方向(θ=0, k=0)に出射するレーザビームに対応するピークがほとんど現れていない。しかし、実際には、図6はkx=0.0196×(2π/a)におけるピークが最大になる時刻のスペクトルのみを示したものであり、それ以外の時刻ではk=0にもピークが見られる。図8に、kx=0, 0.0196×(2π/a), 0.0392×(2π/a)におけるExのフーリエ変換像についてピーク値の時間変化を計算で求めた結果を示す。実際に出射されるレーザ光の強弱は、この計算結果を時間平均した値の強弱に対応する。この結果から、最も強度が強いレーザビームはkx=0、即ち主ビームであり、次に強いレーザビームはkx=0.0196×(2π/a)における副ビームであることがわかる。
【0038】
図9に、2次元フォトニック結晶レーザ10においてa1=a, a2=1.04aとした場合についてExの空間分布を計算により求めた結果を、図10に、そのExの空間分布のフーリエ変換像を、それぞれ示す。この例ではkx=0.0392×(2π/a)においてピークが見られることから、(1)式よりθ=7.6°の方向の副ビームが生成されることがわかる。
【0039】
(4) 2次元フォトニック結晶レーザ10の実験例
次に、a1=0.288μmであって、(a)a2=1.06a1(0.305μm)及び(b)a2=1.08a1(0.311μm)である2種類の2次元フォトニック結晶レーザ10を作製し、レーザビームの遠視野像を撮影する実験を行った。この実験で得られた遠視野像を図11に示す。(a), (b)いずれにおいても、2本の傾斜ビームが観測された。2本の傾斜ビームの間隔から2θを見積もると、(a)では2θ=9.5°、(b)では2θ=14.4°であった。併せて、得られたレーザ光のスペクトルを図12に示す。(a)a2=1.06a1、(b)a2=1.08a1のいずれにおいても単一波長(中心波長:(a)973.5nm、(b)973.8nm)のレーザ光が得られた。
【0040】
(5) 2次元フォトニック結晶レーザ10以外の実施形態の例
本発明に係る2次元フォトニック結晶レーザの構成は上述の実施形態(2次元フォトニック結晶レーザ10)に限られない。例えば、長方格子を有する第2フォトニック結晶層122の代わりに、周期a2の正方格子を有する2次元フォトニック結晶層を用いれば、x方向及びy方向に空間的なうなりが生成され、それによりx方向に傾斜した副ビームとy方向に傾斜した副ビームを出射する2次元フォトニック結晶レーザを得ることができる。また、x方向の周期をa2、y方向の周期をa3(≠a1, a2)とすることにより、x方向に傾斜した副ビームと、x方向とは異なる角度でy方向に傾斜した副ビームを出射する2次元フォトニック結晶レーザを得ることができる。あるいは、第1フォトニック結晶層と第2フォトニック結晶層を共に活性層の上側(あるいは下側)に設けることもできる。
【0041】
(6) 本発明に係る2次元フォトニック結晶レーザの使用例
図13及び図14を用いて、本発明に係る2次元フォトニック結晶レーザの使用例として、光ディスク記録/再生装置30を示す。図13(a)は本発明に係る2次元フォトニック結晶レーザ31を用いた光ディスク記録/再生装置30の概略構成図であり、(b)は従来の光ディスク記録/再生装置30Pの概略構成図である。この従来の光ディスク記録/再生装置30Pは特許文献2及び非特許文献2に記載されているものである。
【0042】
光ディスク記録/再生装置30は、主ビーム360とその主ビーム360の軸に関して対称な第1副ビーム361と第2副ビーム362を出射する、本発明に係る2次元フォトニック結晶レーザ31を有する。2次元フォトニック結晶レーザ31には例えば上記実施形態の2次元フォトニック結晶レーザ10を用いることができる。また、光ディスク記録/再生装置30は、2次元フォトニック結晶レーザ31から出射される主ビーム360、第1副ビーム361と第2副ビーム362を光ディスク39に照射させるためのレンズ等から成る光学系33と、光ディスク39により反射されたレーザ光を検出する検出器34と、を備える。光学系33は、光ディスク39に照射されるレーザビームのスポットの位置を調節するために移動可能なトラック追従鏡331を有する。
【0043】
光ディスク記録/再生装置30の動作を、主に光ディスクのトラックに主ビーム360を追従させるための動作を中心に説明する。2次元フォトニック結晶レーザ31から出射される主ビーム360、第1副ビーム361と第2副ビーム362は、光学系33により光ディスク39の記録面に照射され、その記録面により反射され、検出器34により検出される。その際、記録面にある情報トラック37の形状が左右対称であることから、第1副ビーム361と第2副ビーム362の検出強度は、主ビーム360が情報トラック37の中心に正しく照射されていれば(図14(a))同じ値になり、中心からずれて照射されていれば(図14(b))異なる値になる。位置ずれが検出された場合には、第1副ビーム361と第2副ビーム362の検出強度が同じ値になるようにトラック追従鏡331を移動させることにより、主ビーム360が正しい位置に照射されるように修正することができる。
【0044】
一方、従来の光ディスク記録/再生装置30Pでは、ビームを1本のみ出射するレーザ32Aと、この1本のビームを回折させることにより3本に分割するための回折格子32Bを備える。それ以外の構成は上記光ディスク記録/再生装置30と同様である。従って、本実施形態の光ディスク記録/再生装置30の方が、回折格子が不要であるため、装置の小型化やコストダウンを図ることができる。
【0045】
(7) 本発明に係る出射方向可変フォトニック結晶レーザの第1実施形態
図15及び図16を用いて、第1実施形態の出射方向可変フォトニック結晶レーザ40について説明する。図15は出射方向可変フォトニック結晶レーザ40の縦断面図である。出射方向可変フォトニック結晶レーザ40は、上記2次元フォトニック結晶レーザ10と同様の活性層11、第1キャリアブロック層131、第2キャリアブロック層132、第1クラッド層141、第2クラッド層142、第1コンタクト層151及び第2コンタクト層152を有する。また、活性層11の一方の側(図の上側)に第1キャリアブロック層131を挟んで第1フォトニック結晶層421を有し、活性層11の他方の側(図の下側)に第2キャリアブロック層132を挟んで第2フォトニック結晶層422を有する。ここで、第1フォトニック結晶層421は上記2次元フォトニック結晶レーザ10のものと同様の構成を有するのに対して、第2フォトニック結晶層422は、以下に述べるように2次元フォトニック結晶レーザ10における第2フォトニック結晶層122と異なる構成を有する。
【0046】
第2フォトニック結晶層422は、1枚の板状部材422Aに第1異周期領域4221、第2異周期領域4222、第3異周期領域4223...を有する。各異周期領域では他の異周期領域とは異なる周期で空孔(異屈折率部)422Bが配置されている。本実施例では、図16(a)に上面図で示すように、板状部材422A内に円形の平面形状を有する空孔422Bを長方格子状に配置した。そして、長方格子のうちの1方向(y軸方向)の周期は第1フォトニック結晶層421と同じa1とし、それに直交する方向(x軸方向)の周期は第1異周期領域4221ではa21、第2異周期領域4222ではa22、第3異周期領域4223ではa23、...とした。
【0047】
第1コンタクト層151の上面であって第1異周期領域4221、第2異周期領域4222、第3異周期領域4223、...の直上の位置に、それぞれ第1上部電極4611、第2上部電極4612、第3上部電極4613、...を設ける。第2コンタクト層152の下面には下部電極462を1枚設ける。
【0048】
第1実施形態の出射方向可変フォトニック結晶レーザ40の動作を説明する。まず、複数の上部電極(第1上部電極4611、第2上部電極4612、第3上部電極4613、...)のうちのいずれか1つと下部電極462の間に電圧を印加する。以下ではまず、第1上部電極4611と下部電極462の間にに電圧を印加した場合を例に説明する。この電圧の印加により、活性層11のうち第1上部電極4611の直下にある部分に電子と正孔が供給され、その部分において所定の波長域の発光が生じる。その光は、第1フォトニック結晶層421に導入されると共に、第2フォトニック結晶層422のうち第1上部電極4611の直下にある第1異周期領域4221に導入される。これにより、第1フォトニック結晶層421において周期a1に対応した波数k1の光が増幅されると共に、第1異周期領域4221においてx方向に該方向の周期a21に対応した波数k21(≠k1)の光が増幅される。これにより、2次元フォトニック結晶レーザ10の場合と同様に、光の空間的なうなりが生成され、波数の差に対応した角度でx方向に傾斜した副ビームが生成される。
【0049】
次に、電圧を印加する上部電極を第1上部電極4611から他の上部電極(ここでは第2上部電極4612とする)に切り替える。これにより、第1上部電極4611の場合と同様に、第2上部電極4612の直下にある第2異周期領域4222においてx方向の周期a22(≠a21)に対応してx方向に波数k22(≠k1, k21)の光が増幅される。このように、第1上部電極4611を用いた場合とは異なる波数の光が増幅されることにより、第1上部電極4611を用いた場合と異なる角度でx方向に傾斜した副ビームが生成される。第3上部電極4613...と下部電極462の間に電圧を印加した場合にも同様に、上部電極の直下にある異周期領域の周期に対応して、他の上部電極を用いた場合と異なる角度でx方向に傾斜した副ビームが生成される。
【0050】
図16(b)~(d)に、第2フォトニック結晶層422の他の構成例を平面図で示す。(b)は各異周期領域においてx方向の周期を第1フォトニック結晶層421の周期と同じa1とし、y方向の周期を異周期領域毎にa21、a22、a23...と異なる値にしたものである。この場合、電圧を印加する上部電極を切り替えることにより、その上部電極の直下にある異周期領域の周期に対応した角度でy方向に傾斜した副ビームが生成される。(c)は、各異周期領域においてx方向とy方向の周期を同じ値(即ち正方格子)にし、異周期領域毎に周期を異なる値にしたものである。この場合、電圧を印加する上部電極を切り替えることにより、その上部電極の直下にある異周期領域の周期に対応した角度でx方向に傾斜した副ビーム及びy方向に傾斜した副ビームが出射される。(d)は、(a)における円形の平面形状を有する空孔を正三角形の平面形状を有する空孔に変更したものである。このように空孔の形状を変えても、副ビームが出射する方向には変化はない。

【0051】
ここまでは上部電極のみを異周期領域毎に設けた例を示したが、下部電極のみを異周期領域毎に設けることや、上部電極と下部電極の双方を異周期領域毎に設けることもできる。
【0052】
(8) 本発明に係る出射方向可変フォトニック結晶レーザの第2実施形態
図17~図20を用いて、第2実施形態の出射方向可変フォトニック結晶レーザ50について説明する。図17は出射方向可変フォトニック結晶レーザ50の縦断面図である。出射方向可変フォトニック結晶レーザ50は、第1実施形態の出射方向可変フォトニック結晶レーザ40における第2フォトニック結晶層422及び上部電極の代わりに、後述の第2フォトニック結晶層522及び上部電極を有し、それ以外の点では出射方向可変フォトニック結晶レーザ40と同様の構成を有する。
【0053】
第2フォトニック結晶層522は、図18に上面図で示すように、板状部材522A内に円形の空孔522Bを直交格子状に配置したものである。空孔522Bは、y方向には第1フォトニック結晶層421の空孔と同じ周期a1で配置されているのに対して、x方向には、隣接空孔間の距離a21, a22, a23,...が正の方向に向って徐々に大きくなる(a21<a<a<...)、即ち周期が連続的に変化するように配置されている。例えば、隣接空孔間の距離を正の方向に向って0.1%ずつ大きくすれば、100個の空孔で隔てられた2箇所を比較すると10%の距離の差が生じる。上部電極561は、第1コンタクト層151の上に配置され、x方向に並んだ多数の電極(第1上部電極5611、第2上部電極5612、...に分割されている(図17)。
【0055】
図19を用いて、出射方向可変フォトニック結晶レーザ50の動作を説明する。まず、上部電極561のうち隣接する複数のものと下部電極462の間に電圧を印加する。ここでは一例として、第1上部電極5611、第2上部電極5612及び第3上部電極5613の3個の電極と下部電極462の間に電圧を印加した場合(図19(a))を例に説明する。この電圧印加により、第1~第3上部電極5611~5613の直下にある部分(第1電流供給領域571)に電子と正孔が供給され、その部分において所定の波長域の発光が生じる。その光は、第1フォトニック結晶層421及び第2フォトニック結晶層522のうち第1~第3上部電極5611~5613の直下にある部分(第1光増幅領域581)に導入される。これにより、第1フォトニック結晶層421において周期a1に対応した波数k1の光が増幅されると共に、第2フォトニック結晶層522において第1光増幅領域581内での平均周期に対応した波数の光が増幅される。ここで、第2フォトニック結晶層522で増幅される光の波数は、x方向の周期の違いにより、x方向において第1フォトニック結晶層421における波数k1と異なる値になる。これにより、光の空間的なうなりが生成され、波数の差に対応した角度でx方向に傾斜した副ビームが生成される。
【0056】
次に、電圧印加に用いる上部電極を第2上部電極5612、第3上部電極5613及び第4上部電極5614に変更する(図19(b))。これにより、電流供給領域及び光増幅領域がx方向に移動する(第2電流供給領域572、第2光増幅領域582)。第2光増幅領域582内での第2フォトニック結晶層522の平均周期は第1光増幅領域581内のものとは異なるため、このような光増幅領域の移動により第2フォトニック結晶層522で増幅される光の波数及びこの波数により定まる副ビームの傾斜角を変化させることができる。同様にして、順次、電圧印加に用いる上部電極を変化させて光増幅領域を移動させることにより、副ビームの傾斜角を連続的に変化させることができる。
【0057】
図20に、第2実施形態の出射方向可変フォトニック結晶レーザ50における第2フォトニック結晶層522の他の例(第2フォトニック結晶層522X)を示す。第2フォトニック結晶層522Xは、隣接空孔間の距離を、x方向について正の方向に向って徐々に大きくなる(a21<a<a<...)ようにすると共に、y方向についても正の方向に向って徐々に大きくなる(a<a<a<...)ようにしたものである。これにより、x方向及びy方向にそれぞれ、傾斜した副ビームが生成される。このような第2フォトニック結晶層522Xを用いた場合には、上部電極はx方向、y方向共に分割されたものを用いる。なお、第2フォトニック結晶層522及び522Xにおいては円形の空孔を用いたが、正三角形などの他の形状の空孔を用いることもできる。ここまでに示したように、本発明に係る出射方向可変フォトニック結晶レーザでは複数本のレーザビームが出射される。それら複数本のビームのうちの一部のビーム491のみを使用する場合には、それ以外のビームを遮蔽部49により遮蔽すればよい(図21)。例えば、図21に示すように、1本の副ビーム(第1副ビーム491)をθa~θbの角度範囲で走査する場合には、フォトニック結晶層に対する垂線493が走査範囲の中央から(θab)/2だけ傾くように出射方向可変フォトニック結晶レーザ49を配置し、不要なビームが出射する方向に遮蔽492を置けばよい。

【0059】
(9) 板状部材内にロッドを1方向に並べたフォトニック結晶を用いたフォトニック結晶レーザの例
図22に板状部材内にロッドを1方向に並べたフォトニック結晶を用いたフォトニック結晶レーザ60の縦断面図を、図23にフォトニック結晶レーザ60における第1フォトニック結晶層621及び第2フォトニック結晶層622の横断面図を示す。第1フォトニック結晶層621には、第1板状部材621A内に、x方向に延びるロッド状の空孔621Bが多数、y方向に並ぶように周期的に配置されている。一方、第フォトニック結晶層62には、第2板状部材622A内に、y方向に延びるロッド状の空孔622Bが多数、x方向に並ぶように周期的に配置されている。そして、第2板状部材622A内のロッドのうち1周期分だけ、ロッドが設けられず、ロッドの欠陥622Cが形成されている。それ以外の構成は上述の2次元フォトニック結晶レーザ10と同様である。

【0060】
本実施例のフォトニック結晶レーザ60では、第1電極161-第2電極162から活性層11に電流が注入されることにより生じる光が第1フォトニック結晶層621及び第2フォトニック結晶層622に導入される点は、他の実施例のフォトニック結晶レーザと同様である。第1フォトニック結晶層621に導入された光は、ロッド状空孔621Bによるy方向の周期により、y方向の定在波を形成する。それに対して第2フォトニック結晶層622に導入された光は、ロッドの欠陥622Cが存在することにより、ロッド状空孔622Bが周期性を持つ方向であるx方向だけではなく、y方向にも成分を持つ定在波が形成される。これら第1フォトニック結晶層621内のy方向の定在波と、第2フォトニック結晶層622内の定在波のy方向成分により、うなりが形成され、それにより主ビーム、及び主ビームに対してy方向に傾斜した2本の副ビームが形成される。
【0061】
板状部材内にロッドを1方向に並べたフォトニック結晶は、出射方向可変フォトニック結晶レーザにも用いることができる。例えば、図24に示すように、第1フォトニック結晶層721には、x方向に延びるロッド状の空孔721Bをy方向に等間隔a1に並べると共に、ロッドの欠陥721Cを設け、第2フォトニック結晶層722には、y方向に延びるロッド状の空孔722Bを、x方向について正の方向に向って徐々に間隔が大きくなる(a21<a<a<...)ように並べたものを用いることができる。これにより、第2実施形態の出射方向可変フォトニック結晶レーザ50ど同様に、副ビームの出射方向を制御することができる。【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係る2次元フォトニック結晶レーザ10の縦断面図。
【図2】2次元フォトニック結晶レーザ10における第1フォトニック結晶層121及び第2フォトニック結晶層122の斜視図。
【図3】2次元フォトニック結晶レーザ10の製造方法を示す縦断面図。
【図4】本実施形態の製造方法において使用するレジストに描画された状態を示す上面図。
【図5】a1=a, a2=1.02aの場合における電界強度のx方向成分Exの空間分布を計算により求めた結果を示すグラフ。
【図6】a1=a, a2=1.02aの場合におけるExのフーリエ変換像を計算により求めた結果を示すグラフ。
【図7】出射角θと波数のx方向成分kxの関係を示す図。
【図8】a1=a, a2=1.02aの場合におけるExのフーリエ変換像についてピーク値の時間変化を計算で求めた結果を示すグラフ。
【図9】a1=a, a2=1.04aの場合におけるExの空間分布を計算により求めた結果を示すグラフ。
【図10】a1=a, a2=1.04aの場合におけるExのフーリエ変換像を計算により求めた結果を示すグラフ。
【図11】a1=a, a2=1.06a及び1.08aである2次元フォトニック結晶レーザ10に対する実験で得られた副ビームの遠視野像の写真。
【図12】a1=a, a2=1.06a及び1.08aである2次元フォトニック結晶レーザ10に対する実験で得られた副ビームのスペクトル。
【図13】本発明に係る2次元フォトニック結晶レーザを用いた光ディスク記録/再生装置の一例(a)及び従来の光ディスク記録/再生装置の一例(b)を示す概略構成図。
【図14】光ディスク記録/再生装置の動作を説明するための概略図。
【図15】第1実施形態の出射方向可変フォトニック結晶レーザ40の縦断面図。
【図16】出射方向可変フォトニック結晶レーザ40における第2フォトニック結晶層422を示す平面図。
【図17】第2実施形態の出射方向可変フォトニック結晶レーザ50の縦断面図。
【図18】出射方向可変フォトニック結晶レーザ50における第2フォトニック結晶層522を示す平面図。
【図19】出射方向可変フォトニック結晶レーザ50の動作を説明するための縦断面図。
【図20】第2フォトニック結晶層522の他の例を示す平面図。
【図21】レーザビームの一部を遮蔽する例を示す概略図。
【図22】板状部材内にロッドを1方向に並べたフォトニック結晶を用いたフォトニック結晶レーザ60の縦断面図。
【図23】フォトニック結晶レーザ60におけるフォトニック結晶層を示す横断面図。
【図24】出射方向可変フォトニック結晶レーザに、板状部材内にロッドを1方向に並べたフォトニック結晶を用いる例を示す横断面図。
【符号の説明】
【0063】
10、31、60…フォトニック結晶レーザ
11…活性層
121、421、521、621、721…第1フォトニック結晶層
121A…第1板状部材
121B…第1空孔
121C…第1融着層
122、422、522、522X、622、722…第2フォトニック結晶層
122A…第2板状部材
122B…第2空孔
122C…第2融着層
131…第1キャリアブロック層
132…第2キャリアブロック層
141…第1クラッド層
142…第2クラッド層
151…第1コンタクト層
152…第2コンタクト層
161…第1電極
162…第2電極
20…積層体
211…第1基板
212…第2基板
213…第3基板
221…第1エッチストップ層
222…第2エッチストップ層
231…第1レジスト
232…第2レジスト
233…第3レジスト
251…十字マーク
26…位置合わせ用用マーク
271、272…円形孔
30…光ディスク記録/再生装置
30P…従来の光ディスク記録/再生装置
32A…レーザ
32B…回折格子
33…光学系
331…トラック追従鏡
34…検出器
360…主ビーム
361…第1副ビーム
362…第2副ビーム
37…情報トラック
39…光ディスク
40、50…出射方向可変フォトニック結晶レーザ
422A、522A…板状部材
422B、522B…空孔
4221…第1異周期領域
4222…第2異周期領域
4223…第3異周期領域
4611…第1上部電極
4612…第2上部電極
4613…第3上部電極
462…下部電極
561…上部電極
5611…第1上部電極
5612…第2上部電極
5613…第3上部電極
5614…第4上部電極
571…第1電流供給領域
572…第2電流供給領域
581…第1光増幅領域
582…第2光増幅領域
621A…第1板状部材
622A…第2板状部材
621B、622B、721B、722B…ロッド状空孔
622C、721C…ロッド状空孔の欠陥
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図11】
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