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明細書 :2次元フォトニック結晶レーザ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5303221号 (P5303221)
公開番号 特開2010-056446 (P2010-056446A)
登録日 平成25年6月28日(2013.6.28)
発行日 平成25年10月2日(2013.10.2)
公開日 平成22年3月11日(2010.3.11)
発明の名称または考案の名称 2次元フォトニック結晶レーザ
国際特許分類 H01S   5/183       (2006.01)
FI H01S 5/183
請求項の数または発明の数 9
全頁数 12
出願番号 特願2008-222384 (P2008-222384)
出願日 平成20年8月29日(2008.8.29)
審査請求日 平成23年8月12日(2011.8.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】岩橋 清太
【氏名】黒坂 剛孝
【氏名】酒井 恭輔
【氏名】宮井 英次
【氏名】大西 大
【氏名】國師 渡
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
【識別番号】100154896、【弁理士】、【氏名又は名称】谷口 聡
審査官 【審査官】高椋 健司
参考文献・文献 特開2004-296538(JP,A)
特開2003-023193(JP,A)
特開2007-180120(JP,A)
国際公開第2005/086302(WO,A1)
調査した分野 H01S 5/00-5/50
特許請求の範囲 【請求項1】
板状の部材内に該板状部材とは屈折率が異なる同一形状の異屈折率領域が周期的に多数配置された2次元フォトニック結晶と、該2次元フォトニック結晶の一方の側に設けた活性層と、を備え、
前記異屈折率領域が少なくとも2方向に同じ周期を有する格子の格子点に設けられており、
前記異屈折率領域が、前記格子が有する2つの基本逆格子ベクトルの方向についてフィードバック強度が異なる形状を有し、
前記2次元フォトニック結晶が複数個の格子点を含むスーパーセルを単位とする周期構造を有し、
スーパーセル内の全ての異屈折率領域によるフィードバック強度の和が前記2つの基本逆格子ベクトルの各方向において等しい、
ことを特徴とする2次元フォトニック結晶レーザ。
【請求項2】
前記格子が正方格子、三角格子、2つの基本逆格子ベクトルの大きさが等しい斜方格子のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の2次元フォトニック結晶レーザ。
【請求項3】
前記格子が正方格子であり、前記異屈折率領域が2つの同周期方向の双方と45°の角度を成す軸に関して非対称であることを特徴とする請求項2に記載の2次元フォトニック結晶レーザ。
【請求項4】
前記スーパーセルが前記正方格子の縦に2格子点、横に2格子点の4格子点を単位とするものであり、
前記スーパーセル内の1個の異屈折率領域の向きに対して、他の3個の異屈折率領域の向きが90°、180°及び270°異なることを特徴とする請求項3に記載の2次元フォトニック結晶レーザ。
【請求項5】
前記スーパーセルが前記正方格子の縦に2格子点、横に2格子点の4格子点を単位とするものであり、
該スーパーセル内の1個の異屈折率領域の向きに対して、他の3個の異屈折率領域のうちの1個の向きが同じであり、2個の向きが90°異なることを特徴とする請求項3に記載の2次元フォトニック結晶レーザ。
【請求項6】
前記格子が三角格子であり、
前記スーパーセルが、正三角形状に隣接する3個の格子点を単位とするものであり、
前記スーパーセル内の1個の異屈折率領域の向きに対して、他の2個の異屈折率領域の向きが120°及び240°異なることを特徴とする請求項2に記載の2次元フォトニック結晶レーザ。
【請求項7】
各異屈折率領域において、該異屈折率領域の重心及び該重心を起点とし2次元フォトニック結晶の面内に延びる第1の半直線上に該異屈折率領域が存在せず、該重心を起点とし第1半直線の反対側に延びる第2の半直線上の少なくとも一部に該異屈折率領域が存在することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶レーザ。
【請求項8】
各異屈折率領域がV字形であることを特徴とする請求項7に記載の2次元フォトニック結晶レーザ。
【請求項9】
各異屈折率領域が、同一形状の3個の、母材とは屈折率が異なる領域が三角形状に配置されたものであることを特徴とする請求項7に記載の2次元フォトニック結晶レーザ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、活性層に対して垂直な方向にレーザ光を放射する2次元フォトニック結晶レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フォトニック結晶を用いた新しいタイプのレーザが開発されている。フォトニック結晶とは、誘電体から成る母材に周期構造を人工的に形成したものである。周期構造は一般に、母材とは屈折率が異なる領域(異屈折率領域)を母材内に周期的に設けることにより形成される。この周期構造により、結晶内でブラッグ回折が生じ、また、光のエネルギーにエネルギーバンドギャップが現れる。フォトニック結晶レーザには、バンドギャップ効果を利用して点欠陥を共振器として用いるものと、光の群速度が0となるバンド端の定在波を利用するものがあるが、いずれも所定の波長の光を増幅してレーザ発振を得るものである。
【0003】
特許文献1には、発光材料を含む活性層の近傍に2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶レーザが記載されている。この2次元フォトニック結晶には、板状の部材内に円形の空孔(異屈折率領域)が周期的(三角格子状、正方格子状等)に設けられ、屈折率の分布が2次元的な周期性を持っている。この周期を、電極からのキャリアの注入により活性層で生成される光の媒質内波長に一致させておくことにより、2次元フォトニック結晶の内部に2次元定在波が形成され、それにより光が強められてレーザ発振する。レーザ光は、空孔により活性層や2次元フォトニック結晶に垂直な方向に回折され、この方向に放出される。
【0004】
特許文献1に記載のように円形の空孔を用いると、2次元フォトニック結晶内における光の電界は空孔の円の重心(中心)を取り巻き、この重心に関して反対称になるように形成される。このような電界の反対称性により、全ての空孔において干渉により電界が打ち消される(消失性干渉)。2次元フォトニック結晶の大きさが無限大であるならば、このような消失性干渉により電界が完全に打ち消され、2次元フォトニック結晶に垂直な方向にレーザ光を取り出すことができない。実際には2次元フォトニック結晶の大きさが有限であることから電界が完全には打ち消されないため、レーザ光を取り出すことができるが、レーザ光の強度は消失性干渉の影響を受けるため十分には強くならない。
【0005】
特許文献2には、消失性干渉が生じることを防ぐために、異屈折率領域の重心を起点として2次元フォトニック結晶の面内に延びる第1の半直線上には異屈折率領域が存在せず、重心を起点として第1半直線の反対側に延びる第2の半直線上の少なくとも一部には異屈折率領域が存在する、という形状の異屈折率領域を用いた2次元フォトニック結晶レーザが記載されている。このような形状を持つ異屈折率領域の例として、特許文献2には、V字形の異屈折率領域91A(図1(a))及び同一形状の3個の異屈折率領域を正三角形状に並べたものを単位とするクラスタ異屈折率領域91B(図1(b))が例示されている。V字形異屈折率領域91A、クラスタ異屈折率領域91Bのいずれも、重心Gを起点として1方向に延びる第1半直線921上には異屈折率領域が存在しないのに対して、第1半直線921の反対側に延びる第2半直線922上には異屈折率領域が存在する。
【0006】
このような形状の異屈折率領域を用いることにより、第1半直線側と第2半直線側の屈折率が異なることとなるため、消失性干渉が抑制され、円形の異屈折率領域を用いた場合よりも強い強度でレーザ光を放出することができる。

【特許文献1】特開2000-332351号公報([0037]~[0056],図1)
【特許文献2】特開2007-273730号公報([0009]~[0011], [0014]~[0016], [0022]~[0024], 図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2では、V字形異屈折率領域91Aは板状部材93内に2次元フォトニック結晶と平行な1方向(x方向とする)に所定の周期(aとする)で、2次元フォトニック結晶に平行でx方向に垂直なy方向に周期aで、正方格子状に配置されている。そして、全ての異屈折率領域91AはV字の上下がx方向(又はy方向)を向くように配置されている(図2(a))。この2次元フォトニック結晶内ではx方向及びy方向に波長aの定在波が形成される。異屈折率領域91Aはx方向及びy方向と45°の角度を成す軸94(図1(a))に関して非対称な形状を有するため、x方向とy方向では屈折率の分布が異なることとなる。これにより、2次元フォトニック結晶内に形成される2次元定在波は、x方向とy方向で異なる振幅を持つ。その結果、2次元フォトニック結晶から放出されるレーザ光のスポットには非対称性が生じる。このような非対称性が生じることは、レーザ光の利用態様によっては有効な場合もあるが、対称性の高いスポットを必要とする場合には問題となる。このような問題はクラスタ異屈折率領域91Bでも同様に生じる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、レーザ光のスポットの対称性が高い2次元フォトニック結晶レーザを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る2次元フォトニック結晶レーザは、
板状の部材内に該板状部材とは屈折率が異なる同一形状の異屈折率領域が周期的に多数配置された2次元フォトニック結晶と、該2次元フォトニック結晶の一方の側に設けた活性層と、を備え、
前記異屈折率領域が少なくとも2方向に同じ周期を有する格子の格子点に設けられており、
前記異屈折率領域が、前記格子が有する2つの基本逆格子ベクトルの方向についてフィードバック強度が異なる形状を有し、
前記2次元フォトニック結晶が複数個の格子点を含むスーパーセルを単位とする周期構造を有し、
スーパーセル内の全ての異屈折率領域によるフィードバック強度の和が前記2つの基本逆格子ベクトルの各方向において等しい、
ことを特徴とする。
【0010】
本願において「スーパーセル」とは、2次元フォトニック結晶内において複数個の格子点を含む領域であって、該領域に対する並進操作を行うことにより格子点及び異屈折率領域の形状を重ねることができる領域をいう。
【0011】
上述のような格子点に異屈折率領域が設けられていると、格子が有する2つの基本逆格子ベクトルの方向(格子点の列に対して垂直な方向)に伝播する光が2次のブラッグ回折を生じることにより、格子点列の周期に対応した波長のみが干渉により選択され、その波長の定在波が形成される(フィードバック効果)。ここで、基本逆格子ベクトルの方向(即ち定在波が形成される方向)毎のフィードバック効果の大きさ(即ち対称性の高さ)を表す指標として、以下の(1)式で定義されるフィードバック強度κf
【数1】
JP0005303221B2_000002t.gif
を導入する。(1)式においてSは単位格子の面積を、ε(r)は単位格子内の誘電率分布を、G2は2次のブラッグ回折を表す逆格子ベクトルを、jは虚数単位を、積分記号∫Sは単位格子内の面積積分を行うことを、それぞれ意味する。逆格子ベクトルG2は2つの基本逆格子ベクトルのいずれかが該当する(なお、後述のように、三角格子の場合には2つの基本逆格子ベクトルの他にそれら2つの基本逆格子ベクトルの和又は差も該当する)。従って、(1)式により2方向(三角格子の場合には3方向)のフィードバック強度κfを求めることができる。単位格子内の誘電率分布ε(r)は異屈折率領域の形状に依存するため、その形状次第で、上記2(3)方向のフィードバック強度κfが異なる値をとり得ることがわかる。
【0012】
本発明では、上記2(3)方向のフィードバック強度κfが異なる値を持つ場合において、スーパーセル内の全ての異屈折率領域によるフィードバック強度の和が等しくなるように異屈折率領域を配置することにより、それら2(3)方向に同じ強度の定在波を形成する。これにより、対称性が高いレーザ光のスポットを得ることができる。
【0013】
前記格子には、正方格子、三角格子、あるいは、2つの基本逆格子ベクトルの大きさが等しい斜方格子を用いることができる。図3に(a)正方格子(格子定数a、 基本ベクトルa1, a2の成す角度γ=90°)、(b)三角格子(格子定数a、γ=120°)、(c)2つの基本逆格子ベクトルの大きさが等しい斜方格子(格子定数a、γ≠90°, 120°)につき、基本格子ベクトル(実空間)a1, a2を実線の矢印で、基本逆格子ベクトルb1, b2を破線の矢印で、それぞれ示す。三角格子については、これらのベクトルに加えて、ベクトル(a1+a2)及び(b2-b1)を示す。基本逆格子ベクトルb1, b2(三角格子の場合にはそれらに加えて(b2-b1))はいずれも基本格子ベクトルa1, a2(三角格子の場合にはそれらに加えて(a1+a2))のいずれかに対して垂直な方向を向き、ベクトルb1, b2(, (b2-b1))の方向に定在波が形成される。定在波の波長は、(a)正方格子ではa、(b)三角格子では(30.5/2)a、(c)斜方格子ではa×sinγである。なお、三角格子ではγ=60°として基本格子ベクトルを定義することもでき、その場合には基本逆格子ベクトルはb1, b2, b1+b2となる。
【0014】
前記格子が正方格子の場合には、2つの基本逆格子ベクトルは正方格子の基本格子ベクトルと同じ方向(x方向、y方向とする)を向き、それらx方向及びy方向のフィードバック強度κfx、κfyは、(1)式より
【数2】
JP0005303221B2_000003t.gif
と表される。(2),(3)式より、κfxとκfyは、ε(x, y)を除いて、xとyを入れ替えると同じ値になる。従って、ε(x, y)がxとyを入れ替えた時に同じ値になる場合、即ち異屈折率領域がx方向及びy方向に対して45°傾斜した軸に関して対称な形状を有する場合には、κfxとκfyは同じ値になる。また、式(2)(3)は右手系、左手系のいずれの座標軸を採った場合にも適用できるため、異屈折率領域が前記軸に対して90°傾斜した軸に関して対称な形状を有する場合にも、κfxとκfyは同じ値になる。その反対に、これら2つの軸のいずれに関しても異屈折率領域が非対称である場合にはκfxとκfyが異なる値になり、その場合に多数の異屈折率領域を同じ向きで配置するとレーザ光のスポットの対称性が低下する。本発明では、スーパーセル内の全ての異屈折率領域によるフィードバック強度の和がx方向とy方向で等しくなるように異屈折率領域を配置することにより、それら2方向に同じ強度の定在波を形成し、対称性が高いレーザ光のスポットを得る。

【0015】
正方格子を用いた場合には、スーパーセルには、前記正方格子の縦に2格子点、横に2格子点の4格子点を単位とするものを用いることができる。その場合において、スーパーセル内の各異屈折率領域の向きは、(1)該スーパーセル内の1個の異屈折率領域の向きに対して他の3個の異屈折率領域の向きが90°、180°及び270°異なる、あるいは(2)該スーパーセル内の1個の異屈折率領域の向きに対して、他の3個の異屈折率領域のうちの1個の向きが同じであり、2個の向きが90°異なるようにすることができる。
【0016】
前記格子が三角格子である場合には、フィードバック強度及び定在波が形成される方向は基本逆格子ベクトルb1及びb2並びに基本逆格子ベクトルの差(b2-b1)(又は和(b1+b2))の3方向である。この場合、(1)式のε(x, y)が3回回転対称性を持てば、これら3方向のフィードバック強度が等しくなる。そのためには、スーパーセル内の各異屈折率領域の向きは、前記スーパーセル内の1個の異屈折率領域の向きに対して、他の2個の異屈折率領域の向きが120°及び240°異なるようにすればよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る2次元フォトニック結晶レーザにより、異屈折率領域の形状に関わらずフィードバック強度を2(3)方向で等しくすることができ、それによりスポットの対称性が高いレーザ光を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図4~図9を用いて、本発明に係る2次元フォトニック結晶レーザの実施例を説明する。
【0019】
図4に、本実施例の2次元フォトニック結晶レーザ10の斜視図を示す。上部基板11の下に、第1クラッド層12を挟んで活性層13が設けられている。活性層13の下にスペーサ層14を挟んで2次元フォトニック結晶15が設けられている。2次元フォトニック結晶15の構成は後述する。2次元フォトニック結晶15の下に第2クラッド層16を挟んで下部基板17が設けられている。上部基板11の上には上部電極18が、下部基板17の下には下部電極19が、それぞれ設けられている。このうち上部電極18は、正方形の板状金属の中央部に、レーザ光を通過させる窓181を有する。
【0020】
本実施例では、上部基板11にはn型半導体のガリウムヒ素(GaAs)を、第1クラッド層12にはn型半導体のアルミニウム・ガリウム砒素(AlGaAs)を、スペーサ層14にはp型GaAsを、第2クラッド層16にはp型AlGaAsを、下部基板17にはp型GaAsを、それぞれ用いた。活性層13には、インジウム・ガリウム砒素/ガリウムヒ素(InGaAs/GaAs)から成る多重量子井戸(Multiple-Quantum Well; MQW)を有するものを用いた。なお、これら各層の材料は上記のものには限定されず、従来の2次元フォトニック結晶レーザで用いられている各層の材料をそのまま用いることができる。
【0021】
2次元フォトニック結晶15は、図5の斜視図及び図6の上面図に示すように、板状部材151内に空孔(異屈折率領域)152がx方向、及びy方向に周期aで正方格子(図6中の細破線)状に配置されたものである。板状部材151には、本実施例ではp型GaAsを用いた。空孔152は、特許文献2に記載のV字形異屈折率領域と同様の形状(図1(a))を有する。V字形空孔152の1つである第1V字形空孔152AはV字の上下方向がy方向を向いている(図6)。y方向で第1V字形空孔152Aに隣接する第2V字形空孔152Bは90°、x方向及びy方向に対して45°の方向で第1V字形空孔152Aに次隣接する第3V字形空孔152Cは180°、x方向で第1V字形空孔152Aに隣接する第4V字形空孔152Dは270°、それぞれ向きが第1V字形空孔152Aと異なる。そして、これら第1V字形空孔152A~第4V字形空孔152Dを単位として、x方向及びy方向に繰り返し配置されたスーパーセル154が形成されている。スーパーセル154をx方向にm個分、y方向にn個分(m、nは整数)移動させる(並進操作を行う)と、第1V字形空孔152A~第4V字形空孔152Dはその位置にあるV字形空孔に完全に重なる。即ち、2次元フォトニック結晶15は、スーパーセル154を単位とする周期構造を有する。
【0022】
1個のスーパーセル154にはx方向に2個、y方向に2個の空孔が配置されていることから、本願ではこのようなスーパーセルを「2×2」((スーパーセル内のx方向の空孔の個数)×(スーパーセル内のy方向の空孔の個数))のスーパーセルと呼ぶ。
【0023】
本実施例の2次元フォトニック結晶レーザ10の動作を説明する。上部電極18と下部電極19の間に電圧を印加すると、活性層13に電子と正孔が供給され、それら電子と正孔が再結合することにより、所定の波長域の発光が生じる。その光は、2次元フォトニック結晶15に導入され、V字形空孔152により反射されつつ2次元フォトニック結晶15内を伝播する。その際、前記波長域のうち波長aの光は、x方向及びy方向のV字形空孔152の周期が波長と同じaであることにより反射波どうしの位相が一致するため、これら2方向に定在波が形成され、干渉により増幅される(フィードバック効果)。その結果、媒質内における波長がaであるレーザ光が生成される。生成されたレーザ光はV字形空孔152により、2次元フォトニック結晶15に垂直な方向に回折され、上部電極18の窓181から外部に放出される。
【0024】
本実施例の2次元フォトニック結晶レーザ10では、空孔152のいずれもがx方向及びy方向に対して45°の角度を成す軸153に関して非対称な形状を有する。従って、1個の空孔152のみに着目すると、上記(2)においてε(x, y)のxとyを入れ替えても同じ値にならないため、κfxとκfyは異なる値をとる。一方、第1V字形空孔152Aと第4V字形空孔152Dに着目すると、両者が90°異なる方向を向いていることにより、第1V字形空孔152Aのε(x, y)のxとyを入れ替えると第4V字形空孔152Dのε(x, y)になり、第4V字形空孔152Dのε(x, y)のxとyを入れ替えると第1V字形空孔152Aのε(x, y)となる。同様の関係は第2V字形空孔152Bと第3V字形空孔152Cの間でも成り立つ。そのため、スーパーセル154を単位としてみれば、第1V字形空孔152A~第4V字形空孔152Dのκfxの和と、第1V字形空孔152A~第4V字形空孔152Dのκfyの和は同じ値になる。即ち、x方向とy方向のフィードバック強度が等しくなり、x方向、y方向に依存することなく対称性が高いスポットのレーザ光を得ることができる。
【0025】
図7を用いて、本実施例の2次元フォトニック結晶レーザにおいて用いることができる2次元フォトニック結晶15の変形例を説明する。
図7(a)に、第1の変形例である2次元フォトニック結晶15Aの上面図を示す。2次元フォトニック結晶15Aは、「2×2」のスーパーセル154Aを有し、スーパーセル154A内において第1V字形空孔152Aが2個、対角線状に配置され、第2V字形空孔152Bが2個、対角線状に配置されたものである。第1V字形空孔152Aと第2V字形空孔152Bは互いに向きが90°異なるため、上述の2次元フォトニック結晶15と同様の理由によりx方向とy方向のフィードバック強度が等しくなる。
【0026】
図7(b)に、第2の変形例である2次元フォトニック結晶15Bの上面図を示す。2次元フォトニック結晶15Bは「4×4」のスーパーセル154Bを有する。スーパーセル154B内において、x方向には第1V字形空孔152A、第2V字形空孔152B、第3V字形空孔152C及び第4V字形空孔152Dの4種の空孔がこの順で配置され、y方向にもこれら4種の空孔がこの順で配置されている。2次元フォトニック結晶15Bでは、スーパーセル内に第1V字形空孔152Aと第4V字形空孔152D、及び第2V字形空孔152Bと第3V字形空孔152Cが同数ずつ存在するため、上述の2次元フォトニック結晶15と同様の理由によりx方向とy方向のフィードバック強度が等しくなる。
【0027】
図8を用いて、2次元フォトニック結晶15の他の変形例を説明する。
図8(a)に、3個の円形空孔を正三角形状に並べたクラスタ空孔252を正方格子状に配置した2次元フォトニック結晶15Cを示す。クラスタ空孔252は前述のクラスタ異屈折率領域91Bと同様の形状を有する。クラスタ空孔252は「2×2」のスーパーセル254内において、第1のクラスタ空孔252Aの向きに対して、y方向で第1クラスタ空孔252Aに隣接する第2クラスタ空孔252Bは90°、x方向及びy方向に対して45°の方向で第1クラスタ空孔252Aに次隣接する第3クラスタ空孔252Cは180°、x方向で第1クラスタ空孔252Aに隣接する第4クラスタ空孔252Dは270°、それぞれ向きが異なるように配置される。従って、異屈折率領域(空孔)の形状は上述の2次元フォトニック結晶15と異なるものの、各異屈折率領域の向きは2次元フォトニック結晶15と同様である。そのため、2次元フォトニック結晶15Cを用いた2次元フォトニック結晶レーザでは、2次元フォトニック結晶15を用いた場合と同様によりx方向とy方向のフィードバック強度が等しくなり、x方向、y方向に依存することなく対称性が高いスポットのレーザ光を得ることができる。
【0028】
図8(b)に、正三角形の空孔352を正方格子状に配置した2次元フォトニック結晶15Dを示す。正三角形空孔352は「2×2」のスーパーセル354内において、第1の正三角形空孔352Aの向きに対して、時計回りで隣の頂点にある第2正三角形空孔352Bは90°、第3正三角形空孔352Cは180°、第4正三角形空孔352Dは270°、それぞれ向きが異なるように配置される。各正三角形空孔の向きは上述の2次元フォトニック結晶15及び2次元フォトニック結晶15Cと同様であるため、2次元フォトニック結晶15を用いた場合と同様によりx方向とy方向のフィードバック強度が等しくなり、x方向、y方向に依存することなく対称性が高いスポットのレーザ光を得ることができる。
【0029】
なお、クラスタ空孔252や正三角形空孔352を用いた場合においても、各空孔の向きを2次元フォトニック結晶15Aや2次元フォトニック結晶15Bと同様にすることができる。
【0030】
図9に、2次元フォトニック結晶15の他の変形例として、空孔を三角格子状に配置した2次元フォトニック結晶の例を説明する。
図9(a)に、V字形空孔152を三角格子(図中に細破線で示したもの)状に周期aで配置した2次元フォトニック結晶15Eの上面図を示す。正三角形状に配置された3個のV字形空孔152を単位とするスーパーセル454に着目すると、それら3個のV字形空孔152のうち第1V字形空孔152Eの向きに対して、時計回りで隣の頂点にある第2V字形空孔152Fは120°、第3V字形空孔152Gは240°、それぞれ向きが異なる。
【0031】
2次元フォトニック結晶15Eを用いた2次元フォトニック結晶レーザでは、三角格子内の平行な直線の間隔に対応した波長(30.5/2)aを持つ定在波が、120°ずつ異なる3方向(上述の逆格子ベクトルb1, b2, (b2-b1)又は(b1+b2)の方向)に形成される。V字形空孔152はこれら3方向のいずれに対しても、2次元フォトニック結晶15E内の全てのV字形空孔152のうちの1/3が0°、1/3が120°、残り1/3が240°の方向を向いている。そのため、上述の(1)式における誘電率分布ε(x, y)が3回回転対称性を有し、定在波が形成される3方向についてフィードバック強度が等しくなる。その結果、方向に依存することなく対称性が高いスポットのレーザ光を得ることができる。
【0032】
図9(b)に、正方形の空孔552を三角格子状に周期aで配置した2次元フォトニック結晶15Fの上面図を示す。上述の2次元フォトニック結晶15Eと同様に、正三角形状に配置された3個の正方形空孔552を単位とするスーパーセル554に着目すると、第1正方形空孔552Eの向きに対して、時計回りで隣の頂点にある第2正方形空孔552Fは120°、第3正方形空孔552Gは240°、それぞれ向きが異なる。これにより、2次元フォトニック結晶15Eと同様に対称性が高いスポットのレーザ光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来及び本発明の2次元フォトニック結晶レーザで用いられる異屈折率領域の形状の例を示す上面図。
【図2】従来の2次元フォトニック結晶レーザで用いられる2次元フォトニック結晶の例を示す上面図。
【図3】(a)正方格子、(b)三角格子、(c)2つの基本逆格子ベクトルの大きさが等しい斜方格子の(実空間の)基本格子ベクトル基本逆格子ベクトルを示す平面図。
【図4】本発明に係る2次元フォトニック結晶レーザの実施例を示す斜視図。
【図5】本実施例の2次元フォトニック結晶レーザ10における2次元フォトニック結晶15の斜視図。
【図6】2次元フォトニック結晶15の上面図。
【図7】本実施例の2次元フォトニック結晶レーザにおける2次元フォトニック結晶の変形例の上面図。
【図8】本実施例の2次元フォトニック結晶レーザにおける2次元フォトニック結晶の変形例の上面図。
【図9】本実施例の2次元フォトニック結晶レーザにおける2次元フォトニック結晶の変形例である、空孔を三角格子状に配置したものを示す上面図。
【符号の説明】
【0034】
10…2次元フォトニック結晶レーザ
11…上部基板
12…第1クラッド層
13…活性層
14…スペーサ層
15、15A、15B、15C、15D、15E、15F…2次元フォトニック結晶
151、93…板状部材
152…V字形空孔
152A、152E…第1V字形空孔
152B、152F…第2V字形空孔
152C、152G…第3V字形空孔
152D…第4V字形空孔
154、154A、154B、254、354、454…スーパーセル
16…第2クラッド層
17…下部基板
18…上部電極
181…窓
19…下部電極
252…クラスタ空孔
252A…第1クラスタ空孔
252B…第2クラスタ空孔
252C…第3クラスタ空孔
252D…第4クラスタ空孔
352…正三角形空孔
352A…第1正三角形空孔
352B…第2正三角形空孔
352C…第3正三角形空孔
352D…第4正三角形空孔
552…正方形空孔
552E…第1正方形空孔
552F…第2正方形空孔
552G…第3正方形空孔
91A…V字形異屈折率領域
91B…クラスタ異屈折率領域
921…第1半直線
922…第2半直線
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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